会計上の保守主義(accounting conservatism)は,「予想の損失は計上しなければならないが,予想の利益を計上してはならない(anticipate no profit,
会計上の保守主義と社債契約 207
会計上の保守主義と社債契約
x x x x*
要 旨
本稿では,2つのタイプの会計上の保守主義と社債契約における諸条件および格付との関係を分析した。分析の結果,より高い無条件保守主義が利回りスプレッドの低減や上位の社債格付に結びついている可能性が示された一方で,条件付保守主義が契約の効率性の向上に寄与していることを示す証拠は得られなかった。銀行ローン契約で条件付保守主義が契約の効率性向上に寄与していることを示している先行研究と照らしあわせると,本稿の分析結果は,債務契約における2つのタイプの会計上の保守主義の機能や有効性に,債権者の特徴が関係している可能性があることを示唆している。
1.本稿の目的
本稿の目的は,保守的会計報告と社債契約との関係を分析することである。具体的には,社債の発行条件(利回りスプレッド,償還期間,および担保の設定)と社債格付に対する保守的会計報告の影響を分析することで,保守的会計報告の社債契約における意義について検証を行う。
会計上の保守主義(accounting conservatism)は,「予想の損失は計上しなければならないが,予想の利益を計上してはならない(anticipate no profit,
――――――――――
*会津大学短期大学部准教授・東北大学大学院経済学研究科博士課程後期
〔207〕
but anticipate all losses)」の格言で表現され(xx,2014,p. 65),日本の企業会計原則では,「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には,これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない」(一般原則六)と規定されている。会計上の保守主義は,資産の評価や収益・費用の認識などの点で,会計実務に大きな影響を与えている(xx,2004,p. 128)1)。
Watts(2003a)は,契約,訴訟,規制,および税制が保守的な会計報告を行う要因となっていることを指摘し,また,契約における保守的会計報告の経済的意義を理論的に提示している。Xxxx(1997)やXxxxxx and Xxxx(2000)により,会計報告の保守主義の程度を定量的に把握するモデルが開発され
(Watts, 2003b;Xxxx et al., 2009;xx,2004;xx, 2009a),保守的会計報告を行う要因や,その効果を検証する研究が行われている(Xxxx and Xxxxxx, 2011;xx, 2008;xx, 2009b)。上記の要因のうち,契約の中でも,債務契約における保守的会計報告の意義が検証され,配当政策を通した株主と債権者との利害対立が深刻な企業ほど,保守的な会計報告が行われていることが報告されている(Xxxxx et al., 2002;xx, 2004)。
また,会計報告の保守主義の定量化に関し,それぞれのモデルが捉える保守主義の側面が異なることが指摘され,保守主義のタイプに注目した保守的会計報告の効果に関する研究が進められている(xx,2014)。会計基準の枠組みにおける保守主義には,経済的ニュースとは独立的に事前的に保守的な会計を行うことを意味する無条件保守主義(unconditional conservatism)と,経済的ニュースに基づいて事後的に保守的な会計を行うことを意味する条件付保守主義(conditional conservatism)の2つのタイプがあるとされている(Beaver and Xxxx, 2005)。このうち,条件付保守主義には債権者に対して適時的に経済的損失に関する情報を提供する機能があることが指摘されている(Xxxx and Xxxxxxxxxx, 2005, p. 91)。そして,Xxxxx(2008)は,より適時的に経済的損
1)先行研究は,会計実務において少なくとも500年前から保守主義は存在しており,その影響は長期間にわたり,また重要である,と指摘している(Basu, 1997, p. 8; Watts, 2003a, p. 208)。
失が会計利益に織り込まれることから,条件付保守主義の程度が高い会計報告を行っている企業では,財務制限条項の抵触が早期化されるという債権者にとっての便益があることを提示している。また,この便益の見返りとして,企業は低い金利で資金の借入ができていることが確認されている。さらに, Wittenbery-Moerman(2008)では,セカンダリー・ローン市場におけるビッド・アスク・スプレッドの縮小に,xx(2015)では,借入金契約における利率スプレッドの低減に,条件付保守主義が関係していることが示されており,契約の効率性の向上に寄与していることが確認されている。
以上のように,債務契約における会計上の保守主義の効果を検証している先行研究では,保守主義の2つのタイプのうちの条件付保守主義に焦点をあわせ,また債務契約の中でも借入金契約を分析対象としている。これらの先行研究に対し,本稿では,会計上の保守主義として無条件保守主義も分析に加え,また債務契約として社債契約を取り上げることとする。
条件付保守主義に加え,無条件保守主義も分析に加える理由として,債務契約において,2つのタイプの保守主義が果たしている機能が異なることがあげられる(Xxxx and Xxxxxxxxxx, 2005, pp. 90-91)。すなわち,保守的な会計報告を行っている場合であっても,経済的損失に関するニュースが生じた場合に保守的に会計を行っているのか,それとも当該ニュースに先立って保守的に会計を行っているのかにより,債務契約における機能が異なることが指摘されている。機能が異なるのであれば,社債権者の評価も異なることが予想される。そこで,本稿では,条件付保守主義に加え,無条件保守主義も分析に加えることとする。
また,社債契約を対象とする理由は,次の3点である。第一に,社債発行も
また,日本企業にとって,新規外部資金の主要な調達手段の一つであるからである2)。第二に,銀行に代表される私的債権者(private debtholder)と,社債
2)たとえば,2013年において,東京証券取引所上場の企業について,同じ市場型金融取引である株式発行による資金調達額が17,970億円であったのに対し,普通社債による資金調達額は66,910億円であった(東京証券取引所ホームページ,http://
権者に代表される公的債権者(public debtholder)とでは,私的情報の入手可能性,モニタリングの効率性,および契約条件の再設定の柔軟性などの点で異なっているため,銀行ローン契約を対象とした先行研究の結論が,社債契約にはあてはまらない可能性があるからである(Xxx and Xxxxxx, 2014)。第三に,企業会計基準委員会(2006)において,財務報告の目的として,株式投資家に加え,社債投資家への情報提供が含まれているからである。そこでは,財務情報を利用して企業に資金を提供する投資家は,「証券市場で取引される株式や社債などに投資する者」と定義されており,財務報告がその目的を果たしているかの検証には,株式投資家だけではなく社債投資家も含める必要がある3)。
以上の理由から,社債契約において,2つのタイプの会計上の保守主義の程
度が契約に織り込まれているのか否か,あるいはどのように織り込まれているのかを検証することは有益であると考えられる4)。
本稿の構成は,以下のとおりである。第2節では,会計上の保守主義と債務契約との関係に関する先行研究をレビューする。第3節でリサーチ・デザインを説明し,第4節でサンプルの選択や記述統計量を示している。第5節では推定結果を提示する。最後に,第6節でまとめと今後の課題を述べる。
xxx.xxx.xx.xx)。
3)xx(2008c)は,社債市場とディスクロージャーとの関係に関する研究をサーベイし,社債市場における会計情報の意義を検討している。また,xx(2012)は,
2つの利益属性(会計発生高の質と利益平準化の程度)と社債スプレッドとの関係を分析している。
4)実証会計理論(positive accounting theory)の枠組みにおいて,債務契約における会計情報の役割を検証する場合,財務制限条項(財務上の特約)での会計情報の利用に分析の焦点がおかれ,契約締結後における会計情報の利用が注目されている(Watts and Xxxxxxxxx, 1986;xx, 2000)。これに対して,社債の諸条件や格付を分析している本稿は,契約締結時における会計情報の利用に焦点をあてている。財務会計の契約支援機能を「契約締結時の利用」と「締結後の利用」に分けるとすれば,財務制限条項に関する分析が後者に位置づけられるのに対し,本稿は,債務契約におけるダーティー・サープラス項目やxxxxxxの意義を検証しているxx(2008a・2008b)と同様に,前者に位置づけられる。
2.先 x x x
2.1 債務契約における保守的会計報告の機能
債権者は,企業に対して資金提供を行っている点では株主と共通しているが,資金提供の見返りとして取得する権利には,経営意思決定への参加権は含まれておらず,報酬としてのxxは上限が固定されている点で株主とは異なっている。また,企業倒産時には,株主の有限責任制のもとで,会社財産のみが債権回収にあてられるため,xxや元金を回収できないリスクがある。そのため,本来債権者が将来的に受け取る資産の取り崩しにより,株主に対する配当や経営者に対する報酬が支払われる可能性がある場合には,デフォルト・リスクは高く評価され,債務契約の諸条件や格付に反映されると考えられる。一般的には,デフォルト・リスクが高いと評価されれば,それが低い債務に比べ,企業に要求されるリターン(xx率)は高くなり,償還期間は短くなり,担保の設定が必要とされ,また全体的な評価である信用格付は低くなると考えられる。
会計上の保守主義は,⒜より低い資産評価,⒝より高い負債評価,⒞より遅い収益認識,および⒟より早い費用認識のいずれかをもたらす会計手続きの適用であるとされる(Wolk et al., 2013, p. 153)。これにより,当該期間の会計利益はより控えめに計上され,またより低い純資産簿価が報告される。控えめな利益は,会計利益と明示的・黙示的に連動する配当や経営者報酬などの会社財産の社外流出を回避することにつながる。低い純資産簿価の報告は,純資産が帳簿金額よりも充実することで,将来の不確実性(リスク)に備えることにつながる。すなわち,保守的な会計報告には,会社財産の過度な流出の可能性を低減し,債権のデフォルト・リスクを高めることを回避する機能が期待される。
2.2 無条件保守主義と条件付保守主義
次に,会計上の保守主義のタイプである無条件保守主義と条件付保守主義,および両者の関係性についてみていくこととする。
無条件保守主義とは,経済的ニュースとは独立的に事前的に保守的な会計を
行うことを意味しており,純資産簿価が過少に表示される会計方法の選好と説明される。この具体例として,研究開発費などの無形資産の即時費用計上や,有形固定資産にかかる経済的価値の減価以上の減価償却(加速償却)があげられる。これらの会計処理により,経済的ニュースが生じる前に,会計上の費用が計上され,会計利益や純資産簿価は過少表示される。
他方,条件付保守主義とは,経済的ニュースに依存して事後的に保守的な会計を行うことを意味しており,不利な状況下では純資産簿価の引き下げが行われるが,好ましい状況下での引き上げは行われないと説明される。これは異質な検証可能性(different verifiability)とも表現され(Watts, 2003a),グッド・ニュースを会計上の収益・利得として認識するのに求められる検証可能性は,バッド・ニュースを会計上の費用・損失として認識するのに求められる検証可能性よりも,厳格であることを意味している。会計上の認識に必要とされる検証可能性に差があるため,会計利益はグッド・ニュースに比べバッド・ニュースを適時的に反映することとなる。そのため,条件付保守主義は,適時的な損失認識(timely loss recognition)ともいわれる(Xxxx and Xxxxxxxxxx, 2005)。この具体例として,棚卸資産の低価法や固定資産の減損処理があげられる。これらの会計処理により,市場価格や回収可能価額の下落などの経済的ニュースが生じた際に,適時的に費用や損失が計上され,会計利益や純資産簿価は過少表示される。
このように,無条件保守主義と条件付保守主義との違いは,会計上の費用や損失を計上するタイミングにある。そして,そのタイミングの相違により,無条件保守主義を取り入れるほど,条件付保守主義が無効化あるいは抑制される
関係,すなわち「逆の関係(inverse relation)」にある(Xxxx, 2001;Xxxxxx and Xxxx, 2005;xx, 2009)5)。条件付保守主義が高いと,より適時的に経済
5)xxほか(2014)やxx・xx(2014)は,有形固定資産の減価償却と減損処理を用いて,この「逆の関係」を説明している。また,国内外の実証研究も,これと整合的に,期首時点での無条件保守主義の程度と,その期の条件付保守主義の程度に負の関係があることを提示している(Xxx et al., 2005;xx, 2008)。これは,
的損失が会計利益に織り込まれ,業績が下振れするリスクが高くなるが,先立って無条件保守主義を高い程度で適用している場合には,そのリスクは無効化あるいは軽減される。この無条件保守主義の機能は,会計上のスラック
(accounting slack)と呼ばれている(Xxxxxx and Xxxx, 2005)。
2.3 債務契約における2つのタイプの保守主義の機能
次に,それぞれのタイプの保守主義の債務契約における理論的機能として Ball and Xxxxxxxxxx(2005)の主張を整理し,また会計上の保守主義に対する債務契約の影響に関する実証研究をみていくこととする。
Xxxx and Xxxxxxxxxx(2005)は,債務契約における2つのタイプの保守主義の機能を考察し,より高い無条件保守主義が契約の効率性を低減させる,あるいはせいぜいその程度は影響しない一方で,より高い条件付保守主義がその効率性を高めることを主張している。
無条件保守主義が契約の効率性向上に寄与しない根拠として,次のことが指摘されている。無条件保守主義による純資産簿価の過少表示の割合がわからない場合,財務情報に基づく意思決定が誤導される可能性があり,無条件保守主義の適用が契約の効率性を低減することを指摘している。あるいは,無条件保守主義による純資産簿価の過少表示の割合がわかるのであれば,契約時点において,その割合が織り込まれた財務制限条項が設定され,資金の借入が行われることを指摘している。つまり,無条件保守主義の程度の高低にかかわらず,それを反映した契約内容が設定されるため,契約の効率性に対し中立的であることを示唆している。そして,無条件保守主義がもつ条件付保守主義を無効化
ある企業がすでに全体的に無条件保守主義を適用した会計処理を行っている(無条件保守主義の程度が高い)と,その企業は会計利益にバッド・ニュースを織り込んでいない(条件付保守主義の程度は低い)ことを示している。換言すれば,同一企業において,ある対象に無条件的に保守的会計処理を行っているとしても,他の対象にはあまり保守的ではない会計処理を行っているとすれば,その企業の全体としての無条件保守主義は高くはなく,したがって条件付保守主義は低くないこと,すなわち無条件保守主義と条件付保守主義の併用が行われていることを示唆している。
あるいは抑制する機能を指摘している。これは,後述するより高い条件付保守主義が債権者にもたらす便益を低減することを意味している。
他方,より高い条件付保守主義が契約の効率性を高める理由として,契約後の機能に注目している。条件付保守主義により適時的に経済的損失が会計利益に織り込まれることで,利益維持条項や純資産維持条項などの財務制限条項の抵触が早期化される。財務制限条項の抵触が生じれば,債権者は,配当,借入,および新規投資などの経営者の機会主義的な行動を抑制できるようになるため,より高い条件付保守主義が債務契約の効率性を高めることに寄与すると指摘している。
後続の実証研究は,条件付保守主義に関する見解と整合的な分析結果を報告している。Xxxx et al.(2008)とXxxxxx Xxxx et al.(2009)は,国際比較研究において,条件付保守主義の程度が,株式市場の相対的規模よりも,負債市場の相対的規模と正の関係にあることを提示し,また,Qiang(2007)は,負債総額における私的負債の割合が高い企業ほど,条件付保守主義の程度が高いことを報告している。また,Nikolaev(2010)は,財務制限条項の視点から条件付保守主義と債務契約の関係を分析しており,財務制限条項が設定されている企業では,条件付保守主義の程度が高いとの統計的証拠を示している。以上のように,実証研究は,債権者が企業に経済的損失が生じた場合にはそれを会計利益に織り込む手続きである条件付保守主義を要求していることを示している。しかしながら,これらの実証結果は,ただちに債務契約における無条件保守 主義の需要を否定するものではないことに注意する必要がある。すなわち,無条件保守主義と条件付保守主義との間には逆の関係があるものの,いずれも保守的な会計報告を行っている点では共通しており,過度な会社財産の社外流出やデフォルト・リスク上昇の回避に役立っていると考えられるからである。この見解と整合的に,Ahmed et al.(2002)およびxx(2004)は,配当政策をめぐる株主と債権者との利害対立が深刻な企業ほど,無条件保守主義の程度が
高いことを報告している。
2.4 債務契約における会計上の保守主義の効果
次に,債務契約を銀行ローン契約と社債契約とに分け,また債務企業の信用力を示す格付について,会計上の保守主義がそれらに与える効果や影響に関する実証研究の成果をレビューする。
銀行ローン契約における会計上の保守主義の効果に関する先行研究では,保守主義が負債コストや情報の非対称性を低減する結果が示されており,契約の効率化に寄与していることが示唆されている。Xxxxx(2008)は,条件付保守主義の程度が高い企業で財務制限条項に抵触するのが早期であることを示し,またLIBORとの差異である利率スプレッドが低いことを示す証拠が提示されている。また,Witternberg-Moerman(2008)では,条件付保守主義の程度が高い企業について,情報の非対称性の代理変数であるビッド・アスク・スプレッドが小さいことが示されており,債券の流動性リスクが低いことが示唆されている。さらに,日本企業を対象とした実証研究でも,条件付保守主義が高い企業で,借入金の負債コストが低いことが示されている(xx,2008;xx,2015)。
一方で,社債契約における条件付保守主義の影響を検証している研究に, Xxx and Xxxxxx(2014)がある。この研究では,社債権者は価格ではない条件(たとえば,モニタリングや財務制限条項)にはあまり着目しておらず,条件付保守主義の需要は高くないため,私的債権者のようには効率的な契約のメカニズムとして条件付保守主義を評価していないと考えられるとしている。さらに,財務制限条項の抵触が社債権者に高い再交渉コストを強いることから,財務制限条項の抵触を早期化する条件付保守主義に対して,ネガティブな評価をしていることが仮説立てられている。分析の結果,この仮説と整合的に,条件付保守主義が利回りスプレッドと正の関係にあることが提示されている。
また,格付会社による発行企業の信用力に関する格付(発行体格付)に対する会計上の保守主義の効果も検証されている。Xxxxx et al.(2002)では,無条件保守主義の程度が高いほど,信用格付が高いことが示されている。 Bauwhede(2007)では,条件付保守主義の程度が低い産業に属している企業と比べ,その程度が高い産業に属している企業の格付は高いことが示されてい
る。さらに,無条件保守主義の程度が低い産業に属している企業と比べ,その程度が高い産業に属している企業の格付が低いことが提示されている。
以上の先行研究の成果は,次の2点に要約される。第一に,国内外の実証研究で,銀行ローン契約においてより高い条件付保守主義が契約の効率性を高めていることを示す証拠が示されている一方で,この効果は社債契約では確認されていない。第二に,信用格付の決定において,会計上の保守主義が考慮されていることが示唆されるものの,2つのタイプの保守主義に対する評価は一貫していないようである。
2.5 検証内容
債務契約における会計上の保守主義の機能は,次のように整理される。すなわち,2つのタイプのいずれでも保守的な会計報告を行うことで,過度な会社財産の社外流出やデフォルト・リスクの上昇の回避が期待される。この考えに基づけば,無条件保守主義であれ,条件付保守主義であれ,より保守的な会計報告が行われることで,利回り,償還期間,あるいは担保の設定といった社債発行における重要条件は,(保守的ではない会計報告が行われている場合と比較して)厳しくないものとなっているであろう。格付会社による社債格付についても,より保守的な会計報告がより上位の格付に結びついていると期待される。
次に,保守主義のタイプ別にみてみると,経済的ニュースに依存せずに保守的な会計処理(無条件保守主義)を行うことにより,将来(契約時点以降)における業績の下振れが抑制される一方で,契約時点でその効果は契約に織り込まれ,その時点以降の条件付保守主義を無効とする(すなわち,契約時点以降には新情報がもたらされない)ことがあげられる。他方,経済的ニュースに依存して保守的な会計処理(条件付保守主義)を行うことにより,契約時点以降で経済的損失が適時的に会計利益に織り込まれることで,財務制限条項の抵触が早期化され,経営者の機会主義的な行動の抑制につながることが期待される一方で,経済的ニュースが生じなければ(あるいは,経営者が経済的ニュースを認識しなければ)保守的な会計処理は行われず,またそれが生じたときには
業績の下振れが大きくなることがあげられる。
以上のことは,次のように要約される。すなわち,契約締結以降で,経営者の機会主義的行動を抑制する財務制限条項を,経済的ニュースに基づいて,適時的に有効にすることを重視するのであれば,より高い条件付保守主義が厳しくない契約条件や上位の格付に結びついていると期待される一方で,条件付保守主義を無効化するより高い無条件保守主義に対してネガティブな評価が行われ,厳しい契約条件や下位の格付となっていることが予想される。これに対し,モニタリング・コストが大きいことや再交渉の困難性といった社債権者の特徴に基づけば6),Xxx and Xxxxxx(2014)が提示しているように,財務制限条項の抵触を早期化する機能をもつ条件付保守主義は契約条件や格付に好ましい影響を与えていないことが期待され,一方で,経済的ニュースに先立って,予防的に保守的な会計報告を行う無条件保守主義にポジティブな評価が行われていることが予想される。
3.リサーチ・デザイン
本稿では,会計上の保守主義と社債契約の諸条件との関係を分析するために,以下の回帰式を設定する(i は企業を,j は社債を,t は年を示している)。下
6)Xxxxxxx et al.(2008)では,会計情報の質(accounting quality)と債務契約の関係が分析されている。研究成果の一つとして,社債契約においては,会計情報の質は,価格条件(price term)である利率スプレッドと有意な関係にある一方で,償還期間や担保の設定といった非価格条件(non-price term)とは有意な関係にないことが報告されている。彼らは,この結果を,次のように解釈している。社債は分散した個々の投資家によって保有され,フリーライダー問題のために,モニタリングのコストが大きくなる。また,契約内容の再交渉は,分散した社債権者の合意が必要となるために,困難であることが指摘されている。これらの社債権者の特徴により,社債契約の契約内容は定型的なものとなり,会計情報の質は,利率スプレッドのみに反映されている,ということである。以上のことは,会計情報の質に応じて価格条件に加えて非価格条件の面で弾力的な契約内容としている銀行と比べると,債権者の特徴が会計情報の機能や有効性に影響することを示唆している。
図は,分析の概要を示している。会計上の保守主義の変数(CON)として,社債発行の直近会計期間(t 期)の決算日における無条件保守主義水準尺度
(UCON),当該会計期間における無条件保守主義の変動尺度(△UCON)および同期間における条件付保守主義尺度(CCON)を用いる。t 期末以降に発行された社債について,その諸条件と格付に関する変数として,利回りスプレッド(SPREAD),償還期間(LNMATUR),担保ダミー(SECURED),および社債格付(RATE)を用いる。すなわち,t 期の会計情報を利用して,t+1 期に社債投資意思決定が行われていると仮定した分析を行っている。
なお,回帰式には,Xxxxxxxx(1998),xxほか(2004),xx(2008a),
およびXxxxxxx et al.(2008)に基づいて,保守主義以外に被説明変数に影響を与えると考えられる変数をコントロール変数として加えている7)。本稿で用いる変数の定義は,付録に示されているとおりである。
期首 決算日公表日 社債発行日
time
✓ 会計上の保守主義に関する変数 CON
・無条件保守主義変動尺度 UCON
・条件付保守主義尺度 CCON
・無条件保守主義水準尺度 UCON
✓ 発行企業に関するその他の変数
(コントロール変数)
✓ 社債契約に関する変数
・利回りスプレッド SPREAD
・償還期間 LNMATUR
・担保ダミーSECURED
・社債➓付 RATE
✓ 社債契約に関するその他
の変数(コントロール変数)
図 本稿の分析の概要
3.1 重回帰モデル
はじめに,保守主義と利回りxxxxxとの関係を検証する回帰式⑴を設定する。
7)コントロール変数の選択と予測符号に関する議論は,Xxxxxxxx(1998),xxほか(2004),xx(2008a)およびXxxxxxx et al.(2008)に依拠している。
SPREADi,j,t+1=α+β1 CONi,t+β2 MARGINi,t+β3 DEBTi,t+β4 INCRi,t+
β5 CURRENTi,t+β6 DEFAULTi,t+β7 Mto Bi,t+β8 ⑴ LNASSETi,t+β9 BSIZEi,j,t+1+β10 DMATURi,j,t+1+β11
XXXXXXXx,x,t+1+β12 BCFIRMi,j,t+1+β13 RISKPi,j,t+1+εi,j,t+1
被説明変数には,同年同月発行の国債の利回りとの差異である利回りスプレッド(SPREAD)を利用する。利回りスプレッドは,社債発行により資金調達を行う企業が債権者に支払うべきリスク・プレミアムを捉えている。本稿の関心は,保守主義尺度(CON)の係数β1 にある。推定の結果,保守主義尺度の係数β1 が有意な負の値であれば,保守主義が契約の効率性向上に寄与していることが示唆される。
コントロール変数には,以下の変数を加えている。企業の財務内容を示す変数として,売上高営業利益率(MARGIN),負債比率(DEBT),インタレスト・カバレッジ・レシオ(INCR),流動比率(CURRENT),デフォルト・リスク・ダミー(DEFAULT),時価簿価比率(MtoB),および資産規模(LNASSET)を含めている。さらに,社債発行の条件を示す変数として,社債金額(BSIZE),償還期間差異(DMATUR),担保ダミー(SECURED),および社債管理会社ダミー(BCFIRM)を含めている。そして,市場の動向を捉える変数として,リスク・プレミアム(RISKP)を含めている。
次に,保守主義と償還期間との関係を検証する回帰式⑵を設定する。
LNMATURi,j,t+1=α+β1 CONi,t+β2 DEBTi,t+β3 DEFAULTi,t+β4
MtoBi,t+β5 LNASSETi,t+β6 AMATURi,t+β7 BSIZEi,j,t+1 ⑵
+β8 SECUREDi,j,t+1+εi,j,t+1
被説明変数には,償還期間(LNMATUR)を利用する。他の条件が等しければ,デフォルト・リスクが高い社債では,それが低い社債と比べ,償還期間は短く設定されると考えられる。そこで,もし保守主義尺度(CON)の係数β1が正と推定された場合,保守主義がデフォルト・リスクを低減していることが
示唆されたことになる。
コントロール変数には,企業の財務内容を示す変数として,負債比率
(DEBT),デフォルト・リスク・ダミー(DEFAULT),時価簿価比率(MtoB),資産規模(LNASSET),および資産期間(AMATUR)を,社債発行の条件を示す変数として,社債金額(BSIZE)と担保ダミー(SECURED)を含めている。
続いて,保守主義と担保の設定との関係を検証する回帰式⑶を設定する。
XXXXXXXx,x,t+1=α+β1 CONi,t+β2 DEBTi,t+β3 DEFAULTi,t+β4 ⑶ MtoBi,t+β5 BSIZEi,j,t+1+β6 LNMATURi,j,t+1+εi,j,t+1
被説明変数には,担保ダミー(SECURED)を利用する。他の条件が等しければ,デフォルト・リスクが高い社債では,担保の設定が必要となると考えられる。そこで,もし保守主義尺度(CON)の係数β1 が負と推定されたのなら,保守主義がデフォルト・リスクを低減し,担保設定の必要性を低くしていることを示唆している。
コントロール変数には,負債比率(DEBT),デフォルト・リスク・ダミー
(DEFAULT),時価簿価比率(MtoB),社債金額(BSIZE),および償還期間
(LNMATUR)を含めている。
最後に,保守主義と信用格付との関係を検証する回帰式⑷を設定する。
XXXXx,x,t+1=α+β1 CONi,t+β2 MARGINi,t+β3 DEBTi,t+β4 INCRi,t+β5
CURRENTi,t+β6 DEFAULTi,t+β7 MtoBi,t+β8 LNASSETi,t+ ⑷ β9 BSIZEi,j,t+1+β10 LNMATURi,j,t+1+β11 SECUREDi,j,t+1+β
12 BCFIRMi,j,t+1+β13 RISKPi,j,t+1+εi,j,t+1
被説明変数には,社債格付(RATE)を利用する。これは,格付投資情報センター(R&I)による長期個別債務格付であり,AAAからBBB-までの記号で表現される。そこで,これに1から10までの数値を割り当てる(xx, 2008a)。保守主義尺度(CON)の係数β1 は有意な負の値になると予想される。
社債格付は,利回りスプレッドと同じく,負債コストの代理変数として用いら
れることから,コントロール変数には,回帰式⑴とほぼ同じ変数を加えている8)。
3.2 無条件保守主義尺度の推定
本稿では,先行研究に準拠し,無条件保守主義尺度の推定に,Xxxxxx and Xxxx(2000)のモデルを用いた(Xxxxx et al., 2002;xx, 2004;Xxxxxx and Xxx, 2014;xxほか, 2014)。
j=0
j
i,t-j
BTMi,t=α+αt+αi+Σ6 β R
+εit ⑸
このモデルによれば,純資産簿価時価比率(BTM)は,時間効果(time effect),企業効果(firm effect),およびラグ成分(lag component)で説明される。回帰式⑸のうち,αt が時間効果,αi が企業効果,右辺第4項がラグ成分を示している。このうち,企業効果αi が純資産簿価時価比率の持続的なバイアス成分(bias component)であり,無条件保守主義の程度を捉えているとされる。本稿でも,無条件保守主義の尺度に,企業効果αi を用いることとする。
企業効果αi を推定するには一定の推定期間が必要となる。そこで,Xxxxxx and Xxx(2014)に倣い,5年間とした。すなわち,t 期時点での無条件保守主義の程度を推定するために,t-4 期から t 期までの5年間のデータセットを用いた。そして,xx(2004)を参考に,①日本の株式市場に上場している企業,
②決算月数が12か月である企業,③金融業に該当しない企業,④純資産簿価が負の値ではない企業,⑤BTMi,t が4以下の企業,⑥Ri,t-j が3以下の企業,⑦
8)利回りスプレッド(国債利回りとの差異)を被説明変数とする回帰式⑴では,償還期間に関する変数として国債との差異を示す償還期間差異(DMATUR)を用いた一方で,社債格付を被説明変数とする回帰式⑷では,償還期間に関する変数として償還期間(LNMATUR)を用いた。
回帰式⑸の推定に必要な変数が入手可能な企業9)の7つの要件を満たす同年同月決算の企業をサンプルとして抽出し,回帰式⑸を推定した。企業効果αi は,その値が大きいほど,無条件保守主義の程度が低いことを示している。そこで,企業効果αi の値が大きいほど,無条件保守主義の程度が高いことを示すようにするため,αi に-1 を乗じた値を無条件保守主義水準尺度(BRi,t)とした。加えて,t 期における無条件保守主義の変動を捉えるため,t 期末と t-1 期末の無条件保守主義水準尺度の差を算出し,無条件保守主義変動尺度(△BRi,t)とした。
3.3 条件付保守主義尺度の推定
また,条件付保守主義尺度の推定には,Khan and Watts(2009)のモデルを用いた(Wittenberg-Moerman, 2008;Xxxxxx and Xxxx, 2009;Tan, 2012; Xxxxxx and Xxx, 2014;xxほか, 2014;Xxx and Xxxxxx, 2014)。
Khan and Watts(2009)のモデルによる尺度は,Basu(1997)の適時的な損失認識の考え方に基づいている。Xxxx(1997, p. 4)は,保守主義を,「経済的損失を認識する場合に比べ,経済的利益を認識する場合に,より高い検証性を必要とする会計専門家の傾向を捉えたもの」と定義し,次の回帰式⑹を用いて,条件付保守主義の程度を定量化している。
Xx,t/MVi,t-1=γ1+γ2 DRi,t+γ3 Ri,t+γ4 Ri,t・DRi,t+εi,t ⑹
このモデルでは,株式リターン(R)を経済的ニュースを捉える代理変数とみており,係数γ3 は経済的利益(グッド・ニュース)を会計利益に織り込む適時性,係数γ4 は経済的損失(バッド・ニュース)が生じた場合に,経済的利益に比べ会計利益が経済的損失を増分的に織り込む適時性を捉えているとされる。多くの先行研究では,係数γ4 の値が大きいほど,経済的利益よりも経済
9)より具体的には,後述するように,t 期における無条件保守主義の変動を測定するために,t-1 期と t 期で回帰式⑸の推定に必要な変数がそろう企業をサンプルの条件とした。
的損失を会計利益が適時的に織り込んでいることを意味するとし,条件付保守主義の程度が高いとみなされている。ただし,このモデルでは,係数が条件付保守主義の尺度となっているため,企業・年の条件付保守主義の尺度の測定には長期的なデータが必要になる制約がある。
そこで,Khan and Watts(2009)は,企業・年の条件付保守主義の程度を捉えるために,Basu(1997)モデルを発展させ,次の回帰式⑺を提示している。
Ei,t/MVi,t-1=γ1 +γ2 DRi,t+Ri,t(μ1+μ2 SIZEi,t+μ3 M/Bi,t+μ4 LEVi,t)+
Xx,x・XXx,t(λ1+λ2 SIZEi,t+λ3 M/Bi,t+λ4 LEVi,t)+(δ1 ⑺ SIZEi,t+δ2 M/Bi,t+δ3 LEVi,t+δ4 DRi,t・SIZEi,t+δ5 DRi,t・ M/Bi,t+δ6 DRi,t・LEVi,t)+εi,t
このとき,Khan and Watts(2009)は,係数μi と係数λi,i=1~4 は企業間で一定であり,年により変化すると仮定している。これは,それぞれの企業・年の経済的利益に対する会計利益の適時性と,経済的損失に対する会計利益の増分的適時性が,3つの企業特性,すなわち企業規模(SIZE),純資産時価簿価比率(M/B),およびレバレッジ(LEV)により変化することを意味している。そこで,同期間のクロス・セクション・データを用いて,係数μi と係数λi, i=1~4 を推定し,次の回帰式から各企業・年尺度を算出する。
G_Scorei,t=γ3=μ1+μ2 SIZEi,t+μ3 M/Bi,t+μ4 LEVi,t ⑻
C_Scorei,t=γ4=λ1+λ2 SIZEi,t+λ3 M/Bi,t+λ4 LEVi,t ⑼
ここで,G_Scorei,t は,企業 i 社の t 期における経済的利益に対する会計利益の適時性であり,Basu(1997)モデル⑹の係数γ3 に該当する。C_Scorei,tは,企業 i 社の t 期における経済的損失が生じた場合に,経済的利益に比べ会計利益が経済的損失を増分的に織り込む適時性を捉えており,Basu(1997)モデル⑹の係数γ4 に該当する。
企業・年の条件付保守主義尺度を推定するための手順は次の通りである。はじめに,①日本の株式市場に上場している企業,②決算月数が12か月である企
業,③金融業に該当しない企業,④純資産簿価が負の値ではない企業,⑤回帰式⑺の推定に必要な変数が入手可能な企業,⑥各決算において推定に用いる変数(ダミー変数を除く)について上下1%に含まれない企業の6つの要件を満たす同年同月決算の企業をサンプルとして抽出し,回帰式⑺を推定した。
i
3
i,t
4
i,t
次に,推定された係数λ̂ ,i=1~4 を用いて,各企業・年について,3つの企業特性を回帰式⑽に代入し,C_Scorei,t を算定した。C_Scorei,t は,当該企業・年の条件付保守主義の程度を捉えており,この値が大きいほど,条件付保守主義の程度が高いことを示している。
1
2
i,t
C_Scorei,t=λ̂+λ̂ Size
+λ̂ M/B
+λ̂ Lev ⑽
3.4 無条件保守主義尺度と条件付保守主義尺度の基準化
本稿では,以上のように,無条件保守主義の水準尺度と変動尺度,および条件付保守主義の企業・年の尺度を推定した。しかし,これらの尺度には,ノイズが生じることが知られている。そこで,このノイズを緩和するために,先行研究に倣い,基準化した値をそれぞれの変数として用いた(Xxxxx, 2008; Xxxxxx and Xxx, 2014;xxほか, 2014)。基準化の手順は,以下の通りである。はじめに BRi,t,△BRi,t,および C_Scorei,t を決算年月ごとに昇順で順位づけし,次にその順位を当該決算年月の観測数で除した。BRi,t,△BRi,t,および C_Scorei,tを基準化した値を,それぞれ,UCONi,t,△UCONi,t,および CCONi,t とした。なお,基準化により,それぞれ,ゼロに近い値から1までの値をとり,値が大きいほど,それぞれの尺度が高いことを示している。
4.サンプルの選択と記述統計量
4.1 サンプルの選択とデータ
本稿では,2006年4月から2012年3月までの間に発行された公募普通社債のうち,発行企業が,①金融業に該当しない,②分析に必要な変数が入手可能,
③ダミー変数と償還期間に関する変数を除く各変数について上下1%に含まれない,の3つの要件を満たす580銘柄をサンプル(full sample)とした。
また,同一企業が同一会計期間において複数の社債を発行している場合があり,1つの財務諸表に対して複数の社債がサンプルに含まれることで分析結果に影響することが考えられる。そこで,財務諸表公表後,最初に発行された銘柄のみを対象として,202銘柄をサブサンプル(1st issue sample)とした。
なお,社債データは『公社債発行銘柄一覧』(日本証券業協会),国債データは『公社債便覧』(日本証券業協会),財務データは『日経NEEDS企業財務データ』(日経メディアマーケティング),株価データは『株価CD-ROM』(東洋経済新報社)から収集している。
4.2 記述統計量と相関係数
Full sampleを対象とした分析に利用する変数の記述統計量を表1に要約している。はじめに,被説明変数についてみてみると,SPREADの平均値(中央値)は約0.37%(約0.35%)であることがわかる。LNMATURは平均4.39(89か月)である。SECUREDの平均値は0.259で,サンプルの約4分の1の銘柄が一般担保付社債である。社債格付は,AA+169銘柄(29.1 %),AA 47銘柄
(8.1%),AA- 27銘柄(4.7%),A+68銘柄(11.7%),A 106銘柄(18.3%), A-102銘柄(17.6%),BBB+37銘柄(6.4%),BBB 23銘柄(4.0%),BBB-1銘柄(0.2 %)の分布となっている。次に, 保守主義尺度をみてみると, UCONの平均値は約0.74である一方で,CCONの平均値は約0.18である。これらは,上場企業全体における社債発行企業の位置を示しており,直近決算日時点の無条件保守主義は相対的に高く,対照的に当期利益に経済的損失を織り込む条件付保守主義は相対的に低いことを示している。
表2には,各変数の相関係数が表示されている。被説明変数と保守主義尺度との相関関係をみてみると,UCON(CCON)は,SPREADとRATEとは負
(正)の相関関係,LNMATURとSECUREDとは正(負)の相関関係を有している。これは,直近決算日時点の無条件保守主義が高いと,利回りスプレッ
表1 記述統計量(N = 580) | |||||||
変数 | 平均値 | 標準偏差 | 最小値 | 第 1四分位 | 中央値 | 第 3四分位 | 最大値 |
SPREAD | 0.365 | 0.281 | -0.410 | 0.194 | 0.350 | 0.531 | 1.300 |
LNMATUR | 4.391 | 0.449 | 3.178 | 4.094 | 4.431 | 4.787 | 5.886 |
SECURED | 0.259 | 0.438 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 1.000 | 1.000 |
RATE | 4.810 | 2.259 | 2.000 | 2.000 | 5.000 | 7.000 | 10.00 |
UCON | 0.738 | 0.175 | 0.203 | 0.656 | 0.777 | 0.866 | 0.991 |
△UCON | 0.522 | 0.220 | 0.073 | 0.379 | 0.505 | 0.685 | 0.968 |
CCON | 0.177 | 0.195 | 0.001 | 0.043 | 0.100 | 0.220 | 0.927 |
MARGIN | 0.062 | 0.039 | -0.031 | 0.038 | 0.060 | 0.080 | 0.232 |
DEBT | 2.709 | 1.564 | 0.435 | 1.541 | 2.682 | 3.245 | 9.996 |
INCR | 9.160 | 12.97 | -5.483 | 3.211 | 5.411 | 11.03 | 175.2 |
CURRENT | 0.983 | 0.500 | 0.327 | 0.517 | 0.945 | 1.287 | 3.066 |
DEFAULT | 0.972 | 0.164 | 0.000 | 1.000 | 1.000 | 1.000 | 1.000 |
MtoB | 1.080 | 0.156 | 0.794 | 0.983 | 1.046 | 1.135 | 1.795 |
LNXXXXX | 00.00 | 0.000 | 00.00 | 00.00 | 00.00 | 08.66 | 29.56 |
AMATUR | 5.553 | 3.881 | 0.696 | 1.992 | 4.725 | 9.102 | 12.95 |
BSIZE | 23.38 | 0.502 | 22.33 | 23.03 | 23.43 | 23.72 | 24.64 |
DMATUR | 1.039 | 1.449 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 2.485 | 4.564 |
BCFIRM | 0.259 | 0.438 | 0.000 | 0.000 | 0.000 | 1.000 | 1.000 |
RISKP | 1.604 | 0.537 | 0.753 | 1.230 | 1.587 | 1.893 | 3.640 |
(注)各変数の定義は付録を参照。 |
ドは低く,償還期間は長く,担保が設定され,好ましい格付となっていることを示唆している。一方で,条件付保守主義尺度と被説明変数との相関関係は,無条件保守主義の場合と反転しており,条件付保守主義が高いと,利回りスプレッドは高く,償還期間は短く,担保は設定されず,好ましくない格付となっていることを示唆している。
会計上の保守主義と社債契約
表2 相関係数(N = 580)
[1] | [2] | [3] | [4] | [5] | [6] | [7] | [8] | [9] | [10] | [11] | [12] | [13] | [14] | [15] | [16] | [17] | [18] | [19] | |
[1]SPREAD | -0.31 | -0.32 | 0.46 | -0.11 | -0.16 | 0.07 | -0.20 | 0.10 | 0.16 | 0.19 | -0.01 | 0.05 | -0.13 | -0.34 | -0.16 | 0.43 | -0.28 | 0.16 | |
[2]LNMATUR | -0.31 | 0.09 | -0.22 | 0.05 | -0.06 | -0.09 | 0.18 | 0.03 | -0.08 | -0.12 | -0.02 | -0.01 | 0.18 | 0.18 | 0.17 | -0.18 | 0.02 | 0.04 | |
[3]SECURED | -0.29 | 0.07 | -0.73 | 0.01 | 0.17 | -0.07 | 0.34 | 0.24 | -0.54 | -0.62 | 0.10 | 0.02 | 0.38 | 0.74 | 0.23 | 0.07 | 0.93 | 0.11 | |
[4]RATE | 0.43 | -0.22 | -0.72 | -0.12 | -0.10 | 0.13 | -0.41 | 0.18 | 0.19 | 0.38 | -0.02 | -0.01 | -0.40 | -0.54 | -0.38 | -0.04 | -0.67 | -0.16 | |
[5]UCON | -0.15 | 0.06 | 0.08 | -0.17 | 0.06 | -0.03 | 0.20 | 0.10 | -0.13 | -0.28 | 0.01 | 0.32 | 0.03 | 0.24 | 0.16 | 0.03 | 0.01 | -0.03 | |
[6]△UCON | -0.16 | -0.04 | 0.19 | -0.12 | 0.02 | 0.14 | -0.13 | 0.11 | -0.17 | -0.07 | 0.07 | -0.13 | -0.03 | 0.10 | -0.06 | 0.00 | 0.17 | -0.27 | |
[7]CCON | 0.08 | -0.05 | -0.06 | 0.13 | -0.02 | 0.14 | -0.08 | -0.07 | -0.03 | -0.03 | -0.08 | -0.23 | -0.35 | -0.01 | -0.18 | 0.04 | -0.02 | -0.31 | |
[8]MARGIN | -0.19 | 0.17 | 0.27 | -0.36 | 0.20 | -0.12 | -0.07 | -0.16 | 0.08 | -0.36 | 0.01 | 0.30 | 0.05 | 0.52 | 0.05 | 0.00 | 0.27 | 0.15 | |
[9]DEBT | 0.23 | -0.03 | 0.06 | 0.34 | 0.04 | 0.01 | 0.08 | -0.16 | -0.65 | -0.48 | 0.15 | 0.05 | 0.48 | 0.23 | -0.02 | 0.09 | 0.25 | -0.05 | |
[10]INCR | 0.09 | -0.09 | -0.28 | 0.06 | -0.02 | -0.02 | -0.01 | 0.18 | -0.38 | 0.58 | -0.12 | 0.17 | -0.36 | -0.54 | -0.06 | -0.02 | -0.54 | 0.04 | |
[11]CURRENT | 0.12 | -0.11 | -0.56 | 0.35 | -0.23 | -0.08 | -0.11 | -0.23 | -0.40 | 0.38 | -0.08 | -0.10 | -0.29 | -0.79 | -0.10 | -0.12 | -0.58 | -0.08 | |
[12]DEFAULT | 0.01 | -0.02 | 0.10 | -0.01 | -0.01 | 0.08 | -0.04 | 0.01 | 0.12 | -0.15 | -0.05 | 0.02 | 0.16 | 0.00 | 0.11 | 0.06 | 0.10 | -0.08 | |
[13]MtoB | 0.07 | -0.02 | -0.06 | 0.03 | 0.29 | -0.12 | -0.11 | 0.31 | -0.03 | 0.33 | 0.04 | 0.03 | -0.07 | 0.08 | -0.02 | 0.09 | 0.03 | 0.22 | |
[14]LNASSET | -0.09 | 0.17 | 0.37 | -0.39 | 0.12 | -0.03 | -0.19 | 0.07 | 0.39 | -0.28 | -0.34 | 0.18 | -0.09 | 0.17 | 0.42 | 0.05 | 0.34 | 0.08 | |
[15]AMATUR | -0.32 | 0.16 | 0.81 | -0.58 | 0.25 | 0.14 | 0.00 | 0.42 | 0.20 | -0.33 | -0.74 | 0.03 | -0.04 | 0.27 | 0.03 | 0.05 | 0.69 | 0.09 | |
[16]BSIZE | -0.12 | 0.14 | 0.21 | -0.36 | 0.19 | -0.05 | -0.13 | 0.06 | -0.06 | -0.06 | -0.09 | 0.11 | 0.01 | 0.46 | 0.07 | -0.12 | 0.20 | 0.03 | |
[17]DMATUR | 0.39 | -0.22 | 0.07 | -0.04 | 0.03 | 0.01 | 0.11 | 0.01 | 0.09 | -0.02 | -0.13 | 0.06 | 0.06 | 0.06 | 0.06 | -0.12 | 0.10 | 0.02 | |
[18]BCFIRM | -0.26 | 0.00 | 0.93 | -0.66 | 0.07 | 0.18 | -0.04 | 0.20 | 0.11 | -0.27 | -0.54 | 0.10 | -0.06 | 0.33 | 0.76 | 0.19 | 0.10 | 0.08 | |
[19]RISKP | 0.14 | 0.04 | 0.12 | -0.19 | -0.01 | -0.25 | -0.24 | 0.11 | -0.06 | 0.06 | -0.06 | -0.12 | 0.13 | 0.11 | 0.09 | 0.05 | 0.00 | 0.09 |
227
(注)各変数の定義は付録を参照。表の左下(右上)はPearson(Spearman)相関係数を示している。
5.推 定 結 果
5.1 利回りスプレッドとの関係性
表3は,利回りスプレッド(SPREAD)を被説明変数とした回帰式⑴の最小二乗法(OLS)による推定結果を示している。無条件保守主義に関する2つの変数(UCONと△UCON)の係数は,統計的に有意な負の値である。この結果は,直近決算日時点で無条件保守主義が高い企業,あるいは直近会計期間で無条件保守主義を高めた企業は,利回りスプレッドが低いことを意味している。一方,条件付保守主義(CCON)の係数は統計的に有意ではなく,利回りスプレッドに影響を与えている,とは言えないことを示している。
コントロール変数では,社債金額(BSIZE)を除いて,予想通りの符号を有している。その結果は,次のように要約される。収益性(MARGIN)が高く,資産規模(LNASSET)が大きい企業が発行した社債で,社債管理会社が設置されている銘柄(BCFIRM)の場合,利回りスプレッドは低く設定されている。一方,負債比率(DEBT)が高い企業が発行した社債で,社債金額(BSIZE)
が大きく,対応国債との償還期間の差異(DMATUR)が大きい銘柄の場合,利回りスプレッドは高く設定されている10)。加えて,利回りスプレッドは,市場の動向(RISKP)を踏まえて,設定されているようである。
また,表2に示したように,DEBT,INCR,CURRENT,SECURED,およびBCFIRMに,相対的に高い相関係数が確認された。多重共線性が懸念されるため,それぞれの変数を除いて推定したところ,保守主義尺度と利回りスプレッドとの関係(符号と有意性)は,表3に示した結果とほぼ同じであった。
10)先行研究において,社債金額(BSIZE)が大きな銘柄では,規模の経済性の効果が期待されるため,利回りスプレッドは低くなり,負の係数が予想されている。この予想に対し,本稿では,推定の結果,その係数の符号は正となり,社債金額が高いほど,利回りスプレッドが高くなっており,デフォルト・リスクが高く評価されていることが示唆された。
表3 重回帰モデルの推定結果(OLS) | ||||
説明変数 | 予測符号 | 被説明変数:利回りスプレッド(SPREAD) | ||
Constant | 0.110 | 0.548 | 0.241 | |
(0.821) | (0.276) | (0.622) | ||
UCON | [-/+] | -0.206 | ||
(0.001)*** | ||||
△UCON | [-/+] | -0.119 | ||
(0.010)** | ||||
CCON | [-/+] | 0.046 | ||
(0.428) | ||||
MARGIN | [-] | -0.682 | -0.876 | -0.744 |
(0.017)** | (0.003)*** | (0.011)** | ||
DEBT | [+] | 0.062 | 0.064 | 0.063 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
INCR | [-] | 0.002 | 0.003 | 0.002 |
(0.137) | (0.065)* | (0.091)* | ||
CURRENT | [+] | 0.023 | 0.042 | 0.048 |
(0.465) | (0.175) | (0.122) | ||
DEFAULT | [+] | 0.048 | 0.071 | 0.063 |
(0.449) | (0.296) | (0.332) | ||
MtoB | [-] | 0.038 | -0.045 | -0.028 |
(0.609) | (0.528) | (0.697) | ||
LNASSET | [-] | -0.053 | -0.056 | -0.052 |
(0.001)*** | (0.000)*** | (0.001)*** | ||
BSIZE | [-] | 0.060 | 0.045 | 0.048 |
(0.012)** | (0.061)* | (0.045)** | ||
DMATUR | [+] | 0.081 | 0.080 | 0.080 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
SECURED | [-] | -0.052 | -0.019 | -0.037 |
(0.200) | (0.663) | (0.369) | ||
BCFIRM | [-] | -0.110 | -0.113 | -0.112 |
(0.001)*** | (0.001)*** | (0.001)*** | ||
RISKP | [+] | 0.109 | 0.102 | 0.118 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
N | 580 | 580 | 580 | |
Adj. R2 | 0.383 | 0.377 | 0.371 | |
(注)各変数の定義は付録を参照。 括弧内はWhiteの標準誤差に基づく t 値に対する p 値を示している。 *** 1%水準で有意,** 5%水準で有意,*10%水準で有意。 |
5.2 償還期間との関係性
表4は,償還期間(LNMATUR)を被説明変数とした回帰式⑵のOLSによ
表4 重回帰モデルの推定結果(OLS) | ||||
説明変数 | 予測符号 | 被説明変数:償還期間(LNMATUR) | ||
Constant | -0.465 | -0.028 | -0.088 | |
(0.607) | (0.976) | (0.926) | ||
UCON | [+/-] | -0.195 | ||
(0.088)* | ||||
△UCON | [+/-] | -0.036 | ||
(0.657) | ||||
CCON | [+/-] | -0.007 | ||
(0.947) | ||||
DEBT | [-] | -0.051 | -0.049 | -0.049 |
(0.001)*** | (0.002)*** | (0.002)*** | ||
DEFAULT | [-] | -0.080 | -0.072 | -0.076 |
(0.442) | (0.468) | (0.449) | ||
MtoB | [+] | 0.035 | -0.036 | -0.031 |
(0.736) | (0.729) | (0765) | ||
LNASSET | [+] | 0.113 | 0.108 | 0.109 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
AMATUR | [+] | 0.055 | 0.049 | 0.049 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
BSIZE | [+] | 0.078 | 0.064 | 0.064 |
(0.077)* | (0.145) | (0.141) | ||
SECURED | [+] | -0.407 | -0.362 | -0.367 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
N | 580 | 580 | 580 | |
Adj. R2 | 0.089 | 0.085 | 0.085 | |
(注)各変数の定義は付録を参照。 括弧内はWhiteの標準誤差に基づく t 値に対する p 値を示している。 ***1%水準で有意,**5%水準で有意,*10%水準で有意。 |
る推定結果を示している11)。UCONの係数が10%水準で有意な負の値であるが,△UCONとCCONの係数は統計的に有意ではなかった。この結果は,償還期間の設定に,無条件保守主義水準尺度が影響している可能性があるものの,直近会計期間の無条件保守主義の変動や条件付保守主義は影響しているとは言えないことを示している。
コントロール変数については,ほぼ予想符号と一致しており,負債比率
(DEBT)が高い企業では償還期間が短く設定される一方で,資産規模
(LNASSET)が大きく,資産期間(AMATUR)が長いほど,償還期間が長く設定されていることが示された。また,予想とは対照的に,担保xxx
(SECURED)の係数は有意な負であった。このことは,担保を設定することで償還期間が長くなっていることを示しているのではなく,むしろ担保を必要とするデフォルト・リスクが高いと考えられる銘柄では,無担保銘柄よりも償還期間が短く設定されていることを示唆している。
5.3 担保の設定との関係性
表5は,担保xxx(SECURED)を被説明変数とする回帰式⑶の推定結果である12)。なお,被説明変数が0か1を取るダミー変数であるため,推定には,プロビット・モデル(probit model)を適用している。
UCONとCCONの係数は有意ではない一方で,△UCONの係数は有意な正の値であった。この結果は,直近決算日時点の無条件保守主義や当該会計期間の条件付保守主義の程度は担保の設定に影響していないようであるが,無条件保守主義の程度を高めている企業が発行した社債では担保が設定されていること
11)推定の結果,重回帰モデルのあてはまりを示すR2は0.085から0.089となった。これらの値は,アメリカ企業による社債を分析対象としているBharath et al.(2008)で示されているR2 0.13と比べ,低い値であった。このことは,コントロール変数の検討の必要性を示唆しており,今後の研究課題の一つである。
12)推定の結果,重回帰モデルのあてはまりを示すR2は0.053から0.087となった。こ
れらの値は,アメリカ企業による社債を分析対象としているBharath et al.(2008)で示されているR2 0.33と比べ,低い値であった。このことは,コントロール変数の検討の必要性を示唆しており,今後の研究課題の一つである。
を示唆している。
また,コントロール変数については,統計的にみて,負債比率(DEBT)が高い企業で,社債金額(BSIZE)が大きい銘柄では担保が設定されているようである。時価簿価比率(MtoB)の係数は負の値であったが,統計的な有意性は一貫していなかった。
表5 重回帰モデルの推定結果(Probit) | ||||
説明変数 | 予測符号 | 被説明変数:担保ダミー(SECURED) | ||
Constant | -13.953 | -16.976 | -14.031 | |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
UCON | [-/+] | 0.557 | ||
(0.134) | ||||
△UCON | [-/+] | 1.406 | ||
(0.000)*** | ||||
CCON | [-/+] | -0.336 | ||
(0.273) | ||||
DEBT | [+] | 0.074 | 0.078 | 0.080 |
(0.055)* | (0.052)* | (0.038)** | ||
MtoB | [-] | -0.860 | -0.403 | -0.696 |
(0.054)* | (0.348) | (0.098)* | ||
BSIZE | [+] | 0.562 | 0.650 | 0.578 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
LNMATUR | [+] | 0.098 | 0.124 | 0.094 |
(0.439) | (0.338) | (0.458) | ||
N | 580 | 580 | 580 | |
McFadden R2 | 0.053 | 0.087 | 0.052 | |
(注)各変数の定義は付録を参照。括弧内は p 値を示している。 *** 1%水準で有意,** 5%水準で有意,*10%水準で有意。 |
5.4 社債格付との関係性
表6は,社債格付(RATE)を被説明変数とした回帰式⑷の推定結果を示している。被説明変数はR&Iによる格付に1から10を割り当てた変数である。これは離散値であることから,推定には,順序プロビット・モデル(ordered probit model)を適用している。
推定の結果,UCONと△UCONの係数が5%水準で有意な負の値であったのに対し,CCONの係数は統計的に有意ではなかった。この結果は,直近決算日時点で無条件保守主義が高い企業,あるいは直近会計期間で無条件保守主義を高めた企業は,社債格付が上位になっていることを意味している。また,条件付保守主義が社債格付に影響を与えている,とは言えないことを示している。以上は,5. 1に示した保守主義と利回りxxxxxとの関係性と整合的である。
コントロール変数については,収益性(MARGIN)が高く,資産規模
(LNASSET)の大きな企業が,社債金額(BSIZE)が大きく,償還期間
(LNMATUR)が長く,担保(SECURED)が設定され,社債管理会社(BCFRIM)が設定されている銘柄は,上位の社債格付となっている。一方で,負債比率
(DEBT)や流動比率(CURRENT)が高い企業が発行した銘柄は,下位の社
債格付となっていることを示している。これらは,償還期間を除いて,先行研究に基づく予想と整合的な結果であった13)。
なお,いくつかの説明変数間で高い相関係数が確認されたことから,多重共線性の問題が生じる可能性がある。そのため,それぞれの変数を除いて,回帰式⑷を推定したところ,保守主義尺度と社債格付との関係は,表6に示した結果とほぼ同じであった。
13)償還期間が長い銘柄では,その分リスクが上昇するため,下位の格付となると予想される。Xxxxxxxx(1998)は,アメリカ企業による社債を分析対象として,この予想と整合的な分析結果を提示している。これに対し,日本企業による社債を分析対象としている本稿では,償還期間を長く設定している銘柄で上位の格付となっていることが示された。この結果は,xxほか(2004)でも示されており,社債格付の評価において,償還期間に対する格付機関の取り扱いが日米で異なる可能性を示唆している。
表6 重回帰モデルの推定結果(Ordered probit) | ||||
説明変数 | 予測符号 | 被説明変数:社債格付(RATE) | ||
UCON | [-/+] | -0.700 | ||
(0.023)** | ||||
△UCON | [-/+] | -0.504 | ||
(0.032)** | ||||
CCON | [-/+] | -0.261 | ||
(0.346) | ||||
MARGIN | [-] | -2.955 | -3.647 | -3.453 |
(0.052)* | (0.016)** | (0.023)** | ||
DEBT | [+] | 0.832 | 0.842 | 0.841 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
INCR | [-] | -0.006 | -0.004 | -0.004 |
(0.185) | (0.383) | (0.294) | ||
CURRENT | [+] | 0.367 | 0.424 | 0.409 |
(0.005)*** | (0.001)*** | (0.002)*** | ||
DEFAULT | [+] | 0.406 | 0.486 | 0.436 |
(0.144) | (0.080)* | (0.116) | ||
MtoB | [-] | 0.261 | 0.006 | 0.023 |
(0.446) | (0.985) | (0.944) | ||
LNASSET | [-] | -0.861 | -0.870 | -0.869 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
BSIZE | [-] | -0.205 | -0.257 | -0.250 |
(0.082)* | (0.027)** | (0.032)** | ||
LNMATUR | [+] | -0.643 | -0.655 | -0.657 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
SECURED | [-] | -3.459 | -3.355 | -3.422 |
(0.000)*** | (0.000)*** | (0.000)*** | ||
BCFIRM | [-] | -0.916 | -0.889 | -0.908 |
(0.025)** | (0.031)** | (0.027)** | ||
RISKP | [+] | -0.125 | -0.158 | -0.116 |
(0.220) | (0.131) | (0.259) | ||
N | 580 | 580 | 580 | |
Pseudo R2 | 0.443 | 0.443 | 0.441 | |
(注)各変数の定義は付録を参照。括弧内は p 値を示している。 *** 1%水準で有意,** 5%水準で有意,*10%水準で有意。 |
5.5 1st issue sampleを用いた分析
同一企業が同一会計期間において複数の社債を発行している場合があり,1つの財務諸表に対して複数の社債がサンプルに含まれることで分析結果に影響することが考えられる。そこで,1st issue sample 202銘柄を分析対象とした回帰式⑴から⑷の推定を行った。表7は,それぞれの推定結果のうち,保守主義尺度の係数のみを示している。
はじめに,SPREADに対して,UCONの係数が有意な負の値であることは full sampleの場合と同じであるが,△UCONの係数は有意ではなく,CCONは有意な正の値であり,full sampleの場合と異なっている。これらの結果は,相対的にxxxxx・xxxが高い財務諸表公表後2回目以降の社債銘柄において,適時的に経済的損失を会計利益に織り込む条件付保守主義よりも,業績の下振れを抑制する予防的な無条件保守主義を高めることが重視されていることを示唆するものである。
次に,LNMATURについて,保守主義尺度の係数はいずれも有意ではなく,償還期間に対して影響を与えているとは言えない結果となった。この結果は, full sampleの推定結果とほぼ整合的である。
続いて,SECUREDに対しては,△UCONの係数のみが有意な正の値であった。これは,直近会計期間での無条件保守主義の変動が高い企業が発行した銘柄で担保が設定されていることを示しており,full sampleの場合と整合的である。
最後に,RATEについて,△UCONの係数のみが有意な負の値であり, CCONの係数が有意ではないこととあわせて,full sampleの推定結果と一致している。UCONの係数が有意ではなく,full sampleの場合と異なっている。この結果は,相対的にxxxxx・xxxが高い財務諸表公表後2回目以降の社債銘柄に対する格付において,業績の下振れを抑制する予防的な無条件保守主義が高水準であることが重視されていることを示唆するものである。
表7 重回帰モデルの推定結果(抜粋) | ||||
説明変数 | 被説明変数 | |||
SPREAD (OLS) | LNMATUR (OLS) | SECURED (Probit) | RATE (Ordered probit) | |
UCON | -0.222 | -0.065 | 0.199 | 0.058 |
(0.045)** | (0.675) | (0.745) | (0.905) | |
△UCON | -0.095 | 0.074 | 1.785 | -0.750 |
(0.239) | (0.514) | (0.001)*** | (0.043)** | |
CCON | 0.244 | 0.016 | -0.068 | -0.580 |
(0.012)** | (0.913) | (0.886) | (0.169) | |
N | 202 | 202 | 202 | 202 |
(注)各変数の定義は付録を参照。括弧内は p 値を示している。 *** 1%水準で有意,** 5%水準で有意,*10%水準で有意。 |
6.まとめと今後の課題
本稿では,債務契約における保守的な会計報告の影響を明らかにするために,
2つのタイプの会計上の保守主義と社債契約における諸条件および格付との関係を検証した。
Watts(2003a)は,会計上の保守主義が契約の効率性を高める効果を理論的に整理し,保守的な会計報告を行う経済的意義を明らかにしている。さらに, Xxxx and Xxxxxxxxxx(2005)は,保守主義のタイプ別に,債務契約における機能を指摘している。後続の実証研究では,より高い条件付保守主義が銀行ローン契約では契約の効率性の向上に寄与していることを示す証拠が得られている一方で,社債契約では契約の効率性を低減させている可能性があることが提示されている。これは,銀行と比べ,モニタリング・コストが高いことや再交渉の困難性といった社債権者の特徴が,保守主義の機能とその有効性に影響していることを示唆している。
本稿は,これらの先行研究に基づいて,社債契約における2つのタイプの保守主義の影響を検証した。具体的には,Xxxxxx and Xxxx(2000)のモデルに基づく無条件保守主義の水準尺度と変動尺度,およびKhan and Watts(2009)のモデルに基づく条件付保守主義尺度のそれぞれを基準化した尺度を用いて,利回りスプレッド,償還期間,担保の設定,および社債格付を被説明変数とした統計的分析を行った。
分析の結果は,次の3点である。⑴無条件保守主義について,直近決算日におけるその水準が高い企業,あるいは直近会計期間におけるその変動が高い企業が発行した社債では,利回りスプレッドは低く設定され,上位の社債格付となっていることが示された。⑵条件付保守主義は,利回りスプレッドや社債格付に影響を与えているとはいえない結果であった。これは,銀行ローン契約における効果を検証した先行研究とは異なる結果である。⑶社債契約の非価格条件として取り上げた変数について,会計上の保守主義は,償還期間には影響していない可能性が高いのに対し,無条件保守主義の変動尺度が担保の設定と有意な関係にあった。
以上の結果から,会計上の保守主義が社債契約の効率性の向上に寄与していることが確認された。ただし,銀行ローン契約を分析している先行研究の結果と照らしあわせると,2つのタイプの機能や有効性について,債権者の特徴が関係していることが示唆された。また,債務弁済にあたって,会計上の予防的な保守主義を高めている企業では,あわせて担保の設定が行われていることが示された。
今後の研究課題として,次の点があげられる。はじめに,他の債務契約を対象とした検証があげられる。本稿では,債権者の特徴が保守主義の機能や有効性に影響している可能性が示唆されたが,私的負債契約には社債の私募発行,公的負債契約にはシンジケート・ローン契約やコマーシャル・ペーパー契約が含まれる。これらの契約においても,先行研究や本稿で得られた結果があてはまるか否かは検証されるべきであろう。また,債務契約の内容分析があげられる。先行研究では,日本企業による借入金契約や社債契約における財務制限条
項の設定状況が報告されている(xx,2008;xx,2008;xx,2012)。しかしながら,債権者との間で,財務制限条項を含めて,どのように債務契約が設計されるかは不明確な点が多い。債務契約の内容(財務制限条項の種類や厳格性など)もまた,会計上の保守主義の機能や有効性に影響していると考えられるため,債権者の特徴に加えて,検証される必要がある。これらのことは,保守主義と他の会計行動(利益平準化やビッグ・バス会計)との関係の概念的整理(xxx,2013,pp. 368-369)や保守主義尺度の頑健性の検証と合わせて,今後の研究課題である。
付録 変数の定義
SPREAD 利回りスプレッド(=社債利回り-同年同月発行の国債利回り) LNMATUR 償還期間(=償還期間(月数)の自然対数)
SECURED 担保ダミー(=一般担保付社債であれば1,それ以外は0を取るダミー変数)
RATE 社債格付(=AAAからBBB-までの格付に対して1から10までの数値を割り当てた変数)
CON 保守主義尺度(=UCON,△UCON,あるいはCCON) UCON 無条件保守主義水準尺度(=BRを基準化した値)
△UCON 無条件保守主義変動尺度(=△BR を基準化した値) BTM 純資産簿価時価比率(=純資産合計 / 株式時価総額)
R 株式リターン(=(当期末終値-前期末終値)/ 前期末終値)
XX Xxxxxx and Xxxx(2000)のモデルに基づいて測定した無条件保守主義の程度(=企業効果αi×(-1))
△BR Beaver and Xxxx(2000)のモデルに基づいて測定した無条件保守主義の程度の変動(=当期末BR-前期末BR)
CCON 条件付保守主義尺度(=C_Scoreを基準化した値) E 当期純利益
MV 株式時価総額(=期末終値×期末発行済株式総数)
DR xxxx・xxxx・xxx(=R がマイナスであれば1,それ以外は0を取るダミー変数)
SIZE 企業規模(=株式時価総額の自然対数)
M/B 純資産時価簿価比率(=株式時価総額 / 純資産合計) LEV レバレッジ(=負債合計 / 株式時価総額)
C_Score Xxxx and Watts(2009)のモデルに基づいて測定した条件付保守主義の程度
MARGIN 売上営業利益率(=営業利益 / 売上高) DEBT 負債比率(=負債合計 / 資産合計)
INCR インタレスト・カバレッジ・レシオ(=事業利益 / 支払利息)
事業利益=営業利益+受取利息・有価証券利息+受取配当金±持分法による投資損益
CURRENT 流動比率(=流動資産 / 流動負債)
DEFAULT デフォルト・リスク・ダミー(=SAF値が0.70未満であれば1,それ以外は0を取るダミー変数)
SAF値=0.70773+0.01036×総資本留保利益率+0.02682×総資本税引前当期純利益率+(-0.06610×棚卸資産回転期間)+(- 0.02368×売上高金利負担率)(xx,2003)
MtoB 時価簿価比率(=(負債合計+株式時価総額)/ 資産合計) LNASSET 資産規模(=資産合計の自然対数)
× + ×
AMATUR 資産期間(= CA CA PPE PPE )
CA+PPE COGS CA+PPE DEP
CA=流動資産,PPE=償却対象有形固定資産,COGS=売上原価, DEP=減価償却実施額(Barclay et al., 2003)
BSIZE 社債金額(=社債額面額の自然対数)
DMATUR 償還期間差異(=社債と対応国債の償還期間(月数)の差異の自然対数)
BCFIRM 社債管理会社ダミー(=社債管理会社を設置している社債であれば
1,それ以外は0を取るダミー変数)
RISKP リスク・プレミアム(=格付がA格の社債の利回りの平均値)
引 用 文 x
[1] Xxxxx, A. S., B. K. Xxxxxxxx, X. X. Xxxxxx and M. Xxxxxxxx-Xxxxxx(2002) The Role of Accounting Conservatism in Mitigating Bondholder-Shareholder Conflicts over Dividend Policy and in Reducing Debt Costs, The Accounting Review 77⑷, 867-890.
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[44] xxxx・xxxx・xxxx(2004)「ディスクロージャーが負債コストに及ぼす影響」xxxx編著『ディスクロージャーの戦略と効果』xx書店,45- 68.
[45] xxxx(2012)「会計利益属性が社債スプレッドに与える影響」『経営財務研究』32(1/2),55-76.
[46] xxxx(2004)「会計における保守主義の役割と定量化」『神戸大学六甲台論集』51⑵,57-77.
[47] xxxx(2008)「保守主義の指標相互における関連性分析」『現代ディスクロージャー研究』8,65-74.
[48] xxxx(2009a)「保守主義の定量化とその機能⑴」『企業会計』61⑴,124- 125.
[49] xxxx(2009b)「保守主義の定量化とその機能⑵」『企業会計』61⑵,124- 125.
[50] xxx・xxxx・xxxx(2014)「会計上の保守主義が企業の投資水準・リスクテイク・株主価値に及ぼす影響」日本銀行金融研究所ディスカッション・ペーパー No. 2014-J-4.日本銀行金融研究所.
[51] xxxx(2008)「保守主義の債務契約における役割」xxxx・xxx『財務情報の利用可能性と簿記・会計の理論』xx書店,63-79.
[52] x x x x(2014)「 保 x x 義 に 関 す る 実 証 研 究 の 動 向:Conditional ConservatismとUnconditional Conservatismの役割」一橋大学大学院商学研究科 Working Paper Series, No. 183.
[53] xxxx(2008)「保守主義の実証研究-経済的合理性を中心に」『企業会計』 60⑺,48-54.
(付記)
本稿は,東北大学会計大学院会計研究会(2014年1月30日,東北大学)およびxxセミナー(2014年6月28日,神戸大学経済経営研究所)で報告した一部を加筆・修正したものである。研究報告に際して,多くの先生方から多数の有益なコメントをいただいた。また,本稿執筆に際して,査読をご担当いただいた2名の匿名の先生方から丁寧かつ建設的なコメントをいただいた。紙幅の関係上,先生方のお名前を挙げることはできないが,ここに記して深く感謝申し上げます。なお,本稿は,JSPS科研費(若手研究B,課題番号24730408)の助成を受けた研究成果の一部である。