仕入書(FOB)
輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会
FOB条件において輸入貨物の引渡し前に行われる検査及び製造者-検品会社間の往復輸送に要した費用の取扱いについて
x 会 | ||
照会内容等 | ① 輸入貨物の品名 | 衣料品(税表分類:第 62 類) |
② 照会の趣旨 | 売手が事前に立替払いし、買手が売手に支払う輸入貨物の検査及び製造者-検品会社間の往復輸送に要した費用が輸入貨物の課税価格に算入されるか否かについて照会するものです。 | |
③ 取引の概要及び関税評価に関する照会 者の見解とその理由 | 別紙1のとおり。 | |
④ 関係する法令条項等 | 関税定率法第4条第1項本文 | |
⑤ 添付書類 | 照会の趣旨及びその理由等の照会事項に関する参考資料 |
回 答 | |||
回答年月日 | 平成 26 年 9 月 19 日 | 回答者 | 東京税関業務部首席関税評価官 |
回答内容 | 別紙2のとおり。 ただし、次のことを申し添えます。 (1) 回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提としたものであり、具体的な事例において異なる事実がある場合や新たな事実が生じた場合には、回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。 (2) 回答内容は、税関としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありませんのでご留意ください。 |
(別紙1)
1.取引形態図
確認書
買手・輸入者 B社
(本邦)
仕入書(FOB)
①貨物代金、②検査費用、
③往復輸送費(②③立替)
①②③の支払
貨物代金輸入貨物
売手・輸出者 S社 (X国)
製造指示 同
検品に関する
業務委託基本契約書
検品レポート
売手の製造工場 A社
(X国)
検査費用
全量持込検査検査後返送
検品元請会社 C社
(本邦)
検査指示・検品レポート
検品会社 D社
(X国)
同
2.取引の概要
(1) 輸入者(買手)であるB社(以下「買手」という。)は、X国所在の輸出者(売手)であるS社(以下「売手」という。)との間で、貨物の引渡条件・支払条件等を記載した確認書を取り交わし、FOB条件で衣料品(以下「貨物」という。)を輸入します。なお、売手と買手の間に特殊関係はありません。
(2) 売手は、買手からの発注書及び仕様書に基づいて貨物を製造し、買手の要求に基づいて両者が合意した品質・規格等に合致する貨物を買手に引き渡すことが、売手と買手の間で取り決められています。
(3) X国に所在する売手の 100%出資の製造工場であるA社(以下「製造者」という。)は、貨物の製造後、製造者自身によって、すべての貨物が仕様書に適合しているかどうかを確認する検品を行った上で本邦へ発送しています。
しかし、買手による日本での検収の際に不具合のある製品が見られたため、買手は、製造者の検品のみでは買手が設定した品質基準を満たす検品を行うことができないと判断し、本邦所在のC社
(以下「検品元請会社」という。)にX国での検査を依頼することとしました。
(4) 検品元請会社は、X国に所在する 100%出資のD社(以下「検品会社」という。)に検査を行わせます。
買手と検品元請会社との間には、「検品に関する業務委託基本契約書」が締結されており、検品の基準、数量、検品場所、対価及び支払方法その他必要な事項は、個々の取引の際、両者間で別途定めることとされています。実際には、検品元請会社の指示により、検品会社が買手の設定した品質基準に基づいて検査を行います。
(5)また、売手及び買手の間において
・ 検査場所については、検品会社に貨物を持ち込み検査すること
・ 製造者が検品会社に貨物を輸送すること
・ 検査費用及び往復輸送費用は売手が立替払いすること
が合意されています。なお、買手が検品元請会社に検査を委託するに際して、売手は何ら関与せず、また、買手、売手及び検品元請会社の間にも特殊関係はありません。
(6) 製造者は、買手の指示を受けた売手の指示に基づき、貨物の全量を検品会社に輸送し、検品会社による初回検査(全量検査)を受けます。初回検査に合格しなかった貨物については製造者に一旦返却され、製造者が補修を行った後、再度検品会社に輸送し再検査を受けます。検査終了後、すべての貨物(初回検査合格品、再検査合格品、不合格品)は製造者に返送されます。検品会社は「検品レポート」により、検査結果を検品元請会社及び買手に報告します。
(7) 全量検査及び再検査の検査費用は、買手と検品元請会社の間で合意した単価に基づき、検品会社から売手に対して請求され、売手から買手に対して請求されます。
製造者-検品会社間の貨物の往復輸送費用については、製造者-検品会社間の距離と貨物の容量から売手と買手が合意した単価に基づき、売手から買手に対して請求されます。
なお、不合格品に係る検査費用及び往復輸送費用は製造者が負担します。
(8) 売手は、検品会社の検査に合格した貨物のみの数量による仕入書及び包装明細書を作成し、本邦へ向けて貨物を輸出します。売手は、輸出の際に「貨物代金」、「検査費用」、「製造者-検品会社間の往復輸送費用」(全て合格品のみ)の3種類の仕入書によって買手に請求します。買手は、当該3種類の仕入書に記された価格に基づき、その合計額を売手に支払います。
なお、検品会社への検品委託後も、製造者自身による検品が行われていることについて、買手は、製造者から検査報告書を入手し、照会書に添付しています。
3.関税評価に対する照会者の見解
買手が検品元請会社に委託して行う輸入貨物の検査に要する費用は、関税定率法第4条第1項第1号から第5号までに掲げる加算要素に該当せず、製造者-検品会社間の往復輸送費用についても検査費用の一部として、輸入貨物の課税価格には含まれないと考えます。
(別紙2)
【回答内容】
本事案において、輸入者が売手に支払う輸入貨物の検査費用及び往復輸送費用は、輸出国において買手が自己のために行った検査に要した費用と認められることから、輸入貨物の課税価格に算入されません。
【理由】
1.関係法令等
(1) 関税定率法(以下「法」という。)第 4 条第 1 項本文において、輸入貨物の課税価格は「当該輸入貨物に係る輸入取引(略)がされた場合において、当該輸入取引に関し買手により売手に対し又は売手のために、当該輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格(略)に、その含まれていない限度において次に掲げる運賃等の額を加えた価格(略)とする。」と規定されています。また、法施行令第 1 条の 4 において、「買手により売手に対し又は売手のために輸入貨物につき現実に支払われた又は支払われるべき価格は、当該輸入貨物につき、買手により売手に対し又は売手のために行われた又は行われるべき支払の総額」とすると規定されています。
(2) さらに、法基本通達 4-2 の 3 において、
「輸出国における輸入貨物の検査に要する費用の取扱いは、(1)から(3)までによる。
この場合において『検査』とは、輸入貨物が売買契約に定める品質、規格、純度、数量等に合致しているか否かを確認するための検査又は分析をいう。
(1) 売手(売手の依頼を受けた検査機関等の第三者を含む。)が自己のために行った検査に要した費用で買手が負担する場合は、課税価格に算入する。
(2) 買手(買手の依頼を受けた検査機関等の第三者を含む。)が自己のために行った検査に要した費用で買手が負担する場合は、課税価格に算入しない。(以下略) 」
との解釈が示されています。
2.費用の検討
(1) 本件輸入取引において、製造者は、買手からの発注書及び仕様書に従って貨物を製造し、貨物の製造後、すべての貨物について、当該仕様書で定められている品質、規格などに合致しているかどうかを確認するために、製造者自身による検品を行っているとのことであり、その資料として買手は、製造者から入手した検査報告書を提出しています 。
(2) しかし、買手による本邦での検収の際に不具合のある製品が見られたため、買手は、製造者の検品のみでは自らが設定した品質規準を満たすための検品を行うことができないと判断し、製造者自身の検品に加えて、検品会社において以下の追加検査を行うこととしています。
① 初回検査
検品元請会社を通じて買手の依頼を受けた検品会社が最初に行う検査(全量検査)をいいます。検査費用及び製造者と検品会社間の輸入貨物の往復輸送費用(以下「往復費用」という。)のうち、合格品については買手が負担し、不合格品については製造者が負担します。
② 再検査
初回検査で不具合が見つかったものについて、製造者による補修作業を経て、検品会社によって再度行われる検査をいいます。検査費用及び往復費用のうち、合格品については買手が負担し、不合格品については製造者が負担します。
(3) 本件の輸入取引では、製造者が行うべき検品がなされていることが確認できますので、売手は、買手と合意した品質等に合致しているかどうかを確認するために必要な検査を行っていると認められます。
さらに、上記(2)の初回検査及び再検査は、買手の判断により行われることとなったとのことですので、買手の都合による検査であると認められます。
また、往復費用は、当該検査を行うために、貨物が製造者から検品会社に持ち込まれると売手及び買手の間で定められていることから、輸入貨物の検査を行うために必要な費用であると解されます。
(3) なお、買手は、上記輸入貨物の検査費用及び往復費用を、売手に対して支払っています。
買手の説明によれば、買手が負担することとされている検査費用及び往復費用は、売手が一旦立替払いをし、売手から買手に請求するとのことであり、買手が自己のために行った検査に要する費用を、売手経由で支払ったものと考えられます。
3.結論
上記 2.のとおり、初回検査及び再検査は、買手の依頼を受けた第三者である検品会社により、輸出国において買手が自己のために行った検査であり、往復費用は当該検査に要する費用の一部であることから、法基本通達 4-2 の 3(2)により、買手が負担した検査費用及び往復費用は法第 4 条第 1 項に規定する現実に支払われた又は支払われるべき価格に含まれません。