Contract
(参考1)
サービス付き高齢者向け住宅事業の登録制度に係る参考とすべき入居契約書コメント
サービス付き高齢者向け住宅事業の登録制度に係る参考とすべき入居契約書(以下「参考契約書」という。)コメントは、本参考契約書の性格、内容を明らかにすること等により、本参考契約書が実際に利用される場合の的確な指針となることをねらいとして作成したものである。
全般関係
① 参考契約書は、高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成 13 年法律第 26 号。以下
「法」という。)第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅事業の登録制度に係る参考とすべき入居契約書の雛型として作成されたものである。その使用は強制されるものではないが、サービス付き高齢者向け住宅に係る入居契約において当事者間の紛争を未然に防止し、入居者である高齢者の居住の安定の確保を図る観点から、使用されることが望ましい。なお、当事者の合意により、合理的な範囲で必要に応じて修正を加えて使用することも可能である。
② サービス付き高齢者向け住宅に係る賃貸借契約については、地域慣行、物件の構造等により、個々具体的なケースで契約内容が異なりうるものである。このため、本参考契約書は、最低限定めなければならないと考えられる事項について、合理的な内容を持たせるべく規定したものであり、より具体的かつ詳細な契約関係については、特約による補充がされるケースもあると想定されることから、本参考契約書は、第 22 条において特約条項の欄を設けている。
③ 有料老人ホームをサービス付き高齢者向け住宅として登録する場合には、いわゆる利用権契約が結ばれることも想定され、賃貸借契約と利用権契約のいずれを締結するかについては、当事者間の判断に委ねられる。本参考契約書では賃貸借契約を前提として作成し、あわせて利用権契約とする場合の留意事項をコメントにおいて記載している。なお、終身にわたる利用権契約又は終身建物賃貸借契約を締結する場合には、普通建物賃貸借契約とは異なり、入居者の死亡による相続が発生しないことに留意する必要がある。
④ サービス付き高齢者向け住宅においては、当事者間で「賃貸借契約」、「状況把握・生活相談サービス提供契約」、「状況把握・生活相談サービス提供契約以外の高齢者生活支援サービス提供契約」を締結し得るが、本参考契約書においては、「賃貸借契約」及び「状況把握・生活相談サービス提供契約」を統合した契約書とし、「状況把握・生活相談サービス以外の高齢者生活支援サービス提供契約」のみ別契約とする形式を採用している。
これは、法においてサービス付き高齢者向け住宅事業の登録制度を創設した趣旨が、高齢者向け住宅と少なくとも状況把握・生活相談サービスが一体として提供される住まいの供給を促進するものであることから、状況把握・生活相談サービスのみ部分的に解除さ
れることがないよう、契約形態も一体的であることが望ましいためである。
⑤ 登録事業者(貸主)については、
1)貸主と状況把握・生活相談サービス提供事業者が同一である場合
2)貸主が状況把握・生活相談サービス提供事業者に委託する場合
3)建物所有者が貸主との間で賃貸借契約を結ぶ場合
4)貸主と状況把握・生活相談サービス提供事業者が共同して登録事業を行う場合(以下「共同事業型」という。)
が想定される。
2)や3)については、それぞれ頭書において、委託を受けて状況把握・生活相談サービスを提供する者や建物所有者を明記する必要がある。
4)共同事業型については、登録制度に基づく事業者の適切な事業継続の確保の観点から、入居者(借主)と状況把握・生活相談サービス提供事業者の状況把握・生活相談サービス提供契約の終了を停止条件として、登録事業者(貸主)と入居者(借主)との間で同内容の状況把握・生活相談サービス提供契約が効力を生じることとすることが考えられる。
⑥ サービス付き高齢者向け住宅に係る賃貸借契約については、「普通建物賃貸借契約」又は法第 52 条に基づき都道府県知事の認可を受けて行う「終身建物賃貸借契約」があり、本参考契約書は、2つの形式を示すこととする。
⑦ なお、本参考契約書は、サービス付き高齢者向け住宅事業の登録制度の運用状況を踏まえ、必要な見直しを行うこととしている。
頭書部分
① 家賃や状況把握・生活相談サービス料金の(A)毎月払いの場合、(B)全部前払いの場合又は(C)一部前払いの場合(毎月払いと前払いを併用する場合)に応じて、該当する部分にチェックを入れ使用することとする。
② サービス付き高齢者向け住宅については、共用部分に談話室、食堂等が存在していることが多いことから、(1)賃貸借の目的物について、共用部分の状況(設備の有無、面積等)についても記載する欄を設けている。
③ (1)賃貸借の目的物中、「緊急通報設備」とは入居者の心身の状況に関し必要に応じて通報するもの(例:ボタン式)をいい、登録の基準において、少なくとも一定の資格者等が常駐していない時間においては、各居住部分に設置する必要があるものである。このほか、「安否確認設備」(一定の時間反応が無い場合に通報するもの(例:赤外線センサー式、水センサー式)等)を設置している場合には、別に記載することができる。
④ 敷金、家賃及び状況把握・生活相談サービス料金については、それぞれ分けて明確に記載することが必要である。
⑤ (4)状況把握・生活相談サービスの内容等については、サービス内容、サービスの提
供方法等を、以下の具体例を参考にして、具体的に記載する必要がある。また、サービス内容、サービスの提供方法等については、サービス提供事業者により様々であるため、備考欄を設ける等により、詳細な事項を追加して記載することも可能である。
ⅰ)「状況把握サービス」は、法において「入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービス」とされており、国土交通省・厚生労働省関係高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則(平成 23 年厚生労働省・国土交通省令第
2号。以下「規則」という。)第 11 条において、
・一定の資格者等が、原則として、夜間を除き、サービス付き高齢者向け住宅の敷地又は当該敷地に隣接し、若しくは近接する
土地に存する建物に常駐し、状況把握サービスを提供すること
・少なくとも一定の資格者等が常駐していない時間においては、各居住部分に、入居者の心身の状況に関し必要に応じて通報する装置を設置して状況把握サービスを提供すること
が基準として定められている。
(具体例)
日中に関して、
・食事や外出等の機会を利用して、毎日少なくとも1回の本人の安否確認を行うこと
・訪問し、又は食事や外出等の機会を利用して、毎日少なくとも1回の声掛けを行うこと 等
夜間に関して、
・夜間常駐していない時間には、各居住部分に緊急通報設備(例:ボタン式)が設置されており、通報があった場合には、できるだけ速やかに駆けつけること 等
ⅱ)「生活相談サービス」は、法において「入居者が日常生活を支障なく営むことができるようにするために入居者からの相談に応じ必要な助言を行うサービス」とされており、規則第 11 条において、「一定の資格者等が、原則として、夜間を除き、サービス付き高齢者向け住宅の敷地又は当該敷地に隣接し、若しくは近接する土地に存する建物に常駐し、生活相談サービスを提供すること」が基準として定められている。
(具体例)
・一般的対応や紹介ができる相談に対し、助言を行うこと
(日常生活における入居者の心配事や悩み等(例:食事、健康、趣味、人間関係)について、相談項目と担当相談員等を明示。)
・専門的な相談や助言のために、専門家や専門機関を紹介すること
(相談項目と紹介する専門家等を明示。(例:「財産管理、運用等については弁護士、税理士等」「医療、介護については医療機関、社会福祉法人、地域包括支援センター等」))
⑥ (4)状況把握・生活相談サービスの内容等のうち、サービスの提供方法(常駐する者
及び時間帯)の欄については、以下の具体例を参考にして、該当する時間帯に確実に常駐している人数を記載する必要がある。
(具体例)
・サービスを提供する者が3名(A・B・C)で、Aは9~12 時に、Bは 12~15 時に、 Cは 15~17 時に常駐している場合
:1名9時~17 時
・サービスを提供する者が3名(A・B・C)で、Aは9~17 時に、Bは9~13 時に、 Cは 12~15 時に常駐している場合
:1名 15 時~17 時、2名9時~12 時・13 時~15 時、3名 12 時~13 時
⑦ サービス付き高齢者向け住宅の登録事業者は、敷金並びに家賃等(家賃又は状況把握・生活相談サービスの提供の対価をいう。以下同じ。)及び家賃等の前払金を除くほか、入居者から権利金その他の金銭を受領してはならないこととされており、権利金等について記載する欄は設けていない。
第1条関係
(契約の締結)
第1条 貸主(以下「甲」という。)及び借主(以下「乙」という。)は、頭書(1)に記載する賃貸借の目的物(以下「本物件」という。)及び頭書(4)に記載する状況把握・生活相談サービスの内容等について、以下の条項により、高齢者の居住の安定確保に関する法律(以下「法」という。)第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅で状況把握・生活相談サービスが提供されるものに係る賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結した。
2 建物の賃貸借が終了した場合には、状況把握・生活相談サービスの提供も終了するものとする。
3 状況把握・生活相談サービスの提供が終了した場合には、建物の賃貸借も終了するものとする。ただし、乙の責によらない事由により状況把握・生活相談サービスの提供が終了した場合には、乙は、建物の賃貸借の継続又は終了のいずれかを選択するこ
とができる。
① 第1項は、法の趣旨を踏まえ、サービス付き高齢者向け住宅に係る賃貸借契約であることを明記するとともに、賃貸借の目的物等を明確化している。
② 第2項及び第3項は、建物の賃貸借と状況把握・生活相談サービスの提供のいずれか一方が終了した場合には、他方も終了することを明記している。
③ 第3項については、登録事業者(貸主)からの解約には正当事由が必要であり、通常の賃貸借契約に係る債務不履行を理由とした契約解除が成立するか否かと同様に、ⅰ特約の内容や義務違反に照らし、債務不履行に該当すると言えるか否か、ⅱ信頼関係破壊の法理に照らし、解除が認められるか否かを勘案して、司法において判断されることになるこ
とに留意する。
④ 「賃貸借契約」及び「状況把握・生活相談サービス提供契約」を統合した契約をする場合には、状況把握・生活相談サービス提供上のトラブルが賃貸借契約に影響を及ぼすため、状況把握・生活相談サービス提供契約に関して信頼関係の破壊があれば、賃貸借契約を含めた契約全体が解除される可能性があり、入居者の居住の安定の確保が損なわれるおそれがある。一方、当該サービスに関する部分のみ速やかに解除することはできない。このため、入居者の責によらない事由により状況把握・生活相談サービスが提供されない場合における入居者の居住の安定の確保(賃貸借部分の継続)のため、第3項ただし書きを規定している。なお、状況把握・生活相談サービスの提供が終了した場合において、入居者が建物の賃貸借の継続を選択したときは、本契約を変更し、入居者は状況把握・生活相談サービス料金支払義務を負わない等とする必要がある。
(契約の締結)
第1条 貸主(以下「甲」という。)、借主(以下「乙」という。)及び状況把握・生活相談サービス提供事業者(以下「丙」という。)は、頭書(1)に記載する賃貸借の目的物(以下「本物件」という。)及び頭書(4)に記載する状況把握・生活相談サービスの内容等について、以下の条項により、高齢者の居住の安定確保に関する法律第5条第1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅で状況把握・生活相談サービスが提供されるものに係る賃貸借契約(以下「本契約」という。)を締結した。
2 甲と乙は本物件について、賃貸借契約を締結し、丙と乙は頭書(4)に記載する状況把握・生活相談サービスの内容等について、委任契約(以下「状況把握・生活相談サービス提供契約」という。)を締結するものとする。
3 建物の賃貸借が終了した場合には、状況把握・生活相談サービスの提供も終了するものとする。
4 丙と乙の状況把握・生活相談サービス提供契約のみが終了した場合には、甲と乙との間で丙と乙の状況把握・生活相談サービス提供契約と同じ内容の契約が効力を生ずるものとする。この場合において、甲が委託により当該サービスを提供するときは、頭書(4)にサービス受託事業者名を記載するものとする。
5 前項の規定により効力を生じた甲と乙の状況把握・生活相談サービス提供契約
が終了した場合には、建物の賃貸借も終了するものとする。ただし、乙の責によらない事由により甲と乙の状況把握・生活相談サービス提供契約が終了した場合に
⑤ 共同事業型の場合には、登録制度に基づく事業者の適切な事業継続の確保の観点から、入居者(借主)と状況把握・生活相談サービス提供事業者の状況把握・生活相談サービス提供契約の終了を停止条件として、登録事業者(貸主)と入居者(借主)との間で同内容の状況把握・生活相談サービス提供契約が効力を生じることとし、第1条において以下のとおり規定することが考えられる。
は、乙は、建物の賃貸借の継続又は終了のいずれかを選択することができる。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・目的物(施設)及び状況把握・生活相談サービスを契約書に定める期間(又は終身)利用できる権利を与えていること。
第2条関係
(契約期間、更新等)
第2条 契約期間は、頭書(2)に記載するとおりとする。
2 乙は、物件が完成しているなど、入居可能な状態になっていることを前提として、契約期間の始期(入居予定日)に入居することとする。ただし、契約締結後における乙の急な入院などやむを得ない理由があるときは、甲の同意を得て契約期間の始期
(入居予定日)を延期することができる。
3 甲及び乙は、協議の上、本契約を更新することができる。その際、建物の賃貸借契約を更新した場合には、状況把握・生活相談サービスの提供契約も更新することとする。
① 契約の始期(入居予定日)及び終期を明確化するとともに、登録事業者と入居者の協議により更新できる旨を記載している。なお、登録事業者は、契約の始期において、建物が完成しているなど、入居者が入居可能な状態にしておく必要がある。
② 契約期間については、入居者が高齢者であることに鑑み、入居者の状況等に応じ、2年間を超える期間を定めることが望ましい。
③ 法第7条第1項第6号ホの「入居者の入居後、国土交通省令・厚生労働省令で定める一定の期間」の起算日は、物件が完成しているなど、入居者が入居可能な状態になっていることを前提として、原則として、入居契約に定めた契約の始期(入居予定日)をいう。ただし、入居契約締結後における入居者の急な入院など入居者のやむを得ない事情により入居契約に定めた契約の始期(入居予定日)に入居することが困難になった場合には、登録事業者の同意を得て、契約期間の始期(入居予定日)を延期することが可能である。
④ 正当の事由があると認められる場合でなければ、登録事業者から契約の更新を拒否することはできない。
3 甲、乙及び丙は、協議の上、本契約を更新することができる。その際、甲と乙の建物の賃貸借契約を更新した場合には、丙と乙の状況把握・生活相談サービス
提供契約も更新することとする。
⑤ 共同事業型の場合には、第2条第3項において以下のとおり規定することが考えられる。
⑥ 終身建物賃貸借契約を採用した場合には、契約の始期(入居予定日)と「入居者(借主)の死亡に至るまで存続し、かつ、入居者(借主)が死亡した時に終了する」旨を契約書に明記する必要がある。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・契約期間が明確に定められていること。その際、契約の終期を「死亡による終了まで」とすることも考えられること。
第3条関係
(使用目的)
第3条 乙は、居住のみを目的として本物件を使用しなければならない。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・居住を目的としていること。
第4条関係
(賃料)
第4条(A毎月払い) 乙は、頭書(3)の記載に従い、賃料を甲に支払わなければならない。
2 1か月に満たない期間の賃料は、1か月を 30 日として日割計算した額とする。
3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
○Aパターン(家賃の毎月払い)
① (A)は家賃の毎月払いの場合、(B)は家賃の全部前払いの場合、(C)は家賃の一部前払いの場合に使用することとし、いずれか1つを記載することとする。
② (A)第3項、(B)第2項又は(C)第3項による当事者間の協議による賃料の改定の規定は、賃料の改定について当事者間のxxに基づき、できる限り訴訟によらず当事者間双方の意向を反映した結論に達することを目的としたものであるが、借地借家法(平成
3年法律第 90 号)第 32 条の適用を排除するものではない。
③ 賃料の改定に当たっては、登録事業者及び入居者の間において、当該改定についての協議が調う必要があり、協議が調わなければ、賃料の改定は行われず、入居者は従前の賃料の支払い義務を依然として負うこととなる。
④ 普通建物賃貸借契約の場合、賃料の増減額請求権は排除できない(ただし、一定の期間増額しない旨の特約は有効である)ため、登録事業者は将来的に減額請求((B)又は(C)の場合には減額による前払金の返還請求)をされる可能性があることに注意する必要がある。
⑤ 終身建物賃貸借を採用する場合において賃料の改定に係る特約を定める場合は、終身建物賃貸借標準契約書代5条に関する記載要領を参考に、(A)第3項、(B)第2項又は(C)第3項に替えて記載することとする。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・利用に係る費用が明確にされていること。
(賃料)
第4条(B全部前払い) 乙は、頭書(3)の記載に従い、賃料を甲に支払わなければならない。
2 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
3 頭書(3)の前払いに係る賃料は、契約期間にわたる家賃の全部として次の算式により算定して得た額とする。
1か月分の賃料 円×契約期間月数
4 甲は、前項に規定する契約期間月数が経過するまでの間に、乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
1か月分の賃料 円÷30 日×(契約期間日数-現に経過した日数)
ただし、乙の入居後3月が経過するまでの間に、乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
前項の規定により受領した前払いに係る賃料-(1か月分の賃料 円÷30 日×乙の入居日から乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき又は本契約の解除若しくは解約までの期間)
5 甲は、法第7条第1項第8号の規定に従い、前払い家賃の返還債務を負うこととなる場合に備えて以下の保全措置を講じなければならない。
〈具体的な保全措置〉
○Bパターン(家賃の全部前払い)
①~⑤ Aパターンの①~⑤と同様。
⑥ 全部前払い又は一部前払いの場合には、その算定の基礎、登録事業者が返還債務を負うこととなる場合における当該返還債務の金額の算定方法、必要な保全措置が明示されている必要がある。
⑦ 第4項について、普通建物賃貸借契約の場合には、終身建物賃貸借契約とは異なり、入居者が死亡した場合には相続が発生するため、単に「乙が死亡し、契約が終了したとき」とするのではなく、「乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき」と明確に規定している。
⑧ 終身建物賃貸借契約を採用した場合における「想定居住月数」は、入居者の余命、心身の状況等を勘案して適正に決定することとする。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・利用に係る費用が明確にされていること。
・前払いの場合には、その算定の基礎、登録事業者が返還債務を負うこととなる場合における当該返還債務の金額の算定方法、必要な保全措置が明示されていること。
(賃料)
第4条(C一部前払い) 乙は、頭書(3)の記載に従い、賃料を甲に支払わなければならない。
2 1か月に満たない期間の賃料は、1か月を 30 日として日割計算した額とする。
3 甲及び乙は、次の各号の一に該当する場合には、協議の上、賃料を改定することができる。
一 土地又は建物に対する租税その他の負担の増減により賃料が不相当となった場合
二 土地又は建物の価格の上昇又は低下その他の経済事情の変動により賃料が不相当となった場合
三 近傍同種の建物の賃料に比較して賃料が不相当となった場合
4 頭書(3)の前払いに係る賃料は、契約期間にわたる家賃の一部として次の算式により算定して得た額とする。
1か月分の賃料の一部 円×契約期間月数
5 甲は、前項に規定する契約期間月数が経過するまでの間に、乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
1か月分の賃料の一部 円÷30 日×(契約期間日数-現に経過した日数)
ただし、乙の入居後3月が経過するまでの間に、乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞
なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
前項の規定により受領した前払いに係る賃料-(1か月分の賃料の一部
円÷
30 日×乙の入居日から乙が死亡し、乙の相続人との間でも契約が終了したとき又
は本契約の解除若しくは解約までの期間)
6 甲は、法第7条第1項第8号の規定に従い、前払い家賃の返還債務を負うこととなる場合に備えて以下の保全措置を講じなければならない。
〈具体的な保全措置〉
○Cパターン(家賃の一部前払い)
①~⑤ Aパターンの①~⑤と同様。
⑥~⑧ Bパターンの⑥~⑧と同様。
⑨ 家賃の一部前払いについて、本参考契約書では、1か月分の賃料の一部を前払いすることを想定し、「1か月分の賃料の一部」と記載している。契約期間月数の一部の期間に相当する額を前払いする場合等においても、その考え方を算定方法において明確にする必要がある。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・利用に係る費用が明確にされていること。
・前払いの場合には、その算定の基礎、登録事業者が返還債務を負うこととなる場合における当該返還債務の金額の算定方法、必要な保全措置が明示されていること。
第5条関係
(共益費)
第5条 乙は、階段、廊下等の共用部分の維持管理に必要な光熱費、上下水道使用料、清掃費等(以下この条において「維持管理費」という。)に充てるため、共益費を甲に支払うものとする。
2 前項の共益費は、頭書(3)の記載に従い、支払わなければならない。
3 1か月に満たない期間の共益費は、1か月を 30 日として日割計算した額とする。
4 甲及び乙は、維持管理費の増減により共益費が不相当となったときは、協議の上、共益費を改定することができる。
① 共益費の定義及び共益費を徴収できることを明らかにしている。共益費は、賃貸住宅の共用部分の維持管理に必要な費用として入居者(借主)が登録事業者(貸主)に支払うものであり、状況把握・生活相談サービスに関係する費用を計上してはならない。
第6条関係
(敷金)
第6x xは、本契約から生じる債務の担保として、頭書(3)に記載する敷金を甲に交付するものとする。
2 甲は、乙が本契約から生じる債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、乙は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって当該債務の弁済に充てることを請求することができない。
3 甲は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、敷金の全額を乙に返還しなければならない。ただし、本物件の明渡し時に、賃料及び共益費の滞納、第 16 条に規定する原状回復に要する費用の未払いその他の本契約(建物の賃貸借に係る部分に限る。)から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には、甲は、当該債務の額を敷金から差し引いた額を返還するものとする。
4 前項ただし書の場合には、甲は、敷金から差し引く債務の額の内訳を乙に明示しな
ければならない。
① 敷金は、賃貸借契約に係るすべての債務の担保であり、賃料債務だけでなく、原状回復債務、残置物の処分費用に係る債務等の担保としての機能もある。(平成 29 年民法改正で、敷金について「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。」という定義が規定された(民法第 622 条の 2 第 1 項)。)したがって、賃料の全部前払いをする場合にも、賃料債務以外の債務の担保の機能については他の場合と同様に必要となると考えられる。
② 敷金から債務の額を差し引く場合には、登録事業者(貸主)は、差し引く債務の額の内訳を入居者(借主)に明示する必要がある。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・登録事業者が、敷金並びに家賃等及び家賃等の前払金以外に金銭を受領する内容となっていないこと。
③ これまでの高齢者向け賃貸住宅や有料老人ホームにおいては、入居時に事業者(貸主)が権利金、一時金等様々な名目で金銭を受領し、退去時に事業者(貸主)の返還義務が生じなかったり、返還額が不当に少額であったりする等のトラブルが生じていたところ。
このため、サービス付き高齢者向け住宅事業の登録に当たって、法第7条第1項第6号ハに基づき、入居契約に関し、「家賃等」以外に受領可能な金銭を、
・入居者(借主)に債務不履行がなければ返還される「敷金」
・算定の基礎と返還債務の金額の算定方法が明示された「家賃等の前払金」に限ることとしている。
この点において、「敷金」を受領すること自体は法に定める登録の基準に適合するものの、敷金のうち、あらかじめ一定額を退去時修繕費に充当する旨(定額精算)の契約については、
・入居者(借主)の原状回復義務に係る債務不履行の有無にかかわらず、一定額が返還されない
・「退去時修繕費」を充てる復旧が通常の使用に伴い生じた損耗の範囲内か否かを含
め、返還されない「退去時修繕費」の金額の算定方法が明らかではないことから、法に定める登録の基準に適合しないこととなる。
第7条関係
(状況把握・生活相談サービスの内容、料金等)
第7条(A毎月払い) 甲は、乙に対し、乙が安全かつ安心して主体的に生活できる住まいの充実を図ることができるよう、状況把握・生活相談サービスを提供し、乙は、状況把握・生活相談サービスの提供の対価として状況把握・生活相談サービス料金を甲に支払うこととする。
2 甲は、乙に対し、頭書(4)の状況把握・生活相談サービスを提供する。
3 乙は、頭書(4)の記載に従い、状況把握・生活相談サービス料金を甲に支払わなければならない。
4 1か月に満たない期間の状況把握・生活相談サービス料金は、1か月を 30 日として日割計算した額とする。
5 甲及び乙は、消費者物価指数、雇用情勢その他の経済事情の変動により状況把握・生活相談サービス料金が不相当となった場合には、協議の上、状況把握・生活相談サービス料金を変更することができる。
6 甲及び状況把握・生活相談サービスを提供する者は、状況把握・生活相談サービスを提供する上で知り得た乙及びその家族等に関する秘密及び個人情報については、個人情報保護法を遵守してその保護に努め、乙又は第三者の生命、身体等に危険がある場合その他の正当な理由がある場合又は乙の事前の同意がある場合を除いて、契約中及び契約終了後において、第三者に漏らさないこととする。
7 甲は、状況把握・生活相談サービスの提供に伴って、甲の責めに帰するべき事由により乙の生命、身体又は財産に損害を及ぼした場合は、乙に対してその損害を賠償する。
8 甲は、状況把握・生活相談サービスの提供に係る乙の苦情等に対し、誠実かつ迅速に対応するものとする。
○Aパターン(毎月払い)
① (A)は状況把握・生活相談サービス料金の毎月払いの場合、(B)は状況把握・生活相談サービス料金の全部前払いの場合、(C)は状況把握・生活相談サービス料金の一部前払いの場合に使用することとし、いずれか1つを記載することとする。
② 入居者の一定期間の入院等に伴う状況把握・生活相談サービス料金の考え方(割引き等)については、その状況に応じて個別に対応することが望ましい。
③ 第6項((B)第7項、(C)第9項)は、登録事業者及び状況把握・生活相談サービスを提供する者の個人情報保護義務を規定している。入居者の事前の同意については、事前同意書を作成し、以下の例のように、使用する目的、使用する者、使用する情報(氏名、
心身の状況、家族構成等)等を限定的に明示した上で同意を得ておくことが望ましい。
(具体例)
・入居者の医療上緊急の必要性がある場合に、医療機関に対し、入居者の心身の状況に関する情報を提供する。
・円滑にサービスを提供するために、介護支援専門員に対し、入居者の心身の状況に関する情報を提供する。
④ 第8項((B)第9項、(C)第 11 項)に関し、登録事業者は、状況把握・生活相談サービスに係る入居者及びその家族からの苦情の内容については、備付けの帳簿に記載し、規則第 21 条第3項に基づき、各事業年度終了後、2年間保存しなければならない。
また、入居者から相談、苦情等があった場合に迅速に対応できるよう、窓口を設置し、入居者の視点に立ち、誠意をもって対応・解決に当たることが重要である。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・状況把握・生活相談サービスの内容、料金等が明示されていること。
(状況把握・生活相談サービスの内容、料金等)
第7条(B全部前払い) 甲は、乙に対し、乙が安全かつ安心して主体的に生活できる住まいの充実を図ることができるよう、状況把握・生活相談サービスを提供し、乙は、状況把握・生活相談サービスの提供の対価として状況把握・生活相談サービス料金を甲に支払うこととする。
2 甲は、乙に対し、頭書(4)の状況把握・生活相談サービスを提供する。
3 乙は、頭書(4)の記載に従い、状況把握・生活相談サービス料金を甲に支払わなければならない。
4 頭書(4)の前払いに係る状況把握・生活相談サービス料金は、契約期間にわたる状況把握・生活相談サービス料金の全部として次の算式により算定して得た額とする。
1か月分の状況把握・生活相談サービス料金 円×契約期間月数
5 甲は、前項に規定する契約期間月数が経過するまでの間に、乙の死亡があったとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
1か月分の状況把握・生活相談サービス料金 円÷30 日×(契約期間日数-現に経過した日数)
ただし、乙の入居後3月が経過するまでの間に、乙の死亡があったとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
前項の規定により受領した前払いに係る状況把握・生活相談サービス料金-(1か月分の状況把握・生活相談サービス料金 円÷30 日×乙の入居日から乙の死亡又
は本契約の解除若しくは解約までの期間)
6 甲は、法第7条第1項第8号の規定に従い、前払い状況把握・生活相談サービス料金の返還債務を負うこととなる場合に備えて以下の保全措置を講じなければならない。
〈具体的な保全措置〉
7 甲及び状況把握・生活相談サービスを提供する者は、状況把握・生活相談サービスを提供する上で知り得た乙及びその家族等に関する秘密及び個人情報については、個人情報保護法を遵守してその保護に努め、乙又は第三者の生命、身体等に危険がある場合その他の正当な理由がある場合又は乙の事前の同意がある場合を除いて、契約中及び契約終了後において、第三者に漏らさないこととする。
8 甲は、状況把握・生活相談サービスの提供に伴って、甲の責めに帰するべき事由により乙の生命、身体又は財産に損害を及ぼした場合は、乙に対してその損害を賠償する。
9 甲は、状況把握・生活相談サービスの提供に係る乙の苦情等に対し、誠実かつ迅速
に対応するものとする。
○Bパターン(全部前払い)
①~④ Aパターン①~④と同様。
⑤ 状況把握・生活相談サービス料金の全部前払い又は一部前払いの場合には、その算定の基礎、登録事業者が返還債務を負うこととなる場合における当該返還債務の金額の算定方法、必要な保全措置が明示されている必要がある。
⑥ 状況把握・生活相談サービス料金の全部前払い又は一部前払いをした場合において、契約上の改定条項がないときは、賃料と異なり、当該料金の増減請求権がないため、入居者は、当該増減請求権を理由として前払金の返還を請求することはできないことに注意する必要がある。
⑦ 終身建物賃貸借契約を採用した場合における「想定居住月数」は、入居者の余命、心身の状況等を勘案して適正に決定することとする。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・状況把握・生活相談サービスの内容、料金等が明示されていること。
・前払いの場合には、その算定の基礎、登録事業者が返還債務を負うこととなる場合における当該返還債務の金額の算定方法、必要な保全措置が明示されていること。
(状況把握・生活相談サービスの内容、料金等)
第7条(C一部前払い) 甲は、乙に対し、乙が安全かつ安心して主体的に生活できる住まいの充実を図ることができるよう、状況把握・生活相談サービスを提供し、乙は、状況把握・生活相談サービスの提供の対価として状況把握・生活相談サービス料金を
甲に支払うこととする。
2 甲は、乙に対し、頭書(4)の状況把握・生活相談サービスを提供する。
3 乙は、頭書(4)の記載に従い、状況把握・生活相談サービス料金を甲に支払わなければならない。
4 1か月に満たない期間の状況把握・生活相談サービス料金は、1か月を 30 日として日割計算した額とする。
5 甲及び乙は、消費者物価指数、雇用情勢その他の経済事情の変動により状況把握・生活相談サービス料金が不相当となった場合には、協議の上、状況把握・生活相談サービス料金を変更することができる。
6 頭書(4)の前払いに係る状況把握・生活相談サービス料金は、契約期間にわたる状況把握・生活相談サービス料金の一部として次の算式により算定して得た額とする。
1か月分の状況把握・生活相談サービス料金の一部 円×契約期間月数
7 甲は、前項に規定する契約期間月数が経過するまでの間に、乙の死亡があったとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
1か月分の状況把握・生活相談サービス料金の一部 円÷30 日×(契約期間日数
-現に経過した日数)
ただし、乙の入居後3月が経過するまでの間に、乙の死亡があったとき又は本契約の解除若しくは解約の申入れがあったときは、遅滞なく、次の算式により算定して得た額を乙に返還しなければならない。
前項の規定により受領した前払いに係る状況把握・生活相談サービス料金-(1か月分の状況把握・生活相談サービス料金の一部 円÷30 日×乙の入居日から乙の死亡又は本契約の解除若しくは解約までの期間)
8 甲は、法第7条第1項第8号の規定に従い、前払い状況把握・生活相談サービス料金の返還債務を負うこととなる場合に備えて以下の保全措置を講じなければならない。
〈具体的な保全措置〉
9 甲及び状況把握・生活相談サービスを提供する者は、状況把握・生活相談サービスを提供する上で知り得た乙及びその家族等に関する秘密及び個人情報については、個人情報保護法を遵守してその保護に努め、乙又は第三者の生命、身体等に危険がある場合その他の正当な理由がある場合又は乙の事前の同意がある場合を除いて、契約中及び契約終了後において、第三者に漏らさないこととする。
10 甲は、状況把握・生活相談サービスの提供に伴って、甲の責めに帰するべき事由により乙の生命、身体又は財産に損害を及ぼした場合は、乙に対してその損害を賠償する。
11 甲は、状況把握・生活相談サービスの提供に係る乙の苦情等に対し、誠実かつ迅速
に対応するものとする。
○Cパターン(一部前払い)
①~④ Aパターン①~④と同様。
⑤~⑦ Bパターン⑤~⑦と同様。
⑧ 状況把握・生活相談サービス料金の一部前払いについて、本参考契約書では、1か月分の状況把握・生活相談サービス料金の一部を前払いすることを想定し、「1か月分の状況把握・生活相談サービス料金の一部」と記載している。契約期間月数の一部の期間に相当する額を前払いする場合等においても、その考え方を算定方法において明確にする必要がある。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・状況把握・生活相談サービスの内容、料金等が明示されていること。
・前払いの場合には、その算定の基礎、登録事業者が返還債務を負うこととなる場合における当該返還債務の金額の算定方法、必要な保全措置が明示されていること。
第8条関係
(反社会的勢力の排除)
第8条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
二 自らの役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。四 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
イ 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
ロ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
① 暴力団等の反社会的勢力を排除するために、自ら又は自らの役員が反社会的勢力でないこと(第一号、第二号)、反社会的勢力に協力していないこと(第三号)、自ら又は第三者を利用して、相手方に対して暴力を用いる行為等をしないこと(第四号)をそれぞれ相手方に対して確約させることとしている。
なお、サービス付き高齢者向け住宅事業の登録に当たって、登録事業者が暴力団員等に該当するときは登録を拒否され、また、登録事業者が暴力団員等に該当するに至ったときは登録を取り消されることとなる。
第9条関係
(禁止又は制限される行為)
第9条 乙は、本物件の全部又は一部につき、賃借権を譲渡し、又は転貸してはならない。
2 乙は、甲の書面による承諾を得ることなく、本物件の増築、改築、移転、改造若しくは模様替又は本物件の敷地内における工作物の設置を行ってはならない。
3 乙は、本物件の使用に当たり、別表第1に掲げる行為を行ってはならない。
4 乙は、本物件の使用に当たり、甲の書面による承諾を得ることなく、別表第2に掲げる行為を行ってはならない。
5 乙は、本物件の使用に当たり、別表第3に掲げる行為を行う場合には、甲に通知し
なければならない。
① 入居者が禁止又は制限される行為の範囲を具体的に明らかにしている。
② 自ら居住するため住宅を必要とする高齢者が入居者となるものであるため、終身建物賃貸借標準契約書と同様に、賃借権の譲渡又は転貸を禁止している。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・入居者に過度な負担とならない内容であること。
第 10 条関係
(契約期間中の修繕)
第 10 条 甲は、乙が本物件を使用するために必要な修繕を行わなければならない。この場合の修繕に要する費用については、乙の責めに帰すべき事由により必要となったものは乙が負担し、その他のものは、甲が負担するものとする。
2 前項の規定に基づき甲が修繕を行う場合は、甲は、あらかじめ、その旨を乙に通知しなければならない。この場合において、乙は、正当な理由がある場合を除き、当該
3 乙は、本物件内に修繕を要する箇所を発見したときは、甲にその旨を通知し修繕の必要について協議するものとする。
4 前項の規定による通知が行われた場合において、修繕の必要が認められるにもかかわらず、甲が正当な理由なく修繕を実施しないときは、乙は自ら修繕を行うことができる。この場合の修繕に要する費用については、第1項に準ずるものとする。5 乙は、甲の承諾を得ることなく、別表第4に掲げる修繕を自らの負担において行うこと
ができる。
① 賃貸借の目的物に係る修繕は、全て貸主が実施の義務を負うこととし、借主の帰責事由による修繕については、費用負担を借主に求めることとしている。民法上は、賃借人の帰責事由による修繕は、賃貸人の修繕義務の範囲から除いている(民法第 606 条第 1 項ただし書)が、建物の管理を行う上では、修繕の実施主体を全て貸主とし、借主の帰責事由による修繕について、費用負担を借主に求める方が合理的であると考えられる。このため、修繕は原則として貸主が実施主体となり費用を負担することとし、修繕の原因が借主
の帰責事由によるものである場合には、貸主が修繕を実施し、借主が費用を負担することとしている。この場合に借主が負担する費用は、借主の帰責事由による債務不履行に基づく損害賠償の意味を持つものである。
② 修繕の中には、安価な費用で実施でき、建物の損傷を招くなどの不利益を登録事業者にもたらすものではなく、入居者にとっても登録事業者の修繕を待っていてはかえって不都合が生じるようなものもあると想定されることから、別表第4に掲げる費用が軽微な修繕については、入居者が自らの負担で行うことができることとしている。なお、別表第
4にあらかじめ記載している修繕については、当事者間での合意により、変更、追加又は削除できることとしている。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・入居者に過度な負担とならない内容であること。
第 11 条関係
(契約の解除)
第 11 条 甲は、乙が次に掲げる義務に違反した場合において、甲が相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されないときは、本契約を解除することができる。
一 第4条第1項に規定する賃料支払義務 二 第5条第2項に規定する共益費支払義務
三 第7条第3項に規定する状況把握・生活相談サービス料金支払義務四 前条第1項後段に規定する乙の費用負担義務
2 甲は、乙が次に掲げる義務に違反した場合において、甲が相当の期間を定めて当該義務の履行を催告したにもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されずに当該義務違反により本契約を継続することが困難であると認められるに至ったときは、本契約を解除することができる。
一 第3条に規定する本物件の使用目的遵守義務
二 第9条各項に規定する義務(同条第3項に規定する義務のうち、別表第 1 第六号から第八号までに掲げる行為に係るものを除く。)
三 その他本契約書に規定する乙の義務
3 甲は、乙が年齢を偽って入居資格を有すると誤認させるなどの不正の行為によって本物件に入居したときは、本契約を解除することができる。
4 甲又は乙の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告も要せずして、本契約を解除することができる。
一 第8条第1項各号の確約に反する事実が判明した場合
二 契約締結後に自ら又は役員が反社会的勢力に該当することとなった場合
5 甲は、乙が第8条第2項に規定する義務に違反した場合又は別表第 1 第六号から第
八号までに掲げる行為を行った場合は、何らの催告も要せずして、本契約を解除する
ことができる。
① 登録事業者からの契約解除事由を具体的に明らかにしている。
② 第1項中の「相当の期間」とは、入居者が同項各号に掲げる義務を履行するに当たり、通常必要とされる期間をいう。
③ サービス付き高齢者向け住宅の入居資格は、規則第3条において、60 歳以上又は要介護認定若しくは要支援認定を受けている 60 歳未満の者で、ⅰ)同居する者がない者、ⅱ)
同居する者が配偶者、60 歳以上の親族、要介護認定若しくは要支援認定を受けている 60歳未満の親族又は特別の事情により同居させることが必要であると都道府県知事が認める者のいずれかに該当する者とされており、第3項については、終身建物賃貸借標準契約書と同様に入居者が年齢等の入居資格を偽って入居した場合の契約解除を規定している。
④ 第8条各号の確約に反する事実が判明した場合、及び契約締結後に自ら又は自らの役員が反社会的勢力に該当することとなった場合には、催告なしで契約を解除することができることとしている。
⑤ 第9条第 3 項に規定する禁止行為のうち、別表第1第六号から第八号に掲げる行為を行った場合、催告なしで契約を解除することができることとしている。なお、平成 29 年民法改正で、契約総則において、債務者の履行拒絶の明確な意思表示のある場合や、催告をしても契約目的達成に足りる履行の見込みがないことが明らかな場合等に無催告解除ができることが規定された(民法第 542 条第 1 項)。
⑥ 入居者の病院への入院や心身の状況の変化により、居住部分の変更や契約の解除を行うことはできない。ただし、当該理由が生じた後に、入居者及び登録事業者が居住部分の変更又は入居契約の解約について合意した場合は、この限りでない。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・登録事業者が一方的に契約解除できる内容となっていないこと。
第 12 条関係
(乙からの解約)
第 12 条 乙は、甲に対して少なくとも 30 日前に解約の申入れを行うことにより、本契約を解約することができる。
2 前項の規定にかかわらず、乙は、解約申入れの日から 30 日分の賃料及び状況把握・生活相談サービス料金(本契約の解約後の賃料相当額及び状況把握・生活相談サービス料金相当額を含む。)を甲に支払うことにより、解約申入れの日から起算して 30 日
を経過する日までの間、随時に本契約を解約することができる。
① 入居者に有利な特約の効力は否定されないため、通常の建物賃貸借契約において一般化している入居者の中途解約権(特別な事情を要せず、30 日前までに解約の申入れを行
うか、30 日分の賃料及び状況把握・生活相談サービス料金を支払うことにより、入居者から解約できる権利)を規定している。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・入居者の居住の安定が確保された内容となっていること。
第 13 条関係
(一部滅失等による賃料の減額等)
第 13 条 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、それが乙の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用できなくなった部分の割合に応じて、減額されるものとする。この場合において、甲及び乙は、減額の程度、期間その他必要な事項について協議するものとする。
2 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、残存する部分のみでは乙が賃借をした目的を達することができないときは、乙は、本契約を
解除することができる。
① 本物件の一部が滅失等により使用できなくなった場合に、それが借主の帰責事由によるものでないときは、使用不可の部分の割合に応じて賃料が減額されるものとし、その内容は貸主と借主の間で協議することとしている。平成 29 年民法改正で、賃借物の一部が賃借人の帰責事由によらずに滅失等をした場合の賃料の減額について、従来は「請求することができる」とされていたところ、「(賃料は)減額される」と当然に減額するものとされた(民法第 611 条第 1 項)。
ただし、一部滅失の程度や減額割合については、判例等の蓄積による明確な基準がないことから、紛争防止の観点からも、一部滅失があった場合は、借主が貸主に通知し、賃料について協議し、適正な減額割合や減額期間、減額の方法(賃料設定は変えずに一定の期間一部免除とするのか、賃料設定そのものの変更とするのか)等を合意の上決定することが望ましいと考えられる。
第 14 条関係
(契約の終了)
第 14 条 本契約は、本物件の全部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合には、これによって終了する。
① 本物件の全部が滅失等により使用できなくなった場合に契約が終了することとしている。平成 29 年民法改正で、賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をする
ことができなくなった場合には、賃貸借が終了することが規定された(民法第 616 条の 2)。
第 16 条関係
(明渡し時の原状回復)
第 16 条 乙は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化を除き、本物件を原状回復しなければならない。ただし、乙の責めに帰することができない事由により生じたものについては、原状回復を要しない。
2 甲及び乙は、本物件の明渡し時において、契約時に特約を定めた場合は当該特約を含め、別表第 5 の規定に基づき乙が行う原状回復の内容及び方法について協議するもの
とする。
① 入居者は、通常の使用に伴い生じた損耗及び経年変化を除き、原則として原状回復を行わなければならないこととするが、借主の帰責事由によらない損耗については、原状回復は不要としている。平成 29 年民法改正において、賃借人の原状回復義務が規定された(民
法第 621 条)が判例法理を明文化したものであり、実質的な変更はない。
なお、入居者の故意・過失、善管注意義務違反等により生じた損耗については、入居者に原状回復義務が発生することとなるが、その際の入居者が負担すべき費用については、修繕等の費用の全額を入居者が当然に負担することにはならず、経年変化・通常損耗が必ず前提となっていることから、建物や設備等の経過年数を考慮し、年数が多いほど負担割合を減少させることとするのが適当と考えられる(「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」平成 23 年8月(以下「原状回復ガイドライン」という。)12 ページ参照)。
② 退去時の原状回復費用に関するトラブルを未然に防止するため、本物件を明け渡す時には、別表第 5 に基づき、契約時に例外的に特約を定めた場合はその特約を含めて、借主が実施する原状回復の内容及び方法について当事者間で協議することとしている。
なお、契約時の特約についても「協議に含める」としているのは、特約には様々な内容や種類が考えられ、特約に該当する部分の特定、特約に記載がない事項についての「原状回復ガイドライン」における考え方への当てはめ、物件の損耗等が通常損耗か否かの判断等において、たとえ、特約があったとしても必要なものであると考えられるためである。
また、明渡し時においては改めて原状回復工事を実施する際の評価や経過年数を考慮し、負担割合を明記した精算明細書(「原状回復ガイドライン」別表4(28 ページ参照))を作成し、双方合意することが望ましい。
○ 原状回復にかかるトラブルを未然に防止するためには、契約時に登録事業者と入居者の双方が原状回復に関する条件について合意することが重要であるため、原状回復の条件を別表第 5 として掲げている。
○ 別表第 5「Ⅰ-3 原状回復工事施工目安単価」への記載については、例えば、「入居者の過失等による修繕が発生することが多い箇所」について、登録事業者及び入居者の両者が、退去時の原状回復費用に関するトラブルを未然に防止するため、目安単価を確認するということが想定される。
○ 別表第 5「Ⅰ-3 原状回復工事施工目安単価」は、あくまでも目安として、把握可能な
「原状回復工事施工目安単価」について、可能な限り記述することが望まれる。
○ 例外的に借主の負担とする特約を定めるためには、以下の 3 つが要件となる。
・ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること。
・ 入居者が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
・ 入居者が特約による義務負担の意思表示をしていること
(「原状回復ガイドライン」7 ページを参照されたい。)
○ 原状回復に関する特約事項が有効と判断されるためには、「賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約
(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要である」という考え方が最高裁判所によって示されている(最判平成 17 年 12 月 16 日集民第 218 号 1239 頁)。
③ 登録事業者は、入居者が高齢者であることに鑑み、入居者が死亡し、入居者の相続人との間でも契約が終了した場合における明渡し時の対応や残置物の処分の方法等を想定しておくことが望ましい。
④ 明渡し時の原状回復については、
(1) 物件の状況を確認し、契約に基づいて、入居者の負担割合(修繕する範囲、修繕する方法等)、経過年数の考慮の有無を確定し、見積費用の確認・合意を行い、入居者が負担すべき原状回復義務の内容を確定させる
(2) 合意した内容に従って原状回復工事を実施することにより行われることが基本となる。
(1) 物件の状況及び入居者の原状回復義務の内容の確定
「原状回復ガイドライン」は、原状回復をめぐるトラブルの大きな原因として、入居時及び退去時における損耗等の有無など、物件の確認が不十分であることをあげ、
・事実関係を明確にし、トラブルを未然に防止するため、入居時及び退去時にチェックリストを作成し、部位ごとの損耗等の状況や原状回復の内容について、当事者が立会いのうえ十分に確認することが必要
・この場合、損耗等の箇所、程度についてよりわかりやすく、当事者間の認識の差を少なくするためには、具体的な損耗の箇所や程度といった物件の状況を平面図に記入したり、写真を撮るなどのビジュアルな手段を併せて活用することも重要
であるとしている。
一方、サービス付き高齢者向け住宅をはじめとする高齢者向け住宅においては、入居者本人については高齢であることから入院、入所、死亡等により退去することがあり、また、連帯保証人、緊急連絡先となる者等については近隣に居住していない場合もあるため、退去時に、原状回復に係る物件の確認のための入居者やその相続人、連帯保証人、緊急連絡先となる者等(以下「入居者等」という。)の立会いが困難な場合が想定される。
このため、「原状回復ガイドライン」を参考に、
1)入居時において、あらかじめ原状回復の条件等を定め、チェックリストを作成し、当事者(登録事業者と入居者等)が立会いのうえ、部位ごとの損耗等の状況について、平面図への記入、写真撮影等により確認しておくとともに、
2)退去時において、
ⅰ)原則として、当事者(登録事業者と入居者等)が立会いのうえ、部位ごとの損耗等の状況や原状回復の内容を確認する
ⅱ)入居者等から立会いが困難であると申し出があった場合には、登録事業者が撮影した写真を郵送等することにより、当事者の立会いに準じた方式で入居者等と登録事業者の双方が十分に物件の確認ができるようにしておく
ⅲ)入居者等から写真等による確認も不要であると申し出があった場合には、登録事業者から入居者等に対し、期限を定めて原状回復の内容(見積費用を含む。)の確認を求める等、後のトラブルが生じないよう十分に合意を得ておく
こととし、契約締結時に、登録事業者から入居者等に対し、あらかじめ十分に説明し、入居者等の理解を得ておくことが重要である。
なお、入居者が死亡し、その相続人の有無等が不明である場合に備え、あらかじめ、契約書等において、連帯保証人、緊急連絡先となる者等を定めておくとともに、その役割(例:退去時の立会い)を明らかにしておくことも重要である。
(2) 原状回復工事の実施
(1)で確定した入居者の原状回復義務の履行については、
ⅰ)原則として、入居者等自ら又は入居者等が委託する者が原状回復工事を実施する
ⅱ)入居者等からⅰ)による原状回復工事の実施が困難であると申し出があった場合には、登録事業者が入居者等に代わって実施し、敷金から当該工事に係る費用を差し引いて入居者等に返還する
こととし、(1)と同様に、契約締結時に、登録事業者から入居者等に対し、あらかじめ十分に説明し、入居者等の理解を得ておくことが重要である。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・入居者に過度な負担とならない内容であること。
第 17 条関係
(残置物の引取り等)
第 17 条 乙は、本契約が終了した場合において乙が残置物を引き取ることができない又は困難であるときに備えて、あらかじめ、当該残置物の引取人(以下この条において「残置物引取人」という。)を定めることができる。
2 残置物引取人に支障が生じた場合にあっては、乙は、甲に対し、直ちにその旨を通知しなければならない。この場合においては、乙は、甲の承認を得て、新たな残置物引取人を定めることができる。
3 第1項の規定により残置物引取人を定めた場合にあっては、甲は、本契約が終了した後遅滞なく、乙又は残置物引取人に本契約が終了した旨を連絡するものとする。
4 乙又は残置物引取人は、本契約の終了から1月を経過する日までに、当該残置物を引き取らなければならない。
5 甲は、乙又は残置物引取人が、本契約の終了から1月を経過する日までに当該残置物を引き取らない場合にあっては、当該残置物を乙又は残置物引取人に引き渡すことができるものとする。この場合においては、当該引渡しの費用を敷金から差し引くことができる。
6 甲は、甲の責めに帰すべき事由によらないで前項の残置物の引渡しをなし得ない場合又は乙又は残置物引取人が当該残置物を受領しない場合若しくは受領し得ない場合には、乙又は残置物引取人が当該残置物の所有権を放棄したものとみなし、当該残置物を処分することができるものとする。この場合においては、当該処分の費用を敷金から差し引くことができる。
7 甲は、乙が残置物引取人を定めない場合にあっては、本契約の終了から1月を経過したときは、乙が当該残置物の所有権を放棄したものとみなし、当該残置物を処分することができるものとする。この場合においては、当該処分の費用を敷金から差し引くことができる。
① 本条は、残置物に係る原状回復の内容及び方法について定めたものである。
② 入居者が死亡した場合において、入居者に相続人があることが明らかでないときは、相続財産は法人となり(民法第 951 条)、登録事業者が残置物の処分を行うためには、民法
第 952 条に基づき、家庭裁判所に申し立て、選任された相続財産の管理人に対し、当該残置物を引き渡す必要が生じうる。
また、入居者が死亡した場合において、入居者に複数の相続人があるときは、いずれの者に残置物を引き渡すかについて争いが生じる可能性がある。
このような懸念を解消するため、入居者が高齢者であることに鑑み、入居者は、あらかじめ残置物引取人を定めることができることとする。
③ 残置物引取人を定めるかどうかは、入居者の意思によるものであり、定めない場合には
入居できないという性格のものではない。
④ 第6項又は第7項については、あらかじめ入居者が残置物に関する所有権を放棄することを契約において合意していることをもって、登録事業者は、当該残置物を処分し、その費用を敷金から差し引くことができることとしている。
ただし、現金、預金、貴重品等高価な物品については、土地所有権の放棄が認められなかった判例を考慮すれば、当該規定があることをもって所有権が放棄されたとまでは確定されないことに留意する必要がある。
なお、入居者が死亡し、入居者に相続人があることが明らかでない場合において、残置物が現金、預金、貴重品等高価な物品であるとき等における登録事業者の対応としては、
・自治体の福祉部局へ相談すること
・自ら相続人を探すこと
・上記の財産を供託すること
・②のとおり、家庭裁判所に申し立て、選任された相続財産の管理人に対し、上記の財産を引き渡すこと
が考えられる。
⑤ 残置物引取人と入居者の相続人との関係を明らかにするため、例えば、入居者があらかじめ遺言を作成したり、あらかじめ入居者と残置物引取人との間で、残置物に関して死因贈与契約を結んでおく等の対応をしておくことが考えられる。
⑥ 頭書に、残置物引取人の氏名、住所、入居者との関係等を記載し、署名してもらうことが望ましい。
第 18 条関係
(立入り)
第 18 条 甲は、本物件の防火、本物件の構造の保全その他の本物件の管理上特に必要があるときは、あらかじめ乙の承諾を得て、本物件内に立ち入ることができる。
2 乙は、正当な理由がある場合を除き、前項の規定に基づく甲の立入りを拒否することはできない。
3 本契約終了後において本物件を賃借しようとする者又は本物件を譲り受けようとする者が下見をするときは、甲及び下見をする者は、あらかじめ乙の承諾を得て、本物件内に立ち入ることができる。
4 甲は、火災による延焼を防止する必要がある場合、災害その他により乙又は第三者の生命又は財産に重大な損害が生じるおそれがある場合その他の緊急の必要がある場合においては、あらかじめ乙の承諾を得ることなく、本物件に立ち入ることができる。この場合において、甲は乙の不在時に立ち入ったときは、立入り後その旨を乙に
通知しなければならない。
① 自ら居住するため住宅を必要とする高齢者が入居していることから、第4項において、
登録事業者が入居者の承諾を事前に得ることなく賃貸住宅に立ち入ることができる要件を具体的に記載している。
【利用権契約とする場合の留意事項等】
・入居者に過度な負担とならない内容であること。
第 19 条関係
(連帯保証人)
第 19 条 連帯保証人(以下「丙」という。)は、乙と連帯して、本契約から生じる乙の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。
2 前項の丙の負担は、頭書(7)及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。
3 丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに、確定するものとする。
4 丙の請求があったときは、甲は、丙に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。
○連帯保証人を定める場合
① 賃貸借契約上の借主の債務を担保するため、人的保証として連帯保証人を立てることとしている。また、賃貸借契約更新があった場合にも特段の事情が無い限り連帯保証契約の効力が及ぶと解されている(最判平成 9 年 11 月 13 日集民第 186 号 105 頁)ため、保証契約の効果は更新後も及ぶこととしている。この点に関して、紛争防止の観点から、賃貸借契約が更新された場合には、貸主は連帯保証人への通知に努めることが望ましいと考えられる。
② 連帯保証人が負担する限度額を極度額として定め、頭書及び記名押印欄に記載することにより、契約の一覧性を確保しつつ、連帯保証人が極度額を契約時に認識できるようにしている。平成 29 年民法改正で、個人の保証人は極度額を限度として責任を負うこと(民
法第 465 条の 2 第 1 項)、また極度額の定めのない保証契約は無効となること(民法第
465 条の 2 第 2 項)が規定された。極度額とは保証の限度額をいう。
③ 連帯保証人が負担する債務の元本は、借主又は連帯保証人が死亡したときに確定することとしている。平成 29 年民法改正で、①債権者が保証人の財産について金銭の支払を目的とする債権について強制執行又は担保権の実行を申し立て、かつ、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったとき、②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき、③主たる債務者又は保証人が死亡したとき、が元本確定事由となることが規定された(民法第 465 条の 4 第 1 項)。契約書においても、元本確定事由があることを明確化するため、確認的に記載している。③のみ規定しているが、①、②の事由を排除する趣旨ではない。なお、主たる債務者が死亡したときに元本が確定するということは、基本的な考え方としては、保証人は、借主の死亡時までに生じている債務についてのみ(極度額を限度として)責任を負い、死亡後に生じた債務については責任を負わないということになり、例えば借主死亡後の賃料については、保証人の責任範囲(元本)に含まれないと考えられる。ただ
し、具体的な保証人の責任範囲は事案や解釈により異なり得るため、平成 29 年民法改正後の裁判例の蓄積が待たれる。
また、連帯保証人の死亡や破産等があった場合には、借主は新たな連帯保証人に保証を委託するといった特約を結ぶことも考えられる。
④ 連帯保証人の請求があった場合、貸主は賃料等の支払状況や滞納額等に関する情報提供義務があることを定めている。平成 29 年民法改正で、保証人の請求があった場合に、債権者に対し債務の額や履行状況等についての情報提供義務が課されることが規定された(民法第 458 条の 2)。貸主からの情報提供は、書面又は電子メール等の電磁的記録によって行うことが望ましいと考えられる。なお、借主が継続的に支払いを怠っているにもかかわらず、貸主が保証人に通知せず、いたずらに契約を更新させている場合には保証債務の履行請求が信義則に反し否定されることがあり得るため(前掲:最判平成 9 年 11 月
13 日集民第 186 号 105 頁)、保証人の請求がない場合でも、保証人へ積極的に情報提供することが望ましいと考えられる。この点に関連し、保証契約締結時に借主の滞納が○カ月続いた場合には貸主は保証人に通知するといった特約を結ぶことも考えられる。
第 19 条関係
(家賃債務保証業者の提供する保証)
第 19 条 家賃債務保証業者の提供する保証を利用する場合には、家賃債務保証業者が提供する保証の内容については別に定めるところによるものとし、甲及び乙は、本契約と同時に当該保証を利用するために必要な手続を取らなければならない。
○家賃債務保証業者の提供する保証を利用する場合
賃貸借契約上の借主の債務を担保するため、機関保証として家賃債務保証業者の提供する保証を利用することとしている。また、当該保証の内容については、本契約とは別途の契約等によることとし、貸主及び借主は、本契約における契約期間の始期から当該保証が利用できるようにするため、必要な手続を取らなければならないこととしている。
また、家賃債務保証業者の提供する保証を利用する場合、借主の安否確認等への対応については、頭書(5)に記載する「緊急時の連絡先」を活用することが考えられる。
第 20 条関係
(緊急連絡先の指定)
第 20 条 乙は、乙の病気、死亡等に備えて、甲からの連絡、相談等に応じ、適切な対応を行う者として、緊急連絡先となる者を定めることができる。
2 緊急連絡先となる者に支障が生じた場合にあっては、乙は、甲に対し、直ちにその
旨を通知しなければならない。この場合においては、乙は、甲の承認を得て、新たな
緊急連絡先となる者を定めることができる。
① 本条は、入居者が高齢者であることに鑑み、入居者は、病気、死亡等に備えて、登録事業者からの連絡、相談等に応じ、適切な対応を行う者として、緊急連絡先となる者を定めることができることを規定している。
② 緊急連絡先となる者を定めるかどうかは、入居者の意思によるものであり、定めない場合には入居できないという性格のものではない。
③ 頭書に、緊急連絡先となる者の氏名、住所、入居者との関係等を記載し、署名してもらうことが望ましい。