◆ IP電話、ビデオ通話、メッセンジャーサービス等の普及により、国際電話の利用は低下傾向。携帯電話の国際ローミングについては、特にデータローミングについて定額 料金プランが提供されている。衛星通信については、衛星コンステレーションの実現により、衛星通信の高速化が可能となり、ブロードバンドサービスへの利用のほか、携帯電 話基地局のバックホールとしても活用されている。今後は、スマートフォン等が衛星と直接つながる衛星直接通信によるサービスが提供される予定。
資料84-2
外国政府等との協定等について
令和6年5月10日
◆ 電気通信事業法第40条は、電気通信事業者が電気通信業務に関し、外国政府等との間に重要な事項を内容とする協定又は契約を締結、変更又は廃止しようとする場合には、総務大臣の認可を要することを定めている。具体的な認可対象については、電気通信事業法施行 規則第27条において、電話等の役務の提供に関する提携を内容とする協定又は契約の一部の事項と、本邦に陸揚げされる海底ケーブルの建設保 守に関する協定又は契約とされている。
【規定の概要】
⮚ 電気通信事業法第40条は、電気通信事業者が電気通信業務に関し、外国政府等との間に重要な事項を内容とする協定又は契約を締 結、変更又は廃止しようとする場合には、総務大臣の認可を要することを定めている。
⮚ これは、外国政府や外国企業との間で締結する協定等は、電気通信事業者が国際電話サービス等を提供する元となる契約であり、その内容如何が我が国の利用者の利益に重大な影響を与えかねないものであるため、認可の対象とされているもの。
⮚ 具体的な認可対象は、電気通信事業法施行規則第27条において定められており、過去の規制緩和により、データ伝送サービス、専用サービス、国際電話の付随的サービスに係る協定等は認可の対象外とされ、現状では以下の協定等が認可対象。
(1)電話等の役務(音声を伝送交換するための電気通信設備を用いてその内容を蓄積することなく通信を行うもの。交換取扱人を介した通話その他付随的なものを除く)の提供に関する提携を内容とする協定又は契約のうち次の事項
・電気通信回線を設定し、変更し、又は廃止しようとするときは、その区間並びにこれにより取り扱う電気通信役務の種類及び対地
・電話等の役務の提供に関し、当事者が取得し、又は負担すべき金額。ただし、金額が増加しないことが明らかなとき等を除く(金額が増加しないことが明らかな協定等の変更については、報告規則に基づき、年度末に総務大臣に報告することが求められる)。
・電話等の役務の提供に関し、取り扱う通信量の割合
→ 具体的には、国際電話、携帯電話の国際ローミング、衛星通信 等の提供に関する提携を内容とする協定等が認可対象
(2)本邦に陸揚げされる海底ケーブルの建設保守に関する協定又は契約(出資比率のみを変更するもの、破棄し得ない使用権の取得
及び譲渡に関するもの並びにケーブル保守船の利用に関するものを除く。)
(参考) 電気通信事業法40条に基づく、国際電話、携帯電話の国際ローミング、衛星通信の提供に関する提携を内容とする協定の認可件数
国際電話 | 携帯電話の国際ローミング | 衛星通信 | |
令和5年度 | |||
令和4年度 | |||
令和3年度 |
電気通信事業法(昭和五十九年法律第xxx号)
(外国政府等との協定等の認可)
第四十条 電気通信事業者は、外国政府又は外国人若しくは外国法人との間に、電気通信業務に関する協定又は契約であつて総務省令で定める
重要な事項を内容とするものを締結し、変更し、又は廃止しようとするときは、総務大臣の認可を受けなければならない。
電気通信事業法施行規則(昭和六十年郵政省令第二十五号)
(外国政府等との協定等における重要事項)
第二十xx x第四十条の総務省令で定める重要な事項は、次のとおりとする。
一 電気通信役務(音声を伝送交換するための電気通信設備を用いてその内容を蓄積することなく通信を行うもの(以下この号において「電話等の役務」という。)に限り、交換取扱人を介した通話その他付随的なものを除く。)の提供(本邦外の場所との間で電話等の役務を提供するための電気通信設備を設置する電気通信事業者(電気通信回線設備を設置する電気通信事業者を除く。)が提供する電気通信役務にあつては、当該電気通信役務の提供を受ける契約を締結する者の使用に係る端末設備が電話等の役務を提供するために用いられる電気通信回線設備に接続される態様のものに限る。)に関する提携を内容とする協定又は契約(以下この号において「協定等」という。)にあつては次の事項
イ 電気通信回線を設定し、変更し、又は廃止しようとするときは、その区間並びにこれにより取り扱う電気通信役務の種類及び対地
ロ 電話等の役務の提供に関し、当事者が取得し、又は負担すべき金額。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
(1) 既に音声を伝送交換する機能について協定等を締結している相手方との間で、音声に影像を統合して伝送交換する機能を追加するために協定等の変更をしようとする場合であつて、当事者が取得し、又は負担すべき金額が音声を伝送交換する場合と同一であるか、又はこれを下回ることが明らかなとき。
(2) 協定等の相手方が、特定の対地の区分において着信側の電気通信事業者を追加することに伴い、当該協定等の変更をしようとする場合であつて、当該区分において取得し、又は負担すべき金額が増加しないことが明らかなとき。
(3) (1)又は(2)に掲げる場合のほか、当事者が取得し、又は負担すべき金額が減少する場合(対地ごと、着信側の電気通信役務の種類ごと又は通信量ごとその他の区分により多数の区分を設けている場合にあつては、いずれの区分においても取得し、又は負担すべき金額が増加しないことが明らかなときに限る。)
ハ 電話等の役務の提供に関し、取り扱う通信量の割合
二 本邦に陸揚げされる海底ケーブルの建設保守に関する協定又は契約(出資比率のみを変更するもの、破棄し得ない使用権の取得及び譲渡
に関するもの並びにケーブル保守船の利用に関するものを除く。)
電気通信事業報告規則(昭和六十三年郵政省令第四十六号)
(外国政府等との協定等の報告)
第五条 電気通信事業法第四十条の認可を受けた電気通信事業者は、様式第二十四により、毎報告年度経過後二月以内に、当該報告年度に締結し、又は変更した外国政府又は外国人若しくは外国法人との間の協定又は契約について、書面等により総務大臣に提出しなければならない。
◆ IP電話、ビデオ通話、メッセンジャーサービス等の普及により、国際電話の利用は低下傾向。携帯電話の国際ローミングについては、特にデータローミングについて定額料金プランが提供されている。衛星通信については、衛星コンステレーションの実現により、衛星通信の高速化が可能となり、ブロードバンドサービスへの利用のほか、携帯電話基地局のバックホールとしても活用されている。今後は、スマートフォン等が衛星と直接つながる衛星直接通信によるサービスが提供される予定。
【外国政府等との協定に関係する電気通信役務の動向】
(国際電話)
⮚ IP電話やビデオ通話、メッセンジャーサービス等の普及により、電気通信事業者の提供する国際電話サービスの利用は低下している と考えられる。(「通信量からみた我が国の音声通信利用状況(令和4年度)」によれば、発着信合計の通信時間は減少傾向。他方で、通信回数については、発信通信回数は減少しているが、着信通信回数は増加傾向。)
⮚ なお、IP網への移行によるマイライン終了に伴い、2024年1月より、KDDI、 NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、楽天モバイル等による加入電話向けの国際電話サービスは終了し、一部の法人向け通話サービスを除き、NTT東西の通話サービスに移行。
(携帯電話の国際ローミング)
⮚ 携帯電話の国際ローミングについて、主にMNO4社が音声ローミング及びデータローミングを提供中。特にデータローミングにつ
いては、各社から海外ローミング用の定額料金プランが提供されている。
⮚ 携帯電話事業者間の国際ローミング協定においては、音声(3G)ローミングとデータローミングで異なる事業者間精算料金が設定 されており、VoLTEはデータローミング扱いとされており、現状の認可対象外。
(衛星通信)
⮚ 衛星携帯電話について、各社がワイドスター、インマルサット、イリジウム、スラーヤ等の衛星携帯電話サービス(音声及びデータ サービス)を提供中(現状は音声のみ認可対象)。災害時の通信や船舶や離島・山間部での通信等に利用されている。
⮚ 衛星コンステレーションの実現により、衛星通信の高速化が可能となり、ブロードバンドサービスへの利用のほか、携帯電話基地局 のバックホールとしても活用されており、災害時の通信手段等として注目されている。今後はスマートフォン等が衛星と直接つながる衛星直接通信によるサービスが提供される予定。
○ 現状の認可対象は、電話等の役務の提供に関する提携を内容とする協定等及び海底ケーブルの建設保守に関する協定等となっているが、
関連する電気通信役務の動向を踏まえて、認可対象の見直しを検討することについてどう考えるか。
◆ 令和3年度から令和5年度における、国際電話又は衛星通信の提供に関する提携を内容とする協定等の締結、変更、廃止の認可件数は以下のとおり。
事業者 | 認可件数 | 備考 | |||
令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | |||
国際電話 | |||||
事業者 | 認可件数 | 備考 | |||
令和3年度 | 令和4年度 | 令和5年度 | |||
衛星通信 | |||||
◆ 携帯電話における国際ローミングについては、協定の締結、変更、廃止をあわせて毎年度100件程度を認可。令和5年度においては、約8割が協定の変更であり、そのうち約半数は、相手国における税率変更による事業者間精算料金の値上げを内容とする変更。
携帯電話における国際ローミング協定の認可件数 廃止 変更 締結
7
検討項目(案)
◆ 関連する役務の動向を踏まえて、電気通信事業法第40条に基づく外国政府等との協定等の認可に関し、以下の点についてどう考えるか。
1 認可対象の見直し
○ 現在、電話等の役務の提供に関する提携を内容とする協定等が重要な事項を内容とするものとして認可対象とされているが、携帯電話の国際ローミングについて、音声ローミングに加えデータローミングも広く利用されていることや、今後、スマートフォンが衛星と直接つながる衛星直接通信によるサービスが提供される予定であり、外国企業の電気通信設備を介してスマートフォン向けのデータ役務が提供されることを踏まえれば、データ役務等の提供に関する提携を内容とする協定等についても認可対象に追加することが必要か。
○ 他方で、データ役務等の提供に関する提携を内容とする協定等を広く認可対象とした場合、これまで認可対象としていなかった、国際 ISP間の協定等や衛星を利用した放送事業者向けの映像伝送サービス、衛星を利用したIoTサービス、バックホール回線としての衛星の利用など、必ずしも利用者の利益に直接影響しない協定等も認可の対象となる。このため、例えば、電気通信回線設備を用いる電気通信役務や、一定の規模を有する電気通信役務など、利用者の利益に及ぼす影響が大きい役務の提供に関する提携を内容とする協定等に 認可対象を限定することについてどう考えるか。
2 事業者間精算料金の変更に係る認可
○ 現在、電話等の役務の提供に関し、当事者が取得し、又は負担すべき金額(事業者間精算料金)については、値上げの場合は認可対象、金額が増加しないことが明らかな場合は報告規則に基づく年度末報告の対象とされているが、事業者間精算料金の変更のみを内容とす
る協定等の変更については、事後報告のみとすることについてどう考えるか。
・ 携帯電話の国際ローミング協定における事業者間精算料金の値上げのうち約半数は、相手国における税率変更によるもの。また、
個別の事業者間精算料金の値上げは、必ずしも利用者料金の変更に直結していない。
・ 携帯電話の国際ローミングは、GSMA(GSM Association)のルールに基づき事業者間で協定が締結されており、相対契約により割引料金を適用する場合を除き、全事業者に共通的な標準料金が提示される仕組みとなっており、日本の事業者のみが不当に高い事業者間精算料金を設定される恐れはないと考えられるか。
3 その他
○ 認可対象を変更する場合には、必要に応じて、認可に当たっての審査基準を見直すことが適当か。その他、検討すべき点はあるか。
○ 電気通信事業法関係審査基準(抄)(平成13年総務省訓令第75号)
第11章 外国政府等との協定等の締結、変更等の認可
(趣旨)
第18条 法第40条の規定により外国政府等との間の電気通信業務に関する協定等の認可を行うに当たっては、この章に定めるところに
よるものとする。
(審査基準)
第19条 認可は、次の各号に適合していると認められる場合に行う。ただし、電気通信市場のxxな競争を阻害する行為が行われるおそ れの有無等について特別の事情が認められる場合及び電気通信回線設備を設置する電気通信事業者以外の電気通信事業者が提供する電 気通信役務の場合には、(2)及び(3)の規定によらないことができる。特別の事情が認められる場合においては、当該特別の事情に応じ、 (2)及び(3)の規定の趣旨に準じて審査するものとする。
(1) 外国政府等が、協定等の締結先として適した者であること。
(2) 申請者が協定等を締結する事業者が世界貿易機関加盟国以外の国の事業者である場合は、当事者が取得し又は負担すべき金額
(以下この章において「計算料金」という。)及び取り扱う通信量の割合については、次号のアからウまでの方式(以下「統一計算
料金方式」という。)に適合したものであること。ただし、第三国中継回線による場合はウの方式は適用しないものとする。
ア 計算料金及び支払通貨への換算方法が本邦の他の事業者と締結している協定等と同一であること。ただし、関係事業者間において同一内容への改定が予定されている場合はこの限りでない。
イ 計算料金の分収が両端国で均等であること。
ウ 両端国間において、申請者から協定等を締結する事業者へ発信する通信量の当該事業者に着信する通信量の総量に占める割合が、当該事業者から申請者へ発信する通信量の当該事業者から発信する通信量の総量に占める割合に見合うものであること。
(3) 世界貿易機関加盟国以外の国の事業者との協定等においては、統一計算料金方式を協定等を締結する相手国の事業者に通知し、
それを当事者間の合意の前提とするものであること。
(4) 当事者間の責任に関する事項が適正かつ明確に定められていること。
(5) 当事者が当事者以外の者との間で締結している協定等と比べて、不当な差別的取扱いをするものでないこと。
(6) 通信の安全性及び信頼性が確保されていること。
(7) 条約その他の国際約束により課せられた義務を誠実に履行していること。
(8) その他協定等の内容が、電気通信市場のxxな競争を阻害するおそれがない等、公共の利益の増進を阻害するものでないこと。
◆ 次回研究会において、検討項目について、以下の事業者からヒアリングを実施予定。
【ヒアリング対象事業者(案)】
・株式会社NTTドコモ
・KDDI株式会社
・ソフトバンク株式会社
・楽天モバイル株式会社
・スカパーJSAT株式会社
・スターリンクジャパン合同会社
【検討スケジュール(案)】
~令和7年3月
令和6年5月 6月 7月 8月 令和6年9月
5/10
第84回研究会
事業者
ヒアリング
(第85回研究会)
論点整理
(第86回研究会)
接続研
報告書案
(第87回研究会)
意見募集
接続研報告書
とりまとめ
(第88回
研究会)
接続研報告書を踏まえ、総務省において省令改正等について検討(予定)。