Contract
令和2年2月5日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成30年(ワ)第1642号 免責条項等使用差止請求事件口頭弁論終結日 令和元年10月30日
判 決
5 主 文
1 被告は,消費者との間で,被告が運営するポータルサイト「モバゲー」のサービス利用契約を締結するに際し,別紙契約条項目録1記載の契約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行ってはならない。
2 被告は,その従業員らに対し,被告が前項記載の意思表示を行うための
10 事務を行わないことを指示せよ。
3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
事 実 及 び 理 x
15 第1 請求
1 被告は,消費者との間で,被告が運営するポータルサイト「モバゲー」のサービス利用契約を締結するに際し,別紙契約条項目録1及び2記載の契約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を行ってはならない。
2 被告は,その従業員らに対し,被告が前項記載の意思表示を行うための事務
20 を行わないことを指示せよ。
第2 事案の概要
本件は,消費者契約法(以下「法」という。なお,平成30年法律第54号
(以下「本件改正法」という。)による改正前の法を,以下「改正前法」という。)13条1項所定の適格消費者団体である原告が,被告が不特定かつ多数
25 の消費者との間でポータルサイト「モバゲー」に関するサービス提供契約(以
下「本件契約」という。)を締結するに当たり,法8条1項に規定する消費者
契約の条項に該当する条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示を現に行い,又は行うおそれがあると主張して,被告に対し,法12条3項に基づき,別紙 契約条項目録1及び2記載の契約条項を含む契約の申込み又は承諾の意思表示 の停止を求めるとともに,これらの行為の停止又は予防に必要な措置として,
5 上記意思表示を行うための事務を行わないことを被告の従業員らに指示するよ
う求めた事案である。
1 関係法令等の定め
⑴ 法の定め
ア 法1条(目的)
10 この法律は,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格
差に鑑み,事業者の一定の行為により消費者が誤認し,又は困惑した場合等について契約の申込み又はその承諾の意思表示を取り消すことができることとするとともに,事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部又は一部を無効とするほ
15 か,消費者の被害の発生又は拡大を防止するため適格消費者団体が事業者
等に対し差止請求をすることができることとすることにより,消費者の利益の擁護を図り,もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
イ 法3条(事業者及び消費者の努力)
20 1項 事業者は,次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。
1号 消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が,その解釈について疑義が生じない明確なもので,かつ,消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。
25 ウ 法8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)
1項 次に掲げる消費者契約の条項は,無効とする。
1号 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し,又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
3号 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事
5 業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部
を免除し,又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
エ 法12条(差止請求権)
3項 適格消費者団体は,事業者又はその代理人が,消費者契約を締結
10 するに際し,不特定かつ多数の消費者との間で第八条から第十条まで
に規定する消費者契約の条項(第八条第一項第五号に掲げる消費者契約の条項にあっては,同条第二項各号に掲げる場合に該当するものを除く。次項において同じ。)を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれがあるときは,その事業者又は
15 その代理人に対し,当該行為の停止若しくは予防又は当該行為に供し
た物の廃棄若しくは除去その他の当該行為の停止若しくは予防に必要な措置をとることを請求することができる。ただし,民法及び商法以外の他の法律の規定によれば当該消費者契約の条項が無効とされないときは,この限りでない。
20 ⑵ 改正前法の定め
ア 改正前法3条(事業者及び消費者の努力)
1項 事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるよう配慮するとともに,消費者契約の締結について勧誘をするに際
25 しては,消費者の理解を深めるために,消費者の権利義務その他の消費
者契約の内容についての必要な情報を提供するよう努めなければならな
い。
イ 改正前法8条(事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)
1項 次に掲げる消費者契約の条項は,無効とする。
1号 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任
5 の全部を免除する条項
3号 消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
2 前提事実(当事者間に争いがないか,文中記載の証拠及び弁論の全趣旨によ
10 り容易に認定することができる事実)
⑴ 当事者等
ア 原告は,地域社会の消費者問題に関して,消費者・消費者団体及び消費者問題専門家・関係機関との連携を図りつつ,消費者被害の情報収集,違法な事業活動の差止め,消費者被害の防止・救済,消費者の活動支援等不
15 特定かつ多数の消費者の権利の擁護を図るための活動を行い,もって消費
者の権利の確立に寄与することを目的とする特定非営利活動法人であり,法13条所定の内閣総理大臣の認定を受け,その後も認定の有効期間の更新を受けている適格消費者団体である(甲1,弁論の全趣旨)。
イ 被告は,各種情報処理サービス及び情報提供サービス,ホームページの
20 企画,製作及び運営を目的とする株式会社である。
被告は,インターネットを使ったポータルサイトであるモバゲーを運営しており,モバゲーの会員に対し,オンラインゲームコンテンツのほか,モバゲーの会員同士がサイト内でメール等によりやりとりをする機能などを提供している。モバゲーのサービスのコンテンツは一部有料であり,モ
25 バゲー会員は,有料コンテンツを利用する場合には,利用料金を支払う必
要がある。(乙1,弁論の全趣旨)
⑵ 被告とモバゲー会員との間の契約
被告は,モバゲー会員との間で,被告がモバゲーにおいて提供する役務等に関して,「モバゲー会員規約」(以下「本件規約」という。)を含む契約
(本件契約)を締結しているところ,本件規約には,次の条項が存在する。
5 (乙1)
ア 1条(モバゲー会員資格)
1項 モバゲー会員とは,本規約を承認の上,インターネットを使って株式会社ディー・エヌ・エー(以下,「当社」といいます。)が運営するポータルサイト「mobage」(モバゲー)内で会員に提供する一切
10 のサービス(以下,「本サービス」といいます。)の利用のために,
モバゲー会員として入会を申し込み,当社が入会を認めた者のことを言います。
2項 モバゲー会員は,本規約に基づき本サービスを利用するものとします。
15 3項 本サービス内の各サービスにおいて別途規約(以下,「個別規
約」といいます。)が定められている場合は,モバゲー会員は本規約及び個別規約に基づき本サービスを利用するものとします。なお,本規約と個別規約に定める内容が異なる場合には個別規約に定める内容が優先して適用されるものとします。
20 イ 3条(入会)
1項 モバゲー会員になろうとする方は,本規約を承認の上,当社の定める手続により当社に入会を申し込むものとします。
ウ 5条(モバゲー会員記述情報について)
1項 モバゲー会員記述情報とは,当社の運営するサイト内にモバゲー
25 会員が記述したすべての情報及びモバゲー会員間でメール等によりや
りとりされるすべての情報をいいます。モバゲー会員記述情報に対し
ては,これを記述したモバゲー会員が全責任を負うものとします。モバゲー会員は以下の情報を記述することはできません。
a b | xxでないもの 他人の名誉または信用を傷つけるもの | |
5 | c | わいせつな表現またはヌード画像を含むもの |
d | 特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権,肖像権その他の | |
他人の権利を侵害するもの | ||
e | コンピューターウイルスを含むもの | |
f | 異性交際を求めるもの | |
10 | g | 異性交際の求めに応じるもの |
h | 異性交際に関する情報を媒介するもの | |
i | 公序良俗に反するもの | |
j | 法令に違反するもの | |
k | 当社の認めるサイト以外のサイトへのリンク,URL | |
15 | l | その他当社が不適当と判断したもの |
2項 | 当社は,モバゲー会員記述情報が本規約に違反する場合,その他 |
の当社が不適当と判断した場合には,モバゲー会員記述情報を削除することができるものとします。
エ 7条(モバゲー会員規約の違反等について)
20 1項 モバゲー会員が以下の各号に該当した場合,当社は,当社の定め
る期間,本サービスの利用を認めないこと,又は,モバゲー会員の会員資格を取り消すことができるものとします。ただし,この場合も当社が受領した料金を返還しません。
a 会員登録申込みの際の個人情報登録,及びモバゲー会員となった
25 後の個人情報変更において,その内容に虚偽や不正があった場合,
または重複した会員登録があった場合
b 本サービスを利用せずに1年以上が経過した場合
c 他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合 d 本規約及び個別規約に違反した場合
e その他,モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合
5 2項 当社が会員資格を取り消したモバゲー会員は再入会することはで
きません。
3項 当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても,当社は,一切損害を賠償しません。
オ 12条(当社の責任)
10 4項 本規約において当社の責任について規定していない場合で,当社
の責めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合,当社は,1万円を上限として賠償します。
5項 当社は,当社の故意または重大な過失によりモバゲー会員に損害を与えた場合には,その損害を賠償します。
15 ⑶ 本件訴えに至る経緯等
ア 本件訴えに至る経緯
原告は,平成28年8月8日付けの書面(「お問合せ」)により,被告に対し,①本件規約(ただし,平成30年8月20日変更前のもの。以下
「本件旧規約」という。)4条3項(携帯電話及びパスワードの管理不十
20 分,使用上の過誤,第三者の使用等による損害の責任はモバゲー会員が負
うものとし,被告は一切の責任を負わない旨の条項),②本件規約7条3項,③本件旧規約10条1項(モバゲー会員は,被告の定める有料コンテンツを利用する場合には,被告の定める金額の利用料金を被告の定める方法により被告の定める時期までに支払うものとし,被告は理由のいかんに
25 かかわらず,すでに支払われた利用料金を一切返還しない旨の条項),④
本件規約12条1項ないし3項(被告はモバゲー内で会員に提供するサー
ビスの内容等について,その完全性,正確性,確実性,有用性等につき,いかなる責任も負わない旨の条項等)及び4項につき,改正前法8条1項等に抵触する可能性があるとして,被告の見解を問い合わせたところ(甲
3),被告は,同月26日付けの書面により,原告が指摘する各条項は,
5 被告に債務がないことを確認的に規定する趣旨であり,被告の責任は問題
とならない旨の回答をした(甲4)。
原告は,同年12月8日付けの書面(「申入書」)及び平成29年2月
3日付けの書面(「再申入書」)により,上記各条項は,改正前法8条に違反する旨を申し入れ,さらに,同年7月14日付けの書面(「差止請求
10 書」)により,法41条1項所定の書面による事前の請求として,上記各
条項の使用停止又は適切な内容への修正を求めたが(甲5,7,9),被 告は,いずれに対しても平成28年8月26日付けの書面と概ね同旨の記 述をした上,改正前法8条に違反するものではない旨の回答をした(甲6,
8,10)。
15 イ 本件訴えの提起後の経緯(当裁判所に顕著な事実)
原告は,平成30年7月9日,本件訴えを提起した。
本件訴えは,当初,本件旧規約4条3項,本件規約7条3項,本件旧規約10条1項及び本件規約12条4項が,いずれも改正前法8条に違反するとして,上記各条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の差
20 止め等を求めるものであった。
その後,被告は,同年8月20日付けで,本件旧規約4条3項については,「当社の責めに帰すべき事由による場合を除き」との文言を付加し,同10条1項については,「当社は理由の如何にかかわらず、すでに支払われた利用料金を一切返還しません。」との文言を削除するという内容の
25 変更を行った。
そこで,原告は,上記の変更された各条項に係る部分につき,訴えを取
り下げた。なお,原告は,本件訴え提起後に本件改正法が施行されたことに伴い,本件規約7条3項及び12条4項が法8条に該当する旨の主張に変更した。
3 争点及び争点に関する当事者の主張
5 本件の主たる争点は,①本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号該当性
(争点1),②本件規約12条4項の法8条1項1号及び3号該当性(争点
2)であり,これらの点に対する当事者の主張は,以下のとおりである。
⑴ 本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号該当性(争点1)
(原告の主張)
10 ア 本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号の各前段該当性
本件規約7条1項は,モバゲー会員が同項各号に該当した場合,被告の定める期間,モバゲー内で会員に提供する一切のサービスの利用を認めない旨(同項柱書き前段に規定された措置。以下「利用停止措置」という。)や,モバゲー会員の会員資格を取り消すことができる旨(同項
15 柱書き後段に規定された措置。以下「会員資格取消措置」といい,利用
停止措置と会員資格取消措置を併せて「会員資格取消措置等」とい う。)を定めているところ,本件規約7条3項は,被告により会員資格 取消措置等がとられた場合に係る規定であり,同条1項c号及びe号は,
「当社が判断した場合」という文言が用いられていることから,被告が
20 上記各号該当性の判断を誤って同項に基づく会員資格取消措置等をとる
ことがあり得る。そうすると,同条3項は,被告が故意又は過失による誤った判断により会員資格取消措置等をとった場合であっても適用される免責条項であるということになるから,同条3項は,事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免
25 除する条項として法8条1項1号及び3号の各前段所定の条項に該当す
る。
この点,被告は,本件規約7条1項c号及びe号にいう「判断」とは
「合理的な根拠に基づく合理的な判断」と解釈される旨を主張する。
a しかしながら,被告が主張するような制限的解釈を加えることは以下①ないし③の理由から妥当ではない。
5 ① 事業者は,本件改正法による改正後の法3条1項1号により,
解釈に疑義のないような明確かつ平易な条項を作成する努力義務を負っている。そうであるにもかかわらず,それを怠った事業者が,その条項の不明確性ゆえに,二つの意味にとりうる解釈のどちらか一方をとることによって,利益を得るのは,本件改正法の趣旨に反する。
10 ② 本件のように消費者契約法という条項の内容規制について十分
な規定が存在し,当該条項の不当条項性が問題になっている場合には,制限的解釈や合理的意思解釈を用いて,その不当性を回避する手法を とるべきではない。
③ 適格消費者団体による差止訴訟は,法に反する不当条項による
15 将来の消費者被害の拡大を防止することを目的とするところ,差止請
求訴訟に制限的解釈を行った場合,制限された条項は,その制限され た内容で有効であることになり,誤解を招く透明度の低い表現をもつ 契約条項が引き続き使用される結果となるから,差止訴訟においては,個別訴訟における個別救済的な観点からの制限的解釈をすることは妥
20 当ではない。
b 実際,利用停止措置を受けたモバゲー会員が被告に理由を問い合わ せても被告はその理由を説明せず返金すらしていないことからすれば,被告において,本件規約7条1項c号及びe号は被告が判断すれば利 用停止措置をとることができるという運用をしていることは明らかで
25 ある。
また,被告は,本件規約7条3項が,被告が合理的な根拠に基づく合
理的な判断により会員資格取消措置等をとったことによって消費者に生 じた損害を賠償する責任を負わないことを確認的に規定した条項であっ て,被告が故意又は過失による誤った判断により会員資格取消措置等を とった場合には同項は適用されず,被告は,本件規約12条4項により,
5 損害賠償責任を負う旨を主張する。
しかしながら,被告が本件規約7条1項c号又はe号に該当するものと判断して会員資格取消措置等をとった以上は,その後に当該判断が誤ったものであったことが判明したとしても,本件規約7条3項が適用されないという解釈は成り立たない。また,本件規約12条4項は,「本
10 規約において当社の責任について規定していない場合」に適用される条
項であるところ,被告が故意又は過失による誤った判断により会員資格取消措置等をとった場合の責任については本件規約7条3項が規定していることから,上記の場合において本件規約12条4項の適用はない。被告が主張する解釈は上記 a のとおり本件においては許されない制限
15 的解釈である。
そして,前述のとおり,被告は,利用停止措置を受けたモバゲー会員に対して理由を説明せず返金もしていない。また,仮に被告が被告の主張どおりの解釈を採用しているのであれば,本件訴え提起後に変更された本件規約の2条項と同様に,本件規約7条3項に「当社の責めに帰す
20 べき事由による場合を除き」という文言を付加すれば足りるのに,被告
はそのようにしていない。そうすると,被告自身,本件規約7条1項に基づく措置によりモバゲー会員に生じた損害については賠償する責任を負わないという姿勢であることがうかがわれる。
イ 本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号の各後段該当性
25 本件規約7条3項は,被告が同条1項 c 号及びe号に係る判断権限を適
切に行使しないことにより損害賠償を免れることができる条項であるから,
事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の有無を決定する権限を付与する条項として,法8条1項1号後段及び同項3号後段に該当し,無効である。
ウ 小括
5 したがって,本件規約7条3項は,法8条1項1号及び3号に該当する。
(被告の主張)
ア 本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号の各前段該当性
本件規約7条1項各号違反を根拠として同項に基づく会員資格取消措置等をとることは,被告とモバゲー会員との合意に基づき被告が権利を
10 有するものであり,被告が権利を行使したことにより,モバゲー会員に
損害が生じても,被告が責任を負うものではないことは当然であり,本件規約7条3項は,被告が債務を負うものではないことを確認的に規定するものであって,被告の損害賠償責任の免責を定めるものではない。
仮に,被告の誤った判断により被告が会員資格取消措置等をとった場
15 合には,本件規約7条1項の適用自体が誤りということになり,会員資
格の取消し等はされず,本件規約7条3項の適用もないことになる。す なわち,本件規約7条3項は,被告が本件規約7条1項c号又はe号に ついて故意又は過失により誤った判断をした場合には適用されないから,事業者の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を賠償する
20 責任の全部を免除する条項として法8条1項1号前段及び同項3号前段
に該当しない。
本件規約7条1項c号及びe号について
本件規約7条1項c号又はe号には,「当社が判断した場合」との文
言があるが,一般的な契約実務に則り,「判断」とは「合理的な根拠に
25 基づく合理的な判断」であることが当然の前提となっている。
すなわち,本件規約7条1項c号は,ゲーム等のサービスにおいてあ
る会員の禁止行為により迷惑をかけられた,あるいはゲーム等のサービスにおいて,明確には禁止されていないものの誰もが不当と思う行為により迷惑をかけられた等の会員間の紛争を念頭に置いたものであり,会員間の紛争については,サービスの記録や双方の会員から提供された証
5 拠等の合理的な根拠に基づいて,不当に迷惑をかけたか否かを合理的に
判断することになる。また,同項e号は,同項a号ないしd号で例示した事由以外に,本件規約作成時に想定し得なかった不適切な行為等が行われた場合等に会員資格取消措置等をとるためのものであり,この規定も,限定された証拠に基づいて判断することを想定したものであるが,
10 合理的な根拠に基づかない判断をすることや,合理的でない判断をする
ことが許されるわけではない。
なお,本件規約7条1項c号又はe号のように,「当社が判断した場合」との文言が入っている条項は,ごく一般的なものであり,何ら不当なものではない。
15 本件規約7条3項について
被告の「合理的な根拠に基づく合理的な判断」により,本件規約7条
1項c号又はe号が適用され,会員資格取消措置等をとった場合,被告は,当該会員に対して,サービスを提供する債務を負わない。そして,被告が債務を負わない以上,債務不履行もあり得ず,損害賠償責任を負
20 うこともない。本件規約7条3項は,このような本件規約7条1項c号
又はe号の適用により,被告に損害賠償責任が発生しないことを確認的に定めたものであり,免責条項ではない。
一方,被告の判断が,「合理的な根拠」に基づかない,あるいは,
「合理的な判断」ではないことが認められた場合には,本件規約7条1
25 項c号及びe号のいずれも適用できず,本件規約7条3項も適用できな
い。したがって,被告によって本件規約7条1項c号又はe号が誤って
適用されたことにより,被告が債務を履行しなかった場合には,被告の債務不履行となり,本件規約12条4項又は5項が適用され,被告は,損害賠償責任を負う。
この点,原告は,上記解釈を制限的解釈であると解した上で,本件規
5 約を制限的解釈すべきではない旨を主張する。
しかしながら,原告の主張は,以下の①②の理由から妥当ではない。
① 被告の主張する上記解釈は,ごく一般的な解釈であり,制限的解釈には当たらない。
② 仮に制限的解釈に当たるとしても,差止請求権を規定した法12
10 条3項は,不当契約条項(法8条から法10条までに規定する消費者契
約の条項)に該当することを要件の一つとして規定しているのみであり,制限的解釈してはならないという根拠は見出せず,原告の主張は,xx 上何の根拠もない独自の見解である。
イ 本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号の各後段該当性
15 原告の主張は争う。
ウ 小括
したがって,本件規約7条3項は,法8条1項1号及び3号に該当しない。
⑵ 本件規約12条4項の法8条1項1号及び3号該当性(争点2)
20 (原告の主張)
本件規約12条4項は,「本規約において当社の責任について規定していない場合で,当社の責めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合,当社は,1万円を上限として賠償します。」と規定しており,本件規約において個別に責任を規定している場合を除外している点が,本件規約7
25 条3項が被告の免責を規定している内容となっていることとの関係において,
不当条項となる。すなわち,本件規約12条4項は,本件規約7条3項で定
めたケースについて損害賠償を負わない旨を内容とする規定であり,本件規定7条1項が誤って適用された場合に,本件規約7条3項によって免責されることを追認する趣旨の規定である。
したがって,本件規約12条4項は,その前段部分「本規約において当社
5 の責任について規定していない場合」について,消費者契約法8条1項1号
及び3号の各前段に該当する。
(被告の主張)
本件規約12条4項は,被告の損害賠償責任について上限額を定めた規定であり,「本規約において当社の責任について規定していない場合」の損害
10 賠償責任を完全に免責する趣旨は含まれておらず,そもそも法8条1項1号
及び3号の適用の前提を欠く。第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号該当性)について
⑴ 契約条項が不明確な場合と法12条3項における消費者契約の不当条項該
15 当性の判断の在り方
ア 法は,消費者と事業者との間に存する契約の締結,取引に関する情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み,事業者の債務不履行等により生じた損害賠償の責任を免除する条項等の全部又は一部を無効とすることを定める(法1条参照)。そして,その趣旨,目的を徹底するため,事業者は,
20 消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者の権利義務その他の消費
者契約の内容が,その解釈について疑義が生じない明確なもので,かつ,消費者にとって平易なものになるよう配慮する努力義務を定めている(法
3条1項1号)。
さらに,法は,少額ではあるが高度な法的問題を孕む紛争が多発すると
25 いう消費者取引の特性に鑑みると,個々の消費者に権利行使を期待し難い
ことなどから,同種紛争の未然防止・拡大防止を図って消費者の利益を擁
護することを目的として,適格消費者団体による事業者に対する差止請求制度を定めている(法1条,12条3項)。
イ ところで,上記の差止請求は,その対象となる消費者契約の中に,法8条から10条までに規定する消費者契約の条項(以下「不当条項」とい
5 う。)が含まれていることがその要件とされているところ,この不当条項
該当性の有無を判断するに当たっては,その前提として,当該消費者契約の中の特定の条項の意味内容を定める必要が生じる。
この点,上記アで判示したとおり,法は,消費者と事業者とでは情報の 質及び量並びに交渉力に格差が存することに照らし,法3条1項において,
10 事業者に対し,消費者契約の条項を定めるに当たっては,消費者契約の内
容が,その解釈について疑義が生じない明確なものであって,かつ,消費 者にとって平易なものになるよう配慮することを求めていることに照らせ ば,事業者は,消費者契約の条項を定めるに当たっては,当該条項につき,解釈を尽くしてもなお複数の解釈の可能性が残ることがないように努めな
15 ければならないというべきである。
加えて,差止請求制度は,個別具体的な紛争の解決を目的とするものではなく,契約の履行などの場面における同種紛争の未然防止・拡大防止を目的として設けられたものであることをも勘案すると,差止請求の対象とされた条項の文言から読み取ることができる意味内容が,著しく明確性を
20 欠き,契約の履行などの場面においては複数の解釈の可能性が認められる
場合において,事業者が当該条項につき自己に有利な解釈に依拠して運用していることがうかがわれるなど,当該条項が免責条項などの不当条項として機能することになると認められるときは,法12条3項の適用上,当該条項は不当条項に該当すると解することが相当である。
25 ⑵ 検討
ア 被告は,本件契約を締結した多数のモバゲー会員に対し,インターネッ
トを使って,ゲームやオークションなどの多様なサービスを提供する債務 を負うところ,本件契約においては,モバゲー会員がサイト内に書込みを したり,モバゲー会員間でメール等のやりとりが行われることが予定され,モバゲー会員による多様な利用方法が想定されている(本件規約1条,5
5 条,6条参照)。
本件規約7条1項は,モバゲー会員が同項各号に該当した場合,被告の定める期間,モバゲー内で会員に提供する一切のサービスの利用を認めない旨や,モバゲー会員の会員資格を取り消すことができる旨を定めているところ,同項は,モバゲー会員が同項各号に該当した場合,被告が利用停
10 止措置又は会員資格取消措置(本件契約の解除)をとることにより,被告
のモバゲー会員に対するサービスを提供する債務の発生を阻止し又は消滅させることができることを規定したものといえる。
そして,被告は,本件契約に関し,本件規約のほかに個別規約を設けているところ(本件規約1条3項),本件規約7条1項d号は,モバゲー会
15 員が本件規約及び個別規約に違反した場合には,会員資格取消措置等をと
ることができる旨を規定している。
イ 本件規約7条1項c号及びe号について
本件規約7条1項c号は「他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合」,e号は「その他,モバゲー会員として不適切で
20 あると当社が判断した場合」について,被告が会員資格取消措置等をと
ることができる旨を規定している。
この点,被告は,上記各号の「判断」とは「合理的な根拠に基づく合理的な判断」を意味し,そのように解釈することが一般的な契約実務である旨主張している。
25 しかしながら,c号の「他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけた」と
いう要件は,その文言自体が,客観的な意味内容を抽出し難いものであ
り,その該当性を肯定する根拠となり得る事情や,それに当たるとされる例が本件規約中に置かれていないことと相俟って,それに続く「と当社が判断した場合」という要件の「判断」の意味内容は,著しく明確性を欠くと言わざるを得ない。すなわち,上記要件の文言からすると,被
5 告は上記の「判断」を行うに当たって極めて広い裁量を有し,客観性を
十分に伴う判断でなくても許されると解釈する余地があるのであって,上記の「判断」が「合理的な根拠に基づく合理的な判断」といった通常の裁量の範囲内で行われるとxx的に解釈することは困難であると言わざるを得ない(なお,本件規約5条1項には,モバゲー会員がモバゲー
10 サイト内に記述した全ての情報及びモバゲー会員間でメール等によりや
りとりがされる情報について,xxでないもの,他人の名誉又は信用を 傷つけるもの等の同条1項各号所定の事由に該当する情報の記述を禁止 することなど,規約違反となる事象を定めているところ,同条1項各号 に違反する事象は,本件規約7条1項d号の対象となるものであるから,
15 本件規約5条1項各号をもって,本件規約7条1項c号の例示であると
解することはできない。)。
また,e号は,「その他,モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合」との要件であるが,同号の前に規定されているa,b及びd号はその内容が比較的明確であり,裁量判断を伴う条項ではないの
20 に対し,e号については,「その他」との文言によりc号を含む各号と
並列的な関係にある要件として規定されつつも,c号と同じ「判断した場合」との文言が用いられていることから,c号の解釈について認められる上記の不明確性を承継するものとなっている。
この点に関連して,被告は,上記各号のように「当社が判断した場
25 合」との文言の条項は,ごく一般的なものであるとして,他の企業にお
ける各種の会員サービスに係る規約を提出する(乙4の1から4の2
5)。
しかし,それらの規約の条項の中には,利用資格失効等の措置をとる場合には「合理的な理由に基づく判断」又は「合理的な判断」を行う旨の文言を明示しているものがあり(乙4の6,4の10の1,4の1
5 9),また,「合理的な理由に基づく判断」又は「合理的な判断」を行
う旨の文言はないが,例示が多数挙げられているもの(乙4の2,4の
11,4の23)も見受けられる。他方,本件契約のように,会員相互間の関係を生じるサービスに係る規約において「他の会員に不当に迷惑をかけた」といった文言のみをもって,例示を伴うことなく契約の解除
10 事由等としているものは見当たらない。このように,被告が提出した規
約の例をみても,上記各号のような定め方が一般的であるとまではいえない。
また,被告は,法12条3項における不当条項該当性の判断において,契約条項を合理的に解釈をすることは当然であると主張し,限定解釈を
15 施すことは妨げられない旨の判示をした裁判例(乙6)を指摘する。
しかし,当該裁判例は,「当社は,この約款を変更することがあります。この場合には,料金その他の提供条件は,変更後の約款によります。」との条項につき,約款の変更は一定の合理的な範囲においてのみ許されるという一般的な法理が存在することを前提として,上記の条項
20 がその法理と同旨のものと解釈することができるとしたものにすぎず,
差止請求の対象とされた条項の文言から読み取ることができる意味内容が著しく明確性を欠く場合一般について判示したものではないと解される。
したがって,上記の被告の主張は採用することができない。
25 以上のとおり,上記各号の文言から読み取ることができる意味内容は,
著しく明確性を欠き,契約の履行などの場面においては複数の解釈の可
能性が認められると言わざるを得ない。 ウ 本件規約7条3項と法8条該当性について
本件規約7条3項は,「当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても,当社は,一切損害を賠償しません。」と規定している。
5 被告は,被告の「合理的な根拠に基づく合理的な判断」により,本件
規約7条1項c号又はe号が適用され,会員資格取消措置等をとった場合,被告は,当該会員に対して,サービスを提供する債務を負わず,そうである以上,債務不履行もあり得ず,損害賠償責任を負うこともないのであるから,本件規約7条3項は,同条1項c号又はe号の適用によ
10 り,被告に損害賠償責任が発生しないことを確認的に定めたものであり,
免責条項ではないと主張する。
しかしながら,上記各号の文言から読み取ることができる意味内容は,著しく明確性を欠き,複数の解釈の可能性が認められ,被告は上記の
「判断」を行うに当たって極めて広い裁量を有し,客観性を十分に伴う
15 判断でなくても許されると解釈する余地があることは,上記イで判示し
たとおりである。
そして,本件規約7条3項は,単に「当社の措置により」という文言を使用しており,それ以上の限定が付されていないことからすると,同条1項c号又はe号該当性につき,その「判断」が十分に客観性を伴っ
20 ていないものでも許されるという上記の解釈を前提に,損害賠償責任の
全部の免除を認めるものであると解釈する余地があるのであって,「合理的な根拠に基づく合理的な判断」を前提とするものとxx的に解釈することは困難である。
そうすると,本件規約7条3項は,同条1項c号又はe号との関係に
25 おいて,その文言から読み取ることができる意味内容が,著しく明確性
を欠き,契約の履行などの場面においては複数の解釈の可能性が認めら
れると言わざるを得ない。
他方,被告は,本件規約7条1項c号又はe号の「判断」とは「合理的な根拠に基づく合理的な判断」を意味するとの主張をしながらも,そのように文言を修正することを拒絶しており(被告第4準備書面及び第
5 5準備書面),また,本件規約7条3項につき,「当社の責めに帰すべ
き事由による場合を除き」といった文言(本件規約4条3項に追加された文言と同旨のもの)を付加するような修正はしないとの立場を明らかにしている(弁論の全趣旨)。
そして,証拠(甲11〔No.16,36,78,92〕)によれば,
10 モバゲー会員からは,全国消費生活情報ネットワークシステムに対し,
被告によりモバゲーサイト上のゲームの利用の一部を停止されたが,被告に問い合わせても理由の説明がされず,かつ,すでに支払った利用料金2万円の返金を拒まれているなどの相談が複数されていることが認められるところ,利用停止措置をとる場合のモバゲー会員に対するこのよ
15 うな対応ぶりに照らすと,被告は,上記のような文言の修正をせずにそ
の不明確さを残しつつ,当該条項を自己に有利な解釈に依拠して運用しているとの疑いを払拭できないところである。
以上で判示したところによれば,本件規約7条3項は,同条1項c号又はe号との関係において,その文言から読み取ることができる意味内
20 容が,著しく明確性を欠き,契約の履行などの場面においては複数の解
釈の可能性が認められるところ,被告は,当該条項につき自己に有利な解釈に依拠して運用していることがうかがわれ,それにより,同条3項が,免責条項として機能することになると認められる。
したがって,法12条3項の適用上,本件規約7条3項は,「事業者
25 の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除」
する条項に当たり,また,「消費者契約における事業者の債務の履行に
際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除」する条項に当たるから,法8条1項1号及び3号の各前段に該当するというべきである。
⑶ 小括
5 以上によれば,法12条3項の適用上,本件規約7条3項は,法8条1項
1号及び3号の各前段に該当するところ,前記前提事実⑶及び弁論の全趣旨によれば,被告は,不特定かつ多数の消費者との間で本件規約7条3項を含む「消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示を現に行い又は行うおそれ」(法12条3項)があると認められる。
10 2 争点2(本件規約12条4項の法8条1項1号及び3号該当性)について
本件規約12条4項は,被告の責めに帰すべき事由がある場合の債務不履行又は不法行為により消費者に生じた損害を,1万円を上限として賠償する旨を規定した条項であるところ,同項が「本規約において当社の責任について規定していない場合で」と明示しているからことからすれば,同項は,本件規約7
15 条3項により免責がされる場合とは独立して,責任の全部の免除をすることが
できることを規定しているものではないことは明らかである。
そうすると,本件規約12条4項は,「事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し」又は「消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害
20 を賠償する責任の全部を免除」することを内容とする条項ではないから,法8
条1項1号及び3項の各前段に該当しない。
3 結論
以上によれば,その余の争点(本件規約7条3項の法8条1項1号及び3号の各後段該当性)につき判断するまでもなく,原告の請求のうち,別紙契約条
25 項目録1記載の条項を含む消費者契約の申込み又は承諾の意思表示の差止めを
求める請求及び被告がその従業員らに対し上記意思表示を行うための事務を行
わないことを指示するよう求める請求については理由があるが,その余の請求には理由がない。
よって,原告の請求は,主文の限度で理由があるからこの限度で認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担について,民
5 事訴訟法61条,64条本文を適用して,主文のとおり判決する。
さいたま地方裁判所第4民事部
10 裁判長裁判官 x x x
裁判官 x x x x
15
裁判官 x x x x
(別紙)
契約条項目録
モバゲー会員規約に含まれる下記の条項
5 1 第7条 モバゲー会員規約の違反等について
3項 当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても,当社は,一切損害を賠償しません。
2 第12条 当社の責任
4項 本規約において当社の責任について規約していない場合で,当社の責
10 めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合,当社は,1
万円を上限として賠償します。
以上