Contract
第11章 損害賠償等
11-1 遅延損害金(契約GL:6-3)
1.概要
・管理者等又は選定事業者は、PFI事業契約に基づいて履行すべき支払いを遅延した場合に、未払金につき遅延日数に応じ一定の割合で計算した額を遅延損害金として相手方に支払うことが規定される。
2.関係法令の規定
・会計法令等において、各当事者の債務不履行の場合における遅延利息等を契約書にて定めることと規定している(予決令第100条第1項第4号及び支払遅延防止法第4条第
1項第3号 )。したがって、管理者等が選定事業者に対して及び選定事業者が管理者等に対して支払う遅延損害金の額等について、PFI事業契約書に規定される。
・管理者等が選定事業者に対して支払う遅延損害金の額は、支払遅延防止法第8条に基づき財務大臣が決定する率(平成20年4月現在、年率3.7%)で計算した金額を下回るものであってはならないと定められている(支払遅延防止法第8条、政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率を定める告示(平成20年3月7日財務省告示第66号))。
・国の債権の管理等に関する法律において、国の金銭債権の履行の遅延にかかる賠償金その他の徴収金を延滞金という。選定事業者が管理者等に対して支払う延滞金の額は、国の債権の管理等に関する法律施行令第37条第1項に規定する財務大臣が定める率(平成20年4月現在、年率5%)で算出した額を下回ってはならないと定められている(国の債権の管理等に関する法律施行令第36条、国の債権の管理等に関する法律施行令第
29条第1項本文に規定する財務大臣が定める率を定める件及び国の債権の管理等に関する法律施行令第37条第1項に規定する財務大臣が定める率を定める件の一部改正について(平成15年3月25日財務省告示第129号))。
3.条文例
(遅延利息)
第 101 条 甲又は乙が本契約に基づいて履行すべきサービスの対価その他の金銭の支払を遅延した場合、当該遅延した金額につき、履行すべき日(以下、本条において「履行期日」という。)の翌日(同日を含む。)から当該金銭債務の支払が完了した日(同日を含む。)までの期間の日数に応じ、甲については、政府契約の支払遅延に対する遅延利息の率(昭和 24 年大蔵省告示第 991 号)に定める履行期日時点における率を乗じて計算した
額の遅延利息を、乙については、国の債権に関する遅延利息の率(昭和 32 年大蔵省告示
第 8 号)に定める履行期日時点における率を乗じて計算した額の遅延利息をそれぞれ相
手方に支払わなければならない。これらの場合の遅延利息の計算方法は、年 365 日の日割計算とする。
2 前項の規定により計算した遅延利息の額が、100 円未満であるときは、甲及び乙は、遅延利息を支払うことを要せず、その額に 100 円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てるものとする。
11-2 損害賠償(新設)
1.概要
・管理者等又は選定事業者の不履行により相手方に発生した損害に関する賠償請求について定めるものである。
2.趣旨
・債務不履行による損害賠償は民法上契約一般に認められるものであるが、契約書上も損害賠償請求できる旨規定するのが一般である。ただし、具体的適用においては、民法上の一般原則によったのでは曖昧になる部分が出てくる可能性もあるため、より具体的にどのような場合に損害賠償請求権が発生するか、どのように損害額を算定するかなどについて規定することも考えられる。
・債務不履行が生じた場合には、損害賠償の規定の他にも、サービス対価の減額規定、瑕疵担保責任の規定など、その他の条項にも抵触する可能性がある。これらの規定の間の関係が不明確にならないよう配慮することが望ましい。
・一定の事項についてサービス対価の減額が行われた場合には、原則として同一事項について損害賠償の請求は行わないことにすることも考えられる。ただし、この場合には、損害賠償の請求を別途行うことを想定している場合に比べて、減額幅は大きくなる。
・損害賠償の規定は、一方当事者に生じた損害を填補するという役割に加えて、各当事者に適切な履行を促すという役割もある。他方では、例えば損害賠償の規定の内容が選定事業者にとってあまりに不合理であると、PFIへの参加意欲を減退させることになる。したがって、適切なバランスを図ることが重要である。
3.条文例
(損害賠償)
第 102 条 前条に定める場合のほか、甲が本契約上の義務に違反した場合、乙は、甲に対し、当該違反により被った損害の賠償を請求することができる。
2 本契約に別段の定めがある場合を除き、乙が本契約上の義務に違反した場合は、甲は乙に対し当該違反により被った損害の賠償を請求することができる。
第12章 法令変更
12-1 法令変更(契約GL:5-3)
1.概要
PFI事業期間中に生じる法令変更に伴う費用の増加等の負担者と手続について規定される。この際、基本となる考え方は、リスクを最もよく管理することができる者が当該リスクを分担するということであり、これに従って様々な規定がなされることになる。ただし、将来の法令変更は様々なものがありえるため、あらかじめ完全に決めることは不可能である点にも留意する必要がある。
2.問題状況
現在、PFIで用いられている事業契約においては、「本事業に直接影響を与える法令の変更」(特に本事業及び本事業類似のサービスを提供する事業に関する事項を直接的に規定することを目的とした法令で事業者の費用に影響があるもの)についてのみ管理者等の負担と規定されていることが多い。この基準は基本的には維持されるべきものと考えられるが、具体的に適用する際に明確な基準といえるのか、一方の当事者に酷となる結論が生じることがないかなどの課題があり、基準を明確かつxxなものとするよう工夫をする必要がある。
例:入札段階では、建築基準法の改正が具体化されていなかったが、事業契約締結後改正に基づく基準が施行され、例えば建築物の満たすべき基準が変化したことによる増加費用(例:基準の変更に伴い、より多くの鋼材が必要となった場合などの費用)の位置づけなど、明確に「本事業に直接影響を与える法令の変更」と位置づけていない限り、どちらに該当するのかが不明確となる場合があり、これについて適切に対応する必要がある。
3.基本的な考え方
(1)法令変更への対処の困難性
法令変更に関する対処の方法ついては、法令の属性に着目し、因果関係の明確性や影響に応じて類型化することや、法令への効果に着目して、定義を詳細化していくことなど
が考えられる。ただし、法令変更に関する規定については、その対象、範囲、影響度を予め定義することが難しいという側面があり、具体的な条項の在り方については、様々な考え方があるところであるため、容易に標準化できる部分ではない。3で示す考え方は、現実のPFI契約をベースにしつつ修正を加えたものであるが、法令変更への対処の方法については様々な考え方があることに留意する必要がある44。
(2)リスク分担の明確化の必要性
リスク分担の明確化というPFIの基本理念からは、法令変更の際の増加費用の負担の規定についても、基準をできる限り明確化すべきである。そこで、それぞれの事業の特性に応じて、将来行われる可能性のある変更で重要なものについては、予め取り扱いを明記することが望ましい。ただし、実際には予想できない変更が生じる可能性が高く、明記できる場合は限定される。
例:施設の基準等にかかわる法令につき変更が予想される場合、保険医療制度との関係で診療報酬の支払の仕組みが変更された場合などについて、どのような取り扱いを行うべきかについて明示しておくことが考えられる。
(3)リスク分担に関する考え方
リスクを最もよく管理することができる者が当該リスクを分担する、というPFIの基本理念からは、法令変更規定は民間に管理できないリスクを負わせないようにする必要がある。法令変更は民間がリスクを管理できないという考え方を前提にすれば、①法令変更の対象者が広く一般的である場合、②民間の創意工夫により費用の増加の影響を抑えることができる場合、③(民間収益事業など)法令変更によるコストの増加を一般利用者等に転嫁しうる場合を除いては、基本的には公共がリスクをとるべきであると考えられる。
①一般的法令変更:法令変更のうち、その影響がxxに及ぶものについては(一般的法令変更)、法令変更の対象者が広く一般的であり、選定事業者もその効果を受忍すべきである。この場合、間接的には物価指数等に影響を与え、サービス対価の物価スライド条項その他指標に応じた調整条項、ベンチマーキングの規定、マーケットテスティングの規定など、価格調整に関する条項により最終的には一定部分費用の増加を吸収できるため、この観点からも選定事業者の負担とすべきである。(たとえば法人税率の変更があった場合、全国の全ての企業にとって内部コスト増になるので、コスト
44 <参考>において英国の例を示した。
増が各企業の商品の価格に上乗せされ、物価指数に反映される等)。
②選定事業者の努力により軽減できる場合:(後述(3)参照)。
③利用者に転嫁できる場合:利用料金の値上等によって、法令変更によるコストの増加を一般利用者等に転嫁しうる場合は、選定事業者の負担とする。
(4)軽減義務
選定事業者は、法令変更によって費用の増加が見込まれる場合、その影響を軽減するために合理的な努力を行うものとする。
(5)コミュニケーションの重要性
法令変更への対処法(費用を増加を抑える方法など)について、早い段階から官民のコミュニケーションを密に図ることにより、可能な限り、円滑に解決することが望ましい。
4.具体的な規定の内容
(1)プロセス
法令変更については、早い段階から当事者間の密度の高いコミュニケーションを行うことにより、増加費用等を軽減できる場合も少なくない。そこで、法令変更が予想される場合には、早い段階で他方の当事者に通知をした上で協議を開始し十分な時間をかけて解決することにより、双方で情報を共有して協力しながら増加費用の軽減にあたることが重要である。これによっても軽減できなかった増加費用については、(2)以降の原則に従ってどちらが費用を分担するかを決定することになる。
(2)費用の分担方法
①直接法令変更及び一般法令変更
「本事業に直接影響を与える法令の変更」(特に本事業及び本事業類似のサービスを提供する事業に関する事項を直接的に規定することを目的とした法令で事業者の費用に影響があるもの)とそれ以外の法令変更(一般的法令変更)に分類し、後者については選定事業者とする(理由については3(3)①参照)。
②資本的支出
資本的支出については、個別性が高く物価スライド等で吸収することは困難と考えら
れることから、法令の種類に関わらず管理者等の負担とすることが考えられる。
資本的支出の内容:建設費の増額や、運営開始以降の新たな設備の導入、大規模修繕等が該当する。解体費についても、これと同様に扱うことも考えられる。
③民間収益事業等の場合
上記 2(2)③記載のとおり、民間収益事業等選定事業者が利用者からの利用料金を収受するスキームの場合は、費用の増加を利用料等に反映させることができること、また、他の民間事業者とのxxを図ることから、原則として選定事業者の負担とする。ただし、費用の利用料への転嫁については、一定の限界があることに留意すべきである。
費用の利用料への転嫁の限界 1)選定事業者が利用者からの利用料金を収受するスキームの場合でも、例えば指定管
理者制度が採用されている場合のように、利用料金の設定について制約がある場合が多い。この場合、法令変更の場合は利用料金の変更に管理者等が同意する旨規定するか、管理者等が増加費用を負担するなどの方法により、選定事業者に過大なリスクを負わせないようにすべきである。
2)利用料金の値上げが可能である場合でも、値上げによる利用者が減少する可能性がある。従って、利用料金値上げが契約上可能でも選定事業者が増加費用を負担することが常に妥当であるとは限らない点に留意する必要がある。
④税制変更
税制の変更に起因する増加費用の負担割合については、「サービス対価」の外税とした消費税率の変更による増加費用を管理者等の負担とすることが通例である。加えて、資産所有にかかる税率の変更及び新税設立による増加費用を管理者等の負担とすることもあり得る。なお、法人税率の変更等、選定事業者の利益に課される税制度の変更による増加費用は、選定事業者の負担とすることが通例である。
⑤通常の民間の事業との差異
民間企業においては、法令変更による事業の増加費用を、自己の裁量において、当該 事業分野から撤退すること等により回避することができるものの、PFI事業契約上 の公共サービスの提供という選定事業者の義務の特異性から、一般の企業活動に比べ て選定事業者の裁量が一定程度狭くなる場合もあることに配慮することも考えられる。
(3)軽減義務
上記 2(2)②記載のとおり、選定事業者の努力により法令変更による影響を押さえることができる部分については、管理者等は増加費用を負担すべきではない。したがって、管理者等が法令変更リスクを負担する場合については、選定事業者に費用の増加を押さえるために合理的な範囲内での努力を行う義務を負わせることが適切である。
軽減義務の規定方法45
1)包括的に軽減義務を規定する方法:事業者は増加費用を軽減するために合理的な範囲内で努力を行うものとする旨規定する46。
2)軽減のための協議内容を規定する方法:
第○項の通知を当事者の相手方から受領した場合はできる限り速やかに、両当事者は同項に規定された問題及び受注者が適格法令変更による影響を少なくする方法について協議を行いかつ合意するものとする。これには以下の内容が含まれる。 (ⅰ)受注者が、合理的に努力して下請業者に発生する費用増加を最小化し、費用
削減を最大化するための合理的な努力を行った(相見積もりの取得(可能である場合)を含む)ことの証拠の提供。
(ⅱ)資本的支出が発生した場合又は発生すると予想される場合に、予見できる当該法令変更を受注者が考慮したことを示すことを含め、費用削減に効果的な方法で資本的支出の発生又は発生回避が算定されているかについての説明。
(ⅲ)当該事業会社の株主又は関係会社が運営している事業も含めて、法令変更が当該事業と類似した事業の料金水準に与えた影響の証拠の提供。
(ⅳ)当該適格法令変更によって必要となった資産の取替え又は維持管理のために発生すると予想される費用で発生が回避できる費用の説明。
(4)特定の法令の変更に関する規定
特に当該事業において将来問題になる可能性があると予想される変更については、「本事業に直接影響を与える法令の変更」「一般的法令変更」のどちらに分類するか、あるいは両者とも別の扱いにするかについて契約書に明記するなど、例示によって扱いを明確化することが考えられる。
1)法令変更とはいえないが法令の運用が変わった場合についても(例えば、建築確認の運用手続が変更になった結果、費用が増加した場合)、予測可能であるものがあれば特定の上対処方針を規定しておくことが望ましい。
45 英国 SoPC4 条文例 14.8 で採用されている方法である(一部省略している。詳細は、<参考>を参照のこと)
46 実際には、何をもって「合理的努力」を行ったといえるかについては、判断が難しい点に留意する必要がある。
2)一つの法令の中でも、規定によって、管理者等のリスクとすべきところ、選定事業者のリスクとすべきところが分かれる可能性もあるため、必要があれば規定ごとにリスク分担を記載するものとする。
5.留意点
(1)費用を両当事者で分担する方法
資本的支出相当分の費用負担に関しては、管理者等が増加費用を負担することを原則としつつ、選定事業者の努力により増加費用を抑えることができる場合が考えられることや、手続き負担の観点(比較的少額の変更について対価の変更のための手続を行うことは煩雑である)から、選定事業者も一部負担することも考えられる。
例:○○万円までは民間負担47、○○万円以上○○万円までは公共○%、民間○%を負担、○千万円以上は全額公共負担とするなどの方法が考えられる48。これにより、民間が負担する最大額を示すことができ、その結果金融機関も法令変更についてどの程度のリスクを見ればよいのかが明確になるというメリットもある。
(2)費用の減少への対処
運営段階において、規制緩和によって要求水準を変更し選定事業者の義務を軽減できる場合のサービス対価の変更についても、可能である限り対応方法を規定しておくことが望ましい。
(3)債務負担行為との関係
管理者等は、法令の変更に基づく増加費用に備えて、債務負担行為の設定額には一定の余裕を持たせることが望ましい。
47 民間が負担する金額の設定方法としては、契約金額の一定割合として示す方法もありうる。
48 選定事業者の努力により押さえることのできる増加費用の範囲については慎重に検討する必要がある。また、金額の設定方法によっては、民間が入札の際に予備費を積むことにより VFMを逆に低下させる可能性があることに留意すべきである。
<参考>英国における法令変更(概要)
1.法令変更の定義
(b) ガイダンス
(c) 関係する裁判所の適用可能性のある判決で、拘束力のある判例を変更するもの。
「法令」とは、英国における 1978 年の法令解釈に関する法律第 21 条(1)の
規定の範囲内の国会制定法又は下位の法令、国王大権の行使並びに 1972 年ヨ
ーロッパ共同体法第 2 章に規定された強制可能な共同体権利を意味する。
(i) 各省庁諮問書(Government Departmental Consultation Paper)の一部としての法令草案。
(ii) 法案
(iii) 政省令の草案。
(iv) EC 官報掲載の草案。
(a) 法令(契約締結日以前に以下により公表されていたものを除く)
「法令変更」とは、契約締結日以降に、次のいずれかが効力を生じることをいう。
2.差別的/特別法令変更及び一般法令変更
法令変更の内容 | 負担者 | |
差別的法令変更 「差別的法令変更」とは、下記の対象に適用される旨明示した法令変更を意味する。 (a) 当該事業のみに適用され、PFI に基づく他の同種の事業には適用されないもの。 (b) 当該受注者にのみ適用され、他の者には適用されないもの。 (c) PFI 事業の受注者に適用され、他の者には適用されないもの。 | 発注者 | |
「特定法令変更」とは、[当該サービスと同一若しくは類似のもの]の提供、又は[当該サービスと同一若しくは類似のサービス]の提供が主たる業務となっている会社の株式保有に関する法令変更を 意味する。 | ||
「一般法令変更」(差別的法令変更および特定法令変更以外) | サービス期間中に発効し、資本的支出の支出を伴うもの | 発注者及び受注者が分担 |
その他 | 受注者 |
3.法令変更の手続
(a) 法令変更が行われる又は直近に変更が行われる場合、当事者は相手方に対し、想定される影響に関する意見を送付する。この意見には以下の詳細が含まれる。
実施費用(及びユニタリーチャージの変更)については、下記(b)~(f)に従うも
のとする。
(iii)受注者が予定されたサービス提供開始日までにサービス提供を開始す
ること、及び/又は適格法令変更の実施期間中にパフォーマンス規定を達成することなどについて、契約上の義務の履行の免除が必要であるか。
(iv)適格法令変更から生じた収益の損失
(v) 適格法令変更により直接生じるプロジェクト費用の変更見積
(vi)事業期間中の適格法令変更により新たに必要となった、又は必要なくなった資本的支出。いずれの場合でもサービス内容の変更の実施に関する詳細手続を含むものとする
適格法令変更に対して本契約の条件変更が必要となる可能性。
(ii)
(i) 必要なサービス変更。
4.軽減義務に関する規定
(b) (a)項の通知を当事者の相手方から受領した場合はできる限り速やかに、両当事者は(a)項に規定された問題及び受注者が適格法令変更による影響を少なくする方法について協議を行いかつ合意するものとする。これには以下の内容が含まれる。
(i) 受注者が、合理的に努力して下請業者に発生する費用増加を最小化し、費用削減を最大化するための合理的な努力を行った(相見積もりの取得(可能である場合)を含む)ことの証拠の提供。
(ii) 資本的支出が発生した場合又は発生すると予想される場合に、予見できる当該法令変更を受注者が考慮したことを示すことを含め、費用削減に効果的な方法で資本的支出の発生又は発生回避が算定されているかについての説明。
(iii) 当該事業会社の株主又は関係会社が運営している事業も含めて、法令変更が当該事業と類似した事業の料金水準に与えた影響の証拠の提 供。
(iv) 当該適格法令変更によって必要となった資産の取替え又は維持
管理のために発生すると予想される費用で発生が回避できる費用の説明。
これには上記(a)(5)又は(6)の結果発生する又は要求される金額を含む。
5.支払についての規定
(c) 受注者が適格法令変更を原因とする追加の資本的支出分を負担する旨両当事者が合意した場合又は第 28 章「紛争解決」によりその旨決定された場合(本項に定める一般的法令変更の結果資本的支出を受注者が負担する旨合意した場合又は決定された場合は除く)、受注者及び優先貸出人が満足する条件により、受注者は資本的支出のために必要な資金を調達するため、合理的な努力をしなければならない。
(d) 受注者分担分は受注者のみの負担とする。
(e) 受注者が資本的支出のための資金調達を行うにあたって合理的な努力をしたにもかかわらず、上記(c)の合意又は決定のなされた後[60]日間経っても資金調達できなかった場合、発注者は資本的支出の発生した日から 30 日以内に、受注者に当該資本的支出と同額を支払わなければならない。
(f) 本規定に基づく補償で、ユニタリーチャージの調整又は減額によるものについては、[5.2.3 項「補償金額の算出」を参照。]
6.条文例(サービス購入型)
(定義)
「法令」とは、法律、政令、規則又は条例その他これに類するものをいい、国又は地方公共団体の権限ある官庁の通達、ガイドライン又は公的な解釈等を含む。
(通知等)
第○条 甲又は乙は、法令の変更又は新設(以下「法令変更等」という。)により本契約上の義務の履行が不能となる場合、本契約若しくは要求水準の変更が必要になる場合、又は履行に要する費用が増加する場合には、速やかにその内容を本契約の相手方当事者に対して通知する。
2 前項の場合において、本契約上の義務の履行が不能となる旨の通知を行った者は、当該法令変更等が発生した日以降、当該法令変更等により履行不能となった義務について、本契約に基づく履行義務を免れる。次条に定める手続により本契約上の義務が変更され、履行不能でなくなった場合を除き、当該通知を行った本契約の当事者は、当該法令変更等により本契約の相手方当事者に発生する損失を最小限にするよう努めなければならない。
(協議及び増加費用の負担等)
第○条 前条第1項の通知が送付された場合、甲及び乙は、本契約に別段の定めがある場合を除き、法令変更等に対応するため速やかに本件施設の設計・施工(改修及び解体を含む。)、本契約又は要求水準書の変更並びに増加費用の負担等について協議しなければならない。乙は、法令変更又はこれに伴う要求水準の変更により増減する費用の詳細について、甲に提出しなければならない。
2 前項の協議にかかわらず、当該法令変更等の公布日から[120]日以内に甲及び乙が合意に至らない場合、甲は当該法令変更等に対する合理的な範囲の対応方法を乙に対して通知し、乙は、これに従い本事業を継続するものとする。この場合における増加費用の負担は、別紙[15]に定める負担割合によるものとする。
3 法令変更等により乙が運営業務等の一部を履行できなかった場合、甲は、乙が当該業務を実施しなかったことにより免れた費用に相当する金額をサービス対価から減額することができるものとする。
4 甲又は乙は、前3項の場合において、サービス対価の減額を目的とした要求水準の変更又は業務遂行方法の採用が可能であると認めたときは、相手方当事者に対してサービス対価の減額等について協議を行うことを求めることができる。
5 法令変更等に起因して、本件工事対象施設の引渡しの遅延が見込まれる場合、甲及び
乙は協議のうえ、本件工事対象施設の引渡予定日を変更することができる。
(法令変更等による契約の終了)
第○条 前条の規定にかかわらず、本契約の締結後における法令変更等により、甲が本事業の継続が困難と判断した場合又は本契約の履行のために多大な費用を要すると判断した場合、甲は、乙と協議のうえ、本契約の全部又は一部を解除により終了させることができる。
2 前項に基づき本契約の全部又は一部が終了した場合の措置は、第[96]条ないし第[97]条の規定に従う。
3 第1項の規定に基づき本契約の全部又は一部が終了した場合において発生した増加費用の甲と乙の負担割合は、別紙[15]のとおりとする。
第○条 前3条の規定に関して甲乙間に紛争が生じた場合には、第○条に規定する紛争処理の規定を適用するものとする。
別紙[15] 法令変更等による増加費用の負担割合
1 第[ ]条に規定する法令変更等に基づいて増加費用が発生する場合の費用負担の割合は以下のとおりとする。
甲負担割合
① | 本事業に直接影響を与える法令の変更の場合 | 100% |
② | ①以外の法令の変更の場合 | 0% |
<別案>
甲負担割合
① 本事業に直接影響を与える法令の変更の場合のうち[項目を特定]
○○円以下(1事業年度)の部分 | 0% | |
○○円を超え○○円未満 | の部分 | [ ]% |
○○円を超え○○円未満 | の部分 | [ ]% |
○○円を超える部分 | 100% | |
② | 本事業に直接影響を与える法令の変更の場合のうち①以外 | 100% |
③ | ①②以外の法令の変更の場合 | 0% |
2 本別紙において「本事業に直接影響を与える法令の変更」とは、特に本事業及び本事業類似のサービスを提供する事業に関する事項を直接的に規定することを目的とした法令で事業者の費用に影響があるものを意味することとし、以下の場合を含むものとする。
①消費税率の変更
②[施設所有に係る税率の変更]
③乙が本契約上の義務を遂行するために必要な資本的支出の額の増加を生じさせる変更
④・・・・・
3 以下の場合は「本事業に直接影響を与える法令の変更」に含まれないものとする。
①法人税その他の税制変更及び営利法人に一般的に適用される法令の変更
②・・・・・
③・・・・・
4 本別紙の規定により管理者等が増加費用を負担する場合、事業者は増加費用を軽減するために合理的な範囲内で努力を行うものとする。
【法令変更に関する実務上のポイント】
法令変更の取り扱いについては、変更対象となる法令の属性や事業に与える影響等に応じて類型化して規定することが望ましいが、予め全てを明確に規定することは難しい。事業契約への規定のみならず、その背景にある以下の考え方を理解した上で運用することが必要である。
①法令変更は民間に管理できないリスクであるから原則として管理者等の負担とする。
②ただし、法令変更の影響がxxに及ぶものについては、法令変更の対象者が広く一般的であり、選定事業者もその効果を受忍すべきであること、また物価スライドにより最終的にサービス対価に反映されうることから、民間負担とする。
③資本的支出については、個別性が高く物価スライド等で吸収することは困難と考えられることから、法令の種類に関わらず管理者等の負担とする。ただし、選定事業
者に費用の軽減義務を負わせることが妥当である。
第13章 不可抗力
13-1 不可抗力による損害への対応(契約GL:6-8)
1.不可抗力の定義の考え方
・不可抗力とは、協定等の当事者の行為とは無関係に外部から生じる障害で通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしてもなお防止し得ないものと考えられる。管理者等及び選定事業者のいずれの責めにも帰しがたい天災等、具体的には、暴風、豪雨、洪水、高潮、地滑り、落盤、落雷、地震、火災、有毒ガスの発生等の自然災害に属するものと、騒乱、暴動、戦争、テロ行為等の人為災害に属するものとに分類できる。最終的には当事者間の合意するところに委ねられる(参考:リスクガイドライン二6(1))。
2.概要(設計、建設段階)
・施設の設計、建設段階において、不可抗力の発生により、PFI事業契約等に従った設計、建設業務の履行が不能になった場合の規定である。不可抗力事由の発生時における債務の取扱い、履行不能発生時の選定事業者による管理者等への通知等の手続き、不可抗力に起因する損害等の分担、施設の引渡し(又は運営開始)予定日の変更などについて規定される。
(1)不可抗力発生時の手続き等
・不可抗力事由の発生により、PFI事業契約等に従った設計又は建設工事業務の全部又は一部の履行が不能となった場合、選定事業者はその履行不能の内容の詳細及びその理由について書面をもって直ちに管理者等に通知することが規定される。選定事業者は、この履行不能通知の発出後、履行不能状況が継続する期間中、選定事業者の履行期日におけるPFI事業契約等に基づく自己の債務について当該不可抗力による影響を受ける範囲において業務履行義務が免除される。但し、選定事業者は損害を最小限にする義務を負う。
・管理者等は選定事業者から履行不能通知の受領後、速やかに当該不可抗力による損害状況の確認のための調査を行い、その結果を選定事業者に通知する義務が規定される。また、管理者等は、設計や建設工事等の内容の変更、引渡し(又は運営開始)の遅延、当該不可抗力事由による合理的な損害又は増加費用の分担等対応方法につき選定事業者と協議を行うことが規定される。
・上述の当事者間による協議において一定期間以内に合意が成立しない場合、管理者等は、事業継続に向けた対応方法を選定事業者に通知し、選定事業者は、かかる対応方法に従い選定事業を継続する義務を負うことが規定される。また、選定事業者の履行不能の状
態が永続的なものと判断されるとき又は選定事業の継続に過分の費用を要するときなどには、管理者等は、選定事業者と事業の継続の是非について協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除できることが規定される。なお、管理者等と選定事業者の当事者双方が解除権を有する契約構成とすることも考えられる。
(2)不可抗力による損害等の分担
・設計、建設段階に、不可抗力の発生により施設及び仮設物、工事現場に搬入済みの工事材料、その他建設機械器具等に対し損害が生じた場合、選定事業者に不可抗力等による損害を最小限にとどめる経済的動機付けを与えるため、生じた損害又は増加費用の一部を選定事業者が負担することとし、その余を管理者等が負担する規定を置くことが通例である。例えば、同期間中の累計で建設工事費に相当する金額に一定比率を乗じた額に至るまでの額、又は一定金額に至るまでの額を選定事業者の負担とし、これを超過する部分については、「合理的な範囲」で管理者等が負担すると規定されることが考えられる。選定事業者の負担割合の検討にあたっては、選定事業者がより多くの不可抗力の損害金を負担することとした場合、不可抗力のリスクを適正に定量化できないこと及び保険技術上の制約から、選定事業者が不可抗力のリスクを負担するための費用が過大となり、結果として、かかる費用が契約金額に転嫁される結果ともなり得ることに留意する必要がある。なお、選定事業者が善良なる管理者としての注意義務を怠ったことに起因する損害等については、選定事業者が負担するものと規定される。
・ここでの損害の範囲について検討が必要である。具体的には、損害の範囲を積極損害(施設、仮設物等のみを対象とした損害)のみとするか、あるいはこれらに関連する選定事業者の損害と増加費用一般まで含むか、という点を明確にすることが望ましい。
・建設工事費に相当する額に一定比率を乗じた額又は一定金額を超過する部分について、
「合理的な範囲」で管理者等が不可抗力による損害又は増加費用を負担する旨規定されることが通例である。この場合、この一定比率を乗じた額又は一定金額を超過する部分についても選定事業者が不可抗力による損害等を負担することが想定され、かかる負担についてできる限り具体的に規定することも考えられる。
・従来型の公共工事の請負契約においては、請負代金額の100分の1を超える部分を発注者が負うことにより請負者の負担を軽減している(標準約款第29条第4項)。かかる規定は、不可抗力による損害の負担をすべて請負者に帰するのではなく、何らかの形で発注者が負担しているという実態をも考慮し、請負契約における片務性の排除、建設業の健全な発達の促進をも考慮して、損害の負担を転嫁している。
(3)引渡し(又は運営開始)予定日の変更
・上記の損害の範囲と関連する問題として、不可抗力に起因する損害負担とあわせて、引渡し(又は運営開始)予定日の延期について検討が必要である点に留意が必要である。
対応の選択肢としては、当初設定した引渡し(又は運営開始)予定日は変更せず、その引渡し(又は運営開始)予定日までに施設を完成させることを前提とした損害額(増加費用等を含む)を負担の基礎とするというものと、逆に合理的な期間引渡し(又は運営開始)予定日を延期した上で、それを前提とした損害額(積極損害のみ)を負担の基礎とする、というものが考えられる。一定の期日までに施設の運営が開始されることを重視するならば、前者が選択されることになる。この場合、負担の基礎となる損害額は相対的に大きくなることが一般に予想される。これに対し、後者を選択した場合、引渡し
(又は運営開始)予定日が当初より遅れる以上、当然に「サービス対価」の支払開始も遅れることになる。従って、この「サービス対価」の支払開始の遅延が選定事業者による融資返済に与える影響、ひいては、管理者等の負担に与える影響について留意する必要がある。
・上記に関し、引渡し(又は運営開始)予定日を延期した場合、それに伴って維持・管理、運営期間の終期も同様に延期するのか、あるいは維持・管理、運営期間の終期は変更せず、維持・管理、運営期間を短縮することとするのか、という問題について検討を要する。前者を選択した場合、維持・管理、運営の期間は変わらないが、「サービス対価」の支払が全体として遅くなり、後者の場合には、維持・管理、運営期間の短縮の結果、選定事業者が失うことになる「サービス対価」をどのように考えるかについて検討を要する。(関連:1-5 事業日程)
(4)保険金の不可抗力による損害等の分担額からの控除
・不可抗力に起因して損害が生じたことにより選定事業者が施設の保全に関する保険の保険金を受領した場合で、当該保険金の額が選定事業者の負担する損害等の額を超えるときには、当該超過額は管理者等が負担すべき損害等の金額から控除するものとする規定を置くことが通例である。
3.概要(維持・管理、運営段階)
・施設の維持・管理、運営段階において、不可抗力の発生により、PFI事業契約等に従った維持・管理、運営業務の履行が不能になった場合の規定である。不可抗力事由の発生時における債務の取扱い、履行不能発生時の選定事業者による管理者等への通知等の手続き、不可抗力に起因する損害等の分担などが規定される。
(1)不可抗力発生時の手続き等
・不可抗力事由の発生により、PFI事業契約等に従った維持・管理業務又は運営業務の一部又は全部の履行が不能となった場合、選定事業者は、その履行不能の内容の詳細及びその理由について書面をもって直ちに管理者等に通知することが規定される。選定事業者は、この履行不能通知の発出後、履行不能状況が継続する期間中、選定事業者の履
行期日におけるPFI事業契約に基づく自己の債務について当該不可抗力による影響を受ける範囲において業務履行義務が免除される。但し、選定事業者は、損害を最小限にする義務を負う。
・管理者等は、業務履行不能の状態が存続している間、選定事業者が業務を履行できなかったことによって免れた費用を控除して選定事業者が実際に行ったその他の業務の内容に応じた支払いを行う旨規定されることが考えられる。
・管理者等は選定事業者から履行不能通知の受領後、速やかに当該不可抗力による損害状況の確認のための調査を行い、その結果を選定事業者に通知する義務が規定される。また、管理者等は、業務内容の変更、当該不可抗力事由による合理的な損害又は増加費用の分担等対応方法につき選定事業者と協議を行うことが規定される。
・上述の当事者間による協議において一定期間以内に合意が成立しない場合、管理者等は、事業継続に向けた対応方法を選定事業者に通知し、選定事業者は、この対応方法に従い選定事業を継続する義務を負う。また、選定事業者の履行不能が永続的であると判断されるとき又は選定事業の継続に過分の費用を要するときには、管理者等は、選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部解除できることとなる。なお、管理者等と選定事業者の当事者双方が解除権を有する契約構成とすることも考えられる。
(2)不可抗力による損害等の分担
・維持・管理、運営期間中に、不可抗力事由の発生による損害が生じた場合、選定事業者に対し不可抗力による損害を最小限にとどめる経済的動機付けを与える必要がある。そこで、不可抗力に起因する選定事業者の損害又は増加費用のうちの一部を選定事業者が負担し、それを超過する部分について、合理的な範囲で、管理者等が負担する規定を置くことが通例である。選定事業者の負担する損害等の額としては、
1)維持・管理、運営期間中の累計で、維持・管理、運営期間中の維持・管理費及び運営費の総額に相当する額に一定の比率を乗じた額に至るまでの損害等の額
2)一事業年度中に生じた不可抗力に起因する損害金の累計で、一事業年度の維持・管理費及び運営費に相当する金額に一定の比率を乗じた額に至るまでの損害等の額
3)定額
等が考えられる。
・但し、選定事業者が善良なる管理者としての注意義務を怠ったことに起因する損害については、選定事業者が負担することが規定される。
4.概要(不可抗力による解除権の行使)
・不可抗力により選定事業者による業務の全て又は一部の履行が不能となった場合、当事者間の協議の上、管理者等は契約の全部又は一部を解除することができる旨規定される。
(1)不可抗力の発生による解除権の行使
・不可抗力により、PFI事業契約等に従った建設工事業務、維持・管理業務又は運営業務の履行が不能になった場合、あらかじめ設定された業務要求水準を満たすために必要な人員若しくは器具等を追加する費用負担、業務要求水準若しくはPFI事業契約等の変更が必要な事項について、当事者間で一定の協議期間を設けて協議を行うことが規定される。
・一定の協議期間以内に、かかる協議について合意が成立しない場合、管理者等は不可抗力に対する対応方法を選定事業者に対して通知し、選定事業者がこれに従い選定事業を継続させるものとする。但し、選定事業の履行不能が永続的なものと判断される場合、又は選定事業の継続に過分の費用を要する場合など、選定事業の継続に経済合理性のない事態も想定されることから、こうした場合には管理者等は、相手方当事者の選定事業者と協議の上、PFI事業契約の一部又は全部を解除することが可能である旨規定される。
・なお、不可抗力等によるPFI事業契約の一部又は全部解除権を、一方の当事者たる管理者等のみが有する契約構成とするか、当事者双方が有する契約構成とするか、については検討を要する点である。
・不可抗力によるPFI事業契約の解除の効力については、管理者等が施設を買い受けることとし、かかる対価とその他選定事業者に生じる合理的費用を負担することが考えられる。その他合理的費用については、選定事業者が開業に要した費用及び解散に要した費用があげられる。
・事業用地の瑕疵及び埋蔵文化財の発見等により選定事業者の業務の履行が不能となった場合についても不可抗力等により業務の履行が不能となった場合と同様の措置がとられることと規定する場合が多い。
(2)不可抗力による義務履行の免除と「サービス対価」の支払
・不可抗力により選定事業者による義務の全部又は一部が履行不能となった場合、選定事業者は、管理者等に対し不可抗力による履行不能の内容の詳細及びその理由についての通知を発した後、履行不能の状態が継続し協議が整うまでの間、履行期日における、当該不可抗力による影響を受ける範囲において、その履行義務が免除される。併せて、管理者等は、選定事業者が業務を履行できないことによって免れた費用を控除し選定事業者が実際に行ったその他の業務の内容に応じた支払いを行うことが通例である。
(3)不可抗力による損害等の分担
・選定事業者により不可抗力の発生による履行不能通知の発出後、管理者等が選定事業を継続することを判断し、かつ、一定の期間以内において、当該不可抗力による損害又は増加費用の負担等対応方法について上述の当事者間協議が合意に達しない場合、あらか
じめ定められた損害等の負担割合等対応方法によることを管理者等が選定事業者に通知し、選定事業者はこれに従う旨規定される。
5.条文例
(通知の付与)
第 106 条 甲又は乙は、不可抗力により本契約上の義務の履行が不能となった場合には、速やかにその内容の詳細を本契約の相手方当事者に対して通知する。この場合、当該通知を行った者は、当該不可抗力が発生した日以降、当該不可抗力により履行不能となった義務について、本契約に基づく履行義務を免れる。ただし、当該通知を行った本契約の当事者は、当該不可抗力により本契約の相手方当事者に発生する損失を最小限にするよう努めなければならない。
(協議及び損害額の負担等)
第 107 条 甲及び乙は、本契約に別段の定めがある場合を除き、不可抗力に対応するため速やかに本件施設の設計・施工(改修及び解体を含む。)、本契約又は要求水準書の変更及び損害額の負担等について協議しなければならない。
2 前項の協議にかかわらず、当該不可抗力が生じた日から 60 日以内に甲及び乙が合意に至らない場合、甲は当該不可抗力に対する合理的な範囲の対応方法を乙に対して通知し、乙は、これに従い本事業を継続するものとする。この場合における損害の負担割合は、別紙 16 の定めによるものとする。
3 不可抗力により乙が運営業務等の一部を履行できなかった場合、甲は、乙が当該業務を実施しなかったことにより免れた費用に相当する金額をサービス対価から減額することができるものとする。
4 不可抗力に起因して、本件工事対象施設の引渡しの遅延が見込まれる場合、甲及び乙は協議のうえ、引渡予定日を変更することができる。
(不可抗力への対応)
第 108 条 不可抗力により本契約の一部若しくは全部が履行不能となった場合又は本件施設に重大な損害が発生した場合、乙は当該不可抗力の影響を早期に除去すべく、要求水準書で求める範囲内で対応を行うものとする。
(不可抗力による契約の終了)
第 109 条 第 107 条の規定にかかわらず、不可抗力により、甲が本事業の継続が困難と判断した場合又は本契約の履行のために多大な費用を要すると判断した場合、甲は、乙と協議のうえ、本契約の全部又は一部を解除により終了させることができる。
2 前項に基づき本契約の全部又は一部が終了した場合の措置は、第 96 条ないし第 97 条の規定に従う。
3 第1項の規定に基づき本契約の全部又は一部が終了した場合において発生した損害の甲と乙の負担割合は、別紙 16 のとおりとする。
別紙2 定義集
51 「不可抗力」とは、暴風、豪雨、洪水、高潮、地滑り、落盤、落雷、地震、火災その他の自然災害又は騒擾、騒乱、暴動その他の人為的な現象(ただし、要求水準書又は入札説明書等に基準の定めがあるものについては、当該基準を超えたものに限る。)のうち、通常の予見可能な範囲外のものであって、甲及び乙のいずれの責めにも帰すことのできないものをいう。
別紙 16 不可抗力による損害等の負担割合
1. 不可抗力による損害の対象
不可抗力による損害の対象は、以下のとおりとする。
①設計・施工期間及び運営期間の変更、延期及び短縮に伴う施設整備業務費及び運営業務費
②原因、被害状況調査及び復旧方法検討等に必要な調査研究費用、再調査・設計及び事業者提案又は設計図書の変更等に伴う増加費用
③損害防止費用、損害軽減費用、応急措置費用
④損壊した対象施設等の修復及び復旧費用、残存物及び土砂等の解体、撤去及び清掃費用、工事用機械及び設備、仮設工事、仮設建物等の損傷・復旧費用
⑤設計・施工期間及び運営期間の変更、延期及び短縮に伴う各種契約条件変更及び解除に伴う増加費用
⑥設計・施工期間及び運営期間の変更、延期及び短縮に伴う乙の間接損害及び出費(経常費、営業継続費用等。ただし、乙の逸失利益は除く。)
2. 不可抗力による損害の分担
(1)設計・施工期間
設計・施工期間中に不可抗力が生じ、病院施設整備業務に関して事業者に損害が発生した場合、合理的な範囲における当該損害に関しては、設計・施工期間中の累計で施設整備業務費相当額の 100 分の1に至る金額までは乙が負担し、これを超える金額については甲が負担する。ただし、当該不可抗力事由に関して保険金が支払われた場合には、当該保険金相当額のうち設計・施工期間中は施設整備業務費等相当額の 100 分の1を超え
る部分を甲の負担部分から控除する。
(2)運営期間中
運営期間中に不可抗力が生じ、運営業務等に関して乙に損害が発生した場合、合理的な範囲における当該損害に関しては、事業年度ごとに累計し、当該事業年度の統括マネジメント業務費相当額及び運営業務費相当額の合計額(別紙 12 の改定がなされ、かつ別紙
12 の減額がなされていない金額とする。以下本号において「運営業務費相当額」という。)
の 100 分の1に至る金額までは乙が負担し、これを超える金額については、xが負担する。ただし、当該不可抗力事由に関して保険金が支払われた場合には、当該保険金相当額のうち運営業務費相当額の 100 分の1を超える部分は甲の負担部分から控除する。
(3)前2号に定める金額には、いずれも消費税及び地方消費税を含む。
第14章 紛争解決
14-1 紛争解決(契約GL:6-7)
1.概要
PFI事業契約締結時には想定し得ないリスクの顕在化などPFI事業契約に定めのない事項、その他PFI事業契約の実施にあたって生じた疑義について解決しなければならないことも起こり得る。こうした場合に備えて、当事者間の協議の在り方について規定し、官民の真のパートナーシップに基づき当事者間の合意により解決することが期待される。但し、当事者間での協議が整わないこともあるため、紛争が生じる場合に備え、中立的第三者が関与した紛争の処理方法を規定する49。
2.問題状況
(1)両当事者間の協議、関係者協議会の規定及び裁判管轄の規定のみとしている場合が多い。さらに、関係協議会の構成については、紛争解決のための仕組みとして十分ではないことも少なくない。したがって、実効的な協議を行う仕組みを構築する必要がある。
(2)協議によって解決しなかった場合でも、良好な関係を継続したまま、迅速に解決することが必要である。さらにPFIをめぐる紛争は高度な専門知識を要求されることが多いと予想される。したがって、裁判よりも迅速かつ専門的事項に十分対応できる紛争解決の枠組みが求められる。
3.対処に関わる基本的な考え方
(1)調整会議の設置:PFIの基本理念は官民のパートナーシップであり、相互の信頼が大切であるから、まずは両当事者間の協議によって解決できることが望ましい。そのためには、両当事者間の不断のコミュニケーションをとっておく必要がある。そこで、両当事者の間のコミュニケーションの場を設定するために、関係者協議会の一部として
(又は関係者協議会とは別に)紛争予防、解決にふさわしい構成員で「調整会議」を設置し、定期的にフェイストゥフェイスの会議を開催して紛争の予防、信頼関係の構築に当たるとともに、紛争が生じた際には迅速に協議できる体制を整えておく必要がある50。
49支払遅延防止法第4条第4号及び予決令第100条第1項第7号。地方公共団体が管理者等と
なる場合は、当該規定は支払遅延防止法第14条の規定により準用される。
50 英国では両当事者の継続的コミュニケーションの重要性が強調されており、定期的なコミュニ
但し、枠組みを作成すれば紛争を防止できるというものではなく、あくまでも両当事者の担当者が紛争防止のために意欲的に行動することが前提であることに留意する必要がある。
(2)中立的第三者の関与:官民が対等の立場というPFIの基本原理からすれば、協議が整わない場合に一方が他方に結論を押しつけることは厳に慎まなければならない。そこで中立的な専門家が関与して、紛争を迅速に解決する仕組みが必要である。
4.具体的な規定の内容
(1)調整会議
紛争予防、解決のための機関として調整会議(仮称)を設ける。両当事者間の良好なコミュニケーションを図るため、定期的に会議を開催するほか、紛争予防、解決という観点から必要がある場合には随時会議を開催する。メンバーについては両当事者により構成することとする。
調整会議の内容:以下の点に留意すべきである。
a. 契約書に規定があるにもかかわらず設置がなされないままになってしまうことがないよう、契約締結後何日以内に設置すべきかを明記する。
b. 契約上で、官民のコミュニケーションを図るために必要な会合のタイプ、程度について規定する。
c. 官民の良好な関係を保つためには、コンタクトするポイントは複数あることが望ましい。
d. その一方で、官民双方の責任体制が混乱せず、意思決定が明確になされるように両者のチャンネルが適切に設定されることが重要である。
(2)中立的専門家による裁定手続創設
調整会議と、裁判による解決の中間に、中立的専門家(裁定人)による紛争解決手続を規定する。中立的専門家の判断に拘束力を持たせるか否かについては、拘束力があるとすると、中立的専門家の選任が困難になり、手続自体が使用されなくなる可能性があるため、当面は、中立的専門家の判断に拘束力を持たせない手続(一種の調停手続)とすることが考えられる。中立的専門家の選任方法は、両当事者の合意によるこ
ケーションの場を確保するべきとされている。(英国財務省 Operational Taskforce Note2: Project transition guidance(2007 年 3 月)参照)。