Contract
[事案 28-148]契約無効等請求
・平成 29 年 5 月 31 日 和解成立
<事案の概要>
子への生前贈与が可能な契約形態であると誤解して契約したこと等を理由に、既払込保険料の返還等を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主な主張>
平成 27 年 6 月に契約した外貨建終身保険について、以下の理由により、契約を無効または取り消して、既払込保険料を返還してほしい。
(1)息子への生前贈与という動機は営業部長に対し明示しており、一方で、営業部長に生前贈与契約書を書かされるなどしたため、本契約は子への生前贈与契約であり、支払った保険料が将来そのまま子に支払われると誤解して契約した。
(2)契約時、クーリング・オフ制度や解約時に損失が出る場合があることの説明はなく、契約内容を誤解して契約した。約款を受け取っていない。
<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)申立人から、子への生前贈与のために本契約を申し込んだという動機は表示されておらず、営業部長は本契約が生前贈与の形態ではないことを説明しており、申立人も了解していた。
(2)営業部長は申立人に対し、クーリング・オフや解約時の損失について契約締結前交付書面を用いて説明しており、申立人は、クーリング・オフや契約後 10 年ほどは解約返戻金が保険料払込累計額を下回ることを理解していた。申立人にCD版の約款を交付した。
<裁定の概要>
1.裁定手続
裁定審査会は、当事者から提出された書面にもとづく審理のほか、契約前後の状況を把握するため、申立人、募集人および本契約の募集にあたり説明を行った営業部長に対して事情聴取を行った。
2.裁定結果
上記手続の結果、契約時、営業部長が、本契約が生前贈与の契約形態であるとの誤った説明等をしたことは認められず、申立人が本契約の内容を誤解していたとも認められないが、以下の理由により、本件は和解により解決を図ることが相当であると判断し、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、手続を終了した。 (1)営業部長が贈与契約書を作成し、申立人に使用するよう勧めて、実際にこの押印に立ち会
ったことで、本契約が生前贈与の効果を期待できる契約であると誤信させる可能性があることは否定できない。営業部長は、この契約書に法的効力が発生する可能性を考えずに、実態を伴わないものであることを前提に作成したとのことであるが、将来、この契約書通りの法的効果を主張された場合、関係者間でトラブルになることは必至である。後日紛争の原因となりかねない書面を安易に作成・提供したことについては問題がある。
(2)契約の成立と直接関係しないが、営業部長が申立人から募集人を通じて数千円のたばこをお礼として受け取ったこと、また申立人から営業部長への物品の譲渡に積極的に関与した募集人の行為は好ましいものではない。
(3)募集人は、事情聴取において、本契約を生命保険ではなく貯蓄であると断言しており、募集人が本契約の内容を誤解した状態で募集に携わったことが推測され、募集が適切に行われたか疑問が残る。