A1
契 約 について理解しよう!
ライフステージと契約
・1 ~ 2ページの街のイラストは「現在」の視点から描かれていますが、「ライフステージと契約」は時間軸から眺めたものです。消費生活は意思決定と契約の連続であることが分かると思います。家庭科における「消費行動と意思決
定」での活用はもとより、消費生活は生涯にわたって続くことから、多様な学習機会の導入部分で活用することができます。
・以下に、生活の場面で行われる主な契約の基本的な特徴と注意事項について説明します。年齢とともに複雑な契約、高額な契約をする場面に遭遇することが想像できると思います。
教材3-4ページ
4
3
世間話から、年齢を 聞き出すこともある。
消費生活で、あれっ?困った!と思ったら消費生活センター(☎188)へ
未xx者契約と消費者被害
事業者にとっては、未xx者契約であったことを理由に契約を取り消されては困る。そこで、悪質業者は成人し て間もない人を悪質商法のターゲットにすることがある。
②店員が「はい、かしこまりました」と言ったとき。
●消費者と事業者とが、お互いに契約内容(商品の内容・価格・引き渡し時期等)につい て合意をすれば契約は成立する。つまり、口約束でも契約は成立する。契約書や印鑑・サインは証拠を残すためのもの。
A1
②未xx者取消しができる。
●社会経験の少ない未xx者が法定代理人(親権者などの保護者)の同意を得ずに契約した 場合、契約を取り消すことができる。
●未xx者取消しは、未xx者自身からでも、法定代理人からでもできる。
●取消しにより、未xx者は受け取った商品があれば事業者に返品し、支払った代金があれば返金される。
*ただし、小遣いの範囲の少額な契約、成人であると積極的にウソをついたり、法定代理人の同意があるとウソをついたりした場合等は、未xx者取消しができない。
18
Q1& 店で買い物をするとき、契約が成立するのはいつ?
製 造 所 埼玉県○○市△△町3-4 栄養成分表示(1個当たり)
熱量 164kcal
たんぱく質 7.2g
脂質 6.5g
炭水化物 19.1g
バスに乗る
アパートを借りる
株式会社△△
食品を買う
販 売 者 株式会社〇〇
xxx□□市××町1-2
この契約は取り消せる?
A3
Q3& 17歳の高校生が、保護者に内緒で10万円の化粧品セットを契約した。
多糖類 x x 量 130g
賞味期限 令和△△年△月△日
引っ越しをする 存 方 法 要冷蔵(10℃以下)
オンラインゲーム をする
<プリンの表示例>
名 称 洋生菓子
卵(国産)、砂糖、生乳、植物油 原材料名 脂、乳製品、カラメルソース、ゼ
ラチン
添 加 物 香料、乳化剤、pH調整剤、増粘
洋服を買う
スマホを買う
ワーク 2 一旦締結した契約は、なぜ守らなくてはならないのだろうか。
(ヒント)消費者、事業者の立場になって考えてみよう。
保険(生命保険・ 損害保険)に入る
バスツアーに 参加する
成人式の 着物を借りる
英会話を習う
車を買う
残念!
レシートがあっても、 開封していなくても、 原則は解約できない。
マンションを買う
プレゼントを買いました。 しかし、プレゼントを渡す 前に突然の別れ・・・
住宅ローンを 組む
契約を守らないと、 裁判で訴えられる こともある。
①解約できない。
●契約は「法的な責任が生じる約束」なので拘束力がある。
有料老人ホーム に入る
A2
ライフステージと契約
Q2& 店で商品を買ったが、使う前に不要になった。解約できる?
契 約 について理解しよう!
毎日の暮らしで私たちは消費者として事業者と契約をしている。消費生活から契約について考えてみよう。
1 契約をする
食塩相当量 0.2g
ワーク 1 上の図のそれぞれの契約をする場合、どこから、どのような情報を収集して商品やサービスを選択す ればよいか。また、契約をすることで消費者と事業者には、それぞれどのような権利と義務が発生 するだろうか。
(ヒント)商品やサービスに関する情報はどこで得られるか。例えば、お菓子の箱の表示を見て商品を選ぶこと もあるだろう(上の図はプリンの表示の例)。また、自分自身は、その商品やサービスに何を求めるか。実際に契約するときのことをイメージしてみよう。
3 契約をやめる─未xx者取消し
2 契約を守る
ねえ···
大人っぽいけど、 歳?
食品を買う
だくせい
契約は、申込みと承諾のみで成立するものが大半です(これを諾成契約といいます。)。小学生の時期から経験している行動ですが、例えばイラストのプリンの購入に関しては、その場で代金の支払と商品の引渡しが同時に行われ
(同時履行)、消費者と店員双方が受領した商品と代金を確認できるので、トラブルはあまり起こりません。パッケージの表示には商品を選択する際の重要な情報が記載されています。
バスに乗る
旅客運送契約です。バスに乗るたびに契約内容を運転手に確認していたら定時運行ができなくなります。そこで、不特定多数の利用者との契約を定型的に処理するため、事業者はあらかじめ契約条項(約款。バス、電車、航空機等は運送約款。)を定めています。「受験のため乗る予定の航空機が雪で欠航した」といったトラブルが発生し、払戻し等に直面して、初めて約款の規定に気付くことがあります。
オンラインゲームをする
インターネットを使って多数が参加して行うゲームです。無料で参加できるので、つい気軽に始めてしまうものの「有料アイテムが欲しくなり親のクレジットカード番号を入力して次々に購入してしまった」といったトラブルが小・中・高校生にも発生しています(P.14参照)。
スマホを買う
生徒にとって身近な契約です。厳密には、スマートフォン本体(機器)を購入するだけでは使えず、合わせて通信契約をすることも必要です。機器は店が承諾した時、通信契約は電話会社が承諾した時に初めて使えるようになります
(P.14参照)。
洋服を買う
店で購入する場合は、「食品を買う」と同様に消費者と店員がその場で売買しますが、通信販売(ネットショッピングなど)の場合、契約当事者双方が顔を合わせず、商品を実際に見ないで売買することから、トラブルが発生しやすくなります(P.8参照)。また、実際には、取引の相手が海外の事業者であることもあり、解決が難しくなることもあります。
成人式の着物を借りる
成人式・卒業式などで着物やドレスのレンタル契約をすることがあります。成人式などは1年以上先のレンタルについて契約をする場合もあるので、解約の決まり、また着用すれば汚れが生じるので、返却時の決まりを確認することが特に必要です。
バスツアーに参加する
卒業旅行などで契約する生徒もいるでしょう。募集型企画旅行(パッケージツアー)は、旅行者が申込書を書いて申込金を支払ったときに契約が成立します。電話などで予約しただけでは契約は成立しません。自分自身の理由、旅行会社等の事業者の理由、天候や自然災害の理由等から、旅行が計画どおりいかないこともあります。旅行の契約成立時期や取消料の規定などを確認しましょう。
アパートを借りる
就職、進学を機にアパートを借りる生徒も多くいるでしょう。トラブルの多くは、敷金返還が問題となる退去時に発生します。契約時に、環境や設備等も重要ですが、契約書・重要事項説明書をよく確認し納得してから契約することが大切です(P.14参照)。
引っ越しをする
アパートを借りたら、通常、引っ越しの契約もすることになります。解約や荷物の紛失、破損などのトラブルが発生しています。標準引越運送約款では解約手数料は前々日で運賃の20%、前日30%以内、当日50%以内となっています。
英会話を習う
語学教室(英会話教室等)は、期間が2か月を超え金額が5万円を超える契約の場合、特定商取引法が適用され、クーリング・オフや中途解約が可能です。このような継続的なサービスは、実際にやってみないと効果が分からないにもかかわらず、最初から長期間の高額な契約になることが多く、過去には
「解約に応じてくれない」、「高額な解約料を請求される」などの消費者トラブルが発生しました。こうしたことを受け、現在は、特定商取引法において継続的サービスのうち、7業種(エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス)が規制されています(P.14参照)。
車を買う
車の購入は、登録、保険といった車特有の手続も必要になります。車の購入契約成立日は、支払方法等によっても違いますが、現金払いの場合、標準注文書では①自動車の登録がなされた日、②改造・架装・修理に着手した日、③自動車の引き渡し日、のいずれか早い日となっています。
保険(生命保険、損害保険)に入る
死亡、病気、交通事故、火事、その他の災害など人生のリスクに備えるために、生命保険や損害保険があります。身近な保険では、賃貸アパートの契約、海外旅行、サークル活動等に付随した保険があります。大量の契約者がいることを前提に、リスクに応じた保険料を設定して支払う、という性質上、申込時の告知内容が重要になります。また、保障内容が期待していたものと異なる、といったトラブルが発生することも多く、契約時によく確認する必要があります。
マンションを買う、住宅ローンを組む
住宅の購入は人生のビッグイベントです。頭金不要、諸費用の貸付けもあるといった、xxすると、手持ちの資金がなくともマイホームが持てる、と感じさせる広告もありますが、これらはその分将来にわたって負担する借金が増えることと同義です。支払が長期になるので金利、支払方法等を確認して無理のない計画を立てる必要があります。
有料老人ホームに入る
現代に生きる私たちは、生涯暮らしの中で色々な契約をします。介護保険制度によるサービスを受けるのも契約です。同じような施設に見えても有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、特別養護老人ホームなど種類は様々です。有料老人ホームでは、高額な初期費用を支払う場合も多く、退去時にはその返金の範囲などでトラブルになることもあります。条件をよく確認するなど正しい情報から合理的な判断をすることが、ここでも求められます。
民法と契約について
口約束と契約書の役割
1
契約をする
Q1& A1
意思表示の合致によって成立する法的な約束です。
●契約の基本的なルールは民法によって定められています。これを押さえておくと、この後学ぶ未xx者取消し、クーリング・オフ等について理解しやすくなるでしょう。
●民法は対等な当事者間を前提としています。そして、個人は日々の生活において、自分の意思と責任の下に社会を営むことを原則(私的自治の原則)としています。
●麻薬の売買のように反社会的な契約内容でない限り、当事者はお互いに協議の上、自由な意思に基づき自由な内容の契約を締結することができますが、決めたことに対してはお互いに守る義務(責任)が生じます。
2
契約を守る
Q2& A2
一旦成立した契約は欠陥商品だったなどの理由がなければ、勝手にやめることはできません。
●その上で、一方が契約を守らない場合、契約を守るように裁判に訴えることができ、また、相手の落ち度によって損害が発生した場合、その賠償を求めることができます。
●契約が守られなかった場合、裁判に訴えることができ、裁判を通じて強制的に守らせることができます。
●Q2の場合、店はプレゼント(例えばネックレス)を消費者に引き渡し、消費者はネックレスの代金を支払うことが契約内容です。ネックレスが最初から壊れていた場合、消費者は壊れていないネックレスを求めることができます。しかし、店が契約を守っている限り、返品はできません。
●なお、友達と遊園地に行く「約束」を破ってしまった場合、友達は大変傷つくかもしれません。といっても、こういった個人の人間関係にまで国家が介入し、裁判所が強制的に守らせようとするのは、個人の自由を阻害することになります。
●契約は口約束でも成立します。契約書は、契約内容を明確にし、後日の紛争に備えるため作成される書面です。
●日常の実務では、車の購入、賃貸アパートの契約、土地などの不動産の売買、継続的に通う英会話教室等の契約では契約書を作成します。高額な契約、継続的に契約関係が続く場合等では、個別の法律で契約書の作成が義務付けられていることが多いです。
●ひとたび署名又は押印すると、自らの意思で契約書の内容どおりの契約をしたことが推定されます。
●トラブルを回避するためには、契約書に書かれている内容を確認し、契約書の記載内容に納得してから署名又は押印をすることが大事です。また、契約書は必ず保管しておきましょう。
●民法では契約が守られないと社会関係において問題が発生するような特別な事項(例えば取引)について、お互いが守ることを前提とし、守らなかった場合のルールについて定めているのです。
●レシートは領収書なので店が代金を受領したことの覚書です。レシートがあって、商品未使用、契約から日数が経っていない場合、店が返品や交換に応じてくれることが実生活ではあります。これは、店が任意に消費者の求めに応じている顧客サービスの一環なので、返品に応じてくれなくても違法とはいえません。
3
契約をやめる ― 未xx者取消し
Q3& A3
一旦自分の意思に基づいて契約をした後、一方的に契約をやめることはできません。しかし、成人と比べて知識や社会経験が不足している未xx者は、適切な意思決定をすることが難しく不利益を被るこ
とがあります。そこで、民法は未xx者を保護するために、未xx者取消しの制度を設けています。
●民法に「年齢十八歳をもって、xxとする」(第4条)とあり、18歳未満の者
(未xx者)が法定代理人(通常は親権者)の同意を得ずに結んだ契約は、本人又は法定代理人が取り消すことができます(同法第5条第1項、第2項)。
●すなわち現行法では、「18歳未満」という点のみで契約の拘束力から逃れることができます。
●親権は通常は共同して行われるので、両親の同意が必要です。取消しの方法は相手への意思表示によって行い、様式は問いませんが、通常は書面で通知します。詳しくは消費生活センターへ相談しましょう。
●取り消すと契約は初めからなかったことになります。受け取った商品等は現状のまま返品し、使ってしまって残っていない場合には返す必要があり
ません。しかし、それが生活必需品の場合は、返品した商品を使用していたことで当然支出したはずの出費を免れていると考えられ、その意味では利益が残っているといえるため、その分を消費者は返す必要があります。
●未xxでも、親から渡された小遣いの範囲で契約した場合、成人してから代金を支払うなどして追認した(支払ったことで過去の事実を認めたこととなる)場合には取り消せません。また、自らxxだと嘘をついた場合も取り消せませんが、事業者に指示されて18歳と契約書に書いた場合、インターネットで単に「18歳以上ですか」との質問に対し「はい」をクリックしたにすぎない場合などは取り消せることもあります。
●未xx者取消しの制度が適用されなくなることを狙って、18歳の誕生日直前から勧誘し始め、メールやSNS等により関係を継続し、誕生日を過ぎてすぐに契約をさせる悪質な業者もいるので注意が必要です。
訪問販売・キャッチセールス※1・ アポイントメントセールス※2 | 不意打ち的に勧誘される(突然家に営業マンが来る、突然路上で呼び止められる※1、 突然電話があり呼び出される※2)。 | 8日 |
継続的なサービス | 語学教室・エステ・家庭教師・塾など7 業種。自分から店へ行って契約した場合も クーリング・オフできる。 | 8日 |
連鎖販売取引(マルチ商法・ネット ワークビジネスともいわれる) | 先輩、友人、知人から、「すぐに利益が出る」、「人を紹介することでバックマージン が入る」などと誘われる。最初の名目は様々だが金銭的負担を求められる。 | 20 日 |
教材
5-6ページ
4 契約をやめる─クーリング・オフ
街で呼び止められ、展示会場に行ったら勧誘され、
クーリング・オフの落とし穴
─ネットショッピングの場合─
(ネット通販、オンラインショッピング、電子商取引ともいう。)
あのお~すみません
Q4
& 断れなくて10万円の絵画を契約してしまった。
A4 この契約をクーリング•オフすることはできる?
②契約してから8日間であれば、クーリング•オフできる。
Q5& ネットショップでTシャツを買ったけれど
●「契約は守らなければならない」のが原則だ
が、消費者トラブルになりやすい取引につ この絵に目が
A5 似合わない。クーリング•オフできる?
①クーリング•オフできない。
●ネットショッピングは法律上のクーリング・オフ制度はない。
●ただし、ネットショップ独自に、返品の可否や、その条件についてのルールを定めている。
●返品のルール(利用規約)を、注文前に必ず確認しよう。
とまるなんて、さすがですねェ~
いては、契約をやめることができる特別な 一点もので、値上がりすれば
制度としてクーリング・オフがある(特定 高く売れるし
商取引法)。 理由は関係ない ・・・・ペラペラ・・・・・
●クーリング・オフをすると、消費者は受け 取った商品を事業者に返品し、支払った代金は全額返金される。
●詳しくは 国民生活センター クーリング・オフ
こんなトラブルがあります
「無料お試し」を 注文したのに、
定期購入になっている!
代金を払ったのに、 商品が届かない!
4
Q4
契約をやめる ― クーリング・オフ
路上等で声を掛けられ、店や喫茶店等に同行させて契約を締結するキャッチセールスの事例です。営業マンに路上で、xx
このほかにも…
ニセ物
請求書 定期コース
ご購入になります
連絡先不明
〇若者がトラブルにあいやすい販売方法とクーリング・オフ期間
契約した日から
気を付けたいネットショップの表示
販売方法
特 徴
期 間
●●●ショップ 当店は1999年の創業。商品品質。
信用第一!全て100%xx品保証!!
URL が不自然 ホーム 商品一覧 﨤品﨤却について お問い合わせ 字体(フォント)に通常使用されて
人気ブランド■■のバックで
(購入を希望しているサイトの 今期最も注目されている最新モデル! いない旧字体が混じっている
URLと違う) 購入する 在庫あり
50,000円➡10,000円
80%OFF 極端に値引きされている
△△のロゴが刻印された上品な デザインが人気の財布!
購入する 在庫あり
ワーク 3 なぜ、法律では上のような取引に関してクーリング・オフ制度を定めているのだろうか。
(ヒント)Q4 の消費者の状況や、上の表の「特徴」に着目。
住所が番地まで記載されていない
35,000円➡3,500円 支払方法が銀行振込みのみ
90%OFF
会社概要
■支払方法について
○○ショップ販売店 銀行振込 機械翻訳したような
住所:xxxxxx区 ■送料・配送について 不自然な日本語表現がある
連絡先:○○@xxx.xxx 送料無料!三日か五日届けます!
(消費者庁ウェブサイトを参考に作成)
&
◎事実と違う説明をされた。
◎メリットだけ説明され、デメリットを説明されなかった。
◎「帰って」と言っても営業マンに居座られて勧誘された。
◎「帰りたい」と言っても店から帰らせてくれず勧誘された。
➡こんな状況で契約した場合、消費者契約法によって契約を取り消すことができる。
【
架空請求・不当請求
アダルトサイトの 閲覧でも被害発生
◎確認画面がなく、すぐに登録となり請求された。 架空請求である
◎画像や年齢認証をクリックしただけで請求された。 可能性が高い。
A4
ケート、新規オープン、ちょっとお時間ありますか…等声を掛
話が違う!解約できるかな?と思ったら消費生活センター(☎188)へ
これって、ネットトラブル?と思ったら消費生活センター(☎188)へ
5
6
けられて呼び止められ、断りきれずに店等へ同行すると、勧誘されて思いもよらぬ契約をしてしまい、後悔することがあります。突然声を掛けられ絵画の話をされた場合、消費者にとって不意打ちのことであり、熟慮する期間がないため契約をするための情報が不足しています。クーリング・オフは、このような状況の下で消費者が契約の申込みや締結をした場合、一定期間頭を冷やして考える機会を与え
る制度です。
消費者契約法は、消費者と事業者との間の情報の質・量、交 渉力の○○に着目したルールといえる。
発展1】○○に入る漢字二文字を考えた上で、消費者が置か れている状況について話し合ってみよう。
支払わない、連絡しない。
・連絡すると、悪質業者から言葉巧みに、しつこく金銭の支払を要求されることになる。
・インターネット上では、自分が情報を出さない(入力しない)限り、どこの誰であるか個人の 特定はされない。
【発展2】
ネットショップの表示 画面を作ってみよう。
(ヒント)特定商取 引法によるルール。 消費者にとって必要 な情報、分かりやす さがポイント。
プラスα
クーリング・オフができない場合、契約はやめられる?
電話番号がなく
連絡先がEメールしかない
こんなネットショップには注意!
n
g
o
f
ええ?!
f
対処法
いえ、
その~???
断れなかったの!
頭を冷やす
話がちがう!
c
o
o
l
注意!
i
●本来守らなければならない契約を解除できる強力な制度なので、クーリング・オフできる販売方法は、特定商取引法によって定められています。生徒用教材P.5の記載以外に、電話勧誘販売(8日間)、業務提供誘引販売取引(いわゆる内職商法、サイドビジネス商法ともいわれる()20日間)、訪問購入(貴金属等の押し買い()8日間)があります。店舗で契約した場合、不意打ち性がないので原則的にはクーリング・オフはできません。ただし、エステティックや語学教室等、特定継続的役務提供として定められた7業種に関しては、長期間にわたる高額契約であり、結果が不確かであることから、より消費者が慎重に検討する必要があるので、店舗で契約をしてもクーリング・オフできます。また、利益や収入があると勧誘する連鎖販売取引や業務提供誘引販売取引は複雑な契約であり、説明されたような利益や収入がないことに気付くまでに期間を要することから、クーリング・オフ期間が 20日間となっています。
●クーリング・オフを通知する際に「高い」、「家族に反対された」、「思っていたのと違う」等の理由はいりません。なお「特別割引だから、クーリング・オフは使えない」、「サービスを受けているからクーリング・オフできない」、又は「大人なんだから親に頼らず判断しなくては」等のクーリング・オフを妨害する行為をすることは法律で禁止されています。
●特定商取引法においては、適用される取引に関して書面の交付が義務付けられています。したがって、厳密にはクーリング・オフの起算日は申込書面又は契約書面を受け取った日から計算します。書面を受け取っていない場合や、受け取った書面に不備があった場合は起算日が始まらないので、改めて書面を受け取った日から8日間を経過するまではクーリング・オフできます。クーリング・オフ期間が過ぎてしまったと思っても諦めずに消費生活センターに相談してみましょう。
クーリング・オフの効果▶▶▶ | クーリング・オフでは違約金を支払う必要はなく、支払った額は全額返金されます。消耗品※以外の商品は使っていてもそのまま返せばよく、着払いで返品できます。工事の契約をして、その施工が終了していても代金を支払う義務はなく、「元に戻してください」と言うこともできます。 ※健康食品、化粧品等 |
クーリング・オフの方法▶▶▶ | 書面(はがき等)又は電磁的記録(電子メール等)によって通知します。書面はコピーをとった上で特定記録郵便で発信し、電子メールは送信メールを保存しておくなど、証拠を残すことが望ましいです。法定期間内に通知を出せばよく、事業者に届くのはクーリング・オフ期間を過ぎていても構いません(発信主義)。 |
プラス
α
☆イラストの吹き出しを参考にロール・プレイングができます。不意打ち性、情報の質・量、交渉力の格差が出るようなシナリオを考えるとともに、断り方の練習ができます(P.14参照)。
消費者契約法による契約の取消し 更に学習を深める内容
(消費者契約法:2000年公布、2001年施行。関係条文第4条)
・上記のクーリング・オフ制度を定めている特定商取引法は、適用される販売方法が限定されているのに対して、消費者契約法は全ての消費者契約
(消費者と事業者との契約)を対象にしています。
そのため、クーリング・オフ期間が過ぎてしまった場合やクーリング・オフができない契約であっても次のような場合には契約を取り消すことができます。
・消費者トラブルの多くは、「話が違う」、「断れなかった」というものです。事実と異なる説明をされた、不確実なことを断定的に説明された、有利なことは告げられたが不利益なことをわざと告げられなかったことにより誤認して契約したという場合や、訪問販売業者に対して帰ってもらいたいと言っても居座られたり、店で帰りたいと言っても帰らせてくれず、契約せざるを得なかったという場合、消費者契約法により契約を取り消すことができます。また、若年者にも被害が多いと思われる恋愛感情を不当に利用したデート商法や進学・就職に関する不安をあおるセミナー商法、霊感等の特別な能力により消費者にそのままでは重大な不利益が生じることを示して不安をあおる霊感商法等により契約を締結した場合にも契約を取り消すことができます。2022年の法改正により2023年6月1日からは、両親に相談しようとしたところ「もう立派な大人なんだから一人で決めなさい」と威迫され相談を妨害されて契約をしたような場合も契約を取り消すことができるようになります。
・契約取消ではありませんが、2022年の法改正では、事業者の努力義務も拡充され、消費者が求めた場合に事業者は契約の解除に必要な情報を提供する努力義務が新設されました。例えばサブスクプション・サービス契約※を解約したい消費者に対してウェブサイト上でどのような手順で進めれば解約できるのかを説明すること等が事業者に求められることになります。
・消費者契約法は悪質な事業者に罰金等を科すものではなく、消費者自らが事業者に対して主張するための民事ルールです。つまり、不当な勧誘に対して取消しを主張するという消費者自らの主体的な行動が求められているともいえます。
・取消しの理由となる問題点を事業者が認めないと解決に至らず交渉が必要となるので、消費生活センターに相談しましょう。消費者契約法について忘れてしまっても、消費生活センターに相談することは覚えておきましょう。
※ここでいう「サブスクリプション・サービス契約」には、新聞・雑誌等の定期購読、インターネットのプロバイダー・携帯電話の契約、公共交通機関の定期券の購入等は含みません
注意! クーリング・オフの落とし穴 ―ネットショッピングの場合―
ネットショッピング(ネット通販、オンラインショッピング、電子商取引)の市場規模は増大し続けています。中・高校生もネットショッピングをしていること、実際に商品を確認せずに行う非対面取引で全世界との取引が可能という特性からトラブルになりやすいこと、クーリング・オフができると誤解している場合が多いことから、ネットショッピングについて詳しく学ぶページです。情報科でも活用できます。
Q5& A5
ネットショッピングに限らずTVショッピング、カタログ通販等の通信販売にはクーリング・オフ制度はありません。消費者が前もって広告や画面等を確認し、自発的に申込みをする不意打ち性のない取引のためです。「似合わない」のは消費者側の都合です。
●なお、返品や交換のルールを定めている事業者も多くみられます。商品を見ずに契約するので、返品や交換ができた方が消費者は安心して積極的に注文できるので、事業者にとっても、このルールはマイナスではないはずです。このようなルールが多くあることからクーリング・オフ制度があると勘違いしがちです。
●このルール(返品特約)は、商品を選択する際に重要な情報なので、広告やサイトの画面に明示しなければなりません。このルールが書かれていない
場合は、商品が届いてから8日間は消費者が送料を負担して返品することができます(クーリング・オフの場合、送料は事業者負担。違いに注意!)。
●「商品到着後3日であれば返品に応じます」等の返品特約があればそれが優先します。「返品不可」「ノークレームノーリターン」という表示があれば、下記の場合を除き返品できません。
●画面広告、注文フォームは、印刷又はスクリーンショットなどで保存しておきましょう。
こんなトラブルがあります 以下のようなトラブルが発生しがちです。
・商品が届かない
・注文品と違うものが届いた
しんがん
事 例 ダイエット効果がある5,000円のサプリメントが「1
・ブランド品の偽物だった…消費者がいくら偽物だと主張しても、実際に真贋を証明することは容易ではないため、トラブルを解決するのが困難な場合があります。
・ショップ(事業者)と連絡が取れない…架空や虚偽の連絡先の記載により雲隠れされることもあります。
・「お試し」と思って注文したところ、定期購入になっていた
回無料お試し」とあり、1回だけのつもりで注文した。ところが2回目としてサプリメントが届き、4,000円の請求書があり、定期購入であることに気付いた。スマホの画面をずっと下にスクロールすると、5か月以上の定期購入が条件と記載があった。
重 要 「返品不可」と記載があっても、注文と違う商品や不良品が届いた場合、交換や返品が可能です。
●「返品不可」と記載があっても、注文と違う商品が届いたり、不良品が届いたりした場合は、きちんと契約内容を守るように、事業者に求めることができます。契約を守ることができなければ、支払った代金の返金を求めることができます。
●事業者と連絡が取れなければ対応されません。また、「不良品は送っていない」と反論される等、争いになることもあるので、トラブルを避けるために以下の点に注意を払い、慎重に注文をしましょう。
ネット注文する前に確認するポイント
重 要
①1回限りの購入なのか(2回目以降も届くことはないか) ②2回目からは金額が変わるのか ③解約方法は明確か
※①②③の内容について申込みの最終確認画面で表示がされていなかったり、不実の表示や消費者に誤認させるような表示がされていた場合は、これにより誤認して申込みをした消費者は、申込みの意思表示を取り消すことができます。
気を付けたいネットショップの表示
・購入を希望しているサイトのURL と一致しているか…一致しない場合は、コピーサイト(偽サイト)の可能性があります。
・事業者の連絡先の記載はあるか…トラブルになり事業者と連絡を取ろうとしても、メールに返信がなく、住所や電話番号が分からなければどうすることもできません。
・日本語表記に違和感がある…海外の事業者の可能性があり、トラブルが生じた場合、言語や商習慣の違いから、(国内の事業者よりも)トラブルの解決が難しくなることがあります。
・極端な値引き価格…事業者の採算性という観点で考えれば、安すぎる価格は不審である(詐欺の可能性がある)ことに気付けるはずです。
特定商取引法に基づく画面記載事項
●ネットショッピングでは、消費者にとって画面(広告)が唯一の情報源であることから、表示事項が特定商取引法(第11条)により定められています。
架空請求・不当請求
「18歳以上」、「無料動画」をクリック(タップ)しただけでは、通常は有料の契約は成立しません。一方、「契約が成立するとは思わず操作した」、「有料であることを見落とした」などネット特有の不安感があるでしょう。このような場合、電子消費者契約法(第3条)によって、契約の申込内容について確認画面が表示されていなければ、錯誤(勘違い)による契約の無効を主張できる場合もあります。また、そもそも請求自体が架空ということもあります。いずれにしても、支払えば解決するのではなく、更なる請求が続くことになります。何とかしたい一心で、ネット広告を出している問題のある探偵業者等と契約し、多額の調査代金を支払わされてしまったという二次被害も発生しています。このようなネット上での請求に対しては、絶対にこちらから連絡せず、無視しましょう。不安な場合は、一人で悩むのではなく、消費生活センターに相談することが大切です。
①販売価格、送料 ②代金の支払時期、支払方法 ③商品の引渡時期 ④商品の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(返品特約がある場合のその表示)⑤事業者の氏名(名称)、住所、電話番号 ⑥代表者氏名又は通信販売業務の責任者氏名
その他、該当する場合は、⑦申込期限がある場合は、その期限 ⑧販売価格、送料以外に購入者等が負担する金額がある場合、その内容及び額 ⑨商品に隠れた瑕疵がある場合、販売事業者の責任について定めがある場合はその内容 ⑩ソフトウェアの取引の場合、動作環境 ⑪販売数量の制限等、特別な販売条件(サービス提供の条件)があるときはその内容 ⑪請求によりカタログ等を別送する場合、それが有料であるときは、その金額 ⑪電子メールによる商業広告を送る場合、事業者のメールアドレス