Contract
第1 労働者供給事業の意義等
1 労働者供給事業の意義
(1) 労働者供給
イ 労働者供給の意義
労働者供給とは、「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和 60
年法律第 88 号。以下「労働者派遣法」という。)第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないもの」をいう(職業安定法(以下「法」という。)第4条第8項)。
したがって、労働者供給における供給元、供給先及び供給労働者の三者の関係は、次のいずれかとなる(第1図参照)。
(イ)① 供給元と供給される労働者との間に支配従属関係(雇用関係を除く。)があり、
② 供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に労働者を供給し、
③ 供給先は供給契約に基づき労働者を自らの指揮命令(雇用関係を含む。)の下に労働に従事させる。
(ロ)① 供給元と供給される労働者との間に雇用関係があり、
② 供給元と供給先との間において締結された供給契約に基づき供給元が供給先に労働者を供給し、
③ 供給先は供給契約に基づき労働者を雇用関係の下に労働に従事させる。ロ 労働者供給の意義における「労働者」及び「供給契約」の意義
(イ) 「労働者」とは、対価を得て、一定の労働条件の下に雇用主との間に労働力を提供する関係(使用従属関係)に立つ者、又は立とうとする者をいう。
(ロ) 「供給契約」とは、契約の形式をいうものではなく、実体によって判断される。すなわち、民法上の請負契約、さらに、具体的には商法の運送契約等の形式をもって行われる場合も含むものであって、イの(イ)又は(ロ)の関係を生じさせる契約を総称するものである。この場合の契約は、当事者に合意があれば足り、文書によると口頭によるとを問わない。
ハ 労働者派遣との関係
(イ) 労働者供給と労働者派遣の区分は次により行うこととする(第1図参照)。
○労働者派遣
第1図 労働者派遣と労働者供給との差異
派遣先
派遣元
労働者派遣契 約
雇用関係
指揮命令
労働者
関係
1
○労働者供給
供給先
供給元
供給先
供給元
支配従属関係
労働者
(雇用関係を除く。)
雇用関係・指揮命令関係
雇用関係 雇用関係
労働者
① 供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合のうち、供給元と労働者との間に雇用関係がないものについては、すべて労働者供給に該当する。
当該判断は、具体的には、労働保険・社会保険の適用、給与所得の確認等に基づき行う。
② ①の場合とは異なり、供給元と労働者との間に雇用契約関係がある場合であっても供給先に労働者を雇用させることを約して行われるものについては、労働者派遣には該当せず、労働者供給となる(労働者派遣法第2条第1号)。
ただし、供給元と労働者との間に雇用契約関係があり、当該雇用関係の下に、他人の指揮命令を受けて労働に従事させる場合において、労働者が自由な意思に基づいて結果として供給先と直接雇用契約を締結するようなケースについては、前もって供給元が供給先に労働者を雇用させる旨の契約があった訳ではないため、労働者が供給先に雇用されるまでの間は労働者派遣に該当することとなり、労働者派遣法(第3章第4節の規定を除く。)による規制の対象となる。
③ ②における「供給先に労働者を雇用させることを約して行われるもの」の判断については、契約書等において供給元、供給先間で労働者を供給先に雇用させる旨の意思の合致が客観的に認められる場合はその旨判断するが、それ以外の場合は、次のような基準に従い判断するものとすること。
(a) 労働者派遣が労働者派遣法の定める枠組みに従って行われる場合は、原則として、派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものとは判断しないこと。
(b) 派遣元が企業としての人的物的な実体(独立性)を有しない個人又はグループであり、派遣元自体も当該派遣元の労働者とともに派遣先の組織に組み込まれてその一部と化している場合、派遣元は企業としての人的物的な実体を有するが、当該労働者派遣の実態は、派遣先の労働者募集賃金支払の代行となっている場合その他これに準ずるような場合については、例外的に派遣先に労働者を雇用させることを約して行われるものと判断することがあること。
(ロ) いわゆる「二重派遣」は、派遣先が派遣元事業主から労働者派遣を受けた労働者をさらに業として派遣することをいうが、この場合、派遣先は当該派遣労働者を雇用している訳ではないため、労働者派遣を業として行うものとはいえない。すなわち「二重派遣」は、形態と
しては労働者供給を業として行うものとして、法第 44 条の規定により禁止される。
これについては、派遣労働者を雇用する者と、当該派遣労働者を直接指揮命令する者との間のみにおいて労働者派遣契約(詳しくは「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の第6参照)が締結されている場合は、「二重派遣」に該当しないものである。したがって、労働者派遣契約を単に仲介する者が存する場合は、通常「二重派遣」に該当するものとは判断できないものであること(「労働者派遣事業関係業務取扱要領」の第1参照)。
ニ 労働者供給事業と請負により行われる事業との関係
(イ) 労働者供給は、労働者を「他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」であり、この有無により、労働者供給を業として行う労働者供給事業と請負により行われる事業とが区分される(第2図参照)。
第2図 労働者供給事業と請負により行われる事業との差異
○労働者供給事業
供給先
供給元
供給先
供給元
供給契約 供給契約
支配従属関係
労働者
(雇用関係を除く。)
雇用関係・指揮命令関係
雇用関係 雇用関係
労働者
○請負により行われる事業
請負事業者
注文主
雇用関係
労働者
(ロ) 「他人の指揮命令を受けて労働に従事させる」ものではないとして、労働者供給事業に該当せず、請負により行われる事業に該当すると判断されるためには、職業安定法施行規則(昭和 22 年労働省令第 12 号。以下「則」という。)第4条第2項から第5項までの規定による基準をすべて満たすものでなければならない。
則第4条は、次のとおり規定している。第4条 (略)
2 労働者を提供しこれを他人の指揮命令を受けて労働に従事させる者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和 60 年法律第 88 号。以下「労働者派遣法」という。) 第2条第3号に規定する労働者派遣事業を行う者を除く。)は、たとえその契約の形式が請負契約であっても、次の各号のすべてに該当する場合を除き、法第4条第8項の規定による労働者供給事業を行う者とする。
一 作業の完成について事業主としての財政上及び法律上のすべての責任を負うものであること。
二 作業に従事する労働者を、指揮監督するものであること。
三 作業に従事する労働者に対し、使用者として法律に規定されたすべての義務を負うものであること。
四 自ら提供する機械、設備、器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)若しくはその作業に必要な材料、資材を使用し又は企画若しくは専門的な技術若しくは専門的な経験を必要とする作業を行うものであって、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
3 前項の各号のすべてに該当する場合 (労働者派遣法第2条第3号に規定する労働者派遣事業を行う場合を除く。)であっても、それが法第 44 条の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであって 、その事業の真の目的が労働力の供給にあるときは、法第4条第8項の規定による労働者供給の事業を行う者であることを免れることができない。
4 第2項の労働者を提供する者とは、それが使用者、個人、団体、法人又はその他如何なる名称形式であるとを問わない。
5 第2項の労働者の提供を受けてこれを自らの指揮命令の下に労働させる者とは、個人、団体、法人、政府機関又はその他如何なる名称であるとを問わない。
6 (略)
(ハ)則第4条の解釈
第2項
第2項柱書の規定は、労働者派遣法に基づく労働者派遣を業として行う労働者派遣事業については、本項の適用はない(「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和 61 年労働省告示第 37 号)参照。)ことを明らかにするとともに、請負により行われる事業と労働者供給事業との区分の基準を定めたものであり、基準の定め方としては、労働者を提供し、これを他人の指揮命令を受けて労働に従事させる者は、請負契約の形式により事業を行う場合であっても第1号から第4号までのすべてに該当する場合を除き労働者供給事業を行う者とするものである。
なお、第2項の労働者を提供する者とは、それが、使用者、個人、団体、法人又はその他如何なる名称形式であるとを問わないものである(則第4条第4項)。
また、第2項の労働者の提供を受けてこれを自らの指揮命令の下に労働させる者とは、個人、団体、法人又はその他如何なる名称形式であるとを問わないものである(則第4条第5項)。
① 第2項第1号
(a) 「財政上の責任を負う」とは、請け負った作業の完成に伴う諸経費(例えば事業運転資金その他の経費。)を自己の責任で調達支弁することをいう。運転資金等の調達は請負契約と無関係のものであれば必ずしも自己資金であることを要しない。また、請負契約に基づく契約金の前渡しは自己資金である。
(b) 「法律上の責任を負う」とは、請負契約の締結に伴う請負業者として民法(第 632 条、第 642 条)、商法(第 502 条、第 569 条)等の義務の履行について責任を負うことをいうものである。
(c) 以上の責任を負うものであるかどうかの判定は、単に契約上の請負業者であるとの形式のみによって判断するのではなく、その責任を負う意思能力(理解と誠意)が判定の基礎となるものであるから、その契約内容と請負業者の企業体としての資格、能力及び従来の事業実績等の状況を総合的に判断すべきものである。
② 第2項第2号
(a) 「労働者を、指揮監督する」とは、作業に従事する労働者を、請負業者が自己の責任において作業上及び身分上指揮監督することをいう。この場合、請負業者がその被用者をして指揮、監督させる場合も含むもので、作業上の指揮監督とは、仕事の割付け、技術指導、勤惰点検、出来高査定等直接作業の遂行に関連した指揮監督をいう。したがって、請負契約により注文主が請負業者に指示(依頼)を行い、その結果として注文主の意思が間接的に労働者に反映されることは差し支えないが、その注文主の指示(依頼)が実質的に労働者の作業を指揮監督する程度に強くなると請負業者が労働者を指揮監督しているとはいえないことになる。また、身分上とは、労働者の採用、解雇、給与、休日等に関する一般的労務管理をいうものである。
したがって、請負契約により注文主が請負業者に対し労働者の身分上のことについて指示(依頼)をすることをすべて否定するものでないが、注文主が労働者の身分上のことについて実質的に決定力をもつ場合は、請負業者が労働者を指揮監督しているとはいえない。
このように、労働者を指揮監督するとは、単に作業の上だけでなく、一般的な労務管理をも合わせて行っていることを要件とするものである。
③ 第2項第3号
(a) 「使用者として法律に規定されたすべての義務」とは、労働基準法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、健康保険法、労働組合法、労働関係調整法、厚生年金保険法、民法等における使用者、又は雇用主としての義務をいう。
(b) 「義務を負う者」とは、義務を負うべき立場にある者、すなわち、義務を履行しないときは義務の不履行に伴う民事上及び刑事上の責任を負うべき地位にある者をいい、必ずしも現実にこれらの義務を履行することを要求するものではないが、義務に関する理解と誠意に欠け、履行能力のないものをも、単に形式上使用者の立場にある事実のみを理由として義務を負う者とすることは妥当ではないので、この判定をする場合には、義務に関する理解と誠意並びにその履行状況、運営管理状況から総合的に判断すべきものである。
④ 第2項第4号
(a) 本号は、単に肉体労働力を提供するものではないと判断できる具体的要件としての物理的要件(自ら提供する機械、設備、機材若しくはその作業に必要な材料、資材を使用すること。)と技術的要件(企画若しくは専門的な技術若しくは経験を必要とすること)の二要件を掲げ、そのいずれか一つの要件に該当する作業を行うものであればよいものとしている。
しかも、この二要件はいずれも併立的、かつ、択一的なものである。要するに、単に肉体的な労働力を提供する作業でないためには、当該二要件のうち、いずれか一つを具備していなければならないとの意味である。
(b) 「自ら提供し、使用する」とは、機械、設備、器材又は作業に必要な材料、資材を請負者自身の責任と負担において、準備、調達しその作業に使用することをいい、所有関係や購入経路等の如何を問うものではない。したがって、その機械等が自己の所有物である場合はもちろん、注文主から借入又は購入したものでも請負契約に関係のない双務契約の上にたつ正当なものを提供使用する場合も含むものである。
(c) 「機械、設備、器材」とは、作業の稼働力となる機械、器具及びその附属設備、作業のために必要な工場、作業場等の築造物及びそれに要する器材等をいい、作業に直接必要のない労働者の宿舎、事務所等は、これに該当しない。
(d) なお、この提供度合については、該当するそれぞれの請負作業一般における通念に照らし、通常提供すべきものが作業の進捗状況に応じて随時提供使用されており、総合的にみて各目的に軽微な部分を提供するにとどまるものでない限りはよいものである。
(e) 「業務上必要な簡単な工具」とは、機械、器具等のうち主として個々の労働者が主体となり、その補助的な役割を果たすものであって、例えば、「のみ」、「xxx」、「シャベル」等のように、通常個々の労働者が所持携行し得る程度のものをいい、これらのものは当該要件における機械、器具等から除くものである。
(f) なお、「機械、設備、器材」と「簡単な工具」との区別は、当該産業における機械化の状況と作業の実情等を考慮して業界における一般通念によって個々に判断されるものである。
(g) 「専門的な技術」とは、当該作業の遂行に必要な専門的な工法上の監督技術、すなわち、通常学問的な科学知識を有する技術者によって行われる技術監督、検査等をいう。
(h) 「専門的な経験」とは、学問的に体系づけられた知識に基づくものではないが、xxの経験と熟練により習得した専門の技能を有するいわゆる職人的技能者が、作業遂行の実際面において発揮する工法上の監督的技能、経験をいう。
例えば、作業の実地指導、仕事の順序、割振、危険防止等についての指揮監督能力がこれであり、単なる労働者の統率ないしは一般的労務管理的技能、経験を意味するものではなく、また、個々の労働者の有する技能、経験をもって足りるような作業は「専門的な経験」を必要とする作業とはいえないものである。
(i) 要するに「企画若しくは専門的な技術、若しくは専門的な経験」とは、請負業者として全体的に発揮すべき企画性、技術性、経験を指すのであって、個々の労働者の有する技術又は技能等や業務自体の専門性をいうのではない。そして、当該作業が「企画若し
くは専門的な技術、若しくは専門的な経験」を必要とするかどうかの認定は、その作業が単に個々の労働者の技能の集積によって遂行できるものか、また、その請負業者が企業体として、その作業をなし得る能力を持っており、かつ、現実にその技能、経験を発揮して作業について企画し、又は指揮監督しているかどうかについて検討すべきものである。
第3項
本項の規定は、第2項各号の要件が形式的には具備されていても、それが脱法を目的として故意に偽装しているものである限り、実質的には要件を欠くものであって、労働者供給事業を行う者であるとするものであり、この規定は、第2項の労働者供給事業に該当するものの範囲を拡張するものではなく、表面合法を装って脱法しようとするものであることから、第2項の解釈を注意的にさらに明確にしたものである。
「職業安定法第 44 条の規定に違反することを免れるため、故意に偽装されたものであって、その事業の真の目的が労働力の供給にある」ものとしては、次のような例が考えられる。
① 請負契約の形式で合法化しようとするもの
この場合は第2項各号の具備状況が形式的なものであって、実質的には、具備していないことの確認に基づいて判断される。例えば第2項第4号の自ら提供すべき機械、設備、器材、若しくは材料、資材等を表面上は発注者から借用、又は譲渡、購入したような形式をとり、その使用状況からみて事実は依然発注者の管理又は所有に属しているようなごときである。
② 発注者が直用する形式によって第2項各号の要件の具備を全面的に免れようとするもの
この場合は直用していると称する者の使用者としての業務履行の状況と、請負ないし労働者供給の事実の確認に基づいて判断される。例えば二重帳簿の備付、賃金支払の方法、採用、解雇の実権の所在、手数料的性格の経費の支払等の傍証によって確認することができるものである。
第4項及び第5項
本項の規定は、それぞれ第2項の「労働者を提供する者」及び「労働者の提供を受けてこれを自らの指揮命令の下に労働させる者」の範囲を例示的に規定したものであり、第4項の使用者、個人、団体、第5項の個人、団体、法人、政府機関等は何れも単に名称の例示にすぎないものであって、要は何人に対しても適用のある旨を明らかにしたものである。
(2)労働者供給事業
イ 労働者供給事業の意義
労働者供給事業とは、労働者供給を業として行うことをいうものである。ロ 「業として行う」の意義
(イ)「業として行う」とは、一定の目的をもって同種の行為を反復継続的に遂行することをいい、
1回限りの行為であったとしても反復継続の意思をもって行えば事業性があるが、形式的に繰り返し行われたとしても、すべて受動的、偶発的行為が継続した結果であって反復継続の意思
をもって行われていなければ、事業性は認められない。
(ロ) 具体的には、一定の目的と計画に基づいて行われるか否かによって判断され、営利を目的とする場合に限らず、また、他の事業と兼業して行われるか否かを問わないものである。
(ハ) しかしながら、この判断も一般的な社会通念に則して個別のケースごとに行われるものであり、営利を目的とするか否か、事業としての独立性があるか否かが反復継続の意思の判定にとって重要な要素となる。例えば、①労働者の供給を行う旨宣伝、広告している場合、②事務所を構え労働者供給を行う旨看板を掲げている場合等については、原則として事業性ありと判断されるものであること。
2 労働者供給事業の原則禁止
(1)労働者供給事業の原則禁止の趣旨
労働者供給事業においては、労働者供給事業を行う者の一方的な意思によって、労働者の自由意思を無視して労働させる等のいわゆる強制労働の弊害や、支配従属関係を利用して本来労働者に帰属すべき賃金を労働者供給事業を行う者が自らの所得としてしまう等のいわゆる中間搾取の弊害が生じるおそれがある。このため労働者供給事業は本来労働者の基本的権利を侵害し労働の民主化を阻害するおそれが大きいものである。
したがって、憲法に定められた労働者の基本的人権を尊重しつつ、各人にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、及び産業に必要な労働力を充足し、もって職業の安定を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする法においては、法第 45 条の規定により労働組合等(第2の1の(1)参照)が厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除くほか、何人も労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならないこととしている。(法第 44 条)
(2)労働組合等の行う労働者供給事業の趣旨
法第 44 条の規定による労働者供給事業の禁止の趣旨((1)参照)とは異なり、労働組合等が労働者供給を受けようとする者に対し、組合員である労働者を無料で供給する労働者供給事業については、労働組合等が労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体であることから、労働組合等については労働者との間に身分的な支配関係や強制労働、中間搾取といった労働者保護の面からの弊害の発生する余地は少ない。
また、過去に労働者供給事業が果たしていた労働力需給調整機能を民主的な方法によって発揮できることとなり、労働者供給事業は民間部門における労働者需給調整の中で大きな役割を果たすこととなる。
さらに、労働組合等が自ら労働者供給事業を行うことにより、弊害の発生のおそれのある雇用慣習が解消され、労働者供給事業の禁止の目的の達成を促進し、違法な労働者供給事業を行う者を事実上排除することとなる効果も考えられるものである。