Contract
埼玉県建設工事標準請負契約約款第 26 条第6項
(インフレスライド条項)の運用に関する基準
埼玉県が発注・契約する工事において、埼玉県建設工事標準請負契約約款(以下「契約約款」という。)第 26 条第6項の規定により、請負代金額が変更となる契約変更の取扱いについて、以下のとおりとする。
なお、発注者及び受注者は、当該請負代金額の変更に当たり相互に十分な協議を行うとともに、賃金水準の変動により請負代金額を増額変更した場合、受注者は下請業者との間で既に締結している請負契約の金額の見直しや、技能労働者への賃金水準引き上げ等についても一層の対応を行うものとする。
1 適用対象工事
(1) 契約約款第 26 条第6項の規定により、当該工事の工期内の日本国内における急激なインフレーション又はデフレーションに伴う請負代金額の変更(以下「スライド」という。)の適用対象工事は、次の全てに該当する工事とする。
ア 工期が基準日から2か月以上残っていること
イ 物価変動後の発注者の積算による変動後残工事代金額と変動前残工事代金額の差額が、変動前残工事代金額の 1/100 を超えていること
(2) 発注者又は受注者は、スライド協議の請求に先立ち、スライドの適用対象工事の事前確認を、賃金水準の変更がなされた時以降に行うものとする。
2 定義
(1) 請求日
スライドの可能性があり、発注者又は受注者が請負代金額の変更の協議(以下「スライド協議」という。)を書面により提出した日とする。
(2) 基準日
ア スライド協議の請求日を基本とし、出来高を確認する日とする。
イ 上記により難い場合は、スライド協議の請求があった日から起算して 14 日以内で発注者が受注者の意見を聴いて定める日とすることができる。
(3) スライド額協議開始日
ア 発注者は、受注者の意見を聴いてスライド額協議開始日を定め、請求日から 7 日以内に受注者に書面により通知する。
イ スライド額協議開始日は、先行指示等が行われ施工済にもかかわらず、現在の契約内容に含まれていない事項がある場合には、必ず、先行指示等に係る変更契約に関する合意が整った後の日とする。
(4) 残工期
基準日以降の履行期限までの工事期間とする。ただし、基準日までに契約変更を行っていない場合でも書面による先行指示等により工期延長が明らかな場合には、その工期延長期間を考慮することができるものとする。
(5) 出来形数量
「4 出来高の確認」に規定する基準日における施工済み部分及び現場搬入済み材料等に係る設計数量とする。
(6) スライド額
契約約款第 26 条第6項の規定による請負代金額の契約変更の対象となる額とする。
(7) 賃金水準の変更
国から送付される公共工事設計労務単価等の適用を決定し、県が定める積算単価を改定することをいう。
3 スライド協議の請求
(1) 発注者又は受注者によるスライド協議の請求は、埼玉県が定める建設工事の賃金水準の変更の日以降に行うことができるものとする。
(2) 上記(1)のスライド協議を請求できる期間は、当該工事の工期内で、かつ直近の賃金水準の変更の日から次の賃金水準の変更の日の前日までとする。
(3) スライド協議の請求方法
ア 発注者又は受注者からのスライド協議の請求は、書面(様式1-1又は1-2)により行うこととする。
なお、直近の賃金水準の変更の日から次の賃金水準の変更の前日までの間におけるスライド協議の請求は、1回を基本とする。
イ 基準日の設定以降に新たに賃金水準の変更がなされ、かつ、新たな基準日から残工期が2か月以上ある場合には、その都度スライド協議の請求をすることができる。
ウ 発注者は、基準日及びスライド額協議開始日を定め、請求日から 7 日以内に受注者に通知する。(様式2)
ただし、請求日から 7 日以内にスライド額協議開始日の具体的な日を定めることができない場合、発注者は受注者の意見を聴いたうえで、様式2の「スライド額協議開始日」を「別途通知する」と記載することができる。
4 出来高の確認
(1) 基準日における残工事量を算出するため、発注者は出来形数量の確認を行う。
出来形数量の確認は、総括監督員又は発注課所の長が所属職員のうちから指定した職員が受注者作成の資料及び現場確認に基づき行うものとする。
(2) 出来形数量の確認は、数量総括xxに対応して行う。
(3) 現場搬入材料については、認定したものは出来形数量として取り扱う。また、下記の材料等についても出来形数量として取り扱うものとする。
ア 工場製作品については、工場での確認又はミルシート等で在庫確保が証明できる材料は、出来形数量として取り扱う。
イ 基準日前に配置済みの現地据付型の建設機械及び仮設材等(架設用クレーン、仮設鋼材など)も出来形数量の対象とする。ただし、基準日以降の賃料等については、スライド対象とする。
ウ 受注者と製造者又は販売者等との契約書にて工事材料契約完了が確認でき、近隣のストックヤード等で在庫確認が可能な材料は出来形数量として取り扱う。
(4) 工事設計内訳書等で一式計上した仮設工事等についても出来形数量の対象とすることができる。
(5) 出来形数量の計上方法については、発注者側に換算数量がない場合は、受注者側の当該工事に対する構成比率により出来形数量を算出してもよい。
(6) 受注者の責めに帰すべき事由により工事が遅延していると認められる部分については、増額スライドの場合は出来形部分に含め、減額スライドの場合は、出来形部分に含めないものとする。
(7) 基準日までに変更契約を行っていないが、先行指示を行っている設計数量(基準日以降に施工する部分)については、スライドの対象とすることができる。
(8) 下請企業による施工部分についてもスライドの対象とする場合は、数量総括xxに下請企業による施工部分であることを明記する。
5 スライド額の算出
(1) スライド額は、物価指数等に基づき、次式のとおり算出する。ア 増額スライドの場合
S増=[P2-P1-(P1×1/100)] (ただし、P1<P2)
この式において、S増、P1及びP2は、それぞれ次の額を表す。 S増:増額スライド額
P1:変動前残工事代金額(請負代金額から基準日における出来形数量に相応する請負代金額を控除した額)(税込み)
P1=変動前残工事の工事価格×落札率×(1+消費税率)
P2:変動後残工事代金額(変動後(基準日)の賃金又は物価等を基礎として算出した
(P1)に相当する額)(税込み)
P2=変動後残工事の工事価格×落札率×(1+消費税率)イ 減額スライドの場合
S減=[P2-P1+(P1×1/100)] (ただし、P1>P2)この式において、S減、P1及びP2は、それぞれ次の額を表す。
S減:減額スライド額
P1:変動前残工事代金額(請負代金額から基準日における出来形数量に相応する請負代金額を控除した額)(税込み)
P1=変動前残工事の工事価格×落札率×(1+消費税率)
P2:変動後残工事代金額(変動後(基準日)の賃金又は物価等を基礎として算出した
(P1)に相当する額)(税込み)
P2=変動後残工事の工事価格×落札率×(1+消費税率)
(2) P1の算出に用いる単価は、起工時における発注者の積算単価を用いて算出する。
(3) P2は、基準日時点の残工事に係る全ての単価を基準日時点における発注者の積算単価を用いて算出する。
ただし、協議資料等に基づき、発注者及び受注者双方で合意した場合は、別途の物価指数を用いることができる。
なお、算出に用いる共通仮設費率、現場管理費率及び一般管理費等率は、基準日時点の率とする。ただし、率式は起工時の算定式を用いる。
(4) 賃金又は物価の変動による請負代金額を変更する場合のスライド額は、労務単価、材料単価、機械器具損料並びにこれらに伴う共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の変更について行われるものであり、歩掛の変更については考慮するものではない。
(5) 発注者は、協議書(様式3-1、様式4-1)により受注者にスライド額を協議する。受注者は、異議のない場合、スライド額協議開始日から 14 日以内に発注者へ承諾書(様
式5-1)を提出するものとする。
なお、スライド額協議開始日から 14 日以内に協議が整わない場合には、発注者がスライド額を決定し、受注者へ通知する。(様式3-2、様式4-2)
受注者は、速やかに承諾書(様式5-1)を発注者へ提出するものとする。
(6) 変動後残工事代金額と変動前残工事代金額の差額が変動前残工事代金額の 1/100 を超えない場合、発注者は協議書(様式4-1)により受注者にその旨を協議する。
受注者は、異議のない場合、スライド額協議開始日から 14 日以内に発注者へ承諾書(様式5-2)を提出するものとする。
(7) スライド請求を複数回行う場合におけるスライド額の算出も、上記に基づき同様に実施する。なお、その場合の基準日における請負代金額には、それまで実施又は確定したスライド額を含むものとする。
6 物価指数
(1) 発注者は、スライド額の算出に使用する発注者の積算単価の変動率を物価指数とすることを基本とする。なお、受注者の協議資料等に基づき双方で合意した場合は、別途の物価指数を用いることができるものとする。
(2) 特別調査又は見積価格の採用が必要な単価について、再調査や再見積に多大な労力又は日数を必要とする場合には、当初積算時の類似単価の変動率により算定することができ
る。
ただし、当該金額が工事費全体に占める割合が大きい場合は別途考慮する。
7 請負代金額の変更
(1) 「5 スライド額の算出」及び「6 物価指数」の記載事項に基づきスライド額を算出し、受注者と発注者間で合意後に契約変更を行うものとする。
(2) 原則として、スライド額の決定後、速やかに契約変更を行うものとする。
ただし、スライド合意後も工事内容の変更が予想される場合や基準日から履行期限までの期間が短いなど、精算変更時点にスライド変更を行う合理的な理由があり、かつ受注者の合意が得られた場合は、精算変更時点で行うことができる。
(3) スライド請求が複数回見込まれる場合は、その都度、次の請求日までに契約変更を行うことを原則とする。
(4) 発注者は、下請企業による施工部分についてもスライドの対象とした場合は、受注者が下請企業との契約金額の見直しなど、適切な対応を行っていることを確認する。
8 全体スライド及び単品スライド条項の併用
(1) 本基準よるスライドについては、契約約款第 26 条第1項から第4項までに規定する全体スライド条項に基づく請負代金額の変更を実施した後であっても請求することができるものとする。
(2) 本基準に基づき請負代金額の変更を実施した後であっても、契約約款第 26 条第5項に規定する単品スライド条項に基づく請負代金額の変更を請求することができるものとする。
9 手続きの流れ
手続きの流れについては、別紙「埼玉県建設工事標準請負契約約款第 26 条第6項スライド条項の運用手順フロー図」のとおりとする。
10 その他
この基準に定めるもののほか、スライドの取扱いに関し必要な事項は、発注者と受注者が協議して定める。
七日以内
十四日以内
二か月以上
十四日以内
スライド額協議開始日の通知
協議の申出(請求)
スライド額の協議開始
基 準 日
スライド額の確定
スライド額の承諾
14 日以内に協議が整わない場合は、発注者がスライド額を決定し、受注者に通知
工 期 末
変更契約の締結
○受注者→発注者:様式1-1を提出
○発注者→受注者:様式1-2を提出
○発注者→受注者:通知書(様式2)を提出
スライド額の増減がある場合
○発注者→受注者:協議書(様式3-1)を提出
※発注者がスライド額を決定した場合は通知書
(様式3-2)を提出スライド額の増減がない場合
○発注者→受注者:協議(様式4-1)
※発注者がスライド額を決定した場合は通知書
(様式4-2)を提出
スライド額の増減がある場合
○受注者→発注者:承諾書(様式5-1)を提出スライド額の増減がない場合
○受注者→発注者:承諾書(様式5-2)を提出
・出来形数量及び残工事量の確認日
・スライド額の算定基準日
埼玉県建設工事標準請負契約款款第 26 条第6項スライド条項の運用手順フロー図
《参考》
全体スライド、単品スライド及びインフレスライドの概要
項 目 | 全体スライド (第1~4項) | 単品スライド (第5項) | インフレスライド (第6項) | |
適用対象工事 | 工期が 12 か月を超える工事 ただし、残工期が 2 か月以上ある工事 (比較的大規模な長期工事) | すべての工事 ただし、残工期が 2 か月以上ある工事 | すべての工事 ただし、残工期が 2 か月以上ある工事 | |
条項の趣旨 | 比較的緩やかな価格水準の変動に対応する措置 | 特定の資材価格の急激な変動に対応する措置 | 急激な価格水準の変動に対応する措置 | |
請負額変更の方法 | 対 象 | 請負契約締結の日から 12 か月経過後の残工事量に対する資材、労務単 価等 | 部分払を行った出来高部分を除く 特定の資材(鋼材類、燃料油類等) | 基準日以降の残工事量に対する資材、労務単価等 |
受注者の負担 | 残工事費の1.5% | 対象工事費の1.0% (ただし、全体スライド又はインフレスライドと併用の場合、全体スライド又はインフレスライド適用期間における負担はなし) | 残工事費の1.0% (30 条「天災不可抗力条項」に準拠し、建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう定められた「1%」を採用。単品スライドと同様の考え) | |
再スライド | 可能 (全体スライド又はインフレスライド適用後、12 か月経過後に適用可能) | なし (部分払を行った出来高部分を除いた工期内全ての特定資材が対象のため、再スライドの必要がない) | 可能 |