関係者 受給者 町村 県 Work 総合支庁福祉課 子ども政策室 5 資格喪失 調査・確認 資格喪失届 6 資格喪失処理 資格喪失処理 7 債権発生 債権発生通知書 債権発生 作成 通知書受理 (進達) 資格喪失 資格喪失 通知書受理 (資格喪失通知書) 通知書作成 返納依頼書 返納通知書(様式 返納通知書 (返納通知書・ 第2号)・返納依頼 納入(返納) (納入通知書) 納入通知書) 書(様式第3号)作 通知書作成 受理 受理 成 返納協力 返納指導 未納 返納 8 督促状送付...
第 9 児童扶養手当返納金(子ども政策室)
第 9 児童扶養手当返納金(子ども政策室)
<平成 20 年度末残高> 8,914,810 円
1. はじめに<児童扶養手当返納金の概要>
(1) 制度の目的
児童扶養手当は、母子福祉年金の補完制度として昭和 36 年に児童扶養手当法(以下、「法」という)を制定し創設された制度であり、父母の離婚や父の死などによって、父と生計を別にしている児童又は父が障害者である場合の児童を持つ母あるいは養育者を対象として手当を支給している。母子世帯等の生活の安定と自立を促進することにより、児童福祉の増進を図ることを目的としている。
山形県では、昭和 37 年1月1日から施行された同法、同法施行令(以下、「施行
令」という)及び昭和 47 年1月1日から施行された同法施行規則(以下、「施行規則」という)に基づき、児童扶養手当返納金にかかる事務手続を的確かつ円滑に進めることを目的として、平成 16 年4月1日に児童扶養手当返納金事務取扱要領(以下、「県取扱要領」という)を制定し運用している。
県が本手当について認定から支給等事務を行う対象は各町村であり、その窓口となっているのは各町村および県子ども政策室である。なお、市に居住する対象者に係る本手当については平成14年7月に各市へ移管している。
(2) 児童扶養手当の概要
児童扶養手当に係る支給対象や手当の金額等概要は以下のとおりである。
表1:児童扶養手当の支給概要
実施主体 | 市:各市町 町・村:県知事 |
支給対象 | ①父母が婚姻を解消した児童、②父が死亡した児童、③父が障害の状 態にある児童又は④父が生死不明な児童等を監護する母(母が監護しない場合はその児童を養育する者) |
手当額 | 全部支給:月額 41,720 円(年額 500,640 円) 一部支給:月額 9,850~41,710 円(年額 118,200 円~)加算額:第2子 5,000 円、第3子以降 3,000 円 |
所得制限 | 受給資格者本人及び扶養義務者の所得について次の通り所得制限限 度額が定められている。 | |||||
扶養親族及び扶 養対象配偶者数 | 全額支給 | 一部支給 | 配偶者・扶養 義務者 | |||
0 人 | 190,000 円 | 1,920,000 円 | 2,360,000 円 | |||
1 人 | 570,000 円 | 2,300,000 円 | 2,740,000 円 | |||
2 人 | 950,000 円 | 2,680,000 円 | 3,120,000 円 | |||
3 人 | 1,330,000 円 | 3,060,000 円 | 3,500,000 円 | |||
それ以降 | 1 人増につき 380,000 円増 |
(3) 児童扶養手当返納金の発生
児童扶養手当の支給要件に当てはまらなくなった場合、つまり上記(3)「児童扶養手当の概要」における支給対象①~④および所得制限の条件に合致しなくなった場合には、受給者自らが直ちに資格喪失の手続を取らなければならないこととされている(施行規則第 7 条参照)。
しかし、当該届出を故意または過失により失念していた場合には、資格喪失事由が発生した日から当該届出の提出(又は通報等)までの間に支払われた児童扶養手当が、不正受給部分とされ同返納金となる。具体的には次の事由に基づき、児童扶養手当返納金が発生することとなる。
⚫ 母等が婚姻したとき(事実婚を含む)
⚫ 公的年金を受給するようになったとき
⚫ 児童福祉施設及び社会福祉施設等に児童が入所し、母等に監護されなくなったとき
⚫ 手当支給されている住所からの転出 等
児童扶養手当法施行規則(抜粋)第 7 条(受給事由消滅の届出)
受給者は、児童手当の支給を受けるべき事由が消滅したときは、速やかに、様式第
5号による届書を市町村長に提出しなければならない。(後略)
2. 児童扶養手当返納金の概況
(1) 児童扶養手当返納金の性格
児童扶養手当返納金は、前項のとおり資格喪失事由が発生した日から受給消滅の届出提出(又は通報等)までに支給された同手当、すなわち不正受給部分であることから、民法の言う「不当利得」に相当するものと考えられる。
ここで不当利得とは、法律上の原因がないにもかかわらず、他者の財産等から利益を受け、他者に損失を及ぼした場合に、その者が負うべき利得の返還義務のこ
とをいう(民法第 703 条)。
民法(抜粋)
第 703 条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
児童扶養手当法(抜粋)
第 23 条(不正利得の徴収)
偽りその他不正の手段により手当の支給を受けた者があるときは、都道府県知事等は、国税徴収の例により、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収すること ができる。(後略)
一方、本返納金の根拠条文である児童扶養手当法は不正受給者に対し「国税徴収の例により」徴収できることとしており、公法上の債権であることを明らかにしている(法第 23 条参照)。
地方自治法(抜粋)
第 236 条(金銭債権の消滅時効)
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
2 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。 (後略)
また、公法上の債権の消滅時効期間は5年であり、かつ相手方の時効援用は不要である(地方自治法第 236 条)。児童扶養手当返納金の時効については、地方自治法の規定が適用されると解するのが一般的である。
(2) 児童扶養手当に係る事務の組織と流れ
① 組織体制
児童扶養手当の事務は、県庁内では子ども政策室が担当しており、実際の回収等渉外的業務は各総合支庁福祉主管課において行われている。
特に債権回収については、4つの各総合支庁に担当職員が1名ずつ配置されている。市に関してはすでに移管しているため、各市において債権回収を行っている。
② 未収金に係る手続
ⅰ)回収手続
県は、児童扶養手当返納金の事務について県取扱要領を定めている。同要領の概要を以下に示す。
児童扶養手当(県支給分)返納金事務取扱要領(抜粋、概要)第 1 債権が発生した時の事務処理
債権が発生したとき(支払期限未到来の手当に係る支払調整により対応できる場合は除く。)は、債権発生通知を作成し、債務者あての返納通知書を作成・送付する。
第2 履行延期申請の事務処理
1 返納は、原則として一括返納を債務者に指導するが、次の場合のみ履行延期を行う。
..
(1) 債権が発生し、一括返納が困難かつ返納につき特に誠意を有すると認めら
れるとき。 ..
(2) 債権が滞納しており、一括返納が困難かつ返納につき特に誠意を有すると
認められるとき。
2 債務者には、履行延期申請書に所得証明書、資産証明書および分割返納の場合は納入(返納)通知書を添付させる。
3 履行延期申請のあった場合は、資格調書を作成する。
4 1(1)の場合、第1に定める事務処理と履行延期申請の事務を平行して行う。
5 履行延期の承認に条件があった場合、その条件(納入)の遵守を債務者に指導する。
6 履行延期が承認された場合、直ちに債務証書(分割返済の場合は、分割弁済明細表を含む。)を債務者に提出させる。この場合、債務証書の日付は債務承認日以降である。
第3 債務の履行が延滞した場合等の事務処理
1 債権の保全及び債務の履行確保のため、債務者に係る調査、時効中断事由となる措 置及びその他必要な措置をとる。
2 納期限後未納となっている債権の取扱は次のとおりとする。
(1) 督促状の交付
納期限後も納入を確認できない債権については、納期限から20日以内に督促状を交付し、その納入指定期限は督促状発効日から10日以内とする。
(2) 催告状の交付
督促状を交付したが納入されない債権及び債務承認を行ったが納入未了の債権については、催告状を交付するものとする。
(3) 催促及び納入指導(以下、「催促等」という。)
催告状交付後も納入されない債権については、催促等を行う。
(4) 催促等の方法
① 呼び出しによる催促等
債務者に対し、日時を指定した呼出し文書を送付し、債務者との面談を行い、納入を催促するとともに、必要に応じ履行延期や分割納入金額の変更等納入方法の相談、必要書類の作成指導を行う。
② 自宅訪問による催促等
債務者が呼び出しに応じなかった場合は、自宅を訪問し、前①と同様の催促等を行う。但し、債務者が留守の場合は郵便受けに投函する。
③ 電話催促・相談
呼び出しや自宅訪問、又は特別な事由により直接面談できなかった債務者に対しては、電話で催促等を行う。
④ その他
必要に応じ債務者に対し適宜催促等を行い、適正な債権管理に努める。
(5) 債務者の住所不明に伴う追跡調査
債務者が住所不明となった場合は、速やかな債権の回収のため、その不明になる直前に居住していた市町村、本籍時市町村、親族、縁者、知人、転居先市町村等に照会を行い、転居先住所の追跡調査に努める。
第4 債務者から住所等変更届けの提出があった場合の事務処理(後略)
以下、上記規定等に基づく未収金回収等手続に係るワークフローを示す。
図1:未収金回収等手続に係るワークフロー
関係者 | 受給者 | 町村 | 県 | |||||||||
Work | 総合支庁福祉課 | 子ども政策室 | ||||||||||
5 | 資格喪失 | 調査・確認 | ||||||||||
資格喪失届 | ||||||||||||
6 | 資格喪失処理 | |||||||||||
資格喪失処理 | ||||||||||||
7 | 債権発生 | |||||||||||
債権発生通知書 | 債権発生 | |||||||||||
作成 | 通知書受理 | |||||||||||
(進達) | ||||||||||||
資格喪失 | 資格喪失 | |||||||||||
通知書受理 | (資格喪失通 知書) | 通知書作成 | ||||||||||
返納依頼書 | 返納通知書(様式 | |||||||||||
返納通知書 | (返納通知書・ | 第2号)・返納依頼 | 納入(返納) | |||||||||
(納入通知書) | 納入通知書) | 書(様式第3号)作 | 通知書作成 | |||||||||
受理 | 受理 | 成 | ||||||||||
返納協力 | 返納指導 | |||||||||||
未納 | ||||||||||||
返納 | ||||||||||||
8 | 督促状送付 | |||||||||||
納期限後20日以内 | 督促状 | 督促状交付 | ||||||||||
受理 | (様式7号) | |||||||||||
未納 | 未納状況通知 | |||||||||||
返納 | ||||||||||||
9 | 催促状送付 | 催促状受理 | 協力 | 催促状送付 (様式第8号) | 催促依頼・報告 | |||||||
未納 | 協力 | 催促 | ||||||||||
返納 | ||||||||||||
ⅱ)不納欠損処理手続
不納欠損処理について県取扱要領に特段の記載はない。したがって、不納欠損処理は山形県財務規則第 183 条に基づいて行っている。
第 183 条(不納欠損の手続)
歳入徴収担当者は、歳入について納付及び納入の義務が消滅したとき及び当該義務を消滅させたときは、不納欠損の手続をとらなければならない。
2 歳入徴収担当者(公所の歳入徴収担当者を除く。)は、前項の規定により不納欠損をしたときは、直ちに不納欠損通知書及び不納欠損内訳表により会計管理者に通知しなければならない。
3 公所の歳入徴収担当者は、第1項の規定により不納欠損をしたときは、直ちに不納欠損通知書及び不納欠損内訳表により出納員に通知するとともに、不納欠損報告書及び不納欠損内訳表により知事及び会計管理者に報告しなければならない。
4 歳入徴収担当者は、第1項の規定により不納欠損をしたときは、当該歳入の滞納者が所在不明の場合を除き、納付及び納入の義務が消滅した旨を納入義務消滅通知
書により滞納者に通知しなければならない。
なお、具体的には県庁子ども政策室担当者が、債権状況をエクセルにてデータ管理しており、当該データを毎月情報更新するとともに、毎年度末に時効成立したものを処理する手続を行っている。
(3) 根拠法令等
① 児童扶養手当法
② 児童扶養手当法施行令
③ 児童扶養手当法施行規則
④ 児童扶養手当(県支給分)返納金事務取扱要領
(4) 数値データ
児童扶養手当返納金について、数値データをを以下に示す。
なお、県は同返納金を現在エクセルにてデータ管理しているが、同データが平成 17 年度からのもののみ保管されているため、平成 16 年度以前のデータが一部不明となっている。
ⅰ)直近5年間の推移
表2-1:児童扶養手当返納金 発生償還等推移(単位:千円)
発生 | 償還 | 不納欠損額 | 未収金期末残高 | |
平成 16 年度 | (不明) | (不明) | - | 20,728 |
平成 17 年度 | 1,663 | 2,102 | ※ 8,106 | 12,183 |
平成 18 年度 | 3,720 | 3,194 | 492 | 11,881 |
平成 19 年度 | 2,354 | 2,239 | 691 | 10,890 |
平成 20 年度 | 1,754 | 1,443 | 2,286 | 8,914 |
※ 平成 17 年度の不能決算額が比較的多額となっているが、これは同年県監査委員指摘により過年度時効到来済みで未処理だった 6,246 千円を不納欠損処理したものが含まれている。
ⅱ)未収金残高の推移
表2-2:児童扶養手当返納金 残高推移(単位:千円)
未収金期末残高 | 期限未到来貸付金残高 | 未回収期末残高 | |
平成 16 年度 | 20,728 | (不明) | (不明) |
平成 17 年度 | 12,183 | 10,673 | 22,856 |
平成 18 年度 | 11,881 | 11,139 | 23,020 |
平成 19 年度 | 10,890 | 10,437 | 21,327 |
平成 20 年度 | 8,914 | 10,214 | 19,128 |
ⅲ)期限未到来貸付金残高の内訳
表2-3:児童扶養手当返納金 期限未到来貸付金残高の内訳
債務者 | 期限未到来貸付金残高 | 未収金残高 | |
1 | S氏 | 1,915,580 円 | 24,000 円 |
2 | O氏 | 1,724,800 円 | 0 円 |
3 | M氏 | 797,720 円 | 140,000 円 |
(※なお、平成 21 年 12 月末時点のデータである。)
3. 監査の方法と結果
(1) 監査の方法
平成 20 年度末時点の未収金残高から高額滞納者を抽出し、債務者の状況とこれに対する県の対応とが規程に基づき適時適切に手続されているか調査した。また、これに併せて不納欠損処理の正確性を検証した。その中で、高額免除者を抽出し、欠損処理及びそれまでの県の対応が規程に基づき適切に行われているか調査した。
抽出した対象者は以下のとおりである。
表3:児童扶養手当返納金 抽出者一覧
融資名 | 未収金期末残高 | サンプル No. | 抽出債務者 | 未収金期末残高 |
児 童 扶 養 | 8,914,810 円 | 児扶-1 | K氏 | 1,012,520 円 |
手 当 返 納 金 | 合計 | 1 件 | 1,012,520 円 (11.3%) | |
同平成 20 年不納欠損処理 | 2,286,730 円 | 児扶-2 | N氏 | 2,074,880 円 |
合計 | 1 件 | 2,074,880 円 (90.7%) |
(2) 監査の結果
① 平成 20 年度末 未収金残高について
債務者の状況と県の対応等は以下のとおりであった。
No. | 児扶-1 | 債務者 | K氏 | ||
未収金額 | 1,012,520 円 | 償還予定 | H15/3-20/7 | ||
発生額 | 2,831,480 円 | 発生日 | 平成 14 年 11 月 12 日(同居者所得制限) | ||
債務者の現状 | 病院に勤務。所得ある長男夫婦と同居。 | ||||
現在の主たる債務者 | 債務者本人 | 連帯保証人 | なし | ||
未収金発生までの経緯 | H8/3 | 認定、受給開始。 | |||
14/8 | 制限を超える所得のある父とH8/12 から事実上同居していることが判明し、返納金発生。 消滅時効により 5 年間分のみの請求であった (H9/8-14/7)。 | ||||
未収金発生からの対応 | H15/3- | 378,960 円入金あり。 | |||
15/8- | 手当再受給。手当支給月に返納する旨約束。 | ||||
15/12- | H15 年度は 53 万円、H16 年度は 48 万円、H17 年 度は 80 万円の入金であった。 | ||||
H17/12 | 最終入金。ここまでの入金総額 1,818,960 円。 | ||||
H18- | 年に数回電話等するが応対は 1,2 回。訪問等 面接は拒否されている様子。 | ||||
20/3 | 手当再受給終了。 | ||||
21/1- | 電話で面接を拒否される。文書での債務承認書、返済計画書の提出依頼はするものの、提出 なし。訪問も面接できず。 | ||||
県の回収可能性判定 | 時効完成前に債務承認書を提出するよう催告を継続していく が、制度に対する不満等もあり返済意欲が薄く、回収可能性は低い。 | ||||
債権保全状況 | 平成 17 年 12 月入金により時効中断中。以降、債務承認は行っ ていない。平成 22 年 12 月 29 日時効成立予定。 |
監査人の見解
① 当該債務につき、連帯保証人による保全がなされていない。
② 返納金未納部分があるにもかかわらず、その後再度手当の支給を受けている。支給額と未納部分は相殺される事務を行うべきである。
③ 債務承認等債権の保全手続が行われず、平成 22 年度に時効完成を予定している。
弁済または債務承認等による時効中断手続を早急に行うべきである。
② 平成 20 年度不納欠損処理について
No. | 児扶-2 | 債務者 | N氏 | ||
欠損処理額 | 2,074,880 円 | 償還予定 | H5/9-10/8⇒H10/10-15/8 | ||
発生額 | 2,094,880 円 | 発生日 | 平成 5 年 3 月 31 日(事実婚) | ||
債務者の現状 | 居酒屋経営も年々業況悪化。事実上の夫も収入なし。娘二人は それぞれ独立しているが、仕送り等なし。 | ||||
現在の主たる債務者 | (債務者本人) | 連帯保証人 | なし | ||
未収金発生までの経緯 | S63/9- | 認定、受給開始。 | |||
H5/3 | S63/8 から事実婚状態であることが判明。S63/ 9~H4/11 が過払となり返納金発生。 | ||||
5/8 | 債務承認書入手。 | ||||
未収金発生からの対応 | H5/9 | 履行延期手続により、納期を H5/9-10/8 とする。 | |||
6/1 | 最終入金。ここまでの入金総額 20,000 円。 | ||||
10/8 | 債務証書入手。 | ||||
10/9 | 再履行延期手続により、納期を H10/10-15/8 と するが、一度も入金なし。 | ||||
13/2 | 債務承認書入手。 | ||||
18/2 | 時効成立していたが、未処理。 | ||||
18/12、20/1 | 時効成立していたにもかかわらず、催促等手続 を行っていた。 | ||||
20/9 | 県はこの時点で時効成立と認識(起算日を最終 納入予定日として判断)。 | ||||
県の回収可能性判定 | 平成 20 年度不納欠損処理済。 | ||||
債権保全状況 | 平成 20 年 9 月 1 日時効成立。⇒平成 18 年に時効成立済み。 | ||||
監査人の見解 ① 平成 20 年 9 月に時効成立したものとして不納欠損処理しているが、時効起算日の |
平成 20 年度不納欠損処理額は 2,286,730 円であり、その9割を占める債務者 1名の状況と県の対応等は以下のとおりであった。
認識を誤っており、平成 18 年 9 月にすでに時効成立していた。
② 当該債務につき連帯保証人による保全がなされず、回収ないまま時効成立している。
③ 消滅時効期間の 5 年間分のみ返納金として請求すべきところ、5 年を超える部分も
徴求していた。
4. 意見
(1) 債権管理について
① 手続規定の再整備が必要である。【意見B】
県は、前述のとおり県取扱要領を定めているが、手続規定の不備により手続が行われないか、また曖昧な表現により区々な手続が行われる恐れがある。
例えば、同要領内「第3 債務の履行が延滞した場合等の事務処理」において、その1に時効中断措置の規定を置いているが、手続規定は督促・催告等の請求手続までしか整備されていない。時効中断のためには請求のみならず、債務者による承認が必要である。
また、2(4)には催促等の方法を具体的に示しているが、②自宅訪問において「郵便受けに投函」した後の手続が明確でない点、④「適正な」債権管理との曖昧な表現、さらに(5)では追跡調査をしても転居先を特定できなかった場合の手続が明記されていないなど、規定の不備等が明らかである。
また、児童扶養手当に係る不当利得に対しては、児童扶養手当法に罰則規定があり、かつ刑法上の詐欺罪に問われるが、当該手続規定がない。
児童扶養手当(県支給分)返納金事務取扱要領(抜粋)第3 債務の履行が延滞した場合等の事務処理
1 債権の保全及び債務の履行確保のため、債務者に係る調査、時効中断事由となる措 置及びその他必要な措置をとる。
2 納期限後未納となっている債権の取扱は次のとおりとする。(中略)
(4)催促等の方法
②自宅訪問による催促等
債務者が呼び出しに応じなかった場合は、自宅を訪問し、前①と同様の催促等を行う。但し、債務者が留守の場合は郵便受けに投函する。
④その他
必要に応じ債務者に対し適宜催促等を行い、適正な債権管理に努める。
(5)債務者の住所不明に伴う追跡調査
債務者が住所不明となった場合は、速やかな債権の回収のため、その不明にな
県は児童扶養手当返納金につき、その手続規定を再度検証し、曖昧な表現の内明確な手続基準に改正した上で運用すべきである。
る直前に居住していた市町村、本籍時市町村、親族、縁者、知人、転居先市町村等に照会を行い、転居先住所の追跡調査に努める。
児童扶養手当法(抜粋)第 35 条(罰則)
偽りその他不正の手段により手当を受けた者は、3年以下の懲役又は 30 万円以下の
罰金に処する。ただし、刑法(明治 40 年法律第 45 号)に正条があるときは、刑法による。
刑法(抜粋)
第 246 条(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
第 250 条(未遂罪)
この章の罪の未遂は、罰する。
(2) 債権の回収について
① 返納金未納部分のある受給者がその後再度手当の支給を受けている。【指摘事項】
県は、児童扶養手当返納金の未納部分が多額にあるにもかかわらず、その後児童扶養手当の要件を満たすに至り再度手当支給の申請を行った受給者に対し、未納部分はそのままに手当の支給を行っていた。
この点、返納金未納部分と将来の手当支給額とは相殺される関係にあることを、法は明らかにしている(法第 31 条)が、県は当該債権債務の相殺に係る実務を行った実績はない。
これは主に、当該法の規定が容認規定とされている点、本手当が児童の福祉増進に係る拠出である点、そして県取扱要領に当該手続に関する規定がない点といった 3 点に起因するものと考えられる。
しかし、債権の性格として児童扶養手当返納金が返還されるべき不当利得と位置付けられることを考慮すると、法の精神に基づいて相殺すべきであると考える。
したがって県は、受給申請者に児童扶養手当返納金に未納部分があった場合、当該未納部分が明らかに回収可能性であると判断される場合を除き、申請に基づきこれから支給される手当と返納金を相殺する事務を行うべきである。この際、県取扱要領等に当該事務に係る手続等を新たに新設し、当該規定に基づき手続が行われていることを確かめる必要がある。
児童扶養手当法(抜粋)
第 31 条(手当の支払の調整)
手当を支給すべきでないにもかかわらず、手当の支給としての支払が行なわれたときは、その支払われた手当は、その後に支払うべき手当の内払とみなすことができる。
(後略)
(3) 債権の保全について
① 連帯保証人等による債権の保全がなされていない。【意見A】
履行延期申請書(抜粋)
4その他の条件
(3)県において、債務者の資力状況、その他の事情の変更により必要があると認めて、債務者に対して担保を提供させ、又は延滞利息を付する旨の請求をしたときは、その請求するところに従って担保を提供し又は利息を付して支払をしなければならない。
児童扶養手当返納金に係る事務において、債務者から入手する書類は履行延期申請書または債務証書である。そのいずれにも連帯保証人の記名押印欄はなく、また、xxを請求する場合がある旨の条件が両書類に記載あるが(下記参照)、当該事務が行われず、当債権に係る担保は基本的に付されていない状況にある。
債務証書(抜粋)
第4 乙(債務者)は、担保の提供を免除され、又は延滞利息を付さないことができることとされた場合においても、甲(県)において乙の資力の状況その他の事情の変更により必要があると認めて、乙に対し、担保を提供し、又は延滞利息を付する旨の請求をしたときは、その請求するところに従って担保を提供し、又は利息を付して支払をしなければならないこと。
一方、債権の履行延期に係る事務としては山形県財務規則が次のように規定し、原則として担保提供を求めた上で、不当利得の場合には悪意・重過失によらないことを 1 つの条件としている。
この点、まず民法上の不当利得については善意と悪意の区別はあるが、故意と過失による区別はなく、「故意又は重大な過失によらない不当利得」との記述は正確なものとはいえない。
また、当該返納金はある資格喪失事由により発生するが、受給者の置かれている状況がこれに該当するかの判断は主観的に行われ、県による判断と受給者による判断とに齟齬(そご)が発生する可能性がある。したがって、不当利得の発生を知
っていた(悪意)か否かを立証することは非常に困難であるのも事実である。
山形県財務規則(抜粋)
第 192 条(履行延期の特約等に係る措置)
債権管理者は、債権について履行延期の特約等をするときは、担保を提供させ、かつ、延納利息を付さなければならない。ただし、(中略)その他特別の事情があると認められるときは、担保の提供を免除し、又は延納利息を付さないことができる。
(後略)
第 193 条(担保の提供を免除することができる場合等)
前条第1項ただし書の規定により担保の提供を免除することができる場合は、次の各号に掲げる場合に限るものとする。
(1) 債務者から担保を提供させることが県の事務又は事業の遂行を阻害する等公益上著しい支障を及ぼすこととなるおそれがあるとき。
(2) 同一債務者に対する債権金額の合計額が 10 万円以内であるとき。
(3) 履行延期の特約等をする債権が債務者の故意又は重大な過失によらない不当利 得による返還金に係るものであるとき。
(4) 担保として提供すべき適当な物件がなく、かつ、保証人となるべき者がないとき。
地方自治法施行令(抜粋)
第 171 条の4(債権の申出等)
(中略)
2 前項に規定するもののほか、普通地方公共団体の長は、債権を保全するため必要があると認めるときは、債務者に対し、担保の提供(保証人の保証を含む。)を求 め、又は仮差押え若しくは仮処分の手続をとる等必要な措置をとらなければならない。
一方、地方自治法施行令は、債権保全上必要ある場合には担保提供を請求すべき旨規定している。したがって、当該債権につきxxする必要があるか否かが問題となる。
そもそも児童扶養手当は、父と生計を同じくしていない家庭を対象とした子育て支援のための手当である。また、当該手当の支給条件に所得制限が設けられていることから、支給対象となる家庭はxx的に所得が少ないはずである。したがって、当該手当に係る返納金がある資格喪失事由で発生したとしても、所得の少ないであろう母等からの徴収が基本となり、その回収可能性は高いとは言えず、貸し倒れリスクは比較的高いケースが多いものと考えられる。
また、現在の事務は県取扱要領の規定から、債権発生時点において県から債権
発生通知等書面が通知されるが、債務者から入手する資料は何もない手続となっている(図1ワークフロー参照)。
以上から、県は児童扶養手当返納金について、次の手続・条件を規定等に反映することを検討し、さらに規定表現等の見直しを行った上で、債権の保全に努める必要がある。
⚫ 履行延期申請書や債務承認書には、債務者のほか、児童扶養手当の実質的利益享受者であるx等を連帯保証人として記名押印する。
⚫ 債権発生時に県と債務者との間の法律関係に係る認識を一致させ、債権発生当初から連帯保証人によるxxを明確にする債務承認書等書面を入手する。
(4) 不納欠損処理について
① 時効の認識を誤り、成立後数年間不納欠損処理が行われていない。【指摘事項】県は、平成 20 年度の当該債権について 2,286,730 円(2 件)の不納欠損処理を
しているが、そのうちの 1 件 2,074,880 円は数年前に時効成立済みの債権であった。
この事実は平成 17 年度監査委員監査においても検出指摘されていた。
この点、時効について県取扱要領に次のように規定されているが、この表現により担当者を混乱させている可能性がある。
児童扶養手当(県支給分)返納金事務取扱要領(抜粋)第5 参考事項
1 公法上の金銭債権の時効は5年とされている。なお時効の起算時点は、つぎのとおりである。
一括納入の場合 納期限の翌日から起算して5年
分割納入の場合 履行延期申請書及び債務証書に記載している履行期限から起 算して5年
2 時効中断の効力を有する書面等は次のとおりである。
(1) 債務承認書(民法第147条)
(2) 履行延期申請書・債務証書
(3) 納入通知書(地方自治法第236条第4項)
(4) 督促状(地方自治法第236条第4項)
(5) 一部弁済(債務者が返納金債権の一部としての弁済であることを認めて弁済すれば、残額について債務承認となり、これが時効中断の効力を有することになる。)
債権の時効については、次のように理解するのが一般的である。
ⅰ)債権の単位について
当該債権は不当利得返還請求権の行使であるから、県が債務者宛てに提出する請求に係る通知「児童扶養手当返納について」に記載された金額が、基本的な債権の単位と考えられる。
ⅱ)分割納入債権を滞納した際の債権単位について
児童扶養手当(県支給分)返納金事務取扱要領(抜粋)第2 履行延期申請の事務処理
2 債務者には、履行延期申請書に次の書類を添付させること。(中略)
6 履行延期の承認がなされた場合は、総合支庁は直ちに債務証書(分割して返済する場合においては、債務証書に添付する分割弁済明細表を含む。)を債務者に提出させ、子ども家庭課に送付すること。
県取扱要領には、履行延期手続に次のような規定があり、そこで要求される履行延期申請書及び債務証書(以下、「申請書等」という)には繰上償還の条件が付されている。
履行延期申請書(抜粋)
4その他の条件
(2)県は次に掲げる場合には、この債権の全部または一部について延長された履
...行期限を繰り上げることができる。
① 県において、債務者が県の不利益にその財産を隠し、損ない、もしくは処分したとき、もしくはこれらのおそれがあると認めるとき、又は虚偽に債務を負担する行為をしたと認めるとき。
② 債務者が分割された弁済金額についての履行を怠ったとき。(後略)
債務証書(抜粋)
第3 乙(債務者)は、甲(県)において乙が次に掲げる場合に該当し、又は該当
........
た履行期限を繰上げる旨の指示をしたときは、その指示に従うこと。
(1) 乙が甲の不利益に乙の財産を隠し、損ない、もしくは処分したとき、もしくはこれらのおそれがあると認めるとき、又は虚偽に債務を負担する行為をしたとき。
(2) 乙が分割された弁済金額についての履行を怠ったとき。(後略)
するものと認めて、上記第1(債務)の金額の全部又は一部についてその延長され
上記規定等に基づいて分割返納金の滞納が発生したときに繰上償還を請求している場合、申請書等に分割納入による償還期限が定められていたとしても、滞納の時点で債権者が一括請求を行うことにより期限の利益を喪失し、同契約における残債全額を一体と見ることになる。当該請求手続による効果は、消滅
時効を検討する際、残債全体を一体と見ることによって債権の保全状況を判断し易くなり、その後の保全手続を適時適切に行える点にある(次項ⅲ参照)。
...
ただし、ここで問題となるのは容認規定、いわゆる「できる」規定である。
容認規定の場合、県担当者による判断の余地があるため、官僚制組織における保守的な考えから自ら手続をしないインセンティブが働く可能性がある。
事実、本債権に係る実務において、返納金の滞納が発生した場合に繰上償還を請求した実績はない。
この点、県取扱要領において本返納金は「原則として一括返納」であることとしており、繰上償還を請求する手続は妥当と考えられる。
なお、同県取扱要領において、履行延期が認められるのは返納につき「特に
..
誠意を有する」ときとの表現があるが、「誠意」があるか否かを客観的に判断す
る基準が明確でなく、担当者により手続が区々となる恐れがあることから手続規定として馴染まない。基準の明確化が必要であろう。
児童扶養手当(県支給分)返納金事務取扱要領(抜粋)
第2 履行延期申請の事務処理
1 返納については、総合支庁は原則として一括返納を債務者に指導するものとするが、次の場合のみ、履行延期に係る事務処理を行うものとする。
(1) 債権が発生し、債務者の調査を行った結果、一括返納することが困難であ
..
り、かつ返納につき特に誠意を有すると認められるとき。
(2) 債権が滞納しており、債務者の調査を行った結果、一括返納することが困
..
難であり、かつ返納につき特に誠意を有すると認められるとき。
したがって、県は返納金の滞納が発生したときには必ず繰上償還を請求するよう県取扱要領等に規定を置き、また、曖昧な表現のない規定の下で運用することが肝要である。
ⅲ)時効の起算日について
時効の起算日についての一般的な法解釈(民法第 166 条参照)は次表のとおりである。
表8:時効起算日の一般的解釈
返済期日 | 返済 | 起算日 | |
① | 定めない | 1 度もない | 契約日の翌日 |
② | 定めない | 1 回以上あり | 最後に返済した日の翌日 |
③ | 定めている | 1 度もない | 最初の返済予定日の翌日 |
④ | 定めている | 1 回以上あり | 最後に返済した次の返済予定日の翌日 |
民法(抜粋)
第 166 条(消滅時効の進行等)
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。
2 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
履行延期申請書等に添付される分割弁済明細表に基づいた分割返納において、その償還の一部を怠った場合、県から繰上償還請求することによって、滞納時 点での残債全額を一体と見る効果があることは前述のとおりである。
そしてこの債権に係る時効起算日は、表の解釈に基づくと「返済期日を定めている(滞納発生日に一括返済)」債権かつ「返済が一度もない」債権と考えられるため、「最初の返済予定日の翌日」、すなわち滞納発生日の翌日となる(図
2参照)。
また、申請書等提出後一度も入金がない場合にも、同様に「返済期日を定めている」債権かつ「返済が一度もない」債権であるから、「最初の返済予定日の翌日」、すなわち第 1 回返済日の翌日が時効起算日となる。
その後、一部でも入金があるたびに、残債全体を対象として、その入金日の翌日が新たな時効起算日となり、保全手続が明確かつ簡便に行える効果がある。
返済予定⇒ 第 1 回
第 2 回
第 3 回
第 4 回
最終回
x
図2:分割納入債権の時効起算点
納付済 | |||||
納付済 | 一部納付 | ||||
▲ ▲ 約日 第 1 回納付 | △ 第 2 回一部納付 · 翌日が時効起算点 | ||||
納付済 | 残債全体を一体と見る |
以上3点を現在の債務者に当てはめると、平成 22 年 1 月時点ですでに時効成立している恐れのある債務を次表のように検出した。
表9:未収金のうち時効成立済と考えられる債権
債務者 | 金額(円) | 時効の状況 | 時効完成予定 | あるべき予定 | |
1 | E氏 | 378,960 | 最終入金後 5 年経過 | H23/5/1 | H18/10/23 |
2 | I氏 | 508,440 | 履行延期後入金なし | H25/8/1 | H20/8/1 |
3 | S氏 | 580,000 (期限未到来あり 1,485,170 円) | 履行延期後入金なし | H26/6/1 | H21/6/1 |
以上より県は、債権管理担当者が時効期間について誤った理解のうえで処理し、消滅時効が成立しないよう規定等の記載を修正し、正しく運用しなければならない。また、期限未到来部分のある債務者に対しては、債務承認等保全手続を速やかに行 うべきである。
さらに当該消滅時効に限らず、最新の判例等をフォローした上で定期的な規定の見直しを行うべきである。
② 時効管理しているエクセルデータ上の検証が行われていない。【意見A】
時効の処理は、各総合支庁徴収担当者が行っているわけではなく、県庁内子ども政策室担当者がエクセルデータにて一覧を作成し、適宜各総合支庁からの情報を更新しながら管理している。
しかし、前出①の観点から担当者データを再度見直すと時効等について誤りが検出されている(前出表9参照)。
この原因は、第 1 に規定等の記述内容の誤りが担当者をミスリードしている点、
第 2 に前項指摘内容につき担当者が理解していない点等が考えられるが、管理データのチェックが行われていない点も見逃してはならない。
システムを通さず、担当者がエクセル等ソフトウェアによって作成した資料等は、表計算式の誤りや入力ミス等により正確性を欠く恐れがある。また、担当者自らの正確性チェックでは気がつかない重大な誤りがあることも一般的に多い。
また、当該データは上書更新されることも多いことから、紙面での資料保存のみならず、定期的なデータの保存によりデータ保全が行われるべきである。
県は、担当者の作成した資料の正確性を担保するよう、作成者以外の上xxに よる検証を定期的に行い、また定期的なデータ保全を行うことを検討すべきである。
(5) 延納利息について
① 延納利息を決算上計上していない。【意見B】
県は、児童扶養手当返納金についてその納付が滞った場合においても、延納利
息を課していない事務を行っている。
山形県財務規則(抜粋)
第 192 条(履行延期の特約等に係る措置)
債権管理者は、債権について履行延期の特約等をするときは、担保を提供させ、かつ、延納利息を付さなければならない。ただし、令第 171 条の6第1項第1号に該当する場合その他特別の事情があると認められるときは、担保の提供を免除し、又は延納利息を付さないことができる。
(中略)
4 第1項の規定により付する延納利息は、履行期限を延長する期間の日数に応じ、年
3.6 パーセントの割合で計算した額とする。ただし、履行延期の特約等をする事情を参酌すれば不当に又は著しく負担の増加をもたらすこととなり、その割合によることが著しく不適当である場合は、その割合を下る割合によることができる。
この点、山形県財務規則は次のように規定し、履行延期等の特約を付した債権について延納利息を徴することを前提としている。
地方自治法施行令(抜粋)
第 171 条の 6(履行延期の特約等)
普通地方公共団体の長は、債権(強制徴収により徴収する債権を除く。)について、次の各号の一に該当する場合においては、その履行期限を延長する特約又は処分をすることができる。この場合において、当該債権の金額を適宜分割して履行期限を定めることを妨げない。
一 債務者が無資力又はこれに近い状態にあるとき。 (後略)
履行延期申請書(抜粋)
4その他の条件
(3)県において、債務者の資力状況、その他の事情の変更により必要があると認めて、債務者に対して担保を提供させ、又は延納利息を付する旨の請求をしたときは、その請求するところに従って担保を提供し又は利息を付して支払をしなければならない。
これを受け、県取扱要領では履行延期手続で要求される履行延期申請書及び債務証書(以下、「申請書等」という)に利息の条件が付されているが、当該事務が行われた実績はない。
債務証書(抜粋)
第4 乙(債務者)は、担保の提供を免除され、又は延納利息を付さないことができることとされた場合においても、甲(県)において乙の資力の状況その他の事情の変更に
より必要があると認めて、乙に対し、担保を提供し、又は延納利息を付する旨の請求をしたときは、その請求するところに従って担保を提供し、又は利息を付して支払をしな
ければならないこと。
そもそも、当該債権の性格は公法上の債権であることは前述のとおりであり、原則として延納利息を課するのがあるべき手続と考える。しかし、一方で前出の地方自治法施行令および地方自治法上に延納利息の免除条件が設定されていることから、当該条件に該当していることが明らかな場合に限り、当該利息を免除する事務を行うことが妥当である。
したがって、県は延納利息を決算書に計上し、無資力等を明らかに証明できる児童扶養手当返納金に限り、当該利息を免除する事務を行うよう手続規定等の見直しを行うべきである。なお、「山形県税外収入金延滞金等徴収条例」に児童扶養手当に係る債権が定められていないため、当該条例の改正が必要となる。
地方自治法(抜粋)
第 15 条の 7(滞納処分の停止の要件等)
地方団体の長は、滞納者につき次の各号の一に該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができる。
一 滞納処分をすることができる財産がないとき。
二 滞納処分をすることによつてその生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。三 その所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるとき。
(中略)
4 第 1 項の規定により滞納処分の執行を停止した地方団体の徴収金を納付し、又は納入する義務は、その執行の停止が三年間継続したときは、消滅する。
5 第 1 項第一号の規定により滞納処分の執行を停止した場合において、その地方団体の徴収金が限定承認に係るものであるときその他その地方団体の徴収金を徴収することができないことが明らかであるときは、地方団体の長は、前項の規定にかかわらず、その地方団体の徴収金を納付し、又は納入する義務を直ちに消滅させることができる。
第10 過年度医業未収金(病院事業局)
名称 | 平成 20 年度末未収金残高(円) | |
1 | 平成 20 年度保険者未収金 | 4,501,595,420 |
2 | 平成 20 年度個人未収金 | 400,176,234 |
3 | 過年度個人未収金 | 335,282,360 |
4 | 医業外未収金等 | 84,393,992 |
合計 | 5,321,448,006 |
<平成 20 年度末残高>山形県病院事業会計
注)1.保険者未収金:診療報酬のうち保険者負担分の未収金 2.個人未収金:診療報酬のうち個人負担分の未収金
3.過年度個人未収金:平成 19 年度までの個人未収金
4.医業外未収金等:国や一般会計からの補助金等
1.はじめに
(1)県立病院の概要
県立病院は、「県民に安心・信頼・高度の医療を提供し、県民医療を守り支えていくこと」が負託されており、その目的のために山形県では平成 21 年度現在 4 病院(中央病院、新庄病院、河北病院、鶴岡病院)が整備、運営されている。各県立病院の概況は次表のとおりである。
表1:県立病院の概況(平成 21 年 4 月 1 日現在)
一般病院 | 精神病院 | |||
中央病院 | 新庄病院 | 河北病院 | 鶴岡病院 | |
所在地 | 山形市大字xx | xx市若葉町 | xx山郡xx町xx字月山 堂 | xx市xx字xx |
開設等年月 | 昭和 28 年 4 月移管 | 昭和 27 年 4 月移管 | 昭和 24 年 5 月移管 | 昭和 27 年 12 月新設 |
前身 | 国立病院 | 社会保険協会 | 日本医療団 | ― |
診療科目 | 内科、心療内科、精神科、神経内科、循環器科、小児科、 外科、整形外科、 | 内科、神経内 科、循環器科、小児科、外科、 整形外科、形成 | 内科、神経内 科、小児科、外科、整形外科、 脳神経外科、皮 | 精神科、神経科、心療内科 |
形成外科、脳神経 | 外科、脳神経外 | 膚科、泌尿器 | |||
外科、呼吸器外科、 | 科、皮膚科、泌 | 科、産婦人科、 | |||
心臓血管外科、皮 | 尿器科、産婦人 | 眼科、耳鼻咽喉 | |||
膚科、泌尿器科、 | 科、眼科、耳鼻 | 科、放射線科、 | |||
産婦人科、眼科、 | 咽喉科、放射線 | 麻酔科 | |||
耳鼻咽喉科、放射 | 科、麻酔科 | ||||
線科、歯科口腔外 | |||||
科、麻酔科 | |||||
許可病床 数 | 一般 | 661 | 463 | 219 | ― |
精神 | ― | ― | ― | 294 | |
感染症 | 2 | 2 | 6 | ― | |
計 | 663 | 465 | 225 | 294 | |
常 | 医師 | 83 | 44 | 34 | 8 |
勤 | 看護師 | 619 | 307 | 183 | 124 |
職 | 薬剤師 | 18 | 14 | 11 | 3 |
員 | 臨床検査技師 | 34 | 21 | 15 | 2 |
数 | 診療放射線技 師 | 21 | 13 | 10 | ― |
21 | 臨床工学技士 | 4 | 2 | ― | ― |
年 | 理学療法士 | 2 | 2 | 2 | ― |
5 | 作業療法士 | 1 | 2 | ― | 4 |
月 | 栄養士 | 6 | 4 | 3 | 3 |
現 | |||||
調理師 | 26 | 19 | 12 | 8 | |
在 | |||||
事務 | 38 | 25 | 22 | 13 | |
その他 | 19 | 11 | 9 | 11 | |
計 | 871 | 464 | 301 | 176 |
(2) 県立病院の経営状況
地方公共団体の病院事業は一般会計から独立して会計を行っており、平成 20 年 度山形県病院事業会計における決算概況(決算報告書および貸借対照表)は次表の 通りとなっている。表2「平成 20 年度山形県病院事業 決算報告書」【実質収支】から分かる通り、山形県における病院事業経営は実質収支がマイナスの状況にあり、平成 21 年度予算では実質収支約10億円の赤字に上っている。
表2:平成 20 年度山形県病院事業 決算報告書
【収益的収支の部】 (単位:千円)
平成 20 年度 | 平成 21 年度 | ||||
当初予算 | 実績 | 当初予算 | |||
収益的収入 | 医業収益 | 26,382,962 | 25,471,578 | 26,925,463 | |
入院収益 | 18,631,370 | 17,823,359 | 19,116,708 | ||
外来収益 | 6,723,483 | 6,569,197 | 6,722,137 | ||
その他 | 1,028,109 | 1,079,021 | 1,086,618 | ||
医業外収益 | 6,046,653 | 6,130,284 | 6,037,334 | ||
特別利益 | 11,887 | 54,257 | 14,053 | ||
計 a | 32,441,502 | 31,656,120 | 32,976,850 | ||
収益的支出 | 医業費用 | 31,757,543 | 30,888,134 | 31,899,049 | |
給与費 | 19,204,633 | 18,519,174 | 18,979,489 | ||
材料費 | 7,150,657 | 7,000,071 | 7,223,412 | ||
経費 | 4,455,050 | 4,457,583 | 4,652,074 | ||
減価償却費 | 676,360 | 669,604 | 709,821 | ||
資産減耗費 | 15,574 | 21,603 | 74,178 | ||
研究研修費 | 255,269 | 220,098 | 260,075 | ||
医業外費用 | 988,720 | 1,365,582 | 1,371,919 | ||
特別損失 | 195,269 | 177,602 | 203,882 | ||
予備費 | 2,000 | ― | 2,000 | ||
計 b | 32,943,532 | 32,431,320 | 33,476,850 | ||
総収支:a-b | ▲502,030 | ▲775,199 | ▲500,000 | ||
減価償却引当前収支 A | 303,273 | 26,599 | 414,913 |
【資本的収支の部】 (単位:千円)
平成 20 年度 | 平成 21 年度 | ||||
当初予算 | 実績 | 当初予算 | |||
資本的収 入 | 企業債 | 1,192,000 | 632,700 | 635,200 | |
出資金 | 61,837 | 61,837 | 63,777 | ||
負担金 | 1,405,265 | 1,396,850 | 1,452,895 | ||
その他 | 891 | 15,621 | ― | ||
計 c | 2,659,993 | 2,107,008 | 2,151,872 | ||
資本的支出 | 建設改良費 | 771,626 | 702,346 | 652,286 | |
資産工事費 | 198,285 | 128,672 | 135,286 | ||
資産購入費 | 573,341 | 573,674 | 517,000 | ||
企業債償還金 | 2,198,445 | 2,198,338 | 2,427,367 | ||
退職給与費 | 500,000 | 105,327 | 500,000 | ||
計 d | 3,470,071 | 3,006,012 | 3,579,653 | ||
資本的収支補填額 B=c-d | ▲810,078 | ▲899,003 | ▲1,427,781 |
【実質収支】 (単位:千円)
平成 20 年度 | 平成 21 年度 | ||
当初予算 | 実績 | 当初予算 | |
減価償却引当前収支 A | 303,273 | 26,599 | 414,913 |
資本的収支補填額 B | ▲810,078 | ▲899,003 | ▲1,427,781 |
実質収支 A+B | ▲506,805 | ▲872,404 | ▲1,012,868 |
<平成 21 年度予算は平成 21 年度事業計画概要から抜粋>
表3:平成 20 年度 病院事業貸借対照表(単位:千円)
資産の部 | 負債の部 | ||||
1 固定資産 | 1 流動負債 | ||||
(1)有形固定資産 | (1)未払金 | 2,803,002 | |||
土地 | 3,824,926 | (2)預り金 | 155,651 | ||
建物 | 36,907,974 | (3)その他流動負債 | 6,000 | ||
構築物 | 1,425,272 | 流動負債合計 | 2,964,654 | ||
器械備品 | 10,365,349 | 負債合計 | 2,964,654 | ||
車両 | 12,651 | 資本の部 | |||
放射性同位元素 | 38,589 | 1 資本金 | |||
その他有形固定資産 | 7,695 | (1)自己資本金 | 22,961,286 | ||
建設仮勘定 | 81,658 | (2)借入資本金 | |||
有形固定資産合計 | 52,664,117 | 企業債 | 37,008,197 | ||
(2)無形固定資産 | 借入資本金合計 | 37,008,197 | |||
電話加入権 | 11,665 | 資本金合計 | 59,969,484 | ||
無形固定資産合計 | 11,665 | 2 剰余金 | |||
固定資産合計 | 52,675,783 | (1)資本剰余金 | |||
2 流動資産 | 受贈財産評価額 | 299,243 | |||
(1)現金預金 | 3,182,198 | 補助金 | 1,055,603 | ||
(2)未収金 | 5,321,448 | 負担金 | 17,113,132 | ||
(3)貯蔵品 | 102,206 | その他資本剰余金 | 474,182 | ||
(4)前払費用 | 20 | 資本剰余金合計 | 18,942,161 | ||
(5)その他流動資産 | 94 | (2)利益剰余金 | |||
流動資産合計 | 8,605,968 | 当年度未処理欠損金 | 19,073,960 | ||
3 繰延資産 | 利益剰余金合計 | ▲19,073,960 | |||
(1)退職給与費※ | 105,327 | 剰余金合計 | ▲131,798 | ||
(2)控除対象外消費税額 | 1,415,261 | 資本合計 | 59,837,685 | ||
繰延資産合計 | 1,520,588 | ||||
資産合計 | 62,802,340 | 負債資本合計 | 62,802,340 |
※繰延資産(1)退職給付費は、一般会計からの振替未了(未収入)を表す。
平成 20 年度末の病院事業貸借対照表は上記表3の通りであるが、本表では借金を意味する企業債が資本とされているため、これを企業会計における貸借対照表に修正すると次表の通りとなる(なお、勘定科目の配列方法は維持する)。
表4:平成 20 年度 修正版病院事業貸借対照表(単位:千円)
資産の部 | 負債の部 | ||||
1 固定資産 | 1 固定負債 | ||||
(1)有形固定資産 | (1)企業債 | 34,580,830 | |||
土地 | 3,824,926 | 固定負債合計 | 34,580,830 | ||
建物 | 36,907,974 | 2 流動負債 | |||
構築物 | 1,425,272 | (1) 1 年内返済企業債 | 2,427,367 | ||
器械備品 | 10,365,349 | (2)未払金 | 2,803,002 | ||
車両 | 12,651 | (3)預り金 | 155,651 | ||
放射性同位元素 | 38,589 | (4)その他流動負債 | 6,000 | ||
その他有形固定資産 | 7,695 | 流動負債合計 | 5,392,021 | ||
建設仮勘定 | 81,658 | 負債合計 | 39,972,851 | ||
有形固定資産合計 | 52,664,117 | 資本の部 | |||
(2)無形固定資産 | 1 資本金 | ||||
電話加入権 | 11,665 | (1)自己資本金 | 22,961,286 | ||
無形固定資産合計 | 11,665 | 資本金合計 | 22,961,286 | ||
固定資産合計 | 52,675,783 | 2 剰余金 | |||
2 流動資産 | (1)資本剰余金 | ||||
(1)現金預金 | 3,182,198 | 受贈財産評価額 | 299,243 | ||
(2)未収金 | 5,321,448 | 補助金 | 1,055,603 | ||
(3)貯蔵品 | 102,206 | 負担金 | 17,113,132 | ||
(4)前払費用 | 20 | その他資本剰余金 | 474,182 | ||
(5)その他流動資産 | 94 | 資本剰余金合計 | 18,942,161 | ||
流動資産合計 | 8,605,968 | (2)利益剰余金 | |||
3 繰延資産 | 当年度未処理欠損金 | 19,073,960 | |||
(1)退職給与費 | 105,327 | 利益剰余金合計 | ▲19,073,960 | ||
(2)控除対象外消費税額 | 1,415,261 | 剰余金合計 | ▲131,798 | ||
繰延資産合計 | 1,520,588 | 資本合計 | 22,829,488 | ||
資産合計 | 62,802,340 | 負債資本合計 | 62,802,340 |
ここで、流動資産とは通常 1 年以内に資金化あるいは費用化される資産をいい、
流動負債とは通常 1 年以内に金銭の支払義務または財貨役務の給付義務を負う負債をいう。したがって、流動資産(8,605,968 千円)から流動負債(5,392,021 千円)を差し引いた短期的な返済財源(理論値)は約32億円となる。
前述の通り、平成 21 年度予算における単年度実質収支がおよそマイナス10億
理論的資金余裕割合= 短期的返済財源
単年度実質収支
(8,605,968 千円-5,392,021 千円)
=
1,012,868 千円
3,213,947 千円
=
1,012,868 千円
≒ 3.17(年)
円であることから、理論的には現状の病院運営を続けた場合、少なくとも4年後には病院事業が資金ショートすることを意味している。
なお、本報告公表前の平成 22 年 2 月に県との間で事前協議を行ったが、当該指
摘に対し県は収益的支出内の退職給付費につき、「平成 22 年度は一般会計からの振替が年度内に行われるため実質的に0となる」旨主張した。
理論的資金余裕割合= 短期的返済財源
修正単年度実質収支
(8,605,968 千円-5,392,021 千円)
=
(1,012,868 千円-500,000 千円)
3,213,947 千円
=
512,868 千円
≒ 6.26(年)
しかし当該修正を加えたとしても、少なくとも7年後には病院事業が資金ショートすることとなり、抜本的な経営の立て直しが必要なことを意味している。
また、この理論的分析はすべての流動資産が滞ることなく速やかに現金化できることを前提としているため、流動資産に不良債権が含まれ回収が滞る場合にはさらに事業運営が苦しくなる。
したがって、流動資産のうち換金性資産の大部分を占める未収金について様々な対策を講じた上でその回収を促進することは、病院事業の存続及び健全化のために必要不可欠なのである。
(3) 県の経営改善計画
山形県病院事業中期経営計画 <基本計画>(抜粋)第5 基本目標と重点項目
県病院事業局では前述の通り厳しい財務状況等を改善すべく、平成 19 年度に「山形県病院事業中期経営計画」を策定し、その中で財務状況への対応につき次の通り言及している。
1 基本目標
今計画期間(平成 19~21 年度)の基本目標は、以下の2つとします。
○ 病院機能の向上に努め、医療の質の向上を目指す (中略)
○ 計画最終年度(平成 21 年度)に、総収支の黒字化の達成を目指す
国の医療費抑制策が進められており、趨勢としては、診療収入の増加は困難な状況となっている中で、診療報酬体系に適切かつ迅速に対応し、収入の確保を図るとともに、経営効率化の推進により、人件費、材料費等の費用の縮減に努めるなど経営基盤の強化を図り、持続的安定的な病院事業運営を目指します。(中略)
第6 経営方針ごとの取組方策
1 財務の視点による取組方策(中略)
(2) 医業収支等の改善
① 収入の確保
(取組方策)
ア 病床利用率の向上 (中略)イ 診療単価の向上(中略)
ウ 医療体制に即した施設基準の取得(中略)エ 医業未収金の対策強化
・退院時請求率向上などによる未収金発生防止対策の徹底
・支払督促の実施などによる過年度未収金回収対策の強化オ 請求漏れ・査定減対策 (中略)
カ 遊休資産の処分・利活用 (中略)
② 支出の削減
(取組方策)
ア 人件費の縮減(中略)イ 材料費の圧縮(中略)ウ 経費の節減(中略)
エ 委託業務内容の見直し(中略)オ 企業債の繰上償還(中略)
しかし、当該計画の基本目標の一つである「平成 21 年度総収支の黒字化」は実現不能な状況となり、平成 21 年 3 月、平成 21~23 年度までの計画に修正した「平成 21 年 3 月山形県立病院改革プラン」を策定している。
当該プランの中で、県は向こう 3 年間の収支を次表の通り計画しており、基本目
標である総収支は 3 年間で改善するとしている。しかし、鶴岡病院の移転等による
資本的支出の増加等により資本的収支は 3 年間常に 10 億円超のマイナスであり、余剰資金を生み出す能力に改善が見られない計画となっている(表5参照)。
表5:山形県病院事業 収支計画
【収益的収支の部】 (単位:百万円)
平成 21 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | ||
収益的収 入 | 医業収益 | 28,819 | 28,903 | 28,847 |
医業外収益 | 4,144 | 4,140 | 4,053 | |
特別利益 | 14 | 14 | 14 | |
計 a | 32,977 | 33,057 | 32,914 | |
収益的支 出 | 医業費用 | 31,899 | 31,639 | 31,426 |
医業外費用 | 1,374 | 1,367 | 1,408 | |
特別損失 | 204 | 54 | 54 | |
計 b | 33,477 | 33,060 | 32,888 | |
総収支:a-b | ▲500 | ▲3 | 25 |
【資本的収支の部】 (単位:百万円)
平成 21 年度 | 平成 22 年度 | 平成 23 年度 | ||
資本的収 入 | 企業債 | 3,734 | 4,722 | 3,296 |
出資金 | 64 | 66 | 68 | |
負担金 | 1,454 | 1,536 | 1,656 | |
国(県)補助金 | 13 | 350 | 350 | |
計 c | 5,265 | 6,673 | 5,371 | |
資本的支 出 | 建設改良費 | 3,766 | 5,104 | 3,713 |
企業債償還金 | 2,427 | 2,585 | 2,919 | |
その他 | 500 | 0 | 0 | |
計 d | 6,693 | 7,689 | 6,632 | |
資本的収支補填額 B=c-d | ▲1,429 | ▲1,016 | ▲1,262 |
県は平成 21 年度の基本方針を次の通り策定している。
平成 21 年度病院事業経営 基本方針(抜粋)
病院事業の今年度の取り組みは、信頼される病院として、患者・家族の皆様からの期待に応えるのはもちろんのこと、医師及び医療従事者が意欲をもって働き続けられるよう、引き続き医療クラークの拡充や医師公舎・院内保育所の整備などの勤務環境の整備・充実を進めてまいります。
さらに、県立病院共通の電子カルテシステムを中心とした総合医療情報システムの
導入の推進、鶴岡病院の改築整備、中央病院の総合周産期母子医療センターの整備などにも重点的に取り組んでまいります。
また、医療の質や患者サービスの向上に当たっては、地域医療機関との機能分担・連携を一層強化しながら、BSC 注)1 の定着による職員の経営参画の取り組みを進めるとともに、病院横断的 TQM 注)2 活動の推進、医療情報の積極的な発信やインフォームド・コンセントの推進、医療安全管理体制の充実を進めてまいります。
② ミッション(使命・役割)
「県民に安心・信頼・高度の医療を提供し、県民医療を守り支える」
③ ビジョン(目指す姿)
「医療の質の向上の実現と収支均衡による病院運営を目指す」
④ 基本方針
1. 持続的運営が可能となる経営基盤の構築を目指す[財務の視点]
2. 患者の視点に立った安全で良質な医療サービスを提供する[顧客の視点]
3. 機動的で効率的な病院マネジメントを確立する[業務プロセスの視点]
4. 人材の確保・育成と職員の意識改革を進める[学習と成長の視点]
注)1:BSC:(Balanced Score Card)病院運営の健全化円滑化を目的に、平成 19 年度から病院事業局が導入したマネジメントツール。財務の面だけでなく、職員の能力、業務プロセス、患者サービスの「4 つの視点」から見てバランスの取れた計画を策定することが特徴で、この計画に基づいて実践、評価、改善という手順を繰り返していくもの。
注)2:TQM:(Total Quality Management)顧客の満足する品質を備えた品物やサービスを適時に適切な価格で提供できるよう企業の全組織を効果的・効率的に運営し、企業目的の達成に貢献する体系的活動のこと。
2.医業未収金の概況
(1)医業未収金の性格
病院事業に係る未収金は大きく 4 つに分類される。ここで、医業未収金とは医業収益に係る未収金を意味し、次表内 項目 1~3 の合計である。
表6:平成 20 年度未収金分類表
名称 | 平成 20 年度末未収金残高(円) | |
1 | 平成 20 年度保険者未収金 | 4,501,595,420 |
2 | 平成 20 年度個人未収金 | 400,176,234 |
3 | 過年度個人未収金 | 335,282,360 |
4 | 医業外未収金等 | 84,393,992 |
合計 | 5,321,448,006 |
注)1.保険者未収金:診療報酬のうち保険者負担分の未収金
2.個人未収金:診療報酬のうち個人負担分の未収金
3.過年度個人未収金:平成 19 年度までの個人未収金
4.医業外未収金等:国や一般会計からの補助金等
平成 20 年度保険者未収金・医業外未収金等(表6内、1・4)は、平成 21 年度にほぼ回収されるか、未収となる可能性が極めて低いことから、病院事業に係る未収金で問題となるのは診療報酬のうち個人負担分に関する未収金といえる。
診療報酬とは、診療契約に基づく医療行為に対する対価と考えられ、さらに診療契約は民法の準委任契約の一種と考えられることから、診療報酬に係る債権は私法上の債権となる。
この点、最高裁判所は、『公立病院において行われる診療につき、私立病院において行われる診療と本質的な差異はなく、その診療に関する法律関係は本質上私法関係というべきであるとして、診療に関する債権の消滅時効期間は、地方自治法 236 条 1 項所定の 5 年ではなく、民法 170 条 1 項により 3 年と解すべきである』と
している(平成 17 年 11 月 21 日第二小法廷判決)。
民法 第 170 条(3 年の短期消滅時効)
次に掲げる債権は、3 年間行使しないときは、消滅する。ただし、第 2 号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了したときから起算する。
1 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産または調剤に関する債権
2 工事の設計、施工又は管理を業とする者の工事に関する債権
なお、時効期間の起算点は、特約等がない限り医者と患者との医療関係が終了した時と解されるため、医療関係が終了した後は速やかに診療費の請求を行う必要がある。
地方自治法(参考)
第 236 条(金銭債権の消滅時効)
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。(後略)
(2)医業未収金に係る事務の組織と流れ
① 組織体制
山形県の病院事業は、事業管理者をトップとして県庁内に病院事業局を置き、それと並列して各病院等が組織されている。
病院事業局は県立病院課を構成し(図1参照)、未収金対策業務はこのうちの経
営施設係が行っている。
図1:病院事業 組織概念図
病院事業管理者
病院事業局
県立病院課
中央病院
xx病院
河北病院
xx病院
がん・生活習慣病センター※
救命救急センター※
(注)がん・生活習慣病センター、救命救急センターは中央病院に併設されているため、以下集計データ上は中央病院に含んで処理している。
未収金の回収体制については、次表の通り各病院それぞれによって対応が異なっている。いずれの病院も未収金回収業務は会計担当職員が現業と兼務で行っており、専従者は中央病院の嘱託職員のみとなっている。
表7:未収金回収体制一覧
専従者 | 兼務者 | 組織図 | |
中央病院 | 嘱託職員 1 名 | 会計係職員 3 名 | 会計係長主査 主事 嘱託職員 |
xx病院 | ― | 会計係職員 3 名 | 会計係長主査 主事 |
河北病院 | ― | 会計係職員 3 名 | 主査主査 主査 |
xx病院 | ― | 会計係職員 2 名 | 会計係長 主査 |
注)実線枠は専従者、点線枠は兼務者を意味する。
実線は専従者との主従関係、破線は兼務者間の主従関係を意味する。
② 未収金に関わる手続
ⅰ)未収金回収に係る手続
山形県病院事業局未収金取扱要領(抜粋)第 15(督促状の発行)
病院長は、納入者が診療費を納期限まで納入しなかった場合、山形県病院事業局財務規程第 45 条の規定(下記参照)に基づき督促状を発行しなければならない。
第 16(催告状の発行)
病院長は、督促状を発行した日から起算して 30 日を経過してもなお納入されないものについては、催告状を発行しなければならない。
第 6(初期対応)
病院長は、外来診療に係る個人負担分で、診療当日において未納となったもののうち、高額なもの及び未収金となることが明らかと判断されるものについては、すみやかに電話で催促する等して、早期に納入させるよう努めなければならない。(後略)
第 17(出張徴収)
病院長は、必要と認めるときは現金取扱員又は企業職員をして出張徴収を行わせることができる。(後略)
未収金回収に係る手続については、山形県病院事業局未収金取扱要領(以下、「県取扱要領」という)において次の通り規定されている。
第 14(未収金内訳票及び未収金管理票)
病院長は、未収金内訳票及び未収金管理票に当該未収金に係る収入況及び督励又は督促の状況を記載しておかなければならない。
第 18(未収金調書)
病院長は、毎事業年度末において未収金調書を作成しなければならない。
山形県病院事業局財務規程(参考)第 45 条(督促)
収入徴収担当者は、債権の督促をしようとするときは、債務者に対して、当該債権に
係る納期限後 30 日以内に督促状を交付しなければならない。(後略)
また、病院事業局では毎事業年度末において過年度未収金の状況を把握するため、過年度未収金に係る収納状況、原因別内訳、督促状況、年度別内訳データを各病院 から入手しとりまとめを行っている。
以下、上記規定等に基づく未収金回収等手続に係るワークフローを示す。
図2:未収金回収等手続に係るワークフロー
※9 未収金回収委託は本項(6)未収金対策の概要②にて言及している。
ⅱ)不納欠損処理に係る手続
不納欠損処理に係る手続については、県取扱要領に次の通り規定されている。
山形県病院事業局未収金取扱要領(抜粋)第 22(不納欠損)
病院長は、収入について納付及び納入の義務が消滅した時(時効)及び納入等の義務を消滅させたときは、不納欠損の手続を取るとともに未収金内訳票及び未収金管理票にその旨を記入整理しなければならない。
2 病院長は不納欠損をしたときは、直ちに歳入不納欠損通知書により企業出納員に通知するとともに、山形県病院事業局財務規程第 47 条の規定により病院事業管理者に報告しなければならない。
3 民法第 170 条第 1 項により診療費の納期限、督促状の指定期限又は分割納入の翌日から3年経過し、かつ納入者より書面で時効が援用された場合、診療費の納入義務は消滅する。
4 病院長は、不納欠損を行った場合は、過年度損益修正損として会計伝票を発行し、未収金の整理を行わなければならない。
山形県病院事業局財務規程(参考)第 47 条(不納欠損の手続)
収入徴収担当者は、収入について納入の義務が消滅したときは、不納欠損の手続をしなければならない。
2 収入徴収担当者は、前項の規定により不納欠損をしたときは、直ちに不納欠損報告書及び不納欠損内訳書により管理者に報告しなければならない。
地方自治法(参考)
第 236 条(金銭債権の消滅時効)
金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利は、時効に関し他の法律に定めがあるものを除くほか、5年間これを行なわないときは、時効により消滅する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
2 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。
3 金銭の給付を目的とする普通地方公共団体の権利について、消滅時効の中断、停止その他の事項(前項に規定する事項を除く。)に関し、適用すべき法律の規定がないときは、民法の規定を準用する。普通地方公共団体に対する権利で、金銭の給付を
目的とするものについても、また同様とする。
4 法令の規定により普通地方公共団体がする納入の通知及び督促は、民法第 153 条
(前項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、時効中断の効力を有する。
(3)根拠法令等
① 山形県病院事業局財務規程
② 山形県立病院料金条例
③ 山形県病院事業局未収金取扱要領
(4)過年度医業未収金残高の推移
医療制度改革と県の財政ならびに一般社会における経済状況の悪化等を背景に、医業未収金は年々増加する傾向にある。
過年度医業未収金残高は、平成 16 年度末にはおよそ1億 7000 万円だったが、平
中央病院 | 新庄病院 | xx病院 | 鶴岡病院 | 計 | |
平成 17 年 3 月末 | 71,120 | 60,390 | 30,007 | 10,145 | 171,663 |
平成 18 年 3 月末 | 97,548 | 75,774 | 34,799 | 11,899 | 220,022 |
平成 19 年 3 月末 | 122,524 | 94,429 | 38,661 | 14,238 | 269,853 |
平成 20 年 3 月末 | 139,054 | 108,580 | 43,299 | 17,271 | 308,205 |
平成 21 年 3 月末 | 155,613 | 113,297 | 47,294 | 19,076 | 335,282 |
4 年間の増加額 (増加率) | +84,493 (+118.8%) | +52,907 (+87.6%) | +17,286 (+57.6%) | +8,930 (+88.0%) | +163,618 (+95.3%) |
成 20 年度末にはほぼ2倍となる3億 3500 万円まで膨れ上がっている(表8参照)。表8:過年度未収金残高の推移 (単位:千円)
これらの原因は単純に 2 つ考えられる。1つは、未収金の回収が進まないため過年度の未収金が減少しないこと。そしてもう1つは、現年分について適時適切な請求入金管理が行われず未収金が増加していることである。
(5) 平成 21 年度回収等の状況
平成 21 年度中の回収等状況を次表にまとめる。
過年度分の 8 ケ月間での回収率は全体でも5%程度であり、前年度末残高335百万円のところ16百万円のみの回収にとどまっていることが分かる。さらに、現年分(平成 20 年度分)の回収率は 80%ほどではあるが、未回収分の金額が66百万円にも上っており、過年度分のみならず現年分についてもその回収が進んでいな
いことが分かる。
表9:各病院の未収金残高および平成 21 年度の回収状況等(単位:千円)
中央病院 | 新庄病院 | xx病院 | 鶴岡病院 | 計 | |
<21 年 3 月末時点の未収金残高> | |||||
過年度分 | 155,613 | 113,297 | 47,294 | 19,076 | 335,282 |
現年度分 | 251,597 | 95,731 | 40,979 | 11,867 | 400,176 |
計 | 407,211 | 209,028 | 88,273 | 30,944 | 735,458 |
<21 年 11 月末までの回収等状況> | |||||
過年度分 (回収率) | 7,313 (4.7%) | 5,729 (5.1%) | 2,282 (4.8%) | 1,399 (7.3%) | 16,725 (5.0%) |
現年度分 (回収率) | 204,788 (81.4%) | 76,477 (79.9%) | 30,957 (75.5%) | 9,779 (82.4%) | 322,002 (80.5%) |
計 | 212,101 | 82,206 | 33,239 | 11,179 | 338,727 |
現年分 減額xx等 | 10,768 | 396 | 753 | - | 11,918 |
不納欠損他 | - | 362 | ▲24 | 0 | 338 |
<21 年 11 月末時点の未収金残高> | |||||
過年度分 | 148,299 | 107,206 | 45,035 | 17,677 | 318,218 |
現年度分 | 36,041 | 18,857 | 9,269 | 2,087 | 66,255 |
計 | 184,341 | 126,063 | 54,304 | 19,764 | 384,473 |
(6) 未収金対策の概要
① 未収金に係る規定整備
県は、病院事業局に係る未収金について「山形県病院事業局未収金取扱要領」を整備しているが、上述の経営状況の悪化および未収金の増加に対処すべく、各病院においても独自の未収金管理に係る規程等の整備が行われている(表10参照)。
表10:未収金管理規程等一覧
各病院共通 | ||||
事業局規程 | 山形県病院事業局未収金取扱要領 | |||
平成 15 年 4 月施行 | ||||
病院名 | 中央病院 | 新庄病院 | 河北病院 | 鶴岡病院 |
各病院規程 等名称 | 山形県立中央 病院未収金取 | 山形県立xx 病院における | 河北病院未収 金取扱マニュ | 山形県立xx 病院未収金取 |
扱内規 | 未収金管理業 務に関する指針 | アル | 扱要領 | |
施行 | 平成 14 年 3 月 | 平成 18 年 6 月 | 平成 20 年 4 月 | 平成 19 年 1 月 |
最終改定 | ― | 平成 21 年 3 月 | ― | ― |
② 未収金収納業務委託
県は前述のように各種規程等を整備し、また各病院においても回収努力を続けてきたが、医業未収金は年々増加の一途をたどってきた(前出表8参照)。
そこで、収納業務の一部を民間事業者に委託することにより、民間事業者のノウハウを活用した効率的な収納業務を実施し、医業未収金残高の縮減を図ることとした。平成 21 年 8 月に締結された契約書の一部を次に示す。
業務委託契約書(抜粋)
山形県病院事業管理者 xxxxx(以下「甲」という)と××株式会社(以下「乙」という)とは、甲の債権について集金代行の業務を委託することに関して、甲乙間で次のとおり契約を締結する。
(業務の委託)
第1条 甲は、甲の保有している債権の集金代行業務、並びにこれに附帯する業務を乙に委託し、乙はこれを受託する。業務の内容については、別記「山形県立病院未収金 収納業務委託仕様書」のとおりとする。
2 甲が、甲の債務者に関する債権の内容、帳票その他の資料を乙に提供した日を委託日とする。
(有効期間)
第2条 この契約の有効期間は、契約締結日から平成22年3月31日までとする。
(手数料の負担)
第5条 前条により委託日以降に集金した金額については、甲は、乙に対し第6条に定める手数料を支払うものとする。
(手数料の計算)
第6条 手数料の計算は、前条に定める集金した金額の100分の40(消費税及び地方消費税を含む)に相当する金額とする。なお、1円未満の端数は、これを切り捨てる。
2 前項の手数料率について変更を要する場合は、甲乙協議のうえ別途定めるものとする。
山形県立病院個人未収金収納業務委託仕様書(抜粋)
2 業務内容
(1)対象病院及び所在地
病院名 | 許可病床数 | 所在地 |
中央病院 | 663床 | xxxxxxx0000xx |
xx病院 | 465床 | xx市若葉町12-55 |
河北病院 | 225床 | xx山郡xx町xx字月山堂111 |
鶴岡病院 | 294床 | xxxxxxxx00 |
(2)委託する債権の範囲
委託する債権の範囲は、平成20年度以前に発生した未収金とし、各病院長が回 収業務を委託することが相当であると判断した案件とする。ただし、次の①から
⑧に該当する債権は除くものとする
① 訴訟等の法的措置を実施している債権
② 診療内容等により債務者又は連帯保証人等が支払を拒む意思を明らかに している債権
③ 破産、免責となった債務者に係る債権
④ 無所得などの経済的な理由で未払いであることが明らかな債権
⑤ 債務者本人が死亡し、又は受刑中であり、連帯保証人がなく、かつ相続 人が判明しない債権
⑥ 分割納付中又は支払方法等について相談中の債権
⑦ 債務者の未収金額残高が 1,000 円未満の債権
⑧ その他各病院長が病院で催告を継続することが適当と判断した債権
なお、業務受託後、上記①から⑧の一に該当すると受託者が判断した案件においては、受託者は速やかに各県立病院にその旨を報告のうえ返却すること。
(3)委託業務の内容
次の①から⑤までの業務を実施することとし、実施の手段、手法については、受託者の提案に委ねるものとする。
① 料金案内業務
債務者に対し、電話又は文書により料金案内業務を行う。
② 支払方法相談業務
債務者から支払方法等について相談があった場合には、自ら判断を行わず、下記⑤イ(イ)により相談内容を各県立病院へ報告を行うこと。(債権回収 会社にあっては和解等の法律行為を行わないこと)
③ 所在調査業務
居所が明らかでなく、料金案内業務が実施できない債務者については、受託者の裁量により、居所等の所在調査を実施すること。
④ 集金業務
債務者からの入金については、受託者において一旦集金し、県立病院課に納付すること。
⑤ 各種報告業務ア 定期報告
月末時点において、次の内容の記載された報告を翌月10日(当該日が土、日曜日または祝日にあたる場合はその翌平日)までに電子媒体等により県立病院課に報告すること。
(ア)債務者ごとの入金状況(委託費の額の積算を含む)
(イ)債務者ごとの対応状況(債務者とのトラブル、苦情等の発生状況を含む)
イ 適時報告
次の一に該当する場合には速やかに各県立病院へ報告すること。
(ア)委託した債権が、上記(2)①から⑧に記載された委託除外案件に該当することと判断した場合
(イ)支払方法についての相談があった場合
(ウ)所在調査業務により、居所等が判明した場合
(エ)その他、債務者状況等について、各県立病院が個別に照会した場合ただし、個人情報保護法第23条に抵触しない範囲とする。
当該契約等に基づいて行われた業務委託の実績は、次表のとおりである。回収額が少額となっているのは、今年度の半ば(平成 21 年 11 月)からの依頼であり、依
頼から実質 2 ヶ月しか経過していないためである。
表11:平成 21 年度 業務委託の実績 (単位:千円)
中央病院 | 新庄病院 | xx病院 | 鶴岡病院 | 計 | |
過年度未収金残高 a | 155,613 | 113,297 | 47,294 | 19,076 | 335,282 |
(内訳) ○:委託対象 | |||||
生活困難 | 1,557 | 3,815 | 1,994 | 6,448 | 13,815 |
経済的理由 ○ | 862 | 18,550 | 4,837 | - | 24,250 |
納入意識欠如 ○ | 69,321 | 29,672 | 26,456 | 2,542 | 127,993 |
支払拒否 | 26 | 2,902 | 371 | 612 | 3,913 |
住所不明 ○ | 10,226 | 9,811 | 2,476 | 484 | 22,999 |
本人死亡 | 25 | 20,000 | 000 | 000 | 21,638 |
交通事故 | 49 | 334 | 103 | - | 487 |
分割納入中 | 66,350 | 27,095 | 8,308 | 6,784 | 108,539 |
理由不明 | 5 | 116 | - | 1,518 | 1,640 |
その他 | 7,188 | 794 | 1,867 | - | 9,850 |
団体請求分 | - | 153 | - | - | 153 |
委託対象 ○合計b | 80,410 | 58,035 | 33,769 | 3,027 | 175,243 |
平成 21 年度委託額 c | 70,595 | 33,405 | 27,411 | 157 | 131,569 |
委託率 c/b | 87.7% | 57.5% | 81.1% | 5.1% | 75.0% |
委託率 c/a | 45.3% | 29.4% | 57.9% | 0.8% | 39.2% |
平成 21 年度回収額 d | 1,775 | 753 | 686 | - | 3,215 |
回収率 d/c | 2.5% | 2.2% | 2.5% | 0% | 2.4% |
回収率 d/a | 1.1% | 0.6% | 1.4% | 0% | 0.9% |
平成 21 年度差戻額 e | 2,287 | 1,415 | 290 | - | 3,993 |
差戻率 e/c | 3.2% | 4.2% | 1.0% | 0% | 3.0% |
3.監査の方法と結果
(1) 監査の方法
各病院の未収金残高のうち高額滞納者をサンプルとして抽出し(表12参照)、債務者の状況とこれに対する県の対応とが財務規程、県取扱要領等に基づき適時適切に手続されているか調査した。また、これに併せて不納欠損処理の正確性を検証した。
表12:サンプル抽出者一覧
病院名 | 未収金期末残高 | サンプルNo. | 抽出債務者 | 未収金期末残高 |
中央病院 | 155,613,433 円 | 中央-1 | O氏 | 5,204,626 円 |
中央-2 | S1氏 | 3,166,930 円 | ||
中央-3 | A1氏 | 3,069,141 円 | ||
中央-4 | K氏 | 2,593,140 円 | ||
中央-5 | A2氏 | 2,436,730 円 | ||
xx病院 | 113,297,854 円 | 新庄-1 | W氏 | 5,046,080 円 |
xx-2 | H氏 | 3,738,980 円 | ||
河北病院 | 47,294,102 円 | xx-1 | A3氏 | 1,154,860 円 |
xx病院 | 19,076,971 円 | 鶴岡-1 | S2氏 | 2,733,020 円 |
xx-2 | U氏 | 2,100,300 円 | ||
合計 | 335,282,360 円 | 10 件 | 31,243,807 円 (9.3%) |
(2) 監査の結果
各債務者の状況と県の対応等は以下のとおりであった。
①中央病院
No. | 中央-1 | 債務者 | O氏 | ||
未収金額 | 5,204,626 円 | 請求期間 | H18/7-H19/9(⇒H20/2 分割納入申請) | ||
請求総額 | 5,204,626 円 | 入金総額 | 0 円(0%) | ||
本人の現状 | 平成 19 年 9 月 死去 | ||||
現在の主たる債務者 | 妻 | 保証人の有無 | 有(長女・義息子) | ||
未収金発生までの経緯 | H18/6-19/2 | 9 ヶ月入院。入院費は 1 ヶ月毎に月末締翌月 10 日頃請求していた。 | |||
19/5 | 高額療養費の貸付につき利用促す通知送付。 この時点での未収金 4,935,810 円。 | ||||
19/8 | 再入院。 | ||||
19/9 | 家族と面接。高額療養費貸付等の説明。 | ||||
未収金発生からの対応 | H19/11 | 家庭訪問。長女に高額療養費貸付等の説明。 | |||
20/2 | 妻と社会保険事務所に出向き、高額療養費貸付等について確認するが、すでに貸付を受け生活費に充当していたことが判明。 妻が分割納入申請提出。(その後入金なし) | ||||
20/4 | 分割納入督促通知。 | ||||
20/10 | 家庭訪問するが不在 | ||||
20/11 | 配達証明郵便の送付 | ||||
県の回収可能性判定 | 相続人を確認し、外部委託で対応したい。 | ||||
債権保全状況 | 平成 20 年 2 月主たる債務者が延納申請書提出(承認)によ り、時効中断。 | ||||
回収外部委託先として の県の判断 | 分割納入中により、委託対象外。 | ||||
監査人の見解 ① 未収金記録は適時に作成されるべきものであるところ、平成 19 年 5 月以前のやり取り記録が残っておらず、記録時点ではすでに多額の未収金となっている。 ② 保証人に対する請求手続が行われていない。 ③ 分割納入申請から 6 カ月以上一度も入金ないが、収納業務外部委託されるべき債務者としてリストアップされていない。 |
No. | 中央-2 | 債務者 | S1氏 | |
未収金額 | 3,166,930 円 | 請求期間 | H14/9-17/7(⇒H18/2 分割納入申請) | |
請求総額 | 3,527,320 円 | 入金総額 | 350,390 円(9.9%) | |
本人の現状 | 平成 21 年 7 月 自己破産 |
現在の主たる債務者 | - | 保証人の有無 | 有(義弟) |
未収金発生までの経緯 | H14/9-17/7 | 入院。入院費は 1 ヶ月毎に月末締翌月 10 日頃 請求していた。 | |
17/12 | 分割納入申請の依頼送付。 | ||
18/2 | 本人が分割納入申請。 (その後、月 1~2 万円納入あり。) | ||
未収金発生からの対応 | 20/12 | 弁護士から自己破産申立準備の通知。 | |
21/7 | 破産手続開始及び破産廃止決定通知。 | ||
県の回収可能性判定 | 自己破産により債権額が免責され、不納欠損処分の予定。 | ||
債権保全状況 | 平成 18 年 2 月本人が延納申請書提出。平成 21 年 4 月最終入 金(承認)により、債権自体は保全されていた。 | ||
回収外部委託先として の県の判断 | 委託以前に自己破産より、委託対象外。 | ||
監査人の見解 ① 平成 14 年度分の未収金が 2,198,230 円と高額に上っているにもかかわらず、分 割納入申請を取り付けるまで 3 年以上要しており、初動手続が遅い(表13参照)。 ② 保証人に対する手続が一度も行われないまま、自己破産となっている。 |
表13:No. 中央-2 医業未収金 発生償還等状況一覧(単位円)
発生 | 償還 | 滞納 | |
平成 14 年度 | 2,198,230 | 0 | 2,198,230 |
平成 15 年度 | 1,152,310 | -5,000 | 3,345,540 |
平成 16 年度 | 0 | 0 | 3,345,540 |
平成 17 年度 | 161,390 | -20,000 | 3,486,930 |
平成 18 年度 | 0 | -160,000 | 3,326,930 |
平成 19 年度 | 0 | ※-80,000 | 3,246,930 |
平成 20 年度 | 15,390 | -95,390 | 3,166,930 |
合計 | 3,527,320 | -350,390 | ― |
※なお、平成 19 年度の償還金のうち1万円が入金管理xx記載されていなかった。
No. | 中央-3 | 債務者 | A1氏 | |
未収金額 | 3,069,141 円 | 請求期間 | H18/5-21/3(H18/5・6 分⇒H18/6 分割納入申請) | |
請求総額 | 3,319,141 円 | 入金総額 | 290,000 円(8.7%) | |
H21 現在 | 6,329,899 円 | H21 現在入金総額 | 297,980 円(4.7%) |
請求総額 | H21 現在未収金額 | 6,031,919 円 | |||
本人の現状 | 通院中 | ||||
現在の主たる債務者 | 本人 | 保証人の有無 | 有(内夫) | ||
未収金発生までの経緯 | H18/5- | 入院、外来。月額およそ 20 万円程度の診療費 であった。 | |||
18/6 | 本人が分割納入申請。しかし、記載不備あり。 (その後、総額で 18 万円のみ納入された。) | ||||
未収金発生からの対応 | 18/7-10 | 5 回に渡り、窓口で面談。一括で未収金を支払 う等話していたが、入金はほとんどなし。高額療養貸付の話などもしていた。 | |||
19/12 | 分割納入督促通知。 | ||||
20/2 | 次女と山形市役所に出向き高額療養費貸付等 について確認するが、すでに貸付を受け生活 費に充当していたことが判明。 | ||||
20/2-6 | 5 回に渡り、窓口・病室等で面談。分割納入の交渉を行うが、分割納入申請のサイン及び支 払なし。 | ||||
21/9 | 支払催促目的文書送付 | ||||
県の回収可能性判定 | 支払督促等の法的手段も検討しながら、毎月の分割納付につ いて遵守してもらうよう働き掛けていく。 | ||||
債権保全状況 | 平成 18 年 6 月に分割納入申請が提出されるも記載不備あり。 最終入金は平成 21 年 9 月であるが、債権全体に対する承認 等時効中断手続が行われておらず、平成 18 年度 1,289,130 円につき平成 21 年度末までに時効成立の恐れあり。 | ||||
回収外部委託先として の県の判断 | 分割納入中により、委託対象外。 | ||||
その他 | 今も入退院を繰り返しており、未納額は平成 21 年時点で 6,031,919 円まで増加している。 | ||||
監査人の見解 ① 分割納入申請書の記載不備があり、また分割納入申請による保全部分は 20 万円程度であり、その他ほとんどの部分が適切に債権保全されていない。 ② すでに時効完成している部分もあるが、分割納入申請等入手するなど債権保全の努力を怠っている。 ③ 保証人への手続が行われていない。 ④ 平成 18 年度分の未収金が 140 万円以上と高額に上っていたにもかかわらず、高 額療養費貸付の確認に 1 年以上要しており、初動手続が遅い。 |
No. | 中央-4 | 債務者 | K氏 | ||
未収金額 | 2,593,140 円 | 請求期間 | H16/11-12(⇒H18/2 分割納入申請) | ||
請求総額 | 2,593,140 円 | 入金総額 | 0 円(0%) | ||
本人の現状 | 平成 17 年 6 月 死去 | ||||
現在の主たる債務者 | 長男 | 保証人の有無 | 有(親戚) | ||
未収金発生までの経緯 | H16/11-12 | 入院。 | |||
18/2 | 長男が分割納入申請。(その後入金なし。) | ||||
未収金発生からの対応 | H18/8-19/8 | 請求に係る郵便を 7 回ほど送付。 | |||
20/11 | 内容証明送付。 | ||||
県の回収可能性判定 | 患者が死亡していること、分割納入申請後 3 年を経過してお り、回収は不可能。 | ||||
債権保全状況 | 平成 18 年 2 月長男が分割納入申請書提出するが、その後入 金なくすでに時効完成。 | ||||
回収外部委託先として の県の判断 | 外部委託先として依頼中。 | ||||
監査人の見解 ① 債権保全手続を怠り、今年度中に全額時効完成している。 ② 時効成立以前であるにもかかわらず、分割納入申請等入手するなど債権保全の努力を怠っている。 ③ 保証人への手続が行われていない。 |
No. | 中央-5 | 債務者 | A2氏 | ||
未収金額 | 2,436,730 円 | 請求期間 | H16/11-12(⇒H18/2 分割納入申請) | ||
請求総額 | 2,436,730 円 | 入金総額 | 0 円(0%) | ||
本人の現状 | 平成 16 年 11 月 死去 | ||||
現在の主たる債務者 | 不明 | 保証人の有無 | 有(長男) | ||
未収金発生までの経緯 | H14/11-16/5 | 入院。一度も入金なし。 | |||
未収金発生からの対応 | H18/2-19/3 | 請求に係る郵便を 7 回ほど送付。 | |||
20/11 | 内容証明送付するも返戻。 | ||||
県の回収可能性判定 | 患者が死亡していること、請求後 3 年を経過していること、 また、郵便が送達されないことから回収は不可能。 | ||||
債権保全状況 | 債権全体に対する承認等時効中断手続が行われておらず、全 額すでに時効完成。 | ||||
回収外部委託先として | 外部委託先として依頼中。 |
の県の判断 | |
監査人の見解 ① 保証人への手続や債権保全手続を怠り、すでに全額時効完成している。 ② 時効成立以前であるにもかかわらず、分割納入申請等入手するなど債権保全の努力を怠っている。 ③ 相続状況の確認が行われていないため、主たる債務者が確定していない。 ④ 債権発生(H14/11-16/5)から平成 18 年 2 月以前の手続等記録が残っていない。 |
②xx病院
No. | xx-1 | 債務者 | W氏 | ||
未収金額 | 5,046,080 円 | 請求期間 | H13/11-19/4 | ||
請求総額 | 5,642,780 円 | 入金総額 | 596,700 円(10.5%) | ||
本人の現状 | 平成 19 年 4 月 死去 | ||||
現在の主たる債務者 | (不明) | 保証人の有無 | 無 | ||
未収金発生までの経緯 | H13/11-16/10 | 外来受診。この時点で 3,490,230 円の未収。 | |||
17/9-19/9 | 入院未収あり。入金は一切ない。 | ||||
未収金発生からの対応 | H14/1 | 高額療養費貸付制度利用 | |||
H19/4 | 限度額認定証の発行を受け自己負担軽減す るもその後転院。 | ||||
県の回収可能性判定 | 法定相続人である母にも未収があり回収は困難。 | ||||
債権保全状況 | 最終入金日は平成 18 年 4 月。債権全体に対する承認等時効 中断手続が行われておらず、平成 17 年度以前の 4,831,380円はすでに時効完成。 | ||||
回収外部委託先として の県の判断 | 本人死亡かつ相続人未確定のため、委託対象外。 | ||||
監査人の見解 ① 保証人への手続や債権保全手続を怠り、すでに大部分が時効完成している。 ② 時効成立以前であるにもかかわらず、分割納入申請等入手するなど債権保全の努力を怠っている。 ③ 相続状況の確認が行われていないため、主たる債務者が確定してい ない。 |
表14:No. xx-1 医業未収金 発生償還等状況一覧(単位円)
発生 | 償還 | 滞納 | 時効完成 | |
平成 13 年度 | 651,050 | 0 | 651,050 | 0 |
平成 14 年度 | 1,136,980 | 337,170 | 1,450,860 | 0 |
平成 15 年度 | 1,491,710 | 43,530 | 2,899,040 | 0 |
平成 16 年度 | 807,190 | 76,000 | 3,630,230 | -191,670 |
平成 17 年度 | 1,460,980 | 90,000 | 5,001,210 | -1,093,450 |
平成 18 年度 | 1,750 | 50,000 | 4,952,960 | -1,491,710 |
平成 19 年度 | 93,120 | 0 | 5,046,080 | -807,190 |
平成 20 年度 | 0 | 0 | 5,046,080 | -1,460,980 |
合計 | 5,642,780 | 596,700 | ― | -5,045,000 |
No. | xx-2 | 債務者 | H氏 | ||
未収金額 | 3,738,980 円 | 請求期間 | H18/10-19/4 | ||
請求総額 | 3,738,980 円 | 入金総額 | 0 円(0%) | ||
本人の現状 | 現在通院なし | ||||
現在の主たる債務者 | 本人 | 保証人の有無 | 有(兄) | ||
未収金発生までの経緯 | H18/10-12 | 高所からの転落により緊急入院。資格証のため全額自己負担。この時点で 2,226,920 円の 未収。 | |||
未収金発生からの対応 | H18/12 | 労災申請予定だったが、労災保険に加入して いないことが判明。 | |||
H19/3-4 | 入院。この時点で 3,738,980 円の未収。 全額につき一度も入金なし。 | ||||
県の回収可能性判定 | 配偶者、子等に所得あり、回収は困難ながら可能性あり。 | ||||
債権保全状況 | 債権全体に対する承認等時効中断手続が行われておらず、平 成 18 年度分 2,226,920 円が平成 21 年度中に時効完成。 | ||||
回収外部委託先として の県の判断 | 支払につき相談中のため、委託対象外。 | ||||
監査人の見解 ① 時効成立以前であるにもかかわらず、分割納入申請等入手するなど債権保全の努力を怠っている。 ② 保証人への手続を行っていない。 ③ 支払意思表明するも全く入金なく、収納業務外部委託される債務者としてリストアップすべきである。 |
③xx病院
No. | xx-1 | 債務者 | A3氏 | ||
未収金額 | 1,154,860 円 | 請求期間 | H15/3-21/2 | ||
請求総額 | 1,294,860 円 | 入金総額 | 140,000 円(10.8%) | ||
本人の現状 | 平成 21 年 2 月 死去 | ||||
現在の主たる債務者 | (不明) | 保証人の有無 | 有(xx、姉) | ||
未収金発生までの経緯 | H15/3-18/3 | 外来、入院。この時点で 1,089,460 円の未収。 | |||
18/4 | 本人が分割納入申請するも、すぐに滞納。こ れまでの入金総額 11 万円。 | ||||
20/3 | 本人が再度分割納入申請。ただし、保証人の 筆跡が患者本人のものである。 | ||||
20/3-12 | 分割納入再開。総額 3 万円の入金。 | ||||
20/9 | 夫と離婚し、生活保護世帯になる。 | ||||
20/12-21/2 | 再入院、死去。当該入院につき、入金なし。 | ||||
未収金発生からの対応 | 21/2 | 県、児童相談所、役場、学校などの関係者により、遺族(子 2 人)の処遇につき検討。ただし、債権回収や相続放棄等の検討は行われなかった。 法定相続人が未xxであるため、その後の催 促等手続は行っていない。 | |||
県の回収可能性判定 | 保証人(xx)は分割納入申請の筆跡が患者本人のものであり交渉を断られる恐れがある。保証人(姉)は身元引受人の意識しかないため手続は慎重に行いたい。 これらに加え、法定相続人が未xxであるため、回収は困難。 | ||||
債権保全状況 | 平成 20 年 3 月本人が分割納入申請書提出、最終入金平成 20 年 12 月(承認)により、時効中断。 | ||||
回収外部委託先として の県の判断 | 本人死亡かつ相続人未確定のため、委託対象外。 | ||||
その他 | ・現年度分を合わせて総額 1,154,860 円の未収金となっている。 ・入院保証人は 27,930 円分のみの保証である。 ・分納保証人(xx)は分納誓約書の「保証人」欄に自署押印していない。 |
監査人の見解
① 保証人への手続を適切に行っていない。
② 保証人ある場合は外部委託対象となるが委託先として抽出していない。
③ 相続状況の確認が行われていないため、主たる債務者が確定していない。
④鶴岡病院
No. | xx-1 | 債務者 | S2氏 | |||
未収金額 | 2,733,020 円 | 請求期間 | H13/6- | |||
請求総額 | 2,963,710 円 | 入金総額 | 230,690 円(7.8%) | |||
本人の現状 | 通院中 | |||||
現在の主たる債務者 | 本人 | 保証人の有無 | 有(姉) | |||
未収金発生までの経緯 | H13/6-9 | 入院、通院。この時点で 449,340 円の未収。 | ||||
14/11 | 上記未収につき本人が分割納入申請するも、 保証人未記載。ただし、当該部分は完納。 | |||||
未収金発生からの対応 | H14/12- | 入院、通院。各年度の診療費と 20 年度末ま での入金総額は次の通り。 | ||||
年度 | 診療費総額 | 入金総額 | ||||
14 | 257,310 円 | 210,690 円 | ||||
15 | 149,890 円 | ― | ||||
16 | 556,430 円 | 20,000 円 | ||||
17 | 413,940 円 | ― | ||||
18 | 887,070 円 | ― | ||||
19 | 699,070 円 | ― | ||||
20 | ― | ― | ||||
県の回収可能性判定 | 発生額(平均月額 50,000 円以上)に対して遺族年金からの 返済は少額(月額 5,000 円程度)であり、回収は困難。 | |||||
債権保全状況 | 平成 14 年以降、分割納入申請書を入手しておらず、平成 16 ~17 年度の未収金 990,370 円がすでに時効完成。また、平成 18 年度の未収金 887,070 円が平成 21 年度中に時効完成。 | |||||
回収外部委託先として の県の判断 | 分納中のため、委託対象外。 | |||||
その他 | ・債務者本人の意思を証明する資料なく、入金を平成 16 年度の債権に充当している。 ・保証人を確定する入院時の誓約書が不明。また、過年度分 の分割納入申請あるが、保証人未記載。 |
監査人の見解
① 保証人を明確に示す資料の保管がなされておらず、また保証人への手続を適切に行っていない。
② 債権保全手続を怠り、今年度中に大部分が時効完成している。
③ 債務者等の意思を証明する資料なく、入金を新しい債権に充当している。
No. | 鶴岡-2 | 債務者 | U氏 | |||
未収金額 | 2,100,300 円 | 請求期間 | H12/9-(12/9-17/6 分⇒H18/2 分割納入申請) | |||
請求総額 | 2,281,820 円 | 入金総額 | 406,960 円(17.8%) | |||
本人の現状 | 入院中 | |||||
現在の主たる債務者 | 本人 | 保証人の有無 | 有(甥) | |||
未収金発生までの経緯 | H12/7-17/6 | 入院、通院。この時点で 1,631,880 円の未収。 | ||||
18/2 | 上記未収につき本人が分割納入申請するも、 本人印未押印。その後 3 万円のみの入金。 | |||||
未収金発生からの対応 | H18/7- | 入院、通院。各年度の診療費と 20 年度末ま での入金総額は次の通り。 | ||||
年度 | 診療費総額 | 入金総額 | ||||
12 | 506,420 円 | 181,520 円 | ||||
13 | 147,280 円 | ― | ||||
14 | 443,280 円 | ― | ||||
15 | 147,080 円 | ― | ||||
16 | 393,140 円 | ― | ||||
17 | 146,200 円 | ― | ||||
18 | 213,720 円 | ― | ||||
19 | 284,700 円 | ― | ||||
20 | ― | ― | ||||
県の回収可能性判定 | 現在は年金時約 5 万円を定期的に納めており、回収可能。 | |||||
債権保全状況 | 平成 17 年度以前の債権については平成 18 年 2 月に分割納入 申請を受け、平成 21 年 10 月最終入金あり。しかし、平成 18 年以降の債権については分割納入申請書を入手しておら ず、平成 18 年度の未収金 213,720 円が今年度中に時効完成。 | |||||
回収外部委託先として の県の判断 | 分納中のため、委託対象外。 | |||||
その他 | ・平成 21 年度の入金につき、債務者本人の意思を証明する 資料なく平成 19 年度の債権に充当している。 |
・保証人を確定する入院時の誓約書が不明。 | |
監査人の見解 ① 保証人への手続を適切に行っていない。 ② 債務者等の意思を証明する資料なく、入金を新しい債権に充当している。 ③ 債権保全手続を怠り、今年度中に大部分が時効完成している。 |
4.意見
(1) 未収金の発生原因について
① 入院患者に対して適時請求を行っていない。【意見A】
山形県立病院条例
第 3 条(料金の徴収方法)
料金は、入院患者について月末及び退院時に取りまとめ、外来患者その他についてはその都度徴収する。ただし、他の法令又は診療契約に療養費の支払方法について別に定めのあるものについては、その定めによるものとする。
山形県立病院条例および県取扱要領では、入院患者の診療報酬の請求につき次の通り規定し、退院時等の速やかな請求を促している。
山形県病院事業局未収金取扱要領
第 2 章「未収金の発生防止」第 6(初期対応)第 2 項
病院長は、入院診療に係る個人負担分について退院時請求の徹底に努めるとともに、入院患者の退院の際に、病棟師長等に個人負担分の支払い方法等についての意思確認を 行わせなければならない。
この点、平成 21 年 3 月下旬に退院した患者に対する請求及びその回収状況は次表の通りであり、規程等が求める適時請求が行えていない。特に、中央病院の退院時請求はサンプル上の割合で退院件数の 1.9%と極めて低い。それに伴い未払件数も全 6 件中 5 件を占めていることから、適時請求していない事実が診療報酬の未払いに直結していることをデータが明示している。
表15:退院患者請求支払実績(平成 21 年 3 月最終週について)
退院日 | 退院数 | 退院時 | 3 月 | 4 月 | 5 月 | 6 月以降 | 未払 | |
3/25 (水) | 58 | 請求 | 19 | 5 | 33 | 0 | 1 | ― |
支払 | 14 | 3 | 34 | 1 | 4 | 2 | ||
3/26(木) | 73 | 請求 | 24 | 11 | 34 | 3 | 1 | ― |
支払 | 10 | 13 | 38 | 10 | 2 | 0 | ||
3/27(金) | 72 | 請求 | 22 | 9 | 40 | 0 | 1 | ― |
支払 | 12 | 5 | 48 | 5 | 1 | 1 | ||
3/28(土) | 78 | 請求 | 3 | 20 | 53 | 2 | 0 | ― |
支払 | 2 | 3 | 66 | 4 | 3 | 0 | ||
3/29(日) | 66 | 請求 | 5 | 23 | 37 | 1 | 0 | ― |
支払 | 0 | 5 | 57 | 1 | 1 | 2 | ||
3/30(月) | 47 | 請求 | 18 | 6 | 22 | 0 | 1 | ― |
支払 | 7 | 5 | 29 | 4 | 1 | 1 | ||
3/31(火) | 63 | 請求 | 20 | 0 | 43 | 0 | 0 | ― |
支払 | 10 | 2 | 44 | 6 | 1 | 0 | ||
合計 | 457 | 請求 | 111 | 74 | 262 | 6 | 4 | ― |
支払 | 55 | 36 | 316 | 31 | 13 | 6 | ||
請求割合 | 100% | ― | 24.2% | 16.1% | 57.3% | 1.3% | 0.8% | |
以下、各病院データ(合計のみ) | ||||||||
<中央病院> | ||||||||
合計 | 258 | 請求 | 5 | 19 | 225 | 6 | 3 | ― |
支払 | 1 | 4 | 215 | 26 | 7 | 5 | ||
請求割合 | 100% | ― | 1.9% | 7.3% | 87.2% | 2.3% | 1.1% | ― |
<xx病院> | ||||||||
合計 | 113 | 請求 | 81 | 29 | 3 | 0 | 0 | ― |
支払 | 46 | 15 | 45 | 3 | 3 | 1 | ||
請求割合 | 100% | ― | 71.6% | 25.6% | 2.6% | 0% | 0% | ― |
<xx病院> | ||||||||
合計 | 79 | 請求 | 20 | 24 | 34 | 0 | 1 | ― |
支払 | 6 | 17 | 51 | 2 | 3 | 0 | ||
請求割合 | 100% | ― | 25.3% | 30.3% | 43.0% | 0% | 1.2% | ― |
<鶴岡病院> | ||||||||
合計 | 7 | 請求 | 5 | 2 | 0 | 0 | 0 | ― |
支払 | 2 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | ||
請求割合 | 100% | ― | 71.4% | 28.5% | 0% | 0% | 0% | ― |
県は規程等に基づき適時請求を行うべきである。特に入院患者の診療報酬は高額となることから、退院時請求が何故できないのか、その原因の調査と分析を行い請求業務の速やかな改善が望まれる。
山形県立中央病院における入院費の退院当日請求に係るアドバイザリー業務委託契約
(抜粋)
この点、中央病院では平成 21 年 9 月適時請求できない原因をコンサルティング会社に外部委託して調査している。県は当該調査報告を受け、その内容を精査した上で適切な対策を図り、診療報酬の適時請求を行うことにより未収金の発生を未然に防ぐよう努力しなければならない。なお、当該委託契約内容等は次の通りである。
委託者 山形県立中央病院(以下、「甲」という。)と受託者○○○(以下、「乙」という。)は、甲における入院費の退院当日請求に係るアドバイザリー業務委託に関し、次の条項により委託契約を締結する。
(総則)
第 1 条 甲が乙に委託する業務は、次のとおりとする。
(1)甲が退院当日に入院費の請求書を当該患者に手渡すことで同日に医療費の収納を行い、個人未収金対策に資するため、乙は甲に実践的な運用改善指導等のアドバイザリー業務を実施する。
(2)甲及び乙は、この契約書及び別に定める委託仕様書に基づき、協力して誠実に業務を履行しなければならない。
(委託期間)
第 2 条 本契約の委託期間は、平成 21 年 10 月 1 日より平成 22 年 3 月 31 日までとする。ただし、甲・乙双方にて本委託業務目的の達成を確認した場合は、委託期間の中途であっても終了とする。
(委託料)
第 3 条 委託料の額は、月額262,500円(うち消費税及び地方消費税 12,500 円)とする。
2 乙が、委託業務の遂行により、甲の入院費の退院当日請求に係る基準となる実施率(以下、「基準率」という。)を上回った場合は、出来高分として委託料に加算
(以下、「加算額」という。)する。
3 前項の加算額の算定方法及び基準率の設定等については、甲乙協議のうえ別に定める。
委託仕様書(抜粋)
3 委託料加算額に係る基準率の取扱い
業務委託契約所第 3 条第 2 項に定める基準率は次のとおりとする。
(1)基準率の定義と算定方法
入院費の退院日当日請求の基準を、次の算式によって計算した実施率の30%とする。
実施率は、「退院日当日に退院患者が離院する前に納入通知書を手渡した実施件数」を分子とし、「(2)の加算額の対象となる総患者数」を分母とし計算する。
(2)基準率を基にした退院日当日請求実施率に応じた加算額
基準率を上回って実施した場合の加算額(税別)は、次のとおりとする。実施率 30%超 40%未満の場合 100 万円を加算する。
40%超 50%未満の場合 150 万円を加算する。
50%超の場合 200 万円を加算する。
② カード支払の実効性が確保されていない(鶴岡病院)。【意見A】
県は、医業未収金の発生を抑えるとともに診療報酬回収の促進を目的として、平成 19 年 3 月から全病院窓口においてクレジットカードでの支払ができるよう対策してきた。
当該システムの導入段階において、平成 19 年 3 月県立病院課が各病院に宛てた
「病院料金のクレジットカード納付について」によると、「病院におけるクレジットカード納付開始の周知については院内掲示」を行うことが基本とされていた。しかし、平成 21 年 11 月現在、鶴岡病院ではクレジットカードでの支払いが可能であることは窓口を見る限り明確な状況となっていなかった。
さらに、クレジットカードの読取機も会計窓口ではなく事務室内に設置されており、県が意図した未収金対策につき実効性が確保されていない結果となっていた。システム導入から 3 年を経過しようとしている現段階で、上記のような状況を放
置することは、未収金対策に係る手続として妥当とはいえない。
これに対し県は、平成 22 年 2 月に実施した本報告事前協議において、「開始の周知とクレジットカード支払が可能である事の明示は等しくなく、根拠が希薄である」旨、主張してきた。
しかし、なぜクレジットカードでの支払いを導入したのか、その原点は「医業未収金発生の抑制」と「診療報酬回収の促進」にあったはずである。ならば、当該対策の周知徹底は導入時だけのものではなく、初診患者にも判るよう常に行われるべきものである。
県は、自ら実施した未収金対策について、その周知徹底を常に意識し検証し実効性を確保すべきである。
③ 未払患者の再来院に対する手続規定がない(中央病院)。【意見B】
山形県病院事業局未収金取扱要領
第 2 章「未収金の発生防止」第 6(初期対応)第 3 項
病院長は、支払いが困難な患者及びすでに未払金が生じている患者については医療相 談等を行い、すみやかに納入させるよう努めなければならない。
県は県取扱要領において、未収金の再発を防止するため次のような規定を置いている。
これを受け、各病院が独自に整備した未収金管理マニュアルにおいても未収金再発防止の規定が整備されているが、中央病院において未払患者の再来院に対する手続規定が整備されていない。
中央病院は県内最大規模の県立病院であり、その一方過年度医業未収金残高で全体の 46.4%を占めている。前述の通り、中央病院でも独自の未収金取扱内規を整備しているが、未収金再発防止の規定がないまま、平成 14 年施行以来その改定を行っていない(前出表10参照)。
したがって、県は規程等の内容を定期的に検討し、未収金発生原因に対応する規定を速やかに整備し、運用すべきである。
また、県では医療の質の向上の実現と収支均衡による病院運営を目指し平成 19年に「山形県病院事業中期経営計画」を策定し、この中で「機動的で効率的な病院マネジメントの確立」を掲げ、この実現のために「医療情報システムの最適化を推進」してきている。これらを踏まえ、平成 21 年 3 月に「県立病院医療情報化基本
計画」を策定しており、平成 24 年を目標として全 4 病院共通のシステム導入をめざしている。当該システム導入により業務大半がすべての病院で共通して行えるようになり、未収金に係る業務もその対象とされているが、当該未払患者の再来院時手続につき明示がない。当該対策を計画に盛り込み、全病院で組織的に取り組むことが望ましい。
(2) 未収金の回収業務について
① 保証人に対する手続が行われていない。【意見A】
県各病院は入院患者に対して、その入院時、入院証(あるいは誓約書)に保証人の記載を求めている。この入院証等には、「診療費等の支払いについてすべての責任を負う」旨記載されているが、実際には回収担当者から徴収手続が行われるケースはほとんどなかったことは監査結果から明らかである。
この原因には、県取扱要領における規定上の不備が考えられる。
山形県病院事業局未収金取扱要領
第 2 章「未収金の発生防止」第 12(入院患者に係る保証人)
病院長は、催促しても入院診療に係る個人負担分が納入されないものについては、保証人に対して未納状況の通知をするものとする。
県取扱要領は、保証人に対する徴収手続について、患者本人の未納状況を通知する旨の規定のみに留まっており、具体的な徴収実施の規定が整備されていない。
県各病院が入院証(あるいは誓約書)に保証人の記載を求めているのは、入院
患者の支払能力につき入院時に調査することができず、また入院患者の死去等の場合に、診療報酬の回収を保証人により担保することを意図したものである。
そのために県はまず規程・マニュアルを再整備し、保証人に対する具体的な徴収手続を速やかに行うことが必要である。
② 相続調査が適時に行われていない。【意見A】
監査結果において、死亡患者の相続調査が適時適切に行われていないケースが散見される。相続調査が行われない間に時効完成しているケースもあり、その対策について早急に対応すべきである。
この点、法定相続人あるいは身元引受人(親族)からの同意を得て、相続調査が適時に行われるよう手続すべきである。それには、当該事項に係る診療契約及び入院申込書等書類の規定項目の整備ならびに手続規定を整備すべきである。
また、相続に関する相談窓口を上部組織である県立病院課等に設置し、現場の対応がスムーズに行われるよう統制をとることも重要であろう。
③ 回収業務の委託契約につき問題がある。【意見C】
年々増加する医業未収金について、県は収納業務の一部を民間事業者に委託することにより、民間事業者のノウハウを活用した効率的な収納業務を実施し、医業未収金残高の縮減を図ることとした。
しかし、平成 21 年 8 月に締結された契約書から、次のとおり問題点を検出した。
⚫ 委託の範囲外となった債権や受託者から返還された債権について、どのような回収手続を行うのか不明である。
⚫ 委託の範囲につき、担当者の恣意性が介入する余地を残しており、判断基準として明確でない(下記契約書抜粋、下線部参照)。
県は、明確な判断基準による条文を具備した契約書を作成した上で、委託業務につき実効性のある契約を結ぶべきである。
業務委託契約書(抜粋)
(2)委託する債権の範囲
委託する債権の範囲は、平成20年度以前に発生した未収金とし、各病院長が回収業務を委託することが相当であると判断した案件とする。ただし、次の①から
⑧に該当する債権は除くものとする
① 訴訟等の法的措置を実施している債権
② 診療内容等により債務者又は連帯保証人等が支払を拒む意思を明らかにしている債権(⇒委託せずどのような手続によって回収するのか不明)
③ 破産、免責となった債務者に係る債権
④ 無所得などの経済的な理由で未払いであることが明らかな債権
⑤ 債務者本人が死亡し、又は受刑中であり、連帯保証人がなく、かつ相続人が判明しない債権
⑥ 分割納付中又は支払方法等について相談中の債権
⑦ 債務者の未収金額残高が 1,000 円未満の債権
⑧ その他各病院長が病院で催告を継続することが適当と判断した債権(⇒判断基準として明確でなく、担当者の恣意性が介入するおそれがある)
なお、業務受託後、上記①から⑧の一に該当すると受託者が判断した案件においては、受託者は速やかに各県立病院にその旨を報告のうえ返却すること。
(3)委託業務の内容
③ 所在調査業務
居所が明らかでなく、料金案内業務が実施できない債務者については、受託者の裁量により、居所等の所在調査を実施すること。
④ 集金業務
債務者からの入金については、受託者において一旦集金し、県立病院課に納付すること。
④ 入金時の充当処理が適切に行われていない。【意見A】
民法は、債務者からの入金があった場合、先に弁済期が到来する債権に充当することが正しい処理としている。そして、もしそれよりも後に弁済期が到来する債権に充当する場合には、弁済者からの意思を明確に示した文書等が必要となる。
民法(抜粋)
第 488 条(充当の指定)
1 債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付のときに、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。(後略)
第 489 条(法定充当)
弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
しかし県では、債務返済に係る弁済者の意思表示文書等が明確に保管されていないまま、消滅時効の中断を目的として後に弁済期が到来する債権に充当しているケースが散見された。この手続は民法上の処理として妥当ではなく、債務者の時効に係る援用につき対抗できない処理となる。
一 債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
二 すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
三 債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
四 前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当す
る。
また、山形県立中央病院未収金取扱内規においては、複数債務のある患者から回収した診療費を当該複数債務すべてに充当する処理をするよう規定されているが、これは民法規定より妥当な処理と言えないため、改正が必要である。
県は、民法等法令に基づき適切な処理及び規定整備を行わなければならない。
山形県立中央病院未収金取扱内規(抜粋)第8 (回収した診療の充当方法)
複数の債務を持ち、かつ分割納入している患者から回収した診療費については、不納 欠損防止のため、複数の債務すべてに充当するいわゆる一括分納の方法をとる。
⑤ 法的措置の実施を検討すべきである。【意見B】
県はこれまで、医業未収金につき強制執行による法的措置を実施していない。これは、県取扱要領に催告状発行以降の手続に係る規定を明記していないことも一つの要因と考えられる。
県は、増加の一途を辿る医業未収金の回収を促進するため、法的措置の手続規定の整備及びその実施を検討すべきである。
⑥ 業務委託に関する県民への説明が不適切である。【意見A】
治療費滞納の回収業務委託に対して、県ホームページ「県民の生の声」に県民から次のような意見が寄せられ、県がこれに次のとおり回答している。
<意見>
県立病院における治療費滞納の回収を業務委託することに反対です。今回の県の対応は経済的な事情を抱える多くの県民に失望を与えかねない事例になるのではありませんか。(2009-05-11)
<回答>
平成 19 年度以前に県立病院を受診されたもののなお支払いが終わっていない医療費
は、平成 20 年度末で約3億4千万円になっており、県立病院の経営に影響を及ぼしております。そのうち約半分は、分割納入中の方の残金や受診後に生活保護を受けているなど事情があって未納となっているものですが、残り半分については、未納の理由が明らかでなく支払いを拒否しているものや、住所不明となっているものなどです。今回の委託は、この未納の理由が明らかでないものや住所不明のものなどを対象として、民間業者のノウハウを活用して、未収金残高の縮減を図るものです。
委託業務の具体的な内容は、未納者に対し、電話や文書による支払がない事実のお知 らせや、支払わない理由の確認、居所等の所在調査などです。また、経済的に困窮されている場合は、納入方法などの相談を受けることとしております。今後も県立病院が県民に安心・信頼・高度の医療を提供するため及び県民負担のxxを図るため、未収金の発生防止と回収に努めてまいりますので、ご理解くださるようお願いいたします。
(2009-05-22 その他)
上記、<回答>における業務委託内容に対する回答は、その正確性につき疑問が残る。
山形県立病院個人未収金収納業務委託仕様書では、その委託業務内容につき「①料金案内業務、② 支払方法相談業務、③ 所在調査業務、④ 集金業務、⑤ 各種報告業務」と明記している(2(6)②参照)。
「県民の生の声」における回答は、その業務委託内容にあたかも集金業務がないかのような誤解を与えかねない記述となっている。
県は収納業務委託に係る契約書・仕様書に基づく業務内容が、正しく県民に伝わるよう県ホームページの記述を改めるべきである。
(3) 債権の保全について
① 県取扱要領における時効の規定を適時に更新していない。【指摘事項】
県取扱要領での消滅時効期間は現在3年と解されているが、本要領の改正は今年度の平成 21 年 8 月であった。それまでは次の規定を置き、消滅時効期間を5年として事務を行っていた。
【平成 21 年度改正前】山形県病院事業局未収金取扱要領(抜粋)第 22(不納欠損)
3 診療費の時効は地方自治法 236 条により5年間であり、督促又は分割納入により
中断した時効は、督促状の指定期限又は分割納入の翌日から進行する。
診療に関する債権の消滅時効期間は3年と理解すべき判例が、平成17年に出ている(2(1)、(2)②ⅱ)参照)。
したがって、県は、判例に従い速やかに規程等を改定して時効についての担当者理解を更新すべきところ、4年以上放置していた。
この点、県は最新の判例等を各種規程等に反映するよう法的フォローを行った上で、定期的な規定等の見直しを行うことが肝要であろう。
② 債権の保全手続が適時適切に行われていない。【意見B】
未収金管理票等の閲覧や担当者からのヒアリングにより、債権の保全手続に対する理解が誤っており、適時適切に実行していないケースが検出された。
例えば、債権の単位は「請求ごと」であるべきところ「債務者ごと」と理解し、ある債権に対する入金があった場合にその債務者に対するその他の債権すべても 時効中断されるものと誤解していた。そのため、3年内に一部入金があった債務者に対してその他の債権も含めた承認手続を行っておらず、実際には時効完成していたケースが多々検出された。
また、債務の分割納入申請書の入手は、民法上の承認に当たることから申請書入手により時効が中断するものと考えられるが、そのように理解されておらず手続していないケースも散見された。
債権の保全は、県として統一した手続が行われるべきであり、病院や担当者によって異なる手続が行われている現状は改善されるべきである。
③ 時効完成の債権につき手続が行われていない。【意見A】
前述のとおり、診療報酬の請求から消滅時効期間3年を経過した債権については消滅時効が完成しているが、援用がない限り債権は消滅していない状況にある。
県は時効完成状況にある債務につき特段手続を行っておらず、債務者の時効援用を待って処理するケースがほとんどであることは監査結果から明らかである。そして、この現状が滞留債権を増大させている要因と考えられる。
したがって、県はまず、なぜ時効が完成してしまったのかその原因を債権ごとに究明し、今後の債権管理に活用する手続を踏むべきであろう。さらに、弁済者の充当意思を明確に示した一部納入や分割納入申請書の入手等の承認手続により債権は保全されることから、県は当該保全手続及びこれらに基づく回収手続を行うことが妥当である。
④ 不納欠損処理すべき債権が含まれる可能性がある【意見C】
前述①②記載のとおり、時効についての理解や手続に法律上の誤解等があったこ
とにより、すでに時効完成している債権が多額に上っている。この中に不納欠損処理されるべき債権が含まれている可能性があることから、県は時効完成済みの債権につき精査する必要がある。
以下、時効成立リスクのある債権高、債権年齢表と時効完成割合をまとめると、時効完成し、時効成立リスクのある債権は全体の 4 割以上にも上っていることがわかる。
表16:平成 20 年度末過年度医業未収金 時効成立リスクのある債権高(単位:千円)
中央病院 | xx病院 | xx病院 | 鶴岡病院 | 合計 | |||
H21/3 時点の過年度未 収金残高 A | 155,613 | 113,297 | 47,294 | 19,076 | 335,282 | ||
H18/4 以降、分割納入 手続等実施 B | 40,416 | 25,598 | 4,644 | 14,429 | 85,089 | ||
H18/4 以降、支払督促 等実施 C | 16,361 | 11,805 | ― | ― | 28,167 | ||
H21/3 時点の手続未 了残高 D=A-B-C | 98,834 | 75,893 | 42,649 | 4,647 | 222,025 | ||
手続未了割合 D/A | (63.5%) | (66.9%) | (90.1%) | (24.3%) | (66.2%) | ||
うち H21/3 時点x x未達(3 年内)E | 33,872 | 24,705 | 13,371 | 1,078 | 73,028 | ||
援用により時効成 立する残高 F=D-E | 64,962 | 51,187 | 29,278 | 3,569 | 148,997 | ||
時効完成割合 F/A | (41.7%) | (45.1%) | (61.9%) | (18.7%) | (44.4%) |
表17:平成 20 年度末過年度医業未収金 債権年齢表と時効完成割合(単位:千円)
中央病院 | xx病院 | xx病院 | 鶴岡病院 | 合計 | ||
H21/3 時点の過年度未 収金残高 A | 155,613 | 113,297 | 47,294 | 19,076 | 335,282 | |
① | 平成 18~19 年度 | 59,145 | 37,963 | 13,369 | 7,033 | 117,513 |
② | 平成 13~17 年度 | 83,865 | 57,323 | 27,027 | 9,345 | 177,562 |
③ | 平成 8~12 年度 | 11,553 | 16,613 | 6,822 | 2,593 | 37,582 |
④ | 平成 3~7 年度 | 1,049 | 1,362 | 73 | 103 | 2,589 |
⑤ | 平成 2 年度以前 | ― | 35 | ― | ― | 35 |
平成 17 年度以前 ②~⑤計 G | 96,468 | 75,333 | 33,924 | 12,043 | 217,769 |
援用により時効成立す る残高 F | 64,962 | 51,187 | 29,278 | 3,569 | 148,997 |
時効完成割合 F/G | (67.3%) | (67.9%) | (86.3%) | (29.6%) | (68.4%) |
(4) 延滞金又は違約金について
① 延滞金又は違約金を課すべきである。【意見B】
県は、医業未収金につき延滞金又は違約金(以下、「延滞金等」という。)を課していない。この根拠につき、「延滞金は公法上の歳入についての制裁金であるため、私法上の債権である医業未収金について延滞金を科することはできない」ものと県は考えている。
しかし、医業未収金が私法上の債権であるとしても、診療報酬が診療契約に基づく医療行為に対する報酬である以上、診療契約に当該延滞金等に係る規定を設けることにより、延滞金等を科することは可能である。
消費者契約法(抜粋)
第 9 条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
1 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
2 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗 じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
また、消費者契約法第 9 条には、消費者が支払う損害賠償の額を「予定」する場合、あるいは「年利 14.6%を超える」法外な金額の場合に無効とする規定を置いており、当該範囲内であれば合法的に損害賠償として延滞金等を課することが可能であると解釈できる。
そもそも、延滞金等は県の収入を目的とするものではなく、滞納者にペナルティを科することによって、適時適切に納入している患者と明確な差別化をし、患者の滞納を未然に防ぐ効果を期待するものである。
県は、診療契約あるいは入院証等その他の規定を再度見直し、延滞金等について
の規定整備及び運用を検討すべきである。
第11 地方税(総務部)
【制度の説明】
(1)概要
税収とは国や地方公共団体による徴税による収入であり、税収は国家及び地方自治体の財源の中心となっている。
わが国の租税体系はおおよそ以下の通りである。
総務省資料及び山形県資料による。
区分 | 主な税目 | ||
国税 | 普通税 | 所得税、法人税、相続税、地価税、贈与税、消費税、酒税、たばこ税、たばこ特別税、揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、石油石炭税、印紙税、自動車重量税、関税、登録免許税、とん税、 地方法人特別税、地方揮発油税 | |
目的税 | 特別とん税、電源開発促進税 | ||
地方税 | 道府県税 | 普通税 | 道府県民税、事業税、地方消費税、不動産取得税、道府県たばこ税、ゴルフ場利用税、自動車取得税、軽油引取税、自動車税、鉱 区税、固定資産税 |
目的税 | 狩猟税、水利地益税 | ||
市町村税 | 普通税 | 市町村民税、固定資産税、軽自動車税、市町村たばこ税、鉱産税、 特別土地保有税 | |
目的税 | 入湯税、事業所税、都市計画税、水利地益税、共同施設税、宅地開発税、国民健康保険税 |
(2)各税目の概要
①個人住民税
・納税義務者は、市町村・都道府県内に住所を有する個人(均等割・所得割)及び市町村・都道府県内に事務所、事業所又は家屋敷を有する個人(均等割)である。
・課税方式は、市町村が税額を計算し、確定する賦課課税方式である。
・課税標準は、前年分の所得金額である。
②法人住民税
・納税義務者は、都道府県及び市町村に事務所又は事業所を有する法人である。
・課税方式は、申告納付方式である。
・課税標準は、連結申告法人は個別帰属法人税額であり、それ以外の法人は法人税額である。
③法人事業税
・納税義務者は、都道府県に事務所又は事業所を設けて事業を行う法人である。
・課税方式は、申告納付方式である。
・課税標準は、付加価値割については付加価値額、資本割については資本金等の額、所得割については所得及び清算所得、収入割については収入金額である。
④地方消費税
・納税義務者は、課税資産の譲渡等(役務の提供を含む)を行った事業者、又は、課税貨物を保税地域から引き取る者である。
・課税方式は、本来は都道府県に申告納付することとされているが、当分の間、国(税務署又は税関)に消費税とともに申告納付することとされている。
・課税標準は、消費税額である。
⑤不動産取得税
・納税義務者は、不動産の取得者である。
・課税方式は、賦課課税方式による。
・課税標準は、取得した不動産の価格(固定資産課税台帳に登録された固定資産の評価額で一定の場合、軽減措置あり)である。
⑥地方たばこ税
・納税義務者は、製造たばこにつき、小売販売業者若しくは消費者等に売渡しをし、又は消費等をする製造たばこの製造者、特定販売業者及び卸売販売業者で
ある。
・課税方式は、申告納付方式である。
・課税標準は、売渡し等に係る製造たばこの本数である。
⑦ゴルフ場利用税
・納税義務者は、ゴルフ場の利用者である。
・課税方式は、ゴルフ場の利用者からゴルフ場経営者が都道府県に代わって徴収し、都道府県に納付する申告納税方式である。
・税率は、一人一日につき、ゴルフ場ごとに定められた額である。
⑧軽油引取税
・納税義務者は、元売業者又は特約業者から現実の納入を伴う軽油の引取を行う者である。
・課税方式は、元売業者又は特約業者が都道府県に代わって軽油の引取を行う者から徴収し、都道府県に納付する申告納税方式である。
・課税標準は、軽油の数量である。
⑨自動車税
・納税義務者は、自動車の所有者である。
・課税方式は、賦課課税方式である。
・税率は、自動車一台について、種別、排気量等により定められた額である。
【山形県の県税収入の概況について】
山形県が公表した平成 20 年度一般会計の歳入歳出決算概要は次の通りである。総 括
区分 | 20 年度 | 19 年度 | 比較増減 | 増減率 | |
歳入 | ① | 5653 億 4500 万円 | 5689 億 2200 万円 | △35 億 7700 万円 | △0.6% |
歳出 | ② | 5608 億 9200 万円 | 5661 億 3000 万円 | △52 億 3900 万円 | △0.9% |
形式収支 ①-② | ③ | 44 億 5400 万円 | 27 億 9200 万円 | 16 億 6200 万円 | 59.5% |
翌年度に繰り 越すべき財源 | ④ | 7億 9800 万円 | 4 億 5700 万円 | 3 億 4100 万円 | 74.7% |
実質収支 ③-④ | ⑤ | 36 億 5600 万円 | 23 億 3500 万円 | 13 億 2000 万円 | 56.5% |
歳 入
区分 | 決算額 | 増減額 | 摘要 | |
自 主 x x | 県税 | 1142 億 2500 万円 | △30 億 9600 万円 | 県民税、事業税、自動車税など。 |
諸収入 | 707 億 3900 万円 | 31 億 8300 万円 | 県による貸付の返済額、県が受託 した事業収入など。 | |
地方消費税清算金 | 212 億 5200 万円 | △16 億 3900 万円 | 全国で納められた地方消費税のうち、山形県分として清算された 金額。 | |
繰入金 | 68 億 7300 万円 | △90 億 3600 万円 | 特別会計や基金から繰り入れら れた金額。 | |
使用料・手数料 | 82 億 400 万円 | △1 億 2300 万円 | 県の施設を利用した際に利用者 からの利用料金など。 | |
分担金・負担金 | 29 億 4200 万円 | △5 億 3900 万円 | 県が道路や港を建設する際の実 際の便益者から受ける金額。 | |
その他の収入 | 41 億 8300 万円 | △15 億 500 万円 | 前年度からの繰越金、県財産の貸 付や売却収入、寄付金 など。 |
区分 | 決算額 | 増減額 | 摘要 | |
依存財源 | 地方交付税 | 1883 億 5100 万円 | △3 億 8300 万円 | 国からの一定の基準に基づく交 付金額。 |
県債 | 761 億 6400 万円 | 23 億 1000 万円 | 県が 20 年度中に借り入れた金 額。 | |
国庫支出金 | 663 億 6900 万円 | 65 億 3200 万円 | 県が行う建設工事等の事業のう ち国から受けた補助金など。 | |
その他の収入 | 60 億 4300 万円 | 7 億 1900 万円 | 地方譲与税、地方特例交付金、交 通安全対策特別交付金 |
歳 出(目的別歳出を記載)
区分 | 決算額 | 増減額 | 摘要 |
教育費 | 1193 億 5000 万円 | △34 億 2400 万円 | 県立高校の整備や教職員給料。 |
公債費 | 944 億 7900 万円 | △6 億 4000 万円 | 県債等の平成 20 年度分の返済額 |
土木費 | 754 億 9600 万円 | △96 億 2300 万円 | 道路や橋の建設・修繕、河川や公園整備。 |
商工費 | 582 億 800 万円 | 15 億 4800 万円 | 商工業や観光の振興。 |
xx費 | 577 億 4900 万円 | 52 億 7600 万円 | 介護保険制度の推進や子育て家庭への 支援。 |
総務費 | 361 億 2300 万円 | 22 億 3600 万円 | 政策立案、防災関係の仕事、庁舎の管理。 |
農林水産業費 | 292 億 5700 万円 | △9 億 7400 万円 | 農業、林業、漁業の振興。 |
警察費 | 277 億 1600 万円 | △7 億 6300 万円 | 県民の生命、身体及び財産の保護、公共 の安全と秩序の維持。 |
衛生費 | 214 億 900 万円 | 1 億 7300 万円 | 健康で衛生的な生活環境の推進。 |
その他 | 411 億 500 万円 | 9 億 5200 万円 | 議会費、労働費、災害復旧費及び諸支出 金。 |
以上のように県税収入は 1,142 億 2,500 万円が計上されており、県一般会計の歳入の 20.2%を占める。また、歳入の各項目と歳出の各項目とは必ずしも紐付きではないが、県税収入は歳出からみれば県全体の教育費 1,193 億 5,000 万円をほぼ賄っている金額規模である。
また、平成 20 年度決算の歳入のうち「県税」の款は、以下の通りとなっている。
(金額単位:千円)
項 | 予算規模 | a 調定額 | b 収入済額 | c 不納 欠損額 | d 収入未済額 | a に対する d の割 合(%) |
1.県民税 | 37,184,000 | 39,119,129 | 37,335,903 | 63,028 | 1,720,196 | 4.40 |
2.事業税 | 27,269,000 | 27,550,174 | 27.408.067 | 12,368 | 129,738 | 0.47 |
3.地方消費税 | 13,112,000 | 13,113,911 | 13,113,911 | - | - | - |
4.不動産取得税 | 2,746,000 | 2,934,123 | 2,768,424 | 12,057 | 153,640 | 5,24 |
5.県たばこ税 | 2,134,000 | 2,134,791 | 2,134,791 | - | - | - |
6.ゴルフ場利用税 | 160,000 | 170,866 | 163,521 | 123 | 7,222 | 4.23 |
7.自動車税 | 17,405,000 | 17,889,224 | 17,413,270 | 59,511 | 416,589 | 2.33 |
8.鉱区税 | 5,000 | 5,776 | 5,740 | 36 | - | - |
9.自動車取得税 | 3,208,000 | 3,208,025 | 3,208,025 | - | - | - |
10.軽油引取税 | 10,261,000 | 10,486,843 | 10,452,388 | 2,737 | 31,716 | 0.30 |
11.狩猟税 | 34,000 | 34,222 | 34,222 | - | - | - |
12.産業廃棄物税 | 182.000 | 186,806 | 186,806 | - | - | - |
13.旧法による税 | - | 6,730 | 377 | 57 | 6,295 | 93.54 |
計 | 113,700,000 | 116,840,626 | 114,225,452 | 149,921 | 2,465,399 | 2.11 |
1)「調定額」とは、当該年度で収入として認識すべき金額であり、過年度からの未収繰越額を含む。
「収入済額」とは、「調定額」のうち実際に入金された金額である。
「不納欠損額」とは、未収金額のうち、時効等により回収が不可能と判断された残高について、一定の手続きを経て欠損処理されたものである。当該処理は、債務者にとっては支払いを免除されたことを意味する。
2)「調定額」に対する「収入未済額」の割合は 2.11%あるが、金額は 24 億 6539 万円である。
3)「収入未済額」の上位 5 税目は次の通りである。
金額単位 千円 | ||
1 | 県民税 | 1,720,196 |
2 | 自動車税 | 416,589 |
3 | 不動産取得税 | 153,640 |
4 | 事業税 | 129,738 |
5 | 軽油引取税 | 31,716 |
4)「不納欠損額」は合計で 1 億 4992 万円である。
(3)未収金が発生する事情
課税方式が申告納付(入)方式であるものは、主に税務調査等により追徴税額が生じた場合である。
課税方式が賦課課税方式であるものは、賦課されたのち納付がなされない場合である。
【各税目の未収金の状況】
先に記載した上位 5 位の税目の状況は次の通りである。なお、翌年度においてxx修正等により e の金額が翌年度 a「滞納繰越額」と一致しない場合がある。
(1)県民税
県民税は個人県民税、法人県民税及びxx割に区分される。
①個人県民税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | xx 額 | 現年度発生額 | 14,327,260,555 | 14,524,916,218 | 15,980,065,344 | 30,141,004,495 | 31,009,079,605 |
滞納繰越額 | 847,618,870 | 856,513,950 | 877,838,809 | 896,807,157 | 1,332,222,346 | ||
計 | 15,174,879,425 | 15,381,430,168 | 16,857,904,153 | 31,037,811,652 | 32,341,301,951 | ||
b | 収入済 額 | 現年度発生額 | 14,112,606,552 | 14,290,552,611 | 15,712,435,038 | 29,483,667,339 | 30,319,437,087 |
滞納繰越額 | 134,958,513 | 137,244,666 | 145,650,896 | 154,226,957 | 283,367,472 | ||
計 | 14,247,565,065 | 14,427,797,277 | 15,858,085,934 | 29,637,894,296 | 30,602,804,559 | ||
c=a-b | 927,314,360 | 953,632,891 | 999,818,219 | 1,399,917,356 | 1,738,497,392 | ||
d | 不納欠損額 | 71,048,612 | 87,666,836 | 104,249,084 | 70,761,730 | 59,522,740 | |
e=c-d | 856,265,748 | 865,966,055 | 895,569,135 | 1,329,155,626 | 1,678,974,652 |
※印 件数についてはデータがなく、記載を省略する。
②法人県民税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額 | 現年度発生 額 | 4,948,710,500 | 5,035,765,600 | 5,416,258,200 | 5,719,826,700 | 5,446,176,900 |
滞納繰越額 | 50,322,195 | 66,951,978 | 37,128,980 | 33,923,756 | 34,091,963 | ||
計 | 4,999,032,695 | 5,102,717,578 | 5,453,387,180 | 5,753,750,456 | 5,480,268,863 | ||
b | 収入済 額 | 現年度発生 額 | 4,912,529,287 | 5,024,055,503 | 5,400,727,707 | 5,703,004,487 | 5,427,886,929 |
滞納繰越額 | 10,279,668 | 34,674,560 | 8,423,672 | 8,428,376 | 7,743,447 | ||
計 | 4,922,808,955 | 5,058,730,063 | 5,409,151,379 | 5,711,432,863 | 5,435,630,376 | ||
c=a-b | 76,223,740 | 43,987,515 | 44,235,801 | 42,317,593 | 44,638,487 | ||
d | 不納欠損額 | 9,157,959 | 6,150,235 | 6,856,545 | 7,997,430 | 3,505,918 | |
e=c-d | 67,065,781 | 37,837,280 | 37,379,256 | 34,320,163 | 41,132,569 | ||
f | e のうち、延納等手 続額 | 36,010,805 | 9,836,537 | 9,921,927 | 7,245,545 | 8,371,224 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額に係る件数 | 現年度発生額 | 31,053 | 31,075 | 31,157 | 31,435 | 31,012 |
滞納繰越額 | 1,272 | 1,229 | 1,164 | 1,033 | 1,060 | ||
計 | 32,325 | 32,304 | 32,321 | 32,468 | 32,072 | ||
b | 収入済額に係る件数 | 現年度発生額 | 30,625 | 30,696 | 30,767 | 30,969 | 30,431 |
滞納繰越額 | 279 | 258 | 272 | 227 | 233 | ||
計 | 30,904 | 30,954 | 31,039 | 31,196 | 30,664 | ||
c=a-b | 1,421 | 1,350 | 1,282 | 1,272 | 1,408 | ||
d | 不納欠損額に係る件数 | 192 | 182 | 243 | 210 | 163 | |
e=c-d | 1,229 | 1,168 | 1,039 | 1,062 | 1,245 | ||
f | e のうち、延納等手続額に係る 件数 | 229 | 188 | 182 | 163 | 215 |
【上位 10 位】
債務者 | 金額(円) | 過年度不納欠 損額合計(円) | 発生時期 | 発生事由 | |
1 | 法人 1 | 1,313,300 | H20.1 | 倒産 | |
2 | 法人 2 | 970,000 | H10.7 | 多額の債務 | |
3 | 法人 3 | 730,800 | H11.9 | 経済的困窮 | |
4 | 法人 4 | 573,000 | H19.9 | 経済的困窮 | |
5 | 法人 5 | 569,000 | H17.8 | 事業廃止 | |
6 | 法人 6 | 493,900 | H18.10 | 事業不振 | |
7 | 法人 7 | 472,600 | H20.1 | 倒産 | |
8 | 法人 8 | 400,800 | H19.7 | 経済的困窮 | |
9 | 法人 9 | 388,400 | H18.5 | 倒産 | |
10 | 法人 10 | 380,400 | H12.11 | 経済的困窮 |
③xx割
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額 | 現年度発生額 | 1,779,664,779 | 879,145,622 | 684,127,569 | 910,659,322 | 986,426,328 |
滞納繰越額 | |||||||
計 | 1,779,664,779 | 879,145,622 | 684,127,569 | 910,659,322 | 986,426,328 | ||
b | 収入済額 | 現年度発生額 | 1,779,664,779 | 879,145,622 | 684,127,569 | 910,659,322 | 986,336,578 |
滞納繰越額 | |||||||
計 | 1,779,664,779 | 879,145,622 | 684,127,569 | 910,659,322 | 986,336,578 | ||
c=a-b | 0 | 0 | 0 | 0 | 89,750 | ||
d | 不納欠損額 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
e=c-d | 0 | 0 | 0 | 0 | 89,750 | ||
f | e のうち、延納等手続額 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額に係る 件数 | 現年度発生額 | 9,906 | 9,536 | 9,546 | 8,432 | 7,816 |
滞納繰越額 | |||||||
計 | 9,906 | 9,536 | 9,546 | 8,432 | 7,816 | ||
b | 収入済額に係 る件数 | 現年度発生額 | 9,906 | 9,536 | 9,546 | 8,432 | 7,813 |
滞納繰越額 | |||||||
計 | 9,906 | 9,536 | 9,546 | 8,432 | 7,813 | ||
c=a-b | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | ||
d | 不納欠損額に係る件数 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
e=c-d | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | ||
f | e のうち、延納等手続額に 係る件数 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
(2)自動車税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額 | 現年度発生額 | 18,061,254,400 | 18,426,911,900 | 18,075,321,500 | 17,909,360,300 | 17,475,201,400 |
滞納繰越額 | 474,548,613 | 479,199,358 | 470,587,227 | 448,744,343 | 414,023,396 | ||
計 | 18,535,803,013 | 18,906,111,258 | 18,545,908,727 | 18,358,104,643 | 17,889,224,796 | ||
b | 収入済額 | 現年度発生額 | 17,901,045,722 | 18,280,576,293 | 17,935,681,131 | 17,783,366,169 | 17,333,962,174 |
滞納繰越額 | 107,739,890 | 111,411,414 | 112,644,600 | 104,461,344 | 79,307,874 | ||
計 | 18,008,785,612 | 18,391,987,707 | 18,048,325,731 | 17,887,827,513 | 17,413,270,048 | ||
c=a-b | 527,017,401 | 514,123,551 | 497,582,996 | 470,277,130 | 475,954,748 | ||
d | 不納欠損額 | 48,450,215 | 44,592,324 | 49,510,041 | 56,174,780 | 59,511,594 | |
e=c-d | 478,567,186 | 469,531,227 | 448,072,955 | 414,102,350 | 416,443,154 | ||
f | e のうち、延納等手続額 | 93,886,150 | 112,231,981 | 131,147,415 | 119,444,965 | 98,604,860 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額に係る 件数 | 現年度発生額 | 570,251 | 566,667 | 548,502 | 539,176 | 525,178 |
滞納繰越額 | 13,638 | 13,675 | 13,307 | 12,562 | 11,471 | ||
計 | 583,889 | 580,342 | 561,809 | 551,738 | 536,649 | ||
b | 収入済額に係 る件数 | 現年度発生額 | 565,853 | 562,713 | 544,750 | 535,819 | 521,354 |
滞納繰越額 | 2,922 | 3,050 | 3,065 | 2,843 | 2,179 | ||
計 | 568,775 | 565,763 | 547,815 | 538,662 | 523,533 | ||
c=a-b | 15,114 | 14,579 | 13,994 | 13,076 | 13,116 | ||
d | 不納欠損額に係る件数 | 1,442 | 1,272 | 1,429 | 1,599 | 1,620 | |
e=c-d | 13,672 | 13,307 | 12,565 | 11,477 | 11,496 | ||
f | e のうち、延納等手続額に 係る件数 | 2,802 | 3,207 | 3,678 | 3,477 | 2,792 |
【上位 10 位】
債務者 | 金額(円) | 過年度不納欠 損額合計(円) | 発生時期 | 発生事由 | |
1 | 個人 1 | 1,501,600 | 466,200 | H13.5 | 経営難 |
2 | 個人 2 | 1,459,300 | H8.5 | 経済的困窮 | |
3 | 個人 3 | 1,471,100 | 446,600 | H4.5 | 多額の債務 |
4 | 個人 4 | 1,012,900 | H15.6 | 事業不振 | |
5 | 個人 5 | 699,200 | H15.6 | 経済的困窮 | |
6 | 個人 6 | 647,348 | H9.6 | 経済的困窮 | |
7 | 個人 7 | 536,200 | H11.5 | 経済的困窮 | |
8 | 個人 8 | 518,400 | H16.5 | 経済的困窮 | |
9 | 法人 1 | 513,300 | H12.5 | 経済的困窮 | |
10 | 個人 9 | 507,700 | H12.5 | 経済的困窮 |
(3)不動産取得税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | xx 額 | 現年度発生額 | 3,428,216,710 | 2,997,360,030 | 3,072,130,310 | 3,002,306,760 | 2,761,957,240 |
滞納繰越額 | 211,244,985 | 216,794,610 | 247,660,961 | 254,805,874 | 172,166,319 | ||
計 | 3,639,461,695 | 3,214,154,640 | 3,319,791,271 | 3,257,112,634 | 2,934,123,559 | ||
b | 収入済 額 | 現年度発生額 | 3,369,560,210 | 2,901,714,968 | 2,983,269,853 | 2,975,459,492 | 2,736,492,747 |
滞納繰越額 | 39,715,331 | 50,191,920 | 51,085,951 | 101,016,132 | 31,932,205 | ||
計 | 3,409,275,541 | 2,951,906,888 | 3,034,355,804 | 3,076,475,624 | 2,768,424,952 | ||
c=a-b | 230,186,154 | 262,247,752 | 285,435,467 | 180,637,010 | 165,698,607 | ||
d | 不納欠損額 | 4,859,644 | 10,106,691 | 22,877,808 | 5,480,691 | 12,057,889 | |
e=c-d | 225,326,510 | 252,141,061 | 262,557,659 | 175,156,319 | 153,640,718 | ||
f | e のうち、延納等手 続額 | 93,777,467 | 148,797,532 | 167,459,503 | 105,792,712 | 91,826,493 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
A | 調定額に係る件数 | 現年度発生 額 | 17,184 | 15,794 | 15,282 | 14,716 | 13,651 |
滞納繰越額 | 700 | 701 | 667 | 646 | 577 | ||
計 | 17,884 | 16,495 | 15,949 | 15,362 | 14,228 | ||
B | 収入済額に係る件数 | 現年度発生 額 | 16,962 | 15,594 | 15,052 | 14,538 | 13,461 |
滞納繰越額 | 144 | 163 | 172 | 176 | 128 | ||
計 | 17,106 | 15,757 | 15,224 | 14,714 | 13,589 | ||
c=a-b | 000 | 000 | 000 | 648 | 639 | ||
D | 不納欠損額に係る件数 | 33 | 39 | 43 | 37 | 48 | |
e=c-d | 745 | 699 | 682 | 611 | 591 | ||
F | e のうち、延納等手続額に係 る件数 | 207 | 197 | 218 | 227 | 178 |
【上位 10 位】
債務者 | 金額(円) | 過年度不納欠 損額合計(円) | 発生時期 | 発生事由 | |
1 | 法人 1 | 21,936,100 | H17.9 | 経済的困窮 | |
2 | 法人 2 | 17,230,649 | H4.11 | 経済的困窮 | |
3 | 法人 3 | 10,983,900 | H17.3 | 経済的困窮 | |
4 | 法人 4 | 5,791,400 | H12.11 | 会社解散 | |
5 | 個人 1 | 3,318,948 | H18.10 | 財産なし | |
6 | 法人 5 | 2,538,345 | H5.7 | 経済的困窮 | |
7 | 法人 6 | 2,414,400 | H19.5 | 廃業 | |
8 | 法人 7 | 2,370,700 | H14.7 | 経済的困窮 | |
9 | 個人 2 | 2,013,200 | H19.1 | 経済的困窮 | |
10 | 法人 8 | 1,734,400 | H18.6 | 経済的困窮 |
(4)事業税
事業税は、個人事業税及び法人事業税に区分されている。
①個人事業税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額 | 現年度発生額 | 1,062,597,600 | 1,077,220,000 | 1,005,318,200 | 1,044,686,700 | 982,475,800 |
滞納繰越額 | 94,324,879 | 87,146,113 | 87,897,337 | 81,843,183 | 86,170,630 | ||
計 | 1,156,922,479 | 1,164,366,113 | 1,093,215,537 | 1,126,529,883 | 1,068,646,430 | ||
b | 収入済額 | 現年度発生額 | 1,044,604,551 | 1,055,726,422 | 992,511,751 | 1,023,942,246 | 962,572,224 |
滞納繰越額 | 17,257,804 | 16,528,086 | 15,163,992 | 11,533,107 | 14,347,564 | ||
計 | 1,061,862,355 | 1,072,254,508 | 1,007,675,743 | 1,035,475,353 | 976,919,788 | ||
c=a-b | 95,060,124 | 92,111,605 | 85,539,794 | 91,054,530 | 91,726,642 | ||
d | 不納欠損額 | 7,782,511 | 4,181,868 | 3,451,811 | 4,800,500 | 10,382,333 | |
e=c-d | 87,277,613 | 87,929,737 | 82,087,983 | 86,254,030 | 81,344,309 | ||
f | e のうち、延納等手続額 | 20,651,234 | 36,088,187 | 34,978,322 | 42,883,565 | 32,250,667 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額に係る件数 | 現年度発生額 | 16,299 | 16,488 | 15,013 | 15,055 | 13,762 |
滞納繰越額 | 1,326 | 1,208 | 1,158 | 1,025 | 1,002 | ||
計 | 17,625 | 17,696 | 16,171 | 16,080 | 14,764 | ||
b | 収入済額に係る件数 | 現年度発生額 | 16,027 | 16,242 | 14,813 | 14,798 | 13,500 |
滞納繰越額 | 269 | 218 | 245 | 187 | 167 | ||
計 | 16,296 | 16,460 | 15,058 | 14,985 | 13,667 | ||
c=a-b | 1,329 | 1,236 | 1,113 | 1,095 | 1,097 | ||
d | 不納欠損額に係る件数 | 120 | 76 | 86 | 93 | 95 | |
e=c-d | 1,209 | 1,160 | 1,027 | 1,002 | 1,002 | ||
f | e のうち、延納等手続額に係る件数 | 296 | 337 | 359 | 375 | 375 |
【上位 10 位】
債務者 | 金額(円) | 過年度不納欠 損額合計(円) | 発生時期 | 発生事由 | |
1 | 個人 1 | 3,162,200 | H13.12 | 経済的困窮 | |
2 | 個人 2 | 1,982,500 | H20.5 | 経済的困窮 | |
3 | 個人 3 | 1,906,244 | H17.7 | 経済的困窮 | |
4 | 個人 4 | 1,841,500 | H21.3 | 経済的困窮 | |
5 | 個人 5 | 1,609,100 | 744,000 | H15.4 | 経済的困窮 |
6 | 個人 6 | 1,351,200 | H13.1 | 経済的困窮 | |
7 | 個人 7 | 1,294,300 | H20.12 | 経済的困窮 | |
8 | 個人 8 | 1,240,300 | H17.8 | 経済的困窮 | |
9 | 個人 9 | 1,203,600 | H10.8 | 経済的困窮 | |
10 | 個人 10 | 1,179,560 | H17.8 | 経済的困窮 |
②法人事業税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額 | 現年度発生額 | 21,668,348,100 | 23,708,466,200 | 26,187,040,200 | 26,939,181,600 | 26,417,465,400 |
滞納繰越額 | 116,273,609 | 137,354,405 | 61,979,943 | 68,705,787 | 64,062,906 | ||
計 | 21,784,621,709 | 23,845,820,605 | 26,249,020,143 | 27,007,887,387 | 26,481,528,306 | ||
b | 収入済額 | 現年度発生額 | 21,598,697,279 | 23,695,183,596 | 26,146,550,993 | 26,901,254,200 | 26,405,015,099 |
滞納繰越額 | 11,885,457 | 74,083,254 | 11,910,413 | 17,874,831 | 26,133,093 | ||
計 | 21,610,582,736 | 23,769,266,850 | 26,158,461,406 | 26,919,129,031 | 26,431,148,192 | ||
c=a-b | 174,038,973 | 76,553,755 | 90,558,737 | 88,758,356 | 50,380,114 | ||
d | 不納欠損額 | 32,169,268 | 10,918,512 | 3,066,350 | 22,292,750 | 1,986,400 | |
e=c-d | 141,869,705 | 65,635,243 | 87,492,387 | 66,465,606 | 48,393,714 | ||
f | e のうち、延納等手続 額 | 92,659,804 | 33,683,828 | 33,834,128 | 32,135,325 | 19,597,119 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額に係る件数 | 現年度発生額 | 14,749 | 15,034 | 15,742 | 16,109 | 14,681 |
滞納繰越額 | 271 | 255 | 216 | 219 | 214 | ||
計 | 15,020 | 15,289 | 15,958 | 16,328 | 14,895 | ||
b | 収入済額に係る件数 | 現年度発生額 | 14,655 | 14,956 | 15,634 | 15,990 | 14,569 |
滞納繰越額 | 67 | 74 | 65 | 68 | 68 | ||
計 | 14,722 | 15,030 | 15,699 | 16,058 | 14,637 | ||
c=a-b | 298 | 259 | 259 | 270 | 258 | ||
d | 不納欠損額 | 36 | 31 | 30 | 47 | 16 | |
e=c-d | 262 | 228 | 229 | 223 | 242 | ||
f | e のうち、延納等手続額に係る件数 | 61 | 40 | 37 | 42 | 49 |
【上位 10 位】
債務者 | 金額(円) | 過年度不納欠損 額合計(円) | 発生時期 | 発生事由 | |
1 | 法人 1 | 10,710,655 | H10.7 | 多額の債務 | |
2 | 法人 2 | 4,247,800 | H20.1 | 倒産 | |
3 | 法人 3 | 3,273,900 | H10.9 | 経済的困窮 | |
4 | 法人 4 | 3,113,055 | H12.5 | 経済的困窮 | |
5 | 法人 5 | 2,538,300 | H18.10 | 事業不振 | |
6 | 法人 6 | 2,081,297 | H18.5 | 倒産 | |
7 | 法人 7 | 1,745,600 | H19.11 | 経済的困窮 | |
8 | 法人 8 | 1,303,700 | H19.4 | 経済的困窮 | |
9 | 法人 9 | 1,222,100 | H19.10 | 経済的困窮 | |
10 | 法人 10 | 1,081,201 | H19.8 | 経済的困窮 |
(5)軽油引取税
【金額 円単位】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
a | 調定額 | 現年度発生額 | 13,258,029,057 | 13,128,795,956 | 12,286,186,254 | 11,817,913,568 | 10,269,244,897 |
滞納繰越額 | 16,862,647 | 17,387,553 | 12,165,207 | 15,163,080 | 217,598,690 | ||
計 | 13,274,891,704 | 13,146,183,509 | 12,298,351,461 | 11,833,076,648 | 10,486,843,587 | ||
b | 収入済 額 | 現年度発生額 | 13,257,504,151 | 13,128,659,820 | 12,283,188,381 | 11,603,388,887 | 10,237,664,197 |
滞納繰越額 | 0 | 524,906 | 0 | 60,000 | 214,724,681 | ||
計 | 13,257,504,151 | 13,129,184,726 | 12,283,188,381 | 11,603,448,887 | 10,452,388,878 | ||
c=a-b | 17,387,553 | 16,998,783 | 15,163,080 | 229,627,761 | 34,454,709 | ||
d | 不納欠損額 | 0 | 4,833,576 | 0 | 12,029,071 | 2,737,873 | |
e=c-d | 17,387,553 | 12,165,207 | 15,163,080 | 217,598,690 | 31,716,836 | ||
f | e のうち、延納等手続額 | 16,862,647 | 12,029,071 | 15,026,944 | 217,230,418 | 31,580,699 |
【件数】
16 年度 | 17 年度 | 18 年度 | 19 年度 | 20 年度 | |||
A | 調定額に係る 件数 | 現年度発生額 | 3,048 | 2,727 | 2,619 | 2,582 | 2,508 |
滞納繰越額 | 21 | 28 | 18 | 21 | 10 | ||
計 | 3,069 | 2,755 | 2,637 | 2,603 | 2,518 | ||
B | 収入済額に係 る件数 | 現年度発生額 | 3,041 | 2,726 | 2,616 | 2,576 | 2,506 |
滞納繰越額 | 0 | 7 | 0 | 0 | 6 | ||
計 | 3,041 | 2,733 | 2,616 | 2,576 | 2,512 | ||
c=a-b | 28 | 22 | 21 | 27 | 6 | ||
D | 不納欠損額に係る件数 | 0 | 4 | 0 | 17 | 3 | |
e=c-d | 28 | 18 | 21 | 10 | 3 | ||
f | e のうち、延納等手続額に係る件数 | 21 | 17 | 20 | 8 | 1 |
【上位 10 位】
債務者名称 | 金額(円) | 過年度不納欠損 額合計(円) | 発生 時期 | 発生事由 | |
1 | 法人 1 | 31,580,699 | H21.3 | 徴収猶予 | |
2 | 法人 2 | 136,136 | H17.5 | 経済的困窮 | |
3 | 法人 3 | 1 | H21.3 | ||
4 | 以下、該当なし。 | ||||
5 | |||||
6 | |||||
7 | |||||
8 | |||||
9 | |||||
10 |
【県の税務機構について】
総務部税政課が県税に関する実務を総括している。
実際の課税と徴収については、税目によって分担されており、税政課が県民税xx割・配当割・株式等譲渡所得割、地方消費税及び県たばこ税を、自動車税事務所が自動車税及び自動車取得税を、それ以外の実務はxx総合支庁、最上総合支庁、置賜総合支庁及び庄内総合支庁のそれぞれの税務課が担当している。税務職員は上記の部局を合計して 202 名(平成 21 年 4 月 1 日 現在)が配置されている。
なお、詳細は、毎年税政課が作成している「税務行政の概要」に記述されている。
【県税調定の根拠法令】
それぞれの税目について、地方税法、山形県県税条例、山形県産業廃棄物税条例及びやまがた緑環境税条例に基づいている。これらの租税債権は、地方税法等で、すべての公課その他の債権に先立って徴収することとされていること、及び自力xxxが与えられていることから、通常の県の有する債権とは性格が異なる。
【不納欠損の手続及び延納等に関する規定、事務取扱ルール】
不納欠損の手続及び延納等に関する規定、事務取扱ルールは以下の通りである。
1 納税義務の消滅及び不納欠損処分に関する規定
(1)納税義務の消滅に関する地方税法(昭和 25 年法律第 226 号)の規定
① 地方税の消滅時効(地方税法第 18 条)
徴収権を5年間行使しないときは時効により消滅する。
② 滞納処分の停止が3年間継続した場合(地方税法第 15 条の7)
滞納処分できる財産がない等の理由による滞納処分の執行の停止が3年間継続したときは納税義務が消滅する。(第4項)
〔滞納処分の執行停止の要件〕(第1項)
ア 滞納処分をすることができる財産がないとき
イ 滞納処分をすることによって生活を著しく窮迫させる恐れがあるとき
ウ 滞納者の所在及び滞納処分をすることができる財産がともに不明であるとき
③ 滞納処分の執行を停止した場合、直ちに納税義務を消滅させる場合(地方税法
第 15 条の7第5項)
滞納処分の執行を停止した場合、徴収金を徴収することができないことが明らかであるときは、直ちに納税義務を消滅させることができる。
(2)納税義務の消滅及び不納欠損処分に関する県の規定
① 納税義務の消滅及び不納欠損処分
ア 山形県県税規則(昭和 29 年6月県規則第 42 号)
・第9条 納税義務消滅の通知
・第 44 号様式 納税義務消滅通知書
イ 山形県県税事務取扱規程(昭和 38 年3月県訓令第3号)
・第 81 条 欠損処分の手続
・第 98 条 納税義務が消滅した場合の手続
ウ 山形県県税事務取扱規程の様式に関する通達(平成 20 年1月 25 日付け税第
350 号総務部長通知)
・第 88 号様式 徴収金欠損処分決議書
・第 89 号様式 欠損処分内訳書
・第 90 号様式 欠損処分印
・第 91 号様式 徴収金欠損処分報告書
② 滞納処分の執行停止ア 山形県県税規則
・第 42 号様式 滞納処分停止通知書
・第 43 号様式 滞納処分停止取消通知書イ 山形県県税事務取扱規程
・第 97 条 滞納処分の停止の手続
・第 100 条 報告
ウ 山形県県税事務取扱規程の様式に関する通達
・第 131 号様式 滞納処分の停止決議書(調書)
・第 132 号様式 滞納処分の停止調書索引
・第 133 号様式 滞納処分の停止取消決議書
・第 137 号様式 滞納処分の停止状況報告書
2 納税の猶予に関する規定
(1)納税の猶予に関する地方税法の規定
① 徴収の猶予(地方税法第 15 条)
納税者が災害を受けたこと等により、一時に納税することができないと認めら
れるときは、徴収を猶予することができる。この場合、適宜分割して納付すること、又は納入期限を定めることができる。
〔徴収猶予の要件〕
ア 納税者等が財産について災害を受けたとき(震災、風水害、火災、盗難)イ 納税者等又は生計を一にする親族の病気・負傷
ウ 納税者等の事業の廃止・休止
エ 納税者等が事業に著しい損失を受けたときオ 上記に類する事実があったとき
② 換価の猶予(地方税法第 15 条の5)
滞納者の財産を直ちに換価することにより、事業の継続や生活の維持を困難にするおそれがあり、かつ、滞納者が納税に誠実な意思を有すると認められる場合、滞納処分による財産の換価を1年間猶予することができる。
〔換価の猶予の要件〕
ア 財産の換価により事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがあるとき
イ 財産の換価を猶予することが他の徴収金の徴収xxxであるとき
③ 納税の猶予の場合の延滞金の免除(地方税法第 15 条の9)
災害・事業の廃止等による徴収の猶予、又は滞納処分の執行停止、換価の猶予をした場合、延滞金の全額又は2分の1を免除する。
ア 全額免除する場合
・災害等による徴収猶予(地方税法第 15 条第1項第1号)
・病気等による徴収猶予(地方税法第 15 条第1項第2号)
・滞納処分の執行停止(地方税法第 15 条の7第1項)イ 半額免除する場合
・事業の休廃止による徴収猶予(地方税法第 15 条第1項第3号)
・事業損失による徴収猶予(地方税法第 15 条第1項第4号)
・換価の猶予(地方税法第 15 条の5第1項)
(2)納税の猶予に関する県の規定
① 徴収の猶予
ア 山形県県税規則
・第 30 号様式 徴収猶予・徴収猶予期間延長申請書
・第 33 号様式 徴収(換価)猶予・徴収(換価)猶予期間延長通知書
・第 36 号様式 徴収猶予・徴収猶予期間延長申請棄却通知書
・第 39 号様式 徴収猶予取消通知書イ 山形県県税事務取扱規程
・第 100 条 報告
ウ 山形県県税事務取扱規程の様式に関する通達
・第 62 号様式 延滞金額減免決議書
・第 119 号様式 徴収(換価)猶予・徴収(換価)猶予期間延長決議書
・第 121 号様式 徴収猶予・徴収猶予期間延長申請棄却決議書
・第 122 号様式 徴収猶予取消決議書
・第 135 号様式 徴収猶予状況報告書
② 換価の猶予
ア 山形県県税規則
・第 33 号様式 徴収(換価)猶予・徴収(換価)猶予期間延長通知書
・第 41 号様式 換価猶予取消通知書イ 山形県県税事務取扱規程
・第 96 条 換価猶予の手続
ウ 山形県県税事務取扱規程の様式に関する通達
・第 119 号様式 徴収(換価)猶予・徴収(換価)猶予期間延長決議書
③ 納税の猶予の場合の延滞金の免除ア 山形県県税事務取扱規程
・第 71 条 延滞金の減免等の手続
イ 山形県県税事務取扱規程の様式に関する通達
・第 62 号様式 延滞金額減免決議書
【監査の方法と結果】
(1)監査の方法
未回収が生ずる原因及びその解消策を、総括的に検討した。
また、平成 20 年度末時点での未収金残高から対象を抽出し、債務者の状況とこれに対する県の対応とが規定に基づき適時適切に手続きされているかどうか調査した。
以下の平成 21 年 3 月 31 日現在 5 百万円以上の 6 先について記載する。
税目 | 債務者名称 | 金額(円) | 過年度不納欠損 額合計(円) | 発生時期 | |
1 | 不動産取得税 | 法人 1 | 21,936,100 | H17.9 | |
2 | 不動産取得税 | 法人 2 | 17,230,649 | H4.11 | |
3 | 不動産取得税 | 法人 3 | 10,983,900 | H17.3 | |
4 | 不動産取得税 | 法人 4 | 5,791,400 | H12.11 | |
5 | 事業税・法人 | 法人 5 | 10,710,655 | H10.7 | |
6 | 軽油引取税 | 法人 6 | 31,580,699 | H21.3 | |
7 | ゴルフ場利用税 | 法人 7 | 6,972,100 | H14.8 |
(2)監査の結果
①法人1【平成 21 年 3 月末残高】不動産取得税 21,936,100 円
(発生した経緯)
同社は不動産業であり、不動産取得取引に基づき平成 17 年 9 月及び 10 月納付期限
となる不動産取得税 21,936,100 円が課税された。その後、同社には平成 18 年 1 月に不動産の差押を行っている。
(回収状況)
発生後、回収された事実はない。
(未収金回収の見通し及び対応方針)
担保物件について、任意売却を検討したものの処分できなかったため、インターネット公売をかけている。5 回目は平成 22 年 1 月 25 日~平成 22 年 2 月 1 日が入札期間であったが入札者がなかった。今後とも担保物件の処分による回収をはかる方針である。
(監査結果)
早期の解消が望まれる。
②法人 2【平成 21 年 3 月末残高】不動産取得税 17,230,649 円
(発生した経緯)
同社はリゾートマンションの開発・販売を行っており、不動産取得取引に基づき平成 4 年 11 月 2 日納付期限となる不動産取得税 25,606,100 円が課税された。その後、同社は平成 14 年 12 月 3 日に(旧)商法第 406 条の 3 第 1 項の規定により解散している。この期間、他の民事の競売手続も行われていた事情がある。また、同社が所有する不動産については、他の金融機関等による先順位の担保権の設定があった。
その後平成 19 年 1 月 22 日に滞納処分できる財産がないため、滞納処分の執行停止処分がなされている。
(回収状況)
交付要求に対する配当等により、計 8,375,451 円が回収されている。
(未収金回収の見通し及び対応方針)
時効が到来した平成 22 年 1 月 23 日付け(滞納処分の執行停止後 3 年を経過)で不納欠損処理を行った。
(監査結果)
結果として、長期化しかつ不納欠損処理がなされている。
③法人 3【平成 21 年 3 月末残高】不動産取得税 10,983,900 円
(発生した経緯)
リゾート施設を経営しており、不動産取得取引に基づき平成 17 年 3 月 25 日納付期
限となる不動産取得税 11,370,000 円及び平成 17 年 8 月 31 日納付期限となる不動産
取得税 9,500 円が課税された。その後、同社の経営が悪化し営業を停止している。
(回収状況)
発生後、平成 21 年 2 月 9 日から平成 22 年 2 月 4 日にかけて計 2,410,863 円が回収されている。
(未収金回収の見通し及び対応方針)
返済財源がなく、滞納処分できる財産もないと判断し、平成 22 年 2 月 18 日に滞納処分の執行停止を行い、同日付で不納欠損処理を行った。
(監査結果)
結果として、不納欠損処理がなされている。
④法人 4【平成 21 年 3 月末残高】不動産取得税 5,791,400 円
(発生した経緯)
旅館を経営しており、不動産取得取引に基づき平成 12 年 10 月納付期限となる不動
産取得税 5,791,400 円が課税された。その後、同社は平成 17 年に解散している。
(回収状況)
平成 21 年 9 月 3 日付けで滞納処分の執行停止を行っている。
(未収金回収の見通し及び対応方針)
元代表者等に対する第二次納税義務を立証することは困難であり、回収は困難であると認識している。今年度中の不納欠損処理を検討している。
(監査結果)
他に法人県民税 250,000 円及び特別地方消費税 3,214,303 円の滞納がある。
⑤法人 5【平成 21 年 3 月末残高】事業税・法人 10,710,655 円
(発生した経緯)
建設内装業を営んでおり、平成 10 年7月に発生した 10,710,655 円が、会社の資金繰りが悪化していることを理由に長期化している。その後、同社の営業自体は継続している。
(回収状況)
直近の回収実績は、平成 21 年 10 月、11 月、12 月、平成 22 年 1 月及び 2 月にそれ
ぞれ 100,000 円の計 500,000 円回収されている。
(未収金回収の見通し及び対応方針)
納税者の返済意思を確認しており、今後とも、回収努力を継続する方針である。
(監査結果)
回収努力を行っていくことが必要である。
⑥法人 6【平成 21 年 3 月末残高】軽油引取税 31,580,699 円
平成 21 年 5 月 31 日が日曜日であり金融機関が休日であったため残高が残ったが、翌日平成 21 年 6 月 1 日に入金があり、未収金が解消されている。特に検討の対象外とした。
⑦法人 7【平成 21 年 3 月末残高】ゴルフ場利用税 6,972,100 円
(発生した経緯)
同社は開業後、計画通りの売上を確保することができず、現在営業は続けているものの業績不振に陥り滞納が生じている。
ゴルフ場利用税は月単位で申告・納税されるが、納入が遅れる月が生じている。
(回収状況)
平成 17 年度以降平成 20 年度までに計 12,711,350 円が回収されている。
直近の回収実績は、平成 21 年 11 月に 1,000,000 円が回収されている。
(未収金回収の見通し及び対応方針)
債権等の差押等含め回収に努める方針である。
(監査結果)
債権等の差押等を含め、回収に努める必要がある。
【検出された事項及び意見】
1.個人県民税について
税源移譲
平成 17 年 11 月 30 日政府・与党合意「三位一体の改革について」の方針に基づき、平
成 18 年度税制改正においてxx措置として、国から地方へ、具体的には、所得税から
個人住民税へ、約 3 兆円の税源移譲が行われた。
所得税・個人住民税の税率構造は以下の通りである(税源移譲後の税率は、平成 19 年
分所得税及び平成 19 年度分個人住民税から適用されている)。
税源移譲前
税源移譲後
税源移譲が行われた結果、県税としての個人住民税の歳入金額は増加したことは事
実ではある。一方で未収が発生した場合、回収に努めなくてはならない未収金額と回収に係る業務負担も制度的に移譲されていることを認識しなくてはならない。
平成 19 年度以降、未収金が増加していることの大きな原因には、税源移譲が行われたことが挙げられる。
所得税(課税所得金額に応 じて異なる税率が適用) | 10%、20%、30%、37% |
個人住民税所得割 | 5%(都道府県 2%、市区町村 3%) 10%(都道府県 2%、市区町村 8%) 13%(都道府県 3%、市区町村 10%) |
所得税(課税所得金額に応 じて異なる税率が適用) | 5%、10%、20%、23%、33%、40% |
個人住民税 所得割 | 一律 10%(都道府県 4%、市区町村 6%) |
ここで、個人県民税に関する未収金は、制度上、県が直接回収できない仕組みであることを認識しておく必要がある。xx、回収及び不納欠損について、各市町村からの報告及び実際の送金に基づき県は処理を行うのみであり、具体的に、未収残高について納税者毎の残高や回収状況・回収見込みについては、原則として把握できない現状にある。
県税個人住民税の徴収方法
(1)個人住民税の徴収方法には、普通徴収と特別徴収とがある。
・特別徴収
毎月の給与より天引きして徴収する方法
・普通徴収
市町村より送付される納付書に基づき納税者の分割納付により徴収する方法
個人県民税は、市町村が個人市町村民税と併せて、課税徴収を行うこととされている(地方税法第 41 条)。すなわち、県税である個人県民税は県が直接徴収するのではなく、市町村が県にかわり徴収するものである。
県税未収金全体に対して占める割合が高い個人県民税は、県内各市町村での回収が進まないと残高が減少しない。このため、県は各市町村と連携して回収を進める必要がある。
納税者に対する啓蒙
個人住民税は、前年度の所得を課税標準として課税されるものである。すなわち、今年の収入が少なくとも課税されるものである。また、県税全体での未収金の状況についての情報が一般に十分いきとどいているとは認められない。これらの点は、厳しい経済環境下、従来以上に、納税者である県民に認識されるべきものと考えられ、そのための策を県として講じる必要がある。
各市町村との連携
従来以上に、各市町村との連携を図る必要がある。
例えば、具体策として考えられるのは、次のとおりである。
・納税者の納付方法につきコンビニエンス・ストアでの収納を全市町村で可能と
なるようにし、納税者の利便性を高めること。
・給与所得者の未収を防ぐために、雇用している事業者に対して、個人住民税の特別徴収制度を選択してもらうことをはたらきかけること。
・各市町村に対して、回収に関する支援体制を強化すること。
【意見A】
2.自動車税
自動車税は 1 件当たりの未収金額は 3 万 6 千円程度であるが、中には 1 百万円を超える事例もある。金額が多額になるのは、自動車販売業者や複数の自動車を所有している納税者が未納付である場合である。また、制度上、自動車税が未納付であっても対象となる自動車の使用そのものは、すぐには制限されない。
悪質・多額と認められる納税者には、自動車の差押を含めた厳しい姿勢でのぞむべきである。
また、納税者の納税のしやすさを確保することも回収をすすめることにつながるものと考えられることから、例えば以下の方法を導入あるいは推進することを検討すべきである。
・振替納税を推進すること
・コンビニエンスストアでの納付や休日の窓口納付を可能にすること
【意見A】
3.その他
回収手続きの過程で、結果として、発生後、長期間を経過している未収が散見される。既述した未収の中での最も古い未収は平成 4 年に発生したものであり、迅速な回収がなされたのかどうか、結果として徴収手続きが十分なものだったかは疑義なしとしない。
地方税法等に基づきxxかつ適正な課税・徴収を実施することはもちろんであるが、長期化しないように努める必要がある。
【意見A】
第12 生活保護費返還金(健康福祉部)
【生活保護制度の説明】
憲法第 25 条に規定する理念である生存権に基づき制定されている生活保護法(昭和 25 年 5 月 4 日、法律 144 号)により、生活に困窮する日本国籍を有する者は当該法律に基づき保護を請求する権利を有している。
当該法律は、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としている。また、生活保護は、「生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他のあらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」とされており、最低生活費と収入額の差額を支給する制度と解釈される。生活保護は次の 8 種類からなっている。
・生活扶助
・教育扶助
・住宅扶助
・医療扶助
・介護扶助
・出産扶助
・生業扶助
・葬祭扶助
参考までに、以下に、厚生労働省ホームページより抜粋した生活保護制度の概要を記載する。
生活保護制度
資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。(支給される保護費は、地域や世帯の状況によって異なります。)
1.制度の概要
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
2.相談・申請窓口
生活保護の相談・申請窓口は、現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は、市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。
(注)
・福祉事務所を設置していない町村にお住まいの方は、町村役場でも申請の手続を行うことができます。
・一部、福祉事務所を設置している町村もあります。
3.生活保護を受けるための要件及び生活保護の内容 (1)保護の要件等
・生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提でありまた、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。
[1]資産の活用とは