〔部会資料〕 製薬企業と CRO の効果的な協業体制の構築委受託関係から信頼し合えるパートナーへ 2016 年 9 月 日 本 製 薬 工 業 協 会医薬品評価委員会 臨床評価部会
〔部会資料〕 |
製薬企業と CRO の効果的な協業体制の構築 委受託関係から信頼し合えるパートナーへ |
2016 年 9 月 |
日 本 製 薬 工 業 協 会医薬品評価委員会 臨床評価部会 |
目次
第 1 章. 開発業務委受託環境の現状と整理に至った背景 5
2.3.2 その他、開発委受託契約に関連したトラブル事例 17
3.5 モニタリング業務の CRO 委受託におけるKGI、KPI の例示 31
3.5.4 KPI ごとの目標値、及び許容範囲の設定(例示) 34
Appendix 1 アンケート集計結果【製薬企業】
Appendix 2 アンケート集計結果【CRO】
Appendix 3 業務分担表案
Appendix 4 KGI-KPI の例
Appendix 5 製薬協からの過去の成果物
はじめに
平成 9 年 3 月 27 日付厚生省令第 28 号「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」及び平
成 9 年 5 月 29 日付薬審第 445 号、薬安第 68 号厚生省薬務局審査課長、安全課長通知「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」の発出によって、開発業務受託機関(Contract Research Organization:以下、CRO という)の存在がはじめて法的に定義された。それから約 20 年が経過し、日本製薬工業協会(以下、製薬協という)が実施している調査 1)では、モニタリング業務を CRO に委託した治験の割合が 2015 年度ではじめて全治験の 50%を越え、今や医薬品開発に CROはなくてはならない存在になったことを示している。
製薬企業と CRO は、▇▇の業務委受託関係を通じて効果的な協業のためのノウハウを蓄積してきた。近年では、製薬企業と特定の CRO とが包括的な契約を締結するなど、様々な契約形態や協業体制を構築しており、製薬企業と CRO との関係性が「委受託関係」から「パートナー」としての新たな局面に入ったと言えるかもしれない。製薬協として、CRO 活用の実態を加味した業務委託環境の整備並びに効果的な委託プロセス構築に向けた提言を複数回作成してきたが、両者の業務委受託に関する満足度は高くなく、製薬協、日本 CRO 協会(以下、CRO 協会という)をはじめ、医薬品開発業務に関わる各種団体で業務委受託に関する議論が継続されていることからも、未だ業務委受託に課題があることが伺われる。更に契約形態や協業体制の多様化により、これまで経験のなかった新たな課題や検討事項も生まれてきている。
そこで、2015 年度タスクフォース 2(以下、TF2 という)では、CRO への業務委託における効果的な協業を目指し、多様化する契約方法を整理することに加え、これまでも議論されてきた業務委受託管理の課題克服のために両者が何をすべきかを改めて検討することとした。なお、今回はモニタリング業務委託について検討したが、基本的な考え方は他の業務委託にも十分に活用できるものと考える。
本報告書の構成は、まず、本邦におけるモニタリング業務委託の協業体制・契約方法・業務管理などに関して整理し、関係者間で共通認識が可能になるよう最低限必要と思われる用語とその特徴を定義し紹介している。次に、製薬協及び CRO 協会へのアンケートから両者が抱える問題の▇▇原因を特定し、業務委受託管理における効率化の課題を整理した。最後に、製薬企業が CROへ権限委譲できる体制構築づくりのための「補助ツール」として、実務者が実際の業務で活用できる業務分担表と進捗管理指標の案を提案している。
本報告書が製薬企業とCRO の委受託関係を更に発展させ、国内における医薬品開発力の強化と治験環境の発展の一助となることを期待する。
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第 1 部. 開発業務委受託環境の現状整理
第1章. 開発業務委受託環境の現状と整理に至った背景
近年、製薬企業と CRO の両者にモニタリング業務委受託に関する経験が蓄積され、各社はそれ ぞれが考える業務委受託のスタイルを模索、導入してきたことで契約形態の多様化が進んでいる。 TF2 参加の製薬企業各社にCRO とどのような契約形態を採用しているのかについて聴取したと
ころ、『アライアンス契約』、『パートナー契約』、『プリファード契約』をはじめ、様々な名称が使用されている状況が確認された。更に、その契約内容や業務委受託方法について細かく調査すると、あるひとつの同じ契約形態に対しても A 社では『パートナー契約』と呼ぶが、B 社では『プリファード契約』と呼ぶなどの事例をはじめとして、TF2 内はもとより製薬業界として業務委受託に関わる用語の定義が十分に統一されていない状況が見受けられた。
製薬企業間で共通の用語を有していない状況は用語理解・解釈に統一性を欠くことになり、本 来望まれる製薬企業-CRO 間における適切な意思疎通に影響を与える恐れがあると考えた(図 1)。そこで、TF2 では製薬企業-CRO 間も含めた国内業界内の意思疎通の向上を目的として、共通の
理解・解釈で両者が協議できるよう、業務委受託範囲、業務委受託契約形態、委託費用の見積もり方法及び支払い方法をその特徴に応じて整理した。更に、業務委受託範囲、業務委受託契約形態については、各々の長所・短所を整理し、各社がそれぞれに適した業務委受託のスタイルを採用するうえで参考となるような情報を取りまとめた。
戦略的提携基本契約
Alliance
Contract
ヘッド
Preferred
contract
アライアンス
契約
Partnership
Contract
カウント
全委託
プリファード
契約
包括契約
Functional
Service Provider
Preferred
Vendor
Full Service
ハイブリッド
個別案件
契約
Alliance・
Partner
パートナー
契約
Work Order
By order
contract
FTE
図 1 製薬企業-CRO 間の業務委受託契約に関する現状
第2章. 契約方法の整理
2.1 業務委受託範囲
2.1.1 FSP と FSO
製薬企業からCRO への業務委託範囲は、機能ごとに委託する Functional Service Provide(r
以下、
FSP という)と、試験単位やプロダクト単位に関連する機能ごとの業務を全て 1 社に委託するFull Service Outsourcing(以下、FSO という)に大別し、その業務範囲とマネジメント体制、長所・短所を整理した(表 1)。
表 1 FSP と FSO の整理
内容 | FSP | FSO |
業務範囲(図 2) | 特定の業務ごと[Functional Service(以 下、FS という)例;薬事、モニタリング、データマネジメント(DM)、解析など]に限定 | 開発の領域やプロジェクト、試験などの パッケージごとの括りで、FSP の個別業務を全て一括 |
マネジメント体制 | 4) | |
長所 | 機能・部門ごとに製薬企業側のニーズ に適った CRO へ委託を振り分けることができ、専門家同士がやりとりするため、高品質・タイムリーな進捗管理・業 務遂行が期待できる。 | CRO 内の連動体制を活用し、一貫性の ある効率的な業務完遂が期待でき、権限譲渡を併せて行うことで CRO が業務遂行に一層高い責任感を持つことが期 待できる。 |
短所 | 機能・部門ごとに異なる CRO へ委託す る場合、異なる CRO 間には契約関係がなく、FS ごとに連係がとれない場合は、製薬企業において CRO ごとにその連携を調整する必要がある。 | FS 単位でみると、CRO 内において得手 /不得手があり、製薬企業の満足度が FS によって異なることがある。 |
図 2 業務範囲のイメージ
FSP においては、特定の機能を全て委託する場合と、特定の機能、例えばモニタリング機能のうち施設選定後のモニタリングから依頼する等の特定の時期や業務のみを委託する場合がある
(図 2)。
図 3 FSP のマネジメント体制
製薬企業 CRO
モニタリング部門
CROの各業務リーダーから製薬企業PL又は各業務部門への直接の連絡は本来望まれる形ではないが、必要に応じて契約時に協議を行う。
モニタリング
リーダー
DM部門 DMリーダー
解析部門
PL PL(管理者)
解析リーダー
薬事部門
PV部門
その他 関連部門
社内の各部門は必要に応じて、サポートを行う
CRO業務の全体的なマネジメントのみ行う
各functionの決断、責任を負う
CRO業務(再委託も含めて)の管理責任をすべて担う
社内での速やかな情報共有を可能とするネットワークを有し、可能であればプロジェクトマネジメントの専門的な知識、技術、 経験を有するものが望まれる
薬事リーダー
PVリーダー
検査会社
図 4 FSO のマネジメント体制
2.1.2 モニタリング業務の委託方法
モニタリング業務という同一機能内での委託方法について整理した場合、CRO に全ての実施医療機関へのモニタリングを委託する「全委託型」と、製薬企業のモニターと CRO のモニターが地域、実施医療機関などを分けて協業して業務を行う「ハイブリッド型」に区分できる。両者の業務イメージと製薬企業にとっての長所・短所を図 5 にまとめた。
図 5 「ハイブリッド型」の業務イメージ並びに
「全委託型」「ハイブリッド型」の製薬企業にとっての長所・短所
業務委受託契約形態については試験ごとに個々に CRO を選定の上で委託する単発契約方式と、特定の CRO に継続的に依頼するプリファードベンダー方式に大別し、更にプリファードベンダー方式を活用の優先度等によりアライアンス契約とパートナー契約に細分した。3 つの契約形態の特徴を以下に記載する。
【プリファードベンダー方式:アライアンス契約】
⮚ 基本契約を締結した CRO と製薬企業の中長期的な試験計画について情報共有・協議を行い、優先的にCRO の人員確保を行うなど、製薬企業-CRO 間で強固な関係が構築されている。
⮚ アライアンス契約を締結する際は複数の CRO を対象とすることがあるが、一度アライアンス契約が締結されると試験ごとなどでの競争入札は行わない。
【プリファードベンダー方式:パートナー契約】
⮚ 基本契約を締結した CRO と製薬企業の中長期的な試験計画について情報共有・協議を行い、単発契約より積極的に人員確保を行うなど、製薬企業-CRO 間での関係が構築されている。ただし、人員確保については、保証されない場合もある。
⮚ 状況に応じて、試験ごとの競争入札の有無が決められる。その際には、CRO の専門性や品質で優先度を決定する場合もある。
【単発契約】
⮚ 特段の制限なく委託先を選定することが可能である。
⮚ 複数の CRO を比較することにより、提示された条件の妥当性を確認することが可能となる。
⮚ 長期的な視点で複数の単発契約が見込まれる場合は、基本契約が締結されることもある。
契約形態を特徴づける構成要素を、基本契約の締結、試験情報の開示、競争入札による CRO 選定、CRO の人員確保と考え、3 つの契約形態をこの構成要素別に整理した(表 2)。
⮚ 基本契約の締結:
⯎ 基本契約(Master Service Agreement(MSA)とも呼ばれる)とは、継続的に業務委受託する場合に、通常個別契約にて取り決める事項の中で共通する事項(関係法令等の遵守、品質管理、資料等の管理・保存、守秘義務など)についてあらかじめ両者で定めた全ての委託案件に適応させる契約であり、委託案件毎に締結する契約とは異なる
⯎ 過去の委託経験において費用、品質、サービスの内容が製薬企業の期待を満たした場合、再度の業務委受託を見越して基本契約を締結する
⯎ 優先的に業務委託を検討できるように基本契約をあらかじめ締結する CRO はプリファードベンダーと呼ばれる
⮚ 試験情報の開示:
⯎ 製薬企業が中長期的に予定している試験の情報をCRO に開示すること
⮚ 競争入札による CRO の選定:
⯎ 複数の CRO から見積もり及び提案書を取得し比較することにより、コスト、品質、サービスの観点から当該試験において最適な CRO を選定すること
⮚ CRO の人員確保:
⯎ 製薬企業から開示された中長期的な試験情報を考慮し、CRO が業務遂行に必要な人員を予め確保すること
表 2 契約形態に関する整理*
契約形態 | アライアンス契約 | パートナー契約 | 単発契約 | |
構成要素 | 基本契約の締結 (プリファードベンダー) | ○ | ○ | × |
試験情報の開示 | ○ | ○ | × | |
競争入札による CRO の選定 | × | ○/× | ○ | |
CRO の人員確保 | ○ | ○/× | × | |
*:本報告書内の整理であり、各社により状況は異なる
更に、プリファードベンダー方式の契約と、単発契約について長所・短所を図 6 に示した。
図 6 プリファードベンダー方式の契約及び単発契約の長所・短所
2.2 委託費用の見積もり及び支払い方法
業務委受託契約締結の際の検討すべき内容のひとつである「CRO への業務委託費用の見積もり方法や支払い方法」について述べる。
2.2.1 見積もり方法
まず、CRO 費用の見積もり方法であるが、基本的には Full Time Equivalent 型(以下、FTE 型という)とHead Count 型(以下、HC 型という)の 2 つの概念(方法)のどちらかにより算出されており、そのイメージを図 7 にまとめた。
(1) FTE 型
専従換算値とも称され、人的リソースを専任 1 人当たりに換算した工数に基づいて費用を算出する方法である。業務の工数に対しての相当リソース数で算出されるため、実際に業務へ関与した人的リソースの延べ数には影響を受けない。
(2) HC 型
個々のリソースが担う工数量を考慮せず、実際に業務に携わる人的リソースの頭数(人数)に 基づいてCRO 費用を算出する方法である。これは人的リソースを専任従事とするケースになるが、個々のリソースにおける業務の繁忙や閑散に影響を受けないため、時期ごとで実際に発生してい た業務の工数と対価とのバランスが変動することもある。また、業務の時間を積み上げる FTE 型 に対し、HC 型では 1 人が最少見積もり単位となるため、FTE 型に比べて割高になることもある。
なお、任命される人員の経験値等(職位含む)で金額の見積もりが異なるため、同一人数でも、経験値等の高い人員が多い場合は高額となり、新人等の経験値等が低い人員が多い場合は安価となりやすい。
TF2 の製薬企業各社に利用するCRO がどのように費用を見積もっているかを聞き取り調査したところ、現状では実際の業務工数、即ち FTE に応じた費用を対価として設定するのが妥当と考えて、FTE 型で見積もりを行っている製薬企業が多かった。
また、製薬企業-CRO 間の不必要な見積もり協議や業務委受託開始後の実務と対価に対する疑義が発生しているという実態が見えてきた。この点は、製薬企業側が見積もり方式について費用算定要領等を保有しそれに従い算定するよう CRO 側に依頼する、もしくは、CRO 側の見積もり方式で検討せざるを得ない場合も、製薬企業側が見積もり書で確認すべき事項をあらかじめ作成しそれに従い見積もり書を確認し CRO と協議することで、製薬企業-CRO 間の見積もりに関する折衝の負荷軽減につながると考える。
なお、いずれの見積もり方法を採用する場合においても、製薬企業は見積もりに必要な十分な情報を提供し、CRO は提供された情報を基に根拠を持って費用を算出する必要がある。
・FTE型
受託範囲において必要な工数 | ||||||
期間 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 合計 |
モニタリング業務 | 1 | 3 | 1.5 | 1 | 0.4 | 6.9FTE |
:8時間×20日相当数の業務を1FTEとする
・HC型
受託範囲において必要な人員 | ||||||
期間 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 合計 |
モニター | 1 | 3 | 2
| 1 | 1 | 8人 |
:モニター1人当たり8時間×20日業務を1名が担当する業務の上限とする
図 7 FTE 型及び HC 型の算出方法イメージ
2.2.2 支払い方法
次にCRO 費用の支払い方法であるが、大きく分けて定期払いとマイルストン払いの 2 つの方法があり、支払い例を図 8 にまとめた。
(1) 定期払い
個々の業務タスクの進捗や達成とは無関係に定期的にCRO 費用を支払う方法であり、固定された総額を分割して支払う方法(定期分割支払い型)などがある。
(2) マイルストン払い
業務タスクの進捗や達成に応じて支払いの条件やタイミングを定め、その進捗や達成等の条件を満たした時点で支払いを行う方法である。条件を満たさない限り CRO 費用が支払われない前提であることから、業務に対する責任を明確化させる意図を強く含んでいる。
症例報告書固定が早まった月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
計画 100%登録が早まった
(マイルストン) ◆1
実際
(▇▇▇▇▇▇) ◆1
定 計画
期 (支払)
払 実際
い (支払)
ト マ 計画
ン イ (支払)
払ル 実際
い ス (支払)
◆2 ◆3
◆2 ◆3
◆4 ◆5 ◆6
50%組入が遅れた ◆4 ◆5 ◆6
50%登録の遅延に
【マイルストンリスト】
◆1:CROとの契約
◆2:施設との契約
◆3:症例組入開始
◆4:50%症例組入
◆5:症例組入れ完了
◆6:症例報告書固定
伴い、支払い時期は遅くなる
100%登録や症例報告 書固定の前倒しに伴い、支払い時期は早くなる
図 8 定期払い及びマイルストン払いの支払いイメージ
「支払方法」に関して TF2 の各社に聞き取りをしたところ、約半数以上がマイルストン払いの経験を有していた。更に、モニタリング業務に関して、どのような項目をマイルストンに設定している(していた)かについて各社状況を調べたところ、以下のように、その到達や達成が明確に把握できる項目(業務タスク)をマイルストンとして設定している製薬企業がほとんどであった。
⮚ CRO との契約締結時(業務開始時)
⮚ 実施医療機関との契約締結完了時
⮚ 被験者の組み入れや症例報告書(Case Report Form:以下、CRF という)の回収、CRF デー
タの固定等の完了時
⮚ 実施医療機関の終了手続き完了時(業務終了時)
また、試験期間が長期となる場合や、実施医療機関数や症例数が多い場合などは、ひとつのマイルストンの完了までの途中経過点を分割し、更に細かなマイルストンを設定している製薬企業も多かった。
なお、がん領域などの追跡調査を要する試験では、マイルストンの設定とは切り分けて追加調査の回数等で支払いを設定する場合もある。
マイルストン設定の経験のある製薬企業では、委託する試験の性質に応じて設定するマイルストンの項目や額を調整、選択しているケースが多かった。
また、前述した FSP 契約において契約期間内の人員を確保するような契約の場合は、依頼する他試験での人員の流動的な活用を見込み具体的なマイルストンにおける支払ではなく定期支払いとする傾向がある。
一方、ひとつの委託案件内で、マイルストン払いとする部分と定期支払いとする部分の項目を分け、両者を併設する場合もある。これは、業務タスクの進捗や達成などの成果に対する対価的な意味合いを持つ部分(マイルストン払い)と、必ずしも成果との関連性が直接的ではない定常的な業務(例えば必須文書作成業務等)への対価的な意味合いを持つ部分(定期払い)を分けることで、費用支払いに関して過剰な成果主義に偏らないような仕組みとして設定されることが多い。
なお、マイルストン払いでは、業務期間の変動に影響を受けない内容で CRO 費用総額を固定した場合、予定より業務が早期に終了すれば一部費用は CRO 側の努力等に対するインセンティブ的な位置付けとなるが、逆に完了が遅延すれば CRO 側にとって業務工数(費用)が持ち出しになるリスクもある。
ときに、CRO 費用の見積もりや支払い方法に関連して、製薬企業-CRO 間で疑義やトラブルが発生する場合がある。例えば HC 型での見積もりの場合、モニターのパフォーマンスに起因して予定通りの成果が得られないことが想定できるような場合、追加人員に関する費用負担について、両者で考え方が一致しない場合がある。また、マイルストン払いでは、製薬企業-CRO 間のマイルストン解釈の齟齬により、CRO 側ではマイルストンを達成したと考えていても、製薬企業側から到達していないと判断されるような事例も考えられる。このように、発生する可能性がある事例を念頭に、HC 型やマイルストン払いの特徴や定義について両者で認識を統一した上で、契約後に費用の変更が想定される事例に関して締結前に対応を協議し、トラブルの発生を未然に防ぐことが必要である。
2.3 業務委受託に関するその他のポイント
2.3.1 海外本社による開発委受託に関する契約
TF2 所属のメンバー各社への聞き取りの中で、製薬企業、CRO 共に海外本社同士で業務委受託契約が締結された場合、情報伝達や試験を管理する上での取決めに関して苦慮している事例が少なからず報告された。
具体的に苦慮している点としては、日本の GCP(以下、J-GCP という)等の規制要件、及びこれに準じて作成された日本特有の手順書(Standard Operating Procedures:以下、SOP という)、実施医療機関への対応等、国内での留意事項を海外本社同士での契約前に CRO に直接伝えることが難しい場合が多かった。
海外本社同士で業務委受託契約を締結した場合の指示命令・報告系統を図 9 に示す。
海外
製薬企業の海外本社
【製薬企業-G】
契約
CROの
海外本社
【CRO-G】
指示
報告
指示
報告
日本
製薬企業の日本支社
【製薬企業-J】
CROの
日本支社
【CRO-J】
図 9 海外本社同士で締結された契約における指示命令・報告系統
TF2 で共有された製薬企業とCRO の海外本社間での契約の問題事例について意思疎通に関する問題とその主な原因を整理し以下に示す。
⮚ 製薬企業の海外本社(以下、製薬企業-G という)を経由して CRO の海外本社(以下、CRO-Gという)へ伝達し、その後 CRO の日本支社(以下、CRO-J という)へ伝達するラインが契約上の指示・報告伝達経路となるが、この伝達経路には製薬企業の日本支社(以下、製薬企業-J という)と CRO-J の直接ルートは設定されていないこともあり、製薬企業-G からの情報が CRO-J に十分伝達されていないなど、時間を要している場合が多い。
⮚ 実施医療機関からトラブルに関し製薬企業の日本支社(以下、製薬企業-J という)へ直接連絡されることがあるが、製薬企業-G と製薬企業-J との間で円滑な意思疎通が行われていない場合、対応に余分な時間を要することがある。
また、TF2 で行った協議で得られた海外を含めた開発委受託契約に関するトラブル事例を紹介する。
⮚ 製薬企業-G やCRO-G が日本の規制や治験環境等を考慮せず対応をしてしまう。
例)利益供与と誤解を生む治験関連物品の提供や、モニターの施設訪問数の制限、安全性情報の報告期限や様式等
⮚ 製薬企業-G が CRO-G を通じて CRO-J に委託したモニタリング業務について、製薬企業-Jで支援する必要があった。
例)PMDA による GCP 適合性書面調査や実地調査時の、PMDA への説明や実施医療機関との折衝
海外本社を含めた開発委受託契約については、関係者が増えることで通常の委受託契約以上に十分な意思疎通や認識の統一が重要といえる。
特に国内外の規制や治験環境等の違い、言葉の解釈(言語の違いによるものも含め)については注意が必要である。
また、製薬企業-G や CRO-G が契約を進めてしまう場合も想定されるため、業務を進める前に両者の役割と権限を明確にする事の重要性を製薬企業-CRO 間で共通認識として持っておくことが必要である。
2.3.2 その他、開発委受託契約に関連したトラブル事例
上記以外に、TF2 の検討の中で挙がった具体的なトラブル事例として、用語の定義に関する
「CRO との協業」の問題点について紹介する。
⮚ 契約事項に関する用語について、製薬企業-CRO 間で異なった認識・解釈がされており、契約締結後に協議を必要とした事例があった。
例)First patient in の理解が「同意取得完了」、「初回の治験薬投薬完了」と異なる、Feasibility調査の理解が「実施医療機関情報収集」と「日本での試験の実現可能性の検討」で異なる等、認識の不一致
このようなトラブルを無くすため、契約前に委受託業務内容の詳細を打ち合わせ、契約書において用語の定義を明確にし、契約書条項の相互読み合わせを議事録付きで実施するなどの対策をとることにより、契約内容に対しても慎重かつ正確に製薬企業-CRO 間での意思疎通・認識の統一を行う必要性があると考える。
第3章. 契約方法の多様化に関する考察
これまで述べてきたように製薬企業-CRO 間における業務委受託範囲、契約形態や見積もり、支払いなどの方法が多様化している一方で、どのような方法が選択肢として存在し、また、それぞれがどのような特徴を有しているか関係者で十分に整理・認識されておらず、想定した委受託の内容と実際の契約形態や支払いが、必ずしも一致していないことも業務委受託に関する満足度や製薬企業-CRO 間の効率的な協業に影響を与える一因と考える。
各契約方法に長所・短所は存在するが、その特徴を理解し、各社の背景・要望に見合った方法が適切に選択できているか改めて確認・検証を行い、より効率的/効果的な契約方法の選択と委受託関係の構築に繋げるためにも契約方法の意思疎通と認識の統一を図りながら委受託関係を築いていくことが重要と考える。
第 2 部. 開発業務委受託管理への提案
第1章. 業務委受託の目的と改善すべき課題点
1.1 業務委受託に対する満足度調査と課題検討
製薬企業が CRO に業務を委託する目的の1つは、「業務完了までに必要な製薬企業側のリソースをできるだけ減らし、十分な成果を得ること」である。
実際に、TF2 のメンバー21 名(TF2 へ参加している製薬企業 21 社から各社 1 名)から CRO への業務委託に対して期待している点を調査したところ、最も多かった回答は「社内リソース不足の解消」(21 名中 15 名)で、次いで「十分なクオリティの成果物・アウトプット」であった(21
名中 14 名)。
しかし、それらの満足度を調査すると、「どちらかといえば不満」又は「不満」とする回答が大部分であった(図 10)。
0%
20%
40%
60%
80%
100%
CRO管理に要している社内リソース 01
14
6
成果物・アウトプットの質 0
7
12
2
満足
どちらかといえば満足
どちらかといえば不満
不満
単位:名
図 10 CRO への業務委託に対する満足度
TF2 内でこの満足度調査の結果の原因について議論し、以下のような仮説を抽出した。
⮚ CRO のモニタリングスキルが期待するまでに至っておらず、想定以上に CRO の業務管理に関する製薬企業側のリソースがかかっている。
⮚ CRO からの成果物の質に漠然とした不安を感じ、製薬企業が必要以上に介入してしまう。
⮚ 品質レベルに対する製薬企業-CRO 間での十分な確認/擦り合わせができていない。
⮚ 製薬企業と CRO の業務分担が明確にされておらず、二重管理が生じ非効率的である。
⮚ 委譲しているはずの業務及び権限が CRO 内で十分に説明・理解・共有・実行されておらず、結果的に製薬企業が手を出さざるをえない。
課題として、CRO のスキルや成果物の質に対する不安から製薬企業が過剰に介入してしまうことによるCRO への権限委譲不足や、CRO で委譲された権限が実行されていない可能性を考えた。製薬企業による過剰な介入は、CRO の自主性・主体性の妨げとなり、製薬企業の更なる介入を引き起こす悪循環を生む恐れがある。
そこで、TF2 では製薬企業、CRO の両者に対して業務委受託における現状についてアンケートを実施し、上記の仮説を検証したうえで製薬企業と CRO が効果的な協業を図るための改善策等を検討した。
1.2 アンケート(製薬企業、CRO)
1.2.1 アンケート概要
(1) 調査対象
⮚ 製薬協 臨床評価部会加盟 64 社
⮚ CRO 協会加盟 17 社
(2) 調査時期
2015 年 12 月
(3) 調査方法
製薬企業-CRO 間の業務委受託における現況について、オンラインアンケートツールを用いて、製薬協加盟会社、CRO 協会加盟会社に対し回答を依頼した。回収は製薬協 技術部を事務局と し、事務局にて回答会社・回答者名が特定できないようにマスクキングされた結果を用いて集 計作業を行った。
(4) アンケート対象者
⮚ 製薬企業:CRO に業務委託した各試験におけるCRO モニタリング業務管理者
(CRO 側のプロジェクトリーダーと窓口となる人)
⮚ CRO:製薬企業から受託した各企業治験におけるプロジェクトリーダー
(又はモニタリングリーダー等と呼ばれる役割者で製薬企業側の担当者と窓口となる人)
(5) アンケート項目
業務管理について、業務分担について、権限委譲について 等
※ 現在委受託中の試験における状況について回答を依頼
1.2.2 アンケート結果
以下に、アンケート項目の集計結果の一部を抜粋した(全てのアンケート集計結果は Appendix 1、2 を参照)。
なお、製薬企業からは 83 名、CRO からは 32 名の回答があった。
図 11 製薬企業が行っている業務管理量の実情【製薬企業】
※【 】内は回答者
図 11 は、製薬企業が行っている CRO に対する業務管理量の印象についてのアンケート結果である。「当初考えていたよりも多い」又は「当初考えていたよりもかなり多い」という回答が半数以上であった。
図 12 製薬企業が行っている業務管理量が多くなる要因(複数回答あり)【製薬企業】
図 12 は、製薬企業が行っている業務管理量が多くなる要因についてのアンケート結果である。
「CRO の成果物の質に問題があるため」、「スキルの低さにより生じた問題の解決に過度にかかわらざるを得ないため」との回答が上位にあり、TF2 内の仮説同様、業務委託については非効率的な状況に陥っていることが示唆された。
図 13 製薬企業の日常的な介在なく CRO が受託業務を遂行するために必要なこと
(複数回答あり)
図 13 は、製薬企業の日常的な介在なく、▇▇▇ が受託業務を遂行するために必要と考えられることについてのアンケート結果である。製薬企業は、「CRO のモニタリングリーダーが成熟すること」、「CRO 側で主体性を醸成すること」が最も重要と回答しており、CRO は「製薬企業との業務分担を明確化すること」、「製薬企業との責任範囲の明確化を進めること」が最も重要と回答している。また、「業務分担を明確化すること」と「責任範囲の明確化を進めること」が重要という回答は製薬企業でも多く、最も多かった「CRO のモニタリングリーダーが成熟すること」、「CRO側で主体性を醸成すること」に次ぐ回答数であった。
図 14 業務管理をより効率化するために重要と考える条件(複数回答あり)
製薬企業が効率的な業務管理をする上で重要を考える条件についての結果を図 14 に示す。
製薬企業、CRO 共に重要と考える条件の上位は、「CRO 側で主体性を持って物事を判断されるようになること(製薬企業がCRO 側に物事の判断を任すようになること)」、「CRO 側の成果物の質が向上すること(製薬企業と CRO が考える成果物への質の認識が共通化すること)」であり一致していた。更に、製薬企業は「製薬企業側の管理者と CRO 側の問題認識が適切になること」も業務管理を最低限にするために必要な条件であると認識していることがわかった。
1.3 課題の整理と解決への提案
製薬企業が CRO に業務委託する目的の1つは、「業務完了までに必要な製薬企業側のリソースをできるだけ減らし、十分な成果を得ること」である。しかし、TF2 内の調査、製薬企業及び CROへのアンケート結果から、業務管理にかかる工数が多く、CRO の業務管理に要している社内リソースが減っていない現状が確認できた。
また、製薬企業の日常的な介在なく CRO が受託業務を遂行するために、製薬企業は CRO モニタリングリーダーの成熟、CRO の主体性の醸成が最も必要と考えていた。一方、CRO は業務分担や責任範囲の明確化が最も必要と考えているが、業務分担や責任範囲の明確化は、製薬企業も同様に必要と考えている点であり、両者の認識に大きな違いはなかった。同時に、業務管理を効率化するために重要と考える条件についても、製薬企業と CRO 共に、成果物の質の認識を一致させて質が向上すると共に CRO に物事の判断を任せられるような形にすることが重要と考えていた。
これらは対策を講じてすぐに解決されることではなく継続的に取り組む必要があるが、本 TFでは「責任範囲の明確化」と「成果物の質の共通認識」については直近で対策を講じることが可能であると考え、以下の内容を検討課題として設定した。
課題
• 製薬企業との業務分担・責任範囲を明確化すること
• 製薬企業とCROが考える成果物への質の認識を共通化すること
製薬企業の成果物に対する漠然とした不安を軽減し CRO への過剰な介入を防ぐためには、業務委託を開始する前に、業務分担と責任範囲を製薬企業-CRO 間で明確にし、両者が成果物の質に対する認識を統一することが重要である。製薬企業が求める成果物の質は製薬企業ごと、また実施する試験の内容によっては重要とするデータ項目が変わってくる等、同一製薬企業内でも少しずつ異なるはずであり、事前に CRO に説明し把握してもらうことが重要なポイントであろう。また実際に求める成果物が得られるよう、例えば業務開始前にトレーニング(事例:モニタリング報告書であれば、試験特有に詳しく記載してほしい点を説明する等)を行い、求める成果物のゴールを提示すると更に効果的であると考える。
なお、トレーニングには、委託する業務内容で必要な固有のトレーニングと、臨床開発一般的
な規制などのトレーニングがあり、前者は製薬企業が CRO に対し、後者は CRO 自身で十分に実施する必要がある。業務委託を開始した後は、成果物の質が製薬企業側の求めるレベルに達しているかを随時確認し、不足があれば製薬企業は原因を究明して CRO へフィードバックし、状況に応じて適宜必要なトレーニングを提案する。
成果物の質に特に問題がなく、成果物の質に対する不安が解消できていれば、徐々にその業務は CRO 主体で行うように権限を委譲していく。いわゆる Plan-Do-Check-Action(以下、PDCA という)サイクル 2)を両者で意識して回していくことで、製薬企業の過剰な介入が減り、CRO に委譲される業務及び権限が徐々に増え、それが CRO 側の主体性の醸成につながり、高いパフォーマンスの発揮につながる。そして、最終的には製薬企業の業務量の減少にもつながると考える(図 15)。
図 15 製薬企業の業務委託管理量減少に向けたステップアップのイメージ
これまでに製薬協が紹介してきた資料等を振り返ってみると、業務分担については「開発業務受託機関(CRO)の調査、選定・管理に関する手引き(Appendix 5 に示す、2004 年作成の報告書)」で「業務分担リスト」が紹介されているが、責任範囲を明確にする仕様にはなっておらず、また成果物の質を適宜確認するための指標については今までに提示されていなかったため、以下の 2つのツールを今回検討したので次章以降にて紹介する。
⮚ 業務分担表(第 2 章)
⮚ 進捗管理指標(第 3 章)
第2章. 業務分担表について
2.1 業務分担表作成のコンセプト
アンケート結果から、製薬企業、CRO 共に「製薬企業との業務分担を明確化すること」、「製薬企業との責任範囲の明確化を進めること」は重要であると認識しているが(図 13)、「業務分担表に業務内容が網羅されていない」、「業務責任が不明確」であるということから業務分担表を適切に活用できていないと認識されていることもわかった。(図 16)
図 16 業務分担表を適切に活用できていない理由(複数回答あり)
そこで TF2 では、モニタリング関連業務で発生すると考えられる業務を可能な限り網羅し、業務分担及び各業務における役割、責任について確認できる表の雛形(Appendix 3 参照:以下、業務分担表という)を作成した。なお、業務分担に関しては「開発業務受託機関(CRO)の調査、選定・管理に関する手引き」(2004 年作成)で「業務分担リスト」が提示されており、今回の業務分担表は「業務分担リスト」を、図 17 に示すコンセプトを基に改訂したものである。
業務分担表は、「業務分担表に業務内容が網羅されていない」、「業務責任が不明確」という上述のアンケート結果を受け、それを解消できるような構成とした。加えて、業務分担やその責任範囲は、(業務開始前に合意しておくことが前提だが)業務開始以降にも必要に応じて実務担当者が見直すことでより適切な業務分担が可能になると考え、随時更新することを前提とした。
業務分担表は製薬企業とCRO が効率的に協業を行うためのツールであるが、重要なことは、製薬企業及び CRO の各担当者が、各業務の具体的な内容、役割分担、権限を業務委受託開始前に認識・合意し、業務を開始することであり、随時 PDCA サイクルを回して更新していくことである。
構成
作成時期
使用者
• 製薬企業、CROの実務担当者
• 業務開始までに製薬企業、CRO間で合意
• 治験実施中も必要時に更新
• モニタリング関連業務に必要な業務を網羅
• 業務分担、業務の役割が明確
図 17 業務分担表のコンセプト
2.2 業務分担表の構成
業務分担表はモニタリング関連業務に関して生じうる業務を網羅できるよう、各業務について細かく記載した。業務分担表に必要な業務を掲載していない場合、製薬企業、CRO のどちらが業務を行うかが不明確となり、重複業務や業務の失念が発生する恐れがある。しかし、業務分担表に規定すべき業務は、製薬企業-CRO 間の業務委受託方針や試験内容などによって異なるため、状況に応じて項目を削除・追加し、適切な形に修正した上で使用して頂きたい。
「業務分担リスト」(2004 年作成)は、各業務の実施者が製薬企業又は CRO のどちらなのかは決めることができるが、各業務における役割(作業者/承認者など)までは定めていない。そのため、業務分担表では、各業務に対し、「製薬企業」、「CRO」のチェックボックスを設け、表 3
「業務分担表の一部抜粋」に示すように、役割及び権限を「○(作業)」「◎(承認)」「☆(作業及び承認)/報告必要」、「★(作業及び承認)/報告不要」の 4 つに分類した。
「○(作業)」は、ある業務に必要な作業を実際に行う役割であり、「◎(承認)」は、その作業が適切な質であるかどうか、完了したかどうか等を判断する役割である。例えば、▇▇▇ がモニタリング報告書(案)を作成し、製薬企業がその内容を確認して承認するという場合は、CRO の欄には「○」、製薬企業の欄には「◎」を記入する。
「☆(作業及び承認)/報告必要」及び「★(作業及び承認)/報告不要」は作業及び承認の両方を担当する役割であり、製薬企業内若しくは CRO 内で作業及び承認を行い、完結する業務(例えば、モニタリング報告書は CRO が作成及び承認し、製薬企業はモニタリング報告書に関与しない場合等)に用いられる。なお、CRO に業務の作業と承認を委託した場合、当該業務に関するノウハウは委託した製薬企業に残らないことになる。今後、自社に当該ノウハウを残す必要があれば「☆(作業及び承認)/報告必要」を選択し、必要がなければ「★(作業及び承認)/報告不要」を選択することになるが、承認を委譲した以上は管理目的の報告でないことを十分理解し、タイミングや頻度は製薬企業-CRO 間の協議で決定し、CRO の負担にならないような配慮が必要である。
提案した 4 分類以外に細かな役割(報告書の作成であれば「作成者」「確認者」「修正者」「承認
者」等)を設定した方が適しているのであれば、必要に応じて検討頂きたい。
また、製薬企業内で完結する業務も業務分担表に記載する事で、製薬企業、CRO の両者が実施する業務を明確化し、重複業務や業務の失念の防止につながるため、必要に応じて検討頂きたい。
表 3 業務分担表の一部抜粋
必要に応じて、より細かな役割を設定する
製薬企業とCRO 間の業務 | 製薬企業 | CRO | 備考(業務の詳細、報告頻度・時期等) | |
1:実施体制の確立 | ||||
擦り合わせSOP の作成 | ◎ | ○ | ||
委託業務開始から終了までの業務全体の進捗管理 | ☆ | 症例進捗一覧、手続き一覧等 チェックボックスの分類 | ||
CRA の要件確認、指名及び指示教育 | ★ | ○:作業 ◎:承認 ☆:作業&承認/報告必要 | ||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ★:作業&承認/報告不要 | |
2.3 業務分担表の作成時期、使用者、及び留意事項
業務分担表の内容については、業務開始前に製薬企業-CRO 間で合意しておくべきである。各業務における役割を業務開始前に明確にしておくことで、両者の業務量を事前に見積もることができる。業務開始以降に新たな業務が発生した場合は、業務分担表を見直して適宜改訂し、業務分担表を最適化することが望ましい。
また、業務分担表に記載されている業務について、製薬企業-CRO 間で解釈の違いが生じないよう、製薬企業-CRO 間で十分協議を行い、記載内容の認識の統一に努めて頂きたい。業務分担表の内容について合意する際は、両者の契約担当者のみで協議するのではなく、実務担当者も含めて協議し認識を統一しておくと、業務開始以降の想定外の業務を減らすことができ、製薬企業-CRO間での契約上のトラブルも防ぐことができると考える。
CRO に作業・承認まで一括して委託した業務に対して、製薬企業は業務分担表を逸脱するような干渉は控えるべきである。ただし、業務開始直後等は、製薬企業側が求める成果が得られるよう、両者の認識の確認の観点からも、必要に応じてフォローや CRO へのトレーニングを行い、業務が軌道に乗っていくに従って徐々に干渉を少なくしていく等の対応が必要である。
なお、成果物の質に関する両者の認識を統一するためには、第 3 章に記すように進捗管理指標などを用いて、委託業務実施中に成果物の質を随時評価、フィードバックすることが有効である。
第3章. 進捗管理指標導入について
3.1 進捗管理指標(KGI、KPI)導入の重要性
製薬企業の成果物の質に対する不安を解消するためには、CRO に委託する業務で成し遂げるべきゴールと成し遂げるためのプロセスを適切に評価し見える化する仕組みが必要である。そこで TF2 は権限委譲を進めるために必要な仕組みづくりのきっかけとして、「進捗管理指標」の一種である「重要目標達成指標(Key Goal Indicator:以下、KGI という)」、及び経過観察の指標である
「重要業績評価指標(Key Performance Indicator:以下、KPI という)」について検討した。
業務委受託を開始する際には、製薬企業と CRO が当該委受託で何を成し遂げなければいけないかを共有する必要がある。製薬企業が期待するゴールと CRO が提供できる成果物を明らかにし
(擦り合わせ)、そのゴールを達成するためのプロセスと達成の程度を指標として予め見える化しておく。そして、業務委受託中はそれら指標に基づく結果を両者で評価し、問題点などが認められた場合には随時対応していくことで、成果物の質に対する不安が解消すると考える。この KGI
/KPI の設定や活用は、プロセス管理の考え方と相通じるものであり、PDCA サイクルやRBA(Risk Based Approach)の考え方も参考となるだろう。
3.2 KGI、KPI とは
KGI 及び KPI は、いずれも目標を達成するための手段/行動が遂行されているかを、「定量的」に評価する指標である(図 18)。
図 18 KGI/KPI の定義
「KGI」がプロセスの目標(ゴール)を達成したか否かを示すのに対し、「KPI」はプロセスの実施状況をモニタリングするために、実行の度合い(パフォーマンス)を示す。つまり、図 19に示すように、「KGI」の達成に向かってプロセスが適切に実施されているかどうかを所定の時期ごとに評価するための指標が「KPI」である。
Goal
-計画通りの治験実施-
KGI
-品質-
KGI
-納期-
✓ 目標を達成したか?
KPI
KPI
KPI
✓ 実行の度合いは計画どおりか?
図 19 KGI/KPI の位置付け
KPI は結果を事後的に確認するためのものではなく、計画通りに進捗しているか、重大な問題が潜んでいないかを所定の時期ごとに確認し、必要に応じて迅速なアクション(是正措置・予防措置)を起こすためのものである。「計画(想定、目標)からどの程度乖離したら行動を起こすか」ということを「予め」、「明確に」定めておくことで、問題を発生させない、発生しても最小限に留めることができる。
3.3 KGI、KPI を設定する利点
TF2 では、CRO にモニタリング業務を委託する際に KGI、KPI を設定することは以下のとおり様々な利点があると考えた。
✓ KGI、KPI を設定することで
⮚ 当該プロジェクト・試験の目標がより明確になる
⮚ 所定の時期ごとに可視化しPDCA サイクルを回すことで、目標達成の確度があがる
✓ KGI、KPI を製薬企業と CRO で共有することで
⮚ 製薬企業が求めている成果を確実に CRO に伝達できる(意識のギャップの解消につながる)
⮚ 目標値との乖離を見える化することで、製薬企業と CRO が同じ目線でリスクのシグナルを検出できる
⮚ 明確な数値目標を提示することでCRO への権限移譲を容易にし、両者の役割分担と責任がより明確になる
⮚ 製薬企業はKGI、KPI を中心に CRO の業務を管理することで、過度な介入の抑制や管理工数の低減につながる
⮚ オーバークオリティ、ダブルスタンダードがなくなり CRO は本当に必要なことに注力できる
3.4 KGI、KPI の設定の流れ
KGI、KPI の一般的な設定の流れを図 20 に示す。通常は KGI を設定したうえで KPI に展開し、各 KPI の達成が KGI の達成につながるといった関係になる。
• 実現度、期待効果、業務負荷で優先順位付けし、採用するKPIを選択する
• 評価方法等の運用を決定する(報告者、評価方法、評価頻度、利用方法)
• 各KPIの目標を設定する
• プロセスの実行の度合いを確認できる指標(=KPI)を検討する
• ロードマップ(業務プロセス)を描く
• KGIを決める(いつ、何が、どうなっている)
• 達成したい目標を確認する(企業目標、プロジェクト目標、レベルは様々)
図 20 KGI/KPI の設定の流れ
3.5 モニタリング業務の CRO 委受託における KGI、KPI の例示
3.5.1 達成したい目標の分析
TF2 では、図 21 に示すようにモニタリング業務のCRO 委託で達成したい目標を[Quality:品質、Cost:費用、Delivery:納期(以下、QCD という)]に分けて考え、それぞれの KGI、KPI を設定することを提案する。
Q:品質の目標(例)
成果物及びサービス
が計画通りに得られた
C:費用の目標(例)
経費が計画通りに
発生し処理された
D:納期の目標(例)
各マイルストンで計画通りに試験が進
捗した
図 21 モニタリング業務委託に関する KGI/KPI の例
「Q:品質、C:費用、D:納期」のうち 1 つでも不十分な結果だった場合には、CRO に委託した業務が効果的・効率的に達成されたとは言えず、この 3 つの観点をバランスよく達成することが重要となる。
「Q:品質」では、規制当局による信頼性調査において GCP 及びその他必要な要件を満たすレベルであることが目標であり、必要以上に高い品質により、費用の超過や納期の延期を製薬企業側は望んでいない。「成果物及びサービスが計画通りに得られた」ことがゴールの 1 つに挙げられる。
「C:費用」では、計画した予算から超過することはもちろんのこと、業務の未実施や予算の精度が低いことによる大幅な未達も好ましくない。製薬企業が長期的・短期的に「計画した通りに経費が発生し処理した」ことがゴールの 1 つに挙げられる。
「D:納期」では、遅延はもちろんのこと、想定以上の期間短縮は一部の部門に過度な負担がかかり、必要以上の工数が発生したり機会損失を発生させるなど一概にプラスに働くとは限らない。「各マイルストンで計画通りに試験が進捗した」ことがゴールの 1 つに挙げられる。
3.5.2 KGI の設定(例示)
品質、費用、及び納期の観点で定めた目標ごとに、その達成度合いを評価する指標である KGI
への落とし込みをQ:品質の目標を例に図 22 に示す。
Q:品質の目標(例)
成果物及びサービスが計画通りに得られた
Q:品質のKGI(例)
• 両社で定めた期待通りのモニタリングが実施された
• GCP違反や逸脱を可能な限り抑えた
• 各種SOPで定めた規定通りに業務が遂行された
図 22 品質の目標の例(KGI)
3.5.3 KPI の設定(例示)
続いて、前節で設定したKGI から KPI への落とし込みを Q:品質の KGI を例に図 23 に示す。
Q:品質のKGI(例)
• 各種SOPで定めた規定通りに業務が遂行された
KPI(例):
⚫ モニタリングに関する SOP で規定した以下の日数を超えた件数
⯎ 被験者 Visit から直接閲覧完了までの日数
⯎ 問い合わせ発生から対応完了までの日数
⯎ 実施医療機関訪問からモニタリング記録承認までの日数
図 23 品質の目標の例(KPI)
一般的に、KPI 設定時に考慮すべきとされる観点は以下の通りである。
⮚ 具体性:客観性に富み理解しやすく対応がとりやすいか
⮚ 可測性:定量化ができ測定可能か
⮚ 到達性:その指標は評価対象の能力で達成可能か
⮚ 納得性:関係者の合意が得られるか
⮚ 適時性:必要な頻度で評価可能か
その他、TF2 では以下の点についても考慮すべきと考えた。
⮚ KPI の設定では可測性があるかどうか、つまり定量化できる指標を設定することが重要である
⮚ 定量化しにくいKPI の場合は、「それが不十分であった場合に何が起こるか?」を考えることで、定量化できる KPI に言い換えることを推奨する。例えば、「CRO メンバーの治験実施計画書の理解度」を測りたい場合には、逸脱の件数、問い合わせの発行件数等が指標となり得る。
⮚ 異なる KGI から設定した KPI が、結果として複数のゴールの指標となることもあり得る。例えば、品質の観点で設定した「被験者Visit から直接閲覧完了までの日数がモニタリングに関する SOP で規定した日数を超えた件数」は、納期の指標にもなり得る。そのため、重要と考えた KPI について品質、費用、納期の観点で重複、不足が無いか見直しを行い、バランスよく KPI を設定することが有用と考える。
⮚ KGI・KPI は進捗管理のための指標であり、「CRO に対する評価」を示すものではないことに注意すべきである。例えば、「CRO のモニタリングリーダーや担当モニターの変更回数」、
「Change order(変更覚書)の数・内容」、「権限委譲した業務に関する製薬企業側の想定外の管理工数」等は、同一 CRO への委託のための評価の指標としては有用であっても、KPIや KGI には設定すべきではない。
⮚ 各 KPI は目標達成のために設定するものであるため、目標達成につながらない KPI を設定してしまうと、目的達成したかを確認できないばかりか、両者で不必要な労力をかけ無駄な指標を追跡することになる。設定した指標が真に評価したいものから乖離してしまっていないか、十分に検討すべきである。
⮚ 定量化に多大な労力を要してしまう KPI では、必要なデータを抽出することに手間がとられ、評価の頻度の低下やタイムラグにより、重大なリスクを見逃したり、適切な対応を行う契機を逃したりすることにつながりかねない。KPI を設定する際には、「誰でも」「簡単に」、「継続的に」評価可能な指標を用いることが重要である。
⮚ 設定した KPI により「意図しない作用」が惹起されないか、十分に検討する必要がある。例えば、「○日以内にモニタリング報告書を提出」という指標を用いた場合に、当該 KPIの逸脱を回避するためにモニターが本来必要な報告書の作成・提出をやめてしまっては本末転倒である。その意味で、「KPI 目標値の逸脱=ペナルティ対象」ではなく、あくまで必要な対応を協議検討するための契機であることを、両者で認識を統一しておくことが重要である。
⮚ KPI は多いほど良いというものではない。一般的に人が同時に適切に管理できる指標は 10個以下であるといわれており、候補となる KPI の中から本当に Key となるものを選別し、必要最小限に絞ることが重要である。
⮚ 設定した KGI、KPI 及び目標値はあくまで業務委託前の計画に基づくものであり、試験の進行、又は環境の変化等により状況が変わった場合は、必要に応じて見直しと再度の合意を行うべきである。少なくとも、両者で何らかの change order に至った場合には KGI、KPI及び目標値の変更の要否について、両者で協議することを推奨する。
3.5.4 KPI ごとの目標値、及び許容範囲の設定(例示)
設定した KPI ごとに、事前に定量的な「目標値」及び「許容する範囲」を個別に定める。その数値を上回った/下回った時点で行動(是正措置・予防措置)すれば重大な問題・リスクを回避できる値を設定し、(事後的ではなく)所定の時期ごとに確認することが重要である(図 24)。
!
・何が起きているのか?
・原因は何か?
・すぐに対策をとる必要があるか?
・その他に隠れているリスクはないか?
実績
<20XX 年 XX 月度>
⮚ モニターA:0 回
⮚ モニターB:3 回
⮚ モニターC:・・
目標(許容範囲): 0 件/月
(最大 2 件/月)
KPI(例):
実施医療機関訪問からモニタリング記録承認までの日数がモニタリングに関する SOP の規定日数を超えた件数
図 24 KPI ごとの目標値、及び許容範囲の設定の例
本報告書及び別添に示した各 KGI、KPI 及びその目標値はあくまで一例であり、各社の KGI・ KPI に対する考え方、契約形態、業務委受託範囲、役割分担(権限移譲の程度)並びに試験のデザイン及び難易度等によって、選択される指標は異なるものと考える。何が「Key」であると考えているか、何をもって成功とするか、製薬企業と CRO の両者で共有し、十分に事前に合意することが重要であると考える。
3.5.5 その他、事前に決定すべき事項
✓ 定量化の方法(参照元データ、算出方法)
KPI を算出するためのデータの参照元(治験支援システムを用いる場合は、そのデータの抽出方法、等)は、予め明確にしておく必要がある。
✓ 用語の定義、その他両者合意事項
「FPI」、「実施医療機関の立ち上げ」、「製薬企業の責によらない○○」等、複数の解釈があり得る用語を KPI に含める場合は、両者の認識の不一致を避けるため、定義を明記する、又は例示をしておく必要がある。
その他、「実施医療機関側の責による逸脱もカウントする/しない」等、KPI ごとに両者で擦り合わせた認識を合意しておく必要がある。
✓ 管理方法の設定(誰が、誰に、いつ、どのように)
KPI ごとに、「誰から(報告者)」、「誰に(報告先)」、「いつ(頻度、トリガー)」報告するかを事前に定め、両者で合意しておく必要がある。
CRO 側がデータ抽出し、製薬企業に週次、月次等の形で報告する場合が多いと考えるが、「CRO業務の管理にかかる工数」、「計画外の製薬企業メンバーの実施医療機関訪問や同行回数」等、製薬企業が報告することもあり得ると考える。
3.6 別添「KGI・KPI 設定シートの例」
前項までに述べた、モニタリング業務の CRO への委託における KGI、KPI の考え方を踏まえ、具体的な設定のためのツール案「KGI・KPI 設定シートの例」を作成し、本報告書の別添(Appendix 4)とした。
本ツール案に記載した内容を一例として、自由に変更・追加・削除してプロジェクトごとに活用していただきたい。
なお本ツール案では、基本的に左の列から CRO 委託で達成したい目標を QCD に分けて考え、それぞれのKGI、KPI を設定していくことで 3.5 のプロセスを踏んでいくように構成している。
I. 目標・指標の設定 => II. 指標の詳細化 => III. ターゲットの設定 => IV. 管理方法の設定
3.7 権限委譲を充実させるための進捗管理活用の提案
CRO に業務委託しているにも関わらず製薬企業が過剰に介入してしまうなど、CRO への適切な権限委譲がなされていない場合や、達成したい目標についての認識の統一が不十分な場合には、期待する成果を製薬企業が得ることは困難である。
権限委譲は闇雲に進めるものではなく、能力や経験、実績等に基づく両者の信頼によってその可否を決めるべきである。権限移譲したくても十分にできていない場合、その理由がどこにあるのかを分析し、もし CRO 業務の進捗、プロセス、成果物等への漠然とした不安が理由であるとすれば、それらを見える化させるための方策をとるべきである。
▇▇▇ は、受託した業務について PDCA サイクルを回し、発生した問題又はそのリスクに対し、自らの責任として主体性をもって取り組むべきである。その姿勢が見えない場合、製薬企業から CRO への十分な権限委譲が難しくなることを CRO には十分に理解していただきたい。
我々の提案する KGI、KPI は、活用することで業務委受託のゴール、プロセスを確認し、進捗を定量的に確認することを促すものであり、製薬企業、CRO の両者にとって有意義なツールになり得ると考える。製薬企業は CRO を信頼して権限委譲し、CRO はより主体的に業務を進めることで、両者が望む真に生産的な協業体制の構築が進むことを期待したい。
まとめ
本邦において CRO への開発業務の委託が法的に認められてから約 20 年が経過した。世界的に見ても医薬品の開発において CRO は無くてはならない位置付けとなり、製薬企業と CRO とが効果的に協業できるか否かが開発の巧拙につながると言っても過言ではない。
本報告書は製薬企業側のメンバーによって作成されたが、両者の意思疎通を論じるにあたり CRO 側の意見を取りいれる必要があると考え、CRO 協会にもアンケートに協力いただき、現状の問題点を整理の上、その根底にある原因を明らかにすることを試みた。その結果、回答者の声から業務委受託に関与する多くの方々が、日々様々なことに悩みながらあるべき関係を模索していることが類推できた。TF2 メンバー間の議論にて、現状の委受託の環境が多様かつ複雑化していることから、共通認識をもつための用語整理、契約形態・協業体制の特徴をまとめる必要があることで一致した。また、アンケートの結果から、様々な課題や問題点があることが明確になった。特に、我々が直面している取り組むべき課題として、契約方法の多様化への対応と、依然として各社が議論を重ねる業務委受託の管理の 2 つに注目した。業務委受託の管理については、両者が意思疎通を深めることによって信頼関係を高め、理想的な協業体制を構築するために製薬企業が CRO へ権限委譲できる体制作りが必要であるという結論に至り、これらに着目して分析・考察を加えた。そして、課題・問題点に対する改善策として、明日からの実務で活用できる「業務分担表」と「進捗管理指標」をツールとして作成し、その導入方法・利用方法を提案した。製薬企業と CRO が両者の関係を語りあい、信頼し合える関係を構築することが最も重要であり、ツールにのみとらわれる必要はないが、両者が前向きにアクションを開始する際のきっかけになれば幸いである。また、紙面の関係で取り上げなかったが、その他の課題・問題点についても、過去に製薬協から公開されている多くの報告書や提言が解決のための必読書になりうることを再認識したため、これらを現在の視点から改めて整理しなおし、Appendix として提示した。
これまでに製薬企業と CRO が積み重ねてきた 20 年間の経験を有効活用するため、両者の立場
を理解しあい、同じ目標に向かって信頼し合えるパートナーとして良好な関係を保っていくことが両者の▇▇の発展のためにも重要である。そのためにも、今こそ両者の意識改革が必要な局面であることを強調したい。今後も先見的な視野を持ち、これから先の 20 年のあるべき関係を探究しつづけ、両者が車の両輪として世界の治験環境を発展させていくことで、新薬開発を通じ医療へ貢献することができると考えている。
そのために、我々が今なにをすべきなのか、本報告書がそれを考えるきっかけとなり、業務委託にかかわる方々の明日からの業務に少しでもご活用いただけることを期待する。
引用文献
1)製薬協内部資料:治験の現状に関するアンケート調査について(2015)
2)JIS9001:2008 品質マネジメントシステム-要求事項
臨床評価部会 | 2015 年度タスクフォース 2 |
資料作成者 | ||
旭化成ファーマ株式会社 | ▇▇ ▇▇ | (リーダー) |
ゼリア新薬工業株式会社 | ▇▇ ▇ | (サブリーダー) |
帝國製薬株式会社 | ▇▇ ▇▇ | (サブリーダー) |
▇▇▇▇▇株式会社 | ▇▇ ▇▇ | (サブリーダー) |
アストラゼネカ株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
▇▇製薬株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
キッセイ薬品工業株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
協和発酵キリン株式会社 | ▇ ▇▇ | |
グラクソ・スミスクライン株式会社 | ▇▇ ▇▇▇ | |
中外製薬株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
帝人ファーマ株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
富山化学工業株式会社 | ▇▇ ▇▇▇ | |
日本イーライリリー株式会社 | ▇▇▇ ▇▇ | |
日本化薬株式会社 | ▇▇ ▇▇▇ | |
日本新薬株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
日本たばこ産業株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
ファイザー株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
扶桑薬品工業株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
ブリストル・マイヤーズ株式会社 | ▇▇ ▇▇ | |
▇▇製薬株式会社 | ▇▇ ▇ |
監修 |
前部会長 ▇▇ ▇▇ ▇▇薬品工業株式会社現部会長 ▇▇ ▇▇ ▇▇製薬株式会社 監 事 ▇▇ ▇▇▇ 興和株式会社担当 副部会長 ▇▇▇ ▇▇ ファイザー株式会社 副部会長 ▇▇ ▇▇ グラクソ・スミスクライン株式会社 |
以上の資料作成に当たり、医薬品評価委員会 ▇▇前委員長、国忠委員長並びに本資料の査読を実施頂いた査読担当者の諸氏に感謝いたします。 |
