Contract
[事案 29-373]契約無効請求
・平成 31 年 3 月 5 日 裁定不調
<事案の概要>
80 歳以降は契約を継続できないことについて説明がなかったこと等を理由に、契約の無効を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
平成14 年 10 月に契約した定期保険のほか10 件の保険契約について、以下等の理由により、契約を無効とするか、もしくは取り消して、既払込保険料を返還してほしい。
(1)定期保険の契約時・契約更新時のいずれも、募集人から、80 歳以降は契約できなくなることについて説明がなく、80 歳以降も契約を更新して保障を継続することができると誤信した。
(2)他の契約に関する募集人の行為は、重要な事項を告げない行為(保険業法第 300 条第 1 項第 1 号)、不当な乗換契約(同項第 4 号)、保険契約者の保護に欠ける行為(同項第 9 号)、特別の利益の提供(同項第 5 号)等に該当する。
<保険会社の主張>
以下等の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)募集人は、申立人に対して、設計書、パンフレット等を用いて、80 歳以降は更新されないことの説明をしている。また、パンフレットおよび約款には、80 歳を超えるときには自動更新がされない旨が記載されている。
(2)申立人は、平準定期保険の契約後、募集人から緩和型終身保険の提案を受けた際に「80 歳まで生きないだろうから、定期保険を継続する」と述べて、終身保険契約を断っており、平準定期保険契約が 80 歳までの定期保険であることを認識していた。
(3)募集人の行為は、保険業法第 300 条に定める禁止行為に該当するものではない。
<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会では、当事者から提出された書面にもとづく審理の他、契約時の状況等を把握するため、申立人と申立人の子、および募集人に対して事情聴取を行った。
2.裁定結果
上記手続の結果、申立人が 80 歳以降も契約を更新して保障を継続することができると誤信
して契約したとは認められず、募集人の行為が保険業法第 300 条の禁止行為に該当するとは認められないが、以下の理由により、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、申立人から和解案を受諾しないとの回答があったため、手続を終了した。
(1)本契約以外にも、申立人は募集人から、申立人の家族名義で多数の保険に加入しているが、保障内容の重複や、短期間で解約されている契約もあり、契約の必要性に疑問が残る。また、家族名義の契約の多くは、被保険者の同意を得ずに契約されたものである。
(2)申立人は各契約申込み当時、すでに退職しており、収入が多額であるとは考えにくいうえに、募集人は申立人が多額の借入れをしていた等の事実も認識していたもので、申立人の経済状況に照らして不相当な契約状態であったことは明らかである。にもかかわらず、多
数の保険契約を締結させていたことは、不適切な募集であると言わざるを得ない。