Contract
2022 年 9 月 28 日
各位 株式会社 三十三銀行
森岡産業株式会社との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」契約締結について
株式会社三十三銀行(頭取:xx xx)は、持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、xx産業株式会社(社長:xx xx)と「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(※)」契約を締結しましたのでお知らせいたします。
本件の取り組みにあたっては、株式会社三十三総研(社長:xx xx)がインパクト分析・特定のうえ評価書を作成し、株式会社日本格付研究所がポジティブ・インパクト金融原則との適合性を確認しました。今後も「三十三フィナンシャルグループSDGs宣言」のもと、企業活動を通じてSDGsの達成に貢献することで、持続可能な社会の実現に努めてまいります。
(※) 企業活動が「社会・経済・環境」のいずれかに与えるインパクトを包括的に分析・特定し、ポジティブインパクトが期待できる活動と、ネガティブインパクトを低減する活動を支援するもので、借入人様によるSDGs達成への貢献度合いを評価指標とし、借入人様から情報開示を受けながら当行がその過程を定期的にモニタリングするものです。
1. 融資概要
(1) | 契約日 | 2022年9月28日 |
(2) | 融資金額 | 100百万円 |
(3) | 期間 | 5年 |
(4) | 資金使途 | 運転資金 |
2. 借入人概要
(1) 企業名 xx産業株式会社
(2) 所在地(本社工場) xxxxxxxxxxxxxxxxx00-000
(3) 事業内容 精密冷間圧造部品および精密切削部品の製造、販売
1936年創業。80年以上にわたり精密冷間圧造技術による金属製品を製造。取扱製品は自動車向けや電機向けであり、製品点数は約5,000種類に及ぶ。約8割が自動車関連特殊部品であり、具体的にはブレーキ、シート、ワイパー、ヘッドランプやステアリングエアバック用部品である。ヘッダー加工及びホーマー加工の冷間圧造技術に加え、金型設計や精密切削も自社で行う一貫した生産体制を構築しており、QCD(品質、コスト、納期)すべての面で顧客に満足を提供している。
(川越本社工場外観) (取扱製品群)
(4) 従業員数 180名(2021年12月時点)
(5) 資本金 98百万円
(6) 売上高 8,018百万円(2022年3月期)
3. 特定インパクトと測定するKPI
(1) 経済面
社会面
経済収束(ポジティブ)移動手段(ポジティブ)
① 現在の納期遵守率を維持し、できる限り100%の達成に向け向上させる(2021年度実績:99.7%)
(2) 社会面 保健・衛生(ネガティブ)
雇用(ネガティブ)
移動手段(ネガティブ)
① 1日以上の休業を要する労働災害の発生件数0件を継続する
(2017年~2021年実績:0件)
② 2025年までに、一人当たり平均残業時間を30時間まで削減する
(2021年度実績:32.7時間)
③ 2027年までに、不良発生件数を10件以内とする
(2021年度実績:64件)
(3) 環境面 資源効率・安全性(ネガティブ)気候(ネガティブ)
① 2023年度までに、歩留まりを95%以上へ向上させ、維持する
(2021年度実績:91.9%)
② 2027年度までに、工場や事務所で使用する電力を、中部電力ミライズ㈱が提供する再生可能エネルギー由来の電力「ミライズ Greenでんき」へ切り替える
③ 2027年度までに、保有する車両を100%HV・EVとする
(2021年度実績:16.7%)
4. お問い合わせ先 | ||
(1) 三十三銀行 | ||
担当部署担当者 連絡先 | ソリューション営業部xx 000-0000-0000 | |
(2) 三十三総研 | ||
担当部署 | 調査部 | コンサルティング部 |
担当者 | xx | xx |
連絡先 | 059-354-7102 | 059-351-7417 |
以 上 |
ポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書
2022 年9月 28 日株式会社三十三総研
三十三総研は、三十三銀行が、xx産業株式会社に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するにあたって、xx産業株式会社の活動が、環境・社会・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価しました。
分析・評価にあたっては、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」及びESGハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則ったうえで、中小企業※1に対するファイナンスに適用しています。
※1 IFC(国際金融公社)または中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業
目次
1.評価対象の概要 2
2.xx産業株式会社の概要 2
2-1.基本情報
2-2.経営方針と事業内容
2-3.サスティナビリティに関連する活動
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性 16
3-1.経済面のインパクト
3-2.社会面のインパクト
3-3.環境面のインパクト
4.測定するKPI とSDGsとの関連性 19
4-1.経済面・社会面(ポジティブ)
4-2.社会面(ネガティブ)
4-3.環境面(ネガティブ)
4-4.その他KPI を設定しないインパクトとSDGsとの関連性
5.サスティナビリティ管理体制 23
6.モニタリング 23
7.総合評価 23
1.評価対象の概要
企業名 | xx産業株式会社 |
借入金額 | 100,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
契約日及び返済期限 | 2022 年9月 28 日 ~ 2027 年9月 28 日 |
2.xx産業株式会社の概要
2-1.基本情報
本社工場 | xxxxxxxxxxxxxxxxx 00-000 |
本社事務所 | xxxxxxxxxxxx 0-00-00 |
従業員数 | 180 名(2021 年 12 月時点) |
資本金 | 98 百万円 |
業種 | 精密冷間圧造部品および精密切削部品の製造並びに販売 |
事業所 | 名古屋支店(xxxxxxxxxxxxx 0-0)xxx机(南通)有限公司 杜岡(上海)商貿有限公司 |
関連会社 | モリオカ株式会社(xxxxxxx) |
xx | 0000 年 名古屋市xx区清船町に新興肥料株式会社(現在のモリオカ㈱)を設立し、配合肥料の製造を開始 ね じ 1939 年 戦争に伴い肥料工場の一部で螺子製造を開始 1944 年 蟹江航空株式会社を買収、xx産業株式会社と改称して螺子の販売会社とする 1948 年 名古屋市xx区船入町に事務所建設 1952 年 通産省(現:経済産業省)より合理化の推進と技術向上について表彰を受ける 1954 年 航空ねじ工業会主催、通産省、運輸省、工業技術院の応援にかかわる「航空ねじコンクール」で最優秀賞を受賞 1960 年 xxコンクリート工業株式会社を設立 |
1968 年 xx区運河幹線 11 号地に営業事務所を開設 中小企業投資育成株式会社の投資を受け、資本金を 48 百万円に増資 1969 年 十字穴xxねじのJISマーク表示認証取得 1971 年 肥料卸売部門をモリオカ㈱として分離 1972 年 岐阜県xxx市に営業所及び倉庫を建設(中津川営業所) 1978 年 資本金を 90 百万円に増資 1988 年 川越工場の建設に伴い、全工場を集約移転して操業を開始旧xx工場をxx営業所とする 1992 年 近鉄富洲原駅前に社宅・独身寮を建設 1993 年 創立 50 周年記念式典 1995 年 xx営業所の事務所を建て替え名古屋支店とする 1997 年 材料倉庫を新設 1998 年 ISO9002(JQA‐2511)認証取得 1999 年 中部通産局(現:中部経済産業局)よりエネルギー合理化工場で表彰を受ける 2001 年 ISO14001:1996(JQA‐EM1838)認証取得 2002 年 ISO の規格改定に伴い、ISO9001:2000(JQA‐2511)に移行 2004 年 ISO14001:2004(JQA‐EM1838)登録更新 2005 年 工場隣地 4,070 平米取得 中国蘇州市にxx精密部品加工有限公司(子会社)設立 2006 年 新工場(D棟)建設 2007 年 アイシン精機株式会社(現:株式会社アイシン)より技術最優秀賞を受賞 2008 年 設立 65 周年記念式典 第二社員寮、コーポxxを建設杜岡(上海)商貿有限公司設立 2012 年 鍛造 薄肉長穴カラーを開発 2013 年 鍛造 ヘリカルギアを開発 2015 年 自動車用自動ブレーキシステム関連ギア製品を製造開始 2017 年 自動ブレーキシステム関連部品の増産に伴い工場増設 2018 年 経済産業省「地域xx牽引企業」に選定 |
2-2.経営方針と事業内容
【経営理念】
xx産業株式会社(以下、xx産業)は以下の経営理念を掲げている。
経営理念
安心を売る企業を目指す。
アメニティファクトリー(快適工場)を目指す。
【事業内容】
同社は、三重県三重郡xx町に本社工場を置き、主に自動車に関する精密冷間圧造部品および精密切削部品の製造並びに販売を行う自動車部品製造業業者である。
1936 年に愛知県名古屋市に新興肥料㈱として創業し、当時は配合肥料の製造を行っていた。ネジをはじめとした金属製品の製造は第二次世界大戦の開戦に伴い開始した。1939 年に肥料工場の一部でネジの製造を開始したほか、1944 年に蟹江航空㈱を買収し、xx産業㈱と改称してネジの販売会社とした。その後 80 年以上にわたり、精密冷間圧造技術による金属製品の製造を行っている。足元では、自動車向け、電機向けのネジやギアを製造、販売している。
同社が得意とする冷間圧造技術とは、コイル状の素材を加熱せずに、機械によって常温で一定以上の力を連続的に加えることで圧造成形を行う製法である。素材をそのまま加工するため、材料ロスの削減や加工スピードの早さ、熱による歪みの発生を抑止できる特性がある。また、加工精度も高く、均一した精度の製品製造が可能であり、ネジ製造の量産に向いている。冷間圧造技術にも様々な加工法があり、特に同社ではツバのような形状を作るヘッダー加工や、複数の段階に分けて徐々に目的の形を作っていくホーマー加工を得意としている。加えて、金型設計や精密切削を社内で行うことで一貫した生産体制を構築しており、QCD(品質、コスト、納期)すべての面で顧客に満足されるよう事業を行っている。
冷間圧造の基本工程
ふくらまし(据え込み)(upsetting) |
パンチでたたいて材料径より大きくする工法で、リベットやボルトの頭部形成に用いる。 |
|
強制(密閉)絞り(forward) |
金型の中に材料を入れ、密閉した状態でパンチにより前方に押し出し、絞る工法。大きな絞り (断面減少率)が得られる。 |
|
オープン(開放)絞り(reductioning) |
金型から一部材料が出た状態でパンチにより頭部をたたき、軸を絞る工法。小さな断面減少率 で、一般的には据え込みと同時に行う。 |
|
後方押し出し(backward) |
金型の中へ材料を入れ、ピンを押し込むことにより、余肉をピンの進行方向の後方へ押し出し 穴をあける工法。 |
|
トリーミング(trimming) |
余肉をカットして成形する方法で、xxボルトの頭部xx抜き工程等に用いる。 |
|
打ち抜き・ピアス(xxxxxx) |
ピンによる穴抜きの工法で、ナットの穴抜きに用いる。 |
|
取り扱い製品
現在の顧客数は約 150 社あり、製品点数は約 5,000 種類に及ぶ。その約8割が自動車関連の特殊部品となっている。具体的には、ブレーキ、シート、ワイパー、ヘッドランプ及びステアリングエアバック用部品で構成されている。
①電動パーキングブレーキ用部品
• エンジン停止に連動して自動的に機能するパーキングブレーキが「電動パーキングブレーキ」であり、このブレーキ機構を搭載するトヨタ車における占有率は100%となっている。
②回生協調ブレーキ用部品
• 回生ブレーキ(車両の減速時に失われる運動エネルギーを回収し、モーターへ取り込む際に生じる抵抗力を制動に用いる機構)と油圧ブレーキ(フットブレーキ)との組合せが車両のブレーキ力となり、両者の力量を調整する為の機構が「回生協調ブレーキ」であり、このブレーキ機構を搭載するトヨタ車における占有率は100%となっている。
③エアバッグ用部品
• エアバッグ及びホーン(警音器)を機能させるためのステアリング構成部品に組み込まれており、トヨタ車における占有率は約80%となっている。
④ワイパー用部品
• ワイパーシャフトと呼ばれる機能部品で、車両ワイパーが動作する主軸に組み込まれており、トヨタ車における占有率は約50%となっている。
顧客より見積依頼を受け、①営業部門、②設計技術部門、③品質保証部、④製造部、
⑤仕入先 (外注加工)により見積・検討
【検討内容】
見積 工賃、設備能力、工程能力、治工具、材料、納期、製品仕様の情報をもって見積作成
⇒ 顧客がこれを受領し、検討
設計試作
顧客が試作図を作成し、暫定受注情報から設計(②)、社内(①~③)へ展開し、暫定工程で試作(④)
工程内検査(④)及び完成品検査(③)を行い、納品顧客より試作品評価を受ける
生産準備
顧客が正式量産図を作成し、受注情報を社内(①~⑤)へ展開
正式図をもって受注情報を社内関連部門へ展開、初品の生産・納品、初品の評価を受ける
顧客注文・内示をもとに流動管理(①~⑤)、生産計画・生産(④)、受入検査(③)、量産 計量・出荷(①)
品質管理
・
クレーム対応
ISO とMQS(※)に沿った品質管理規定を基準に、不良品に対する是正措置・継続的改善品質クレーム 即時対応(③)
納入クレーム 即時対応(①)工程内不良対応(④)
により是正措置対応 ⇒ 顧客からの評価
また、品質保証会議・内部監査・マネジメントレビュー(①~⑤)を行い継続的改善を図っている
(※)MQS(Morioka Quality System):ISO 9001 の基準を満たした独自の品質マネジメントシステム・品質規定
生産設備等
冷間圧造工場(C・D 棟)
ホーマー6段 | 7台 |
ホーマー5段(割型) | 1台 |
ホーマー3段 | 2台 |
ホーマー7段 | 3台 |
ホーマー8段 | 1台 |
ヘッダー2D3B | 28 台 |
ヘッダー1D2B | 11 台 |
ヘッダー割型 | 4台 |
ヘッダー2D2B | 4台 |
切削工場(製造部/B・E・F・G 棟)
NC 旋盤 | 129 台 |
単能盤 | 7台 |
両端加工機 | 2台 |
穴あけ加工機 | 8台 |
工具技術工場(技術部/設計部門) ※金型製作・加工
放電加工機 | 3台 |
電脳旋盤 | 3台 |
パンチ研磨機 | 1台 |
平面研削盤 | 1台 |
汎用旋盤 | 3台 |
内径仕上げ加工機 | 1台 |
検査機(品質保証部)
引張試験機 | 2台 |
マイクロビッカース硬さ試験機 | 1台 |
ロックウェル硬度計 | 1台 |
メッキ厚測定器 | 1台 |
投影機 | 1台 |
表面粗さ形状測定機 | 1x |
x円度測定器 | 1台 |
デジタルマイクロスコープ | 2台 |
3D 形状測定機 | 1台 |
歯車試験機 | 1台 |
<設備機械の一例>
ヘッダー工場
冷間圧造機 6段パーツホーマー
NC 旋盤
ローリング工場
冷間圧造機 7段パーツホーマー
NC 旋盤6軸加工機
2-3.サスティナビリティに関連する活動
<冷間圧造の特徴>
【高度な技術力による自動車開発への貢献】
コスト | 低 |
小ロット | 不向き |
精度 | 安定 |
加工形状 | 多種多様 |
金型 | 必須 |
強度 | 高い |
生産速度 | 速い |
生産量 | 大量生産 |
同社の主力製品が使われる電動パーキングブレーキは、近年開発が進む自動運転技術に不可欠なものである。同社は、高い技術力と提案力により高品質の製品を低コスト・短納期で供給することを可能としており、自動車開発をはじめとした製造業の発展に貢献している。
具体的には、主要技術である精密冷間圧造に加え、金型設計や精密切削まで一貫して手掛けることが可能なほか、部品の設計技術も有していることから、取引先から提示された図面に対して機能性を維持したうえで生産工程を短縮できる設計を同社
から提案することができる。また、加工に用いる各種機械のメンテナンスについても内製化を進め、予防から修理、システムの改善に取り組むことで、コスト削減や短納期の実現につなげている。その結果、顧客からの注文に対して納期内に納品した件数の割合を示す納期遵守率は、99.7%
(2021 年度実績)と高い割合となっている。
2018 年度には、経済産業省の「地域xx牽引企業」にも選定された。地域xx牽引企業とは、地域経済の中心的な担い手となり得る事業者のことで、地域内外の取引実態や雇用・売上高を勘案し地域経済への影響力が大きく、成長が見込まれるとともに、地域経済のバリューチェーンの中心的な担い手、および担い手候補である企業が選定される。同社は今後もより地域経済に貢献できる企業を目指し、活動を継続する方針である。
【品質保証への取り組み】
同社が製造する自動車のブレーキ部品は、最重要保安部品として高度な品質基準が求められる。そのため、同社は、国際標準化機構が定めた工場等における製品の品質向上のためのマネジメントシステム「ISO9001」を認証取得しているほか、「ISO9001」の基準を満たした同社独自の品質マネジメントシステム・品質規定「MQS(Morioka Quality System)」による作業の標準化、工程内検査の実施により、品質の維持・向上を図っている。具体的には、各工程において形状測定機や粗さ測定器等、合計 20 以上の検査機器を使用し、徹底した品質保証管理に取り組んでいる。
【従業員教育の充実】
同社は社内での教育を充実させることで、従業員一人ひとりのレベルアップを図っている。従業員の作業習得を計画的に行っており、一人ひとりが各作業をどこまで実施することができるかを把握する「力量評価表」を作成したうえで、毎年個人に合わせた習得目標を策定し、「教育計画」に基づいて従業員教育を実施している。
実際の作業習得に当たっては、外部教育のほか社内 OJT で実施しており、OJT で一度指導を受ければ作業を遂行できるよう、従業員が作業方法を確認できる「作業標準書」や「段取り手順書」を作成するなど、教育の効率化も図っている。特に作業標準書は毎年更新を行うことで、業務の改善・変更などを反映した適正な作業遂行が可能となっている。
【職場の安全管理の徹底】
工場など職場の安全管理については、各部署からの代表者により組織された安全委員が中心となって、労働災害の防止に取り組んでいる。具体的には、事業場の見回りを定期的に行い、これまでに機械設備のステップ(階段/油まみれになりやすい箇所)に滑り止めの施工、作業場や通路への照明の追加、工場の立地場所が埋立地であり陥没しやすいためトラック・フォークリフトの通路の定期的な補修等を行うなど、改善を行ってきた。
【時間外労働の削減】
工場で2交代制勤務を導入することで一人当たりの時間外労働の削減を図っているほか、残業時間が一定時間を超えるとxxxxが出るように設定し、部課長会議において残業時間が長い従業員の業務の見直し・改善を図っている。その結果、2017 年度、2018 年度は約 40 時間/月だった従業員一人当たりの平均残業時間が 2019 年度は 32.7 時間/月となった。新型コロナウイルス感
染症の影響を受けた 2020 年度からの挽回生産がみられた 2021 年度についても残業時間は 32.7時間/月となり、減少傾向にある。
(時間)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
従業員一人当たりの平均残業時間/月の推移
2017 2018 2019 2020 2021
(年度)
【外国人技能実習生の働きやすい環境の整備】
同社は外国人材の登用を積極的に進めており、中国やモンゴルからの技能実習生を継続的に受け入れている。技能実習生が働きやすい職場環境を整備するため、社宅を完備しているほか、作業マニュアルを外国語でも表記するなどの配慮を行っている。2011年以降、技能実習生は増加基調にあり2021年3月期には47名を受け入れていたものの、新型コロナウイルスの影響で契約者の入国受入れができなかったことから2022年は減少し、2022年8月現在は32名の技能実習生が工場を中心に活躍している。今後も積極的に外国人材の登用を進める方針である。
(人)
50
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
技能実習生の推移
2011/3 2012/3 2013/3 2014/3 2015/3 2016/3 2017/3 2018/3 2019/3 2020/3 2021/3 2022/3 2022/8
【環境方針の策定】
同社では、すべての企業活動において環境負荷の低減を目指し社会に貢献するために「環境理念」を掲げるとともに、その理念に基づく行動原則を社内外に明らかにしていくために「環境方針」を策定している。
<環境理念>
xx産業株式会社は、「安心を売る企業を目指す。アメニティファクトリー(快適工場)を目指す。」の経営理念に基づき、地球環境問題は人類共通の重要課題であることを認識し、地球環境の保全と社会への貢献に努める。
<環境方針>
xx産業株式会社は、冷間圧造による自動車、電機等の部品を金型設計から成
形、加工、に至る一貫生産体制で供給する企業であり、以下の環境方針に従い環境管理を行う。
1)社内の全職制を軸に環境保全活動を遂行する。環境管理委員を各職場に配置し、これが活動の推進を支援する。
2)事業活動、製品、サービスについての環境影響評価に基づき、環境目的、目標及びプログラムを設計し推進する。また技術的、経済的に可能な範囲で、環境保全活動に取り組み、環境マネジメントシステムの継続的な改善、向上を図る。
3)環境関連の法律、規制、条令、及びその他の会社として同意した要求事項を遵守し、技術的、経済的に可能な範囲で当社が定めた自主基準で管理する。
4)内部環境監査を実施し、自主管理による環境マネジメントシステムの維持向上に努める。
5)環境教育、社内広報活動などを実施し、社員の環境方針の理解と環境に関する意識の向上を図る。
6)当社は環境汚染の予防に努めるとともに、当社が行う事業活動及び製品、サービスが環境に与える影響の中で、下記の項目について環境負荷の低減に取り組む。また、必要に応じてこれを見直す。
①省資源
原材料の歩留まり向上。
②省エネルギー
設備、動力及び照明に使用する電力の低減に努める。
③廃棄物の削減と再資源化
廃棄物の削減及び適切な管理、リサイクル化により削減を図る。
④地球温暖化防止(CO2排出量の削減)
工程改善、管理強化等により排出量の削減を図る。
7)この環境方針は、組織で働くすべての人に周知する。また、一般の人から環境方針の要求があれば、コピーを配布し当社の環境方針を明示し、地域社会への融和と協調を図る。
【資源の効率的な利用】
同社では、金属素材を中心とした資源の効率的な利用を促進するため、歩留まりの向上と資源の再生利用に取り組んでいる。
歩留まりについては、前日に発生した検査項目別の不良数や不良品のサンプル等を基に、毎朝ミーティングで改善策を検討し実施している。具体的な対策としては、金型設計の改善や、機械の設定、刃物の消耗具合の確認などを行っている。
製造に際して発生する試打ち品の削減も重要となる。試打ち品とは機械を動かし始めてから安定した製品ができるまでの調整を行う際に発生するものである。製造にあたってゼロにすることはできないものの、作業者の技術向上を促進することで試打ち回数の削減を図っている。
また、試打ち品や切削時に発生する切粉等の金属資源は、すべて再生業者に委託することで資源の再生利用を図っている。
【CO2排出量の削減】
MS&AD インターリスク総研㈱の「CO2排出量の算定結果及び削減行動に関する報告書」によると、同社の 2021 年度のCO2総排出量(Scope1,2)は 2,422t-CO2と算定された。同社は以下の取り組みを通じて、CO2の削減を図る方針である。
(1)再生可能エネルギーの導入
工場や事務所で使用する電力について、中部電力ミライズ㈱が提供する再生可能エネルギー由来の電力「ミライズGreen でんき」へ切り替えることを検討している。
(2)省エネの実施
工場の空調費用の抑制に向けて空調管理システムの導入や、工場の照明を白熱灯から LEDへの交換、普段使用していない倉庫などに人感センサーを設置することで無駄な電気代をカットするなどの省エネ施策を実施していく。
(3)HV・EVの導入
現在、同社では保有する車両 12 台のうち、2台をHV としている。今後、購入する車両はすべてHV もしくはEV とし、HV・EV の割合を 100%とする予定である。
【廃棄物の削減】
金属の切粉以外の主な廃棄物として、製造工程で部品に付着した切削油をふき取るウエス(機械手入れ用の雑巾)が挙げられ、1日当たり 75 リットルのごみ袋がいっぱいになる程度発生していた。加工後に切削油を切る工程を入れ、使用量の削減を図っている。
3.UNEP FI インパクトレーダーとの関連性
※色の濃い項目が同社のインパクト領域
本ファイナンスでは、xx産業の事業を国際標準産業分類における「自動車部品及び付属品製造業」として整理した。その前提のもとで UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、「包摂的で健全な経済」「経済収束」「雇用」「移動手段」に関するポジティブ・インパクト、「保健・衛生」
「雇用」「移動手段」「水(質)」「大気」「土壌」「資源効率・安全性」「気候」「廃棄物」に関するネガティブ・インパクトが分析された。
一方、事業活動等を踏まえ、本ファイナンスで特定された同社のインパクトは以下の通りである。
3-1.経済面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ) 包摂的で健全な経済 | 外国人技能実習生 の働きやすい環境の整備 | ・中国やモンゴルから技能実習生を継続的に受 け入れており、翻訳した作業マニュアルを準備するなど、働きやすい環境を整備している |
経済収束 | 高度な技術力による自動車開発への貢献 | ・社内で部品の設計を行っているため、取引先が提示する図面に対して必要な機能性を保ちつつ製造工程を短縮できる形状の変更の提案ができ、高品質かつ低コストでの製品供給を 可能としている |
3-2.社会面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ポジティブ)雇用 | 外国人技能実習生 の働きやすい環境の整備 | ・中国やモンゴルから技能実習生を継続的に受 け入れており、翻訳した作業マニュアルを準備するなど、働きやすい環境を整備している |
教育雇用 | 従業員教育の充実 | ・従業員が各作業をどこまで実施することができるかを把握する「力量評価表」を作成したうえで、毎年個人に合わせた習得目標を策定 し、「教育計画」に基づいて従業員教育を実施 している |
移動手段 | 高度な技術力による自動車開発への貢献 | ・社内で部品の設計を行っているため、取引先が提示する図面に対して必要な機能性を保ちつつ製造工程を短縮できる形状の変更の提案ができ、高品質かつ低コストでの製品供給を 可能としている |
(ネガティブ)xx・xx雇用 | 職場の安全管理の徹底 | ・各部署からの代表者により組織された安全委員が中心となって、事業場の見回りや問題点 の改善等を実施している |
雇用 | 時間外労働の削減 | ・工場での2交代制勤務の導入や、残業時間が 長い従業員の業務の見直し・改善により、時間外労働の削減に努めている |
移動手段 | 品質保証への取り組み | ・「ISO9001」や同社独自の品質マネジメントシステム・品質規定「MQS」に基づく作業の標準化や工程内検査の実施により、品質の維持・向 上を図っている |
3-3.環境面のインパクト
インパクト領域 | テーマ | 活動内容 |
(ネガティブ) 資源効率・安全性 廃棄物 | 資源の効率的な利用 | ・金型の改善などによる不良品の削減、作業者の技術向上による試打ち品の削減により歩留まりの向上に取り組んでいる ・試打ち品や切削時に発生する切粉等の金属 資源を再生業者に委託してリサイクルしている |
気候 | 環境方針の策定 CO2排出量の削減 | ・すべての企業活動において環境負荷の低減を目指し社会に貢献するために「環境理念」を掲げ、行動原則を社内外に明らかにしていくために「環境方針」を策定している ・自社の CO2排出量を算定し、排出削減に向けて、再生可能エネルギーの導入や省エネの実 施、HV・EV の導入を計画している |
廃棄物 | 廃棄物の削減 | ・製造工程で部品に付着した切削油をふき取る ウエスについて、加工後に切削油を切る工程を入れることで使用量を削減している |
なお、インパクト分析ツールで発出したネガティブ・インパクトのうち、同社のインパクトと特定しなかったものについては、以下記載の理由に基づく。
水の大量使用や水質に影響を与える物質の使用はない、大気汚染につながる物質の使用はない、土壌へ影響を与えることはないことから、「水(質)」「大気」「土壌」については、同社のインパクトとして特定しない。
4.測定するKPI とSDGsとの関連性
xx産業は本ファイナンス期間において以下の通りKPI を設定する。
4-1.経済面・社会面(ポジティブ)
特定インパクト | 経済収束 移動手段 | |
取組、施策等 | 【高度な技術力による自動車開発への貢献】 ・自社で部品設計や金型の製造をすることで、高品質、低コスト、短納期での製品供給を可能としており、納期遵守率を向上させる | |
借入期間におけるKPI | ・現在の納期遵守率を維持し、できる限り 100%の達成に向 け向上させる (2021 年度実績:99.7%) | |
関連するSDGs | 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベ ルの経済生産性を達成する。 |
4-2.社会面(ネガティブ)
特定インパクト | 保健・衛生 雇用 | |
取組、施策等 | 【職場の安全管理の徹底】 ・各部署からの代表者により安全委員を組織し、事業場の見回りや問題点の改善等を実施する 【時間外労働の削減】 ・工場での2交代制勤務の導入や、残業時間が長い従業員の業務の見直し・改善により、時間外労働の削減に努める | |
借入期間におけるKPI | ・1日以上の休業を要する労働災害の発生件数0件を継続する (2017 年~2021 年実績:0件) ・2025 年度までに、一人当たり平均残業時間を 30 時間/月 まで削減する (2021 年度実績:32.7 時間/月) | |
関連するSDGs | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な 労働環境を促進する。 |
特定インパクト | 移動手段 | |
取組、施策等 | 【品質保証への取り組み】 ・「ISO9001」や同社独自の品質マネジメントシステム・品質規定「MQS」に基づく作業の標準化や工程内検査の実施により品質の維持・向上を図り、不良発生件数を低減する | |
借入期間におけるKPI | ・2027 年までに、不良発生件数を年間 10 件以内とする (2021 年度実績:64 件) | |
関連するSDGs | 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させ る。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削 減、再生利用及び再利用により、廃棄物の 発生を大幅に削減する。 |
4-3.環境面(ネガティブ)
特定インパクト | 資源効率・安全性 気候 | |
取組、施策等 | 【資源の効率的な利用】 ・金型の改善などによる不良品の削減、作業者の技術向上による試打ちの削減により歩留まりを向上させる 【CO2排出量の削減】 ・CO2排出量の削減に向けて、再生可能エネルギーの導入や省エネの実施、HV・EV の導入に取り組む | |
借入期間におけるKPI | ・2023 年度までに、歩留まりを 95%以上へ向上させ、維持する (2021 年度実績:91.9%) ・2027 年までに、工場や事務所で使用する電力を、中部電力ミライズ㈱が提供する再生可能エネルギー由来の電力 「ミライズ Green でんき」へ切り替える ・2027 年までに、保有する車両を 100%HV・EV とする (2021 年度実績:16.7%) | |
関連するSDGs | 7.2 2030 年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。 8.4 2030 年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する 10 年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 13.1 すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靭性(レジリエンス) 及び適応の能力を強化する。 |
その他、同社がインパクトとして特定した項目の中でKPIとして目標を設定しなかったものについては以下の通りであり、引き続きそれぞれの取り組みを確認していく。
4-4.その他KPIを設定しないインパクトとSDGsとの関連性
事業活動 | 関連するSDGsのターゲット | SDGsの ゴール |
〈経済面・社会面〉 外国人技能実習生の 働きやすい環境の整備 | 8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 | |
〈社会面〉 従業員教育の充実 | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。 | |
〈環境面〉 環境方針の策定 | 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 | |
廃棄物の削減 | 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減 する。 |
5.サスティナビリティ管理体制
xx産業では、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに取り組むにあたり、xx社長を最高責任者とし、総務部が中心となって日々の業務やその他活動を棚卸し、自社の事業活動とインパクトレーダー、SDGsの 17 のゴール・169 のターゲットとの関連性について検討を行った。 本ポジティブ・インパクト・ファイナンスの実行後、返済期限までの間においても、xx社長と 総務部を中心に取り組み状況を定期的に確認し、協議を行うことで、KPIの達成を図っていく。 |
最高責任者 | 代表取締役 xx xx |
管理責任者 | 総務部 xx xx |
担当部 | 総務部 |
6.モニタリング
本件で設定したKPIの進捗状況は、xx産業と三十三銀行の担当者が年に1回以上の会合を設けることで確認する。モニタリングの結果、当初想定と異なる点があった場合には、三十三 銀行は、同社に対して適切な助言・サポートを行い、KPIの達成を支援する。 |
7.総合評価
本件はUNEP FIの「ポジティブ・インパクト金融原則」に準拠した融資である。xx産業は、上記評価の結果、本件融資期間を通じてポジティブな成果の発現とネガティブな影響の低減に 努めることを確認した。また、三十三銀行は年に1回以上その成果を確認する。 |
本評価書に関する重要な説明 1.本評価書は、三十三総研が、三十三銀行から委託を受けて作成したもので、三十三総研が三十三銀行に対して提出するものです。 2.三十三総研は、依頼者である三十三銀行および三十三銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するxx産業から供与された情報と、三十三総研が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。 3.本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお、株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。 |
〈本件問合せ先〉
株式会社三十三総研
調査部 研究員 xx xxx
〒500-0000
xxxxxxxxxx 00 x 00 xxxxxxx0x
XXL:000-000-0000 FAX:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 9 月 28 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: xx産業株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社三十三銀行 |
評価者:株式会社三十三総研 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、三十三銀行がxx産業株式会社(「xx産業」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、株式会社三十三総研による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定したPIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシア ティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、イ ンパクト分析ツールを開発した。三十三銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際 し、三十三総研と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国 内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分 析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、 中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、三十三銀行及び三十三総研 にそれを提示している。なお、三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義 を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義 する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1 定義
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
三十三銀行及び三十三総研は、本ファイナンスを通じ、xx産業の持ちうるインパクトを、 UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析 を行った。
この結果、xx産業がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2 フレームワーク
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、三十三銀行がPIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 三十三銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:三十三銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、三十三銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、三十三銀行からの委託を受けて、三十三総研が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て三十三総研が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、三十三総研が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるxx産業から貸付人である三十三銀行及び評価者である三十三総研に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評
価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000