Contract
蟹事件
レッド社の主張の要旨
1. レッド社とブルー社の間で、ネゴ蟹 1 万杯の売買契約が成立していた。
2. ブルー社は、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。
3. 仮に、ブルー社が売買契約を取り消すことができるとしても、ブルー社は、レッド社に対し、ネゴ蟹
1 杯あたり 200 米ドルを原状回復として支払わなければならない。
4. レッド社がブルー社に販売したネゴ蟹は、市場価格にかかわらず 1 杯 200 米ドルであった。したがって、ブルー社は、レッド社に対し合計 200 万米ドルを支払う義務を負う。
5. ブルー社がグリーン社との本件蟹売買契約締結時に本件蟹を所有していたため、当該契約に基づく本件蟹の引渡しに係る債務は、ブルー社が負う。
6. レッド社は、ブルー社とグリーン社の間の契約(以下、「グリーン契約」という。)の当事者ではなかったため、当該契約に基づく債務を負わない。
7. ブルー社は、グリーン契約の締結時、レッド社の代理人ではなかった。
1. レッド社とブルー社の間で、ネゴ蟹 1 万杯の売買契約が成立していた。レッド社は、以下の通り主張する。
1.1. 2019 年 3 月 4 日午前 1 時、ブルー社は、AI を活用した「スマート・ブルー」システムを介してネゴ蟹1万杯を有効に注文した。レッド社は、自動処理によりその注文を受領した。
1.2. レッド社とブルー社は、ネゴ蟹 1 万杯の売買契約を有効に締結した。
1.3. 予備的主張として、レッド社は、ブルー社に対し自社の倉庫から本件蟹を発送した時点で、ブルー社からの申込みを、行為により承諾した。
1.1. 2019 年 3 月 4 日午前 1 時、ブルー社は、AI を活用した「スマート・ブルー」システムを介してネゴ蟹1万杯を有効に注文した。レッド社は、自動処理によりその注文を受領した。
1. 2019 年 3 月 4 日、スマート・ブルーは、勘定系のシステムにおいてネゴ蟹 1 万杯を発注した (14 段
落)。
2. スマート・ブルーは、情報系システム内のデータに基づき発注を行った。当該発注に先立ち、2019年 3 月 3 日、xxxxが情報システム内のデータを書き換えた(14 段落)。
3. 勘定系システムには、ネゴ蟹の販売価格は1杯当たり 200 米ドルと表示されていた。ハッカーは情報系システム内の価格は書き換えたが、勘定系システムの価格を書き換えることはなかった。
1.2. レッド社とブルー社は、ネゴ蟹 1 万杯の売買契約を有効に締結した。
4. 契約は、「申込みに対する承諾により、または合意を示すのに十分な当事者の行為により締結することができる」(UNIDROIT 国際商事契約原則 2016 年版(以下、「UNIDROIT」という。)第 2.1.1条)。同条は、自動化契約、すなわち、人の関与なく意思決定を行う自動化システムを用いることに当事者が合意した場合をも包含する (UNIDROIT 第 2.1.1 条注釈 3)。
1.2.1. ブルー社は、レッド社に対し申込みをした。
5. 申込みとは、「十分確定的であり、かつ承諾があれば拘束されるとの申込者の意思」を示すことである(UNIDROIT 第 2.1.2 条)。
6. 「十分確定的」とは、申込みが価格や発送時期といった重要事項を必要とすることを意味しない
(UNIDROIT 第 2.1.2 条注釈 1)。
7. スマート・ブルーにより行われる発注は、「申込み」の定義を満たす。このことは、両社間の通信手段が FAX から RB リンクに変更されたことによって裏付けられる(別添 6)。別添 6 覚書は、レッドおよびブルー社が書面により作成したものであるため、当該通信方法の変更は有効である(別添 4 第 6 条 4 項)。加えて、2019 年 1 月から 2019 年 3 月にかけて、ブルー社は、RB リンクを用いて発注を行い、レッド社は、RB リンクを用いて注文を処理した(11 段落、13 段落)。このことから、RB リンクを通じた注文は、当事者間で確立された慣行であるといえる(UNIDROIT 第 1.9
条)。
1.2.2. レッド社は、ブルー社からの申込みに対し承諾をした。
8. UNIDROIT は、承諾を、「申込みに対する同意を示す相手方の言明その他の行為」と定義する
(UNIDROIT 第 2.1.6 条 1 項)。レッド社は、ブルー社からの発注を自動的に確認し、当該取引情報は RB Dashboard に表示される(別添 6 覚書第 4 条)。この自動的な確認は、ブルー社からなされる申込みに対する同意を示し、UNIDROIT における定義に基づく承諾を構成する。
9. 承諾は、それが申込者に到達した時にその効力を生ずる(UNIDROIT 第 2.1.6 条注釈 4)。レッド社による承諾は、ブルー社に届いた時点で有効となる。受領原則により、注文受付時期は、注文者が当該受付情報を指定した電子メールアドレスで受け取ることができる時点とされる(UNIDROIT 第
1.10 条注釈 2)。ブルー社は、RB Dashboard を注文確認のための電子メールアドレスに指定した。。
10. ブルー社は、2019 年 3 月 4 日午前 1 時には、レッド社からの注文確認を RB Dashboard で受領していた(15 段落)。そして、ブルー社は、当該確認情報を即時に受け取ることができた。注文確認は、容易に受領することができたため、2019 年 3 月 4 日がアービトリア国の祝日であったことは、本件に影響しない。
11. したがって、ネゴ蟹 1 万杯の売買契約は、2019 年 3 月 4 日に有効に成立していた(UNIDROIT 第
2.1.1 条)。
1.3. 予備的主張として、レッド社は、ブルー社に対し自社の倉庫から本件蟹を発送した時点で、ブルー社からの申込みを、行為により承諾した。
12. レッド社によるブルー社からの申込みの承諾は、本件蟹がレッド社の倉庫からブルー社に向けて発
送された時点から有効であった(UNIDROIT 第 2.1.6 条 3 項)。
13. レッド社およびブルー社は、注文に対する発送の指示が当該倉庫に自動的に送信されることにより当該商品が発送される、という慣行を確立した。唯一の例外は、レッド社が注文を履行できない場合である。例えば、レッド社がブルー社からの注文を履行するだけの十分な在庫を有していないような場合である。
14. レッド社が当事者間で確立された当該慣行に従い本件蟹をブルー社に発送した行為は、それがレッド社の倉庫から発送された時点から、行為による承諾となる。
2. ブルー社は、錯誤を理由に売買契約を取り消すことはできない。レッド社は、以下の通り主張する。
2.1. ブルー社は、錯誤を理由に契約を取り消すことはできない。
2.2. ブルー社は、情報の不確実性により生じうる錯誤のリスクを引き受けた。
2.3. 予備的主張として、全事情に鑑み、ブルー社は、自らの錯誤により生じた損害につき賠償責任を負う。
2.1. ブルー社は、錯誤を理由に契約を取り消すことはできない。
15. 契約は、錯誤を理由に取り消すことができる (UNIDROIT 第 3.2.1 - 3.2.3 条)。UNIDROIT は、錯誤を、契約締結時に存在する事実または法に関する誤った想定と定義する(UNIDROIT 第 3.2.1 条)。
16. 「錯誤が、その錯誤のリスクが錯誤当事者によって引き受けられた、または、諸事情を考慮すれば、負担されるべき事柄にかかわる」場合、ブルー社は、契約を取り消すことができない
(UNIDROIT 第 3.2.2 条 2 項 b 号)。
2.2. ブルー社は、情報の不確実性により生じうる錯誤のリスクを引き受けた。
17. ブルー社は、レッド社の商品の発注を行うために、情報の不確実性により生じうる錯誤のリスクを引き受けた。
18. ブルー社は、レッド社が、RB リンクを通じてスマート・ブルーに提供する情報の真正さにつき責任を負わないということに合意している。ブルー社は、「情報の真正さについて責任を負わないという点についても承知しました」と発言している (別添 7、 2017 年 11 月 17 日のメール)。
19. レッド社も、「レッド社は、第三者から提供される情報の真正さについて責任を負わないことも確認して頂きたいと思います」と発言している(別添 7、2017 年 11 月 15 日のメール)。これは、少なくとも、レッド社は、第三者から提供される情報につき責任を負わないということを示す。
20. xxxxは、レッド社もしくはブルー社の代理人または従業員ではなかったため、「第三者」と解される。この第三者の射程は広い。例えば、「市場調査会社」(12 段落)も第三者たりうる。xxxxは外部の情報提供者であるため、ブルー社は、これに関連するリスクを負っている。
21. このことは、不真正な情報が存在する理由の如何にかかわらず、情報の真正さにつき責任を負わないということにレッド社が合意したことにより、ブルー社が当該リスクを引き受けたということを意味する。
22. ブルー社は、自身が不真正な情報を受け取るリスクを引き受けた以上、売買契約の取消しによる保護を受けるべきではない。
2.3. 予備的主張として、全事情に鑑み、ブルー社は、自らの錯誤により生じた損害につき賠償責任を負う。
23. スマート・ブルーは、情報系システムに含まれる情報、とりわけ(ア)〜(ウ)の情報を元に、ネゴ蟹 1 万杯の購入を決定した(14 段落)。情報系システム内のデータは、本件蟹の価格を含め、勘定系システム内のデータとは異なっていた。
24. レッド社は、ブルー社に対し、本件蟹の価格について誤った表示をしていなかった。情報系システム内のデータが 50 米ドルと表示されていたとはいえ、レッド社により設定された勘定系システム内での価格は、常に 200 米ドルであった(16 段落)。
25. このことは、レッド社が、ブルー社に誤った情報を受け取らせる意思を有していなかったことを示している。当該ハッカーは、レッド社の制御可能範囲を超えており、レッド社は、このような者が不真正なデータを入力することにつき責任を負わされるべきではない。
26. レッド社は、天気ならびに商品の生産量および市場価格を含むデータを提供することが期待されている(12 段落)。レッド社は、注文通りネゴ蟹 1 万杯を供給した。すなわち、レッド社により提供された生産量に関するデータには問題がなかった。しかし、天気や市場価格といった情報もまた、レッド社の制御可能範囲を超えるものである。したがって、レッド社が市場価格に関する情報につき責任を負うことは、商業的合理性を欠く。
27. レッド社とブルー社が別添 6 の覚書を締結したのは、RB リンクを開発を通じて、グローバル・キッチンの顧客に対し、より迅速な対応を行うためである(10 段落)。仮に、レッド社がブルー社からのネゴ蟹 1 万杯の注文を自動的に確認して処理しなかった場合、レッド社は、覚書に定められた義務に違反するだけでなく、商品の在庫、入荷予定、レッド社による販売価格に関する情報を適時に提供するという覚書の商業的な目的にも反することとなった(別添 6 第 2 条)。
3. 仮に、ブルー社が売買契約を取り消すことができるとしても、ブルー社は、レッド社に対し、ネゴ蟹
1 杯あたり 200 米ドルを原状回復として支払わなければならない。
28. 売買契約を取り消すことができる場合、その効果は遡及する(UNIDROIT 第 3.2.14 条)。原状回復とは、各当事者が、取り消された契約の部分に基づき自己が給付した物について返還を請求することができることをいう(UNIDROIT 第 3.2.15 条 1 項)。よって、レッド社は、ネゴ蟹の返還を請求することができる。これは「現物による返還」という。
29. しかし、ネゴ蟹はグリーン社に「売却」されたため、現物による返還は不可能である。よって、これは金銭による価額の返還に代替されなければならない(UNIDROIT 第 3.2.15 条 2 項)。この金銭による価額の返還は「返還が不可能な物の市場価格」で行われる(’would entail the market value of that which cannot be returned’ )(Xx Xxxxxxx in Vogenauer, p. 545)。ネゴ蟹の市場価格は 200 米ドルであったため、ブルー社は、合計 200 万米ドルをレッド社に支払う義務を負う。
4. レッド社のネゴ蟹一杯の販売価格は、200 米ドルであった。ブルー社は、レッド社に対して合計 200
万米ドルを支払う義務を負う。レッド社は、以下の通り主張する。
4.1. 商品のネゴランド国での市場価格とレッド社による販売価格には差異がある。市場価格がハッカーによって引き上げられてもなお、ネゴ蟹の販売価格は 1 杯 200 米ドルであった。
4.2. 仮に、情報系システムと勘定系システムの価格の差が解消されない場合、ネゴ蟹 1 杯あたりの価格は、売買契約締結時に一般的に定められる価格でなければならない。
4.1. 商品のネゴランド国での市場価格とレッド社による販売価格には差異がある。市場価格がハッカーによって引き上げられてもなお、ネゴ蟹の販売価格は 1 杯 200 米ドルであった。
30. レッド社は、ネゴ蟹の、「ネゴランドの農産物や魚介類に関する生産量や市場価格」(以下、「市
場価格」という。)(別添 7、2017 年 11 月 10 日と 15 日の電子メール)と「レッド社による販売価格」には差異があると主張する(別添 6 第 2 条)。供給契約(別添 4)または覚書(別添 6)に、レッド社の販売価格が市場価格と同じでなければならないという指定はない。このような指定は、価格設定におけるレッド社の裁量権を限定するため、商業的合理性を損ないかねない。
31. スマート・ブルーは、情報系システムを通じて、「農産物や魚介類に関する生産量や市場価格」にアクセスすることができる(12 段落)。レッド社は、これにより表示される価格は一般的な市場情報であり、必ずしもレッド社による設定価格とは限らないと主張する。
32. レッド社の販売価格と市場価格との間に差異があることは、レッド社が、ブルー社に対し 1 週間前に発送した商品の合計金額を請求できることにより示される (別添 4 第 2 条 3 項)。これは、ネゴランド国における市場価格にかかわらず、レッド社の販売価格が 200 米ドルであったことを意味する。また、覚書によれば、レッド社は、「商品の在庫・入荷予定・レッド社による販売価格」に関する情報を管理するシステムを開発することが取り決められている(別添 6)。
33. したがって、レッド社の販売価格は変化しなかった。確かに、情報系システム内のデータがハッカーにより操作されたことにより、システム内に表示されていた市場価格は下落していたかもしれないが、販売価格は、200 米ドルのままであった(15 段落)。よって、契約価格は、200 米ドルであった。この価格が勘定系システムと RB Dashboard の両方に表示されていたため、 スマート・ブルーまたはブルー社の社員が当該価格を確認することは可能であった(15 段落)。
4.2. 仮に、情報系システムと勘定系システムの価格の差が解消されない場合、ネゴ蟹 1 杯あたりの価格は、売買契約締結時に一般的に定められる価格でなければならない。
34. 情報系システムと勘定系システムとの間で価格が一致しない状況では、レッド社とブルー社は販売価格について合意していなかった。当事者は、契約締結前に価格について合意する必要はない
(UNIDROIT 第 5.1.7 条)。
35. ネゴ蟹の価格を決定する明確な仕組みは存在しないため、レッド社は、当該価格は当該契約締結時における一般的な価格に準拠すべきであると主張する(UNIDROIT 第 5.1.7 条)。
36. 契約締結時の価格は、市場価格であるとの推定がある(Vogenauer, p. 637)。契約締結時の価格がネゴ蟹 1 杯あたり 200 米ドルであったため、これがブルー社の支払うべき価格である(15 段落)。
5. ブルー社がネゴ蟹を所有していたため、ブルー社がグリーン社と売買契約を締結した時、ブルー社が 蟹の売却に係る義務を負っていた。
37. グリーン契約は、ブルー社がネゴ蟹を法律的ないし物理的に取得した後に締結されたため、グリーン契約に基づく義務は、ブルー社の義務である。
38. レッド社は、ブルー社が 2019 年 3 月 5 日にネゴ蟹を受領したとき、ブルー社がネゴ蟹の所有者になったと主張する(16 段落、17 段落)。両当事者が用いることに合意した INCOTERMS DDP によれば、受領者は、物の所有権を、それが配達された時に取得する(別添 4 第 2.1 条)。
6. レッド社は、グリーン契約の当事者ではないため、当該契約に基づく債務を負わない。レッド社は、以下の通り主張する。
6.1. レッド社は、グリーン契約書面内で言及されていなかったため、当該契約の当事者ではない。レッド社は、ブルー社とグリーン社との間で仲介人として行動していたにすぎない。
6.2. ブルー社は、債務の移転または債権債務の譲渡を通じてレッド社をグリーン契約の当事者にすることはできなかった。
6.1. レッド社は、グリーン契約書面内で言及されていなかったため、当該契約の当事者ではない。
39. グリーン契約は、ブルー社を「Seller」、グリーン社を「Buyer」と指定している(別添 8)。このことは、当該契約書面においてレッド社に関する明示的な記述はないということを意味する。
40. グリーン契約におけるレッド社の唯一の役割は、仲介人として、ブルー社が所有するネゴ蟹の購入者探しを補助することである(17 段落)。 仲介人とは、契約当事者であるブルー社とグリーン社を繋ぐ目的で、契約前の交渉にのみ関与する者をいう(UNIDROIT 第 2.2.1 条注釈 2)。
41. レッド社は、具体的な契約条件についての事前交渉に関与しなかった。また、レッド社は、ネゴ蟹に対してグリーン社が支払う意思のある金額が 1 杯 100 米ドルであると明らかにしたことを除き、他のあらゆる契約前交渉にも関与しなかった(17 段落)。
6.2. ブルー社は、債務の移転または債権債務の譲渡を通じてレッド社をグリーン契約の当事者にすることはできなかった。
42. ブルー社は、債務移転または債権債務譲渡を通じて、レッド社がグリーン契約に基づく費用を支払
う義務を負うと主張することはできない。
43. ブルー社がグリーン契約に基づき自らが負う債務をレッド社に移転するためには、レッド社の同意が必要である (UNIDROIT 第 9.2.3 条)。ブルー社は、自らがグリーン契約に基づき負う債務を移転させるための同意をレッド社に求めなかった。仮にブルー社がレッド社の同意を求めていたとしても、レッド社は、同意しなかったであろう。
44. グリーン契約をレッド社に譲渡するためには、ブルー社は、レッド社の同意を求めなければならない (UNIDROIT 第 9.3.3 条)。ブルー社は、レッド社にこの同意を求めなかった。また、仮にブルー社がレッド社の同意を求めたとしても、レッド社は同意しなかったであろう。
7. ブルー社は、グリーン契約の締結時、レッド社の代理人ではなかった。レッド社は、以下の通り主張する。
7.1. ブルー社は、グリーン契約締結時にネゴ蟹の所有者であり、レッド社の代理人として本件蟹を売却したのではない。
7.2. 仮にレッド社が本件蟹の所有者であったとしても、ブルー社はレッド社の代理人として本件蟹を売却したのではない。
7.1. ブルー社は、グリーン契約締結時にネゴ蟹の所有者であり、レッド社の代理人として本件蟹を売却したのではない。
45. ブルー社は、グリーン契約締結時、本件蟹を法律的にも物理的にも支配していたため、ブルー社は本件蟹の所有者であった(17 段落)。
46. レッド社は、3 月 5 日、引渡しによりブルー社に対し、本件蟹に関するあらゆる法的権利を渡した
(別添 4 第 2 条 1 項)。ブルー社がレッド社の代理人として行動するためには、レッド社は、受益所有権を保持する必要があったであろう。
7.2. 仮にレッド社が本件蟹の所有者であったとしても、ブルー社は、レッド社の代理人として本件蟹を売却したのではない。
47. ブルー社とレッド社が、ブルー社によるグリーン契約締結に先立ちなした行為(17 段落参照)は、代理関係の存在を証明しない。
48. 代理関係の設定には、特定の方式を要しない。本人の代理人に対する代理権の授与は、明示でも黙示でもすることができる(UNIDROIT 第 2.2.2 条 1 項)。
49. レッド社は、口頭の合意が、開示されない代理として代理関係を設定しうることを認める
(UNIDROIT 第 2.2.2 注釈 1)。しかし、ブルー社とレッド社の担当者が行った会話では、代理関係の設定には不十分である(17 段落)。なぜならば、ブルー社は、レッド社の代理人として行動する申込みをしていない上、レッド社は、なんらそのような申込みを承諾していないからである。
50. さらに、仮にブルー社がレッド社の代理人として行動していたならば、ブルー社は、レッド社に対し、ネゴ蟹に係る送料・関税等の費用が増加したことを伝えていたはずである。それにもかかわらず、ブルー社は、そのようなことをせず、単独で、本件蟹のグリーン社への輸送を強行したのである(18 段落)。
51. 代理契約が成立するためには、契約についての合意は、任意に行われなければならない(UNIDROIT第 2.2.1 条注釈 4)。レッド社とブルー社の担当者は、両社間に存在するグリーン契約の問題をどのように解決するかについて、以下のように、後日話し合うことで合意した(17 段落)。
ブルー社:「今回は当社とグリーン社の間で契約することにし、費用や損失について当社と貴社の間でどうするかは後で別途解決することとしてはどうか。」
レッド社:「分かった。そうしよう。」(17 段落)。
52. 問題を後日話し合う旨の本合意は、レッド社とブルー社が費用や損失についての合意があったとは考えていなかったことを示している。さらに、ブルー社は、明示的にも黙示的にも、ブルー社がレッド社の代理としてグリーン社と契約を締結するとは述べなかった。これは、ブルー社は、グリーン契約締結当時、自らをレッド社の代理人であるとは意図していなかったことを示す(17 段落)。
ブルー・ ホット事件
レッド社の主張の要旨
1. ブルー社は、ブラウン商事に対し「ブルー・ホット」シリーズを販売することにより、レッド社とブルー社間の合弁契約(以下、「合弁契約」という。)14 条に基づく義務に違反した。
2. ブルー社は、レッド社に対し、ブルー社による合弁契約違反の結果レッド社が 2018 年に被った損害を賠償するため、40 万米ドルを支払わなければならない。
3. ブルー社が、「ブルー・ホット」シリーズを、ブラウン商事およびネゴランド国内で当該シリーズを販売する目的のその他の第三者に販売することを防ぐため、レッド社の販売差止請求は認められるべきである。
1. ブルー社は、ブラウン商事に対し「ブルー・ホット」シリーズを販売することにより、合弁契約に基 づく 14 条上の義務に違反した。
レッド社は、以下のように主張する。
1.1. ブラウン商事による「ブルー・ホット」シリーズのネゴランド国内への販売のために、ブルー社が、ブラウン社へ当該商品を販売したことが、イエロー社との商品との市場での競合を助長した。このことは、合弁契約の第 14 条 3 項違反である。
1.2. ブルー社が合弁事業の対象から「ブルー・ホット」シリーズを差し控える行為は、合弁契約の第 14
条 2 項違反である。
1.3. ブラウン商事によるネゴランド国内での「ブルー・ホット」シリーズの販売のため、ブルー社が当該シリーズをブラウン商事に販売する行為は、合弁契約の第 14 条 1 項のxxxxの原則上の義務違反である。
1.1. ブラウン商事による「ブルー・ホット」シリーズのネゴランド国内への販売のために、ブルー社が、ブラウン社へ当該商品を販売したことが、イエロー社との商品との市場での競合を助長した。このことは、合弁契約の第 14 条 3 項違反である。
53. レッド社及びブルー社は、「合弁契約の期間中はイエロー社の事業と競合する全ての事業」への従
事・関与が禁じられている(別添 10 第 14.3 条)。
54. ネゴランド国内で「ブルー・ホット」シリーズを販売するブラウン社への「ブルー・ホット」シリーズの販売行為がイエローと競合する理由は、以下の通りである。
a) 「ブルー・ホット」シリーズと「イエロー・クイック」シリーズにはビーフ・シチュとアクア・パッツァ味が重複して含まれていた(21 段落、24 段落)。
b) ブルー社は、ブラウンがネゴランド国内へ「ブルー・ホット」を転売することを認知して、ブラウン商事に当該商品を販売した。その際、ブルー社は、ブラウン商事によるネゴランド国内への「ブルー・ホット」シリーズ販売を制限することなどを試みなかった(別添 13 中、2019 年 2 月 8 日のメール)。
c) 「ブルー・ホット」シリーズの成功は、「イエロー・クイック」シリーズの売上減少を引き起こした(別添 12)。
d) 合弁契約によると、イエロー社の製品は、レッド社もしくはブルー社によって販売されなければならない(別添 10 第 7.1 条)。
55. 合弁契約は、当事者の共通の意思に基づき解釈されるべきである(UNIDROIT 第 4.1 条 1 項)。
56. イエロー社の事業は、気軽に簡単に調理できる多種多様な食品を消費者へ提供することである。イエロー社の事業は、「ブルー・ヌードル」や「イエロー・クイック」シリーズに限定されず、その時々の「レッド社とブルー社が決定する製品」の生産とマーケティングを行うことである(別添 10第 2.1 条)。ここでいう「製品」とは、「即席食品」である(別添 10)。
57. レッド社及びブルー社は、「即席食品」という同種の文言を使用している(20 段落;別添 9 第 2 条 1 項、第 2 条 7 項)。この名称は、イエローを設立する際のレッド社とブルー社間の事前交渉において使われた(UNIDROIT 第 4.3 条 a 号)。
58. 2014 年 5 月 15 日の議事録では「冷凍食品」が「即席食品」の例として言及された(別添 9 2.7
条)。また、イエロー社の製品にさらなる製品を加えることも両社の会合で検討された(別添 9 2.7
条)。
59. レッド社は、ブルー社の、「合弁契約は基本的にブルー・ヌードルを対象としたもの」との主張を否定する(別添 11 2017 年 10 月 10 日の電子メール)。これは、レッド社とブルー社間で確立されている慣行と、契約締結後のレッド社とブルー社の行為によって裏付けられる。(UNIDROIT 第 4.3 条 (b)-(c)項)。その根拠は、以下の通りである。
a) 両社は、イエロークイックシリーズの一部であるネゴ麺、ビーフ・シチューやアクア・パッツァなどの新商品を継続してイエロー社に導入及び開発をしていた(21 段落)。
b) イエロー社の事業に加えられる新製品は、既存技術の範囲に制限されなかった。製品の導入には、イエロー社でのそれぞれの持分・役割に応じて、出資をする必要がある(別添 10 第 1.2 条)。
c) イエロー社が販売する商品の特徴は、調理が容易で出来上がるのが早い、お湯をかけるだけで完成する即席食品である(19 段落、21 段落)。
1.2. ブルー社が合弁事業の対象から「ブルー・ホット」の生産のために必要な技術、情報、特許とノウハウの提供を差し控える行為は、合弁契約の第 14 条 2 項違反である。
60. ブルー社は、「製品を生産するために必要な技術、情報、特許とノウハウ」をイエロー社に提供し
ておらず、合弁契約第 14 条 2 項に違反している(別添 10 第 14.2 条)。
61. イエロー社の操業開始のため、イエロー社に対し、レッド社は、「労働力、設備と施設」を、そしてブルー社は、「技術と労働力」を提供することが求められている(別添 10 第 1.2 条)。
62. 両者は、第 14 条 2 項の義務を、新製品向けの技術の開発に積極的に貢献するという義務であることを意図した (UNIDROIT 第 4.1 条 1 項)。 その根拠は、以下の通りである。
a) 「イエロー・クイック」の発展には、両社の様々な資源を積極的に提供することが必要とされていた。
b) 両社の事前交渉と契約締結後の事業活動は、レッド社の合弁寄与と引き換えにブルー社がレッド社に新技術提供をする意思があったことを示している(別添 9 第 6 条;21 段落)。
c) 両社の事前交渉と契約締結後の行為は、イエロー社へのレッド社の合弁寄与と引換えにブルー社が新技術提供をする継続的意思があったことを示す(別添 9 第 6 条;21 段落)。
63. 仮に両社の義務についての意思が十分に明示されていないとしても、レッド社およびブルー社と同種の合理的な者は、合弁契約第 14.2 条を、新製品の開発に技術を提供する積極的義務を定めるものとして理解するはずである(UNIDROIT 第 4.1 条 2 項)。その根拠は、以下の通りである。
a) レッド社とブルー社は、大規模かつ商業的に高度に発展した企業である。
b) 大規模で商業的に高度に発展した企業は、不平等な条件の合弁に合意するはずがない。
c) ブルー社がイエロー社に新技術を提供する積極的義務がない場合、合弁契約における両者の義務は不平等となる。なぜならば、レッド社の過大な義務に比して、ブルー社には継続的な義務がほとんど課されないからである。
1.3. ブラウン商事によるネゴランド国内での「ブルー・ホット」シリーズの販売のため、ブルー社、が当該シリーズをブラウン商事に販売する行為は、合弁契約の第 14 条 1 項のxxxxの原則上の義務違反である。
64. レッド社とブルー社は、「イエロー社の事業の成功のために、xxxxの原則に従って、最善の努力をしなければならない」(別添 10 第 14.1 条)。
65. ブルー社と同じ状況におかれた合理的な者は、イエロー社の事業を成功させるためにその状況の下でするであろう最善の努力をするとみなされる(UNIDROIT 第 5.1.4 条 注釈 2 例 2)。
66. ブルー社の行為が以下で示される基準に達していないため、ブルー社は、イエロー社の事業の成功に対して、xxxxの原則に基づく最善の努力をすることを怠った(UNIDROIT 第 5.1.4 条 2 項)。
a) ブルー社は、2017 年に、レッド社やイエロー社へブルー社が「ブルーホット」シリーズを製造していたことを通知しなかった。また、ブルー社は、「ブルーホット」シリーズをイエロー社の事業へ加えるためのレッド社との交渉を誠実に行わなかった(別添 9 第 2 条 7 項)。
b) ブルー社は、イエロー社の事業と競合する事業に参与していた。
c) ブルー社は、「ブルー・ホット」シリーズの発展に必要な技術をイエロー社に提供することを差し控えた。
d) ブルー社は、「当面は」、「ブルー・ホット」シリーズをアービトリア国でのみ販売する旨をレッド社に伝えていた(別添 11 2017 年 10 月 10 日の電子メール)。当該シリーズは、ネゴランド国内で「イエロー・クイック」シリーズと競合する商品であった。しかし、2018 年 1 月に、ブルー社は、当該シリーズを、ネゴランド国内での当該シリーズの販売を計画する競合会社
(ブラウン商事)に販売し始めた。そして、この事実を、事後報告としてレッド社に明かした。(別添 13 2019 年 2 月 8 日の電子メール)。
67. 加えて、レッド社及びブルー社は、イエロー社の事業を成功させるためにxxxxの原則に従って協力しなければならない(別添 10 第 14.1 条)。
68. レッド社及びブルー社は、「各々の債務の履行のために協力することが合理的に期待されている程度 」の協力をしなければならない(UNIDROIT 第 5.1.3 条注釈 1)。
69. 誠実な協力は、長期契約に基づく合弁事業の継続的な商業上の実行可能性のため特に重要である
(UNIDROIT 第 5.1.3 条注釈 2)。
70. ブルー社は、レッド社と誠実に協力しておらず、それによりイエロー社の事業の成功を阻害している。
2. ブルー社は、レッド社に対し、ブルー社による合弁契約違反の結果レッド社が 2018 年に被った損害 を賠償するため、40 万米ドルを支払わなければならない。
71. レッド社は、ブルー社による合弁契約に基づく債務の不履行に対し、排他的にまたは他の救済手段
とともに損害賠償をする権利を有する(UNIDROIT 第 7.4.1 条)。
72. ブルー社による合弁契約違反により、イエロー社の 2018 年度の収益は、100 万米ドル減少した(別添 12)。
73. レッド社の 2018 年度の減益額は 40 万米ドルであり、これはイエロー社の 2018 年度減益額の 40%に相当する(別添 10 第 8.1 条;別添 14)。
3. ブルー社が、「ブルー・ホット」シリーズを、ブラウン商事およびネゴランド国内で当該シリーズを 販売する目的のその他の第三者に販売することを防ぐため、レッド社の販売差止請求は認められるべきである。
74. 販売差止命令は、ブルー社がブラウン商事に対し、合弁契約に違反して「ブルー・ホット」シリーズの販売を継続し、レッド社にさらなる損害を発生させることを防止するために必要である。
75. ブルー社は、レッド社へのさらなる損害を防止するためにレッド社がした合弁契約違反行為の停止の要請をも拒絶した。(別添 11、別添 13)。
76. 救済手段とは、相互に矛盾しない限り複数を同時に利用することができる(UNIDROIT 第 7.4.1
条)。販売差止命令は、ブルー社が合弁契約に将来にわたり違反することを防止するために必要である。また、ブルー社の合弁契約違反により、レッド社が被った損害を補償するための損害賠償も必要となる。
77. レッド社は、ブルー社に対して非金銭債務の履行も請求することができる(UNIDROIT 第 7.2.2
条)。ゆえに、仲裁xは、販売差止命令を発する権限を有する(Born, International Commercial Arbitration(2014)p. 3433;Blackaby, Partasides, Redfern & Hunter, Redfern and Hunter on International Arbitration(2015), 9.59)。
78. 同命令がなければ、イエロー社は、「ブルー・ホット」シリーズのネゴランドにおける販売により、2019 年以降も 2018 年と同様の損害を被り続けることになる (別添 12)。
第三者資金提供に関する申立て
レッド社の主張の要旨
1. 第三者ファンドによる資金提供契約(以下、「資金提供契約」という。)は本件仲裁との関連性を有せず、また本件仲裁の帰結にとって重要ではないため、仲裁xは、本件申立てを却下すべきである。
2. 仲裁xは、資金提供契約の営業上または技術上の秘密を理由に、本件申立てを却下すべきである。
3. レッド社に対し資金提供契約内容の開示を命令することは、レッド社に対し不合理な負担を課すこととなり、当事者間のxxを損なうため、仲裁xは、本件申立てを却下すべきである。
1. 資金提供契約は本件仲裁との関連性を有せず、また本件仲裁の帰結にとって重要ではないため、仲裁 xは、本件申立てを却下すべきである。
79. 仲裁xは、自らが適当と考える方法により仲裁を行うことができる(UNCITRAL 仲裁規則(以下、
「UNCITRAL」という。)17 条 1 項、27 条 3、4 項)。さらに、仲裁xは、証拠の仲裁手続との関連性を決定すること、および当事者に証拠の提出を求めるか否かを決定することにつき、裁量権を有する。
80. 仲裁xは、UNCITRAL 仲裁規則を解釈するにあたり、IBA 国際仲裁証拠調べ規則(以下、「IBA 規則」という。)および国際仲裁における利益相反に関する IBA ガイドライン(以下、「IBA ガイドライン」という。)を参照すべきである。これらの規則は、国際仲裁における一般的慣行として確立しており、日本における仲裁も例外ではない(Report on the Reception of the IBA Arbitration Soft Law Products, pp.11-12、53)。本件仲裁も、日本で実施されている(26 段落)。
81. 資金提供契約は、本件仲裁における実体法上の問題との関連性がないばかりか、重要でもない(IBA規則第 3 条 3 項、9 条 2 項 a 号;South American Silver Limited (Bermuda) v The Plurinational State of Bolivia, Procedural Order No.7 on Document Production, July 21, 2015(以下、「Bermuda Case Procedural Order」という。), p. 4)。
82. 資金提供契約は、本件仲裁の手続法上の問題とも関連性がないばかりか、重要でもない。その理由は、以下の通りである。
a) 資金提供契約は、仲裁人の忌避を申し立てる根拠とはなり得ず、また重要でもない。仲裁人の忌避の申立ては、仲裁人のxx性または独立性に正当な疑いが存在する場合に行われる
(UNCITRAL 第 12 条)が、現時点でそのような根拠は存在しえない。
i. 仲裁xは、開示義務に従い(UNCITRAL 第 11、12 条;IBA ガイドライン第 7 条 d 号)、本件における第三者ファンドの身元を認識していない旨をxxしている(27 段落)。ブルー社は、資金提供契約が仲裁人のxx性または独立性に対する正当な疑いの存在を示す根拠となると主張するが、これはブルー社の憶測に過ぎない(別添 15)。
ii. したがって、仮に仲裁人の 1 人が当該第三者ファンドと何らかの関係を有していたとしても、当該仲裁人は仲裁判断を行うにあたり利益を得たり不利益を回避したりしうることを認識していないため、当該仲裁人のxx性または独立性に対する正当な疑いは存在しない。
b) 予備的主張として、資金提供契約は、仲裁人のxx性または独立性への正当な疑いの存在を示すものではなく、したがって、本件とは関連性を有せず重要性もない。
i. 仲裁当事者は、仲裁人のxx性または独立性に影響を及ぼしうる情報で入手可能なものを提供する継続的な義務を負う(IBA ガイドライン第 7 条 c 号)。
ii. レッド社は、仲裁人のxx性または独立性に影響を及ぼしうる情報をなんら有していない(別添 16)。
iii. レッド社は、自らの開示義務を果たした上で、資金提供契約が仲裁人のxx性または独立性に影響を及ぼしうる情報を含まないため、これを開示していない。
c) 予備的主張として、ブルー社は、資金提供契約が本件仲裁における手続的問題と関連性を有し重要であることの理由の説明を、それが義務付けられている(IBA 規則第 3 条 3 項)にもかかわらず行っていない。
i. ブルー社は、レッド社に対する競争優位を得るためにいわゆる「証拠漁り」を行っているのであり、IBA 規則はそのような行為を防止するために作られている(Commentary on the Revised Text of the 2010 IBA Rules, p. 9)。
ii. ブルー社は、「仲裁費用の負担」(別添 15)についての情報がどのように仲裁人の忌避申立ての根拠となるのかを説明していない。また、ブルー社は、資金提供契約がどのように「当該ファンドと仲裁人との利害関係」(別添 15)を証明するのかについても説明していない(Bermuda Case Procedural Order, p. 4)。
iii. ブルー社は、なぜ資金提供契約の特定の部分(「仲裁費用」および「ファンドと仲裁 人」に関する情報)ではなく、資金提供契約全体が本件仲裁と関連性を有し重要であるのかも明らかにしていない(Bermuda Case Procedural Order, p. 4)。
2. 仲裁xは、資金提供契約の営業上または技術上の秘密を理由に、本件申立てを却下すべきである。
83. 資金提供契約の内容および当該ファンドの身元は秘密情報であるため、レッド社は、契約内容の開示を要求されるべきではない(IBA 規則第 9 条 2 項 e 号)。
84. 資金提供契約は、「営業上または技術上の秘密」により保護された証拠にあたる(Report of the ICCA-Queen Mary Task Force on Third-Party Funding in International Arbitration, April 2018, p. 121; Bermuda Case Procedural Order, pp. 3-4)。
3. レッド社に対し資金提供契約内容の開示を命令することは、レッド社に対し不合理な負担を課すこと となり、当事者間のxxを損なうため、仲裁xは、本件申立てを却下すべきである。
85. 資金提供契約内容の開示請求に応じることは、レッド社にとって不合理な負担となり、当事者間のxxを損なう(IBA 規則 9 条 2 項 c、g 号)。
86. 仮にレッド社が、当該ファンドの身元を開示することにより資金提供契約の守秘義務に違反した場合、「当該資金提供者(ファンド)には当該契約の解除権が発生しうる(また、違反が重大である
場合には、当該資金提供者は投資額の取立てが可能となりうる)」(Report of the ICCA-Queen Xxxx Task Force on Third-Party Funding in International Arbitration, April 2018, p. 28)。
87. したがって、レッド社に対し資金提供契約の違反を要求すると、レッド社は、重大かつ不xxな金銭的損失を被りうる。
88. 仮に契約内容が開示された場合、ブルー社は、レッド社の営業上の秘密情報にアクセスし、レッド社に対する競争優位を獲得しうる。(Third Party Funding in Japan, xxxxx://xxx.xxx.xxx/xx/xx/xxxxxxxxx/xxxxxxxx/xxxxx-xxxxx-xxxxxxx-xx-xxxxx-00000000)。
89. 仮にレッド社が契約の開示を要求された場合、本件仲裁の手続が不必要に不安定化し、紛争解決手段としての仲裁の意義が損なわれかねない。
a) UNCITRAL 仲裁規則は、第三者資金提供に関する開示を強制的に要求する規定を有しない。当該規則に拘束されることに合意した時点で、ブルー社は、当該規則の規定するところに従わなければならない(UNCITRAL 第 1 条)。
b) 仮に仲裁xが、レッド社に対し契約の内容開示を要求した場合、これは、UNCITRAL 仲裁規則の射程および意図を超えてしまう。たとえ当該規則の改定が望まれるとしても、それは、本手続において議論されるべきことではない。