Contract
ロシアにおける契約行為と実務上の留意点
2010 年 3 月
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)
内容
1.ロシアの法制度の概念と契約制度の根拠法……………………………………・ 1
2.契約法の一般…………………………………………………………………・ 2
3.契約相手に関する留意点 6
4.契約履行の保証方法 8
5.典型的な契約の例………………………………………………………………・ 12
6.紛争処理 ……………………………………………………………………・ 14
本レポートの利用についての注意・免責事項
本レポートは、日本貿易振興機構(ジェトロ)モスクワ・センターが2010年3月現在入
手している情報に基づくものであり、その後の法律改正等によって変わる場合があります。また、掲載した情報・コメントは筆者およびジェトロの判断によるものですが、一般的な 情報・解釈がこのとおりであることを保証するものではありませんこと予めお断りします。
ジェトロは、本報告書の記載内容に関して生じた直接的、間接的、派生的、特別の、付随的、あるいは懲罰的損害および利益の喪失については、それが契約、不法行為、無過失責任、あるいはその他の原因に基づき生じたか否かにかかわらず、一切の責任を負いません。これは、たとえジェトロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。
本報告書にかかる問い合わせ先:
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)在外企業支援・知的財産部 在外企業支援課
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1.ロシアの法制度の概念と契約制度の根拠法
ここ数年、日露間の経済関係は着実に発展してきた。両国間の貿易・投資関係は、近年の世界的景気後退の影響を受け、多少鈍化しているものの、互いにxxな経済パートナーとして、その経済関係は今後もさらに発展することが期待される。
このような貿易・投資活動の目的を達成し、両国の当事者の権利・義務を確定するためには、各当事者の権利義務関係を詳細に規定する契約を締結することが最善の方策といえる。当然、書面で契約を交わすことが最も一般的な方法であると考えられる。
すなわち、契約は、当事者間の意思表示の合致で成立するが(「口約束」であっても、法律上、権利・義務関係が成立する場合もあれば、そうでもない場合もある)、法的トラブル防止のためには、契約書の作成が必須である。なお、サンプル・文例・xxxを用い、当事者名・価格等のみの修正での対応では、特に外国貿易の特質を考えるならば、リスク対策として不十分であり、危険である。
契約不履行者に対して請求しても、当該不履行者より「必要事項を欠く契約のため成立しない」、あるいは「形式的瑕疵がある契約のため無効」と主張をされる事例も少なくないので、契約内容には常に配慮すべきである。
上記の注意点は、日露間のビジネスに限らず、法律実務における一般論であるが、法律・ビジネス環境にそれなりの特性があるロシアとの関係においては、更に慎重になる必要がある。
本稿においては、日本企業によるロシア側取引先との契約締結の際、注意すべき事項、問題点等の概要を紹介する。
ロシアの法律は、全体として、いわゆる大陸法体系に属する法律である。すなわち、ロシア法は、判例法を中心におくxx法と異なり、ドイツ、フランス等の西欧や日本と同様、成文法(法典法)に中心をおいている。日本法に例えると、日本の民法と日本の商法の規定に相当する、契約その他の商事等に関する主要規定は、ロシアの民法に集中している。また、個別契約についても、担保法、「抵当権(不動産担保)に関する連邦法」、不動産登記および不動産取引に関する連邦法等に詳細な規定があるが、 1551条からなるロシア民法は、契約や債務に関する規定の一番重要な法源である。ロシア民法は、4部からなり、第 1部には、総則、個人と法人の法的地位、取引、物件等、契約法の一般事項に関する規定を含め、民事・商事に関する全般的規定が設けられており、第 2部には、売買、賃貸借、委託、代理、輸送、預金、保管、保険健、すなわち、ほとんどの契約形態に関する個別規定が盛り込まれている。第 3部と第 4部にはそれぞれ国際私法と知的財産に関する規定が含まれる。また、上述の通り、ロシアの法律は、制定法であり、xx法のように判例法ではないが、法解釈に関しては、あらゆる法律について強行解釈をする権利を有する憲法裁判所による決定、最高裁判所および最高商事裁判所の立場が尊重されている。特に、商事紛争担当裁判系列のトップにある最高商事裁判所は、具体的な案件に関する決定に加え、統一した見解のない問題については下級裁判所の判例を収集し、これを分析した上、法解釈のガイドラインを発行する。また、裁判制度上、ロシアにおける連邦管区商事裁判所の管轄管区は 10地域に分けられているが、法律解釈上、各連邦管区商事裁判所の意見には相違が見受けられることもある。
2.契約法の一般
国際取引のように、取引相手が異なる国に属する場合、契約をどちらの当事者の国の法律に従わせるか、あるいは、当事者いずれの国のものでもない、第三国の法律に従わせるかを判断し、当該契約の準拠法を決めておく必要がある。
対ロシア取引の際、強制的にロシア法を準拠法としなければならない場合(例:ロシア国内にある不動産を対象とする契約等)もあれば、当事者が自由に決めることが可能な場合もある。後者の場合、準拠法の決定は、通常、交渉による。契約の内容、目的、性質、将来の紛争の可能性と紛争処理方法等を念頭におき、最適と考えられる法律を選定する。ロシア法を選定した場合、ロシアの契約法について、以下の事項を考慮することが望ましい。
①定義
ロシア法によると、契約とは、二人以上の者による民事の権利・義務の確立、変更または消滅に関する合意をいう(ロシア民法 420条)。
ロシア民法には、契約自由の原則が規定されている(ロシア民法 421条)。すなわち、原則としては、だれもが、契約自体を締結するか否か、相手方、契約内容、契約方法を自由に決定することができる、とされている。もっとも、契約の締結が義務付けられる場合(例えば、小売、通信、交通、電力等のサービスを提供する商事会社は、顧客に対して、原則として、契約の締結を拒否することはできない)、契約内容の形式が法律により義務的に定められている場合もあるが、法律に特段の規定がない場合に限り、契約の締結は自由になされる。また、契約の種類についても、民法、その他の法律に規定が整備されている典型契約(例えば、贈与、売買、交換、賃貸借、委任等)は、もちろん、民法に規定のない非典型契約、複数の典型契約の条件が混在する混合契約も認められる。
②形式、登記義務、公証義務
ロシア民法では、口頭による契約と書面による契約があるが、一定の場合、書面による契約の作成が義務付けられる。例えば、対外貿易取引(ロシア民法の当該文言は「対外経済取引」となっている)、担保契約、保証契約、不動産売買契約、不動産賃貸借契約等は、書面によらなければ、無効である。なお、法人間契約、法人と個人間の契約のすべて、個人間契約の大部分は、書面によらなくても無効にならないが、書面によらなければ紛争が生じた場合、自分の主張について、第三者による目撃証言があったとしても、それを裏付ける証拠がないものとみなされる。
このため、実際、口頭による契約が認められるのは、個人間の小額取引に限られている(ロシア民法 160条~162条)。
場合によっては、公証人による契約の公証を要するケースもあるが、企業実務ではそのようなことはほとんどない。契約に公証を要するのは、ほとんどの場合、遺言等個人文書に関わるケースである。
ビジネスの実務において公証を要する契約は、有限会社での出資持分の譲渡契約
(有限会社法 21条 11項)再委任状である(ロシア民法 187条)。ロシアにおいて、再委任状ではない、通常の委任状には、法律上、公証を必要としないが、委任状にはすべて、公証を付することが常識となっている。同様に、公証人による契約の公証は、法律によって定められていない場合であっても、当事者間で、契約が確実に締結されたことの証拠として、公証人役場にて契約を公証して合意がなされる場合もある。法律により公証が義務付けられているにもかかわらず、公証を怠った場合、当該取引は無効となる。
さらに、契約の種類によっては、国家登記を必要とする場合もある。国家登記を必要とする取引としては、不動産担保契約(抵当権)、住宅売買等が挙げられ、このような契約は、不動産登記を管轄する国家登記・台帳・地図に関する連邦庁にて登記しなければ、当該契約は無効(不動産担保契約の場合)あるいは、不成立( 1年を超える不動産賃貸借契約と住宅売買の場合)となる。また、いかなる契約(売買契約等)による不動産物件の譲渡についても登記を行う必要がある。
③成立要件
ロシア民法では、契約を成立させるためには、当該契約に「実質的な条件」に関する合意がなされていなければならない。実質的な条件とは、まず、契約の対象(目的)、法律その他の法令において定められた当該契約の重要条件、または、必要条件として指定されている条件、契約当事者自身が実質的とする条件とが、定められている。対象(目的)を特定しなければ、契約は不成立となる。例えば、不動産売買、賃貸借契約において、契約の対象となる不動産の住所、登記番号、面積に誤記があった場合、当該契約は不成立とみなされ、申請は拒絶される。なお、機械担保契約等、国家登記を必要としない契約についても、機械のエンジン番号等の記載にもれがある、あるいは、この記載に誤謬があると、裁判になった場合、当該契約は不成立とされ、執行不能となる恐れもある。
④契約の変更・解約・解除
ロシア法において、原則として、契約は当事者の合意がない限り、一方的な変更・解除はできない。ただし、相手方に重大な契約違反があったとして、裁判に訴え、契約の一方的変更・解除の請求をすることは可能である(ロシア民法 450条 1項)。一方、当事者は、契約をもって裁判に訴え、契約を変更・解除する請求権を放棄することもできる。なお、民法に定めのある契約については、一方的な解約が認められ、また、商事に関する契約の場合も、当事者は契約の一方的解除が認められる。このような解除は、ロシア民法の文言を借りると「契約上の債務履行の一方的な拒否」という。
⑤無効確認、取消要件
ロシア民法では、一旦、締結された取引でも、一定の場合においては、無効とされ、あるいは、取り消されることがある。日本の法律にも、基本的に同様な制度があると聞いている。たとえば、ロシア法では、上記のような取引の契約は、締結されても、元来、何ら法律的効果を発生させることはない。取消可能取引と無効取引との基本的な違いは、取消可能取引の取消しには、判決を必要とするが、無効取引については、判決がなくても無効である。しかしながら、実務上は、「無効取引の無効性の適用に関する訴え」という訴訟手続を経て、たとえば、無効取引が売買契約の場合ならば、支払われた金員、引渡された目的物は、それぞれ当事者に返還さ
れ、現状回復がなされる。もう一つの違いは、無効取引に関する訴訟は、「あらゆる関係者」、すなわち、当該取引によって損害を被った者ならばだれでも提起することができるが、取消可能取引については、取消可能取引の種類により、特別に法律に規定のある者しか取引を取り消す訴訟の提起はできない。例えば、法人の代表者が、代表権限を越えた取引を締結した場合、この取引を取り消すためには、当該法人またはその株主が裁判に訴えなければならない。
実務上、よく見受けられる契約無効または契約取消しの主張の根拠としては、「法律その他の法令の違反」(当該取引は、場合によっては無効取引あるいは取消可能取引のいずれかとなる可能性がある)および、上記の法人代表者による越権行為がある。ちなみに、この制度が、悪用される場合も少なくない。特に、契約違反者、あるいは、契約上の義務の不履行者が契約の形式または社内承認手続に瑕疵があったとして、上記のような契約無効、または、契約取消し訴訟を提起する場合がある。
このため、契約の締結の際、先方の代表者の権限や契約の登記の必要性の有無等の確認を怠らないようにしなければならない。
⑥言語
契約言語については、多くの場合、ロシア語版と英語版あるいは、ロシア語版と日本語版が作成される。
⑦決済方法
決済方法としては、銀行振込はもちろん、 L/C、手形、小切手等、あらゆる決済方法が認められているが、国内決済、国際貿易決済とも、現在でも、銀行振込(送金ベース)が、かなり大きな割合を占めているようである。
国内における現金決済については、決済についての詳細なルールを定める権限を有するロシア中央銀行により上限が定められる。現在、 10万ルーブル以上の現金決済は禁じられている。
国際貿易決済について、過去においては、かなり厳しい外為規制の適用があり、個別許可を要する種類の取引が多かったものの、近年、ほとんどの規制が廃止された。現在、残存する規制は、「外為規制・外為管理に関する連邦法」
(外為法)に規定されている。
主な規制として、居住者間(居住者とは、原則としてロシア法人またはロシア国籍の個人をいう)の外貨決済の禁止、国際送金に際しての取引銀行に対する根拠書類の提出が挙げられる。もう一つの規制としては、ロシア企業(もちろん、ロシアで設立された外国企業の子会社もロシア法人であり、「ロシア企業」に含まれる)は、外為法上の義務として、海外に納品する商品の代価を契約通りにロシアの取引銀行にある口座に受領しなければならない。同様に、ロシア企業は、海外の取引先に前払をしたにもかかわらず、契約どおりの納品がなかった場合、取引先に支払った資金を返金してもらわなければならない(外為法 19条)。
この規制の目的は、仮想取引による海外への外貨流出の防止にある。完全に合法的な貿易取引であっても、やむを得ぬ事情による支払いや納品の遅れが発生する場合もあるが、この場合においても、外為法違反として、ロシア行政違反法 15.25条に従い、回収されなかった金額の 4分の 3から全額までの罰金が課されることがあ
る。
⑧違反の場合:証拠収集、保管・管理、時効にご注意
いうまでもなく、契約相手の行動をフォロー・アップして、先方による契約義務不履行の場合、不履行の証拠収集の上、将来に生じる可能性のある仲裁・裁判に備えて、この証拠を保管・管理することが肝要である。なお、ロシア法において、一般的な消滅時効期間は、債務不履行を受けた者がその不履行のあったことを知り、または知り得た時点から 3年間とされているが、短期消滅時効もある。時効期間を過ぎた場合、自己の権利の主張は、通常、困難となる恐れがあるので、時効期間についても留意すべきである。
3.契約相手に関する留意点
契約相手方候補に信頼がおけるか否かについての事前調査が必要であることに加え、海外進出する際、さらに慎重な検討を要することは、ビジネス実務において、常識的なことであるので、改めて繰り返す必要はないかもしれないが、ロシア企業を相手とする場合、これらの点に関して、特に留意すべき点を以下、いくつか取り上げることにする。
まず、相手企業の存在を確認する必要がある。ロシア法において、法人は、通常、国家登記の時点から行為能力が発生する。すなわち、相手企業の行為能力の有無を確認するためには、当該企業が国家に登記されているかどうかの確認が必要である。このためには、ロシア国内で登記されているすべての法人に関する情報を集めた連邦統一法人・個人事業主登記簿の制度の利用が効果的である。当該制度では会社情報の公開を原則としている。何人でも、登記担当機関(現在は税務署)に相手企業の登記簿謄本のコピーの取得を申請し、受領した登記簿謄本から、会社の住所、代表者名等の確認ができる。
また、上述の、「無効確認、取消要件」にもあるように、相手企業の代表者として契約に署名した者に契約締結権限が無い場合、あるいは、契約締結の際に必要とされる相手方企業の社内手続きに違反した場合、当該契約は取消しの可能性があるので、さらにいくつかの点に留意する必要がある。
まず、ロシア民法には、企業代表者の能力制限の概念がある。具体的には、会社の定款を以って、「社長は、取締役会の承認なくして、会社の不動産を売却することはできない」等の規定を設定し、代表者の権限を制限することができる。このような制限の有無を確認するためには、上記の登記簿謄本の取得手続同様、会社定款を取得し、権限制限の有無の確認をしなければならない。相手方の社長が、定款に規定された制限があるにもかかわらず、権限を越えて取引を行った場合、会社またはその株主が、裁判にて当該取引の取消請求をする恐れがある。法律上、当該取引の取消基準として、権限を超えて取引を行った社長の相手方がその権限の制限について知っていたこと、または知り得たことが基準となるが、ロシアにおける裁判の判例では、制限事項が記載されている会社定款は公開資料である。すなわち、誰でも閲覧し、制限事項の有無の確認が可能であるから、取引の相手方の定款に制限事項があることを知らなかったとしても、常に「知り得る」状況にあると言う理由によって、このような取引が取り消される場合も少なくない。
また、定款に特に制限事項がなくても、ロシアで圧倒的に多い会社形態である株式会社と有限会社のそれぞれの体制を定める株式会社法および有限会社法には、経営陣の独走や会社資産の乱用防止を目的とした一定の制限規定がある。
有限会社法では、有限会社が予定する取引金額が、当該有限会社の総資産額の 25%以上 50%以下に相当する場合、この取引は、原則、場合によっては、取締役会または社員総会
(従業員ではなく、出資者という意味での社員)の承認を得なければならず、 50%超の場合、原則、社員総会の承認を必要とする。株式会社についても、同様の規定がある。株式会社が予定する取引金額が当該株式会社の総資産額の 25%以上 50%以下に相当する場合、取締役会の満場一致での承認、それが不可能な場合、あるいは、取引額が総資産額の 50%超の場合は株主総会の承認を必要とする。なお、取引額が総資産額の 50%超の場合は、株主総会の 4分の 3の特別決議が必要である。上記取引について、承認が不要とされる例外と特例はあるが、トラブルを避けるためには、契約締結前に相手方にとって上記のような「多額の取引」に該当するのか、該当する場合、承認手続がきちんと取られているのか
を徹底的に確認しなければならない。
4.契約履行の保証方法
実務上、よく提起される問題として、相手方に確実に債務を履行させるためにどうすべきか、ということがある。最善策として考えられるのは、相手が債務を履行しない限り、自己の債務を履行しないようにすることである。すなわち、買主の立場ならば、相手からの納品があるまで代金を支払わない、あるいは、売主の立場ならば、代金を受領するまでは出荷しないことである。対ロシアの契約実務においても、できるだけ自己のリスクを軽くし、相手にリスクを負わせようとする考え方が働くのみならず、さらに、相手が在外企業のため、取引先に対する信用、債務回収等の問題がより深刻に感じられることになる。
しかしながら、前金制等売主に都合の良い支払い方法に相手が必ずしも応じるとは限らず、代金回収は、後日行われることが多いのが実情である。そのため、保証に関しては他の方策の検討が必要である。
ロシアの法律において、債務履行を確保する手段としては、違約金、担保、留置権、第三者による保証、銀行保証、手付金等につき、特別の定めがあるが、それ以外の保証方法も、法令に抵触しない限り活用することができる。
保証契約が失効しても、主たる契約の効力に影響はないが、主たる契約が失効すれば、保証契約も失効する。
また、以下のいずれの方法も万全策ではないが、方法を組み合わせることにより、代金回収等、相手方による債務履行について、何ら保証がないよりはましである。
担保目的物には、追求効(すなわち、担保設定者が担保目的物を第三者に譲渡しても担保は消滅しないこと)があるが、第三者への公示は、不動産、船舶、飛行機等(登記が効力発生要件となるから、登記されていない場合、担保は無効)、自動車や建設機械類(ただし、無登記でも担保は有効)についてのみ適用される。なお、担保設定者の破産時にも担保権者の権利は保護される。
ここで、ロシアにおいてよく利用される保証方法をいくつか紹介する。
最もよく用いられる方法は「担保権」である。ロシアの契約上の「担保」には、日本において担保の一種として認められている連帯保証、留置xxは含まれない。一般的に、担保目的物に担保権が設定され、担保によって保証された債権が不履行の場合、担保目的物の競売・換価により得られた代金から債権者が優先的に弁済を受け、あるいは、一定の場合、債権者は、担保目的物を自己所有物とする権利を有する(ロシア民法 334条)。
何らかの方策を講じなくても、当然、発生する法定担保もある。例えば、売買契約に別段の定めがなければ、売掛金の全額が支払われる時点まで、売主は売買契約の目的商品について担保権を有する。
担保権と抵当権の設定のそれぞれの範囲については、身体に対する損害賠償権、一定の土地物件等の限定された物・権利を除き、かなり広範囲の財産・権利に対して担保権の設定が可能である。
通常、担保権は契約により設定されるが、担保目的物の種類により、契約内容が若干、異なってくる。
抵当権
取引相手が不動産(土地・建物)を有する場合、保証手段として最も確実な方法は、不動産担保(抵当権設定)である。これは、日本と同様に、主たる債務者の債務の保証として、債務者または第三者が建物や土地を担保として提供し、抵当権設定契約を結び、抵当権が登記される。ロシアにも不動産登記制度があり、登記簿の記載事項は一般に公開されているので、誰でも登記簿謄本を入手し、不動産に設定されている抵当権の有無を確認することができる。抵当権の根拠法は、ロシア民法と「抵当権(不動産担保)に関する連邦法」である。
建物に抵当権を設定する場合、当該建物が建っている土地についても、抵当権の設定が必要である。ロシアにおいて、土地の私有は認められてはいるが、現在でも多くの土地は公有(国有、州有、市町村有)であり、こうした土地上に私有建物が存在することがよくある。このような場合、建物に抵当権を設定するに当たって、同時に当該土地の賃借権への抵当権の設定も必要である(抵当権<不動産担保>に関する連邦法 69条)。上述のとおり、抵当権設定契約の登記は義務付けられており、この義務を怠った場合、抵当権設定契約は無効である。また、抵当権(不動産担保)に関する連邦法において、抵当権契約における必須記載事項が定められており、登記の際、当該必須記載事項の記載に瑕疵があった場合、登記申請は却下され、抵当権の設定がなされない恐れがある。
保証のついている債務(主たる債務)の不履行の場合、通常、裁判所に強制執行の命令を請求する。しかし、抵当権者側による悪用防止のため、主たる債務の不履行の程度が著しく微少であり、かつ、抵当権者による請求額が、抵当目的物の価格に比して明らかに多額である場合、特に、不履行の債務額が抵当契約上の抵当目的物の鑑定額の 5%弱、かつ、主たる債務の履行の遅延期間が 3カ月弱の場合、裁判所は当該強制執行に関する請求を認めない(抵当権<不動産担保>に関する連邦法 54.1条)。また、一定の物件
(住宅、農地等)を除き、抵当権設定者と抵当権者間の合意、抵当権設定者による公証済みの承認があれば、裁判によらずに、抵当目的物(担保された不動産)を競売し、または、抵当権者に移転し、その代価を弁済に充当することができる。
上記の抵当権に関する規定は、不動産の規定が準用される飛行機や船舶等に準用される。
不動産を担保目的物とする場合、高額な債務の担保とすることができ、また、不動産については毀損の恐れが比較的少ないため、不動産への抵当権設定は債務保証の方法として、かなり高く評価されている。このスキームの短所は、抵当権の登記や執行手続に手間がかかるという点である。
倉庫商品担保
取引先の倉庫内の商品に対して集合物担保権の設定も可能である。このような商品は、出入庫によって種類・数量が変動する場合でも、一定の種類・所在地・数量の範囲を定めた上で目的物を特定し、担保権を設定するという方法もある。しかしながら、このような担保物には文字通り「流動性があり」、担保権を実行しようとしたときに、担保物が倉庫から完全に消滅し、執行不能となる恐れがないわけではない。
権利担保
取引相手が、第三者に貸付金、売掛金等の債権を有する場合、その債権に担保を設定し、債務者が債務不履行に陥った場合、債権者(担保権者)が当該債権の債権譲渡を受ける方法も用いられている。
保証
保証とは、狭義においては、債務者たる企業が約束通りの弁済が不能となった時に、保証人(法人あるいは個人)が代わって弁済する義務を負う仕組みである。ロシア民法( 363条 1項)では、法令または当該保証契約に、保証人の補助的保証(すなわち、先ず債務者から回収を図った上で、不足部分のみの責任を果たせばよい)特約がない場合、保証人は連帯保証責任を負う。実際、取引相手の子会社・株主企業・関連企業等のみならず、相手企業の代表者またはオーナーに保証人や連帯保証人になるよう求めることがよくある。この保証方法には、保証人に対する弁済請求時点に保証人にどの程度の資力があるかという問題があり、個人たる保証人が夜逃げしたり、個人・法人が財産を隠匿したり、移転した場合、執行困難となる恐れもあるが、保証がなされていることによって、債務者に責任感を持たせる方法としては有効である。
銀行保証
ロシアでは、債務者に対し、債務履行について銀行の保証を求める方法もある(ロシア民報 368条)。債務者がこれに応じた場合、銀行に手数料を支払い、債務者による当該債務不履行の場合、この銀行は債権者に対して、債務額を支払う約束をする。このスキームのデメリットは、知名度の高い銀行の保証発行手数料が高い一方、三流銀行は、保証したとしても、債務額を支払わない可能性があるため、知名度の低い銀行の保証をとっても無意味と考えられる点である。
違約金
契約を約束通り履行させるための保証として、契約違反の場合の罰則である、損害金の制度が利用されている。ロシア民法 330条 1項に定めのある違約金の定義には、一定額や一定利率という形で定めることができ、債務不履行(不適切な履行)の場合、法律または契約によって定められた金額を債務者が債権者に支払わなければならないという
ものである。上記の規定において、不履行として、履行遅滞が特別に挙げられている。また、債務者側に不履行があった場合、債権者は、違約金受領の際、損害額の立証義務を負わない。ロシア民法 394条によれば、通常、契約違反によって発生した損害額が違約金の額を上回る場合、違約金に加えて、その上回った分の請求が可能である。法律または当事者間の合意により、債権者が①請求できるのが違約金のみで、損害賠償の請求ができない場合、②違約金、損害賠償ともに請求可能な場合、③違約金または損害賠償のいずれかの請求が可能である旨、定められることがある。
契約に違約金の定めがない場合においても、ロシア民法 395条では、金銭債務不履行の場合、債権者は、損害賠償金として、公定歩合( 2010年 5月現在年利8%)に相当する法定金利で計算した損害賠償額の請求が可能である。同時に、ロシア民法 333条では、違約金の請求額が債務不履行の結果に照らして著しく高い場合、裁判所の裁量により違約金の減額が可能である。
手付金
手付金もロシア民法上、契約の履行を保証する方法として位置付けられている。ロシア民法 380条において、手付金とは、一方当事者が他方当事者に対して、契約に従い、支払うべき金額の一部を、契約の締結を証明し、かつ、契約履行を保証するものとして支払う金額のことである。手付金を支払った当事者が契約不履行を起こした場合、手付金の全額を失うが、手付金の支払いを受けた当事者による契約不履行の場合、手付金の 2倍の金額を他方当事者に支払わなければならない。
実務上、手付金は、通常、売買契約締結時に利用される担保方法であり、債権回収の場面での利用はできない。
留置権
留置権は、ロシア民法 359条に定めのある債務履行の保証方法である。これは、履行の保証というより、すでに不履行が発生した後の回収の救済というべきものかもしれないが、ロシアの法律によって、債務保証方法として位置付けられているので、ここで簡単に言及する。
留置権は、従来、債務者、または、債務者が指定する者に引渡すべき物が債権者の手元にあり、また、この債務者による債権者に対する支払義務等不履行の場合、債権者は、債務者の物を留置することができる。また、留置権の目的物は、担保目的物と同様の規定に従い、競売により売却され、その代金は債務返済等に充当することができる。
5.典型的な契約の例
ここで主要な契約について簡単に紹介する。
実務上、最もよく締結されるのは売買契約である。
日本企業は、ロシア国内における商品販売、ロシアからの資源購入の場合、売主・買主の立場にある。売主であるか、買主であるか、という契約当事者としての立場により、「相手の義務を重く、自己の義務を軽く」との観点から、契約内容を自己に有利とする方法も異なり、また、売買契約への適用準拠法にも影響を受ける。上記、第 1節「契約法の一般」で言及した通り、契約当事者は当該契約に適用すべき準拠法の選定が可能である(ロシア民法 1210条 1項)。日本企業とロシア企業間の売買契約の場合、その他の契約同様、ロシア法、日本法、第三国の法律(英国法、ニューヨーク州法等)を準拠法とすることができる。また、平成 21年 8月 1日付で日本において発効した「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(ウィーン売買条約)には、売買契約の成立や契約当事者(売主と買主)の権利義務に関する規定があり、当事者間の合意さえあれば、いずれかの国の法律を選定することは不要となり、上記契約に規定の統一ルールを売買契約に適用させることができる。
しかし、準拠法設定に関するルールは、原則として、契約当事者がそれぞれ異なる国の企業である場合にのみ適用される。最近、日本企業はロシア国内で現地法人を設立し、その現地法人経由で活動を行うことが多くなってきており、こうした場合、日本企業の子会社であるロシア法人とその他のロシア法人との間の契約はロシア法に準拠する。
売買契約に関する規定は、ロシア民法 30章にある。これに従い、当事者の主要な権利・義務が定められる。具体的には、売主の主たる義務は、契約に定められた数量・品質・仕様等の条件に適合する商品の提供であり、これに対して買主は、当該商品を受領し、代価を支払う義務を負う。売買目的物(売買契約の対象となる物品)の特定が売買契約の成立要件となる。
なお、買主による支払いが全額前払いまたは割賦払いのような場合、代金が全額支払われるまでは当該物品の所有権が売主にあるとする条件(所有権の留保)を契約に盛り込むことができる(ロシア民法 491条)。これに従い、売主は、買主が代金を完済しない場合、買主に対して契約目的物を返品するよう請求することができる。売買契約に従い、売買目的物の所有権が留保された場合、この物品を売主が第三者に移転することはできないが、実際には、一旦、第三者に引渡されてしまった場合、回収困難となるケースが多いとのデメリットが指摘されている。
売主側からみれば、代金回収の保証が最重要課題の一つであるから、保証方法または保証方法の組合せの検討が必要と考えられる(保証方法の詳細について上記第 4節「契約履行の保証方法」を参照)。
また、物品の紛失リスクは、通常、売主が引渡義務を果たした時点で買主に移転するが、売買契約において、これと異なる特約を盛り込むことができる。
売買契約に関する一般的な条件に加え、ロシア民法において、売買契約の目的物やその他の性質によって、特別の規定が設けられている。例えば、不動産売買契約は、不動産の所在地、不動産の価格が特定されなければ、不成立となる。
賃貸借契約
ロシアに進出する日本企業は、事務所や倉庫を確保のため、不動産賃貸借契約を結ばなく てはならない。事務所や倉庫を賃借する際のトラブル発生の予防策として、当該物件に対 する家主の権利に関する調査を行うことが望ましい。家主と名乗る者(会社)が不動産登 記簿上の物件所有者であることの確認はもちろんのこと、当該物件について、紛争・訴訟 がないことを事前に確認すると安全である。契約期間が 1年を超える不動産賃貸借契約は、登記しなければ成立しない。登記手続きは、煩雑な作業を要するので、短期契約を結び、更新する方法も実務上、よく取られているが、賃貸人側としては、長期契約のほうが安定 的であると考えられる。
一般的に、ロシア法上、売買価格や家賃は、売買契約や賃貸借契約における記載必要事項ではない。売買価格や家賃の設定がなく、契約条件に基づく算定が不可能な場合、同様の状況において、商品・サービスの場合は、同様の商品・サービス等の対価としての請求金額が、当該契約の価額とみなされるが、不動産についてこのようなルールの適用はない。不動産売買契約と不動産賃貸借契約のそれぞれにおいて、不動産の価額と家賃の定めがない場合、当該契約は不成立とみなされる。また、不動産売買契約と同様、賃貸借契約の目的物となる不動産は詳細に特定しなければならない。
ライセンス契約
知的財産を活用するに当たり、取引相手に知的財産を使用させ、その使用範囲等を設定する手段としてのライセンス契約は不可欠な制度である。ロシアにおいて、ライセンス契約の法的根拠は、知的財産に関する各種の規定を網羅するロシア民法第4部にある。ライセンス契約全般に関する規定は、ロシア民法 1235~1238条にある。ロシア民法上のライセンス契約の重要な特徴は、当該契約の目的物についての登記が義務付けられている場合、ライセンス契約についての登記も行わなければならない。すなわち、特許、実用新案、意匠、商標の登記が義務付けられているので、商標の使用権許諾のライセンス契約は、ロシア特許庁にて登記しなければならない。逆に言えば、ノウハウの登記は必要とされないため、ノウハウの使用権についての登記も不要である。また、ロシア企業に対し、知的財産のロシア国内での使用権許諾契約の締結前に、特許、実用新案、意匠、商標等、登記(登録)を要する知的財産についてロシア特許庁に登録しなければならない。
ライセンス契約において、有償か無償かの特定をし、有償契約の場合、ライセンス料の金額、または、その算定方法を定めなければならない。そうしないと、ライセンス契約は不成立になる。
6.紛争処理
万一、当事者間に紛争が生じた場合に備え、通常の契約書には、紛争処理に関する規定の設定が一般的になされている。
日本とロシアの企業を当事者とする契約について、紛争処理方法として、 3種類の選択肢が考えられる。つまり、紛争処理は、日本の公的裁判、ロシアの公的裁判、あるいは、民間の仲裁のいずれかに委ねることである。
国際取引では、当事者の所属国が各自異なる場合がほとんどであり、紛争処理方法としては、いずれかの国での裁判の選択が思い浮かぶが、日露間において、相手国の判決を相互に承認する制度は存在しないので、日本における裁判でロシア企業に対する有利な判決あるいは仮処分命令を得たとしても、この判決や命令に基づいて、ロシア国内での相手方の資産差押え等、強制執行は、事実上、不可能である。なお、裁判手続きは時間を要し、終結するまでどのくらいの時間を要するかを予測することも困難である。なおかつ、公的裁判は文字通り公開であるため、取引の詳細を一般が周知することになるが、これは商業秘密関係においても必ずしも望ましくない場合も多いようである。
別の選択肢として、仲裁制度がある。仲裁制度は、一般的に、取引当事者が、紛争処理を民間の第三者に任せて判断させ、その判断に服することを約束する制度である。この制度は、公的裁判所に比べ、手続きに迅速性と柔軟性があるので、国際商事仲裁は国際貿易において従前、頻繁に利用されている。なお、仲裁手続は非公開なため、商業上の取引の秘密も守られる。
また、外国における仲裁判断の強制執行に関しては、 1958年の「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(ニューヨーク条約)という国際条約がある。この条約の趣旨は、原則として、一つの条約国において行われた仲裁判断は、すべての他の条約加盟国において承認・執行されることにある。現在、ロシア、日本を含め 140カ国以上の国がこの条約に加盟している。例えば、日本企業が、ロシア企業を相手として、ロシア、日本、スウェーデン等のニューヨーク条約の締結国において仲裁判断を得た場合、同様に、ロシア、日本、スウェーデン等のニューヨーク条約の締結国国内において相手方ロシア企業の資産の差押えが可能である。
仲裁の場として挙げられる機関は、ロシアの MKAS(ロシア商工会議所に付属する国際商事仲裁)、日本の JCAA(日本商事仲裁協会)、また第三国の知名度の高い仲裁機関としては、スウェーデンのストックホルム商業会議所仲裁裁判所、 LCIA(ロンドン国際仲裁裁判所)、国際商業会議所 (ICC)国際仲裁裁判所がある。
しかし、仲裁機関にて有益な仲裁判断を得た場合、直接、執行(差押え)に移るのではなく、仲裁判断の執行のためには、現地の裁判所の命令を得なければならない。例えば、ロシア企業が日本企業に対して債務額を支払う旨の仲裁判断を外国(すなわち、ロシアでない)仲裁機関において得たにもかかわらず、相手側が任意に支払いを行わないならば、強制的な差押えをせざるを得なくなる。債務者の資産のほとんどがロシア国内にある場合、有利な判断を得た債権者は、債務者の所在地を管轄するロシアの裁判所に外国仲裁判断の承認・執行を申し込むが、これを受けた裁判所が承認・執行を拒絶できる場合はほとんどない。拒絶すべき理由の有無を確認し、さらに、承認・執行を拒絶すべき理由がないかを確認する。拒絶理由は、上記のニューヨーク条約とロシア国内訴訟法に
規定されているが、外国仲裁判断が発効していない場合や相手方への通知不達の場合あるいは当該事件がロシア裁判所の排他的管轄にある場合は、外国仲裁判断がロシアの公の秩序に反すると判断される場合がある。拒絶理由がなければ、裁判所は執行命令を下し、執行命令に基づき、ロシア執行官庁に申請して仲裁判断の強制執行を行うことができる。
しかし、事情によっては紛争処理手段として、仲裁でなく、ロシア国内裁判所を指定することがある。事例としては、ロシア側の相手方の主張に妥協する場合、事件がロシアの裁判所の「排他的管轄」に属する、すなわち、ロシアの裁判所によってのみ裁判が可能な場合がある。後者の典型例は、ロシア国内の不動産にかかる権利に関する紛争である。これは、ロシアの裁判所でしか処理することができない。
最後に、ロシアの裁判制度について簡単に紹介する。
ロシアの裁判制度において、事件を実際に審理する裁判所としては、一般裁判所と商事裁判所がある。前者は、個人間の訴訟(民法、家族法関連の訴訟を含む)、個人対企業あるいは行政機関の紛争(労働争議、消費者保護関連の紛争等)、刑事事件、軽犯罪、行政処分等を取り扱うが、後者は、原則として、営利活動、その他の経済活動に関する、法人間の訴訟 (個人事業主を含む )、法人の設立、再編、清算にかかわる紛争、株主総会決議に対する株主(個人株主を含む)からの無効の訴え、企業の評判に関する名誉毀損、破産事件、仲裁裁判所 (外国及び国内)の決定の承認と執行、法人対行政機関の紛争(課税、通関、環境等 )を処理する。このため、企業間の争いは原則として、商事裁判所で処理され
る。商事裁判所は各州に一箇所あり、上訴審として上訴商事裁判所(ロシア全国で 20カ所)、さらに、巡回商事裁判所 (ロシア全国で 10カ所)、また、商事裁判の系統の最高の機関と して、最高商事裁判所がある。
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