要約: メコン地域の経済開発においては,ADB 主導の経済回廊構想などを通じて,陸上輸送や海上輸送の強化に焦点が当てられてきたが,航空輸送もその特性を活かした 補完的な役割を果たしてきた。実際に,アジア太平洋地域,ASEAN 諸国,メコン地域における航空貨物市場は世界平均を上回る速度で拡大を続けている。特に 2011 年以降はメコン地域(CLMV 諸国)の成長が著しい。
第2章
メコン地域の空港と航空貨物輸送
xx x
要約: メコン地域の経済開発においては,ADB 主導の経済回廊構想などを通じて,陸上輸送や海上輸送の強化に焦点が当てられてきたが,航空輸送もその特性を活かした補完的な役割を果たしてきた。実際に,アジア太平洋地域,ASEAN 諸国,メコン地域における航空貨物市場は世界平均を上回る速度で拡大を続けている。特に 2011 年以降はメコン地域(CLMV 諸国)の成長が著しい。
ASEAN 内部では,チャンギ空港,スワンナプーム空港は ASEAN 域内外を接続するハブとして安定的に成長している。ドンムアン空港は,タイと周辺国を結ぶ地域的なサブ・ハブになりつつある。ノイバイ空港とタンソンニャット空港は,外国との連結性を強化しつつ,国内航空貨物市場の発展に大きく寄与している。ヤンゴン,プノンペン,ビエンチャンは,各国と国外を結ぶ窓口へと変貌を始めた段階にある。
キーワード: メコン地域,航空輸送,空港,物流
はじめに
航空貨物輸送は「速い」が「高い」。このため,航空輸送が選択されるのは,海上輸送や陸上輸送が物理的に困難な場合,高価格商品で運賃負担力がある場合,あるいは状況や財の性質によって時間要素が特に重要である場合など,特別な要因が必要とされる。2015 年の日本の貿易を例にとると,航空輸送された財は,重量ベースではわずか 0.37%に過ぎないが,価額ベースでは輸出の 27.7%,輸入の 26.1%を占めており,成田空港は日本の貿易総額の 14.0%を取り扱う日本最大の「港」であった(xx 2017)。
1990 年前後に本格化した情報通信技術(Information and Communications Technology: ICT)革命は,アイデアや技術の移転コストを低下させ,先進国の技術と途上国の安価な労働を組み合わせた生産活動を可能にした(Baldwin 2016)。このような,生産工程の地理的な分離を特徴とする「第 2 のアンバンドリング」は,アジア地域において国境を超える生産・流通ネットワークを醸成し,同地域の目覚ましい経済発展を下支えしてきている。原材料,中間財,最終製品の多くは海路や陸路で輸送されてきたが,航空輸送もその特性を活かした役割を
果たしてきている。例えば生産拠点をアジア諸国に移転する日系企業が,日本国内で生産された工作機械や高精度金型,あるいは高機能繊維などをアジアの生産拠点に輸送する場合に航空輸送が用いられることがある。ベトナムのハノイ近郊で生産された韓国サムスン社製のスマートフォンは,世界中の市場に航空輸送される。ミャンマーのヤンゴン郊外で生産される医療用の針やラオスのパクセで生産されるウィッグも空路により輸出されている。マレーシアのなかでは発展の遅れているクランタン州コタバルに生産拠点を置く日系電子部品メーカーは,製品をクアラルンプール国際空港まで陸送し,そこから日本へと航空輸送している。このように,航空貨物輸送には,輸送コスト負担力のある高付加価値製品の生産拠点を誘致する可能性を地方都市にまで広げると同時に,先進国には中核的生産工程を国内に残留させる可能性を高めるといった役割がある1。
以下本章では,メコン地域の航空貨物輸送の概要を,周辺諸国と比較しつつ整理していく。類似の試みであるxx(2015)が指摘する通り,タイ以外のメコン諸国の航空貨物輸送に関 する統計の整備・公開状況は十分なものではない。このため,国際空港評議会(Airport Council International: ACI),国際航空運送協会(International Air Transport Association: IATA),民間プ ロバイダ企業などが提供するデータベースを中心に,利用可能性に応じて各国統計を付加 的に用いるというアプローチを採っている。各国,各空港の詳細な分析についてはxx
(2015)が取り組んでいるため,本章では国際比較と近年の変化に焦点を当てることにする。
第1節 空港
表 1 はメコン地域の主要空港の概要を示している。4000 メートル級の滑走路を有しているのはマンダレー国際空港(1999 年開港)とスワンナプーム国際空港(2006 年開港)の 2空港のみであるが,3500 メートル級の滑走路を有する空港はネピドー,ドンムアン,ウタパオ,ノイバイ,タンソンニャットの 5 空港である。カンボジア,ラオスの首都空港である
プノンペン国際空港とワッタイ国際空港はいずれも 3000 メートルの滑走路を持つのみである。必要滑走路長は運航する機材や路線により異なるが,一般的に,大型機で長距離xx便を運航する場合は少なくとも 3000 メートル級以上,できれば 3500 メートル級の滑走路が望ましい。しかしながら、日本―アジア間程度の近距離路線であれば 2000~2500m の滑走路でも対応可能という2。もちろん,空港の物流処理能力は滑走路長のみによって決まるものではなく,航空貨物を取り扱う上屋や空港ターミナルなどとの総合的な評価が必要である。
1 Hummels and Schaur (2013)は,アメリカに輸入される資本財の 52%,部品の 41%が航空輸送されていることを示している。
2 国土交通省ホームページ(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxxxx/xxxx/xxxxxxxxxxx/xxxxxxx/ shuto- research/kotsu_kentou/c_060423.html)参照。
表1 メコン地域の主要空港
国 | 空港名 | 都市名 | IATA コード | 北緯 | 東経 | 標高(m) | 運営機関 | IATA分類 | 滑走路① (mxm) | 滑走路② (mxm) |
カンボジア | プノンペン国際空港 | プノンペン | PNH | 11.55 | 104.84 | 12 | 軍民共用 | 税関空港 | 3000 x 44 | |
シエムリアップ国際空港 | シエムリアップ | REP | 13.41 | 103.81 | 18 | 民間政府 | 0000 x 00 | |||
xxxxxxxxxx | xxxxxxx | XXX | 00.00 | 103.64 | 10 | 民間政府 | 0000 x 00 | |||
xxx | xxxxxxxx | xxxxxx | XXX | 00.00 | 000.00 | 000 | 軍民共用 | 税関空港 | 0000 x 00 | |
xxxxxxxxxxxx | xxxxxxxx | XXX | 00.00 | 000.00 | 000 | 民間政府 | 税関空港 | 2200 x 45 | ||
パクセ国際空港 | パクセ | PKZ | 15.13 | 105.78 | 107 | 軍民共用 | 税関空港 | 1625 x 36 | ||
サワンナケート空港 | サワンナケート | ZVK | 16.56 | 104.76 | 155 | 軍民共用 | 税関空港 | 1633 x 38 | ||
ミャンマー | マンダレー国際空港 | マンダレー | MDL | 21.70 | 95.98 | 91 | 民間政府 | 税関空港 | 4268 x 61 | |
ネピドー国際空港 | ネピドー | NYT | 19.62 | 96.20 | 92 | 民間政府 | 3658 x 152 | |||
ヤンゴン国際空港 | ヤンゴン | RGN | 16.91 | 96.13 | 33 | 軍民共用 | 税関空港 | 0000 x 00 | ||
xxxxxxxxx | xxxx | XXX | 00.00 | 100.61 | 3 | 軍民共用 | 3500 x 45 | 3700 x 60 | ||
スワンナプーム国際空港 | バンコク | BKK | 13.68 | 100.75 | 2 | 民間政府 | 税関空港 | 4000 x 60 | 3700 x 60 | |
ウタパオ国際空港 | ラヨン | UTP | 12.68 | 101.01 | 13 | 軍用 | 3505 x 60 | |||
チェンマイ国際空港 | チェンマイ | CNX | 18.77 | 98.96 | 316 | 軍民共用 | 税関空港 | 3100 x 45 | ||
チェンライ国際空港 | チェンライ | CEI | 19.89 | 99.83 | 400 | 軍用 | 1544 x 31 | |||
タイ | クラビ国際空港 | クラビ | KBV | 8.10 | 98.99 | 28 | 民間政府 | 3002 x 45 | ||
スラ・タニ空港 | サムイ島 | USM | 9.55 | 100.06 | 20 | 民間政府 | 2060 x 45 | |||
プーケット国際空港 | プーケット | HKT | 8.11 | 98.32 | 25 | 民間政府 | 税関空港 | 3000 x 45 | ||
ハットヤイ国際空港 | ソンクラー | HDY | 6.93 | 100.39 | 27 | 民間政府 | 税関空港 | 3050 x 45 | ||
ウドンタニ空港 | ウドンタニ | UTH | 17.39 | 102.79 | 176 | 民間政府 | 0000 x 00 | |||
xxxxxxxxxx | xxxxxxxx | XXX | 00.00 | 000.00 | 000 | 軍民共用 | 3002 x 45 | |||
ベトナム | ダナン国際空港 | ダナン | DAD | 16.04 | 108.20 | 10 | 軍民共用 | 税関空港 | 3048 x 45 | 0000 x 00 |
xxxxxxxx | xxx | XXX | 00.00 | 105.81 | 12 | 軍民共用 | 税関空港 | 3800 x 45 | 0000 x 00 | |
xxxxxxxxxxxx | xxxxxx | XXX | 00.00 | 106.65 | 10 | 民間政府 | 税関空港 | 3800 x 45 | 3048 x 45 |
(出所)Xxxxxxxxxxx.xxx,Xxxxxxxxxxxxx.xxx,IATA, The Air Cargo Tariff Manual: Rules, February 2018。
メコン地域の空港整備には日本の政府開発援助も積極的に活用されている。ハノイの「ノ イバイ国際空港第2旅客ターミナルビル建設計画」は3期にわたる合計 593 億円の円借款 供与により,急増する旅客需要への対応が図られた。ラオスのワッタイ国際空港に関しては, 2011 年 8 月に贈与契約が締結された「ビエンチャン国際空港拡張計画」(19.35 億円)に引 き続き,2013 年12 月に借款契約が調印された「ビエンチャン国際空港ターミナル拡張事業」
(90.17 億円)が進行中である。
軍用空港であるタイのウタパオ空港は,経済構造の改革・高度化の起爆剤として計画されている東部経済回廊(Eastern Economic Corridor: EEC)構想の中核インフラとして第2滑走路の建設などの物理的な拡張と同時にxx利用の拡大が進められることになっている。 2017 年 12 月にはエアバス社とタイ国際航空が,タイ政府と共同で航空機の整備・修理・分解点検(Maintenance, Repair, and Overhaul: MRO)拠点を開設するという合意に達し,2019 年の稼働が見込まれている3。
第2節 空港統計にみる航空貨物取扱量
ACI 統計に基づくと,世界全体の航空貨物取扱量は,2006 年の 8547 万トンから 2016 年の 1 億 1028 万トンへと,年平均換算で 2.58%増加している(表2)。この間,アジア太平洋
地域の航空貨物取扱量は 2761 万トンから 4343 万トンへと年平均 4.63%増加し,そのシェアを 32.3%から 39.4%へと高めた。成熟市場である北米における航空貨物取扱量が年率 0.33%減少した結果,アジア太平洋地域のシェアが北米を上回るようになっている。
表2 世界の航空貨物市場
2006 | 2016 | 年平均変化率 | |||
万トン | シェア | 万トン | シェア | ||
アフリカ | 176.6 | 2.1% | 205.6 | 1.9% | 1.53% |
アジア太平洋 | 2,761.4 | 32.3% | 4,343.5 | 39.4% | 4.63% |
ヨーロッパ | 1,638.2 | 19.2% | 2,008.7 | 18.2% | 2.06% |
ラ米・カリブ海 | 421.7 | 4.9% | 513.1 | 4.7% | 1.98% |
中東 | 367.1 | 4.3% | 879.3 | 8.0% | 9.13% |
北米 | 3,181.7 | 37.2% | 3,078.0 | 27.9% | -0.33% |
合計 | 8,546.7 100.0% | 11,028.1 100.0% | 2.58% |
(出所)ACI, World Airport Traffic Report, 各年版に基づいて筆者作成。
3 「エアバス,タイに整備拠点で合意:タイ国際航空と」『日本経済新聞』2017 年 12 月 16 日。総額 110 億バーツのうち 70 億バーツをタイ政府が負担し,残りの 40 億バーツをタイ国際航空とエアバス社が折半する。
表3 アジア太平洋地域主要諸国の航空貨物取扱量
航空貨物取扱量(万トン) | 年平均変化率 | |||||||
2006 | 2011 | 2016 | 2006-11 | 2011-16 | ||||
アジア太平洋 | 2,761.4 100.0% | 3,399.4 100.0% | 4,343.5 100.0% | 4.2% | 5.0% | |||
中国 | 589.8 | 21.4% | 1,154.5 | 34.0% | 1,508.9 | 34.7% | 14.4% | 5.5% |
日本 | 528.1 | 19.1% | 469.0 | 13.8% | 561.9 | 12.9% | -2.3% | 3.7% |
香港 | 361.0 | 13.1% | 397.7 | 11.7% | 461.5 | 10.6% | 2.0% | 3.0% |
韓国 | 290.1 | 10.5% | 291.1 | 8.6% | 306.5 | 7.1% | 0.1% | 1.0% |
インド | 151.0 | 5.5% | 226.7 | 6.7% | 293.5 | 6.8% | 8.5% | 5.3% 5.7% |
台湾 | 177.6 | 6.4% | 168.3 | 5.0% | 221.6 | 5.1% | -1.1% -0.3% | |
シンガポール | 193.2 | 7.0% | 189.9 | 5.6% | 200.6 | 4.6% | 1.1% | |
タイ | 123.9 | 4.5% | 139.5 | 4.1% | 147.0 | 3.4% | 2.4% | 1.0% |
ベトナム | 33.2 | 1.2% | 25.9 | 0.8% | 112.1 | 2.6% | -4.9% | 34.1% |
インドネシア | 45.7 | 1.7% | 77.6 | 2.3% | 114.1 | 2.6% | 11.1% | 8.0% |
フィリピン | 41.1 | 1.5% | 41.0 | 1.2% | 93.2 | 2.1% | 0.0% | 17.8% |
マレーシア | 107.1 | 3.9% | 93.6 | 2.8% | 90.9 | 2.1% | -2.7% | -0.6% |
カンボジア | 2.8 | 0.1% | 2.0 | 0.1% | 4.8 | 0.1% | -6.9% | 19.4% 21.6% |
ミャンマー | na | na | 1.6 | 0.0% | 3.6 | 0.1% | na | |
ラオス | 0.07 | 0.003% | 0.21 | 0.006% | 0.31 | 0.007% | 20.4% | 7.9% |
ブルネイ | 2.21 | 0.080% | 3.75 | 0.110% | na | na | 11.1% | na |
その他 | 114.6 | 4.2% | 117.1 | 3.4% | 223.1 | 5.1% | 0.4% | 13.7% |
(出所)Airport Council International, World Airport Traffic Report, 各年版。ラオスのみ Lao Statistical Bureau, Statistical Yearbook 2016.
表3は,表2におけるアジア太平洋地域を国別に分析したものである。ラオスは ACI 統計に含まれていないが,参考のために,ラオス統計局作成の数値を合わせて示している。ブルネイは 2013 年以降,航空貨物統計が報告されていない。
アジア太平洋諸国の空港における航空貨物取扱量は,2006~11 年は年平均 4.2%,2011~
16 年は同 5.0%の増加となっており,前述の通り,世界平均を上回る伸びをみせている。 2006~11 年においては,世界的不況の影響で航空貨物取扱量が減少している国が多いなかで,ラオス(20.4%),中国(14.4%),インドネシア(11.1%),ブルネイ(11.1%),インド
(8.5%)は特に高い増加率を示している。中国(5.5%),インド(5.3%),インドネシア(8.0%),ラオス(7.9%)は後半期,2011~16 年にも地域平均(5.0%)を上回っている。これに対し て,日本,香港,韓国,シンガポールなどの成熟市場の伸び率は地域平均を下回っており, タイもこれに準ずる傾向を示している。マレーシアに至っては,過去 10 年間で航空貨物市 場が縮小を続けている。これは,航空貨物の取り扱いに積極的であったマレーシア航空の経
営不振と,それを埋め合わせるように急成長を続けているエアアジアが旅客輸送に重点を置いていることとも関連していると推察される。
2011 年以降になると,ベトナム(34.1%),ミャンマー(21.6%),カンボジア(19.4%),フィリピン(17.8%)の航空貨物市場の拡大が顕著になっている。この時期は ASEAN 経済共同体構築に向けて ASEAN の経済統合が加速し,後発加盟国である CLMV 諸国との連結性が強化された時期に相当する。
表4 ASEAN 主要空港における航空貨物取扱量
航空貨物取扱量(万トン) | ||||||||||||
国際航空貨物 | 国内航空貨物 | 国際シェア | ||||||||||
空港 | IATA コード | 国 | 年平均変化率 | 年平均変化率 | 年平均変化率 | |||||||
00-00 | 00-00 | 00-00 | 00-00 | 00-00 | 00-00 | |||||||
シンガポール | SIN | 星 | 196.9 130.6 64.3 63.2 59.8 56.6 47.9 11.3 9.6 7.2 6.7 5.5 5.4 5.2 5.2 4.6 4.4 4.3 3.6 3.4 3.0 2.9 2.3 2.3 2.2 2.2 2.0 1.8 | 2.1% | 0.3% | 196.9 125.9 55.3 33.1 32.7 39.5 31.1 10.0 1.9 0.1 1.7 4.2 0.2 0.0 2.9 4.5 0.4 2.9 2.6 3.4 0.2 0.2 0.0 0.0 0.1 0.2 0.0 0.1 | 2.1% | 0.3% | 0.0 4.6 9.0 30.1 27.1 17.1 16.8 1.3 7.7 7.1 5.0 1.3 5.1 5.2 2.3 0.1 4.0 1.5 1.1 0.0 2.8 2.7 2.3 2.3 2.1 2.0 2.0 1.7 | na | na | 100% 96% 86% 52% 55% 70% 65% 88% 20% 1% 25% 76% 5% 0% 55% 98% 9% 66% 71% 100% 6% 5% 0% 0% 6% 7% 0% 7% |
スワンナプーム | BKK | 泰 | 1.9% | 1.1% | 1.9% | 1.2% | 0.4% | -2.5% | ||||
クアラルンプール | KUL | 馬 | -1.9% | -0.5% | -3.1% -1.0% | 7.1% | 3.4% | |||||
マニラ | MNL | 比 | 15.0% | 4.4% | 4.2% | 1.0% | 34.9% | 10.6% | ||||
ジャカルタ | CGK | 尼 | -2.5% | 4.9% | 0.1% | 5.6% | -5.4% | 4.1% | ||||
ハノイ | HAN | 越 | 17.5% 17.9% | 19.5% | 25.0% | 13.4% 12.1% | 9.9% | |||||
ホーチミン市 | SGN | 越 | 8.4% | 8.2% | 6.7% | 7.9% | 9.0% | |||||
ペナン | PEN | 馬 | -9.7% -6.7% | -9.0% -6.4% | -14.4% | -8.5% | ||||||
スラバヤ | SUB | 尼 | 0.2% | na | -0.5% | na | 0.4% | na | ||||
ウジュンパンダン | UPG | 尼 | 10.6% | na | 4.0% | na | 10.7% | na | ||||
ラプラプ | CEB | 比 | 2.7% | na | 3.7% | na | 2.4% | na | ||||
ドンムアン | DMK | 泰 | 46.1% 78.3% | 72.0% 73.6% | 11.5% | na | ||||||
バリクパパン | BPN | 尼 | -0.2% | na | -14.3% | na | 0.7% | na | ||||
ダバオ | DVO | 比 | 1.7% | na | -1.8% -5.4% | na | 1.7% | na | ||||
デンパサール | DPS | 尼 | -1.6% | na | na | 4.2% | na | |||||
プノンペン | PNH | カ | 13.6% | 5.0% | 13.0% | 4.9% | na | 36.8% | ||||
メダン | KNO | 尼 | -2.7% | 3.4% | -19.0% | 0.2% | -0.3% | 3.7% | ||||
プーケット | HKT | 泰 | 8.4% | 10.2% | 19.6% 25.7% | -5.2% -3.8% | 0.9% | |||||
スバン | SZB | 馬 | 11.0% 18.6% | -6.7% | 20.6% 21.7% | -8.5% | 0.9% | |||||
ヤンゴン | RGN | 緬 | na | na | -61.1% | na | ||||||
ダナン | DAD | 越 | 23.2% | na | 15.9% | na | 23.7% | na | ||||
コタキナバル | BKI | 馬 | 9.5% | 0.1% | -9.2% -7.5% | 11.0% | 0.8% | |||||
バンジャルマシン | BDJ | 尼 | 24.1% | na | na | na | 24.1% | na | ||||
ジェネラルサントス | GES | 比 | 11.7% | na | na | na | 11.7% | na | ||||
クチン | KCH | 馬 | 0.1% | -2.9% | 16.3% | -2.1% | -0.7% -3.0% | |||||
ジョグジャカルタ | JOG | 尼 | 15.3% | na | 32.8% | na | 14.3% | na | ||||
カガヤン・デ・オロ | CGY | 比 | 1.1% | na | na | na | 1.1% | na | ||||
チェンマイ | CNX | 泰 | 0.7% | -3.4% | 83.2% | 16.0% | -1.4% -4.0% | |||||
小 計 | 714.4 | 3.8% | 3.0% | 550.1 | 2.8% | 1.8% | 164.3 | 7.3% | 8.7% | 77% |
(出所)Airport Council International, Worldwide Airport Traffic Report, 各年版に基づき筆者作成。
(注)2012 年までは空港のカバレッジが狭いため,年平均変化率は 2013~16 年の値と,2006~
2016 年の値を示している。
表4はさらに分析を進め,ASEAN 主要空港における航空貨物取扱量および近年の変化率を示したものである。ここに示した主要空港とは,2016 年の航空貨物取扱量で世界の上位 500 位に入る空港であり,その航空貨物取扱量の合計値は 2013 年の 639 万トンから 2016 年の 714 万トンへと年平均で 3.8%増加している。ASEAN の二大ハブ空港であるシンガポール・チャンギ空港およびバンコク・スワンナプーム空港だけで域内シェアの 45.8%を占めており,クアラルンプール,マニラ,ジャカルタ,ハノイ,ホーチミン市を加えた上位7空港のシェアが 86.7%にのぼっており,集中度が高いことが分かる。2013~16 年の変化率をみると,上位2空港がそれぞれ年平均 2.1%,1.9%と安定的に成長しているのに対し,ハノイ
(17.5%),マニラ(15.0%)は急速に伸びている。ハノイについては,国際航空貨物(19.5%),国内航空貨物(13.4%)の双方が高率で増加しているのに対して,マニラは国内航空貨物
(34.9%)に偏った変化をみせている。すなわちハノイのノイバイ空港は,外国市場との結節点としてだけでなく,国内空港を結ぶハブとしての機能も高めているということができる。
また,2006 年 9 月にスワンナプーム国際空港が全面開港したことにより役割を終えたドンムアン空港が 2007 年 3 月に国内線専用空港として新たな役割を得て,その後,ノックエア,エアアジアなどの LCC が就航したことにより,周辺国をつなぐ地域ハブ空港として再生してきた過程を読み取ることもできる。2006 年まではドンムアン空港の航空貨物取扱量に占める国際貨物のシェアは 95%前後であったが,2007 年には 2.1%に急落,2011 年には 1.3%にまで低下したが,2012 年には 29.5%,2016 年には 76.4%にまで上昇している。この間,航空貨物の取扱量も大きく増加しており,2013 年からの 3 年間だけでも約 3 倍に伸びている。国際的な観光地でもあるプーケットは従来から国際航空貨物の取り扱いが多かったが,2013 年以降は国内航空貨物(年平均 -5.2%)が減少する一方で,国際航空貨物は年平均 19.6%という高率で急増している。チェンマイは,大半(93%)を占める国内航空貨物の取扱量が微減(-1.4%)する中で,国際航空貨物(83.2%)は小規模ながらも急速に増加している。
ベトナムでは,南北に長い地理的条件を反映して,ハノイ-ホーチミン間の国内航空輸送が活発になっており,国内航空貨物を中心としたダナンの伸びも顕著である。ミャンマーでは,2011 年の民政移管,国際社会との関係再構築を反映して,ヤンゴンが国際航空貨物の窓口へと変わりつつある。
図1は,表 4 に含まれないメコン諸国の小規模な空港の 2016 年の航空貨物取扱量を図示している。カンボジアのシエムリアップ(99.8%)とミャンマーのマンダレー(94.7%)は国際航空貨物が大半を占めており,タイのサムイ島(4.0%),ベトナムのフーコック(3.5%)で若干の国際航空貨物取り扱いがある以外は,すべて国内航空貨物である。2013 年からの変化率をみると,ベトナムの国内航空貨物市場が急速に成長していることが分かる。図1中にはベトナムとタイの空港がそれぞれ 17 空港,16 空港含まれているが,ベトナムの 17 空
港の合計値が 2013 年の 1 万 2882 トンから 3 万 4179 トンへと 2.7 倍増加したのに対し,タ
イの 16 空港の合計値は 1 万 7004 トンから 2 万 203 トンへの 1.2 倍の増加にとどまってい
る。ベトナム戦争時に米空軍によって建設されたチャーノック空港を拡張する形で 2011 年
に開業したカントー国際空港の航空貨物取扱量は 2013 年にはわずか 2 トンであったが,
2016 年には 3399 トンとなっている。タインホア省の空軍基地であったサオバン空港は,ノ
イバイ空港の混雑緩和を目的として 2013 年に軍民両用空港へと転換された。その結果,2013
年にはわずか 3 トンであった航空貨物取扱量は,2016 年には 2132 トンへと急増した。フエ,ビン,フーコックなどの航空貨物取扱量も年平均で 56.1%,54.7%,46.9%と,高い伸びを示している。
図1 メコン諸国の小規模空港の航空貨物取扱量(2016 年:トン)
(出所)Airport Council International, Worldwide Airport Traffic Report, 各年版に基づき筆者作成。
(注)青は国際航空貨物,黄色が国内航空貨物である。
第3節 航空統計にみる航空貨物容量
前節でみた航空貨物取扱量は各空港における実際の取扱量を記録・集計したものであり,基本的にxx・着地(Origin-Destination: O-D)関係を知ることはできない。この点を補足するために,本節では,航空統計に基づいて,航空貨物容量(capacity)の O-D 関係を整理する。ただし,この統計はあくまでも航空機の貨物容量であり,実際の航空貨物量とは異なっ
ていることに留意が必要である4。
ASEAN 諸国発の航空貨物容量は,2007 年の 5 万 1840 トンから 2017 年の 10 万 9715 トンへと,10 年間で 2.1 倍増加している。メコン諸国の同じ期間の航空貨物容量増加率は,カンボジアではほぼ変化がなかったが(1.0 倍),ラオス(3.3 倍),ミャンマー(2.7 倍),タイ
(2.3 倍),ベトナム(3.0 倍)の 4 か国では ASEAN 全体を上回る伸びを示している。表5に示した寄与度は,2007 年の ASEAN 諸国発便の貨物容量の合計値を基準として,それ以降の 10 年間にそれぞれの O-D ペアの貨物容量の変化がどの程度貢献しているのかを示している。2007 年から 2017 年の 10 年間で,ASEAN 諸国発便の航空貨物容量は倍増を上回る 111.6%増加しており,そのうちの 84.2%分は ASEAN 域内便の航空貨物容量の増加によって説明される。
表5 ASEAN 発便貨物容量への寄与度(2007~17 年)
xx\xx | xxxx | xxxxx | xxxxxx | xxx | xxxxx | xxxxx | xxxxx | xxxxxx | xx | xxxx | XXXXX | xx | xx | 韓国 | 米国 | UAE | その他世界 | 世界 |
ブルネイ | 0.0% | 0.0% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 0.1% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | -0.2% | 0.0% |
カンボジア | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.1% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 0.2% | 0.9% | 0.5% | 1.8% | 1.1% | 0.0% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 0.3% | 3.3% |
インドネシア | 0.1% | 0.0% | 25.0% | 0.0% | 0.9% | 0.0% | 0.0% | 1.5% | 0.3% | 0.1% | 27.9% | 1.0% | 0.1% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 1.5% | 30.7% |
ラオス | 0.0% | 0.1% | 0.0% | 0.6% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.2% | 0.5% | 0.2% | 1.6% | 0.3% | 0.0% | 0.2% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 2.1% |
マレーシア | 0.0% | 0.1% | 0.8% | 0.0% | 4.5% | 0.1% | -0.1% | 1.0% | 0.4% | 0.6% | 7.5% | 1.6% | 0.0% | 0.0% | -0.1% | -0.1% | 0.2% | 9.2% |
ミャンマー | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.1% | 12.5% | 0.0% | 0.5% | 0.9% | 0.1% | 14.0% | 0.3% | 0.0% | 0.1% | 0.0% | 0.0% | 0.2% | 14.6% |
フィリピン | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | -0.1% | 0.0% | 3.4% | 0.5% | 0.0% | 0.0% | 3.9% | 0.5% | 0.4% | 0.4% | 0.0% | 0.1% | 0.6% | 5.9% |
シンガポール | 0.1% | 0.2% | 1.5% | 0.2% | 1.0% | 0.5% | 0.6% | 0.3% | 0.8% | 0.5% | 5.6% | 1.3% | 0.4% | 0.0% | -0.4% | 0.0% | 4.7% | 11.7% |
タイ | 0.0% | 0.9% | 0.3% | 0.5% | 0.5% | 0.9% | 0.0% | 0.8% | 10.2% | 0.7% | 14.7% | 5.4% | 0.0% | 0.2% | -0.1% | 0.4% | 1.2% | 21.8% |
ベトナム | 0.0% | 0.5% | 0.0% | 0.2% | 0.4% | 0.1% | 0.1% | 0.6% | 0.5% | 4.5% | 7.0% | 1.7% | 0.3% | 0.8% | 0.0% | 0.3% | 2.2% | 12.3% |
ASEAN | 0.1% | 1.9% | 27.7% | 1.7% | 7.4% | 14.0% | 3.9% | 5.7% | 14.6% | 7.2% | 84.2% | 13.2% | 1.3% | 1.9% | -0.7% | 0.9% | 10.8% | 111.6% |
(出所)OAG データベースに基づき筆者作成。
(注)網掛けは各国発国際便における寄与度の上位 3 カ国を示している。
xxとしてのメコン諸国を見ると,その寄与度はタイ(14.7%),ミャンマー(14.0%),ベトナム(7.0%),カンボジア(1.8%),ラオス(1.6%)の順になっている。タイ発便に着目すると,国内便の寄与度が 10.2%と高くなっているが,タイ以外の ASEAN 域内便の中ではカ
4 日本航空機開発協会(2017)によれば,航空貨物容量に対する実際の貨物量の比率を示すロード・ファクターは,世界全体でみると,1996 年の 47.9%から 2016 年の 48.4%へと安定的に推移している。貨物専用機のロード・ファクターは 2016 年には 66.6%に達しており,それ以上高まる余地は少なくなっている。他方,許可茎の床下貨物室のロード・ファクターは 40%以下であり,今後,ロー・コスト・キャリア(Low Cost Carriers: LCCs)が貨物事業を本格化させるとロード・ファクターも上昇すると見込まれる。
ンボジア便(0.9%),ミャンマー便(0.9%)の寄与度が高い。ミャンマーでも国内便の寄与度が 12.5%と高いが,ASEAN 域内ではタイ便(0.9%),シンガポール便(0.5%)の増加が顕著である。カンボジア,ラオス発便では,タイ便,ベトナム便の寄与率が高い。すなわち,メコン諸国はタイを中心として,域内の航空貨物容量を増強させてきているということができる。同様に,インドネシア,シンガポール,マレーシアも3国間の航空貨物容量を強化させていることも読み取れる。
域外との空路連結性を見ると,中国の存在感が際立っている。ASEAN 諸国発の中国便の寄与度は 13.2%にのぼっており,韓国(1.9%),日本(1.3%),アラブ首長国連邦(0.9%),米国(-0.7%)を大きく上回っている。メコン諸国発だけに限っても,タイ(5.4%),ベトナム(1.7%),カンボジア(1.1%),ラオス(0.3%),ミャンマー(0.3%)のいずれの国においても中国便の寄与度は上位3カ国に入っている。ベトナム発韓国便の寄与度が高いのは,サムスンなどの韓国企業の積極的なベトナム進出と関連しているものといえよう。
第4節 国際航空貨物運賃
航空貨物運賃は,従来,IATA の運賃調整会議で決定され,発着両国政府の認可を受けて,航空会社にかかわらず一律に適用されてきた。すなわち,各国において独占禁止法の適用が免除されていた状態にあったが,近年はその適用免除が撤回され,各航空会社が独自に航空運賃を設定して,航空当局に申請する方式が広まっている5。その結果として,「エア・フレイト料金と郵便物料金に関する包括的なデータベースを見つけることは困難である。より多くの価格設定が大規模なフォワーダーと航空会社との間の契約下で行われるようになると,合意された料金は内密になる」(モレル 2016,232 頁)。
さらに,航空貨物運賃には,航空会社がxx着地の各国政府に申請し認可を受けた「航空会社運賃」と利用航空運送業者(混載業者)が国土交通省へ届け出た「混載運賃」の二種類があり,一般的には混載運賃の方が安い。航空会社運賃と混載運賃はいずれも「xx運賃」であり,航空貨物運送状(Airway Bill: AWB)作成の際に用いられる。しかし,現実には混載業者は航空会社から安いレートでスペースを仕入れて,その上に利益を載せて荷主に安く提示するという形での「実勢運賃」が決定されており,xx運賃は形骸化しているといわざるを得ない。また,航空貨物運賃は,xx空港から着地空港までの貨物運送のみを対象としており,集荷・配送サービス,保管料,保険料,貨物代金引換制度,通関手数料などは含まれない。
以下本節では,IATA の航空貨物運賃(The Air Cargo Tariff: TACT)マニュアルに基づいて, ASEAN 諸国発便の航空貨物運賃を整理しておく。IATA 運賃は特に先進国間の航空貨物輸
5 xxxxxx(2017),83 頁参照。オーストラリアでは 2008 年 10 月,日本では 2011 年 4 月から新方式が採用されている。
送においては独占禁止法が適用されるようになり,形骸化している✰は事実である。しかし,航空会社やフォワーダーがxx運賃を設定する際に参照レートとして用いられることはあ り,また,メコン地域✰物流業者へ✰ヒアリングにおいても,実勢価格を設定する際に参考 にしているということであったことから,IATA 運賃✰整理にも一定✰意義はあろう。
IATA ✰運賃体系は以下✰ようになっている(xxワールド 2017)。
⚫ 一般貨物賃率(General Cargo Rate: GCR): 一般に重量段階が高くなるほど単位重量当たり✰賃率は逓減される。GCR は,貨物を運送しようとする区間に該当する SCRや CCR がない場合に✰み適用される。
⚫ 特定品目賃率(Specific Commodity Rate: SCR): 特定品目に対して,特定区間,特定方向✰運送に設定されている賃率で,有効期限や適用条件が定められることもある。4 桁✰品目分類番号。最低重量が定められており,それを下回る場合には適用されない。一般に GCR,CCR よりも割安に設定されており,優先的に適用される。
⚫ 品目分類賃率(Commodity Classification Rate: CCR): 定められた地区間あるいは地区内✰特定貨物品目(動物,貴重品,新聞雑誌等,別荘手荷物,遺体・遺骨)✰運送に適用される賃率。
⚫ 最低料金(Minimum Charge): GCR,SCR,CCR を貨物✰重量に乗じて算出される金額が一定✰額に満たない場合に適用される。地域内,地域間あるいは区間ごとに定められている。
⚫ 混合貨物(Mixed Consignment): 1口✰貨物に,内容及び賃率✰異なる複数✰品目が混在し,それを 1 件✰ AWB で運送する場合。原則として GCR が適用されるが,荷送人が品目ごとに梱包し,そ✰重量を別々に申告した場合には梱包ごとに異なる賃率を適用することもある。
⚫ 単位積載容器運賃(ULD 運賃): 航空機に搭載されているコンテナまたはパレット単位で運送される荷物に適用される運賃。コンテナ,パレット自体✰重量には運賃がかからない。
⚫ 通し運賃と合算: 貨物✰xxから着地まで✰通し運賃は,一般に貨物✰実際✰運送経路とかかわりなく優先して適用される。通し運賃がない場合には,主要都市まで✰国際貨物運賃率に,それから先✰合算賃率または国内貨物運賃率を加えることで通し賃率を求める。こ✰合算においても,合算地点は,実際✰運送経路にかかわりなく,最も安い通し賃率をつくるような地点で計算する。
以上を踏まえて,各空港間✰航空貨物運賃を取りまとめた✰が表 6 である。IATA-TACTマニュアルに記載されている元データは,タイ発便はバーツ建て,ヤンゴン発便はチャット建て,シンガポール発便はシンガポール・ドル建て,クアラルンプール発便はリンギ建て,ジャカルタ発便はルピア建てで,そ✰他は米ドル建てとなっている。xx✰数値は各ルート
で 100kg ✰航空貨物を輸送するため✰運賃を一般貨物賃率(General Cargo Rate: GCR)を適用して算出し,IMF ウ➦ブサイトで公表されている 2018 年 1 ☎ 25 日✰ SDR レート(SDR
=1.45471 米ドル=45.6997 バーツ=1950 チャット=1.89883 シンガポール・ドル=5.67045リンギ=19333.1 ルピア)に基づいて米ドル建てに換算している。
まず,バンコク発便とクアラルンプール発便✰航空貨物運賃が,ほぼすべて✰着地空港と✰間で相対的に安くなっていることが読み取れる。為替レート✰影響も当然含まれているが,地域✰ハブ空港として,アジア各地と✰航空貨物輸送ネットワークにおいて大きな役割を果たしているといえよう6。また,ヤンゴン発便✰運賃も多く✰着地空港において安い。これに関しては,航空ネットワーク✰利便性によって説明することはできないため,チャット建て✰価格設定と為替レート✰影響が大きいといえる。
逆に,プノンペン,ビエンチャン,ジャカルタ発便は,多く✰着地空港から見て航空貨物輸送✰コストが高い。プノンペン,ビエンチャンは空港も小さく,航路ネットワークも十分に張り巡らされてはいない。こ✰ため,多く✰目的地に行く際に,例えばバンコクを経由するといった経路を取らざるを得なくなり,そ✰分,航空貨物運賃が割高になる傾向がある。
タイ国内を見ると,プーケット,チ➦ンマイ発便✰航空貨物運賃は,バンコク発便✰運賃に国内航空貨物運賃を上乗せしたような価格設定になっていることが分かる。これは,プノンペンやビエンチャン発便がバンコクなど✰地域ハブ空港を経由せざるを得ない✰と同様な状況であるということができる。こ✰地域ハブ空港まで✰上乗せ分は陸上輸送を競合関係にあると考えられる。越境交通協定など✰交通円滑化措置によりメコン地域における越境輸送が安価になれば,例えばビエンチャンからバンコクまで空路ではなく陸路で運ぶインセンティブが高まることになる。そ✰結果,ビエンチャン発✰航空貨物需要が減少し,結果的にビエンチャン✰空路接続性✰強化が進まないということも起こりうる。
図2は表6からメコン諸国✰主要空港発便✰xx抽出して,距離を横軸,航空貨物運賃を縦軸にとって図示したも✰である。合わせて表示した近似直線✰決定係数をみると,バンコク発便およびヤンゴン発便に関しては航空貨物運賃✰約9割が距離によって説明される一方で,プノンペン発便,ビエンチャン発便は距離以外✰要因―おそらくはxx便✰有無や接続便✰利便性―✰影響を強く受けている。例えば,ビエンチャン発便に関しては,0000xx
x0000xx xxxxxx―xxxxxxxxxxx行き―✰航空運賃が相対的に割高になっている。欧米行き✰長距離路線に関しては他空港発便と✰運賃格差が大きくないため, 1269km 離れているビエンチャン=広州間✰運賃(884 ドル)と 8775km 離れたビエンチャン=フランクフルト間✰運賃(935 ドル)と✰差は小さい。ハノイ発便✰運賃は,ビエンチャン発便と,バンコク発便と✰中間的な特徴を持っている。今後,ハノイ発着✰航空ネットワーク✰拡大が進めば,運賃決定要因として✰「距離」✰意義が高まるも✰と推察される。
6 ベトナム発便に関しては,IATA マニュアルに国内線運賃が掲載されているが,それを除けばバンコク発便はやはり安価である。
表6 ASEAN 主要空港発✰航空貨物運賃: IATA 一般貨物賃率(米ドル/100kg)
xx\着地 | バンコク | プーケット | チェンマイ | プノンペン | ビエンチャン | ヤンゴン | ハノイ | ホーチミン市 | ダナン | シンガポール | クアラルンプール | マニラ | ジャカルタ | 北京 | 上海 | 広州 | 昆明 | 香港 | 台北 | 東京 | 沖縄 | ソウル | デリー | ドバイ | フランクフルト | ロサンゼルス | |||||
バンコク | na | na | na | 151 | 121 | 110 | 190 | 190 | 227 | 110 | 110 | 205 | 190 | 259 | 223 | 184 | 121 | 146 | 201 | 337 | 249 | 362 | 237 | 563 | 695 | 1,199 | |||||
プーケット | na | na | na | 218 | 188 | 177 | 257 | 257 | 295 | 101 | 91 | 000 | 000 | 000 | 290 | 000 | 000 | 000 | 268 | 337 | 288 | 430 | 304 | 631 | 762 | 1,263 | |||||
xxxxx | na | na | na | 218 | 188 | 177 | 257 | 257 | 295 | 177 | 177 | 273 | 257 | 326 | 290 | 000 | 000 | 000 | 268 | 405 | 288 | 430 | 304 | 631 | 762 | 1,263 | |||||
プノンペン | 259 | 322 | 322 | na | 325 | 416 | 362 | 411 | 378 | 325 | 306 | 535 | 411 | 977 | 987 | 845 | 981 | 590 | 775 | 774 | 000 | 000 | 000 | 614 | 1,131 | 1,045 | |||||
ビエンチャン | 129 | 193 | 193 | 293 | na | 251 | 336 | 336 | na | 000 | 000 | 000 | 336 | 1,050 | 1,041 | 884 | na | 289 | 887 | 1,117 | 992 | 1,117 | 861 | na | 935 | 1,247 | |||||
ヤンゴン | 84 | 149 | 149 | 224 | 224 | na | 170 | 147 | 170 | 141 | 116 | 230 | 225 | 302 | 308 | 232 | 278 | 207 | 263 | 332 | 254 | 355 | 161 | 364 | 487 | 1,247 | |||||
ハノイ | 240 | 304 | 304 | 401 | 361 | 301 | na | 224 | 144 | 342 | 342 | 293 | 512 | 683 | 794 | 707 | 707 | 342 | 561 | 871 | 453 | 567 | 497 | 638 | 1,195 | 1,247 | |||||
ホーチミン市 | 000 | 000 | 000 | 401 | 301 | 301 | 224 | na | 144 | 282 | 282 | 293 | 359 | 839 | 794 | 707 | 843 | 342 | 561 | 774 | 437 | 567 | 497 | 638 | 1,076 | 1,247 | |||||
ダナン | 240 | 304 | 304 | 401 | 476 | 301 | 144 | 144 | na | 282 | 282 | 293 | 359 | 839 | 794 | 707 | 843 | 342 | 561 | 825 | 453 | 567 | 522 | 698 | 1,136 | 1,070 | |||||
シンガポール | 222 | 174 | 331 | 324 | 297 | 297 | 439 | 303 | 334 | na | 78 | 476 | 172 | 625 | 568 | 466 | 475 | 466 | 695 | 779 | 592 | 935 | 644 | 1,351 | 1,447 | 1,199 | |||||
クアラルンプール | 94 | 54 | 94 | 95 | 144 | 117 | 197 | 95 | 147 | 35 | na | 183 | 102 | 302 | 376 | 200 | 348 | 200 | 295 | 370 | 281 | 414 | 286 | 588 | 630 | 999 | |||||
マニラ | 000 | 000 | 000 | 308 | 250 | 308 | 165 | 165 | 165 | 195 | 195 | na | 339 | 533 | 573 | 505 | 641 | 131 | 153 | 352 | 255 | 467 | 491 | 523 | 1,007 | 872 | |||||
ジャカルタ | 530 | 605 | 605 | 333 | 577 | 372 | 489 | 322 | 420 | 124 | 156 | 388 | na | 681 | 581 | 000 | 000 | 000 | 603 | 637 | 536 | 563 | 561 | 924 | 1,058 | 1,031 |
(出所)IATA, TACT: The Air Cargo Tariff manual: Worldwide Rates (except North America), February 2018,IATA, TACT: The Air Cargo Tariff manual: North America Rates, February 2018 に基づき筆者作成。
(注)xx✰網掛けは,各着地から見て,航空貨物運賃が安いxxを暖色で,高いxxを寒色で示し,色✰濃淡でそ✰上位 3 空港を示している。
図2 メコン諸国首都空港発便✰航空貨物運賃と距離
(出所)航空貨物運賃は表6,距離はGreat Circle Mapper ウ➦ブサイト(xxx.xxxxx.xxx)に基づく。
おわりに
2015 年末に設立した ASEAN 経済共同体✰一環として,ASEAN 単一航空市場(ASAM)が構築されてきた。そ✰中核にある相互✰市場参入に関しては,RIATS 協定✰批准が 2016年 4 ☎に完了し,制度上✰自由化は完了したことになる(xx 2017)。
メコン地域✰経済開発においては,ADB 主導✰経済回廊構想などを通じて,陸上輸送や海上輸送✰強化に焦点が当てられてきたが,冒頭で例示した通り,航空輸送も補完的な役割を果たしてきた。実際に,アジア太平洋地域,ASEAN 諸国,メコン地域における航空貨物市場は世界平均を上回る速度で拡大を続けており,そ✰傾向は直近✰データでも確認ができる。航空貨物市場においても,中国✰成長が顕著であることは事実だが,特に 2011 年以
降はメコン地域(CLMV 諸国)✰成長も著しい。
ASEAN 内部を見ると,シンガポール✰チャンギ空港,バンコク✰スワンナプーム空港は ASEAN 域内外を接続するハブとして安定的に成長している。バンコク✰ドンムアン空港は LCCs ネットワークが強化されたことにより,タイと周辺国を結ぶ地域的なサブ・ハブになりつつある。ハノイ✰ノイバイ空港とホーチミン市✰タンソンニャット空港は,外国と✰連結性✰強化もあるが,国内航空貨物市場✰発展に大きく寄与している。ヤンゴン,プノンペン,ビエンチャンは,各国と国外を結ぶ窓口へと変貌を始めた段階にある。
<参考文献>
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