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有期労働契約
締結・更新・雇止め実務の基本
2021年4月16日
社会保険労務士 xx xx
テーマ
1.雇用契約締結時の注意点
2.雇用契約更新時・雇止めの注意点
3.雇用保険 離職票 離職理由
1.雇用契約締結時の注意点
契約期間
期間の定めのある契約
労働契約
期間の定めのない契約
原則
5年以内まで可能なケース
①高度で専門的な知識を有する者医師、弁護士等
②満60歳以上の者
3年を超えて契約することが認められているもの
①一定の事業完了に必要な期間を定めるもの
②労基法第70条による職業訓練のため長期の訓練が要するもの
【特例】
例 外
3年を超えてはならない
有期労働契約とは
・期間の定めのある雇用契約のことをいい、アルバイト、パート、契約社員等の名称のいかんに関わらず、また、時給、日給月給、年俸制等賃金の支払い方に関わらず、期間の定めのあるものはすべて有期労働契約です。
・期間の定めのある契約は労働者と使用者をその期間中拘束するものなので特別な事情がない限り、契約当事者双方は一方的な理由だけで途中で解約ができません。
・有期労働契約には、雇用期間の定めのない正社員の契約と比べて注意すべき点がいくつかあります。
・入社時だけでなく入社後にも注意すべき点をしっかりと押さえておく必要があります。
労働条件の明示
労働者を雇用する場合、雇用形態に関わらず労働条件の内容を明示しなければならず、使用者側から通知する「労働条件通知書の提示」が最低限必要で、使用者と労働者間で雇用契約書を締結することが求められます。
● 絶対的記載事項(書面で交付することが義務付け)
① 労働契約の期間
② 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
③ 就業の場所及び従事すべき業務
④ 労働時間、休憩、休日、時間外労働の有無
⑤ 賃金の計算及び支払方法、締め支払の時期
⑥ 退職に関する事項
● パートタイム労働法上の明示事項
・ 昇給の有無
・ 退職手当の有無
・ 賞与の有無
・ 相談窓口
契約更新の基準
更新する基準を満たしているにもかかわらず更新しないとなると、不法な契約打ち切りとして訴訟になるケースもあり、明確な基準を明示しておく必要があります。
契約を更新する場合の基準は、本人の能力、勤務成績等といった抽象的な内容だけでなく、具体的な基準を記載することをお勧めいたします。
例: シフト表の労働日の当日休みの申し出が3回までであること懲戒処分を受けていないこと
顧客からのくクレームを受けていないこと(クレームの内容は考慮する)
また、有期雇用労働者に労働条件を明示する際には、「一応6か月での契約ですが、ほとんどの場合契約は更新していますし、当社としてはできるだ
け長く働いてもらいたいと思っています。」等の長期雇用への期待を抱かせるような発言を控えることが大切です。
このような発言をすると更新への期待を抱いてしまい、雇止めをした際に紛争になる可能性が高くなります。
• 【参考書式① パートタイム社員労働条件通知書兼雇用契約書(例)】
2.雇用契約更新時・雇止めの注意点
(1) 雇用契約更新時の注意点
有期雇用契約において、「契約更新の手続き」にも重要なポイントが多くあります。
雇用期間の定めのない正社員であれば入社時に雇用契約を結べば、その後は正社員からパートへなどの雇用形態の変更がない限り雇用契約を更新することはないのですが、有期雇用契約の場合、当初締結した雇用期間が終了するときに、再契約をするのかどうかという判断をしなければなりません。
契約期間満了時の対応方法
契約の形態 | 対応方法 |
契約更新をする場合 | 再度、雇用期間を定めた労働条件通知書を交付もしくは雇用契約 書を締結する |
契約更新をしない場合 | 契約期間満了で終了 ※ 契約更新を 3 回以上実施しているか、1 年を超えて継続して雇用していると 30 日前までに雇止めの予告が必要 ※ 雇用期間が 5 年を超えると本人が希望した場合、無期雇用に 切り替わるため雇用を終了できない(無期転換) |
正社員への転換 | 有期雇用から期間の定めのない契約への転換 |
※ 有期契約の無期転換ルール
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算して5年を超えて繰り返し更
新された場合には、労働者も申込みにより、有期の契約が無期に転換します。
(労働契約法)
実務上で一番注意すべきは、当初の雇用期間が終了しても、更新等の手続きをすることなく、そのまま雇用が継続されている場合です。
これには、雇用契約書に「自動更新とする」とされている場合と、更新手続きをし忘れていたもしくは故意に行わない場合があります。
この場合、「以前と同じ労働条件にて、期間の定めのない雇用契約が締結された」と判断されるため、前回の契約が6か月だったからといって、「契約更新とみなした日から6か月後に契約終了」とはできなくなってしまいます。
従って、雇用契約書に「自動更新する」と書くことは避けるべきであり、有期労働契約については、その都度、改めて契約書を交わすという手続きを怠らないことは不可欠です。
つまり、会社として契約更新を厳格に行っているという実態が重要になります。
(2) 雇止めの注意点
雇止めとは・・・有期労働契約の期間満了時において、契約更新を拒絶すること
解雇とは・・・契約期間中に、使用者が労働者に対して、一方的に契約終了の意思表示を行うこと
有期契約における解雇は、無期労働契約の解雇よりもさらに厳格な解雇理由が求められており、「(相当な)やむを得ない事
由」がなければ解雇できません。
契約期間の定めをしている以上、その期間中の雇用は保障されるべきとの考えに基づいています。
雇止めは、基本的には契約期間の満了に過ぎないので、使用者が更新をしなかったとしても直ちに違法となるわけではありません。
しかし、xx有期雇用契約を更新してきた労働者や、有期雇用契約が更新されることを期待していた労働者を突然の雇止めから保護する必要があったため、そういった労働者を保護する判例が積み重ねられてきました。
これを「雇止め法理」と呼びますが、労働契約法の改正により、雇止め法理を明文化した19条が新設されました。
有期労働契約は、使用者が更新を拒否した場合、契約期間の満了により雇用が終了しますが(雇止め)、労働者保護の観点から次のケースでは無効となります。
・ 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
・ 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
つまり、何度も契約を更新しており、実質的には無期雇用契約している状態と変わらないケースや、有期労働契約者が「契約が更新されるだろう」と思うに足る理由があったにもかかわらず、契約更新が行われなかったケースでは、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されることになります。
【参考書式② 雇用契約期間満了通知書】
出典: 厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」より抜粋
(3) 有期労働契約の実務上の注意点
① 有期労働契約終了の合意書等を締結する
有期労働契約では、更新手続きが厳格性を欠いていたり、過去に反復更新されている有期労働契約に関しては雇止めのハードルが高くなります。
そのため、厳格な更新手続きを行うことや更新回数の把握を含めた有期契約労働者の労務管理が必要です。
雇止めが無効と判断されるリスクを回避する方法のひとつとして、契約期間満了時に有期労働契約が終了することについての合意書・確認書を締結する方法があります。
この合意書があれば、労使双方が合意して労働契約が終了したものとして雇止めが有効となる可能性が高まります。
【参考書式③ 有期労働契約解約・終了確認書】
② 更新上限条項を設ける
使用者は、「更新を3回までにする」といった更新条項を定めて、更新を拒むことがあります。更新上限条項を定める場合は、更新上限を契約内容として労働者が認識し、契約上限を超えて契約が更新されることの期待を持たせないことが大事です。
つまり、使用者は労働者に対して最初の契約締結時に、更新上限条項の内容を十分説明し、労働者の理解を得ることが大切です。また、更新上限条項が設けられている労働者については、その上限を遵守し、更新上限がきたら雇用を終了する運用を厳格にすることも重要です。
更新上限条項があってもそれを守らず更新したのであれば、結局更新上限の拘束性は弱いものになり、更新への合理的期待があるとされて雇止めの効力が否定される可能性があります。
③ 不更新条項
使用者は、有期契約労働者と有期契約を更新するときに、「次回は更新を行わない」といった不更新条項のある契約を締結することがあります。
労働者が不更新条項を十分に理解し、真に自由な意思で「更新しない」ことに同意したのであれば、不更新条項の効力は高まります。
不更新条項の入った有期労働契約を締結する際には、労働者に退職届をあらかじめ提出してもらうこと、必須ではありませんが退職慰労金等を特別に支給すること、個別面談や従業員説明会を実施して、不更新条項を入れる趣旨や不更新条項の内容を理解していただくことなど丁寧な対応をすることがお勧めです。
【参考書式④ 契約更新について】
【参考書式⑤ 契約不更新に関するお知らせ】
【参考書式⑥ 退職届】
3.雇用保険 離職票離職理由
離職
理由
離職区分
「特定受給資格者」
• 倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされた者
「特定理由離職者」
• 特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者
「一般の離職者」
特定受給者及び特定理由資格者に該当しない者
厚生労働省 ハローワーク 離職された皆様へ より抜粋
給付制限
自己都合の場合は2ヵ月。契約期間満了による離職や解雇の場合は給付制 限はありません。
「給付制限期間」は
令和2年10月1日以降離職者については5年間の うち2回までは給付制限 期間が2ヵ月になりました。
厚生労働省 ハローワーク 離職された皆様へ より抜粋
労働契約満了等による離職票の取り扱い
雇用期間 | 契約更新について | 本人の更新希望 | 受給資格扱い |
3年以上かつ更新1回以上 | 更新しないことを最初から通知 (雇止め通知有) | 有り | 契約期間満了による特定受給資格者 |
無し | 契約期間満了による受給資格者 | ||
更新しないことを最初に通知していない (雇止め通知無) | 有り | 会社都合(解雇同等)による特定受給資格者 | |
無し | 退職の申し入れをしていれば契約期間満了による受給資格者、申し入れをしていなければ自己都合退職扱いで給付制限有り | ||
3年未満 | 更新しないことを最初から通知 (雇止め通知有) | 有り | 契約期間満了による受給資格者 |
無し | 契約期間満了による受給資格者 | ||
契約更新の確約有り | 有り | 契約期間満了による特定受給資格者 | |
無し | 契約期間満了による受給資格者 | ||
契約更新の確約無し (更新する場合があるという表記など) | 有り | 契約期間満了による特定理由離職者※ | |
無し | 契約期間満了による受給資格者 |
「雇止め通知有」とは契約更新時に当該契約が最後の契約更新であることが明らかにされている場合
※ 3年未満で契約更新の確約が無く、本人に更新する意志があって更新を行わなかった場合
ご清聴ありがとうございました。