H30.8 土地・建物の売買や賃貸借関係
契約解除して別の物件を購入しようとしたら売主からクレームを付けられた
相談内容 | 中古住宅を不動産業者を介して探し、求めようとした条件にある程度合った物件があったことから、売買契約を締結して手付金も支払った。実は他の不動産業者にも依頼して物件を探していて、契約締結後にその業者から情報が入り、既に契約した物件よりも私の求める条件に見合ったものであり、この物件を買うことを決めた。このため、既に契約した物件所有者に対して、不動産業者を介して契約解除を申し出たが、相手方から契約解除は困るといわれている。 相手方は、売りに出した物件の契約金を元手に別の物件を購入する計画であり、契約が締結されたことから具体的に購入の手続きに入ってしまったことから困るとのことである。また、不動産業者からは、契約後に解除されると、新たに媒介をするに当って、この物件が「いわくつきの物件」と思われ、売買しにくいともいわれている。それでも、解約するのであれば、契約書に基づく「手付け放棄」又は「違約金」の支払いとは別に 「迷惑料」をほしいとの意向も示されている。また、契約の条項には、「この契約書に記載のない事項や判断できない場合は双方で協議する。」とのxxがあり、単に手付け放棄で済む訳ではなく、この条項に基づいて協議すべきともいわれている。 私としては、二股をかけてきたことや、契約を取り交わして間もない段階での解約ということで、負い目もありいくらかの負担もやむを得ないと思っているが、その額が妥当か否かの判断ができない。 |
回答内容 | まず、契約書に記載されている内容として、「手付け金」、「違約金」どちらである かを確認してください。不動産の売買契約後に契約当事者のどちらかが解約したい場合、手付け金を払っている場合は、契約が履行(不動産売買であれば、買主が契約金を支払 い、所有権移転の手続きが完了するまで)される前であれば、買主が解除する場合、そ の手付け金を放棄(「手付け金放棄」といいます。)することによって、また、売り主 の場合は買主からの手付け金を返し、さらに同額を買主に支払う(「手付け倍返し」と いいます。)ことによって、解約ができます。手付け金は最終的に契約金額の一部とし て充当されるものです。これらの手付け放棄、倍返しを行うことによって、解約の理由 は問われません。手付け金は、契約の履行までの間に、契約書において、解約できる期 限(手付解除日)を定めます。こうした内容から手付け金の放棄等により、損害賠償請 求や慰謝料等は請求できないのが一般的です。ただし、こうした手付け金の規定を契約 書に盛り込まない場合であっても契約は成立します。また、手付け金の額については、 宅地建物取引業法によって額の上限等が定められています。 一方、「違約金」については、契約違反や手付解除日以降に解除する場合に支払うものであり、手付け金とは異なります。損害賠償や慰謝料を加味しての金額設置も可能です。つまり、手付け金と違約金の両方を支払うことはありません。違約金の規定を契約書に盛り込まなくても契約は成立します。 さて、こうしたことを前提とすれば、手付け金や違約金を上回って慰謝料などを支払 う必要はないといえます。ただし、これらを上回る要求に対して、契約そのものが民法 |
上は相互の合意を基本としていますので、これを上回る金員の支払いを別途求めることも可能であり、支払うか否かは相互の合意を前提とします。相手方が求める慰謝料の根拠を確認し、納得するか否かの判断といえるでしょう。額の多寡も含めて合意できなければ、訴訟や損の前段での調停などに委ねられることとなります。こうした状況になれば、弁護士に相談されることをお勧めします。 【手付け金と違約金の違い】 手付金とは売買契約締結時に相手方の債務不履行の有無を問わず解約権を認める目的として、又は相手方に債務不履行があった場合には損害賠償もしくは違約金として買主から売主に対して支払われる金銭。手付金を支払っても売買代金の一部を支払ったことにはなりませんが、契約時に「手付金は、残代金支払時に売買代金の一部に充当する」などと定め売買代金の一部に充当されることが一般的です。手付け金には①解約手付、②違約手付、③証約手付といった目的別に設定する手付け金があります。相手が契約の履行に着手するまでは、手付金でもって解約出来ると言うのが、「手付解除」です。この場合は、契約違反や違約ということではなく、手付放棄、手付倍返しでもって契約を解除するということになります。 これに対し「違約金」は、契約違反があった場合や、手付解除日以降の解除、相手方が契約の履行に着手した後の解除等が対象となります。この場合、自らの債務を提供し、相当の期間を定めて相手方に催告し、契約を解除することができます。一般的には、違約金は手付金相当額もしくは、売買代金の 2割と前もって定める場合が一般てきで、手付金と違約金は法的には別物ですので、手付金と違約金が両 方発生することはありません。なお、違約解除の場合でも、手付金は返還(相殺)されます。 |
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