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アメリカ合衆国ハワイ州におけるフランチャイズ契約の定義(1)
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アメリカ合衆国ハワイ州におけるフランチャイズ契約の定義(1)
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目 次
第1章 アメリカ合衆国とハワイ州におけるフランチャイズの現状第2章 フランチャイズ法制定までの動き
第3章 日本におけるフランチャイズの定義(以上,本号)第4章 アメリカ合衆国におけるフランチャイズの定義
第5章 ハワイ州におけるフランチャイズの裁判例第6章 結びにかえて
第1章 アメリカ合衆国とハワイ州におけるフランチャイズの現状
本稿では,ハワイ州のフランチャイズ契約に関する法状況について紹介と分析をする。フランチャイズに関する法的問題について分析をする前に,アメリカ合衆国及びハワイ州におけるフランチャイズビジネスの状況についてふれる。
第1節 アメリカ合衆国におけるフランチャイズビジネスの状況
フランチャイズ発祥の地であるアメリカ合衆国において,フランチャイズビジネスは成長を続けている。国際フランチャイズ協会(International Franchise Association (IFA))が2012 年12 月に公表した “Franchise Busi-
ness Economic Outlook for 2013” によれば,フランチャイズビジネスの GDP は,2007 年の4030 億ドルから,2012 年には4540 億ドルにまで増加している(1)。2012 年の詳細を見てみる。店舗数(establishment):74 万6828 店舗,雇用(employment):810 万人, 産出(output):7690 億ドル,GDP: 4540 億ドルである。当然のことながら,国別でいえば世界最大規模である。
少し古くなるが,別のデータを見てみる。IFA が2007 年に公表した
()1 <xxxx://xxx.xxxxxxxxx.xxx/xxxxxxxxXxxxx/Xxxxxxxxx_Xxxxxxxx_Xxxxxxx_00-00- 2012.pdf> accessed on Aug.1.2014.
具体的には下記の通りである。 2007 年
店舗数:770,835 店舗雇用:7,994,000 人 GDP:4030 億ドル 2008 年
店舗数:774,016 店舗雇用:8,028,000 人 GDP:4010 億ドル 2009 年
店舗:746,646 店舗雇用:7,800,000 人 GDP:4050 億ドル 2010 年
店舗数:740,335 店舗雇用:7,786,000 人 GDP:4180 億ドル 2011 年
店舗数:735,571 店舗雇用:7,934,000 人 GDP:4390 億ドル
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Impact on U.S. Economy(2)によれば,2007 年にはアメリカ合衆国全体で,フランチャイズビジネスでの雇用:912 万5700 人,非農業部門の雇用における割合:11.8%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された雇用: 1743 万700 人,フランチャイズビジネスでの給与支払総額(payroll):3043億7590 万ドル,非農業部門の給与支払における割合:9.7%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された給与支払総額:7075 億7020 万ドル,フランチャイズビジネスでの産出:8021 億9980 万ドル,非農業部門の産出における割合:9.0%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された産出:2兆983 億220 万ドル,フランチャイズビジネスでの GDP:4684 億 6360 万ドル,非農業部門の雇用における割合:9.7%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された GDP:1兆1544 億1770 万ドルである(3)。
第2節 ハワイ州におけるフランチャイズの状況
本稿で特に分析を加えるのは,ハワイ州におけるフランチャイズである。ハワイ州におけるフランチャイズの状況を見る。同じく IFA が2007年に公表した Impact on U.S. Economy(4)によれば,2007 年におけるハワイ州のフランチャイズの状況は,フランチャイズビジネスでの雇用:4万
()2 <xxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxxxxxxxx.xxx/xxxxxx/xxxxx.xxxx> accessed on Aug.1. 2014.
()3 2003 年に経済産業省が発表した「海外のフランチャイズの現状」によれば,アメリカ合衆国は2001 年において,本部事業者数1500,フランチャイズ店舗数:32 万店舗,売上高:120 兆円,GDP に占める割合:9.8%,就業者数:900 万人,労働力人口に占める割合:6.3%となっている。
<xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxxxxxxxxxx/x00000x00x.xxx> accessed on Aug.1. 2014.
()4 <xxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxxxxxxxx.xxx/xxxxxx/xxxxx.xxxx> accessed on Aug.1. 2014.
6800 人,非農業部門の雇用における割合:13.9%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された雇用:9万2200 人,フランチャイズビジネスでの給与支払総額(payroll):19 億1200 万ドル,非農業部門の給与支払における割合:14.0%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された給与支払総額:42 億1754 万ドル,フランチャイズビジネスでの産出:507 億4300万ドル,非農業部門の産出における割合:13.2%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された産出:109 億7436 万ドル,フランチャイズビジネスでの GDP:30 億5520 万ドル,非農業部門の雇用における割合:14.0%,フランチャイズビジネスが原因で生み出された GDP:61 億8960 万ドルである。ハワイ州においても,フランチャイズビジネスは巨大産業になっているといえる。
第2章 フランチャイズ法制定までの動き
本章では,アメリカ合衆国におけるフランチャイズ法制定の動きについて分析を行いたい。
第1節 日本におけるフランチャイズ法制定への動き
アメリカ合衆国の状況についてふれる前に日本におけるフランチャイズ法制定の動きについて簡単にふれる。
日本では,フランチャイズ法は,いまだ制定されていない。しかしながら,フランチャイズ法制定に向けた動きは活発である。日弁連は2010 年
5月にシンポジウム「フランチャイズ法制定に向けて」を開催した。その後,2013 年10 月に「米国のフランチャイズ調査報告と今後のフランチャイズ法制を考える」,2013 年4月にシンポジウム「韓国フランチャイズ法制調査報告と日本のあるべきフランチャイズ法制」を開催し,今後,立法案が作成されるそうである。2014 年4月には勉強会「米国におけるフラ
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ンチャイズ法制から学ぶ日本のあるべきフランチャイズ法制」が開催された(5)。
全国 FC 加盟店協会はフランチャイズ法制化に向けて活動をしている(6)し,コンビニ加盟店ユニオンは,フランチャイズ法を求める会を発足している(7)。2010 年にはxxxxらが立法私案としてフランチャイズ規制法を発表している(8)。しかしながら,未だわが国ではフランチャイズ法は実現していない。
第2節 アメリカ合衆国におけるフランチャイズ法の歴史
アメリカ合衆国では,1950 年代及び60 年代の自由主義の法的思想が普及した時代にフランチャイズの法的整備がなされるきっかけが生まれた(9)。すなわち,フランチャイズは,アメリカ合衆国において1950 年代頃から徐々に浸透し,急速に発展を始める。1960 年代になるとフランチャイザーとフランチャイジー間の紛争が多発し,1960 年代後半には,フラ
()5 これらシンポジウムや勉強会については,コンビニ加盟店ユニオンのxxxxxxからたくさんのご教示をいただいた。御厚意に改めて御礼を申し上げたい。
()6 <xxxx://xxx.xxxxxxxx.xx.xx/xx/xx000.xxxx> accessed on Aug.1.2014.
()7 <xxxx://xxx.xxx-xxxxx.xxx/xxxx/xxxxx.xxx?xxx00> accessed on Aug.1.2014.
()8 xxxxほか「「フランチャイズ規制法要綱」の発表」法律時報82 巻3号(2010 年)。 ()9 フランチャイズの歴史については,Xxxx Xxxxxxxxx, Xxxxxx Xxxxxxxx, “BEGUILING HERESY: REGULATING THE FRANCHISE RELATIONSHIP”, 109 Penn St. L.
Rev. 105 (2004) が詳しい。その他,Xxxxx X. Su, “FRANCHISE REGULATION- SOLUTIONS IN SEARCH OF PROBLEMS?”, 20 XXXX.XXXX U. L. Rev. 241 (1995), Darry A. Xxxx, “MANAGING LEGAL ISSUES IN FRANCHISING”, 2013 WL
3773408 も参照。
また,拙稿「フランチャイズシステムとフランチャイズ契約締結準備段階における売上予測⑴」大阪学院法学 29 巻2号149 頁(2003 年)も参考にしていただきたい。
ンチャイズの紛争が深刻化した。1960 年代後半にはフランチャイズシステムの構築が不十分なままの企業が多数,フランチャイザーとして市場に参入したのである。その結果,そのような企業はフランチャイジーの投資をミスリードするようになった。そのような企業はフランチャイジーの無知につけ込んで,まったく信用性の無いフランチャイズを販売していたのである(10)。1970 年代になると,フランチャイザーがフランチャイズの販売,開店時の費用,売上などの不実表示を行うなど,フランチャイザーの不実表示や不開示が横行するようになる(11)。
この紛争は契約締結後のフランチャイザーとフランチャイジーの間でも発生した。フランチャイザーが,不当にフランチャイズの合意を解消したり,更新拒絶をしたり,フランチャイジーがフランチャイズを第三者へ譲渡することを許さないことから紛争が発生していた(12)。
これらの紛争を解決するための連邦法や州法は1970 年代まではなかった。しかし,1970 年にフランチャイズの販売において詐欺的なそしてフランチャイザーの権利濫用を防止する必要から,カリフォルニア州において開示(disclosure)と登録(registiration)に関する法が制定される(13)。これがカリフォルニア州フランチャイズ投資法(California Franchise Investment Law (CFIL))である。これによりカリフォルニア州では,1971
()10 Xxxxxxx X. Xxxxxx, “REGISTRATION OF FRANCHISES”, FLP FL-CLE 11-1
(1996); Xxxxx Xxxxxxx, “The FTC Franchise Registry: Its Time Has Come”, 29 Sum FrancLJ 17 (2009); Xxxxxxx Xxxxx, “Australian Franchise Law: How to Avoid Being a Shrimp on the Australian Franchising Barbecue.” 29 Wtr FrancLJ 164 (2010).
()11 43 Fed Reg 59625-39.
()12 Xxxxxxx Xxxxx, supra note 10, at 164.
()13 カリフォルニア州フランチャイズ投資法は,⑴カリフォルニア州でフランチャイズを展開しようとする本部に登録を義務づけ,⑵本部に見込みフランチャイジーへ情報を開示させることを義務づけたという2点にその特徴がある。
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年以降,フランチャイザーがカリフォルニア州の住民にフランチャイズを申し込むまたはカリフォルニア州でフランチャイズを始める場合には,企業部(Department of Corporations)に届出し,申込みや販売,そして譲渡
(grant)が行われる前に認可(approval)を受けなければならないようになった。カリフォルニア州では,フランチャイザーは見込みフランチャイジーに十分な情報に基づき,見込みフランチャイジーがxxに投資の決定をするために必要な情報を提供すべきとしたのである。
1970 年代になるとその他の州でもフランチャイズ法制定の動きが活発化する。1975 年に,中西部証券コミッショナー協会は,現行のセキュリティ法のもとでフランチャイジングを規制する権限が各州に無いことに対応して,統一フランチャイズ申込書(UFOC/Uniform Franchise Offering Circular)とそのガイドラインを作成し,フランチャイズの開示と登録のフォーマットを発展させようとした。1970 年から1980 年までの間に15 の州が統一フランチャイズ申込書(UFOC)と同様または類似の文書をフランチャイザーに開示登録させることを義務づけた法律を制定した。例えば,1971 年にワシントン州でフランチャイズ投資保護法が制定され,ミシガン州では,1974 年に,カリフォルニア州のフランチャイズ投資法を参考にしてフランチャイズ投資法が制定されている(14)。これは,xxxxxxxxが事実の隠匿や不実表示によってフランチャイジーをそそのかして契約をしているということに多くの州が関心をもったためである。さらにフランチャイジングにおいて認識されているフランチャイザーの濫用
()14 ワシントン州の状況については,Xxxxxxx X. Xxxxx, Xxxxx X. Xxxxx, Xxxxxx
J. Oates, “STATE REGULATION OF FRANCHISING: THE WASHINGTON EXPERIENCE REVISITED”, 32 Seattle U. L. Rev. 811 (2009) が詳しい。
ミシガン州の状況については,Xxxxxx Xxxx Xxxxxxxx, “FRANCHISING AND FRANCHISE LAW”, 92 XXX Xxxx. B. J. 34 が詳しい。他,Xxxxx X. Su, supra note 9, at 265 も参照。
行為に対応するために15 の州がフランチャイズの申込みと販売の際にフランチャイザーを規制する法律を制定した。これらの州の一つがハワイ州であり,ハワイ州では1974 年にフランチャイズ投資法が制定されている(15)。これらの州の法律は共通してフランチャイザーがフランチャイジーに不実表示を行うことを禁止し,フランチャイザーに確かな開示を要求している点に特徴がある。なお,UFOC は北アメリカ証券アドミニストレターズ協会の権限の下で UFOC の監視と改訂が行われていた。
一方で連邦レベルでもフランチャイズ法制定の動きは,フランチャイズの紛争が増加した1970 年前後に活発化する(16)。具体的には,1960 年代後半から1970 年代前半に様々な法案がアメリカ合衆国議会に提案される。1967 年にxxxxxxxx上院議員が「フランチャイジングxx法
(Fairness in Franchising Act)」法案を上院へ提出し,これは1969 年にも再提案された。この内容は,FTC 規則の範囲内でxxな競争に反することを禁止するものである。1970 年に上院の小委員会(subcommittee)はスモールビジネスのフランチャイジングに関する聞き取り調査を行った。これはxxxx・xxxxxx上院議員によって「1970 年のフランチャイズ完全開示法(The Franchise Full Disclosure Act of 1970)」法案として上院へ提出された。この法案の内容は,フランチャイザーにアメリカ合衆国証券取引委員会(SEC/United States Securities and Exchange Commission)への登録を義務づけるものである。
()15 この15 の州とは,カリフォルニア州,ハワイ州,イリノイ州,インディアナ州,xxxxxx州,ミシガン州,ミネソタ州,ニューヨーク州,ノースダコタ州,オレゴン州,ロードアイランド州,サウスダコタ州,ヴァージニア州,ワシントン州,ウィスコンシン州である。Xxxxxxx X. Xxxxx, “Personal Liability of Franchisor Executives and Employes under State Franchise Laws”, 29 Fall FrancLJ 99 (2009).
()16 Xxxxxx Xxxxxxx Xxxxx, “FRANCHISORS AND THE FTC: STATE REGULATION AND FEDERAL PREEMPTION”, 3 Harv. X.X. & Pub. Polʼy 155 (1980).
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同じ年にxxxxx・xxxxx下院議員もアメリカ合衆国証券取引委員会(SEC)の監督のもとでフランチャイジングする法案を下院へ提出した。1971 年になるとウィリアムス上院議員は1970 年の法案を修正した「フランチャイズxx実務法(Franchise Fair Disclosure Act of 1971)」を上院へ提案した。しかしこれらの動きは上手くいかず,連邦取引委員会(FTC/ Federal Trade Commission)による規則が公表されると立法の動きは下火になる(17)。
連邦取引委員会(FTC)は,カリフォルニア州の動きに反応して規則制定に乗り出した。連邦取引委員会(FTC)は,1971年11月11日に手続
(proceedings)を告知し,1972 年2月14 日にヒアリングを始めた。1978 年 12 月21 日になって,連邦取引委員会(FTC)は,フランチャイズ開示規則を公布し,FTC フランチャイズ開示規則は1979 年に施行された。これによって,フランチャイズの販売者は見込み購入者に対してフランチャイズ化されたビジネスの内容やフランチャイズの合意の期間に関する開示を義務づけられた。もっとも FTC 開示規則はそれ自身で私法上の訴訟原因とはならないという問題点がある(18)。
FTC フランチャイズ開示規則は制定から2008 年の改正まで統一フランチャイズ申込書(UFOC)が使われた。しかし,2007 年には電子開示が認められ(19),電子化の時代にふさわしい新しい文書が導入されることになる。そして,2008 年6月1日に改正された FTC フランチャイズ開示規則は施行された。この改正では FTC 開示文書フォーマット(Disclosure Statement Format)と UFOC フォーマットが廃止され,新しい形式の開示
()17 Ibid.
()18 Xxxx X. Xxxxxx, “UNINTENTIONAL FRANCHISING”, 36 ST. Maryʼs X.X. 301
(2005).
()19 Xxxxxx Xxxx Xxxxxxxx, supra note 14, at 34.
文書であるフランチャイズ開示書(FDD/Franchise Disclosure Document)が採用された。この FTC フランチャイズ開示規則の改正に従い15 の州で登録制度が変更された。
一方で,情報開示ではなくフランチャイザーとフランチャイジーの契約関係について規制をするフランチャイズ関係法も多くの州で採用されている。例えば,1992 年にアイオワ州でフランチャイズ関係法が制定され, 2007 年にはロードアイランド州でフランチャイズ関係法が制定されている。2009 年にはフランチャイズ関係法が制定されている州が19 州まで増えた(20)。
連邦レベルでは,1997 年に連邦xxフランチャイジング慣行法(the Federal Fair Franchising Practices Act),1998 年には小規模ビジネスフランチャイズ法が(the Small Business Franchise Act)が下院で立法提案されているが制定にはいたっていない(21)。
この間,ハワイ州では,1988 年にフランチャイズ投資法は改正され,この法で明確に差別(discrimination)は禁止されるなどの改正が行われているが,特に目立った改正はなされていない(22)。
第3章 日本におけるフランチャイズの定義
この章では日本におけるフランチャイズの定義について分析をする。 以下で詳しく分析をするが,ハワイ州におけるフランチャイズの紛争の
()20 Xxxxxx X. Barkoff, “FRANCHISE SALES REGULATION REFORM: THE NOOSE OFF THE GOLDEN GOOSE”, 3 Entreneurial Bus. X.X. 233 (2009).
()21 Xxxxxxxx X. Xxxxx and Xxxxxxx X. Xxxxxxxx, “Who owns Goodwill at the Franchised Location”, 18 Wtr FrancLJ 85, at 120 (1999).
()22 Xxxx X. X. Baer, “Renewals: Questions and Pitfalls for Franchisors and some Distributors”, 10 Sum FrancLJ 1 (1990).
アメリカ合衆国ハワイ州におけるフランチャイズ契約の定義(1)
多くはフランチャイズの定義に関するものである。従って,最初にわが国におけるフランチャイズの定義から見てみたい。
第1節 日本フランチャイズチェーン協会における定義
日本フランチャイズチェーン協会は,フランチャイズ・システムを次のように定義している(23)。
「フランチャイザーが,フランチャイジーと契約を結び,フランチャイジーに対して,自己の商標,サービス・マーク,トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識および経営のノウハウを用いて,同一のイメージのもとに事業を行う権利を与えるとともに経営に関する指導を行い,その見返りとしてフランチャイジーから契約金,ロイヤルティ等一定の対価を徴するフランチャイズの関係を組織的・体系的に用いて行う事業の方法である。」
また,日本フランチャイズチェーン協会は,フランチャイズ契約については次のように定義している。
「フランチャイズ・システムはフランチャイザーが開発した「成功のノウハウ」をパッケージにしてフランチャイジーに提供することであるが,パッケージの提供方法,条件について本部と加盟者が約束することがフランチャイズ契約である。提供するフランチャイズパッケー
()23 <xxxx://xx-x.xxx-xx.xx.xx/xxxxx>accessed on Aug.1.2014.
なお,フランチャイズの定義については,xxxx『フランチャイズシステムの法理論』3頁以下(商事法務,2001 年)が詳しい。本稿でも,参考にさせていただいた。
ジの内容を文書にした契約書を作成し,フランチャイザーとxxxxxxxxの権利と義務を明示する。」
このフランチャイズの定義は,フランチャイズを単なる商品流通の手段ではなく,パッケージとして確立された経営方法(ビジネス・フォーマット)をフランチャイジーに利用させることにより,フランチャイジーに事業の成功を容易にさせるフランチャイザーとフランチャイジー間の共同事業形態である「ビジネス・フォーマット型フランチャイズ」を意味するものであるということができる。現在,このように「フランチャイズ」の用語をビジネス・フォーマット型フランチャイズの意味に限定して用いることが一般的である。
以上,日本フランチャイズチェーン協会による定義の特徴(24)は,下記のようにまとめられるだろう。
⑴フランチャイザーとフランチャイジーとは契約を結ぶ
⑵フランチャイザーがフランチャイジーに供与するものは,同一のイメージの下に事業を行う権利
⑶供与の内容は営業の象徴となる標識と経営のノウハウである
⑷フランチャイジーによる対価の支払いと資本の投下を求める
⑸両者間の契約による継続性を重視している
⑷に関連して,ビジネス・フォーマットをパッケージとして受け取ったフランチャイジーは,対価を支払わなければならない。それにはチェーン
()24 日本フランチャイズチェーン協会編『フランチャイズハンドブック』19 頁(商業界,初版,平成15 年)。
アメリカ合衆国ハワイ州におけるフランチャイズ契約の定義(1)
によってさまざまな名称が付されているが,一般的には「フランチャイ ズ・フィー」または「フランチャイズチャージ」と総称され,その中に,フランチャイズ契約の締結に際して一回限り支払われる「イニシャル・フランチャイズ・フィー」(日本語では「契約金」「加盟金」または「加盟料」)と,契約期間中に継続して支払われる「ロイヤルティ」とが区別される。ロイヤルティの算定方法には,フランチャイジーの売上高の一定割合と する方式(売上分配方式),売上高から売上原価を差し引いた粗利益の一定割合とする方式(粗利分配方式),およびフランチャイジーの営業成績にかかわらず一定額とする方式(定額方式)の3種が知られているほか,ロイヤルティを徴収しない例も少なくない。ロイヤルティがなくともシステムが成り立つ理由は,フランチャイジーが原材料や商品をフランチャイザー
から購入する場合に,その代金に相当額を含めることが可能だからである。
第2節 中小小売商業振興法11 条による特定連鎖化事業の定義
一方で,中小小売商業振興法11 条特定連鎖化事業は次のように定義している。
「連鎖化事業であって,当該連鎖化事業に係わる約款に加盟者に特定の商標,商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金,保証金,その他の金銭を徴する旨の定めがあるもの」
なお,この連鎖化事業とは(同法第4条4項の5)下記の通りである。
「主として中小小売商業者に対し,定型的な約款による契約に基づき継続的に,商品を販売し,又は販売をあっせんし,かつ,経営に関する指導を行う事業をいう」
第3節 日本フランチャイズチェーン協会の定義と中小小売商業振興法の比較
この定義を日本フランチャイズチェーン協会の定義と比較すると,⑴フランチャイジーが「主として中小小売商業者」に限定されていること,⑵フランチャイズ契約は「定型的約款」に基づくこと,⑶フランチャイザーがフランチャイジーに「商品を販売し,又はあっせん」することが要件とされていること,⑷「経営に関する指導」を行うことが要件とされていること,⑸「加盟に際し加盟金,保証金,その他の金銭を徴する」点などに特色がある。特に⑴と⑶と⑸の要件は独特であり,わが国で展開されているフランチャイズ・ビジネスと比較してみると,サービス関係が除外されている点が特徴であり,全体に要件を絞り込みすぎていると思われる(25)。
第4節 xx取引委員会のガイドライン「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」の定義
xx取引委員会のガイドライン「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」では,次のように定義している。
⑴ フランチャイズ・システムの定義は様々であるが,一般的には,本部が加盟者に対して,特定の商標,商号等を使用する権利を与えるとともに,加盟者の物品販売,サービス提供その他の事業・経営について,統一的な方法で統制,指導,援助を行い,これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態であるとされている。本考え方は,その呼称を問わず,この定義に該当し,下記⑶の特徴を備える事業形態を対象としている。
⑵ フランチャイズ・システムにおいては,本部と加盟者がいわゆるフラ
()25 前掲,注()24,21 頁。
アメリカ合衆国ハワイ州におけるフランチャイズ契約の定義(1)
ンチャイズ契約を締結し,この契約に基づいて,本部と各加盟者があたかも通常の企業における本店と支店であるかのような外観を呈して事業を行っているものが多いが,加盟者は法律的には本部から独立した事業者であることから,本部と加盟者間の取引関係については独占禁止法が適用されるものである。
⑶ フランチャイズ・システムにおける取引関係の基本は,本部と加盟者との間のフランチャイズ契約であり,同契約は,おおむね次のような事項を含む統一的契約である。
[1] 加盟者が本部の商標,商号等を使用し営業することの許諾に関するもの
[2] 営業に対する第三者の統一的イメージを確保し,加盟者の営業を維持するための加盟者の統制,指導等に関するもの
[3] 上記に関連した対価の支払に関するもの
[4] フランチャイズ契約の終了に関するもの
フランチャイズ契約の下で,加盟者が本部の確立した営業方針・体制の下で統一的な活動をすることは,一般的に企業規模の小さな加盟者の事業能力を強化,向上させ,ひいては市場における競争を活発にする効果があると考えられる。
xx取引委員会の見解をまとめれば,下記の通りとなろう(26)。
⑴フランチャイズ・システムにおける取引関係の基本はフランチャイズ契約であり,⑵本部が加盟者に対して特定の商標,商号等を使用する権利を与えるとともに,⑶加盟者の物品販売,サービス提供その他の事業・経営について,統一的な方法で統制,指導,援助を行い,⑷これらの対価と
して加盟者が本部に金銭を支払う事業形態である。⑸加盟者は本部から独立した事業者である。
第5節 本章のまとめ
フランチャイズの各種定義と立法例を参考にしてまとめれば,おおむね次のようにまとめられる。
フランチャイズとは,ある事業者(フランチャイザーという)が,他の事業者(フランチャイジーという)に対し,定型的な契約により継続的に付与するライセンスであり,次の要素を含むものをいう。
⑴ フランチャイザーはフランチャイジーに対して事業の象徴となる標識と経営のノウハウを提供して,対象となる事業につき指導・援助を行い,
⑵ フランチャイジーは事業に必要な資金を投下して,フランチャイザーのコントロール下に入り,
⑶ フランチャイジーはフランチャイザーに対価を支払い,
⑷ 両当事者は独立した事業者である(27)。