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【著作xx】
メタバースにおける 著名人のアバター化と契約実務
大xx法律事務所
弁護士/ニューヨーク州弁護士
xxx x
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第1 はじめに(本稿の目的)
1 近時のメタバースビジネスのxx
メタバースという言葉自体は従来から存在するものではありますが、2021年にフェイスブックが総額100億ドルをメタバースに投資すると発表して社名も「Meta」に変更したことで、メタバースに対する世界的な注目が一気に高まり、メタバースに関連するビジネスが盛り上がりを見せています。また、ブロックチェーン技術に基づく非中央集権的な分散アプリケーション環境を実現する Web3.0との関係においても、そのような環境を実現する空間としてメタバースの利用可能性が論じられることがあります。
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このような流れを受け、日本でもビジネスにメタバースを取り入れる企業が増えています。例えば、日産自動車株式会社は2022年5月にメタバース上で新車のお披露目イベントを開催して話題となりましたし、同年12月には株式会社HIKKYが世界最大級のメタバース上の展示卸売会である「バーチャルマーケット2020 Winter」を主催し、世界中から100万人以上が来場したことで注目を浴びました。
メタバースに関する法的議論を行うにあたっては、そもそも「メタバース」とは何かという点が問題となりますが、現時点で一般的に通用している定義はありません。例えば、「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」による「中間とりまとめ
(案)」によると「、メタバース」は下図のとおり整理されています注)1。
2 メタバースとは
注)1 Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会「中間とりまとめ(案)(これまでの議論の整理)」4頁(2023年1月27日)
メタバースの定義
仮想空間が、次の①~④を備えているものを「メタバース」とする。
① 利用目的に応じた臨場感・再現性があること(デジタルツインと同様に現実世界を再現する場合もあれば、簡略化された現実世界のモデルを構築する場合、物理法則も含め異なる世界を構築する場合もある)
② 自己投射性・没入感があること
③(多くの場合リアルタイムに)インタラクティブであること
④ 誰でもが仮想世界に参加できること(オープン性)
なお、次の⑤~⑦のいずれか又は全てを備えている場合もある。
⑤ 仮想世界を相互に接続しユーザが行き来したり、アバターやアイテム等を複数の仮想世界で共用したりできること(相互運用性)
⑥ 一時的なイベント等ではなく永続的な仮想世界であること
⑦ 仮想世界でも現実世界と同等の活動(例:経済活動)が行えること
上記のとおりメタバースビジネスは急速に発展しつつあるといえますが、新しい技術であるがゆえに必ずしもどのような法律問題が存在するかについては十分な検討がなされていない状況にあるといえます。
本ニュースレターの発行元は弁護士法人大xx法律事務所です。弁護士法人大xx法律事務所は、1981年に設立された日本の総合法律事務所です。東京、大阪、名古屋、海外は上海にオフィスを構えており、主に企業法務を中心とした法的サービスを提供しております。本ニュースレターの内容は、一般的な情報提供に止まるものであり、個別具体的なケースに関する法的アドバイスを想定したものではありません。本ニュースレターの内容につきましては、一切の責任を負わないものとさせて頂きます。法律・裁判例に関する情報及びその対応等については本ニュースレターのみに依拠されるべきでなく、必要に応じて別途弁護士のアドバイスをお受け頂ければと存じます。
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しかし、上記の整理が後述するビジネスモデルにおいて必要となり得る契約との関係で、メタバースを過不足なく説明できているかは疑問であり、個別の契約ごとに慎重に定義づけを行う必要があります。
メタバースに限らず、新たな分野・技術における法的問題を検討するにあたっては、新たな概念の意義について必ずしも共通の認識が定着していないことを認識し、各場面に応じて合目的的に定義づけを行うことが重要となります。
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概観
1
本稿は後述のとおり、一定のビジネスモデルにおける契約実務に関する留意点を述べることを目的とするため、当該契約内で用いる用語を定義する際の注意点について述べるにとどめ、「メタバース」の一般的な定義については深入りをしないこととします。
そこで、本稿においては、現実に存在する著名人をアバター化
(インターネット上での分身としてキャラクター化)し、メタバースにおいて当該アバターを通じてエンターテインメントを提供するというビジネス(以下「本件ビジネス」といいます。)を想定し、そのようなビジネスにおいて必要となり得る契約と、当該契約を締結する際のメタバースビジネスにおける特殊な留意点を、とくに知的財産権(パブリシティxxを含む。)の観点からご説明することを目的とします。
第2 必要となり得る契約と留意点
本稿の目的
3
メタバースに関連するビジネスに参入する方法としては様々なものが考えられますが、メタバースが仮想現実(VR)や拡張現実
ダンス
楽曲
著名人
(の顧客誘引力)
既存のコンテンツ
①既存のコンテンツとの関係で必要となる契約
(AR)を構築する側面を有することに着目すれば、そのような新たな空間において既存のエンターテインメントの新しい楽しみ方を提供するというビジネスも代表的なメタバースビジネスとして考えられるところです。
本件ビジネスにおける契約当事者を概観すると以下の図のようになります。なお、下図に記載した契約当事者は本件ビジネスにおける利害関係人の一例であって、ビジネスの内容や権利の帰属先に応じてこれ以外の利害関係人との契約締結を検討する必要や、一主体が複数の権利の帰属主体である場合などがありますのでご留意ください。
振付師or所属事務所
※ただし著作者人格権は譲渡不可
レコード会社
演奏者・歌唱者orレコード会社
※ただし実演家人格権は譲渡不可
作曲家・作詞家or音楽出版社or
著作xx集中管理団体
※ただし著作者人格権は譲渡不可
著名人or所属事務所
帰属先
(譲渡先を含む)
●ダンスの著作権
●著作者人格権
●レコード製作者の権利
●楽曲の演奏、歌唱に係る実演家権
●実演家人格権
●楽曲・歌詞の著作権
●著作者人格権
●肖像権
●パブリシティx
xx得る権利
利用の許諾
本件ビジネスの主体
制作委託
出展
②新たなコンテンツとの関係で必要となる契約 | ||
新たなコンテンツ | アバターの3Dモデル | アバターの動き等のデータ |
生じ得る権利 | ●3DCGの著作権 ●著作者人格権 | ●操作者の実演家権? ●実演家人格権? |
帰属先 | 3DCGの制作者or 制作会社 ※ただし著作者人格権は制作者に帰属 | アバターの操作者? |
③メタバース上にコンテンツを出展するために必要となる契約 | |
必要となり得る契約 | メタバースを提供する プラットフォーマーとの出展契約(利用規約) |
本ニュースレターの発行元は弁護士法人大xx法律事務所です。弁護士法人大xx法律事務所は、1981年に設立された日本の総合法律事務所です。東京、大阪、名古屋、海外は上海にオフィスを構えており、主に企業法務を中心とした法的サービスを提供しております。本ニュースレターの内容は、一般的な情報提供に止まるものであり、個別具体的なケースに関する法的アドバイスを想定したものではありません。本ニュースレターの内容につきましては、一切の責任を負わないものとさせて頂きます。法律・裁判例に関する情報及びその対応等については本ニュースレターのみに依拠されるべきでなく、必要に応じて別途弁護士のアドバイスをお受け頂ければと存じます。
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2 既存のコンテンツとの関係で必要となる契約
(1)契約主体及び概要
⒤著名人をアバター化するために必要な契約
現実に存在する著名人をアバター化するにあたっては、当該著名人の氏名・肖像を用いてその著名人の有する顧客誘引力を利用することになり得ますので、当該著名人の肖像権・パブリシティ権の侵害を回避するために、これらの権利の利用許諾を取得することを検討する必要があります。
裁判例上認められた権利として、個人は人格権に基づき氏名、肖像等をみだりに利用されない肖像権を有しており、その一内容として当該個人の肖像等が顧客誘引力を有する場合には当該顧客誘引力を排他的に利用するパブリシティ権を有します。最判平成24年2月2日民集66巻2号89頁は、専ら肖像等の有する顧客誘引力の利用を目的とする場合、例えば①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合、③肖像等を商品等の広告として使用する場合には、当該肖像等の無断使用はパブリシティ権を侵害すると判断しており、著名人の容姿をリアルに再現してアバター化し、ビジネスにおいて使用する場合には上記の①乃至③のいずれかに該当する可能性があります。
したがって、著名人のアバター化にはその肖像等及びパブリシティ権を利用するためのライセンス契約を締結するこ
とを検討する必要があります。ここで、著名人が芸能事務所等に所属している場合には、パブリシティ権を当該事務所が管理している場合があり得ますので、契約締結の当事者を決定するにあたっては著名人のパブリシティ権の管理主体を確認する必要がある点には注意が必要です。
ⅱ既存の楽曲を利用するために必要な契約
アバターに既存の楽曲を歌わせるというようなエンターテインメントを提供する場合には、既存の楽曲に関する権利のクリアランスが必要となります。
まず、既存の楽曲・歌詞を利用する場合には、楽曲及び歌詞がそれぞれ著作物に該当し得ますので、作曲家及び作詞家からの許諾の取得を検討する必要があります。ここで音楽ビジネスにおいては、作曲家及び作詞家が自ら楽曲・作詞についての著作権管理を行わずに、音楽出版社や JASRAC等の著作xx集中管理団体に著作権を信託等している場合があります。このような場合には、利用しようとする範囲の著作権を管理している主体から許諾を得る必要がありますので、著作権の管理主体については事前に確認する必要があります。なお、作曲家及び作詞家は、その著作物及びその題号をその意に反して改変されない権利(同一性保持権)を含む著作者人格権(著作xx18乃至20条)を有しており、同権利は一身専属的なもので譲渡することはできませんので、著作権管理主体から許諾を得たとしても、著作物の利用に当たっては当該著作者人格権を侵害しないように気を付ける必要があります。あらかじめ紛争の可能性を低減するという観点からは、作曲家及び作詞家から著作者人格権を行使しない旨の合意を取り付けることが望ましいといえます。
また、楽曲を演奏又は歌唱する実演家(アバター化しようとする著名人がこれに当たる場合もあります。)には、著作権法上、著作隣接権としての実演家権が認められています
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(著作xx89条1項)。実演家権には実演を送信可能化する権利が含まれています(同法92条の2)ので、例えばメタバース上でのパフォーマンスに際してインターネット上に楽曲のアップロードを必要とする場合には実演家権の利用についての許諾も必要となります。ただし、実演家の著作隣接権は契約によってレコード会社に譲渡されていることも多いため、実演家権の帰属主体の確認が必要となります。また、実演家は自己の名誉又は声望を害するような実演の改変を受けない権利(同一性保持権)を含む実演家人格権を一身専属的な権利として有していますので、上述の作曲家及び作詞家の著作者人格権に関して述べたものに類似する注意が必要です。
さらに、既存のCD音源をそのまま利用する場合、当該 CDに最初に音を固定したレコード会社には著作隣接権としてのレコード製作者の権利が認められている(著作xx 89条2項)ことに留意が必要となります。レコード製作者の権利には実演家と同様、レコードの送信可能化権が含まれますので、遂行しようとするビジネスとの関係でレコード会社の許諾も必要かどうかを検討する必要があります。
ⅲ既存のダンス(振付)を利用するために必要な契約
アバター化する著名人がアイドルやダンスユニットである場合、アバターにおいてダンスパフォーマンスを行うことも考えられます。既存のダンスを利用する場合に、当該ダンスがありふれた振付けの組み合わせにとどまらず、作者(振付師)の個性が表現として表れているものである場合には、著作物として著作xxにより保護される可能性があります。したがって、この場合は、ダンスの著作権者である振付師又はダンスの著作権の管理主体からの許諾の取得を検討する必要があります。なお、ダンスに著作権が認められる場合、著作権者である振付師には著作者人格権も認められます。
ⅳその他のコンテンツの利用の可能性
上記(1)乃至(3)において述べたほか、本件ビジネスにおいては、現実の建築物、衣服を含むアイテム、ライブイベントで使用した舞台設備や影像等をメタバース上で実現することが考えられます。このような場合においても、これらの既存のコンテンツについての著作xxの権利が他者に帰属するときは、当該権利者からの許諾の取得を検討する必要があります。しかし、そもそも既存のコンテンツが著作xx等の法律による保護の対象になるか、著作xx等による権利制限規定の適用があるかといった点は、メタバース上でのコンテンツ利用を法律が想定していない場合があること等により判断が難しいこともあり得ますので、既存のコンテンツとの関係でいかなる当事者と契約を締結すべきかについては弁護士等の専門家に意見を求めることが望ましい場合もあります。
(2)契約締結上の留意点
(ⅰ)定義条項の規定と慎重な定義づけの必要性
メタバースビジネスに限ったことではありませんが、新しい技術を利用した契約を締結する際には、新たな概念について必ずしも当事者間で認識を共有できているとは限りません。したがって、定義条項を規定し、各用語を契約目的との関係で必要十分に定義づけすることが望ましいといえます。例えば、上述のとおり「メタバース」は一般的に通用してい る定義がなく、非常に多義的に用いられている用語ですので、本件ビジネスを展開する仮想空間又は同空間で開催されるイベントを開催主体、期間、内容等の側面から詳細に定義づけすることが考えられます。また、「アバター」も著作権法上の保護対象という単位でみますと、外観を表現する
「3Dモデル」とそれ以外の声や動きを表現する「音声データ」や「モーションデータ」に分けて定義づけを行うことが有用である場合があります。
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既存のコンテンツの権利者から許諾を受ける場合の、メタバースビジネスにおいて特殊な留意点としては、メタバースには国境の垣根がなくインターネットを通じて世界中の人々が同時接続することができることから、既存コンテンツを
「全世界において」利用することの許諾を得ることが望ましいといえます。
ⅲ既存コンテンツを利用した成果物の帰属
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本件ビジネスを行う主体としては、例えば、著名人の許諾を得て作成した当該著名人を模したアバターの3Dモデルに係る権利を十全に取得しなければ意図しているビジネスを展開できない場合があります。既存コンテンツを利用することの許諾に加えて、利用した結果としての成果物の権利の帰属は当事者にとって重要な事項になりますので、明確に規定する必要があります。
3 新たなコンテンツとの関係で必要となる契約
(1)契約主体及び概要
本件ビジネスにおいて新たに制作するコンテンツとの関係で必要となる契約もあります。本件ビジネスにおいて新たに必要となるコンテンツとしては、メタバース上のキャラクターとしてのアバター、メタバース上でライブイベントを行う場合のライブステージや演出、新たな楽曲や音声を利用する場合には当該楽曲や音声が考えられます。以下では本件ビジネスを行う主体が、自らコンテンツを制作する能力を有していないことを前提に、メタバース上におけるアバターを制作するにあたって、いかなる相手方との間で契約が必要かを考察します。
注)2 Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会「中間とりまとめ(案)(これまでの議論の整理)」8頁(2023年1月27日)
注)3 知財高判平成26年8月28日判時2238号91頁
アバターとは、「『化身』を意味し、メタバースにおいて、ユーザのアイデンティティを表象するもの」をいい注)2、その外観や操作方法等の組み合わせにより様々なバリエーションが考えられま
す。もっとも、その構成要素を大きく分類すると、外観を表現する 3Dモデルと、動きや声を表現する外観以外の要素に分けることができます。
まず3Dモデルは、創作性を有する場合が多いと解され、その場合は当該3Dモデルを創作した者に当該3Dモデルについての著作権及び著作者人格権が生じます。ただし、著作権については、当該創作者が法人その他使用者(以下「法人等」といいます。)の発意に基づき、当該3Dモデルをその法人等の業務に従事する者として職務上作成し、その法人等がこれを自己の著作の名義の下に公表する場合には、当該法人等が著作権者となります(著作xx15条1項)。したがって、アバターを利用するためには、3Dモデルの制作を委託するとともに、3Dモデルの創作者又はその法人等から同モデルに係る著作権の譲渡又は利用の許諾を受け、かつ、創作者から著作者人格権を行使しない旨の合意を取り付ける必要があります。
次に、xxxxの声や動きについては、そのもととなる演者
(いわゆる「中の人」)の声や動きが著作権法上の「実演」に当たる場合には、当該声や動きを利用することについて当該演者の実演家権の利用について許諾を取得する必要があるかが問題となります。まず、そもそも演者の声や動きが著作権上の「実演」に該当するかを検討する必要がありますが、「実演」とは「著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、xxx、又はその他の方法により演ずること」又は「これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するもの」をいいます(著作xx2条1項3号)。したがって、演者の行為が「実演」に該当するかは上記定義を踏まえて個別具体的に判断せざるを得ませんが、裁判例注)3によると「実演家に著作隣接権が認められる根拠は、著作物の創作活動に準じたある種の創作的な活動が行われる点に求められる」とされていますので、演者の行為に創
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演者の行為が著作権法上の「実演」に該当する場合には、当該演者には当該実演に係る録音・録画権(著作xx91条)及び送信可能化権(同法92条の2)を含む実演家権及び実演家人格権が認められますが、本件ビジネスを行う主体は当該演者から許諾を取得する必要があるかが問題となります。アバターをメタバース上に反映させる方法としては、モーションキャプチャ等の技術を利用して声や動きをデータ化し、当該データと 3DCGとを同期させたアバターデータをメタバース上にアップロードする場合が多いと思われます。ここで、動きをデータ化するに当たって演者自身の動きの録画を伴わない場合(例えば、演者に取り付けたマーカーの位置のみをトラッキングしてデータ化する場合)に、当該データ化が「実演」の「録画」に当たるか、及び、演者の動きを反映させたアバターデータのアップロードは
「実演」の「送信可能化」に当たるかという点が問題となり得ます。この点は議論のあるところですが、上記裁判例の示すように実演家権の趣旨が著作物の創作活動に準じた活動の保護にあることからすれば、利用行為において演者による実演の創作性(個性)を感得できるか否かが重要な基準となり得ると考えます注)4。もっとも、実務的には声や動きのデータ化及びアバターデータのアップロードのいずれにも実演家権が及び得ることを念頭に、演者から許諾を取得することが望ましいと解されます。
(2)契約締結上の留意点
ⅰ制作委託物の仕様や制作方法に関する条項
上記のとおり「アバター」といっても様々な要素の組み合わせから成るデータ群であり、比較的新しい概念であるがゆえに委託者と受託者との間で必ずしも完成品のイメージ
が共有できているとは限らない点に注意が必要です。また、本件ビジネスを行う主体自身がメタバースのプラットフォーマーではない場合、当該メタバースにアップロード可能なコンテンツの仕様をプラットフォーマーが利用規約において詳細に規定している場合があり、当該仕様を満たさないとコンテンツを出展できない可能性があります。
したがって、委託者としては出展先のプラットフォーマーの利用規約等を確認して可能な限り詳細にアバター等のコンテンツの仕様を規定することが望ましいです。必要な仕様を事前に把握できない場合や時間的制約がある場合のようにあらかじめ詳細な仕様決定ができない場合には、製作工程を細かく区切り、各段階ごとに協議を行う等により適時の軌道修正が可能な制作方法を規定することも考えられます。
ⅱ第三者の権利非侵害の表明・保証
新たな技術を利用した分野においては、ソフトローも含めた法的規制が整わないうちに実務が先行する傾向にあるため、一種のモラルハザードが生じている可能性があります。例えば、納入されたアバターデータが第三者の著作権を侵害するものである場合、委託者が当該データをメタバース上にアップロードする行為は当該第三者の著作権侵害を構成する可能性を否定できません。そこで、委託者としては、納入されるデータが第三者の著作権その他の権利を侵害するものでないことを受託者に表明・保証させ、これが事実に反する場合の補償責任を規定することが有用です。
注)4 xxxx「メタバースを中心とするバーチャルリアリティにおける著作xxの『実演』に関する一考察-『その実演』の意義を中心に」情報通信政策研究6巻2号(2023)
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4 メタバース上にコンテンツを出展するために
必要となる契約
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(1)契約主体及び概要
本件ビジネスを行う主体が、アバターを活動させるためのメタバースをプラットフォームとして自ら有していない場合には、そのようなプラットフォームを提供する者との間でコンテンツを出展するための契約を締結する必要があります。これはプラットフォーマー側の利用規約に同意するという形でなされることもあります。
(2)契約締結上の留意点
ⅰアップロードしたデータに係る権利の帰属
一般的にビジネスを展開する「場」としてのメタバースを提供するプラットフォーマー側の交渉力が大きくなる傾向にあるため、利用規約においてアップロードされたデータに係る権利がプラットフォーマーに帰属する条項や、当該データの利用をプラットフォーマーに無償で永久に許諾する旨の条項が規定されている場合がありますので、本件ビジネスを行う主体としては留意が必要となります。プラットフォーマーの利用規約を慎重に確認し、修正等を要する部分については個別契約において対応する等の工夫が必要となります。
ⅱメタバース内の画像・影像の配信等
本件ビジネスを行う主体としては、メタバースにおいてエンターテインメントを提供することに加えて、事後的に当該メタバース内での画像や影像を販売又は広告宣伝用に利用することも含めたビジネス展開を意図している場合があります。しかし、メタバース内の画像・影像の配信については、メタバースそのものについてのプラットフォーマーの権利のみならず、他の出展者が出展した創
作物が写り込む可能性から当該第三者の創作物に係る権利との関係でも権利処理が必要となり得ます。著作xx30条の2は、「写真の撮影、録音、録画、放送その他これらと同様に事物の影像又は音を複製し、又は複製を伴うことなく伝達する行為」に際して、主たる被写体に付随して写り込む事物・音に係る著作物については軽微な構成部分にとどまるものであれば、正当な範囲内で利用できることを規定していますので、当該権利制限規定が適用される場合も考えられますが、必ずしも写り込みが軽微な構成部分にとどまらない可能性も考慮すると、全てを同規定により処理することは困難といえます。
そこで、プラットフォーマーとの契約又は利用規約において、メタバース内の画像・影像の利用についてどのような取り決めがなされているか、及びこれらの取り決めについて他の出展者が同意していることが出展の条件となっているかについては確認する必要があります。
第3 最後に
本稿では、現実に存在する著名人をアバター化し、メタバースにおいて当該アバターを通じてエンターテインメントを提供するというビジネスを想定して、そのようなビジネスにおいて必要となり得る契約実務について留意すべき点の一端をご説明しました。同様の形態のビジネスであっても、架空の2D又は3Dのキャラクターを実在の人間が操作するバーチャル YouTuber(Vtuber)や、漫画やアニメのキャラクターをメタバースにおいてアバター化する場合には、利害関係人や契約上の留意点は当然異なるものとなり得ます。
また、上記は日本法を前提にご説明をしましたが、メタバースには多様な国・地域から企業や個人が参加することから、個々の法的問題によっては外国の法令が適用される可能性
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があることも考慮する必要があります。
メタバースやこれに関連するビジネスの発展には目覚ましいものがある反面、この分野におけるソフトローを含めた法的整備や法的問題点に関する議論は必ずしも十分にはなされていないのが現状です。このような新しい分野において起こり得ることを全て想定することは難しいかもしれませんが、メタバースビジネスに参入される方々において法的検討を行うに当たって本稿がその一助となれば幸いです。
以上
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