海外投資保険 Q&A
海外投資保険 Q&A
平成26年3月27日 14-制度-00028
海外投資保険におけるてん補内容、てん補事由、保険設計、保険契約条件、手続的事項等に関する取扱については、海外投資保険手続細則(平成13年4月1日 01-制度-0
0032)及び海外投資保険運用規程(平成13年4月1日 01-制度-00038)に定めるもののほか、本海外投資保険 Q&A によるものとする。
附 則
この規程は、平成26年4月1日から実施する。
海外投資保険 Q&A
目次
Ⅰ.海外投資保険の概要 1
1. 概要 1
QⅠ-1-1:海外投資保険の概要 1
QⅠ-1-2:海外投資保険の利用が可能な投資とは 1
QⅠ-1-3:リース契約 2
QⅠ-1-4:第三国向け再投資① 2
QⅠ-1-5:第三国向け再投資② 3
QⅠ-1-6:現物出資の場合 3
QⅠ-1-7:第三国からの送金の場合 4
QⅠ-1-8:投資者がSPCである場合 4
Ⅱてん補の内容(全般) 4
1. 約款のてん補内容(全般) 4
QⅡ-1-1:海外投資保険約款でカバーされるリスク 4
QⅡ-1-2:事業撤退リスク 4
QⅡ-1-3:パートナーリスク 5
QⅡ-1-4:保険金のお支払方法 5
QⅡ-1-5:事業の継続の不能 5
QⅡ-1-6:事業の休止 6
2. 特約 7
QⅡ-2-1:海外投資保険の特約 7
QⅡ-2-2:重要資産特約 7
QⅡ-2-3:部分損失特約 8
QⅡ-2-4:プレミアム特約① 9
QⅡ-2-5:プレミアム特約② 10
QⅡ-2-6:契約違反リスク特約① 10
QⅡ-2-7:契約違反リスク特約② 11
QⅡ-2-8:契約違反リスク特約③ 11
QⅡ-2-9:契約違反リスク特約④ 12
QⅡ-2-10:政策変更リスク特約 12
QⅡ-2-11:資源エネルギー総合保険B特約および地球環境保険特約 13
QⅡ-2-12:事業拠点等特約 13
3. 担保設定 13
QⅡ-3-1:投資先企業の株式への担保設定 14
QⅡ-3-2:再投資先企業の株式への担保設定 14
QⅡ-3-3:再投資先企業への劣後ローンへの担保設定 15
QⅡ-3-4:保険期間中に担保設定を行う場合 15
Ⅲてん補の内容(事由ごと) 15
1. 収用 15
QⅢ-1-1:収用リスク 15
2. 権利侵害 16
QⅢ-2-1:権利侵害リスク① 16
QⅢ-2-2:権利侵害リスク② 16
QⅢ-2-3:権利侵害リスク③ 17
3. 戦争・内乱・テロ 17
QⅢ-3-1:戦争・内乱・テロリスク 17
4. 天災等の異常な自然現象等 18
QⅢ-4-1:天災等の異常な自然現象等① 18
QⅢ-4-2:天災等の異常な自然現象等② 18
QⅢ-4-3:天災等の異常な自然現象等③ 19
5. 送金リスク 19
QⅢ-5-1:送金リスク① 19
QⅢ-5-2:送金リスク② 20
QⅢ-5-3:送金リスク③ 20
Ⅳ保険設計、保険契約条件等 20
1. 保険期間 20
QⅣ-1-1:保険期間 20
QⅣ-1-2:中途解約の可否 21
2. 保険金額、対価の額 21
QⅣ-2-1:保険金額の設定① 21
QⅣ-2-2:保険金額の設定② 22
QⅣ-2-3:保険金額の設定③ 22
QⅣ-2-4:保険金額の見直し① 22
QⅣ-2-5:保険金額の見直し② 23
QⅣ-2-6:保険金額の見直し③ 24
QⅣ-2-7:保険金額の見直し④ 24
QⅣ-2-8:保険金額の見直し⑤ 26
QⅣ-2-9:保険金額の見直し⑥ 26
QⅣ-2-10:為替レート① 26
QⅣ-2-11:為替レート② 27
QⅣ-2-12:為替レート③ 27
QⅣ-2-13:為替レート④ 27
QⅣ-2-14:計算における端数処理① 28
QⅣ-2-15:計算における端数処理② 28
3. タイプ、xx率、特約 28
QⅣ-3-1:xx率 28
QⅣ-3-2:保険お申し込みタイプ① 28
QⅣ-3-3:保険お申し込みタイプ② 29
QⅣ-3-4:特約の期中追加 29
4. 保険料 29
QⅣ-4-1:分割送金の場合の保険料計算方法① 29
QⅣ-4-2:分割送金の場合の保険料計算方法② 31
QⅣ-4-3:保険料返還 31
5. その他手続き 31
QⅣ-5-1:不正競争防止法にかかる誓約書 31
QⅣ-5-2:書類翻訳のご提出 31
Ⅴ保険期間中の承認、通知事項 32
1. 重大内変 32
QⅤ-1-1:重大な変更の通知義務① 32
QⅤ-1-2:重大な変更の通知義務② 33
QⅤ-1-3:重大な変更の通知義務③ 33
QⅤ-1-4:その他の変更の通知 33
2. 増資 34
QⅤ-2-1:増資分に対する新たな保険申し込み① 34
QⅤ-2-2:増資分に対する新たな保険申し込み② 34
3. 株式譲渡 35
QⅤ-3-1:株式譲渡① 35
QⅤ-3-2:株式譲渡② 35
QⅤ-3-3:株式譲渡③ 37
4. プレミアムの減損の場合の処理 37
QⅤ-4-1:プレミアムの減損 37
Ⅵ免責・不払・解除 37
1. 免責、不払・返還事由 38
QⅥ-1-1:免責、不払・返還 38
2. 解除事由 38
QⅥ-2-1:保険契約の解除 38
Ⅶ保険事故 39
1. 損失額の算定 39
QⅦ-1-1:損失額の算定 39
QⅦ-1-2:保険金のお支払い① 39
QⅦ-1-3:保険金のお支払い② 42
QⅦ-1-4:保険金のお支払い③ 43
QⅦ-1-5:保険金のお支払い④ 44
QⅦ-1-6:保険金のお支払い⑤ 44
QⅦ-1-7:保険期間と事業休止のタイミング 45
2. 請求手続き 45
QⅦ-2-1:保険金請求に必要な書類① 45
QⅦ-2-2:保険金請求に必要な書類② 46
QⅦ-2-3:保険金請求に必要な書類③ 46
QⅦ-2-4:保険金請求までに必要な手続き① 46
QⅦ-2-5:保険金請求までに必要な手続き② 47
3. 回収 47
QⅦ-3-1:回収納付義務① 48
QⅦ-3-2:回収納付義務② 48
Ⅰ.海外投資保険の概要
1. 概要
QⅠ-1-1:海外投資保険の概要
海外投資保険のカバーの対象について教えてください。
海外投資保険は、我が国企業が海外に有する資産(株式や不動産等の権利)について、外国政府による権利・利益侵害や戦争、テロ、天災といったリスクによる損失が発生した場合に、保険金をお支払いするものです。
今後新たに取得する海外資産だけでなく、既に保有済みの資産についても保険xxの対象としています。
QⅠ-1-2:海外投資保険の利用が可能な投資とは
海外投資保険を利用できる投資形態にはどのようなものがありますか。保険利用の条件がありましたら教えてください。
出資に対する海外投資保険(株式等) と権利等の取得に対する海外投資保険(不動産等)があります。 出資に対する海外投資保険(株式等)としては、直接投資のみならず、投資先企業を通じた再投資についても対象とできます。
出資比率等による利用制限はありません。なお保険の対象となる投資については、以下の要件を満たす必要があります。
① 海外投資について、投資先国等の政府の許可又は承認を必要とする場合にあっては、当該許可又は承認を証する書面を取得していること。
② 海外投資の投資先国等の経済情勢及び政治情勢について著しい問題がないと認められること。
投資先国がお引き受けの対象国であるかどうかのご確認は、HP(国・地域ごとの引受方針)でもご確認いただけます。なお保険お引き受けにあたりましては、案件ごとに個別審査を行います。
QⅠ-1-3:リース契約
我が国の航空機、電算機、その他機械等の貨物について、海外の客先とリース契約を結んだ場合、①これらの貨物が接収されたり、戦争等により損害を受けた場合、あるいは②送金規制等によりリース代金の受取不能となった場合には、海外投資保険でその損失をカバーすることができますか。
リース取引には大別してファイナンスリースとオペレーティングリースがあり、その種類によっては海外投資(不動産等)保険による対応が可能となります。
ファイナンスリースとは売買取引に準じたもので、オペレーティングリースは賃貸借契約に準じたものと考えられますが、このうちオペレーティングリースについては海外投資(不動産等)保険の対象となります。
すなわち、オペレーティングリースの場合、リース対象の貨物が貸し手の資産に計上されているため、その貨物が外国政府等(外国の政府若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる者。以下同じ。)によって接収されたり、戦争等や自然災害等により損害を受けて事業の用に供することができなくなったリスクについては、海外投資(不動産等)保険でカバーすることができます。
なお、リース契約におけるリース代金の受取不能は海外投資保険のカバーの対象ではありませんが、ファイナンスリースのリース代金の回収不能は、貿易一般保険の代金回収不能で対応できる場合があります。
QⅠ-1-4:第三国向け再投資①
オランダの子会社経由、インドネシアに出資することになりました。インドネシアのカントリーリスクについて保険でカバーしたいのですが、可能でしょうか。また可能な場合に対象となる事象、保険料率についても教えてください。
このような投資先企業を通じた再投資についても、海外投資保険のxxは可能です。
インドネシアに起因する事業不能等については、「インドネシア事業会社が保険の対象事由
(戦争・自然災害・権利侵害等)により損害を受け事業不能等に陥り、それを直接的な原因としてオランダ子会社が事業不能等に陥ったことによる損失」をカバーします。
この場合、外国政府等による権利侵害リスクについては、オランダの子会社(投資先企業)が保有するインドネシア事業会社の株式やインドネシア事業会社が保有する生産設備等をオランダの投資先企業の重要資産等に該当する旨の特約(重要資産特約)を付けて保険契約を締結することになります。
重要資産特約を付ける場合、保険料率は、投資先企業所在国(オランダ)と再投資先企業所在国(インドネシア)のうちいずれか高い方の料率が適用されます。
(詳しくは重要資産特約に関するご説明の部分をご参照ください。)
なおオランダの子会社が複数事業を行っている場合、インドネシアの事業損失について保険カバーを希望する場合は、海外投資保険の部分損失特約を選択いただくことで、xxが可能となります。(詳しくは部分損失特約に関するご説明の部分をご参照ください。)
特約をてん補する部分にあっては、投資先企業所在国、又は再投資先企業所在国の保険料率のうち、高い方が適用されます。また、対象とする再投資先企業が複数の場合は、再投資先企業ごとに計算の上、合算いたします。
QⅠ-1-5:第三国向け再投資②
今回、アジアのコイルセンターをシンガポールの持ち株会社で管理することになりました。この結果、シンガポールの事業投資会社の傘下には、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア等の企業が入ることになりました。このような第三国投資の場合、海外投資保険をxxすることはできますか。
このような投資先企業を通じた複数の企業への再投資についても、海外投資保険のxxは可能です。
タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア等のそれぞれの企業の事業損失について保険カバーを希望する場合は、海外投資保険の部分損失特約を選択いただくことで、xxが可能となります。(詳しくは部分損失特約に関するご説明の部分をご参照ください。)
特約をてん補する部分にあっては、投資先企業所在国、又は再投資先企業所在国の保険料率のうち、高い方が適用されます。また、対象とする再投資先企業が複数ありますので、再投資先企業ごとに保険料を計算の上、合算いたします。
QⅠ-1-6:現物出資の場合
新規会社設立にあたり、当社は株式取得のために、現地会社で使用する設備を現物出資することになりました。設備を現物で出資する場合でも海外投資保険をxxすることは可能ですか。
株式等の取得のために現金を送金するのではなく、現物(役務提供を含む)を投資した場合(以下「現物出資」)でも、当該現物出資についての資本金繰入価額が投資決議書等で確認できれば、海外投資保険を申し込むことが可能です。
また、当該貨物を出資者が取得した日(またはその貨物が生産された日)から起算して1年以内に輸出されることが申し込みの条件になりますので、注意が必要です。
QⅠ-1-7:第三国からの送金の場合
海外企業への出資を、日本からではなく第三国からの送金によって行いたいと考えています。日本からの送金がなくとも海外投資保険をxxできますか。
海外投資保険をxxする際に、日本からの送金は要件としておりません。保険申し込みにあたっては、お客様が出資を行ったことを証する書類をご提出ください。
QⅠ-1-8:投資者がSPCである場合
海外企業への出資を、日本のSPCを通じて行いたいと考えております。 この場合、SP Cが保険申込者、被保険者、保険金受取人となることは可能でしょうか?
SPCであっても、本邦に籍を置く法人である場合は、保険の申込者、被保険者、保険金受取人になることは可能です。ただし、約款に定める被保険者義務を履行できる場合に限ります。
Ⅱてん補の内容(全般)
1. 約款のてん補内容(全般)
QⅡ-1-1:海外投資保険約款でカバーされるリスク
海外投資保険では、具体的にはどのようなリスクが保険金支払いの対象となりますか。
海外投資保険約款の対象リスクとしては、主として、収用・権利侵害リスク、戦争等リスク、自然災害等リスク、送金リスクが対象となります。なお、外国政府等の契約違反リスクなど、特約を付けることでてん補される場合もあります。
QⅡ-1-2:事業撤退リスク
海外に工場を造りましたが、事業がうまくいかず撤退することになりました。このような投資損失は対象になりますか。
海外投資保険は、投資国の戦争・災害等や投資国政府の投資協定違反等の明らかなカント
リーリスクを直接的な原因として投資先企業が事業不能等に陥った場合の損失のみがてん補されます。したがいまして、お客様の事業の失敗による撤退はてん補されません。
QⅡ-1-3:パートナーリスク
海外のパートナー(民間企業)と合弁事業を立ち上げましたが、パートナーに資産を持ち逃げされました。このような場合の損失は、保険金支払いの対象となりますか?
海外投資保険は、投資国の戦争・災害等や投資国政府の投資協定違反等の明らかなカントリーリスクを直接的な原因として投資先企業が事業不能等に陥った場合の損失のみがてん補されます。ご質問のような合弁事業のパートナーリスクは対象としておりません。
QⅡ-1-4:保険金のお支払方法
損失のてん補方法について教えてください。
海外投資保険の保険金のお支払いは実損払いとなります。
証券記載の保険金額を限度として、約款の規定に従い算出される損失額にてん補率(95%※)を掛けた額が支払保険金額となります。
支払保険金 = 損失額 × てん補率(95%) ≦ 保険金額
※資源エネルギー総合保険 B 特約付案件又は地球環境保険特約付案件の場合は、てん補率が 100%となります。なお、資源エネルギー総合保険 B 特約及び地球環境保険特約については、QⅡ-2-11をご覧ください。
QⅡ-1-5:事業の継続の不能
戦争・自然災害等リスクや権利侵害リスクの場合の要件となっている、「投資先企業に事業の継続の不能が生じたこと」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。また事
業の休止との違いはなんでしょうか。
「事業の継続の不能」とは、事業継続が将来にわたって困難になったことをいいます。具体的には、爆撃による施設損壊等の物理的損害による事業継続不能のみならず、政情悪化による国外退去やサプライチェーンへの損害の影響継続により、将来にわたって事業を継続できなくなった場合(事業を継続しても長期的に事業会社の自己資本が毀損していくよ
うな状況が見込まれる場合も含みます。)も対象となります。
他方、「事業の休止」とは、事業再開を前提として事業会社が当該事業活動を停止することをいいます。事務所閉鎖など物理的な停止のみならず、治安の悪化やサプライチェーンの途絶などにより実態として操業不能な状態になっている場合も含みます。
なお「事業の再開」とは、 事業会社が停止していた事業活動を再開することをいいます。事業再開のタイミングについてはケースバイケースで異なりますが、例えば物理的な停止状態が解消した時(立入制限解除、電気供給再開、生産設備の修理が完了し稼働可能となった時 等)や、事業活動中断の原因が解消した時(必要部品や代替納入先の確保、取引先の事業再開、経済活動が正常化 等)等がこれにあたります。
なお、事業の休止については、3カ月以上の事業の休止が保険金お支払いの要件となります。
QⅡ-1-6:事業の休止
複数ある工場の1つが停止した場合や、製造ラインの一部がストップした場合等は「事業の休止」に該当しますか?
事業の休止に該当するには、投資先企業の事業全体がストップしていることが要件となります。複数あるうちの一つの工場の停止や、一工場内の製造ラインの一部がストップした場合はこれに含まれません。
再投資スキームにおいては、部分損特約の有無により対応が異なります。特約を付けていただいている場合は再投資先企業が事業の休止に陥ったことが要件となりますが、そうでない場合は再投資先企業の事業休止により投資先(中間会社)自体も事業休止に陥ることが要件となります。また、投資先(中間会社)が持株会社事業のみならず、自らも事業を行っている場合であって、当該事業が非常事由により中断していても、再投資先企業の事業が継続している場合には、投資先(中間会社)の「事業の休止」には該当しません。
なお、直接投資、再投資の場合を問わず、事業拠点等特約を付けていただいている場合は、事業の休止を認定する単位は特約で定めた拠点単位ごとになりますので、その場合は複数あるうちの一つの工場の停止についても「事業の休止」に該当します。他方で、認定する単位が機械ごと、工場のラインごとのような、一事業拠点とするにはあまりに細かい単位となっている場合は、この特約を付けることができません。事業拠点特約についてはQⅡ
-2-12をご参照ください。また、どのような単位で特約を付けることができるかは、事業の形態や個別の状況によって異なります。
2. 特約
QⅡ-2-1:海外投資保険の特約
海外投資保険の特約にはどのようなものがありますか。
海外投資保険の主たる特約としては、下記の通りです。
①重要資産特約
②部分損失特約
③事業拠点等特約
④プレミアム特約
⑤契約違反リスク特約
⑥合法的政策変更リスク特約
⑦資源エネルギー総合保険B特約
⑧地球環境保険特約
※それぞれの内容については関連部分の説明をご参照ください。お引き受けにあたっては事前の審査が必要になります。
QⅡ-2-2:重要資産特約
重要資産特約とはどのようなものでしょうか。
外国政府等による権利侵害リスクのカバーについて、投資先企業の重要資産等が投資先国以外の第三国に存在する場合、この特約を付けることにより、第三国に存在する重要資産等に対する権利侵害リスクも保険の対象とすることができます。この場合、あらかじめ特約にて重要資産の特定を行った上で保険をお引き受けいたします。
たとえば、A国に所在する投資先企業が隣国のB国内に重要な生産拠点を所有している場合、B国政府による権利侵害により投資先企業が損害を受け事業不能等に陥った場合の損失についてもカバーされます。
なお、保険料率については、投資先企業と重要資産等所在国のうちいずれか高い料率が適用されます。
QⅡ-2-3:部分損失特約
部分損失特約とはどのようなものでしょうか。複数の再投資先企業の事業のうち、リスクを感じている一部の企業の事業についてのみ、部分損失特約を付けて海外投資保険を利用することはできますか。
部分損失特約を付して、特定の企業の事業に限定して保険をxxすることが可能です。本保険の対象となる投資先企業とは、日本のお客様が直接投資(出資)されている相手先企業を指しますが、一の海外投資拠点(投資先企業)から、複数の再投資先企業に事業展開されるお客様が、一部の再投資先企業を対象に本保険を利用される場合に選択いただくのが「部分損失特約」です。なお部分損失特約では、投資先企業の財務諸表等における当該再投資先企業の株式等評価額が保険価額や保険金算定のベースとなりますので、財務諸表等において当該評価額が確認できることがご利用の条件となります。
部分損失特約の概要については下記のとおりです。
(1)保険契約
投資先企業に対する契約を本契約とします。再投資先企業をてん補する場合は、特約で、てん補対象とする再投資先企業をご選択ください。
(2)取得のための対価の額(保険価額)
投資先企業については、本邦からの出資金送金または投資先企業の純資産額のうちお客様持ち分が保険価額となります。再投資先企業については、上記の投資先企業の保険価額の内、原則として、てん補対象に選択した再投資先企業に対する出資額が保険価額となります。
なお、特約の保険価額合計は、本契約における保険価額を上回ることはできません。
(3)保険料
本契約の保険料は以下の計算式で計算されます。
保険金額(除く特約部分の保険金額)× 投資先企業所在国の国料率特約に対する保険料は以下の計算式で計算されます。
てん補対象再投資先企業の保険金額 × 投資先企業所在国又は再投資先企業所在国の国料率の内、高い方。
てん補対象再投資先企業が複数存在する場合には、各再投資先企業毎に計算の上、合計します。
(4)損失額の算定について
再投資先企業の損失額の算定については、投資先企業の財務諸表における再投資先企業株式等の毀損額が基準となります。
QⅡ-2-4:プレミアム特約①
プレミアム付きで取得した株式等について、プレミアムを含めて全額を対象としてxxすることができますか。
プレミアム特約を付けた場合に、プレミアムを含めて全額を対象としてxxすることが可能です。
プレミアム特約は、収用・権利侵害、戦争、自然災害などにより保険事故が発生した場合に、お客様の財務諸表における投資額と、出資先企業の簿価純資産額のうちお客様の持ち分に相当する額との差額(以下「プレミアム相当額」といいます。)について、この特約を付した場合には、てん補の対象とするものです。
通常、支払保険金は事故直前の投資先企業の簿価での純資産額での持ち分の内、損失として認められた部分が従来通り基準となりますが、プレミアム特約を付した場合には、プレミアム相当額の内、損失と認められた部分を加算することができます。
従いまして、プレミアム特約を付した場合の保険金は、以下のように算出されます。
((企業の簿価純資産額(持ち分)-企業の簿価純資産額(持ち分)の残存価値)
+(事故直前のプレミアム相当額-プレミアム相当額の残存価値))×95%(てん補率)
=保険金
(ただし、下線部分がマイナスの場合、ゼロとします。)
なお、上記の「プレミアム相当額」は、お客様の当初投資計画の期間に基づき決定した償却期間で定額償却するものとします。(最長20年)。また、お客様が当該投資の減損処理を行った場合には、同様にプレミアム相当額を減損するものとします。
QⅡ-2-5:プレミアム特約② 当社では IFRS の会計基準を採用しております。同会計基準ではプレミアム(=のれん)の償却が認められておらず、日本の会計基準のように 20 年で定額償却することはありませんが、以下のような場合の特約上のプレミアム額の設定方法について教えてください。 ① 投資先株式の取得日(送金日):2012 年 3 月 3 日(出資比率 100%) ② 保険申込日:2013 年 2 月 1 日 ③ 投資先の決算期:12 月決算 ④ 株式取得金額:5000 万ドル ⑤ 投資先の簿価純資産額:2011 年度末:3000 万ドル、2012 年度末 3100 万ドル ⑥ 投資先事業計画 | ||||||||||||
年度 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | ||
税引後利益 額(万ドル) | 100 | 100 | 150 | 200 | 200 | 250 | 250 | 250 | 300 | 300 |
プレミアム特約の運用と実際の会計処理は一致するものではなく、実際の会計処理にかかわらず、保険契約においては一律以下のとおり取り扱います。
取得時のプレミアム金額は、株式の取得額(5000 万ドル)から取得時の直近年度の投資先簿価純資産額(3000 万ドル)を控除した額(2000 万ドル)となります。プレミアム金額は、投資先企業についての事業計画(又は投資先の決算の実績)に基づき、取得年度からの税引後利益の累計額がプレミアム金額を上回るまでの期間(最長 20 年)において定額にて減額することとなります。上記の例では、取得年度からの税引後利益の累計額がプレミアム金額である 2000 万ドルを上回るのは 2021 年度ですので、減額期間は 10 年間となり、毎年の減額金額は 200 万ドル(2000 万ドル÷10 年)となります。
保険のお申し込み時期が投資先の決算年度を跨ぐような場合には、お申し込み時期までに経過した投資先の決算年度毎にプレミアムを減額させていただくこととなりますので、上記の事例ですと保険申込時におけるプレミアム金額は 1800 万ドルとなり、その後保険年度
ごとに 200 万ドルずつ定額で減額することとなります。
また、取得のための対価の額は保険のお申し込みの直近の投資先事業年度の投資先の簿価 純資産額(3100 万ドル)と上記減額後の各年度のプレミアム金額との合計額となりますので、上記の事例では保険年度1 年目(2013 年 2 月~2014 年 1 月)の取得のための対価の額は、4900 万ドルとなります。
QⅡ-2-6:契約違反リスク特約①
「外国政府等の契約違反」については特約でカバーされる場合があるということですが、どのようなリスクが対象となるのでしょうか。
契約違反リスク特約は、投資先国での事業に関し「外国政府等」と電力や燃料の供給契約、売電契約などの私的な契約を結んだ場合、当該契約について、「外国政府等」の契約違反や一方的な契約破棄といった行為に起因して投資先企業が事業不能等となったことによる損失をカバーします。この場合の損失額は、原則として対象契約に基づき外国政府等に対して請求可能な額とし、保険金額を限度としてお支払いします。外国政府等と契約違反の有無や賠償金額について争いがある場合は、対象契約に基づく仲裁等の方法により確定した金額が損失額となります。また、お引き受けにあたっては、原則として当該契約において契約相手方である外国政府等との間に紛争が生じた場合の解決方法が規定されていることが必要です。
なお、特約xxにあたっては、追加保険料(年0.2%)の支払いが必要となります。また、お引き受けできるか否か、どういった事象で保険金をお支払いできるかは個々のケースごとの判断となります。
QⅡ-2-7:契約違反リスク特約②
「契約違反リスク特約」の契約とはどのようなものを指しますか。また、契約の当事者について要件はあるのでしょうか。
契約違反リスク特約のxxにあたっては、外国政府等(バイヤー格付が G 格であることを要件としています。)との間で、書面での「契約書」を締結していることが必要です。
投資者側の契約当事者は、本邦親会社(保険ご利用者)であっても、あるいは投資先企業(再投資スキームの場合は事業会社)であっても対象となります。
なお特約の対象となる契約は、事業不能等の直接の原因となるような契約、または契約のうち一部の条項に限定されます。特約xxの際、対象となる契約に基づく権利・利益を特定して保険をお引き受けします。
QⅡ-2-8:契約違反リスク特約③
契約違反リスクの対象となる事故の例について教えてください。
想定されるケースとしては、発電所の建設にあたり、現地政府との間で価格等を定めた電力購入契約を結んだが、建設完了後、現地政府はその履行を実施しなかったため、これが原因で投資先企業が操業不能となり、契約に定める損害賠償金を現地政府が支払わなかった場合が考えられます。契約違反の有無、損害賠償金額について現地政府と争いがある場合については、QⅡ-2-6に記載するとおりです。
QⅡ-2-9:契約違反リスク特約④
当社が 100%出資の海外 SPC を通じて第三国に再投資を検討しています。この第三国で行われる事業については、再投資先国政府との間で結ばれる当該事業に関する各種契約の着実な履行が事業遂行上で不可欠のものとなっているため、これら契約について契約違反のxxを検討しています。そこで、投資先企業(海外SPC)ではなく、第三国にある再投資先企業に対して契約違反リスクへの対応は可能でしょうか。
契約違反リスク特約をxxいただくことで、第三国にある再投資先企業の契約違反リスクに対応することが可能となります。
なお、特約xxにあたっては、追加保険料(年0.2%)の支払いが必要となります。また、ケースによってはお引き受けできない場合もございます。
QⅡ-2-10:政策変更リスク特約
政策変更リスク特約の内容について教えてください。
外国政府等による権利侵害については非常リスクとして保険の対象となりますが、これに 該当するためには国際法または国内法に照らして違法な行為であることが要件になります。一方で、事業地国の政府が権限の範囲内で正当な手続に基づき許可取消等を行う場合など は違法な行為には該当しません。政策変更リスク特約は、このような違法ではない外国政 府等による行為を直接の原因として投資先企業が経済的な損失を被った結果、破産手続き の開始に至った場合に保険金をお支払いすることになります。
このリスクを保険カバーの範囲に含める場合は対象となる政策変更の内容を予め特約に定めることになっておりますが、案件毎に対象とするリスクについて保険を引き受ける前に審査を行い、その結果お引き受けできない場合もあります。また、現状では、この特約の対象となるセクターは資源・エネルギー、インフラ(原子力、鉄道等)、環境(新エネルギー等)のプロジェクトになっています。
なお、特約xxにあたっては、特約保険料(年0.85%)の支払いが必要となります。また、お引き受けできるか否か、どういった事象で保険金をお支払いできるかは個々のケースごとの判断となります。
QⅡ-2-11:資源エネルギー総合保険B特約および地球環境保険特約
資源エネルギー総合保険B特約と地球環境保険特約の対象となる案件はどのようなものですか。
資源エネルギー総合保険は、我が国事業者がエネルギー・鉱物資源の生産プロジェクトの権益取得・引取案件のために行う出資を対象としています。
地球環境保険特約は、温室効果ガスの排出削減に資するプロジェクトとして、一定の要件を満たすもの(具体的には省エネ、新エネ、原子力、ウラン開発、CDM、CCS、植林、 JCMの8分野が対象となります。)
通常の投資保険のxx率(最大)・てん補率が 95%であるのに対し、特約を付けた場合には 100%カバーが可能となります。
QⅡ-2-12:事業拠点等特約
事業拠点等特約とはどのようなものでしょうか。
投資先企業に複数の事業拠点等がある場合、通常は一部の拠点において事業不能等が発生したとしても、他の事業拠点等が事業活動を継続している場合は保険金のお支払い対象とはなりませんが、この特約を付けることにより特定の事業拠点等のみが事業不能等となった場合についても保険金のお支払い対象とすることができます。
本特約をお引き受けできるのは、事業拠点等において事業不能等が発生した場合についての損失額算定が可能な場合に限ります。具体的には、事業拠点等別に B/S を作成している場合や、投資先企業の経理台帳(当該企業の監査済財務諸表を作成する際の基礎となるもの)において、各事業拠点等における事業資産等の内容・簿価資産額等の確認ができる場合をいいます。お引き受けにあたっては、そのような経理書類にて区分・金額の内容を事前に確認した上で、特約の対象とします。
なお、特約xxにあたっては、追加保険料(年0.1%)のお支払いが必要となります。また、どのような事業拠点等ごとを事故単位とできるかは個々のケースごとの判断となります。
3. 担保設定
QⅡ-3-1:投資先企業の株式への担保設定
プロジェクトファイナンスによる資金調達を予定しており、投資先株式にはシニアレンダーのために質権が設定されますが、海外投資保険をxxすることは可能でしょうか。
保険の目的である投資先企業の株式に質権が設定されている場合でも、海外投資保険をxxすることは可能です。その場合、保険金請求時までに質権を解除して頂く必要があります。
ただし、質権実行後も被保険者たる地位がもともとの出資者(海外投資保険のご利用者)に存続すること、質権実行後株主となったシニアレンダーが保険金請求を行わないこと等を合意することにより、質権解除を要件とせずに保険金をお支払いすることが可能となるケースもございます。(※シニアレンダーと合意して頂く内容を記載した雛形を用意しております。)このように、質権解除を要件とせずに保険金をお支払いすること前提としたxxの場合は、保険料率について 10%の割増が適用されます。
なお、戦争等保険事故原因が発生し投資先企業が損害を受ける前に既に質権が実行されていた場合は、保険の対象とはなりません。
保険金のお支払額は投資先企業の純資産の毀損額をベースに算出することになります。事故直後の評価額を確認するため、質権実行後であっても投資先企業の財務諸表等をご提出いただく必要がございます。
QⅡ-3-2:再投資先企業の株式への担保設定
投資先企業から再投資により行う事業について、部分損失特約を付けて海外投資保険をxxしており、当該再投資先企業(事業会社)の株式には質権が設定されています。戦争等により再投資先企業が 3 カ月以上の事業休止となった場合、事業休止後すぐに質権が実行されてしまったとしても保険金を受け取ることができますか。
再投資先株式に質権が設定されている場合は、QⅡ-3-1に記載するようなレンダーとの合意を必要とせず、保険金をお支払いすることが可能です。ただし、戦争等の保険事故の原因が発生し、再投資先企業が損害を受ける前に既に質権が実行されていた場合は、当該再投資先企業に関する損失については保険の対象とはなりません。
保険の対象となる場合、保険金のお支払額は投資先企業の財務諸表等における再投資先企業株式等評価額の毀損額をベースに算出することになりますが、質権実行後における事故直後の評価額には再投資先企業の純資産額のうち質権実行前の持ち分比率を乗じた額を加えることになり、質権実行後であっても当該再投資先企業の財務諸表等を提出していただく必要がございます。
QⅡ-3-3:再投資先企業への劣後ローンへの担保設定
投資先企業から劣後ローンにて再投資先企業に融資する場合において、当該ローンにシニアレンダーのために担保権が設定されているケースでも、海外投資保険をxxすることは可能でしょうか。
劣後ローンに担保権が設定されている場合であっても海外投資保険をxxすることができます。てん補責任額の算出方法に関する考え方はQⅡ-3-1と同様です。
なお、株主から投資先企業に対して直接劣後ローンを供与する場合は、当該ローンにシニアレンダーのために担保権が設定されているケースであっても、海外事業資金貸付保険(劣後ローン特約)をご利用いただけます。
QⅡ-3-4:保険期間中に担保設定を行う場合
既に海外投資保険をxxしている場合において、保険期間中に投資先企業の株式に質権を設定することが求められました。xx後の質権設定は可能でしょうか?
xx後であっても、質権設定することは可能です。また、QⅡ-3-1に定める合意書において、質権実行後もお客様の被保険者たる地位がもともとの出資者(海外投資保険のご利用者)に存続すること、質権実行後に株主となったシニアレンダーが保険金請求を行わないこと等が確認出来る場合は、解除を要件とせず保険金をお支払いすることが可能となるケースもございます。
なお、投資先企業の株式に質権を設定する場合、約款に定める義務により、被保険者(質権設定者)と質権者と連名で日本貿易保険に対し事前の承諾申請を行っていただく必要がございます。
Ⅲてん補の内容(事由ごと)
1. 収用
QⅢ-1-1:収用リスク
収用リスクでカバーされるのは、具体的にどのようなケースでしょうか。
外国政府等が収用や国有化宣言を行ったことにより、本邦投資者(保険ご利用者)が保有
する出資先企業の株式を奪われた場合や、出資先に対する配当金の支払い請求権を外国政府等により奪われたことによる損失をカバーします。
なお投資先企業が保有する株式・不動産等が外国政府等により収用された場合については権利侵害リスクでカバーできる場合がありますので、QⅢ-2-1をご参照ください。
2. 権利侵害
QⅢ-2-1:権利侵害リスク①
約款第 2 条第 1 項第 4 号(「事業の遂行上特に重要なものを外国政府等により侵害されたこと」)で保険金の支払い対象となる具体的な事例を教えてください。
権利侵害は「外国政府等」による行為を対象とするもので、民間企業等による侵害行為は対象とはなりません。また、外国政府等による行為の結果、権利・利益等について損害が生じたとしても、その行為が合法的なものである場合には保険の対象とはならず、国際法または国内法に照らして違法な行為であることが要件となります。また、外国政府等と結んだ契約が不履行となったことによる損失は、別途特約を付すことにより保険の対象としてお引き受けできる場合があります。(QⅢ-3-1をご参照ください。)
典型的な事例としては、外国政府等が投資先企業の重要な資産(土地・建物等)を収用し、かつ補償金が支払われないことが挙げられます。また、投資者であるお客様や投資先企業に責がないにもかかわらず、一方的に外国政府等が事業の継続に必要なライセンスを剥奪するようなケースも該当する場合があります。
上記に加えて、外国政府等が国際協定や二国間投資協定等に違反する政策を保険契約締結後新たに導入したことと、投資先企業の事業継続不能との因果関係が認められた場合も権利侵害に該当いたします。
違法な行為であることの認定にあたっては、国内法違反の場合は裁判による判決が必要となります。国際法違反の場合は、必ずしも国際仲裁による判断等を求めるものではなく、仲裁判断の事例やxxな第三者意見を参考に、権利侵害に該当するかを個別に判断します。
QⅢ-2-2:権利侵害リスク②
国産化政策がとられた結果、必要な原材料の調達が難しくなり、製品の生産量が徐々に減尐し、最終的に事業継続不能(または3カ月以上の事業休止)に陥りました。この場合、保険金は支払われますか。
このような国産化政策が、「外国政府等による権利侵害」に該当する場合には、保険事故として保険金のお支払い対象となります。
「外国政府等による権利侵害」に該当する場合とは、たとえば投資先の国が WTO に加盟しており、このような国産化政策が WTO の TRIM 違反措置に該当する場合や、日本と投資先国が二国間投資協定を結んでおり、その中で規定されている内国民待遇に違反する場合などが考えられます。
保険事故の認定にあたっては、投資先国の事業継続不能(または3カ月以上の事業休止)と国産化政策導入の間に因果関係があることが必要ですので、事業不能等の発生経緯や損害の状況、代替手段の有無、今後の事業見通しなどについて、お客様よりご説明をいただきます。
なお、事業継続が可能な場合であって、当初予定された利益率を確保できないために事業撤退(売却)するようなケースは保険事故とみなすことはできません。
QⅢ-2-3:権利侵害リスク③
C 国に家電製品の合弁会社を設立して、製品を国内販売しておりますが、地場企業が当社の特許権を侵害して模造品を製造し、当社のブランドを付けて販売しているため、合弁会社は甚大な損害を被っております。この場合、海外投資保険でてん補されるでしょうか。
このようなケースの場合は海外投資保険では保険金は支払われません。本ケースの場合、偽ブランド商品を製造販売しているのは民間企業であって、それが違法行為であっても、相手国政府が投資先企業の権利を直接侵害しているわけではないので、保険金をお支払いする対象とはなりません。
3. 戦争・内乱・テロ
QⅢ-3-1:戦争・内乱・テロリスク
海外子会社であるA 社は、B 国で自動車製造販売事業を行っています。戦争により、A 社の販売先がすべて爆破されてしまいました。A 社の工場は爆破地点からかなり離れた場所にあったので無事でしたが、販売先がすべて爆破されたことに伴い、A 社は在庫を抱えたまま連鎖倒産に追い込まれました。倒産時点では既に戦争が終わっていましたが、このような場
合、保険金が支払われる対象となるのでしょうか。
戦争による取引先の被害を原因とした販売不能は、実質的に操業不能な状態であることを確認できた場合には保険金をお支払いする対象となります。
保険事故の認定にあたっては、子会社の破産と戦争の間に因果関係があることが必要ですので、連鎖倒産に至るまでの発生経緯や損害の状況などについて、お客様よりご説明をい
ただきます。
4. 天災等の異常な自然現象等
QⅢ-4-1:天災等の異常な自然現象等①
投資先国においてSARS などの伝染病が流行し、感染の拡大を防止するために投資先である製造会社の所有する工場を閉鎖し、その期間が3カ月を超えた場合、海外投資保険の「3カ月の事業の休止」でカバーすることができますか。なお投資先企業の製造拠点は1箇所のみですので、工場閉鎖により投資先企業の事業はストップしてしまいます。
伝染病の流行のため外国政府の命令により操業を3カ月以上停止した場合は、「異常な自然現象による事業不能等による損失」として保険金のお支払い対象となります。
保険事故の認定にあたっては、工場の閉鎖に伴う投資先企業の事業休止と SARS 発生との間に因果関係があることが必要ですので、事業休止の発生経緯や損害の状況、事業再開の見込などについて、お客様よりご説明をいただきます。
なお投資先企業が複数の拠点を有しており、別の事業拠点では通常通り事業が継続されている場合、「投資先企業の事業休止」とは言えず、保険金お支払いの対象とはなりませんのでご注意ください。ただし、投資先企業が複数の拠点を有する場合であっても、事業拠点等特約を付けていただいている場合には、単一の事業拠点等の事業休止と SARS 発生との間に因果関係が認められれば、保険金お支払いの対象となります。
QⅢ-4-2:天災等の異常な自然現象等②
停電、配水不能、鉄道不通などにより、投資先企業が事業継続不能や3カ月以上の事業の休止に陥った場合、海外投資保険で保険金は支払われるのですか。
停電、水の供給不能、鉄道不通などによる投資先企業の事業継続不能や3カ月以上の事業の休止については、天災等との因果関係がない場合において、海外投資(株式等)保険約款第 2 条第 1 項第 3 号に列記されている事由に該当しないため、保険金をお支払いする対象にはなりません。
ただし、電力供給や水供給について投資先政府との間で契約がある場合において、当該契約違反が生じたことによる事業不能等については、あらかじめその「契約違反」のリスクについて特約を付して保険をxxした場合は、保険金をお支払いいたします。
また、特に鉄道不通については、海外投資(株式等)保険約款第 2 条第 1 項第 3 号に規定されている「ストライキによる輸送施設の機能の停止」に該当する場合は保険金をお支払
いする対象となります。
QⅢ-4-3:天災等の異常な自然現象等③
自然災害により現地工場の設備が被害を受けました。事業は継続していますが、工場設備の損害について、保険金の請求はできますか?
海外投資保険においては、自然災害により投資先企業が損害を受け、事業が3カ月以上休止した場合または事業撤退を余儀なくされた場合にお客様が被る損失が対象となります。よって、投資先企業が事業を継続している状態で工場設備に発生した損害については、本保険ではカバーしておりません。
5. 送金リスク
QⅢ-5-1:送金リスク①
元本部分についての送金リスクは、どのようなものが対象となるのでしょうか。
元本については、「元本喪失取得金」、すなわち株式の売却代金や会社清算による配当金などの送金リスクが対象となります。
送金不能事故は、具体的には以下の5つをいいます。イ.為替取引の制限又は禁止
ロ.戦争等による為替取引の途絶
ハ.政府による管理(モラトリアム等)
ニ.送金許可の取消し又は外国政府等がその許可すべきことをあらかじめ約していた場合においてその許可をしなかったこと
ホ.イからニまでに掲げる事由の発生後における外国政府等による没収
為替取引の制限又は禁止については、外国政府のとった措置であれば、為替取引の制限、禁止の根拠が法令に基づく措置か、行政処分に基づく措置か、あるいは法令の根拠のない単なる事実上の措置かは問いません。ただし、保険契約締結後に新たに行われた措置であることが必要です。また、当該外国政府の措置に関し、当事者に何らかの帰責性がある場合には保険事故には該当しません。
QⅢ-5-2:送金リスク②
子会社からの配当金や投資資金の引き揚げにあたり外貨送金許可制をとっている国において、当該資本取引について許可がおりなかった場合も保険カバーの対象となりますか。
保険契約締結時点において、既に送金許可制がとられていた場合において、許可が出なかったことにより送金ができない場合については保険カバーの対象とはなりません(外国政府等が許可すべきことを予め約していた場合を除きます。)。
ただし、許可が出なかった場合であっても、当該不許可の理由が外貨不足である場合など実質的に為替取引の制限又は禁止と同視できるような場合には、保険金支払いの対象となります。
QⅢ-5-3:送金リスク③
中間会社(A 国)を経由して第三国再投資(B 国)を行っている場合、事業地国である B 国から A 国の中間会社への配当金の送金について生じた送金不能は対象になりますか。
保険事故となるのは「本邦への送金」において不能が生じた場合ですので、通常は中間会社(A 国)からお客様(日本)への送金のみが対象となります。
ただし、中間会社(A 国)において、「B 国の事業会社から配当があった場合には、本邦株主への配当を行う」等の株主総会決議その他の中間会社の設立準拠法に従った配当又は投資元本の本邦への送金に係る社内手続を行うことができる場合、B 国から A 国への配当金送金に対する送金リスクを保険の対象とすることができます。
Ⅳ保険設計、保険契約条件等
1. 保険期間
QⅣ-1-1:保険期間
海外投資保険の申し込みを行いました。保険の効力はいつから発生しますか。保険申込日からとなるのでしょうか。
海外投資保険の場合、「保険申込日」=「保険の効力発生日」とはなりません。保険申込日以降、案件の引受審査を経たのち、日本貿易保険が承認することで保険契約締結となります。審査期間は案件により異なりますが、必要書類が全てそろっていれば、通常は数週間
~1カ月程度です。そして、この「保険契約締結日」の属する月の1日が、「保険の効力発生日」=「保険責任期間開始日」となります。
つまり、5月25日に申し込みした案件の審査に2週間かかり、6月10日に保険契約が締結されたとすると、「保険契約締結日」は6月10日、「保険責任期間開始日(保険の効力発生日)」は6月1日からとなります。したがって、6月1日以降発生した保険事故が保険金をお支払いする対象となります。
ただし、株式取得が保険契約締結以降となる場合、株主となる前に生じた事由については保険の対象とはなりません。
QⅣ-1-2:中途解約の可否
2 年前に保険期間 10 年で保険契約を締結しました。投資先の国の治安が良くなってきたので、保険契約を解約したいのですが、可能ですか。
保険の対象となる投資をご継続されている間は、お客様のご都合で保険を中途解約することはできません。保険期間は 2 年(期間満了に伴う新規契約の場合は 1 年)から 15 年の間で自由に選択いただけますので、リスクの変化によって保険内容や保険利用を見直したい場合は、保険お申し込みの際にその点も含めて保険期間をご検討ください。
なお、投資先企業が解散した場合や持ち分の全てを譲渡・喪失した場合等、保険の対象となる投資そのものが消滅した場合は、ご申請により保険契約を解約することができます。
(詳しくはQⅤ-3-4をご参照ください。)
2. 保険金額、対価の額
QⅣ-2-1:保険金額の設定①
「取得のための対価の額」を簿価純資産額で設定したいのですが、可能でしょうか。設定する際に、どういった書類が必要になるでしょうか。
保険対象額は、財務諸表で確認できる「純資産額」と既に保険証券に記載されている「取得のための対価の額」との間の範囲内で任意に設定することが可能です。
また、保険対象額見直しのための確証として使用する財務諸表は、原則、公認会計士により監査またはレビューされた最新の財務諸表をご提出いただきます。
QⅣ-2-2:保険金額の設定②
株式の「取得のための対価の額」の設定を、送金額をベースにしたいのですが、現地で税金がかかるため、実際に株式を取得する金額は送金額よりも尐なくなる予定です。この場合は、送金額の全額を、海外投資保険の対象とすることはできますか。
株式を取得するために実際に要した額を、「取得のための対価の額」として設定することが可能となっております。現地での税金を「取得のための対価の額」に含める場合には、当該税金が株式取得に係る送金に付随して発生する点について確認が必要となります。
ただし、戦争等による事業不能などの保険事故が発生した際の損失額の評価は、送金額ではなく、投資先企業の純資産額をベースに行います。
QⅣ-2-3:保険金額の設定③
投資先企業の簿価純資産を「取得のための対価の額」として設定したいのですが、当該投資先企業の単体 B/S ではなく、孫会社である再投資先企業の事業も含んだ連結 B/S における簿価純資産を用いることはできますか。
「取得のための対価の額」の算出根拠として、子会社の単体 B/S だけではなく、連結 B/Sにおける簿価純資産も使用することができます。この場合、連結 B/S における簿価純資産とは尐数株主持分を控除した額とします。原則として、連結 B/S は公認会計士等による監査またはレビュー済みのものであるか、親会社であるお客様の監査済財務諸表等の基礎となったものであることが必要です。
ただし、一度連結 B/S を用いた後に、単体 B/S の簿価純資産額が大きくなった場合には、保険期間の途中で単体 B/S に変更することは認められません。なお、連結決算を行わなくなった場合は、単体 B/S への変更が認められます。
QⅣ-2-4:保険金額の見直し①
海外投資保険の契約期間の途中で保険金額を変更することはできるでしょうか。
保険金額の設定に必要なxx率については、当初保険契約時に設定した率で変更はできませんが、「取得のための対価の額」については、保険期間中の投資先企業の純資産額、為替換算率の変動に応じて変更することが可能です。
具体的には、直近の純資産額、為替換算率または配当額(おのおの根拠となる確証が必要)と保険証券記載のそれぞれの額との間で自由に設定(為替換算率については、5%以上の変動が必要)することができます。保険金額は変更後の円貨額に当初xxしたときに設定
したxx率を乗じて算定することになります。
なお、金額の変更を行うためには、毎年の応当日の1カ月前までに手続が必要です。例えば6月1日に保険期間が開始した案件は、4月 30 日までに「別紙様式第6 海外投資保険増額・減額 承認請求書」の提出が必要となります。
QⅣ-2-5:保険金額の見直し②
投資した事業の業績が良く、内部留保も蓄積されてきましたので、資産価値の増大に見合った保険のかけ方をしたいのですが、どのように金額を設定したらよいのでしょうか。
海外投資保険における損失額は、円貨に換算した「事故直前の評価額」と「取得のための対価の額」のいずれかの小さい額から、「事故直後の評価額」を引いた金額となります。「取得のための対価の額」は、投資先企業の簿価上の純資産額に見合った金額に変更することができます。
「事故直前の評価額」はxxされた株式の持ち分に対応する純資産額ですから、「取得のための対価の額」を「事故直前の評価額」まで引き上げてxxすれば、純資産額相当額すべてが保険金をお支払いする対象となります。
したがって、取得原価にとらわれることなく、現時点での純資産額を現時点の換算率で円貨に転換した金額が、最大限の保険金をお支払いすることが可能な「取得のための対価の額」になります。
以下例をあげてご説明します。(Rp=インドネシア・ルピー/exch.=為替換算率)
① 払込資本金
Rp1,500,000,000×(exch. Rp9,000 = US$1 = \120)
=出資時取得原価¥20,000,000
② 純資産額
Rp5,000,000,000×(exch. Rp12,000 = US$1 = \90)
=事故直前の評価額¥37,500,000
現地通貨ベースの純資産額が膨らんでも、現地通貨の下落があれば相殺されますし、円貨の騰落も評価額に影響しますので、純資産と為替換算率を同時に勘案して、「取得のための対価の額」を設定する必要があります。本例では、「取得のための対価の額」を¥37,500,000と見直した結果、保険金額はxx率95%を乗じた¥35,625,000 となり、資産価値の変動に見合った対応が可能となったことになります。
QⅣ-2-6:保険金額の見直し③
外貨建て投資について、契約期間中に為替変動に伴う「取得のための対価の額」の増額もしくは減額ができるとのことですが、具体的に教えてください。
外国通貨が上昇(下落)したことに伴って、被保険利益が増加(減尐)している場合に、当該増加(減尐)部分について次年度以降の「取得のための対価の額」を増額(減額)することが認められています。
「取得のための対価の額」の増額(減額)申請ができるのは、保険証券記載の適用換算率と次年度の保険期間開始日の2カ月前の1日の為替相場(TTB レート)とを比較して5%以上の上昇(下落)があった場合です。この場合、「取得のための対価の額」は、次年度の保険期間開始日の2カ月前の1日の為替相場(TTB レート)を上限(下限)として、現在の金額との範囲内で任意に設定することができます。
為替変動に伴う増額(減額)申込書「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」の提出期限は、次年度の保険期間開始日の応当日の1カ月前までとなります。
別紙様式第6の「為替適用換算率」には、各保険年度の開始日の 2 カ月前の月の1日の TTBレートをご記入ください。例えば、12 月 1 日に次年度が始まる場合には、10 月 1 日の TTBレートをご記入ください。「変更申請換算率」には、「証券記載の適用換算率」と「為替適用換算率」との間で、お客様が希望する換算為替レートをご記入ください。
QⅣ-2-7:保険金額の見直し④
5年前にxxしていた保険契約が 2014 年 3 月末で期間満了しますが、契約を継続したいと思っています。保険はxx後も一度も見直しをしていないので、この機会に見直しをしようと思っています。「取得のための対価の額(保険価額)」の設定や、その他注意すべきことを教えてください。
次の表1の例をもとに説明します。
送金時(保険証券) | 現在価値 | |
送金額等 | ①US$1,000,000 | ⑤US$1,500,000 (2012 年 12 月末 B/S) |
為替換算率 | ②\120/US$1 | ⑥\100/US$1 (2014 年2月1日のレート) |
「取得のための対価の額」 | ③\120,000,000 (③=①×②) | ⑦\150,000,000 (⑦=⑤×⑥) |
保険期間 | ④5年 |
まず、直近の財務諸表の純資産額と保険証券記載の「取得のための対価の額」を比較します。
「取得のための対価の額」について、表の①と⑤を比較すると、⑤の額の方が大きくなっています。海外投資保険では、保険事故になった場合は事故直前の「純資産額」をもとに損失額を算定しますので、新契約を締結する場合は⑤の額をもとに「取得のための対価の額」を設定すれば最大限の保険金をお支払いすることが可能となります。
また、期間満了に伴う契約締結の場合には、「取得のための対価の額」の設定は、「①」もしくは「⑤」または「①と⑤の間の任意の額」での設定が可能となっていますので、①と
⑤の間の額であれば任意の額を設定できます。
さらに、為替換算率も、表の「②\120/US$1」もしくは「⑥\100/US$1」または「②と⑥の間のレート(ただし5%以上の増減があることが条件)」で設定が可能です。(詳しくは QⅣ-2-4をご参照ください。)
例えば、「取得のための対価の額」の設定可能額は、現時点で確認できる純資産額である「⑤ US$1,500,000」に対して、為替換算率は既存保険証券で用いられているレート(\120/US$1)をそのまま用いて「⑤US$1,500,000」×「②\120/US$1」=\180,000,000 と設定することも可能です。
※手続きとしては「海外投資(株式等)保険申込書(別紙様式第1)」又は「海外投資(不動産等)保険申込書(別紙様式第2)」に必要事項を記入の上、営業担当窓口までご提出をお願いいたします(郵送可)。変更箇所がない場合は、様式中「その1」と「その2」のみ
(不動産等については「その1」のみ)の提出で構いません。全項目を記入する必要はなく、太枠の箇所のみの記入で構いません。
「取得のための対価の額」を送金額ではなく、純資産額で設定する場合には、以下のいずれかの写しの提出をお願いします。
①投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)
②お客様の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)の作成の基礎となる投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしていないもの)
環境のスクリーニング・フォームと不正競争防止法に係る誓約書は、ご提出の必要はございません。
新たな保険契約に係る保険期間は、お客様のご希望により、1 年間~15 年の間で任意に設定できます(保険期間は 1 年単位)。保険期間の開始日は、現保険期間の満了日の翌日とな
ります。2011 年 12 月 31 日が期間満了日であれば、新たな保険期間の開始日は 2012 年 1 月
1 日からとなります。
本申込書の提出期限は、期間満了日の 1 カ月前です。例えば、2011 年 12 月 31 日が期間満
了日であれば、2011 年 11 月 30 日までに申込書の提出をお願いいたします。なお、増資を行っている場合は、QⅤ-2-1をご参照ください。
QⅣ-2-8:保険金額の見直し⑤
配当は保険申し込み時に予定額でxxすることになっていますが、保険期間の途中で金額を変更することや配当開始年度を変更することは可能でしょうか。
配当額の変更には、その根拠となる証拠が必要となります。すなわち、配当がなされない、または当初予定額より尐なく(または多い)ことを証明する資料、例えば「株主総会決議書」、「Audit Report」などの利益処分の記述をもとに配当額を変更することになります。このため、必要な証明資料なしに「5年目から配当される予定だったが、現在の事業計画では当面配当は無理」「8年度目から5%になる見込み」では変更できません。
例えば、前述の書類で5年目に配当されないことが確認できた場合は、それ以降は配当額に関してゼロから当初定めた配当率までの範囲内で減額変更することが可能となります。いったん配当額をゼロにした後でも、その後配当がなされることが確認できる証拠がある場合は、配当額の増額変更を行うことが可能です。
なお、配当額をゼロにしても、適用保険料率は保険契約全体を対象としたものですので、保険契約締結時のまま(「混合型」(出資+配当))の料率となります。
QⅣ-2-9:保険金額の見直し⑥
投資先企業は、会計帳簿上「資産の再評価(インフレ会計による調整)」を行っています。この場合の保険変更手続き方法について教えてください。
「インフレ会計」とは、著しいインフレにより、資産価値の変動が激しくなり、法令によりインフレによる資産等の再評価積立金を資本に組み入れ増資することをいいます。
この増資は一般の無償増資または株式配当とは異なり、単にインフレにより生じる会社資産・負債・資本勘定の名目価値と実質価値の差を指数(インフレ調整率)によって調整・再評価したにすぎず、実質的な資本価値が増加するものではありません。
このため、資本価値が増加する一般的な無償増資(QⅤ-2-1を参照してください。)と異なり、「海外投資保険変更承認申請書」で通知をすることで、現保険契約の「取得のための対価の額」(外貨の価額)の変更を行うこととなります。
QⅣ-2-10:為替レート①
投資先企業の株式の「取得のための対価の額」を算出する際に、どの時点の為替相場を使用できますか。
送金日の為替相場(TTB レート)、申込月の1日の為替相場(TTB レート)、または株式を購入するために外貨を取得した際の為替相場を使用することができます。なお、外貨を取得した際の為替相場を使用するには、当該株式の購入のために外貨を取得したことのエビデンスを提出していただく必要があります。
QⅣ-2-11:為替レート②
申込日の属する月の1日の為替レートがない場合、いつの時点のレートを用いることができますか。
休日などの理由から、申込日の属する月の 1 日の為替レートがない場合には、その直前の
為替レートを使用できます。例えば、6 月 1 日が土曜日であれば、前日の 5 月 31 日(金曜日)の為替レートを使用できます。6 月 1 日が日曜日であれば、5 月 30 日(金曜日)の為替レートを使用できます。
QⅣ-2-12:為替レート③
計算すると為替レートが小数点第 6 位までとなります。どのように処理すればいいですか。
小数点第 4 位までを有効とし、小数点第 5 位以下を切り捨てていただくようお願いいたします。
QⅣ-2-13:為替レート④
送金はユーロで行いましたが、取得のための対価(外貨)は米ドルで設定したいと考えております。送金日のユーロ・米ドルレートが分かりません。どの為替レートを使って、米ドル建ての取得のための対価を計算すればよいですか。
送金日のレートがわからなければ、保険申込日の属する月の 1 日の為替レートを使用することが可能です。ユーロ・米ドルレートが入手できない場合、日本貿易保険が HP で公表している「外国為替相場」のユーロ・円レートと米ドル・円レートを使って、ユーロ・米ドルレートを算出することも可能です。
QⅣ-2-14:計算における端数処理①
円建て金額の小数点以下の端数については、どのように処理すればいいですか。
1 円未満の端数については、切り捨てて計算いただくようお願いしています。保険金額、支払保険金、回収金、保険料の計算でも同様です。
QⅣ-2-15:計算における端数処理②
外貨建て金額の小数点以下の端数については、どのように処理すればいいですか。
小数点第三位以下については、切り捨てて計算いただくようお願いしています。
3. タイプ、xx率、特約
QⅣ-3-1:xx率
xx率は、申し込み時に 95%の範囲内にて被保険者が自由に設定できることになっていますが、保険期間中にxx率の変更を行うことは可能ですか。
新たな保険年度の開始に合わせて行うことが認められている為替換算率や純資産額の変動による「取得のための対価の額」の変更と異なり、xx率については保険期間の途中での変更は認められません。保険期間満了時に引き続き継続して保険契約を締結する場合は、任意にxx率を設定しなおすことができます。
QⅣ-3-2:保険お申し込みタイプ①
保険料率表を見ると、①非償還型(出資金)、②混合型(出資+配当)、③償還型(配当のみ)という3種類があります。「償還型」の料率が適用される事例を教えてください。
また、配当が出資後5年目から、という場合でも「償還型」でxxすることは可能ですか。
「③償還型」の料率が適用されるのは、出資金についてはxxせず、「配当金」のみをxxするケースです。また、配当が出資後5年目からという場合でもxxすることが可能です。
保険契約・手続は、配当予定が5年後であっても、出資金の送金時に行うのが原則となっていますが、配当が予定されている5年目からでも申込は可能です。なお、配当がいつ頃からされる見込みかを示す「事業計画書」などの提出が必要となります。
また保険料の請求は配当金のxxが対象となる5年度目からスタートしますので、最初の
4年分は請求されません。
QⅣ-3-3:保険お申し込みタイプ②
外国の投資先企業の株式を短期で売却することを想定しておらず、また配当も特に予定していないため、投資先国から本邦への送金は発生しないと考えています。そのため、投資先国の送金リスクについてはカバーが不要なのですが、保険のカバー対象となるリスクを選んで海外投資保険をxxすることはできますか。
「①収用・権利侵害」「②戦争・内乱・テロ、天災等の異常な自然現象等」「③送金」の
3つのリスクから、カバーされるリスクを自由に選択することが可能です。
保険料率について、2つのリスクのカバーを選択した場合はフルカバー型から約 30%引き、
1つのリスクのカバーを選択した場合はフルカバー型から約 35%引きとなります。
QⅣ-3-4:特約の期中追加
海外投資保険の保険契約期間中に、特約の追加はできますか。
契約内容に変更がない場合、原則として、保険契約の途中での特約の追加・削除はできません。
4. 保険料
QⅣ-4-1:分割送金の場合の保険料計算方法①
会社設立にあたり、分割送金 3 回で出資する予定にしています。初回送金:4 月、2 回目送金:8 月、3 回目送金:翌年 3 月を予定しています。保険期間は 1 年単位ですが、2 回目、3回目送金分についての保険料計算方法について教えてください。
初回送金に対する保険責任期間開始後、これに続いて行われる分割送金に対する保険料計算方法は、月割り計算となっております。
分割送金の場合でも、保険証券単位では1つの保険契約となりますので、保険期間終了日は同時期になりますが、初年度分について保険責任期間開始日が送金ごとに異なった形で保険が設計されます。つまり、分割送金のそれぞれについて送金日の属する月の1日が保
険責任期間開始日となります。(ただし、初回送金については、保険契約締結日の属する日の1日となります。)
以下のような事例に基づいて説明します。
送金日 | 送金確定 通知提出日 | 保険契約日 (変更承認日) | 初年度保険料 支払期間 | 保険料 支払月数 | |
初回 送金日 | 4 月 15 日 | 5 月 10 日 | 5 月 21 日 | 5 月 1 日~4 月 30 日 | 12 月 |
2回目 送金日 | 8 月 25 日 | 9 月 20 日 | 9 月 30 日 | 8 月 1 日~4 月 30 日 | 9 月 |
3回目 送金日 | 3 月 28 日 | 4 月 25 日 | 5 月 1 日 | 3 月 1 日~4 月 30 日 | 2 月 |
初回送金分の保険責任期間は、保険契約締結日の属する日の1日からとなりますので5月
1日となります。
2回目送金分の初年度保険責任期間は、「送金日の属する月の1日から」となりますので、
8月1日となります。(「変更承認日」の属する月の1日からとなり、「通知提出日」ではありません。)
そこで分割送金の場合は、経過した月分は割り引いて保険料を計算することとなりますから、2回目送金分の保険料は次の式のとおりとなります。
保険料率(年率)÷12(月)×9(月)=適用保険料率
3回目送金に対する 保険料 | ||
2回目の送金に | 対する保険料 | |
最初の送金に対する保険料 | ||
▲
5 月1 日~
▲
8 月1 日~
▲
3 月1 日~
▲
~4 月 30 日
3回目送金も同様です。3月に送金を実施すれば、4月に送金確定通知を提出し、結果として契約日が5月になったとしても、保険料は3月~4月までの2月分となります。
2回目以降の分割送金を行った場合には、送金日から1カ月以内に「別紙様式第3 海外投資保険送金確定通知書」と送金を証する書類の写しを日本貿易保険へご提出ください。当通知書に記載する為替レートについては、(1)送金日の TTB レート、または(2)当通知書の提出日の属する月の1日付の TTB レート(1日が休日の場合には、直前の営業日の TTBレート)のいずれかを使用できます。(1)を使用する場合には、上記にあわせて、当該送金日の TTB レートをご提出ください。
2年目以降は、分割送金の合計金額に対して通常の保険料率(年率)を乗じた額が保険料となります。
QⅣ-4-2:分割送金の場合の保険料計算方法②
会社設立にあたり、分割して株式を発行する予定にしています。株式の額面金額で「取得のための対価」を設定しているのですが、保険料計算方法について教えてください。
分割での株式発行に対する保険料計算方法は、月割り計算となっております。計算方法は、 QⅣ-4-1の送金額を分割する方法と同様です(送金日を株式発行日に置き換え)。
QⅣ-4-3:保険料返還
持ち株会社を売却したので、保険契約を解約しました。保険期間は8月1日からでしたが、解約したのはその年の 12 月です。保険期間開始前にその年の保険料を 200 万円払っていますが、解約の時期に応じて既払いの保険料返還は可能でしょうか。
海外投資保険の保険料は、各保険年度開始前月に1年分を一括してお支払いいただくことになっております。年度の途中で解約された場合であっても、既にお支払いいただいた保険料の返還は行いません。
5. その他手続き
QⅣ-5-1:不正競争防止法にかかる誓約書
保険契約者と被保険者が異なります。「不正競争防止法にかかる誓約書」は誰がサインしたものが必要ですか。
保険契約者と被保険者について、それぞれ 1 部ずつの提出が必要です。
QⅣ-5-2:書類翻訳のご提出
定款や決算書等、保険申込に必要な書類が、現地語の書類しかございません。申込は可能でしょうか。
必要書類が日本語または英語以外で記載されている場合は、当該書類の主要部分を日本語に翻訳したものを添付してください。翻訳が必要な箇所等につきましては、営業担当窓口
までご相談ください。
なお、翻訳などの費用につきましては、お客様に負担をお願いしております。
Ⅴ保険期間中の承認、通知事項
1. 重大内変
QⅤ-1-1:重大な変更の通知義務①
日本貿易保険に通知の義務のある「重大な変更」とは、どのようなものでしょうか。通知はどのように行えばよいのでしょうか。
お客様が保険でカバーされた投資について、保険の内容に影響を与えるような「重大な変更」があった場合に、お客様には、日本貿易保険に対し通知を行っていただくことが義務づけられています。
「重大な変更」とは、具体的には以下のとおりです。
① 投資先企業やその下の事業会社が、合併、会社分割、営業譲渡等により別の法人へ変更となった場合。
② 投資や事業を行う国又は地域(保険証券に記載される「投資先国又は地域」「事業地国又は地域」をいいます。)の変更
③ 投資先企業又は事業会社の事業内容(保険証券に記載される「主たる事業内容」をいいます。)の変更
④ 保険でカバーされた投資についての政府等との間の契約等の内容の変更(契約違反リスク特約を付けている場合に限ります。)
また、「重大な変更」以外の「変更」が生じた場合は、任意でお知らせ/ご相談頂いても差し支えありませんが、通知の義務はありません。また、重大な変更以外の変更に関する通知の有無は、保険金のお支払には影響いたしません。
通知を行う場合は「別紙様式第4 海外投資保険変更承認申請書及び変更請求書」に変更内容の確認できる書類を添付し、原則として変更日から1カ月以内に日本貿易保険に提出していただく手続きとなります。
なお、重大な変更の場合、変更後の内容について保険契約を継続するにあたっては、日本
貿易保険の承認が必要となります(前述の通知が、日本貿易保険に対する内容変更の承認申請となります。)。日本貿易保険は、変更後の投資の内容についても引き続き保険のお引受が可能と判断した場合、当該申請について承認し、保険契約内容の変更を行います。お引受の継続が困難と判断した場合には、保険契約を解除する場合もあります。
QⅤ-1-2:重大な変更の通知義務②
投資先会社の会社名と住所を変更しました。通知義務のある「重大な変更」にあたるのでしょうか。
社名変更は「重大な変更」にあたりません。また、同一国内の住所の移転に関しても同様で、「重大な変更」にあたりませんので、申請や通知の義務はありません。
一方で、お客様の必要に応じて、変更承認請求及び海外商社名簿の変更(バイヤー登録の社名・住所変更手続き)を行うことができます。
QⅤ-1-3:重大な変更の通知義務③
外国の子会社の A 社、B 社への投資に、それぞれ海外投資保険をxxしています。B 社が A社を吸収合併することになったのですが、必要な手続を教えてください。
被合併企業である A 社向けの契約については、QⅤ-1-1に記載の「重大な変更」のうち「投資先企業やその下の事業会社が、合併、会社分割、営業譲渡等により別の法人へ変更となった場合」に該当しますので、変更発生から1カ月以内に、被保険投資の相手方の変更の手続が必要となります。存続企業である B 社向けの契約については、特にお手続きの必要はございません。
QⅤ-1-4:その他の変更の通知
当社が出資している企業に増資を行ったため、これに伴い当社の出資総額も増加しましたが、増額分については保険のxxを希望しません。必要な手続などを教えてください。
増資については、「重大な変更」に該当しませんので、増資部分について保険のxxを希望しない場合は、特段の手続きは必要ありません。
日本貿易保険に任意で通知をすることができますので、通知される場合は、「別紙様式第4海外投資保険変更承認申請書及び変更請求書」で「重大以外の変更」を選択し、ご提出ください。
なお、取得のための対価の額を増額しない場合の注意点は、QⅦ-1-6をご覧ください。
2. 増資
QⅤ-2-1:増資分に対する新たな保険申し込み①
既に投資を行っている子会社に対し、新たに増資を行いました。こちらの増資分についても保険をかけたいのですが、手続き方法について教えてください。保険料率は、既に保険がかかっている分と同じものが適用されるのでしょうか。増資分については、既存契約と異なるxx率を設定したいのですが、可能でしょうか。
同じ投資先について新規増資や株式取得などにより追加出資を行った場合の保険xxの方法は、以下の通りです。
(その1)
追加出資分について、新たな保険契約を締結する方法。増資分については申込時の保険料率が適用されます。異なるxx率を設定することは可能です。
(その2)
追加出資分について、既存の保険契約の増額として、保険契約内容変更を行う方法。増資分については申込時の保険料率が適用されます。異なるxx率を設定することは可能です。
(その3)
現在の保険契約を解約し、追加出資後の総投資額について新たな保険契約を締結する方法。
(新たな保険契約の保険期間・xx率は、解約前の保険契約の残存期間・xx率をそれぞれ下回ることはできませんのでご注意ください。)
いずれの場合も追加出資の関連書類を添えて、「海外投資(株式等)保険申込書」のご提出が必要となります。
QⅤ-2-2:増資分に対する新たな保険申し込み②
当社が出資している A 国の企業で、出資者への配当を行うかわりに、出資者の持ち分比率に応じて「無償増資」を実施することになりました。当該増資分に保険をxxしたいので
すが、可能でしょうか。また、可能な場合の手続きを教えてください。
無償増資の場合でも海外投資保険を申し込むことは可能です。
この場合、保険申込書に加えて、増資金が投資先企業の資本金に組み入れられたことが分かる書類(組み入れ証明等)の写しが必要となります。
3. 株式譲渡
QⅤ-3-1:株式譲渡①
当社(Z社)が出資している海外の事業投資会社の持ち株を、国内のメーカーA社に譲渡することになりました。当社は海外投資保険をxxしていましたが、A社も保険の継続を希望しています。この場合の手続きおよび期限について教えてください。また、保険料の支払いはどのようになるのでしょうか。
本件では、譲渡者(Z社)が海外投資保険をxxしている株式をメーカーA社へ譲渡することになりますので、保険契約ごとに「別紙様式第7-1 海外投資保険目的等譲渡承認申請書」の提出を譲渡前に行い、日本貿易保険から譲渡に関して承認を取得する必要があります。
承認を取得すると、Z社がxxしている保険契約の「被保険者」としての地位をA社が引き続くことになりますので、既保険証券の条件(保険料率、為替換算レートなど)がそのまま引き継がれます。
その後、譲渡完了後1カ月以内に「別紙様式第7-2 海外投資保険目的等譲渡終了申請書」にて譲渡が完了したことを日本貿易保険に通知します。この結果、日本貿易保険より、 Z社の既存保険証券の保険金額のゼロへの減額が行われ、新たにA社名義の保険証券が発行されます。
この際、保険証券番号は新たに取得されますが、既存保険証券の継続という扱いになることから、すでに保険料が支払われた期間に対してはA社が再度支払う必要はありません。すなわち翌保険年度(新保険証券の2年度目)からの保険料をA社が支払えばよいこととなります。
なお、譲受人に保険xx義務はありませんので、譲受人が保険の継続を希望しない場合には上記の手続きは不要です。また譲受人が外国企業の場合は、保険の継続はできません。
QⅤ-3-2:株式譲渡②
当社の出資持ち分の一部をパートナーに売却することになりました。そこで、保険証券が
①出資時(35)、②1回目増資(30)、③2 回目増資(20)、④3 回目増資(無xx 15)に分割されています。パートナーに売却するのは、25 となっていますが、どの出資分かは判別できません。このような場合の減額変更方法について教えてください。
この場合、売却額(25)相当分がどの保険証券分か特定できない場合は、①から④の各出
資の出資金額に応じて、売却額(25)を按分の上、減額申請をする必要があります。具体的な計算方法は、以下手順1~3のとおりです。
【手順1】:①から④の各出資割合を計算します。
(①の場合:35÷100=35%)
【手順2】:売却分(25)を【手順1】の出資割合で按分。
(①の場合:25×35%=8.75)
【手順3】:【手順2】の金額分を譲渡金額とみなし、減額する。
(①の減額後の額は 35-8.75=26.25)同様に計算した結果は以下のとおりとなります。
【手順1】各保険証券の出資割合を計算
出資金額a | 出資割合 | |
保険証券① | 35 | 35% |
保険証券② | 30 | 30% |
保険証券③ | 20 | 20% |
無xx④ | 15 | 15% |
合計 | 100 | 100% |
【手順2】各保険証券ごとの出資割合に応じた譲渡金額該当分を計算
譲渡金額b | 出資割合 | |
保険証券① | 8.75 | 35% |
保険証券② | 7.5 | 30% |
保険証券③ | 5 | 20% |
無xx④ | 3.75 | 15% |
合計 | 25 | 100% |
【手順3】譲渡後の額を計算
譲渡前a | 譲渡金額b | 譲渡後c (=a-b) | |
保険証券① | 35 | 8.75 | 26.25 |
保険証券② | 30 | 7.5 | 22.5 |
保険証券③ | 20 | 5 | 15 |
無xx④ | 15 | 3.75 | 11.25 |
合計 | 100 | 25 | 75 |
※株数に小数点以下の端数が生じる場合は四捨五入。四捨五入した結果、合計額が合わない場合は、一番古い保険証券で調整する。
変更には、譲渡契約書、譲渡金額・譲渡日(譲渡金額入金日)等がわかる書類を添付の上、
「別紙様式第6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」を提出してください。
なお、売却する株式が①②③④いずれかに該当するかが、譲渡契約書や株式番号などから判別できれば、当該分のみ減額することが可能です。
QⅤ-3-3:株式譲渡③
全株式を売却する予定です。次の保険年度の保険料請求書が届いたのですが、どのような手続を行えば保険料請求を止められますか。
全株式の売却または投資先企業の清算といった理由で、保険を解約する場合、「別紙様式第
6 海外投資保険 増額・減額 承認請求書」に売買契約書(譲渡契約書)と売却完了が確認できる書類(譲渡代金入金にかかる受領証等)を添付して、保険期間開始日の応答日の 1 カ月前までにご提出が必要です。例えば保険年度が5月1日~4月30日のケースでは、承認請求書の提出期限は3月31日となります。
4. プレミアムの減損の場合の処理
QⅤ-4-1:プレミアムの減損
プレミアム特約を付けて保険を契約しています。今年度の決算処理にあたり、当該投資先企業の株式について減損処理を行う予定です。その場合、どのような手続きが必要となりますか。
お客様の財務諸表に計上されている投資先企業株式評価額の減損処理を行った場合又は株式等に関して個別引当を計上した場合は、保険契約上の「重大な変更」として、日本貿易保険への通知が必要となります。
当該通知により、保険契約の内容についての変更を行います。具体的には、プレミアム部分の「取得のための対価の額」及び「保険金額」について、減損処理後の金額に基づき再設定を行います。
なお、その場合、当該保険年度の保険料についての返戻は行いません。
Ⅵ免責・不払・解除
1. 免責、不払・返還事由
QⅥ-1-1:免責、不払・返還
海外投資保険で保険金が支払われない場合、または保険金の返還が求められる場合について、教えてください。
主に次の損失については免責となります。
①保険期間前に生じた事由による損失
②申込時に損失を受けるおそれのある重要な事実を告げない告知義務違反のため、契約を解除された場合に、当該事実に基づいて発生した損失
③お客様や投資先企業等の故意または重大な過失によって生じた損失
④お客様が法令違反(外国の法令を含む)によって取得した株式等、配当金請求権、取得金等、不動産に関する権利等について生じた損失
また、主に次の場合については、保険金の一部又は全部をお支払いしない、または保険金の返還を求めることがあります。
①お客様や投資先企業等の過失(重大な過失を除く。)によって損失が発生した場合
②お客様が故意または過失により事実を告げず、またはxxでないことを告げたとき
③お客様が海外投資保険の約款の条項に違反されたとき
2. 解除事由
QⅥ-2-1:保険契約の解除
海外投資保険の保険契約は、どのような場合に解除されますか。
日本貿易保険は、以下の場合、海外投資保険の保険契約を解除することがあります。
①申込時に損失を受けるおそれのある重要な事実を告げない告知義務違反があったとき
②保険でカバーされた投資について重大な変更がされたとき(日本貿易保険が重大な変更を承認したとき、条件を付して承認し当該条件が成就したときを除きます。)
③指定日までに保険料の全額又は延滞金の全額を納付されなかったとき
④お客様が海外投資保険の約款の条項に違反されたとき
⑤環境ガイドラインに基づくスクリーニング・フォームの内容が、お客様等の故意又は過失により事実に反しているか、記載すべき事項を記載していないため、環境ガイドラインのカテゴリA又はBに分類されるべきプロジェクトがカテゴリCに分類されたとき
⑥お客様が、株式等、配当金請求権、取得金等、不動産に関する権利等の取得に関して不
正競争防止法の贈賄に関する規定に違反されたとき
Ⅶ保険事故
1. 損失額の算定
QⅦ-1-1:損失額の算定
戦争により投資先企業が損害を受け、3カ月以上の事業休止が発生しました。保険金請求の対象損失額は、どのように計算したらよいでしょうか?
投資先企業の事故発生の直前・直後の評価額を比較し、純資産額の差額を損失額とします。
(合弁事業の場合は、当該損失額のうち、お客様の投資額相当の額。なお、直前の評価額については、QⅦ-1-4をご参照ください。)
<保険金支払いの対象となる損失額のイメージ>
残余財産
事故による損失
投資先の 事故直前の株式等の 評価額
保険金支払いの対象となる損失
QⅦ-1-2:保険金のお支払い①
戦争により工場が爆撃されて、投資先企業が事業継続不能となりました。残余財産はすべて売却して清算しましたが、株主にはまったく分配されませんでした。支払われる保険金はどのように計算されるのでしょうか。
次の設例に基づいて説明します。
(1)当社は、資本金 30,000,000 ペソの会社に 50%を出資しました。(当社出資額は【表
2】aのとおり)
(2)その後の好業績により、純資産額は 90,000,000 ペソに膨れあがりましたので、保険
上の「取得のための対価の額」を純資産額にあわせて増額しました。為替レートも変動していたので、同時に変更手続き(レート減額)を行いました。(【表2】bのとおり)
(3)事故発生直前の純資産額(総額)は 100,000,000 ペソ(【表1】cのとおり)でした。したがって、当社持分の事故発生直前の純資産額(「事故直前の評価額」) は、 100,000,000 ペソ×50%×事故時為替換算率(exch.)[200 ペソ=US$1=\110]=
\27,500,000(【表2】c-①のとおり)でした。
(4)残余財産を売却した結果、債権者に対して分配する原資が 8,000,000 ペソ残りました。これを債権者に支払いましたので、株主への分配金はありませんでした。
【表1】投資先企業全体の資本金推移
払込資本金 (ペソ) | 剰余金 (ペソ) | 合計(資本) (ペソ) | |
a 出資時 | 30,000,000 | 0 | 30,000,000 |
b 変更後(純資産増加) | 30,000,000 | 60,000,000 | 90,000,000 |
c 事故直前 | 30,000,000 | 70,000,000 | 100,000,000 |
【表2】当社出資分の資本金推移
(出資比率:50%)
払込資本金 (ペソ) | 剰余金 (ペソ) | 合計(資本) (ペソ) | 為替換算率 | 取得のための対価の額・円 | xx率 | 保険金額 (取得のための対価の額×xx率) | |
a 出資時 | 15,000,000 | 0 | 15,000,000 | 1.200 | \18,000,000 | 95% | \17,100,000 |
b 変更後 (純資産増加) | 15,000,000 | 30,000,000 | 45,000,000 | 0.500 | ②\22,500,000 | 95% | \21,375,000 |
c 事故直前 | 15,000,000 | 35,000,000 | 50,000,000 | 0.550 | ①\27,500,000 | 95% | \26,125,000 |
約款上の保険金をお支払いする額の計算式は、以下のとおりとなります。
①「直前の評価額」
①と②のいずれか小さい額(③)-④「直後の評価額」=⑤「損失額」」
②「取得のための対価の額」
⑤「損失額」×⑥「てん補率 95%」=⑦「保険カバーの対象額」
⑦「保険カバーの対象額」
⑧「保険金額」
⑦と⑧のいずれか小さい額(⑨)=「実損てん補額」(支払保険金)
【表2】から①~⑨の額を算出していくと、以下のとおりとなります。
① 「直前の評価額」=\27,500,000
② 「取得のための対価の額」=\22,500,000
③ ①と②のいずれか小さい額=\22,500,000
④ 「直後の評価額」=\0
⑤ 「損失額」=③-④=\22,500,000
⑥ 「てん補率」=95%
⑦ 「保険カバーの対象額」=⑤×⑥=\21,375,000
⑧ 「保険金額」=\21,375,000
⑨ 実際に「カバーされる額」=⑦ と⑧のいずれか小さい額→⑦と⑧は同額=
\21,375,000
したがって、実際に支払われる保険金は、\21,375,000 となります。
ちなみに、本ケースにおける貸借対照表の推移は、以下のとおりです。
投資先企業設立時の B/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 60 | 負債 30 資本金 30 |
xx金額変更時のB/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 120 | 負債 30 資本 90 資本金 30 剰余金 60 |
事故直前の B/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 130 | 負債 30 資本 100 資本金 30 剰余金 70 |
事故直後の B/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
分配原資 8 | 負債 30 資本 -22 |
QⅦ-1-3:保険金のお支払い②
QⅥ-1-2の例において、爆撃されたときは事業が継続しうるか否かの判断ができなかったので、取りあえず「損失発生通知書」を提出して様子を見ることとしていました。5年後戦争が終結して調査してみたところ、被害は大きかったものの、再建可能との判断に至りました。工場の損害額は 60,000,000 ペソでした。また、休業期間中に負債が 20,000,000ペソ増加しました。その結果、再開日の B/S は以下のとおりで、再開日の換算率は、250 ペソ=US$1=\100 でした。「3カ月以上の事業の休止」により保険でカバー額はどのように計算されるのでしょうか。
再開日の B/S(単位:百万ペソ)
資産 | 負債・資本 |
資産 70 | 負債 50 資本 20 資本金 30 欠損金 -10 |
算出方法はQⅥ-1-2と同様です。
QⅥ-1-2の【表2】と「直後の評価額」(再開日の B/S 参照)から①~⑨の額を算出していくと、以下のとおりとなります。
① 「直前の評価額」=\27,500,000
② 「取得のための対価の額」=\22,500,000
③ ①と②のいずれか小さい額=\22,500,000
④ 「直後の評価額」=20,000,000 ペソ×50%×(250 ペソ/\100)=\4,000,000
⑤ 「損失額」=③-④=\18,500,000
⑥ 「てん補率」=95%
⑦ 「保険カバーの対象額」=⑤×⑥=\17,575,000
⑧ 「保険金額」=\21,375,000
⑨ 実際に「カバーされる額」=⑦と⑧のいずれか小さい額→⑦の方が小さい=
\17,575,000
したがって、実際に支払われる保険金は、\17,575,000 となります。
QⅦ-1-4:保険金のお支払い③
当初の出資金額 100 百万ドルについて海外投資保険をxxしていました。後に戦争に巻き込まれ工場が爆破された結果、同社は操業不能に陥ることとなりました。そこで、戦争によって生じた損失について保険金請求の申請を行ったところ、同社は戦争直前まで相当の利益を上げていた結果、海外預金が 120 百万ドルありこれがそのまま債務支払後も残余財産として残ったために、「支払保険金の算定は、保険約款上『直前の評価額』と『取得のための対価の額』のいずれか尐ない額から残余財産を引いた額なので、保険金は支払いできない。」と言われました。なぜ保険金は支払われないのでしょうか。また、この場合は海外投資保険についてどのような手続きが必要だったのでしょうか。事故前の財務諸表上では、同社の純資産額は 220 百万ドルになっていました。
保険事故になった場合、海外投資保険では「直前の評価額」と「直後の評価額」の差額を計算し、これを実際に生じた損失として保険カバーの対象とすることにしています。したがって、支払保険金の算定に際しては「残余財産」を控除することとなります。
また、「直前の評価額」の算定については、「取得のための対価の額」と「事故直前の純資産額」のいずれか尐ない方から、残余財産を引いた額が対象となります。
そこで、上記のケースは「取得のための対価の額=100」<「残余財産=120」、すなわち「直後の評価額」は「直前の評価額」を超過していたことから、損失額が発生していないこととなり、保険金をお支払いすることができないこととなります。
④100 事故による損失 | ②220 純資産額 | |||
③120 | ||||
①100 取得のための対価の額 | 残余財産 |
上図でみると「①=100」、「④=100」なので、損失(④)がフルカバーされるように思えますが、この場合はまず、①と②のいずれか尐ない方から③を引くことにより損失額が算出されます。
具体的には以下のとおり計算されます。
①「取得のための対価の額」=100
「xx率」=95%
②「事故直前の純資産額」=220
③「残余財産」=120
④’「保険金額」=100×95%=95
実際に保険金をお支払いする金額=①と②のいずれかの尐ない額から③を引いた額となりますので、
100-120=▲20・・・⑤
本来なら⑤×95%(てん補率)=保険金(ただし④’の額より小さいこと)となりますが、結果がマイナスですので保険金支払いはありません。
このような場合は、「取得のための対価の額」を、投資先企業の純資産額にあわせて増額する必要があったと考えられます。
QⅦ-1-5:保険金のお支払い④
出資に際し送金はドルで行ったため、ドル建てで保険設計して頂きましたが、実際の決算は監査を含めルピー建てで行うこととなりました。送金額ベースでxxしている場合、事故時の査定はルピー建てになるのでしょうか?
事故時の査定は、直近の事業年度の決算書と事故後の決算内容を比較した場合の「実損部分」を保険でカバーいたしますので、このような場合はルピー建ての決算書を用いて査定した上、円貨換算後の実損部分を保険金(証券上の保険金額を上限として)としてお支払いいたします。
QⅦ-1-6:保険金のお支払い⑤
出資金にかかわる投資者の簿価は取得原価なので、原価が保険でカバーされればよいという考え方で、投資先企業の純資産額が増加しても「取得のための対価の額(保険価額)」の増額変更は行っていません。海外投資保険は実損てん補制なので、損失額の 95%が保険金額の範囲内であれば、大きな損失でも小さな損失でも損失額の 95%の額の保険でのカバーが受けられると理解してよいでしょうか。
損失額の計算については、「直前の評価額」と「取得のための対価の額」とのいずれかの小さい額から「直後の評価額」を引いた金額となっています。このため、投資先企業の純資産額が増えているにもかかわらず、「取得のための対価の額」が低いままxxしていると、損害は発生した後でも「直後の純資産額」が「取得のための対価の額」を上回ってしまう場合が発生します。その場合には、損失が発生していないこととなり、保険でカバーされる額はゼロということになります。
このような状況を避けるためには、「取得のための対価の額」を純資産に見合った額で変更しておく必要があります。
QⅦ-1-7:保険期間と事業休止のタイミング
保険期間中に戦争が発生し投資先企業が事業休止となりましたが、事業再開のタイミングは保険期間終了後となりました。なお、保険期間満了時点において投資先国の引受方針が
「×」(引受停止)となっていたので、新たな保険契約の締結は行えませんでした。この場
合、保険金はどうなりますか。
保険金をお支払いする要件として、保険期間中に事故事由が発生している必要があります。上記の例における事故事由は「戦争等による3カ月以上の事業休止」ですので、保険期間満了日時点において、投資先企業の事業休止期間が3カ月以上であれば対象となります。またその場合は、保険期間満了日時点までに発生していた損失が保険金のお支払の対象となります。保険期間満了の翌日から事業再開までの間に生じた損失については対象となりません。
2. 請求手続き
QⅦ-2-1:保険金請求に必要な書類①
海外投資保険で、収用や戦争等によって事業不能等が発生した際にカバーされる金額は、損害の発生の「直前に評価した額」と、事業不能等の事由の「直後に評価した額」の差額をベースに計算されるとのことですが、戦争等によって投資先企業が損害を被っている混乱した状況下において「直前」「直後」の関係書類はどのようなものを提出するのでしょう
か。また、「直前」「直後」とはいつの時点を指すのでしょうか。
「直前に評価した額」「直後に評価した額」を証する書類として、以下のいずれかの写しの提出をお願いします。
①投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)
②お客様の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしたもの)の作成の基礎となる投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしていないもの)
③上記①または②の写しの提出が困難として日本貿易保険が認めた場合は、②以外の投資先企業の財務諸表等(公認会計士が監査またはレビューしていないもの)やその他の書類(直前に評価した額については、出資金の払い込みを証する書類等)
「直前」の書類としては、事故が発生する前の直近のもの、「直後」の書類としては、事業継続不能の場合は、事故以降で事故が発生した時点に最も近いものをご提出いただきます。事業休止の場合は、事業を再開した日以降でその再開日に最も近いものを、見通しが不明
な場合は、事業休止が3カ月以上継続した日以降の任意の日のものをご提出いただきます。いずれの書類の写しも提出が困難な場合は、ケースバイケースで日本貿易保険が判断させていただきます。
QⅦ-2-2:保険金請求に必要な書類②
投資先企業が天災による損害を受けたため、投資先企業の破産手続が開始されました。破産手続の開始を証する書類は、どのようなものを提出すればよいのでしょうか。
裁判所の通知等の投資先企業の事業地国において認められる破産手続開始の決定を通知する書類の写しを、これらが揃わない場合は、破産手続に関連する報道等の入手可能なその他の書類の写しをご提出いただきます。
いずれの書類の写しも提出が困難な場合は、ケースバイケースで日本貿易保険が判断させていただきます。
QⅦ-2-3:保険金請求に必要な書類③
5月に投資先企業が減資を行い、8月に保険事故が発生しました。事故の発生前の直近の財務諸表として存在するのは、当社と投資先企業がいずれも3月に作成したもので、減資による変動は反映されておりません。この場合は、何か追加的な書類の提出は必要でしょ
うか。
減資の内容が確認できる書類の写しをご提出いただく必要があります。ただし、減資によって変動する額が 10%以下となる軽微な場合は、提出の必要がございません。
なお、財務諸表上の決算等の日以降に発生した配当、増資、事業譲渡、合併、重要資産の処分等の場合も同様です。
QⅦ-2-4:保険金請求までに必要な手続き①
投資先国で戦争が始まりました。当初は投資先企業の工場への被害はありませんでしたが、やがて戦火が拡大し、工場が爆撃されたため、工場を一旦閉鎖しました。
3年後に戦争が終わったので、現地に出向いて調査した結果、修理をすれば再開が可能であるとの結論に達しました。修理を行い、1年後から操業を開始しました。
この場合、各種通知書の提出時期、保険金請求可能時期について、どのように考えればよ
いのでしょうか。
保険事故がいまだ発生していないものの、保険事故が発生して損失を受けるおそれが高まったと思われる状況が発生したときに、損失を受けるおそれが高まる事情発生の通知として「別紙様式第9 海外投資保険事情発生通知書」を提出いただく必要があります。本例の場合は戦争が始まったときなどが、損失を受けるおそれが高まる事情が発生したときであると考えられますが、通知の要否やタイミングにつきましては個々のケースにより判断が異なりますので、日本貿易保険にご相談ください。
戦争などで損害を受けて事業が休止した場合、「事業の継続の不能」に該当する保険事故か
「3カ月以上の事業の休止」に該当する保険事故かすぐには判断できない場合があります。契約上などで事業継続不能が確定する場合は、その段階で「別紙様式第 10 損失発生通知書」を提出することとなります。いずれとも判定ができない場合でも、事業の休止が3カ月以上となった場合には、「3カ月以上の事業の休止」に該当することとなり、「損失発生通知書」を提出することが可能となります。
「別紙様式第 15 海外投資(株式等)保険保険金請求書」は事業継続不能となった場合には損失の発生日から9カ月以内に、事業の休止期間が3カ月を超えた場合には当該期間が確定したとき(または保険期間満了日)から9カ月以内に、提出することができます。
QⅦ-2-5:保険金請求までに必要な手続き②
投資先企業と事業地国政府との間でプロジェクトに関し契約が締結されており、契約違反リスク特約を付けて保険契約を締結しています。外国政府の契約不履行が発生し、事業がストップした場合には保険金支払の対象になると思われますが、保険金請求までに何を行
わなければいけないでしょうか。
外国政府等による契約不履行が発生し、それにより事業不能等が生じ、かつ外国政府等が契約に定める損害賠償義務を履行しない場合、保険金のお支払い対象となります。
この場合、まずはお客様において外国政府等と損害賠償義務の有無及び範囲について合意頂く必要があり、合意が成立しない場合には、保険の対象契約において定められている裁判・仲裁等の手続きを行っていただきます。かかる合意又は裁判等により、外国政府等による損害賠償義務が確定するも、なお外国政府等がかかる義務を履行しない場合には、保険金を請求していただくことができます。
3. 回収
QⅦ-3-1:回収納付義務①
戦争により投資先企業が1年間の事業休止を余儀なくされたため、当該事業休止により生じた損失について海外投資保険の保険金支払を受けました。その後、戦争が終了したので事業を再開したところ、投資先企業の業績が急激に回復し、今期決算では利益剰余金が生じました。利益剰余金の一部については今期配当される見込みですが、配当金を受け取った場合は回収納付義務の対象になりますか。
海外投資保険について保険金の支払を受け、その後に事業を再開した結果、投資先企業で利益剰余金が発生し配当が生じる場合であっても、当該利益剰余金や配当金は回収納付義務等の対象とはなりません。ただし、保険金支払時に全損と判断されたケースは、回収納付等義務が発生いたします。
「全損と判断されたケース」とは、カバーするリスクが発生した結果、簿価上の株式等の価値がゼロとなることであり、投資先企業が簿価上で債務超過に陥ることを指します。
なお、配当金請求権を外国政府等に奪われた場合の損害賠償請求権や、外国における為替取引制限等により送金不能となった株式の売却代金に係る債権など、第三者に対する権利については、全損・一部損にかかわらず回収納付の対象となります。
QⅦ-3-2:回収納付義務②
戦争により投資先企業が損害を受け、事業を継続することができなくなったため、当該事業継続不能により生じた損失について海外投資保険の保険金支払を受けました。保険金算定にあたっては、事故直前の株式評価額が 1 億円、事故直後の評価額が 4 千万円であった
ため、損失額は 6 千万円と認定されました。その後、残余財産についての売却処分を行い
ましたが、この売却代金は回収納付義務の対象になりますか。
保険金の支払いの対象となった金額、すなわち「損失額」に該当する部分が回収義務等の対象です。したがって、事故直後の評価額として保険金計算の際に控除された部分は、保険金支払いの対象とならなかった残存価額部分に該当しますので、この部分が後日現金化されたとしても納付の対象とはなりません。