Lecture on Contract Lecture on Contract
目次(下枠の
雇用
をクリックすると,この目次に戻る)
◼ 第1節 雇用契約の意義と性質
◼ わが国の雇用形態の現状
◼ 雇用契約の意義と適用範囲
◼ 雇用契約の性質
◼ 第2節 雇用契約の効力
◼ 労働者の労務提供義務
◼ 使用者の報酬支払い義務
◼ 雇用契約上の権利の移転制限
◼ 第3節 雇用契約の終了
◼ 雇用期間の定め
◼ 雇用契約の解約告知
◼ 雇用期間の更新
◼ 雇用契約の解除とその制限
◼ 第4節 労働契約法
◼ 労働契約法の目的
◼ 労働契約法総論
◼ 労働契約の成立及び変更
◼ 成立
◼ 変更
◼ 労働契約の継続及び終了
◼ 期間の定めのある労働契約
◼ 無期労働契約への転換 図1 図2
◼ 雇止めに関する法理
◼ 参考文献
2014/12/8
Lecture on Contract
2
雇用
使用者(雇主)
労働者(被用者)
和解
和解当事者
和解当事者
典型契約の当事者の呼び方
贈与
請負
贈与者 受贈者 注文者 請負人
売買
委任
売主 買主 委任者 受任者
交換
寄託
交換当事者 交換当事者 寄託者 受寄者
消費貸借,使用貸借
組合
貸主 借主 組合員 組合員
賃貸借
賃貸人 賃借人
終身定期金
終身定期金債権者 終身定期金債務者
2014/12/8
Lecture on Contract
4
わが国の雇用形態の現状
→労働契約法の目的
期間の定めの
xx雇用
ない労働契約
(無期労働契約)
フルタイム労働
雇用形態
パートタイマーアルバイト
非xx雇用
期間の定めのある労働契約
(有期労働契約)
期間の定めのない労働契約
(無期労働契約)
期間工
契約社員
派遣労働者
2014/12/8
Lecture on Contract
6
契約法1講義
労務提供契約(その1)
明治学院大学法学部教授
xxx x
2014/12/8
Lecture on Contract
1
契約各論(典型契約)
無償
財産権移転
返還不要
有償
返還必要
1.贈与
2.売買
3.交換
4.消費貸借
契約各論
無償
5.使用貸借
物の利用
有償
6.賃貸借
典型契約
一般
財産権非移転
特別
(専門家)
役務の提供
事業
紛争の解決
7.雇用
8.請負
9.委任
10.寄託
11.組合
12.終身定期金
13.和解
2014/9/23
Lecture on Contracts, 2014
3
役務提供契約の比較→体系図
種類
雇用
内容
使用者の支配の下で,時間決めで労務を提 供する。
独立して,仕事を完成する。
独立して,事務を処理する。
物を一定期間預かり,その後返還する。
債務
手段債務
請負
委任寄託
結果債務
手段債務
手段債務
2014/12/8
Lecture on Contract
5
雇用契約の性質(1/2)
◼ 第623条(雇用)
◼ 雇用は,当事者の一方〔労働者〕が相手方〔使用者〕に対して労働に従事すること を約し,
◼ 相手方がこれに対してその報酬
〔賃金〕を与えることを約することによって,
◼ その効力を生ずる。
◼ 諾成契約→第6条(労働契約の成立)
◼ 労働契約法 第4条
◼ ②〔書面確認〕労働者及び使用者は,労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)に ついて,できる限り書面により確認するものとする。
◼ 有償契約,双務契約
◼ 労働基準法 第11条
◼ この法律で賃金とは,賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
2014/12/8
Lecture on Contract
8
第2節 雇用契約の効力
1. 労働者の義務は何か?
2. 使用者の義務は何か?
3. 報酬が後払いとされている理由は何か?
4. 使用者の権利の譲渡や労働者の地位を第三者に移転することが制限されているのはなぜか?
2014/12/8
Lecture on Contract
10
報酬後払いの原則
◼ 第624条(報酬の支払時期)
◼ ①労働者は,その約した労働を終わった後でなければ,報酬を請求することができない。
◼ ②期間によって定めた報酬は,その期間を経過した後に,請求することができる。
◼ 第633条(請負の報酬の支払時期)
◼ 報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,支払わなければならない。
◼ ただし,物の引渡しを要しないときは,第 624条第1項〔報酬の支払時期・労務の提供の後〕の規定を準用する。
◼ 第648条(受任者の報酬)
◼ ②受任者は,報酬を受けるべき場合には,委任事務を履行した後でなければ,これを請求することができない。
◼ ただし,期間によって報酬を定めたときは,第624条第2項〔報酬の支払時期・期間経過後〕の規定を準用する。
◼ 第665条(寄託での委任の規定の準用)
◼ 第646条から第650条まで(同条第3項を除く。)の規定は,寄託について準用する。
2014/12/8
Lecture on Contract
12
雇用契約の意義と適用範囲
◼ 第623条(雇用)
◼ 雇用は,当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを 約し,
◼ 相手方がこれに 対してその報酬 を与えることを約することによって,
◼ その効力を生ずる。
◼ 労働契約法
◼ 第6条(労働契約の成立)
◼ 労働契約は,労働者が使用者に使用されて労働し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,労働者及び使用者が合意することによって成立する。
◼ 第22条(適用除外)〔旧20条〕
◼ ①この法律は,国家公務員及び地方公務員については,適用しない。→労働基準法112条(適用)
◼ ②この法律は,使用者が同居の親族のみを使用する場合の労働契約については,適用しない。
◼ 労働基準法
◼ 第106条(適用除外)
◼ この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。
2014/12/8
Lecture on Contract
7
雇用契約の性質(2/2)
◼ 役務提供型契約の典型
◼ 報酬の後払い(民法624条が他の役務提供契約で準用されている)
◼ 第633条(請負の報酬の支払時期)
◆報酬は,仕事の目的物の引渡しと同時に,支払わなければならない。ただし,物の引渡しを要しないときは,第624条第1項〔報酬の支払時期・労務の提供の後〕の規定を準用する。
◼ 第648条(受任者の報酬)
◆②受任者は,報酬を受けるべき場合には,委任事務を履行した後でなければ,これを請求すること ができない。ただし,期間によって報酬を定めたときは,第624条第2項〔報酬の支払時期・期間経過後〕の規定を準用する。
◼ 第665条(寄託における委任の規定の準用)
◆第646条から第650条まで(同条第3項を除く。)の規定は,寄託について準用する。
◼ 継続的契約(賃貸借に類似し,一部は賃貸借の規定が準用されている)
◼ 期間の定めのある契約の解除(民法626条, 628条)
◼ 期間の定めのない契約の解約の申し入れ(民法627条)
◼ 解除の将来効(民法 630条による民法620条の準用)
◼ 役務提供契約は,「人手を借りる」というように,役務の「賃貸借」と考えられてきた。
◼ →労働契約の原則
2014/12/8
Lecture on Contract
9
雇用契約の効力
労働者の義務
◼ 労務提供義務
◼ 労働者は,給付義務として,労務提供義務を負う。
◼ 付随義務
◼ 解釈上,就業規則を遵守する義務,職務上知り得た事項の守秘義務,退職後の競業避止義務の存在が認められている。
◼ 違反の効果と制限
◼ 労働者が上記の義務に違反する場合,使用者は,就業規則に従い,解雇を含む各種の懲戒権を行使することができる。
◼ ただし,労働契約法3条5項の原則に基づく,同法15条,16条によって,それぞれ,懲戒・解雇は,厳格に制限されている。
使用者の義務
◼ 報酬支払義務
◼ 民法624条で後払いの原則が規定されている。
◼ 安全配慮義務
◼ 最高裁の判決(最三判昭 50・2・25(陸上自衛隊事 件)等)を通じて確立した法理であり,労働契約法5条で明文化されている。
◼ 労働災害に関する無過失責任
◼ 労働基準法75条~労働基準法88条で規定されている。
2014/12/8
Lecture on Contract
11
第3節 雇用契約の終了
1. 労働契約の期間についてはどのような制限があるか?
2. 雇用契約はどのような場合に更新されるか?
3. 労働契約はどのような場合に解除できるか?
4. 解除にはどのような効力があるか?
5. 使用者が破産した場合には,労働契約はどうなるか?
2014/12/8
Lecture on Contract
14
期間の定めのない雇用契約の解約告知
◼ 第627条(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
◼ ①当事者が雇用の期間を定めな
かったときは,各当事者は,いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において,雇用は,解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
◼ ②期間によって報酬を定めた場合には,解約の申入れは,次期以後についてすることができる。ただし,その解約の申入れは,当期の前半にしなければならない。
◼ ③6箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には,前項の解約の申入れは,3箇月前にしなければならない。
◼ 労働基準法 第20条(解雇の予告)
◼ ①使用者は,労働者を解雇 しようとする場合においては,少くとも30日前にその予告をしなければならない。
◼ 30日前に予告をしない使用者は,30日分以上の平均賃
金を支払わなければならない。
◼ 但し,天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合 又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては,この限りでない。
2014/12/8
Lecture on Contract
16
雇用の更新の推定
◼ 第629条(雇用の更新の推定等)
◼ ①雇用の期間が満了した後労働者が引き続きその労働に従事する場 合において,使用者がこれを知りながら異議を述べないときは,従前の雇用と同一の条件で更に雇用をしたものと推定する。
◼ この場合において,各当事者は,第 627条〔期間の定めのない雇用 の解約の申入れ〕の規定により解約の申入れをすることができる。
◼ ②従前の雇用について当事者が担保を供していたときは,その担保は,期間の満了によって消滅する。ただし,身元保証金については,この限 りでない。
◼ →労働契約法第19条(更新のみなし規 定)
◼ 第619条(賃貸借の更新の推定等)
◼ ①賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において,賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは,従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。
◼ この場合において,各当事者は,第 617条〔期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ〕の規定により解約の申入れをすることができる。
◼ ②従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは,その担保は,期間の満了によって消滅する。ただし,敷金については,この限りでない。
2014/12/8
Lecture on Contract
18
使用者の権利の譲渡制限
◼ 第625条(使用者の権利の譲渡の制限等)
◼ ①使用者は,労働者の承諾を得なければ,その権利を第三者に譲り渡すことができない。
◼ ②労働者は,使用者の承諾を得なければ,自己に代わって第三者を労働に従事させることができない。
◼ ③労働者が前項の規定に違反して第三者を労働に従事させたときは,使用者は,契約の解除をすることができる。
◼ 債権の譲渡制限
◼ 民法466条1項の例外
◼ 労務提供義務の一身専属性
◼ 役務提供契約を労務の賃貸借とする考え方
◼ 「人手を借りている」,「大切な人をお預かりしている」などの表現がある。
◼ 無断譲渡は,賃貸借の無断譲渡となり,解除ができることになる(民法612条)。
2014/12/8
Lecture on Contract
13
期間の定めのある雇用契約の解除
◼ 第626条(期間の定めのある雇用の解除)→特別法による 制限
◼ ①雇用の期間が5年を超え,又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは,当事者の一方は,5年を経過した後,い つでも契約の解除をすることができる。
◼ ただし,この期間は,商工業の見習を目的とする雇用については,10年とする。
◼ ②前項の規定により契約の解除をしようとするときは,3箇月前にその予告をしなければならない。
◼ 労働基準法 第14条(契約期間等)
◼ ①労働契約は,期間の定めのないものを除き,一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは,3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては,5年)を超える期間について締結してはならない。
◼ 労働契約法 第17条(契約期間中の解雇等)→民法628条の反対解釈の明文化
◼ 使用者は,期間の定めのある労働契約
(以下この章において「有期労働契約」という。)について,やむを得ない事由がある 場合でなければ,その契約期間が満了するまでの間において,労働者を解雇することができない。〔解雇する場合の根拠規定は民法628条〕
2014/12/8
Lecture on Contract
15
解雇事由
→雇止めの法理1,法理2
◼ 第628条(やむを得ない事由による雇用の解除)
◼ 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても,やむを得ない事由があるときは,各当事者は,直ちに契約の解除をすることができる。
◼ この場合において,その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは,相手方に対して損害賠償の責任を負う。
◼ 民法628条の反対解釈の明文化→労働契約法第17条。
◼ 労働契約法 第16条(解雇)
◼ 解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無 効とする。
◼ 最二判昭50・4・25(日本食塩製造事件)
◼ 使用者の解雇権の行使も,そ れが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効になると解するのが相当である。
2014/12/8
Lecture on Contract
17
使用者の破産
◼ 第631条(使用者についての破産手続の開始による解約の申入れ)
◼ 使用者が破産手続開始の決定を受けた場合には,雇用に期間の定めがあるときであっても,労働者又は破産管財人は,第627 条〔期間の定めのない雇用の解約の申入れ〕の規定により解約の申入れをすることができる。
◼ この場合において,各当事者は,相手方に対し,解約によって生じた損害の賠償を請求することができない。
◼ 破産法 第55条(継続的給付を目的とする双務契約)
◼ ①破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は,破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては,破産手続開始後は,その義務の履行を拒むことができない。
◼ ②前項の双務契約の相手方が破産手続開始の申立て後破産手続開始前にした給付に係る請求権(一定期間ごとに債権額を算定すべき継続的給付については,申立ての日の属する期間内の給付に係る請求権を含 む。)は,財団債権とする。
◼ ③前二項の規定は,労働契約には,適用しない。
2014/12/8
Lecture on Contract
20
労働契約法の目的
→わが国の雇用形態の現状
◼ 第1条(目的)
◼ この法律は,労働者及び使 用者の自主的な交渉の下で,労働契約が合意により成立 し,又は変更されるという合 意の原則
◼ その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより,
◼ 合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて,労働者の保護を図りつつ,個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
◼ 合意の原則
◼ 法第3条第1項の労使対等の原則,法第6条の労働契約の成立につい ての合意の原則及び法第8条の労働契約の変更についての合意の原則が含まれる。
◼ 労働契約に関する基本的事項
◼ 法第3条第1項以外の法第1章の労働契約の原則等を定める規定,法 第6条及び第8条以外の法第2章の就業規則と労働契約との法的関係等を定める規定,法第3章の出向,懲戒及び解雇に関する権利濫用禁 止規定及び法第4章の期間の定めのある労働契約に関する規定が含まれる。→解雇制限(第17条)
2014/12/8
Lecture on Contract
22
労働契約の原則
→雇用契約の性質
◼ 第3条(労働契約の原則)
◼ ①〔労使対等の原則〕
◼ 労働契約は,労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し,又は変更すべきものとする。
◼ ②〔均衡考慮の原則〕
◼ 労働契約は,労働者及び使用者が,就業の実態に応じて,均衡を考 慮しつつ締結し,又は変更すべきものとする。
◼ ③〔仕事と生活の調和への配慮の原則〕
◼ 労働契約は,労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し,又は変更すべきものとする。
◼ ④〔xxxxの原則〕
◼ 労働者及び使用者は,労働契約を遵守するとともに,xxに従い誠実に,権利を行使し,及び義務を履行しなければならない。
◼ ⑤〔権利濫用の禁止の原則〕
◼ 労働者及び使用者は,労働契約に基づく権利の行使に当たっては,それを濫用することがあってはならない。
2014/12/8
Lecture on Contract
24
雇用の解除の効力(将来効)
◼ 第630条(雇用の解除の効力)
◼ 第620条〔賃貸借の解除の効力の不遡及〕の規定は,雇用について準用する。
◆賃貸借の規定が準用されているのはなぜか?
◆継続的契約の典型だから。
◆労務提供契約は,労務の賃貸借と考えられていたから(「人手を借りる」)。
◼ 第620条(賃貸借の解除の効力)
◼ 賃貸借の解除をした場合には,その解除は,将来に向かってのみその効力を生ずる。
◼ この場合において,当事者の一方に過失があったときは,その者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2014/12/8
Lecture on Contract
19
労働契約法
(2008(平成20)年施行,2012(平成24)年改正)
労働契約法総論
1. 労働契約法の目的は何か?
2. 労働契約法の原則とは何か?
3. 安全配慮義務はどのように規定されているか?
2014/12/8
Lecture on Contract
21
労働契約法における定義
◼ 第2条(定義)
◼ ①この法律において「労働者」とは,使用者に使用されて労働し,賃金を支払われる者をいう(労働基準法第9条)。
◼ ②この法律において「使用者」とは,その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう(労働基準法第10条)。
◼ 労働者の範囲の拡張
◼ 民法第632条の「請負」,同法第643条の「委任」 又は非典型契約で労務を提供する者であっても,契約形式にとらわれず,実態として使用従属関
係が認められる場合には,法第2条第1項の
「労働者」に該当する。
2014/12/8
Lecture on Contract
23
安全配慮義務
◼ 第5条(労働者の安全への配慮)
◼ 使用者は,労 働契約に伴い,労働者がその生命,身体等 の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をするものとする。
◼ 最三判昭50・2・25民集29巻2号143頁
(陸上自衛隊事件)
◼ 陸上自衛隊員が,自衛隊内の車両整備工場で車両整備中,後退してきたトラックにひかれて死亡した事例で,国の公務員に対する安全配慮義務を認定した。
◼ 最三判昭59・4・10民集38巻6号557頁
(xx事件)
◼ 宿直勤務中の従業員が強盗に殺害された事例で,会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされた。
2014/12/8
Lecture on Contract
26
労使合意による労働契約の成立
◼ 第6条(労働契約の成立)
◼ 労働契約は,労働者が使用者に使用されて労働し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,労働者及び使用者が合意することに よって成立する。
◼ 民法 第623条(雇用)
◼ 雇用は,当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し,相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって,その効力を生ずる。
2014/12/8
Lecture on Contract
28
労使合意
(§3)
労使合意と就業規則との関係
→消費者契約法10条の構造
就業規則
なし(§6)
就業規則
あり(§7)
就業規則法令違反
(§13)
就業規則
合理性なし(§7)
就業規則
周知せず
(§7)
就規と異
なる労使合意(§7)
労使合意就規基準到達(§12)
労使合意優先
就業規則優先
2014/12/8
Lecture on Contract
30
労働契約の内容の理解の促進
◼ 第4条(労働契約の内容の理解の促進)
◼ ①〔労働者の理解の促進〕使用者は,労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について,労働者の理解を深めるように するものとする。
◼ ②〔書面確認〕労働者及び使用者は,労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について,できる限り書面により確認するものとする。
◼ 労働基準法第15条(労働条件の明示)
◼ 使用者は,労働契約の締結に際し,労働者に対して賃金,労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
◼ この場合において,賃金 及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については,厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2014/12/8
Lecture on Contract
25
労働契約法
労働契約の成立及び変更
1. 雇用契約と労働契約とはどの点が異なるか?
2. 用語法で異なる点はあるか?
3. 適用除外ついてはどうか?
4. 契約を制限する仕組みについてはどうか?
2014/12/8
Lecture on Contract
27
就業規則による労働契約の成立
◼ 第7条
◼ 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において,使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた 場合には,
◼ 労働契約の内容は,その就業規則で定める労働条件によるものとする。
◼ ただし,労働契約において,労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については,第12条に該当する場合 を除き,この限りでない。
◼ 最大判昭43・12・25民集22巻13号3459頁(秋北バス事件)
◼ 就業規則の変更により,定年制度を改正してxx以上の職の者の定年を55歳に定めたため,新たに定年制度の対象となった労働者 が解雇された事例
◼ 新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが,
◼ 当該規則条項が合理的なものである限り、 個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきとし,
◼ 不利益を受ける労働者に対しても変更後の就業規則の適用を認めた。
2014/12/8
Lecture on Contract
29
労使合意
(§3)
労使合意と就業規則との関係
就業規則が優先する場合
就業規則
なし(§6)
就業規則
あり(§7)
就規と異
なる労使合意(§7)
労使合意就規基準到達(§12)
労使合意優先
就業規則優先
2014/12/8
Lecture on Contract
32
労働条件を変更する就業規則の
合理性の判断基準
◼ 最三判昭63・2・16(大曲市農業協同組合事 件)
◼ 就業規則の合理性について,就業規則の作成又は変更が,その必要性及び内容の両面からみて,それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても,なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を 有するものであることをいうとし,新規則の合理性を認めて,不利益を受ける労働者に対しても拘束力を生ずるものした。
◼ 最二判平9・2・28(第四銀行事件)
◼ 就業規則により定年を延長する代わりに給与が減額された事例で,秋北バス事件,大曲市農協事件の最高裁判決の考え方を踏襲し,さらに合理性の有無の判断に当たっての考慮要素を具体的に列 挙し,その考慮要素に照らした上で,就業規則の変更は合理的であるとした。
◼ 最一判平12・9・7(み ちのく銀行事件)
◼ 労組(従業員の73%が加入)の同意を得て行われた賃金制度が見 直され,特定の労働者が管理職の肩書きを 失い,賃金を減額された事例で,第四銀行事件までの最高裁判決の考え方を踏襲し,就業規則の変更は合理的なものということはできず,就業規則等変更のうち賃金減額の効果を有する部分は,不利益を受ける労働者らにその効力を及ぼすことができないとした。
2014/12/8
Lecture on Contract
34
労使合意の効力要件→ 図
(就業規則の水準以上であること)
◼ 第12条(就業規則違反の労働契約)
◼ 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は,その部分については,無効とする。
◼ この場合において,無効となった部分は,就業規則で定める基準による。
◼ 消費者契約法 第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
◼ 民法(明治29年法律第89号) ,商法
(明治32年法律第48号)その他の法律の
◼ 公の秩序に関しない規定〔任意規定〕の適用による場合に比し,消費者の 権利を制限し,又は消費者の義務を 加重する消費者契約の条項であって,
◼ 民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。
2014/12/8
Lecture on Contract
36
労使合意
(§3)
労使合意と就業規則との関係
労使合意が優先する場合
就業規則
なし(§6)
就業規則
あり(§7)
就業規則
法令違反
(§13)
就業規則
合理性なし(§7)
就業規則
周知せず
(§7)
就規と異
なる労使合意(§7)
労使合意就規基準到達(§12)
労使合意優先
2014/12/8
Lecture on Contract
31
労働契約の変更→判例1,判例2
◼ 第8条(労働契約の内容の変更)
◼ 労働者及び使用者は,その合意により,労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
◼ 第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)
◼ 使用者は,労働者と合 意することなく,就業規 則を変更することにより,労働者の不利益に労働契約の内容である労働 条件を変更することはできない。ただし,次条の 場合は,この限りでない。
◼ 第10条
◼ 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において,変更後の就業規則を労働者に周知させ,かつ,就業規則の変更が, 労働者の受ける不利益の程度,労働条件の 変更の必要性,変更後の就業規則の内容の相当性,労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは,
◼ 労働契約の内容である労働条件は,当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。
◼ ただし,労働契約において,労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については,
第12条に該当する場合を除き,この限りでない。
2014/12/8
Lecture on Contract
33
就業規則変更の手続き
◼ 第11条(就業規則の変更に係る手 続)
◼ 就業規則の変更
の手続に関しては,労働基準法(昭和 22年法律第49号)第89条 及び第90条の定めるところ による。
◼ (1)労働基準法第89条により,常時10人以上の労働者を使用する使用者は,変更後の就業規則を所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない。
◼ (2)労働基準法第90条により,就業規則の変更について過半数労働組合等の意見を聴かなければならず,(1)の届出の際に,その意見を記した書面を添付しなければならない。
2014/12/8
Lecture on Contract
35
就業規則
法令違反
(§13)
就業規則
合理性なし(§7)
就業規則
周知せず
(§7)
労働契約法
労働契約の継続及び終了
1. 出向については,どのような制限があるか?
2. 懲戒・解雇については,どのような制限があるか?
3. 解雇はどのような場合になしうるか?
2014/12/8
Lecture on Contract
38
懲戒 ◼ 第15条(懲戒) ◼ 第3条(労働契約 ◼ 使用者が労働者を懲戒するこ の原則) とができる場合において, ◼ ⑤〔権利濫用の ◼ 当該懲戒が,当該懲戒に係る 禁止の原則〕労労働者の行為の性質及び態 働者及び使用者 様その他の事情に照らして, は,労働契約に客観的に合理的な理由を欠き, 基づく権利の行社会通念上相当であると認め 使に当たっては,られない場合は, それを濫用する ◼ その権利を濫用したものとし ことがあってはな て,当該懲戒は,無効とする。 らない。 | ||
2014/12/8 Lecture on Contract | 40 |
労働契約法 期間の定めのある労働契約 1. 期間の定めのある契約については,どのような問題があるのか? 2. 契約期間中の解雇,更新拒絶にはどのような制限があるか? 3. どの程度契約が更新されると,期間の定めのない契約へと変更できるのか? | ||
2014/12/8 Lecture on Contract | 42 |
就業規則の効力要件
(法令等の違反がないこと)
◼ 第13条(法令及び労働協約 ◼ 第90条(公序良俗)
と就業規則との関係)
◼ 就業規則が法令〔労働基準法等〕又は労働協約〔労働組合法第14条~18条,特に第
◼ 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は,無
効とする。
◼ 当該反する部分については,第7条,第10条及び前条の規定は,
◼ 当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については,適用しない。
16条参照〕に反する場合には, ◼ 第91条(任意規定と異
なる意思表示)
◼ 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは,その意思に従う。
2014/12/8
Lecture on Contract
37
出向
◼ 第14条(出向)
◼ 使用者が労働 者に出向を命ずることができる 場合において,当該出向の命 令が,その必要性,対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして,そ の権利を濫用したものと認められる場合には,当該命令は,無効とする。
◼ 最二判昭61・7・14(東亜ペイント事件)
◼ 神戸営業所から名古屋営業所への転勤拒否を理
由とする懲戒解雇の効力が争われた事案において,業務上の必要性は優に存し、転勤が労働者に与え る家庭生活上の不利益も「転勤に伴い通常甘受す べき程度のもの」であるとの判断から権利濫用の成立を否定し、原審に差し戻した事例
◼ 「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない 場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受 すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限り」 権利濫用は成立せず、また業務上の必要性については、「企業の合理的運営に寄与する点」が認めら れれば足りる。
2014/12/8
Lecture on Contract
39
◼ 第16条(解雇)
◼ 解雇は,客観的に合理的
な理由を欠き,社会通念上
相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。
解雇
→解雇事由
◼ 最二判昭50・4・25(日本食塩製造事件)
◼ ユニオン・ショップ協定に基づき労働者を解雇した事例(解雇無効)。
◼ 使用者の解雇権の行使も,それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には,権利の濫用として無効になると解するのが相当である。
2014/12/8
Lecture on Contract
41
無期労働契約への転換
→xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxxxxxxx/xxxxx/xxxxx_xxxxxx/xxxxxxxxxxx/xxxxxxx/xxxxxx/xx/x000000‐01.pdf
5年
1年 1年 1年 1年 1年
締 更 締 更 締 更 締 更 締 更結 x x x x x x x x 新
1年
申 転込 換み
無期労働契約
1年
締 更結 新
1年
申 転込 換み
無期労働契約
5年
3年
更新
3年
申込み
無期労働契約
締結
転換
2014/12/8
Lecture on Contract
44
通算契約期間の計算(クーリング)
カウントせず
5年
1年 1年 1年 1年 1年 1年 1年 1年 1年
締 更 締 更 締 更 締 更 締 更 締 更 締 更 締 更 申 xx x x x x x x x x x x x x x x 新 込 換
み
6ヶ月以上の空白期間
2014/12/8
Lecture on Contract
46
参考図書
◼ 現行民法の立法理由
x xxxx『民法修正案(前三編)の理由書』有斐閣(1987)
◼ 法務大臣官房司法法政調査部
『法典調査会民法議事速記録3』商事法務研究会(1984)
◼ 教科書
◼ xxx『債権各論中巻一 (民法講義Ⅴ2)』岩波書店(1957)
◼ xxxx『契約法講義』〔第2版〕信山社(2005)
◼ xxxx『契約法』日本評論社
(2007)
◼ コンメンタール
◼ xx・xx『コンメンタール民法
-総則・物権・債権-』〔第2版〕日本評論社(2008)
◼ xxxx・xxxx『新・コンメンタール民法(財産法)』日本評論社(2012)
◼ 債権法改正
◼ 民法(債権法)改正検討委員会『詳解・債権法改正の基本方針Ⅴ-各種の契約(2)』商事法務(2010)
◼ 厚生労働省ホームページ
(xxxx://xxx.xxxx.xx.xx)
◼ 労働契約法のあらまし
◼ 労働契約法改正のポイント
2014/12/8
Lecture on Contract
48
契約期間中の解雇
短期雇用の継続的更新の制限
◼ 第17条(契約期間中の解雇等)
◼ ①〔契約期間中の解雇〕使用者は,期間の定めのある労働契約(以下この章に おいて「有期労働契約」という。)について,やむを得ない事由がある場合でな ければ,その契約期間が満了するまでの間において,労働者を解雇することができない。(解雇する場合の根拠規定は民法628条)
◼ ②〔契約期間中の配慮〕使用者は,有期 労働契約について,その有期労働契約 により労働者を使用する目的に照らして,必要以上に短い期間を定めることにより,その有期労働契約を反復して更新する
ことのないよう配慮しなければならない。
◼ 第628条(やむを得ない事由による雇用の解 除)→労働契約法第17条(反
対解釈)
◼ 当事者が雇用の期間を定 めた場合であっても,やむ を得ない事由があるときは,各当事者は,直ちに契約
の解除をすることができる。
◼ この場合において,その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは,相手方に対して損害賠償の責任を負う。
2014/12/8
Lecture on Contract
43
無期労働契約への転換
(アニメーション)→期間の定めのある雇用契約
5年
1年 1年 1年 1年 1年
締 更 締 更 締 更 締 更 締 更結 x x x x x x x x 新
1年
申 転込 換み
無期労働契約
1年
締 更結 新
5年
1年 無期労働契約
申 転込 換み
3年
更新
3年
申込み
無期労働契約
締結
転換
2014/12/8
Lecture on Contract
45
期間の定めがあることによる
不合理な労働条件の禁止
◼ 第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
〔新設〕
◼ 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が,期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては,
◼ 当該労働条件の相違は,労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度
(以下この条において「職務の内容」という。),当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事 情を考慮して,不合理と認められるものであってはならない。
2014/12/8
Lecture on Contract
47