Contract
税関に係る事項における相互行政支援及び協力に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定
日本国政府及びイタリア共和国政府(以下「両締約国政府」という。)は、
関税法令違反が、それぞれの国の経済、商業、財政、社会、産業及び農業における利益並びに正当な貿易を害するものであることを考慮し、
1
関税その他の輸出入に際し徴収される税を正確に査定し、並びに禁止措置、制限措置及び規制措置の適正な執行(知的財産権を侵害する物品についての法規及び規則の執行を含む。)を確保することの重要性を考慮し、
関税法令の適用及び執行に関する事項における国際協力の必要性を認識し、
関税法令違反に対する行動が、両税関当局間の緊密な協力、特に情報の交換により一層効果的に行われることができることを確信し、
千九百五十三年十二月五日の相互行政支援に関する関税協力理事会の勧告を考慮し、
二千八xx月三十日の税関に係る事項における協力及び相互行政支援に関する日本国政府と欧州共同体との間の協定を考慮し、
特定の物品に関する禁止、制限及び特別措置(規制のための措置)を含む国際協定を考慮し、
千九百八十八年十二月二十日の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約に留意し、
2
問題となる文化財が関税法令違反の対象であった限りにおいて、文化財の不法な輸入、輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約(千九百七十年十一月十四日にパリで作成されたもの)に留意し、
絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(国際的取引を規制することにより絶滅のおそれのある野生動植物の種を保護することを目的として、千九百七十三年三月三日にワシントンで作成されたもの)に留意し、
有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約及び附属書(有害廃棄物の国境を越える移動並びにこれらの再生利用及び処分を規律するものとして、千九百八十九年三月二十二日にバーゼルで作成されたもの)に留意して、
次のとおり協定した。
第一条 定義この協定の適用上、
1
「税関当局」とは、日本国にあっては財務省、イタリア共和国にあっては関税庁をいう。関税庁については、その履行の一部について、財務警備隊の技術的な支援を利用することができる。
2
3
「関税法令」とは、締約国政府の税関当局により適用され、又は執行される法令であって、物品の輸入、輸出及び通過を規律し、並びに物品をその他の税関手続の管理下に置くもの(税関当局の権限の範囲内における禁止措置、制限措置及び規制措置を含む。)をいう。
3
「関税領域」とは、各締約国政府の国の領域であって、それぞれの関税法令が適用されているものをいう。
4
「関税法令違反」とは、関税法令の違反又はその未遂をいう。
5
「情報」とは、データ、文書、報告若しくはこれらの認証された写し又は他のあらゆる形式(電子的な形式を含む。)の連絡をいう。
6
「職員」とは、税関当局の職員をいう。
7
「者」とは、自然人又は法人をいう。
8
「個人データ」とは、特定された又は特定し得る自然人に関するデータをいう。
9
「要請当局」とは、支援を要請する税関当局をいう。
10
「被要請当局」とは、支援を要請される税関当局をいう。
11
4
「国際取引供給連鎖」とは、原産地から最終仕向地までの国境を越える物品の移動に関係するすべての過程をいう。
12
「前駆物質」とは、向精神薬及び麻薬の製造において頻繁に使用される物質であって、千九百八十八年十二月二十日の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約附属書付表Ⅰ及び付表Ⅱに掲げ るもの並びに両国の法令において定めるその他の物質をいう。
13
「麻薬及び向精神薬」とは、千九百八十八年十二月二十日の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関す
(n)
(r)
る国際連合条約第一条 及び に定義される物質又は当該物質を含む製品並びに両国の法令において定め
る物質又は当該物質を含む製品をいう。
14
「監視付移転」とは、犯罪を調査するため、及び犯罪を実行し、又はその実行に関与した者を特定するため、一の国の権限のある当局が、事情を知りながら、かつ、その監視の下に、不正な又はその疑いがある送り荷が当該国の関税領域を出、これを通過し、又はこれに入ることを認めることとする方法をいう。
15
「こっとう及び考古学的な物品」とは、いずれかの国にとって美術的及び考古学的な価値を有するすべての物であって、それぞれの法令において定めるものをいう。
第二条 この協定の適用範囲
1
5
両締約国政府は、関税法令を適正に適用するため、並びに関税法令違反を防止し、及び調査し、並びに関税法令違反に対応するため、並びに国際取引供給連鎖の安全を確保するため、この協定に定める条件に従い、税関当局を通じて相互に行政支援を行う。
2
両締約国政府は、税関手続の簡素化及び調和のため、税関当局を通じて協力するよう努めることを約束する。
3
この協定は、各国の法令に従い、かつ、それぞれの税関当局の権限及び利用可能な資源の範囲内で両締約国政府によって実施される。
4
この協定は、他の国際協定に基づくいずれの締約国政府の権利及び義務にも影響を及ぼすものではな
い。
5
この協定は、イタリア共和国が、欧州連合の加盟国として、及び欧州連合の他の加盟国との間で既に締結した又は将来締結する政府間協定の締約国政府として、遵守することを義務付けられる関税法令から生ずる現在及び将来の義務に影響を及ぼすものではない。
第三条 情報の交換
1
6
両税関当局は、自己の発意により、又は要請に応じ、関税法令の適正な適用を確保するために、並びに関税法令違反を防止し、調査し、及び抑止するために必要なすべての関連情報、特に次に掲げる物品及び物質の不法取引に関する情報を相互に提供する。
(a)
武器、弾薬類及び爆発物
(b)
有害廃棄物及び毒性廃棄物、核物質並びに原子兵器、生物兵器及び化学兵器を製造するための構成物
質
(c)
軍民両用に利用することができる物品並びに高額の関税、税又は手数料が課される物品
(d)
麻薬及び向精神薬並びに前駆物質
(e)
環境、健康及び公共の安全に対し、危険となる可能性があり、又は実質的な損害を引き起こすおそれがあるその他の物品及び物質
(g)
(f)
こっとう及び考古学的な物品を含む歴史的及び文化的価値の高い美術品絶滅のおそれのある野生動植物の種
2
7
両税関当局は、自己の発意により、又は要請に応じ、関税法令の適正な適用を確保し、並びに関税法令違反を防止し、及び調査し、並びに関税法令違反に対応することを確保し、並びに国際取引供給連鎖の安全を確保するために役立つ情報を相互に提供する。そのような情報には、次のものを含むことができる。
(a)
有効性が立証された法執行の技術
(b)
関税法令違反を行う際の新たな傾向、手段又は方法
(c)
関税法令違反の対象であることが知られている物品並びにそれらの物品について使用される輸送手段及び蔵置手段
(d)
関税法令違反を行ったことが知られており、又は疑われている者
(e)
関税領域において関税法令違反を行うために使用されていることが知られており、又は疑われている輸送手段及びコンテナー
(f)
関税領域において関税法令違反に関係して使用されたことが知られており、又は使用されていることが疑われている施設
(h)
(g)
関税法令の適用に関する行政上の決定及び文書の送付及び通知関税法令の適切な適用に関連し得るその他の情報
3
8
一方の税関当局は、自己の発意により、又は要請に応じ、他方の税関当局の関税領域において関税法令違反が行われたか、又は行われるであろうと考えるに足りる十分な理由がある場合には、実行されているか、又は実行された計画活動に関する情報を当該他方の税関当局と交換する。
第四条 要請に基づく支援
1
両税関当局は、要請に応じ、次に掲げるすべての情報を相互に提供する。
(a)
一方の締約国政府の関税領域に輸入された物品が、他方の締約国政府の関税領域から適法に輸出されたか否かを示す情報
(b)
一方の締約国政府の関税領域から輸出された物品が、他方の締約国政府の関税領域に適法に輸入されたか否かを示す情報及びその物品が税関手続の下に置かれた場合において、該当するものがあるときには、当該税関手続を示す情報
(c)
一方の締約国政府の関税領域からの輸出において有利な待遇を与えられる物品が、他方の締約国政府の関税領域に適法に輸入されたか否かを示す情報
(d)
9
一方の締約国政府の関税領域を通過した上で他方の締約国政府の関税領域に向かう物品が、適法に通過したか否かを示す情報
2
一方の税関当局は、要請に応じ、物品の税関管理に係る措置に関するすべての情報を他方の税関当局に提供する。
第五条 自発的な支援
一方の締約国政府の税関当局は、自己の発意により、自己にとって利用可能な情報が、他方の締約国政府の経済、公衆衛生及び公共の安全(供給連鎖の安全を含む。)又はその他の重要な利益に対して著しい損害を引き起こすおそれがある重大な関税法令違反に関連すると考える場合には、当該情報を提供する。
第六条 監視
被要請当局は、要請当局の要請に応じ、被要請当局の属する国の法令の範囲内で、次のものについて、情報を提供し、及び特別な監視を行う。
(a)
要請当局の関税領域において、関税法令違反に関与しているか、又は関与していたと信ずるに足りる合理的な理由がある者
(b)
10
要請当局の関税領域において関税法令違反に使用することを意図していると信ずるに足りる合理的な理由があるような方法により、物品が蔵置され、若しくは収集された場所又はそのような方法により蔵置され、若しくは収集される可能性のある場所
(c)
不正取引の対象とされていると信ずるに足りる合理的な理由又は要請当局の関税領域において関税法令違反に使用することを意図していると信ずるに足りる合理的な理由があるような方法により輸送される物品又はそのような方法により輸送される可能性のある物品
(d)
要請当局の関税領域において関税法令違反に使用することを意図していると信ずるに足りる合理的な理由があるような方法により使用される輸送手段又はそのような方法により使用される可能性のある輸
送手段
第七条 監視付移転
両税関当局は、それぞれの国の法令に定める権限及び手続に従って、監視付移転について、個々にその事例に応じて協力し、及び情報を交換することができる。
第八条 支援の要請の形式及び内容
1
11
この協定に基づく支援の要請は、英語による書面によって行われ、及び当該要請には、その実施に有益と認められる情報を添付する。緊急な事情により必要と認める場合には、口頭による要請であっても受領することができる。ただし、そのような要請は、できる限り速やかに書面によって確認されなければならない。
2
(a)
1の規定に従って行う要請には、次の情報を含める。要請当局
(b)
要請する措置
(c)
要請の目的及び理由
(e)
(d)
調査の対象である者についての可能な限り正確かつ包括的な記述関連事実及び既に実施された調査の概要
(f)
関連する法的要素
第九条 要請の実施
1
この協定に別段の定めがある場合を除くほか、この協定に基づく支援については、両税関当局が直接に
提供する。
2
12
被要請当局は、支援の要請に応ずるため、その権限及び利用可能な資源の範囲内で、既に有する情報を提供することにより、適当な調査を実行することにより、又は調査が実行されるための手配を行うことにより、すべての合理的な措置をとる。
3
被要請当局は、自己の関税領域において自己が行う質問に要請当局の職員が立ち会うことを認めることができる。当該要請当局の職員による立会いは、諮問的性格であり、及び当該被要請当局が定める条件に従うものとする。
4
正当に権限を有する要請当局の職員は、被要請当局の同意を得て、かつ、当該被要請当局が定める条件
に従い、当該要請当局がこの協定の目的のために必要とする関税法令違反に該当する活動又はこれに該当する可能性がある活動に関連する情報及び文書の写しを当該被要請当局の事務所内において入手するため、当該事務所内に立ち入ることができる。
5
13
一方の税関当局の職員は、この協定に従い、他方の税関当局の関税領域に所在するときは、身分証明書並びに公的資格及び委任の証拠をいつでも提示することができるようにしなければならない。当該職員は、制服を着用すること又は武器を携行することができない。当該職員は、自己が行う可能性があるいかなる違反についても責任を負い、及び当該他方の税関当局の属する国の法令の範囲内で、当該他方の税関当局の職員に与えられている保護と同一の保護を享受する。
6
被要請当局が要請を実施することができない場合には、理由を付して、遅滞なく要請当局に通報する。その際には、関連情報を添付することができる。
第十条 情報の使用及び秘密性
1
入手した情報は、この協定の目的のためにのみ使用される。一方の締約国政府が他の目的のために当該情報を使用することを希望する場合には、当該情報を提供した税関当局の書面による事前の同意を得るも
のとする。そのような使用に当たっては、当該税関当局の定めるいかなる制限にも従うものとする。
2
1
の後段の規定にかかわらず、情報を提供する税関当局が別段の通報を行う場合を除くほか、この協定
に従い情報を受領する税関当局は、当該情報を自国の関連法執行機関に提供することができる。当該関連
法執行機関は、この協定の条件に基づき当該情報を使用することができる。
3
14
この条の規定は、情報を受領する税関当局の属する国の法令に定める限りにおいて、情報が使用され、又は開示されることを妨げない。情報を受領する当該税関当局は、可能なときはいつでも、被要請当局に対し、その開示を事前に通報する。
4
この協定に従って提供されるいかなる形式のいかなる情報も、各国の法令に従って秘密のものとし、情報を受領した税関当局の属する国の法令に基づき同種の情報に与えられる保護を享受する。ただし、当該情報を提供する締約国政府が当該情報の開示に事前の承認を与える場合は、この限りでない。
5
個人データについては、個人データを受領する締約国政府が、これを提供する締約国政府においてこのような特定の事案に適用する方法と少なくとも同等の方法で個人データを保護することを約束する場合にのみ、交換することができる。個人データを提供する締約国政府は、自己の管轄の下で適用する条件より
も重い条件を定めてはならない。両締約国政府は、各国の個人データの保護についての法令(欧州連合において効力を有する法令を含む。)に関する情報を相互に提供する。
第十一条 刑事手続
1
この協定に従い一方の税関当局が他方の税関当局に提供する情報は、当該他方の税関当局の属する締約国政府により、裁判所又は裁判官の行う刑事手続に使用されてはならない。
2
15
この協定に従い一方の締約国政府の税関当局が提供する情報が、他方の締約国政府により、裁判所又は裁判官の行う刑事手続に使用されることが必要とされる場合には、当該他方の締約国政府は、裁判所又は裁判官の行う刑事手続において当該情報を使用するため、外交上の経路又は当該一方の締約国政府の国の法令に従って定める経路を通じ、当該一方の締約国政府に対して当該情報を提供するよう求める要請を提出する。
第十二条 支援の例外
1
被要請当局の属する締約国政府は、要請された支援が、自己の属する国の主権、公の秩序、安全その他の重要な国家的利益を侵害すると考え、当該締約国政府の関税領域における産業上、商業上若しくは職業
上の秘密の侵害を伴うと考え、又は自己の属する国の法令に反することが証明され得ると考える場合には、当該支援を拒否し、部分的に提供し、又は自己が必要とする条件に従って提供することができる。
2
要請当局は、要請されたならば自己が提供することができない支援を求める場合には、その要請においてそのような事実について注意を喚起する。この場合において、当該要請に応ずる方法については、被要請当局が決定する。
3
16
被要請当局は、調査又は進行中の司法上の手続を害すると信ずるに足りる確実な理由がある場合には、支援を延期することができる。この場合において、被要請当局は、被要請当局が要求する条件の範囲内で支援を行うことができるか否かについて決定するため、要請当局と協議する。
4
要請当局は、支援の拒否又は延期の決定及び当該決定の理由について速やかに通報を受ける。第十三条 技術支援
両税関当局は、次のことにより、税関に係る事項における技術支援を相互に提供する。
(a)
それぞれの税関技術についての相互の知識を向上させるために職員を交換すること。
(b)
自己の職員の能力を構築する訓練及び支援を提供すること。
(c)
専門家を交換すること。
(d)
税関管理の手段及び方法を改善するため税関管理の手続及び簡素化に関する情報を提供すること。第十四条 費用
1
この協定を実施するために生ずる費用は、それぞれの締約国政府が負担する。
2
要請を実施するために高額な経費又は特別の性質の費用を必要とする場合には、両税関当局は、要請を実施する条件及び費用を負担する方法を決定するために協議する。
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第十五条 領域的な適用範囲
この協定は、両国の関税領域(それぞれの法令に定めるもの)について適用する。第十六条 見出し
この協定中の条の見出しは、引用上の便宜のためにのみ付されたものであって、この協定の解釈に影響を及ぼすものではない。
第十七条 協議
この協定の解釈又は実施に関するいかなる問題又は紛争も、両締約国政府間の相互の協議によって解決す
る。
第十八条 協定の実施
1
両税関当局は、関税法令違反を調査し、又は関税法令違反に対応することについて責任を有する職員が、相互に人的及び直接的な関係を維持することを確保するために必要な措置をとる。両税関当局は、この協定の実施に責任を有するそれぞれの事務所の詳細な情報を相互に提供する。
2
この協定を実施するための詳細な取決めは、必要に応じ両税関当局間で締結される。
3
18
両締約国政府間で合同委員会を設置する。同委員会は、日本国財務省関税局長及びイタリア共和国関税庁長官で構成され、専門家の補佐を受ける。同委員会は、一方の税関当局の要請があった場合には、この
ちよく
協定の進捗状況の監視及び生ずる問題の解決のために会合する。第十九条 最終規定
1
この協定は、両締約国政府が、この協定の効力発生に必要な手続を完了した旨を外交上のxxの交換により相互に通告した月の後二番目の月の初日に効力を生ずる。
2
両締約国政府は、要請があった場合及び必要がある場合には、この協定を検討し、及び改正するために
会合する。改正は、1に定める条件と同一の条件で効力を生ずる。
3
この協定は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国政府も、外交上の経路を通じて、他方の締約国政府に対して書面による通告を行うことにより、いつでもこの協定を廃棄することができる。廃棄は、通告後三箇月で効力を生ずる。この協定の廃棄は、廃棄の日に先立ち行われている実施中の協力活動に影響を及ぼすものではない。
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以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの協定に署名した。
二千九年十二月十五日にローマで、ひとしくxxである日本語、イタリア語及び英語により本書二通を作成した。この協定の解釈に関して紛争が生ずる場合には、英語の本文による。
日本国政府のために
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イタリア共和国政府のために