Contract
[事案 25-193] 損害賠償請求
・平成 26 年 8 月 19 日 和解成立
<事案の概要>
既契約を解約し、特別条件付き契約に乗換加入する際、募集人の説明不十分が原因で、損害を被ったことを理由に、損害賠償を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
80 歳までの医療保障特約の付いた他社保険を契約していたが、平成 14 年 7 月(46 歳時)に、募集人の勧誘を受けたので、変形性股関節症等で手術歴があり将来も手術予定があることを伝えたうえで、既往症の告知をし、提案された医療保険(保険期間 10 年)に特別条件付きで加
入し、他社保険は解約した。しかし保険期間 10 年経ったところで、特別条件付きの場合は、契約を更新することができないと言われた。
募集人は、当時新人でそのことを知らなかったというが、説明を受けていれば、他社保険を 解約して本契約に加入することはなかったので、受けた損害に対して賠償金を支払ってほしい。
<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)契約の際、募集人は、特別条件が付いた契約は、保険期間満了後、更新できないことを説明している。
(2)他社保険の解約は、申立人の判断である。
(3)契約時に申立人が署名押印している特別条件承諾書には、注釈として「特別条件が付された場合、保険契約は更新できません」と明記されている。
<裁定の概要>
裁定審査会では、当事者から提出された申立書、答弁書等の書面および申立人、申立人配偶者、募集人の事情聴取の内容にもとづき審理を行った。審理の結果、以下のとおり、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、指定(外国)生命保険業務紛争解決機関「業務規程」第 34 条 1 項にもとづき、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、和解契約書の締結をもって解決した。
1. 申立人の主張の法的整理
申立人の主張は、保険会社(募集人)の説明義務違反を理由とし、不法行為にもとづく損害賠償請求と判断する。
2. 説明義務違反の有無について
(1)申立人は、将来の手術の予定や保険料の支払状況を伝えており、募集人において、申立人には医療保険は欠かせないこと、本契約に加入する場合には、既契約(他社保険)を解約することは容易に理解できたといえる。また、80 歳までの医療保障特約が付いている既契約の解約を前提にしている申立人に対し、更新ができない保険期間 10 年の医療保険を勧誘するのであれば、更新ができないことを積極的に説明すべきであったといえる。
(2)しかし、募集人がどのような説明を行ったのか、特別条件承諾書の注釈を読んでの積極的な説明がなされたか否かについては、事情聴取において、申立人夫婦と募集人の供述は異なり、明らかではない。
(3)したがって、申立人の主張を認めることはできず、保険会社に説明義務違反があったとま
では認められない。
3. 和解について
当審査会の判断は以上のとおりであるが、以下の事情を考慮すると、本件は和解により解決を図るのが相当と判断する。
(1)募集人は、特別条件についての理解が不十分であったことが推測され、特別条件に関する説明が適切に行われていない可能性があり、募集人も、特別条件承諾書の注釈を読んだか、はっきり記憶していないと供述しており、説明が十分でなかった可能性がある。
(2)10 年後に更新ができないことを理解していれば、申立人が、既契約(他社保険)を解約して本契約に加入することは考えられず、申立人が理解できる説明が行われていなかったことが推認される。
(3)当時の募集人の取扱いは、契約者に特別条件承諾書の写しを交付していなかった。