Contract
東日本大震災Q&A
(契約関係)
内容
Q1 中古マンションを購入したところ、今回の地震により、毀損が生じてしまいました。売買契約をし、手付金は払いましたが、引渡しや登記はまだ行っていない状況です。どの ように対応すればよいでしょうか。 4
Q2 地震がおこる直前に、新築マンションの売買契約をし、手付金を払いました。ところが、マンションそのものには地震の影響はなかったのですが、周辺の地域は液状化や地割れが起きており、安心して住む気になれません。解約することはできるでしょうか。その際、手付金は返してもらえますか。 4
Q3 震災による津波で有料老人ホームが倒壊してしまいました。入居一時金は返してもらえるのでしょうか。 5
Q4 3 月下旬に旅行会社の募集旅行による旅行を計画していたのですが、東日本大震災があったので、キャンセルしました。旅行代金の支払義務(キャンセル料の支払義務)はあるのでしょうか。 5
Q5 3 月 25 日の大学の卒業式に備え、はかまのレンタルをしましたが、震災の影響で卒業式が中止になりました。そこで、3 月 12 日、レンタル店にキャンセルの電話をしたところ、店は契約書に書いてあるとして、料金の 50%のキャンセル料を請求してきました。私はキャンセル料を払わなければならないのでしょうか。 6
Q6 マンションの売買契約を結び、手付金を支払いました。その後、震災が発生し、体調を崩してしまい、ローンを支払っていく自信がなくなったため、売買契約を解除したいと考えていますが、解除はできますか。その際、手付金を返してもらうことはできますか。
Q7 東日本大震災直後に都内で結婚式を予定していました。震災が起きたため中止を申し出たところ,ブライダル業者から高額のキャンセル料を請求されました。 支払わなければならないでしょうか。 7
Q1 自宅の屋根に設置していたソーラーシステム(xxx発電装置)が津波で流されてしまいました。まだローン(クレジット)が残っていますが支払義務はあるのでしょうか。
Q2 今回の震災で、リース契約していたコピー機が壊れてしまいました。この場合でも、リース料金を払わなければならないのでしょうか。 9
Q1 専門学校とパソコン教室に通っていたのですが、地震でどちらも営業不能になってしまいました。クレジットや月謝の支払はどうなるのでしょうか。また、仮に再開して
も避難生活をしており、到底通えないのですが、その場合はどうすればよいでしょうか。
Q1 地震に便乗した悪徳商法に気づかず、購入契約を結んでしまいました。代金を支払わなければならないでしょうか。また、契約は取りやめられますか。 12
Q2 自宅を新築中でしたが、地震で工期が予定よりも延びてしまうとのことでした。自宅への引っ越しが予定より遅れる分、現在借りている家の賃料を余計に払わなければならなりません。このような場合、建築業者に損害金を請求することはできるでしょうか。
Q1 中古マンションを購入したところ、今回の地震により、毀損が生じてしまいました。売買契約をし、手付金は払いましたが、引渡しや登記はまだ行っていない状況です。どのように対応すればよいでしょうか。
A 契約書の約定に従います。
契約書に特別の約定がない場合で、売主に責任がなく目的物である物件が毀損、滅失したときには、買主の負担となり、売主に対して売買代金を支払わなくてはなりません。この場合でも、マンションの引渡前であれば、手付金を放棄して契約を解除することはできます。
・ まずは、マンションの売買契約書の「危険負担」の項目を確認してみましょう。
「(天災など双方に責任がないような場合の)損失については、引渡しの前日までは 売主、引渡日からは買主の負担とする」というような特約が締結されていれば、売 主に対して毀損部分の補修や、毀損の程度によっては解除を求めることができます。
・ 上記のような特約がないときには、民法の原則にしたがい、双方の責任ではない事情によってマンションが滅失・毀損した場合は、買主がその危険を負担することになります。
・ 今回の地震による損壊については、通常の地震であれば壊れることがないような建物であれば、売主に責任があるとはいえず、買主が負担を負うことになり、売買代金を支払わなくてはなりませんし、補修費用も負担するということになります。この場合でも、引渡前であれば、手付金を放棄して契約を解除することはできます
Q2 地震がおこる直前に、新築マンションの売買契約をし、手付金を払いました。ところが、マンションそのものには地震の影響はなかったのですが、周辺の地域は液状化や地割れが起きており、安心して住む気になれません。解約することはできるでしょうか。その際、手付金は返してもらえますか。
A 原則的には、手付金を放棄して解約することになるでしょう。
手付金を返還してもらうためには、売主側に契約違反といえるような事情が必要です。
・ 土地や家屋など不動産の売買契約を解除する手段としては、一般に次の方法が考えられます。
1. 契約違反の場合など法律の規定に基づいた解除
2. 手付放棄による解除
3. 合意による解除
1. 契約違反による解除
例えば、代金を支払ったのに、相手方が土地・家屋の引渡しや登記をしないというような場合が考えられます。この場合、相当な期間を定めて引渡し・登記の催告をした上で、契約を解除することができます。
2. 手付放棄による解除
手付金を支払っている場合には、相手方が土地・家屋の引渡しや登記をするまでの間であれば、手付金を放棄することによって、いつでも契約を解除することができます。
3. 合意による解除
相手方と交渉を行い、合意による解除をすることも可能です。
・ 手付金を返還してもらうためには、売主側に落ち度があるなどが原因で、(1)の方法で解除することが必要と考えられます。今回の場合ですと、液状化の可能性や地割れが起こることが十分予測できたのにきちんと説明していない、などの事情があるかどうかにより、手付金の返還が認められるかどうかが変わると思われます。
・ なお、マンションそのものが地震で倒壊したり、一部損傷したりした場合は、契約書に天災で建物が滅失、損壊した場合の約定があるはずですので、その約定に従います。天災についての約定がない場合は、手付金を放棄して解約することになるでしょう。
Q3 震災による津波で有料老人ホームが倒壊してしまいました。入居一時金は返してもらえるのでしょうか。
A 有料老人ホームの入居一時金は、賃料相当額の前払などのいろいろな性質を有していますので、契約終了時に入居一時金が返還されるか否かは、ホームごとに取扱いが異なります。
入居一時金の返還に関しては、契約書に明記されているはずですので、確認して下さい。
・ 施設側は入居契約によって利用者に対して施設を利用させる義務などを負っています。しかし、施設が震災による津波によって倒壊したことにより、この義務の履行が不能となると、利用契約は終了します。
・ 利用契約が終了した場合に、入居一時金が返還されるか否かについては、入居一時金の性質や、入居一時金と毎月の利用料との関係などによって決まりますが、これはホームごとに取扱いが異なります。契約書の内容を確認してみて下さい。
・ 入居一時金を一切返還しないとホーム側から主張されることもありますが、この主張が消費者契約法などの法律に照らして適正なものであるかについては、弁護士などの専門家に相談して下さい。
Q4 3 月下旬に旅行会社の募集旅行による旅行を計画していたのですが、東日本大震
災があったので、キャンセルしました。旅行代金の支払義務(キャンセル料の支払義務)はあるのでしょうか。
A 被災地への旅行をキャンセルしたような場合などでは、キャンセル料は発生しないものと思われます。
・ 国土交通省の「標準旅行業約款」では、旅行者は、天災地変が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいときには旅行開始前に取消料を支払うことなく契約を解除することができると定められていますので、本件のような場合は、キャンセル料を支払わずにキャンセルすることができるでしょう。
Q5 3 月 25 日の大学の卒業式に備え、はかまのレンタルをしましたが、震災の影響で卒業式が中止になりました。そこで、3 月 12 日、レンタル店にキャンセルの電話をしたところ、店は契約書に書いてあるとして、料金の 50%のキャンセル料を請求して
きました。私はキャンセル料を払わなければならないのでしょうか。
A 消費者契約法で、不当に高額なキャンセル料の定めは無効となります。無効となるか否かは、種々の事情から判断されます
・ 消費者契約法は、消費者が事業者との間で行う様々な商品の購入やサービスについての契約(消費者契約)を全て適用対象としており、消費者にとって一方的に不利な契約条項があれば無効とすると定めています。
・ 契約の解除に伴う、損害賠償額の予定及び違約金を合算した額(キャンセル料)が、解除の事由、時期等の区分に応じて、同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生じると考えられる「平均的な損害」の額を超えるものは、超える部分につき無効となります(消費者契約法 9 条 1 号)。
無効となった場合、事業者は、消費者に対して平均的な損害の範囲でしか損害賠償を請求できなくなります。
「平均的損害」は、解除の事由・時期のほか、当該契約の特殊性、得べかりし利益・準備費用・利益率等損害の内容、契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らし判断されます。
・ このように、平均的損害を超えるか否か、すなわち消費者契約法で無効となるか否かは、種々の事情により判断されることになります。
例えば、利用予定日の 1 年も前にキャンセルする場合にも契約金額の 50%をキャンセル料として定める条項は通常無効になり、利用日前日のキャンセルについて契約金額の 10%のキャンセル料を定める条項は通常有効と考えられます。あ
なたのケースでキャンセル料の定めが無効になるか否かは、xx的に明確ではありません。
Q6 マンションの売買契約を結び、手付金を支払いました。その後、震災が発生し、体調を崩してしまい、ローンを支払っていく自信がなくなったため、売買契約を解除したいと考えていますが、解除はできますか。その際、手付金を返してもらうことはできますか。
A 一般的には、手付金を放棄して解除することができます。 別段の合意がなければ、手付金を返還してもらうのは困難です。
・ 手付とは、売買契約成立の際に買主から売主に渡される金銭で、(1)解約手付、(2)損害賠償額の予定としての手付、(3)契約成立の証拠としての手付、(4)違約罰(本来の損害賠償額とは別に支払う金銭)としての手付がありますが、当事者間で特に取り決めがなければ、解約手付であるものと推定されます。
・ 解約手付とは、売買契約当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は、その手付けを放棄し、売主はその倍額を支払って契約を解除することができるとするものです。
・ 例えば、1 億円の不動産の売買契約の場合、買主が売主に手付 1000 万円を交付すると、買主はその手付を放棄すれば契約を解除できます。売主は買主に 2000 万円を支払うと、契約を解除できます。ただし、当事者の一方が履行に着手した場合(買主が代金 1 億円全額をすぐ支払えるよう準備して売主に通知した場合など)には、手付による解除はできなくなります。
・ なお、不動産の売買契約で売主がxx業者の場合は、手付は売買代金の 2 割を超えることはできないとされています(xx業法 39 条)。 一般的には売買代金の 1 割程度のことが多いようです。
Q7 東日本大震災直後に都内で結婚式を予定していました。震災が起きたため中止を申し出たところ,ブライダル業者から高額のキャンセル料を請求されました。 支払わなければならないでしょうか。
A 原則としてキャンセル料は支払わなければならないでしょう。
ただし、消費者契約法で、不当に高額なキャンセル料の定めは無効となります。無効となるか否かは、種々の事情から判断されます。
・ 結婚式を行うことが客観的に見て不可能であれば、キャンセル料は発生しない場合が多いと思われますが、本件では、結婚式を行うことが客観的に不可能とまでは言い難いと思われますので、キャンセル料が発生するものと思われます。
・ 消費者契約法は、消費者が事業者との間で行う様々な商品の購入やサービスについての契約(消費者契約)を全て適用対象としており、消費者にとって一方的に不利な
契約条項があれば無効とすると定めています。
・ 契約の解除に伴う、損害賠償額の予定及び違約金を合算した額(キャンセル料)が、解除の事由、時期等の区分に応じて、同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生じると考えられる「平均的な損害」の額を超えるものは、超える部分につき無効となります(消費者契約法 9 条 1 号)。
・ 無効となった場合、事業者は、消費者に対して平均的な損害の範囲でしか損害賠償を請求できなくなります。
・ 「平均的損害」は、解除の事由・時期のほか、当該契約の特殊性、得べかりし利益・準備費用・利益率等損害の内容、契約の代替可能性・変更ないし転用可能性等の損害の生じる蓋然性等の事情に照らし判断されます。
・ このように、平均的損害を超えるか否か、すなわち消費者契約法で無効となるか否かは、種々の事情により判断されることになります。例えば、予定日の 1 年も前にキャンセルする場合にも契約金額の 50%をキャンセル料として定める条項は通常無効になり、前日のキャンセルについて契約金額の 10%のキャンセル料を定める条項は通常有効と考えられます。特定のケースでキャンセル料の定めが無効になるか否かは、xx的に明確ではありません
・ 契約で特別の定めをしている場合もありえますので、弁護士に相談されることをおすすめします。
Q1 自宅の屋根に設置していたソーラーシステム(xxx発電装置)が津波で流されてしまいました。まだローン(クレジット)が残っていますが支払義務はあるのでしょうか。
A 通常は支払を拒むことはできませんが、現状を説明し、ローンの減免や返済条件等につきローン会社と協議をしてみてはいかがでしょうか。
・ ローン債務やクレジット債務は、震災で物が消滅した場合でも、残存するのが原則です。したがって、支払義務は残っていることになります。
Q2 今回の震災で、リース契約していたコピー機が壊れてしまいました。この場合でも、リース料金を払わなければならないのでしょうか。
A リース契約では、一般的に、地震などでリース物件が壊れたり、なくなったりした場合でもリース料金を支払わなくてはならないという契約条項が入っています。 まず、契約内容を確認しましょう。
このような条項があった場合、契約上は、リース料を支払わなければならないことになります。
リース料金の支払の猶予や契約期間の延長などを考慮してもらえないかなど、リース会社と相談をしてみるとよいでしょう。
・ リース契約では、ほとんどの場合、
「地震などによる不可抗力によってリース物件が滅失した場合、ユーザーにリース料金の支払を免れない。」
「リース契約で定められた規定損害金を即時に一括して支払う。」旨が記載されています。
・ 不動産などの賃貸借契約では、貸主がこのような損害負担を負いますが、リース契約では借主が負担することとなっています。
・ リース契約において、借主がこのような負担を負うことについて、リース契約が金融(お金を融資すること)に近い性質もあることから、有効とされています。
・ 通常、リース物件にはリース会社によって動産総合保険がかけられておりますが、リース物件に地震保険がかけられていることはほとんどありません。
したがって、地震によりリース物件が滅失・損壊した場合、ユーザーが損害を負担することになると考えられます。
・ 経済産業省は、リース会社で組織されている社団法人リース事業協会に対し、リース会社に対して、中小企業からリースに関する支払猶予や契約期間延長の申込みがあった場合には、柔軟かつ適切な対応をするよう、所属するリース会社に周知徹底することを要請していますので、リース会社とよく相談してみて下さい。
・ 社団法人リース事業協会では、
1. 会員であるリース会社各社の相談窓口を案内しているほか
2. 東日本大震災に係る会員相談窓口をホームページでご案内しています。
Q1 専門学校とパソコン教室に通っていたのですが、地震でどちらも営業不能になってしまいました。クレジットや月謝の支払はどうなるのでしょうか。また、仮に再開しても避難生活をしており、到底通えないのですが、その場合はどうすればよいでしょうか。
A 災害による営業不能はあなたの責任ではありませんから、料金を支払う必要はありません。
クレジット会社に対しても営業不能であることを理由に支払いを拒絶することができます。
避難生活をしているため、通えなくなった場合は、クーリングオフ、または中途解約をすることになるでしょう。
・ 契約当事者のいずれにも帰さない事由により、一方の債務が履行が不可能となった場合、他方の債務も消滅します。
したがって、パソコン教室などが、営業不能になりサービス提供という債務の履行が不可能となった場合は、客側の代金支払債務も消滅します。
・ これに対し、営業はしているが、客側が通えないときは、代金支払義務があります。したがって、クーリングオフまたは中途解約をすることになります。
・ エステ、語学教室、パソコン教室、学習塾、家庭教師、結婚相手照会サービスについては、契約書面を受け取ってから 8 日以内であれば、クーリングオフすることができます。
・ クーリングオフ期間を経過してしまった場合でも、中途解約することができます。ただし、この場合、違約金が発生することがありますが、違約金の上限が決まっています。
・ 上記以外のサービスについては、クーリングオフや中途解約が法律上当然にできるわけではありませんが、書面で解約を申し出てみてください。なお、不当に高額な違約金の定めは消費者契約法で無効となります。
Q1 地震に便乗した悪徳商法に気づかず、購入契約を結んでしまいました。代金を支払わなければならないでしょうか。また、契約は取りやめられますか。
A 代金を支払う必要はないものと思われます。
配達証明付きの内容証明郵便で、クーリングオフによる解除、契約取消しの意思表示をして下さい。
・ クーリングオフとは、一定の期間内であれば、訪問販売等で商品やサービスを購入した消費者が、一方的に契約をキャンセル(申込みの撤回、解約)することができる制度です。
・ クーリングオフの対象とならなくても、詐欺を理由とする取消や、消費者契約法にもとづく取消ができる場合があります。
・ また、すでに代金を支払っている場合でも、上記クーリングオフ、契約の取消しなどができ得るので、このことを理由に、支払った代金の返還を請求することができると思われます。
・ 被害にあってしまった場合、まだ代金を払っていないが不審に思われる場合は、下記のお問い合わせ先にご相談するとよいでしょう。
Q2 自宅を新築中でしたが、地震で工期が予定よりも延びてしまうとのことでした。自宅への引っ越しが予定より遅れる分、現在借りている家の賃料を余計に払わなければならなりません。このような場合、建築業者に損害金を請求することはできるでしょうか。
A 請負契約書の内容を確認してください。
天災等、注文者、請負人(建築業者)いずれの責めにも帰することができない工事遅延についての約定があれば、基本的にその約定にしたがいます。
一般的には、工期の遅れが請負人の責めに帰すべきものかどうかで、損害金の請求ができるかどうかが異なります。
・ 契約内容にもよりますが、真に震災の影響によるやむを得ない工事遅延の場合は、遅延損害金を請求することは難しいでしょう。
・ 標準的な工事請負約款では、不可抗力により工期内の完成ができない場合は、請負人側から工期延長を請求できるとされています。
・ 反対に、震災によるやむを得ないものとはいえない工事遅延(震災の影響とは無関係な遅延など)の場合は、損害金の請求が可能と思われます。