区分 保全公社 助成公社 供給公社 開発公社 会計システム(稼動年) 公益法人会計システム(平成 12 年) JAC 公益(平成 12 年) 会計システム(昭和 62 年) 会計管理システム(平成6 年) 給与システム(稼動年) 給与計算システム(平成 11 年) PAYSⅢ-WIN(平成 11 年) 給与システム(平成3 年) 人事給与システム(平成6 年)
平成16年度
平成 17 年2月 18 日
横浜市包括外部監査人三 縄 昭 男
平成 16 年4月1日付包括外部監査契約書第7条に基づき、監査報告書を別紙のとおり提出いたします。
平成16年度
目 | 次 | 頁 |
第1章 外部監査の概要 | 3 | |
1.外部監査の種類 | 3 | |
2.選定した特定の事件 | 3 | |
3.監査実施の概要 | 4 | |
4.利害関係 | 4 | |
第2章 外部監査の結果および意見 | 5 | |
1.監査の「結果」の項目(合計 19 項目) | 5 | |
2.監査の「意見」の項目(合計 46 項目) | 6 | |
第3章 公社の管理運営 | 8 | |
1.各公社について | 8 | |
2.公社の経営管理 | 11 | |
3.入札制度改革 | 22 | |
4.債務負担行為 | 24 | |
5.事業用資産の時価評価差額 | 29 | |
6.各公社の事業の課題と事業再構築 | 31 | |
第4章 財団法人横浜市建築保全公社報告書 | 36 | |
1.財団法人横浜市建築保全公社の概要 | 37 | |
2.収支および財政状況 | 42 | |
3.経営管理 | 45 | |
4.建物修繕事業 | 55 | |
5.学校建設事業 | 66 | |
6.資産管理 | 73 | |
7.事業の課題 | 75 | |
第5章 財団法人横浜市建築助成公社報告書 | 78 | |
1.財団法人横浜市建築助成公社の概要 | 79 | |
2.収支および財政状況 | 84 | |
3.経営管理 | 88 | |
4.融資事業 | 99 | |
5.建物・駐車場事業 | 115 | |
6.資産管理 | 128 | |
7.事業の課題 | 130 |
第6章 横浜市住宅供給公社報告書 140
1.横浜市住宅供給公社の概要 141
2.収支および財政状況 146
3.経営管理 149
4.建設・分譲事業 161
5.賃貸管理事業 170
6.資産管理 186
7.事業の課題 191
第7章 横浜市土地開発公社報告書 194
1.横浜市土地開発公社の概要 195
2.収支および財政状況 199
3.経営管理 202
4.土地の取得、造成その他の管理、処分事業 211
5.附帯事業 226
6.資産管理 229
7.事業の課題 231
※1 消費税について
報告書の中の金額は、原則として消費税抜の金額で記載しています。消費税込の金額で記載している場合には、消費税込の旨を記載しています。
※2 端数処理について
報告書の数値は、原則として単位未満の端数を切り捨てて表示しています。そのため、表中の総額と内訳の合計とが一致しない場合があります。単位未満の端数を四捨五入している場合には、四捨五入をしている旨の記載を行っています。
第1章 外部監査の概要
1.外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第1項の規定に基づく包括外部監査
2.選定した特定の事件
(1)外部監査の対象
土地・建物の開発・供給・管理等を行っている出資団体、すなわち、財団法人横浜市建築保全公社、財団法人横浜市建築助成公社、横浜市住宅供給公社および横浜市土地開発公社(以下、「各公社」という。)に関する財務事務の執行および経営にかかる事業の管理(建築局、財政局、総務局、教育委員会事務局、都市計画局、港湾局)
(2)事件を選定した理由
横浜市のまちづくりを担う出資団体については、社会経済状況の変化を踏まえ、公的サービス供給主体として公益性と効率性の両立が求められるなか、そのあり方等が検討されていることから、これらの団体が行っている事業について、類似した性格をもつ事業毎に分類し、かつ、その中心事業に焦点を当てるとともに、それらの事業目的、運営方針に照らし、各事業が適正に執行され、管理運営が効率的かつ効果的に行われているか、市民の関心は大きいと考えられます。
そこで、各出資団体に関する財務事務が関係諸法令に従って適正に執行されているかどうか、およびその経営管理事務が効率的、経済的になされているかどうか、調査すべき必要性を認めました。
(3)外部監査対象期間
原則として平成 15 年度。なお、必要に応じて平成 15 年度以前および平成 16 年度の執行分も含みます。
3.監査実施の概要
(1)監査の視点
横浜市のまちづくりを担う出資団体について、団体が行っている中心事業に焦点を当てて、事業目的、運営方針に照らし、各事業が適正に執行され、しかもその事業コストが低廉なものとなっているか、その結果、団体が供給する公的サービスを利用者が十分に満足しているかを視点とし、以下の事項を監査しました。
①経営管理は関係諸法令に準拠して適正に運営されているか。
②事務の執行状況は適正なものとなっているか。
③事業収入は適正に計上されているか。
④事業コストは適正なものとなっているか。また、コスト改善の努力が行われているか。
⑤補助金および委託費の算定は適切か。
⑥施設および物品等の財産管理は、関係諸法令に準拠して行われているか。
⑦財務および管理運営に関する情報開示は適時・適切に行われているか。
(2)外部監査の方法
監査の実施にあたっては、財務事務にかかる監査のほか、各出資団体の管理運営が関係諸法令に従って適正に執行されているかどうかに主眼をおき、合規性・効率性および経済性の観点から、関係諸帳簿および証拠書類との照合、関係者に対する質問ならびに現地調査等の必要と認めた手続を実施しました。
(3)外部監査の実施期間
平成 16 年8月6日から平成 17 年2月 18 日まで
4.利害関係
選定した特定の事件について地方自治法第 252 条の 29 に規定する記載すべき利害関係はありません。
第2章 外部監査の結果および意見
1.監査の「結果」の項目(合計 19 項目)
第3章 | 公社の管理運営 | -項目 |
第4章 | 財団法人横浜市建築保全公社報告書 | 3項目 |
第5章 | 財団法人横浜市建築助成公社報告書 | 7項目 |
第6章 | 横浜市住宅供給公社報告書 | 3項目 |
第7章 | 横浜市土地開発公社報告書 | 6項目 |
第4章 | 5(4) 6(1) | 「学校建設にかかる国庫負担金交付を考慮した買取り予算の設定を求めるもの」 「固定資産管理について規程の遵守を求めるもの」 |
第5章 第6章 第7章 | 6(1) 3(3) 4(2) 4(2) 4(2) 4(5) 6(1) 6(2) 4(4) 5(2) 6(1) 4(4) 4(5) 4(7) 4(8) 4(9) 6(1) | 「耐用年数適用の適正化を求めるもの」 「バックアップデータの外部保管場所の見直しを求めるもの」 「償還部債権保全課整理係における初期延滞者への督促人員の見直しおよび督促業務にかかる管理体制の改善を求めるもの」 「初期延滞者への電話による督促業務の改善を求めるもの」 「長期延滞債権の管理体制の改善を求めるもの」 「保管台帳等による融資関連書類の管理および実査の実施を求めるもの」 「金種別現金残高表の作成による現金管理を求めるもの」 「物品管理体制の改善を求めるもの」 「手付金の扱いに関する具体的な基準の設定を求めるもの」 「生麦ハイツにかかる準備金および特定預金の計上を求めるもの」 「物品管理体制の改善を求めるもの」 「星川二丁目土地を供用済み土地として処置することを求めるもの」 「舞岡町(2)土地の事業化の目途を求めるもの」 「代替地の処分に向けて改善を求めるもの」 「不法占有状態の排除に向けて改善を求めるもの」 「借入金にかかる経過利息の未払計上を求めるもの」 「間仕切りおよび駐車場設備取得費用の有形固定資産計上を求めるもの」 |
2.監査の「意見」の項目(合計 46 項目)
第3章 | 公社の管理運営 | 8項目 |
第4章 | 財団法人横浜市建築保全公社報告書 | 8項目 |
第5章 | 財団法人横浜市建築助成公社報告書 | 12 項目 |
第6章 | 横浜市住宅供給公社報告書 | 11 項目 |
第7章 | 横浜市土地開発公社報告書 | 7項目 |
第3章 第4章 第5章 第6章 | 2(1) 2(2) 2(2) 2(3) 2(3) 2(4) 3 4 3(1) 3(3) 4(3) 4(3) 4(3) 5(2) 5(3) 7 3(3) 4(2) 4(3) 4(4) 5(2) 5(2) 5(5) 7(1) 7(2) 7(3) 7(4) 7(5) 3(3) 4(5) 4(6) 5(4) 5(6) 5(8) | 「公社の意思決定機関の明確化を求めるもの」 「役員賞与の支給金額決定方法の改善を求めるもの」 「監事に支給する報酬に関する規程の整備を求めるもの」 「各公社に共通したシステムの導入・運用の連携と協調を求めるもの」 「情報管理方針の策定と契約条項の見直しを求めるもの」 「各公社を統合した効率的な資金管理の仕組みの研究を求めるもの」 「外郭団体において条件付き一般競争入札の導入を求めるもの」 「先行取得依頼資産の買取りスケジュールに整合した債務負担行為の適切な設定を求めるもの」 「評議員報酬の支給に関する規程の整備を求めるもの」 「会計システムの保守対応を求めるもの」 「調査等依頼工事発注要領の厳格な適用を求めるもの」 「調査等依頼方式における落札金額の引下げのために事業協同組合内における価格決定および工事業者選定について透明性を高めることを求めるもの」 「保全公社と事業協同組合の役割分担の積極的な説明を求めるもの」 「学校施設買取計画の策定および譲り受けの早期推進を求めるもの」 「学校施設の供用後にかかる借入金利息および管理事務費の立替金計上を求めるもの」 「保全公社の事業の方向性の早期確立を求めるもの」 「貸出管理システムの運用委託の検討を求めるもの」 「延滞債権の発生原因分析の実施および回収率、延滞債権の削減等の目標設定を求めるもの」 「金利変動によるリスクの総合的管理を求めるもの」 「預金残高の圧縮および余剰借入の削減を求めるもの」 「補助金のあり方など覚書の内容の見直しを求めるもの」 「修繕引当金の見積方法の改善を求めるもの」 「みなとみらい公共駐車場のあり方について検討を求めるもの」 「債権回収会社(サービサー)への回収業務の委託化の検討を求めるもの」 「貸出債権の流動化の検討を求めるもの」 「個人住宅融資以外の融資事業のあり方について検討を求めるもの」 「事業部融資課融資係における受付担当人員の削減および組織内での適切な人員配置の検討を求めるもの」 「建物事業および駐車場事業の今後のあり方について検討を求めるもの」 「管理システム再構築の遅延についての評価と記録を求めるもの」 「入札制度改革の早期実施を求めるもの」 「分譲事業資産の評価基準につき低価基準の採用を求めるもの」 「賃貸施設(賃貸店舗)の空室率の改善を求めるもの」 「滞留債権の回収促進を求めるもの」 「横浜市営住宅にかかる滞納使用料の回収促進を求めるもの」 |
5(9) 「業務上のタクシー利用料金削減への取り組みを求めるもの」
6(2) 「固定資産台帳の整備を求めるもの」
6(2) 「登記簿謄本の整備を求めるもの」
6(2) 「賃貸用事業資産にかかる時価評価差額につき適切な会計処理を求めるもの」
7 「中期事業計画の早期見直しを求めるもの」
第7章 3(3) 「LANおよびサーバの活用状況の継続的な評価を求めるもの」
4(2) 「経営健全化計画の進捗管理につき改善を求めるもの」
4(2) 「経営健全化計画の進捗状況開示につき改善を求めるもの」
4(6) 「事業化の推進と土地の早期買い取りに向けて改善を求めるもの」
5 「土地保有コストを引き下げるために附帯事業収入の増加を求めるもの」
6(2) 「ソフトウェア取得費用の無形固定資産計上を求めるもの」
7(2) 「経営健全化計画の見直しおよび中期事業見通し等の情報開示を求めるもの」
第3章 公社の管理運営
1.各公社について
(1)各公社の概要
建築局所管の財団法人横浜市建築保全公社、財団法人横浜市建築助成公社および横浜市住宅供給公社ならびに財政局所管の横浜市土地開発公社の概要は以下のとおりです。
≪表 3-1 4公社の概要一覧表≫ (平成 16 年3月 31 日現在)
名称 (略称) | 財団法人横浜市建築保全公社 (保全公社) | 財団法人横浜市建築助成公社 (助成公社) | 横浜市住宅供給公社 (供給公社) | 横浜市土地開発公社 (開発公社) | ||||
設立年月 | 昭和61 年6月 | 昭和 27 年10 月 | 昭和41 年12 月 | 昭和 48 年6月 | ||||
所在地 | 中区住吉町1 丁目13番地松村ビル別館2 階 | 神奈川区栄町8番地1ヨコハマポートサイド ビル 11 階 | 神奈川区栄町8番地 1 ヨコハマポートサ イドビル6階 | 神奈川区栄町8番地 1 ヨコハマポートサ イドビル8階 | ||||
横浜市 所管課 | 建築局企画管理課 | 建築局民間住宅課 | 建築局民間住宅課 | 財政局財産調整課 | ||||
代表者 | 理事長 | 中川博之 | 理事長 | 原克己 | 理事長 | 田島秀一 | 理事長 | 中島弘善 |
設立根拠 法令 | 民法 | 民法 | 地方住宅供給公社法 | 公有地の拡大の推進 に関する法律 | ||||
基本金 | 30,000,000 円 | 5,500,000 円 | 10,000,000 円 | 36,000,000 円 | ||||
出資額 | 30,000,000 円 | 3,000,000 円 | 10,000,000 円 | 36,000,000 円 | ||||
市出資割合) | (100%) | (54.5%) | (100%) | (100%) | ||||
役員数 | 常勤3名 非常勤9名 | 常勤3名 非常勤8名 | 常勤4名 非常勤7名 | 常勤3名 非常勤 11 名 | ||||
職員数 | 一般33 名 (うち市派遣24 名)嘱託2名 | 一般 32 名 (うち市派遣5名)嘱託8名 | 一般 94 名 (うち市派遣7名)嘱託 25 名 | 一般 24 名 (うち市派遣13 名)嘱託7名 | ||||
主な事業 | 1 公共建築物の修繕 2 公共建築物の保全 に関する調査研究および技術の普及啓発 | 1 住宅融資事業 2 市街地整備融資事業 3 建物事業 4 公共駐車場事業 | 1 建設分譲事業 2 賃貸管理事業 3 受託事業 | 1土地取得処分事業 | ||||
財政支援等 (平成15年度) | 補助金 364 百万円年度末損失補償 限度額 2,570 百万円 | 補助金 241 百万円年度末損失補償 限度額 354,252 百万円市への寄附金 3,100 百万円年度末借入金残高 994 百万円 | 補助金 83 百万円年度末損失補償 限度額 21,799 百万円 | 補助金 277 百万円年度末損失補償 限度額 298,000 百万円 | ||||
年度末借入金残高 1,500 百万円 | 年度末借入金残高 2,279 百万円 | 年度末借入金残高 10,000 百万円 |
(2)各公社の収支状況
各公社の平成 15 年度の収支状況は以下のとおりです。なお、各公社の会計基準がそれぞれ異なるため、収支計算書と損益計算書を対比して表示しています。
≪表 3-2 4公社の収支状況≫(自 平成15 年4月1 日 至 平成16 年3月31 日)
(単位:百万円)
科目 | 収支計算書 | 損益計算書 | ||
保全公社 | 助成公社 | 供給公社 | 開発公社 | |
建物管理事業収入 | - | 776 | - | - |
駐車場料金収入 | - | 888 | - | - |
分譲事業収入 | - | - | 21,167 | - |
公有地取得事業収入 | - | - | - | 17,411 |
学校譲渡事業収入 | 299 | - | - | - |
住宅融資事業収入 | - | 151,307 | - | - |
団体信用生保事業収入 | - | 860 | - | - |
市街地整備融資事業収入 | - | 3,412 | - | - |
長期割賦販売事業収入 | - | - | 0 | - |
保全事業収入 | 8,149 | - | - | - |
賃貸住宅等管理事業収入 | - | - | 5,269 | - |
受託事業収益 | - | - | 1,560 | - |
附帯事業収入 | - | - | - | 466 |
補助金 | 364 | 241 | 54 | 277 |
借入金収入 | 1,770 | 1,495 | ||
その他収入 | 1 | 220 | 326 | 220 |
当期収入(収益)合計 | 10,585 | 159,202 | 28,377 | 18,376 |
事業費 | 8,435 | 155,352 | 27,629 | 18,991 |
借入金返済支出 | 1,940 | 2,017 | ||
管理費 | 373 | 102 | 290 | 401 |
その他 | 0 | 2,505 | 233 | 10 |
当期支出(費用)合計 | 10,750 | 159,977 | 28,152 | 19,403 |
当期収支差額(損益) | △164 | △775 | 225 | △1,026 |
前期繰越収支差額(損益) | 229 | 8,681 | 1,620 | 15,800 |
次期繰越収支差額(損益) | 64 | 7,905 | 1,845 | 14,773 |
(注)消費税込の金額で記載しています。
・各公社の事業が土地・建物にかかる開発・供給・管理等であり、それぞれがそのための融資・分譲建設・賃貸・保全等の事業を単独ではなく、複数の事業を担っていることが分かります。
・各公社は横浜市から補助金(人件費または需用費、もしくは借入金利息相当額)を受けていますが、4公社のうち3公社の当期収支ないし損益は赤字です。
(3)各公社の財政状況
各公社の平成 15 年度末の財政状況は以下のとおりです。
≪表 3-3 4公社の財政状況≫(平成 16 年3月 31 日現在) (単位:百万円)
科目 | 保全公社 | 助成公社 | 供給公社 | 開発公社 |
流動資産 | 6,059 | 8,787 | 19,858 | 309,325 |
現金・現金同等物 | 1,767 | 7,111 | 5,876 | 2,684 |
先行整備資産 | 4,010 | - | - | - |
先行取得土地 | - | - | - | 306,639 |
事業資産 | - | - | 10,202 | - |
その他流動資産 | 281 | 1,675 | 3,779 | 0 |
固定資産 | 62 | 359,388 | 27,134 | 107 |
基本財産 | 30 | 5 | - | - |
賃貸用資産 | - | 16,384 | 26,498 | - |
貸出金 | - | 342,007 | - | - |
その他固定資産 | 32 | 991 | 634 | 107 |
資産合計 | 6,121 | 368,175 | 46,993 | 309,432 |
流動負債 | 3,484 | 972 | 16,332 | 178,505 |
未払金 | 1,984 | 127 | 2,732 | 3,110 |
短期借入金 | 1,500 | - | 10,950 | 175,382 |
その他流動負債 | 0 | 845 | 2,648 | 13 |
固定負債 | 2,615 | 356,532 | 28,805 | 116,117 |
長期借入金 | 2,570 | 355,246 | 22,353 | 116,022 |
引当金 | 45 | 1,079 | 2,111 | 94 |
その他固定負債 | - | 206 | 956 | - |
特定準備金 | - | - | 3,383 | - |
負債合計 | 6,100 | 357,504 | 45,138 | 294,622 |
正味財産又は資本 | 20 | 10,670 | 1,855 | 14,809 |
負債及び正味財産合計 | 6,121 | 368,175 | 46,993 | 309,432 |
横浜市からの借入金 | 1,500 | 994 | 2,279 | 10,000 |
損失補償額 | 2,570 | 354,252 | 21,799 | 281,404 |
・各公社の総資産の規模は 3,000 億円から 60 億円とそれぞれ違います。
・先行取得土地・事業資産および賃貸用資産の土地について、時価の変動に伴う大幅な時価評価差額が認められます。
・4公社の総資産合計は 730,722 百万円ですが、調達資金のほとんどが借入金であり、総資産の 90.3%にあたる 660,026 百万円が横浜市の損失補償が付いた銀行借入金によるものです。
・その結果、各公社の正味財産または資本は総資産に対してそれぞれが 10%に満たない財務構造となっています。
2.公社の経営管理
(1)理事会、評議員会および参与会
各公社の機関(理事会、評議員会および参与会)の設置状況等は以下のとおりです。
≪表 3-4 公社機関の設置状況および設置根拠規程ならびに開催頻度≫
機関名 | 保全公社 | 助成公社 | 供給公社 | 開発公社 |
理事会 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
根拠規程 | 寄附行為 | 寄附行為 | 定款 | 定款 |
開催頻度 | 概ね年2回 | 年3回 | 年2回 | 概ね年2回 |
評議員会 | 〇 | 〇 | - | - |
根拠規程 | 寄附行為 | 寄附行為 | ||
開催頻度 | 年2回 | 年3回 | ||
参与会 | - | 〇 | 〇 | 〇 |
根拠規程 | 参与設置規程 | 処務規程 | 処務規程 | |
開催頻度 | 年3回 | 年2回 | 年2回 |
これらの機関を構成する理事、評議員および参与の選任については、寄附行為、定款および公社内規でそれぞれ以下のように定められています。
≪表 3-5 役員等の任免≫
公社名 | 機関名 | 任 免 |
保全公社 | 理事 | 評議員会において選任する。 |
評議員 | 理事会において選任する。 | |
助成公社 | 理事 | 評議員会において選任する。 |
評議員 | 公社の目的を達成するために必要な学識経験を有する者のうちから、理 事会において選任する。 | |
参与 | 神奈川県及び横浜市における関係部局の職員のうちから、理事長が委嘱 する。 | |
供給公社 | 理事 | 理事長は横浜市長が任命する。理事は理事長が任命する。 |
参与 | 関係諸機関の職員及び学識経験者のうちから理事長が委嘱する。 | |
開発公社 | 理事 | 理事は横浜市長が任命する。理事長は、横浜市長が指名した者をもって 充てる。 |
参与 | 理事長が委嘱する。 |
上記の表で分かるように、外部の学識経験者を役員等に選任すると明記しているのは助成公社および供給公社の2社だけですが、平成 15 年度末における実際の選任状況は以下のとおりです。
≪表 3-6 役員等のうち外部学識経験者≫
公社名 | 理事会 | 評議員会 | 参与会 |
保全公社 | 選任していない | 選任している | - |
助成公社 | 選任していない | 選任している | 選任していない |
供給公社 | 選任していない | - | 選任していない |
開発公社 | 選任していない | - | 選任していない |
保全公社は、寄附行為では外部学識経験者の選任を明記していませんが、選任しています。反対に、供給公社は明記していますが、選任していません。
次に、公社機関の権限ないし機能を以下に概観してみます。
≪表 3-7 公社機関の権限等≫
公社名 | 機関名 | 権限・機能 |
保全公社 | 理事会 | 寄附行為に別に定めるもののほか、この法人の運営に関し、重要な事項を議決する。 ①事業計画及び収支予算の決定 ②事業報告及び収支決算の承認 ③取引金融機関の指定 ④その他公社の運営上、理事長が特に重要と認める基本的事項 |
評議員会 | 寄附行為に別に定めるもののほか、この法人の業務の執行に関する重要な事項につき理事長の諮問に応じて調査審議し、その結果を報告し、又 は意見を建議することができる。 | |
助成公社 | 理事会 | 寄附行為に別に定めるもののほか、次に掲げる事項について議決し、又は承認する。 ①資金借入及び償還方法に関すること。 ②職制 ③評議員会の議事その他理事長が理事会に付議する必要を認めた事項。 |
評議員会 | 公社の業務に関する重要な事項について、理事長の諮問に応ずる。公社の業務、資産の状況または役員の業務執行状況について、理事長に対し て意見を述べ、又は理事長から報告を徴することができる。 | |
参与会 | 理事長の諮問に応じて、理事会に附議する重要案件について審議する。 理事会に出席して意見を述べることができる。 | |
供給公社 | 理事会 | 次に掲げる事項は、理事会の議決を経なければならない。 ①定款又は業務方法書の変更 ②基本財産たる財産の変更 ③毎年度の予定貸借対照表、予定損益計算書及び決算 ④地方住宅供給公社法に基づき横浜市長に提出する事業計画、資金計画、財務諸表及び業務報告書 ⑤規程の制定または改正若しくは廃止 ⑥規程により理事会の権限に属しめられた事項 ⮚ 6億円以上の工事請負契約の締結 ⮚ 不動産の取得及び特定処分 ⮚ 取引金融機関の指定 ⑦その他この地方公社の運営上理事長が重要と認める事項 |
参与会 | 公社の業務の円滑な推進をはかるため参与を置くことができる。 |
開発公社 | 理事会 | 次に掲げる事項は、理事会の議決を経なければならない。 ①定款の変更 ②業務方法書の制定または改廃 ③毎事業年度の予算、事業計画並びに資金計画の決定及び変更 ④毎事業年度の財産目録、貸借対照表、損益計算書及び事業報告書の承認 ⑤規程の制定または改廃 ⑥規程により理事会の権限に属せしめられた事項 ⑦その他公社の運営上理事長が重要と認める事項 |
参与会 | 公社の事業運営上必要な事項につき理事長の諮問に応ずる。 |
上記で分かるように、各公社において、理事会には公社運営上の重要な事項を議決す る権限、つまり、意思決定権限が与えられています。しかしながら、実際の理事会の開催頻度は年に2、3回と少なく、議事内容も予算や決算の承認または役員の選任など限られた事項が主になっています。また、書面決議も散見されます。理事会には各理事の英知を結集し討議により最適な意思決定を下すという機能が期待されているはずですが、現状では理事会が公社の最高意思決定機関として、期待されている機能を充分に果たし ている様子を伺うことは困難です。
評議員会および参与会も同様です。両者とも理事長の諮問機関として、公社運営における重要事項を調査審議し、これを建議することが期待されていますが、その開催頻度は年に2、3回と少なく、理事会開催前に理事会上程議案が諮られるだけになっています。
つまり、理事会、評議員会および参与会いずれもその構成員は過半もしくは全員が非常勤のため、機動的な意思決定が困難な状態であり、また、外部学識経験者のいないところでは、結果として実質的な討議に欠けるところもあるのではないかと推察されるところです。そこで各公社における実務では、公社運営上の業務に関する諸事項の討議および意思決定は、常勤理事会や部課長会といった常勤者による会議体でなされていますが、会議議事録等が備え置かれていないため、どのような討議を経て合意されるに至ったのかを事後的に立証する資料が残されていません。ならば、株式会社で見られる常勤取締役で構成される常勤役員会、役付取締役で構成される常務会、または執行役員で構成される執行役員会と同様な、実際に実質的な業務上の討議および意思決定を行っている会議体を制度化して、討議および意思決定のプロセスの透明化を図る必要があるのではないかと考えます。
<意見>「公社の意思決定機関の明確化を求めるもの」
理事会、評議員会および参与会いずれもその構成員は過半もしくは全員が非常勤のた め、機動的な意思決定が困難な状態であり、また、外部学識経験者のいないところでは、結果として実質的な討議に欠けるところもあるのではないかと推察されるところです。そこで各公社における実務では、公社運営上の業務に関する諸事項の討議および意思決定は、常勤理事会や部課長会といった常勤者による会議体でなされていますが、会議議事録等が備え置かれていないため、どのような討議を経て合意されるに至ったのかを事後的に立証する資料が残されていません。ならば、株式会社で見られる常勤取締役で構
成される常勤役員会、役付取締役で構成される常務会、または執行役員で構成される執行役員会と同様な、実際に実質的な業務上の討議および意思決定を行っている会議体を制度化して、討議および意思決定のプロセスの透明化を図る必要があるのではないかと考えます。(保全公社、助成公社、供給公社、開発公社)
(2)役員報酬
①役員報酬規程
各公社の理事の任務は寄附行為または定款に理事長、専務理事および常務理事ならびに理事ごとに定められ、常勤の理事にはこの任務に対する報酬が支給されています。
各公社における役員報酬規程の設置状況は以下のとおりです。
≪表 3-8 役員報酬規程≫
団体名 | 規 程 |
保全公社 | 財団法人横浜市建築保全公社常任役員の報酬及び手当等に関する規程 |
助成公社 | 財団法人横浜市建築助成公社常勤役員の報酬規程 |
供給公社 | なし |
開発公社 | なし |
4公社のうち役員報酬規程を持つのは2公社のみですが、これらの規程は横浜市の
「外郭団体役員及び職員の人事及び給与に関する要綱」を準用しており、実質的にはどの団体も横浜市の同要綱に準拠していることになります。
「外郭団体役員及び職員の人事及び給与に関する要綱」は、横浜市を定年または勧奨等によって退職して外郭団体の役員に就任した者の給与に関する基準を定めることにより給与の適正化を図ることを一つの目的としており、役員報酬および役員賞与について以下の規定を設けています。
(役員報酬)
第6条 役員報酬月額は、団体の規模及び財務状況、当該職務の難易度等を勘案して定めるものとする。
2 役員報酬の支給方法については、団体が定めるところによる。
3 役員報酬月額の改定は、団体の財務状況、本市職員の給与改定、社会経済情勢等を勘案のうえ行うものとする。
(役員賞与)
第8条 当該団体の財政事情に応じて、役員については職務の達成度及び団体運営に対する貢献度を勘案して、賞与を支給することができる。
横浜市退職者である役員に対する実際の報酬および賞与の支給金額の決定手順は次のとおりです。
1.横浜市退職者の役員が着任する都度、総務局より団体の所管局に、報酬月額、年収額が示される。
2.所管局は団体にその示された金額を伝える。
3.団体は、その金額を「目安」に、当該団体の財務状況、横浜市職員の給与改定、社会経済情勢等を勘案の上、報酬月額を決定する。
上記の要綱のほかに明文化された基準がないため、各公社では、所管局経由でその示された報酬月額を踏まえて、記載金額どおりの役員報酬を支給しています。なお、開発公社では社会経済情勢等を勘案して、就任2年目より報酬を引き下げた例が見られました。
②理事賞与
上記の要綱では、理事には毎月報酬を支払うこととし、賞与については支給することができる、と定められています。これを受け、各公社では常勤理事には期末賞与を支給しています。
そこで、各公社における実際の理事の期末賞与支給額を調べてみると、総務局から示された金額を予算化し、その金額どおりを実際に支給しており、他に賞与支給額算定根拠となるものはありませんでした。また、この期末賞与支給額は一般職員の期末手当の支給月数と一律に同じでした。これは、「当該団体の財政事情に応じて、役員については職務の達成度及び団体運営に対する貢献度を勘案して、賞与を支給することができる。」と定めた「要綱」の趣旨には合致しないものと考えます。
横浜市は「新時代行政プラン・アクションプラン」の重点改革項目に「外郭団体の自主的・自立的経営の促進」を掲げ、団体活性化に向けた取組として一般職員に対しては
「団体の経営状況や業績を反映した人事給与制度の導入等を促進し、職員の意欲や能力を活かす体制作りを推進」するとしています。そうであるならば、各所管局はまずは団体の経営者たる理事の賞与を、規定どおりに職務の達成度および団体運営に対する貢献度を勘案してその支給額を決定するよう団体に働きかけるべきです。
なお、他の非常勤理事は横浜市の職員がこれを兼務していることもあり、原則として無報酬となっています。
<意見>「役員賞与の支給金額決定方法の改善を求めるもの」
各公社の常勤理事に支給する期末賞与に関する支給規程は、横浜市の要綱で「当該団体の財政事情に応じて、役員については職務の達成度及び団体運営に対する貢献度を勘案して、賞与を支給することができる。」と定められているにもかかわらず、実際には総務局から示された金額を支給しており、その支給月数は理事も一般職員と同じです。
各所管局は団体の経営者たる理事の賞与を、規定どおりに職務の達成度および団体運営に対する貢献度を勘案してその支給額を決定するよう団体に働きかける必要があります。(総務局、建築局、財政局)
③監事報酬
助成公社を除いて、監事の報酬についてはその支給に関する規程がないことから、原則として無報酬として扱われています。しかしながら、公認会計士の資格を有する監事には、監事監査としての財務書類の監査に対する報酬が支払われています。
<意見>「監事に支給する報酬に関する規程の整備を求めるもの」
監事に支給する報酬に関する規程が整備されていません。監事は財団法人の機関として機能するものであり、その責務に応じた報酬が支給されてしかるべきです。したがって、監事に支給する報酬に関する規程の整備が必要です。(総務局、建築局、財政局)
(3)公社の情報システム
①公社が担う事業の変化
市民に提供する建築、住宅および土地にかかる行政サービスは、住環境の整備の進展に伴って、量から質の供給へと変化し、行政による住宅等取得支援は民間との協力・補完体制による支援へと転換してきていると言われています。そこで、行政サービスとして行われる事業を担う各公社も転換期をむかえ、事業の方向性について検討を重ねてきています。
行政サービスである各種事業は、事業毎に各公社がこれを分担し、各公社が事業の規模等に応じたシステムを導入して、事業の多様化、複雑化に対応しつつ、事務の効率化を図ってきています。これらのシステムは、相応の効果を発揮してきたと考えられますが、将来事業の方向性を踏まえると、現状のシステムには検討しなければならないいくつかの問題点があります。
(ア) 各公社に共通したシステムの方向性
各公社に共通する会計および給与等の業務については、各公社単独でシステムを導入し、それぞれに運用していますが、事務の効率化およびコスト削減ならびに品質確保の観点から、その導入および運用の方針と管理の在り方を見直し、各公社が協調し連携してシステム管理にあたることが肝要であると考えます。
(イ) 各公社に固有のシステムの方向性
各公社の事業にかかる固有のシステムについて、その導入および運用コストはかなりの額となり、システムの効率的運用に基づくコスト削減は公社全体の合理化に大きく寄
与します。このためには、公社の業務システム全体を対象とした定期的なシステム診断および委託業務の把握を行い、契約および委託状況に応じた厳格な評価を行うことが肝要であると考えます。
また、各公社間の調整を行い、評価が適正に行われることを支援および管理する組織
(以下、「調整組織」という。)の存在が望まれ、各公社間で類似する業務のシステム化に対する方針および企画段階での調整組織の関与が求められます。
②各公社に共通したシステムの導入と運用
各公社のシステムには、会計および給与計算等の基本業務にかかるシステムと融資業務や賃貸管理業務等の個別業務(事業)にかかるシステムがあります。
会計および給与等の各公社に共通した基本業務にかかるシステムは各公社が単独で導入し運用しています。一部の公社は個別業務システムから会計システムにデータを自動接続する機能を開発しています。
各公社に関して同一視点で横断的にレビューした結果、各公社システムの導入・運用に対する連携は少なく、将来発生する制度の変更についての対応など共通的な課題に対する協調した取組みも見られません。そこで、各公社が相互に連携し協調して、システムの導入・運用を行った場合には、システムの維持コストの圧縮を図れる可能性があります。会計および給与等といった公社間で共通的な基本業務システムは、横浜市関連の公社および財団、あるいは事業法人を対象として統一的な方針と標準を策定して、長期的な観点での業務の効率化とコスト削減および品質維持を検討するべきです。方針および標準化の検討にあたっては、システムの共同利用等の新しい形態も検討に値します。
≪表 3-9 各公社の会計・給与システム≫
区分 | 保全公社 | 助成公社 | 供給公社 | 開発公社 |
会計システム (稼動年) | 公益法人会計システム (平成 12 年) | JAC 公益 (平成 12 年) | 会計システム (昭和 62 年) | 会計管理システム (平成6 年) |
給与システム (稼動年) | 給与計算システム (平成 11 年) | PAYSⅢ-WIN (平成 11 年) | 給与システム (平成3 年) | 人事給与システム (平成6 年) |
<意見>「各公社に共通したシステムの導入・運用の連携と協調を求めるもの」
会計および給与計算等の各公社に共通した業務について、システムの導入および運用に対する各公社間の連携が図られていません。これらの共通した基本業務にかかるシステムの導入および運用に対する方針を策定して、各公社間の連携と協調を図り、統一した方針および標準をもって業務の効率化とコスト削減および品質維持を検討することが望まれます。(総務局、財政局、建築局、保全公社、助成公社、供給公社、開発公社)
③システムにかかる情報管理体制
情報システムは住民情報および職員の人事・給与情報、法人の会計情報などを保有しています。各公社における業務情報には市および民間から受託した業務の情報が含まれ
ています。これらの情報は、各公社が方針を定めて管理することにしていますが、4公社のうち2公社は方針が定められていません。情報保護の方針を策定していない公社は方針を策定し、横浜市における公社を主管する局は、公社での方針および基準の策定状況とその内容を確認する必要があります。
また、システムの運営・保守を外部委託している公社があります。共通的に各公社の委託契約書等の内容を検討したところ、情報保護に関する条項の標準化など統一した取扱いを行っていません。情報保護に関する契約書等の条項を標準化および統一する必要があります。過去に締結した契約書等については協議書・覚書等を追加で取り交わすことにより責任および権限と義務を明確にし、更改が近いものについては契約更改にあわせて条項を見直し・変更・追加する必要があります。
なお、システムへのアクセスに対する情報保護としては、ユーザIDおよびパスワードによる個人の識別と認証を行っています。
<意見>「情報管理方針の策定と契約条項の見直しを求めるもの」
情報保護の方針が策定されていない公社があります。業務を委託した場合の委託先における情報保護の責任と義務について、契約条項等として統一して標準化した取扱いを行っていません。
まずは、情報保護の方針を策定していない公社は方針を策定し、公社を主管する局は、公社での方針および基準の策定状況と内容を確認する必要があります。
また、情報保護に関する責任および権限と義務について、契約書等の条項を標準化お よび統一し、過去に締結した契約書等については、協議書・覚書等を追加で取り交わし、更改が近いものについては契約更改にあわせて条項を見直し・変更・追加する必要があ ります。(総務局、財政局、建築局、保全公社、助成公社、供給公社、開発公社)
(4)各公社を統合した効率的な資金管理の仕組み/CMS管理
各公社には多額の有利子負債がありますが、一方で、一定の余裕資金等を保有しています。4公社合計での平成 15 年度末の現預金と借入金の状況は以下のとおりです。
≪表 3-10 平成 15 年度末の現預金と借入金残高≫ (単位:百万円)
科目 | 保全公社 | 助成公社 | 供給公社 | 開発公社 | 合計 |
流動資産 現金預金 | 1,767 | 7,111 | 5,876 | 2,684 | 17,439 |
固定資産 基本財産他 | 30 | 3,907 | - | - | 3,937 |
現金預金合計 | 1,797 | 11,018 | 5,876 | 2,684 | 21,376 |
流動負債 短期借入金 | 1,500 | - | 10,950 | 175,382 | 187,832 |
固定負債 長期借入金 | 2,570 | 355,246 | 22,353 | 116,022 | 496,191 |
借入金合計 | 4,070 | 355,246 | 33,303 | 291,404 | 684,025 |
支払利息 | 40 | 7,473 | 367 | 3,398 | 11,279 |
大手民間企業では、連結グループ企業全体の資金を包括して管理する「キャッシュ・マネジメント・システム(以下、「CMS」という。)」を導入しています。また、地方公共団体においては、大阪府が出資法人の経営改善の一環として、平成 14 年度よりグループファイナンスを導入し、全国初の取組みとして、統括法人に日々の流動性資金を集中化することで、運用・調達の両面における資金効率の向上を図るCMSを実施しています。
CMSとは、連結グループ企業内の資金をグループ全体の視点から一元的に管理するシステムのことです。CMSを導入した場合、グループ全体の資金管理を集約することができ、銀行からの借入金の圧縮や支払手数料の削減などが可能となり、また、無駄なコストを削減することで、直接、収支に好影響を与えると同時に、連結でのバランスシートの資産・負債の圧縮にもつながり、連結グループ全体の財務指標を改善するという効果があります。
CMSの基本的な機能は、①プーリング、②グループ内決済、③支払い代行の3つです。
①プーリング
プーリングとは、親会社や資金管理組織が専用の口座を持ち、グループの余裕資金および長期修繕引当預金や退職給与引当預金等の直ちに使用予定のない固定性資金を集約する一方、運転資金などが不足する子会社や団体には貸し出しを行い、機動的かつ効率的な資金管理を目指すものです。これにより、銀行からの借入金を圧縮し、外部への利息の支払いを削減します。
グループ内部では、利率の設定如何にもよりますが、資金を借り入れた団体等は外部借入より低い利息を支払い、資金を預けた団体は外部預入より高い利息を受け取ることも可能で、双方にメリットがあります。
②グループ内決済
グループ内決済とは各団体等の債権と債務を相殺し、差額だけを決済する手法です。これにより、決済に伴う振込手数料などを削減することができます。
③支払い代行
支払い代行は資金管理組織が各団体等に代わって、それぞれの取引先に代金を支払う手法です。例えば、電力料金の支払いを資金管理組織に一本化することで銀行に対する振込手数料の削減ができます。また、資金管理団体から銀行に対する支払い依頼件数が多くなるため、手数料のボリュームディスカウントが期待でき、さらに外郭団体全体の支払い事務手続きを集中することで業務の効率化を図ることができます。
この他にも、運用面で高利率の銀行預金やペイオフ対策等でも一元管理のメリットが見込まれます。
・・・・・
C団体
B団体
A団体
資 金 管 理 組 織
金 融 機 関
返済 支払
資金調達
・
≪図 3-1 CMSのイメージ図≫
資金の集中
資金の貸付
ここで保全公社、助成公社、供給公社および開発公社の4公社が保有している現金および預金の残高の過去3年間の推移を示すと、以下のとおりです。
≪表 3-11 過去3年間の現金および預金残高の推移≫ (単位:百万円)
公社名 | 平成 14 年3月末 | 平成 15 年3月末 | 平成 16 年3月末 | 平均残高 |
保全公社 | 2,245 | 1,689 | 1,797 | 1,910 |
助成公社 | 10,952 | 9,424 | 11,018 | 10,464 |
供給公社 | 4,048 | 3,698 | 5,876 | 4,541 |
開発公社 | 4,163 | 2,636 | 2,684 | 3,161 |
合 計 | 21,408 | 17,449 | 21,376 | 20,078 |
4公社合計の各期末の平均残高で約 200 億円の現預金を保有していることがわかりま
す。このうち、助成公社の住宅融資事業にかかる平成 15 年度の期中平均預金残高は 95億円になります(第5章4参照)。
各公社とも資金繰りの安全上から多少の余裕資金が手元に必要ですが、CMSを導入して資金管理組織に機動性のある預金を確保できるならば、その余裕資金の総額は各公社の単純合計より少なくて済むはずです。また、目的留保性の固定性預金は資金管理組織に預け入れ、これによって資金管理組織で集中している借入金を返済することも可能です。
助成公社における個人住宅融資の繰上返済金、開発公社における保有土地の処分代金など、その事業の性質上、不定期に多額の資金が入ることがあります。しかしながら、効率的資金管理の観点からこれを適時に借入金の返済に回すには、借入金の返済条件等
から単独の公社では自ずと限界が生じ、結果として、上記のように助成公社では期中平均預金残高が 95 億円になっているのです。
そこで、4公社の資金ポジションをCMSのプーリング機能を有効に活用し一元管理することによって、連結経営的な視点からの各公社を統合した効率的な資金管理が可能になるのではないかと考えます。
<意見>「各公社を統合した効率的な資金管理の仕組みの研究を求めるもの」
一部の地方公共団体でも実施済みであるキャッシュ・マネジメント・システム等を導入することによって、各公社の資金管理を一元化し、それぞれの外部からの有利子負債や支払利息の削減はもとより、支払手数料、さらに、管理事務経費についても削減することが可能となるのではないかと考えます。連結経営的な視点から、各公社を統合した効率的な資金管理が可能となる仕組みを研究することが望まれます。(総務局、財政局、建築局)
3.入札制度改革
横浜市では平成 16 年4月より、公共工事の入札制度改革を実施しました。その目玉は、
「条件付き一般競争入札」を新たに導入したことです。
「条件付き一般競争入札」とは、「横浜市内に本社を持つ企業」など一定の条件を満たせば、どの業者も入札に参加できる制度であり、発注者が入札参加者をあらかじめ選ぶ指名競争入札に比べ、参加者の増加により談合防止に効果があるとされています。横浜市は、それまで工事金額の大きい限られた案件を対象に一般競争入札を実施し、それ以外には指名競争入札を適用していましたが、一般競争入札の範囲を拡大したことにより大幅に対象工事が広がりました。この入札改革の導入で、平成 16 年9月末までの平均落札率(市の想定上限価格に対する落札価格の割合)は 87.0%となり、前年度に比べ約
8ポイントも下落したとのことです。
なお、横浜市では平成 18 年度中までにすべての工事につき、一般競争入札を原則とする方式に移行する予定です。
≪表 3-12 横浜市入札制度改革の概略≫
平成 15 年度 | 平成 16 年度 | ||
発注額 2,220 百万円以上 | 一般競争入札 | 発注額 2,430 百万円以上 | 一般競争入札 |
発注額 2,220 百万円未満 | 指名競争入札 | 発注額原則 25 百万円以上 2,430 百万円未満 | 条件付き一般競争入札 |
発注額原則 25 百万円未満 | 指名競争入札 |
しかしながら、この入札制度改革は本市に限った制度改革であり、外郭団体まではその対象となっていません。
≪表 3-13 各公社の入札・契約制度≫
団体名 | 現行の方式 | 制度改革 実施予定 | 実施しない理由他 |
保全公社 | 市に準じた 方式 | 未定 | 「営繕行政あり方検討委員会」の答申を踏まえ具体的に検討 予定。 |
助成公社 | 市に準じた 方式 | なし | 過去数年、大規模な建設工事を実施していないため。(25 百 万円以上の工事は有り) |
供給公社 | 指名競争入札 ・随意契約 | 未定 | 入札制度改革実施の方向で、今後具体的内容を検討する。 |
開発公社 | 指名競争入札 ・随意契約 | あり | 平成17 年度実施予定である横浜市の委託・物品等の入札制 度の見直しを受けて、内容を検討する。 |
横浜市の制度改革前ではありますが、保全公社では調査等依頼方式による随意契約が大半を占め(第4章4参照)、供給公社では神奈川区民文化センター建設工事が市から発注され、各 25 百万円以上の内装工事の半数が予定価格を下回る落札者がなく、最低価格入札者との随意契約となっています(第6章4参照)。
談合等の不正行為の防止、入札における競争性・透明性の向上や工事の質の確保などを目的とした入札制度改革の制度趣旨からすれば、外郭団体においても市の施策の一翼を担っている限り、同様に改革を適用すべきであり、一般競争入札の導入により、外郭団体を経由した迂回発注を防ぐことが可能となります。
<意見>「外郭団体において条件付き一般競争入札の導入を求めるもの」
横浜市では入札制度改革において条件付き一般競争入札が導入されましたが、外郭団体は対象外です。談合等の不正行為の防止、入札における競争性・透明性の向上や工事の質の確保などを目的とした制度改革の趣旨からすれば外郭団体にも改革を適用すべきであり、また、一般競争入札の導入により、外郭団体を経由した迂回発注を防ぐことが可能となります。こうした観点から、外郭団体においても本市と同様に条件付き一般競争入札を導入する必要があると考えます。(保全公社、助成公社、供給公社)
4.債務負担行為
(1)先行取得に対する債務負担行為の設定状況
4公社のうち、開発公社と保全公社において、横浜市の依頼により土地や建物等を取得または建設するいわゆる先行取得がなされています。開発公社の土地、保全公社の学校校舎がそれです。これらは後年度に横浜市が買い取る契約になっていることから、いずれも債務負担行為に当たるのではないかと考えられます。
そこで、先行取得に関する債務負担行為の設定状況を調査してみました。その結果は以下のとおりです。
≪表 3-14 開発公社を通じた土地購入にかかる債務負担行為設定状況≫
(平成 16 年3月 31 日現在) (単位:百万円)
項 目 | 金額および割合 |
開発公社の先行取得にかかる保有土地(簿価) うち、横浜市からの依頼による先行取得分(a) | 306,639 305,783 |
横浜市における債務負担行為設定額 土地購入にかかる財産の取得、請負契約の締結等に係るもの(b)借入金にかかる債務保証、損失補償等に係るもの | - 281,404 |
開発公社を通じた土地購入にかかる債務負担行為の設定率(b)/(a) | -% |
≪表 3-15 保全公社を通じた学校校舎建設にかかる債務負担行為設定状況≫
(平成 16 年3月 31 日現在) (単位:百万円)
項 目 | 金額および割合 |
保全公社の先行取得にかかる学校校舎(簿価) うち、横浜市からの依頼分(a) | 4,010 4,010 |
横浜市における債務負担行為設定額 学校校舎購入にかかる財産の取得、請負契約の締結等に係るもの(b)借入金にかかる債務保証、損失補償等に係るもの | - 2,570 |
保全公社を通じた校舎購入にかかる債務負担行為の設定率(b)/(a) | -% |
(2)債務負担行為
債務負担行為について、地方自治法第 214 条では次のように規定されています。
第 214 条 歳出予算の金額、継続費の総額又は繰越明許費の金額の範囲内におけるものを除くほか、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない。
債務負担行為とは、継続費および繰越明許費が数年度にわたって執行される事業全体の経費をあらかじめ予算として定めておくものであるのに対して、次年度以降に自治体の長が執行できる債務負担の限度額、期間につきあらかじめ議会の決議を求め定めておく制度で、特に物件の購入または建設工事にかかるものについては、債務負担の原因となる事実が数年度にわたって継続する場合に設定するものです。
これは、地方公共団体が債務を負担する行為が、かつては予算の対象外とされていましたが、後年度の支出義務の負担を伴いいずれ歳出予算に計上されることから、予算の審議上あるいは住民の理解のための便宜から、さらに財政健全化の見地から、歳出予算と一体化して見ることが必要であるという趣旨で単年度予算主義の例外として設けられた制度と言われています。
なお、地方公共団体の場合、債務負担の期間について、国の場合のような原則として最長期間5年以内という制限はありませんが、合理的な期間内に留めることが運用上必要であると言われています。
(3)債務負担行為の種類
開発公社を通じた公共用地の先行取得の場合を例にして、債務負担行為の概念図を示すと、以下のとおりです。
債務負担行為(B)
(281,404 百万円)
損失補償
先行取得
買取り
代金支払
購入依頼
債務負担行為(A)
(305,783 百万円)
議 会
横 浜 市
公 社
地権者
融資元
返済
融資
≪図 3-2 2つの債務負担行為の概念図≫
債務負担行為
(A・B)の予算計上
議決
横浜市の予算において「債務負担行為のうち財産の取得、請負契約の締結等に係るもの」として区分される(A)の債務負担行為は、契約等の存在により将来における発生の可能性が高い、もしくは確定している支払義務です。これに対して、同じく「債務負担行為のうち債務保証、損失補償等に係るもの」として区分される(B)の債務負担行
為は、損失補償先である公社等の債務不履行によりはじめて横浜市が代位弁済を迫られる、発生の可能性が低い偶発債務です。つまり、(A)の債務負担行為と(B)の債務負担行為は、その将来の支出の発生可能性が全く異なるため、将来の財政負担に関して大きく意味が違うのです。したがって、両者を混同することは厳に慎まなければなりません。
なお、市が行ってきた損失補償は、後年度に市が買い取ることを前提に公社が行った用地買収・施設整備に伴う借入金に対するものですので、市が当該資産を買い取ることにより借入金が返済されるならば、損失補償は消滅します。よって、2種類の債務負担行為があっても、市の財政負担は実質的には当該資産の買取りのみであることはいうまでもありません。
(4)先行取得と債務負担行為の設定
土地開発公社が地方公共団体の要請により公共用地の先行取得を行う場合に関して、旧自治大臣官房総務審議官と旧建設省建設経済局長の連名により平成 12 年4月 21 日付けで各都道府県知事および各政令指定都市市長宛に出された通知「『公有地の拡大の推進に関する法律の施行について(土地開発公社関係)』の改正について」のなかに、次のような記載があります。
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(2)土地開発公社は、設立団体の必要とする土地をはじめ、国、他の地方公共団体等の用地の取得を行う場合においては、これらによる買取りの見通し等について十分検討の上、これらとの間で、関係法令に従い、買取予定時期、買取予定価額及び用途を明示した用地取得依頼契約を書面で締結すべきものであること。(以下、省略)
(3)地方公共団体が、土地開発公社と用地取得依頼契約を締結する際には、地方自治法・・・・・・第 214 条の規定により、予算で債務負担行為として定めておかなければならないこと。(以下、省略)
つまり、この通知に従えば、土地開発公社を通じて用地を先行取得する地方公共団体は、財源の手当ができ公社から用地を買い取れることとなった時点ではなく、公社と先行取得の依頼契約を締結する時点で土地の買取り義務に対して債務負担行為を設定し予算に計上することが義務付けられることになります。したがって、債務保証にかかる債務負担行為(B)だけを設定し、土地の購入にかかる債務負担行為(A)を設定しない実務は認められないことになります。片や公社に対して、片や金融機関に対してと設定対象が異なるのですから、両者に債務負担行為を設定しなければならないのです。
また、校舎建設に関して具体的な通知等は出されていませんが、上記通知の趣旨を勘案するならば、校舎の先行取得についても同様であると考えられます。
(5)横浜市の債務負担行為の設定判断
横浜市は、この通知以降の取得依頼土地の調達資金にかかる開発公社の銀行借入金につき「市中の金融機関が公社に融資することにより損失を生じた場合の補償」としての債務負担行為と、市の資産の購入義務にかかる債務負担行為の2種類を適切に設定しています。しかし、それ以前の土地取得については、損失補償 2,814 億円にかかる債務負
担行為のみが設定されており、市の土地の購入義務 3,057 億円にかかる債務負担行為は設定されていません。また、保全公社に取得を依頼した学校校舎の買取りに関しては、従前から損失補償 26 億円にかかる債務負担行為のみが設定されており、市の校舎の購入
義務 40 億円にかかる債務負担行為は設定されていません。以上を要約すると次のようになります。
≪表 3-16 資産の先行取得依頼にかかる債務負担行為の設定≫
依頼先公社名 | 保全公社 | 開発公社 | |||
資産の種類 | 学校校舎 | 土地 | |||
債務負担行為の種類 | 資産の買取り | 損失補償 | 資産の買取り | 損失補償 | |
設定 時期 | 旧自治省通知以前 | × | ○ | × | ○ |
旧自治省通知以降 | × | ○ | ○ | ○ |
この点について、財政局は「本市では、土地開発公社の市中金融機関からの借入金に対する損失補償として、毎年度その限度額について債務負担行為の設定を行っており、その際に平成 12 年度以前に先行取得した保有土地にかかるその借入金の限度額枠であるとしてきたので、改めて、土地の購入にかかる債務負担行為の設定は行っていませんでした。」と回答しています。つまり、市の買取りを前提とした土地取得のための借入金に対する損失補償にかかる債務負担行為の設定を議会から承認されていることから、土地の買取りについても承認を受けているものと判断していると言うことです。
(6)財政運営健全化への期待
横浜市では、「中期財政ビジョン」(平成 15 年 10 月)において、外郭団体の借入金残高のうち「市税等で償還するもの」を明らかにするという、地方公共団体としては先駆的な情報開示を行っており、このことは高い評価に値します。
前述したように、購入義務にかかる債務負担行為を適時・適切に設定するということは、その負担が歳出予算に織り込まれるまでは実際の支出は発生しないものの、議会において買取りの上限金額と期限を正式に意思表明することです。これは努力目標ではなく、確約になります。したがって、それを担保するためには、将来の財源の確保が必須条件であり、財政難の折、これが今日まで債務負担行為の設定が十分になされていない最大の要因ではないかと推察するところです。
横浜市の財政状態の劇的な改善が見込まれない中で、未設定の債務負担行為を直ちに全額設定することに実務上の困難さが予想されることから、「土地開発公社経営健全化
計画」等により開発公社の保有土地の処分計画を策定し、これを進捗していくことで保有土地の縮減を図るべく、努めています。そこで、横浜市はその処分計画に整合した土地の購入にかかる債務負担行為を設定し、その実行可能性を確保すべきであると考えます。こうすることによって、横浜市が開発公社や保全公社に先行取得を依頼した土地や学校の買取りを先送りする間に金利が膨れ上がるといった事態や、横浜市が購入代金を支払わないまま公園や学校などに供用するといった、不健全な財政運営に一定の歯止めがかかるものと期待できます。
<意見>「先行取得依頼資産の買取りスケジュールに整合した債務負担行為の適切な設定を求めるもの」
開発公社と保全公社において、横浜市の依頼により土地と学校校舎を取得するいわゆる先行取得がなされており、これらは後年度に横浜市が買い取る契約になっています。
旧自治省通知では「先行取得依頼土地の買取りにかかる債務負担行為の設定」を明記しています。横浜市は、この通知を受けて、旧自治省通知以降の取得については、取得依頼土地にかかる調達資金である開発公社の銀行借入金につき「市中の金融機関が公社に融資することにより損失を生じた場合の補償」としての債務負担行為と、土地の購入義務にかかる債務負担行為の2種類を適切に設定しています。しかし、それ以前の土地取得については、損失補償にかかる債務負担行為のみが設定されており、横浜市の土地の購入義務にかかる債務負担行為は設定されていません。横浜市の財政状態の劇的な改善が見込まれない中で、未設定の債務負担行為を直ちに全額設定することに実務上の困難さが予想されることから、「土地開発公社経営健全化計画」等により開発公社の保有土地の処分計画を策定し、これを進捗していくことで保有土地の縮減を図るべく、努めています。そこで、横浜市はその処分計画に整合した土地の購入にかかる債務負担行為を設定し、その実行可能性を確保すべきであると考えます。
保全公社に先行取得を依頼した学校校舎の購入義務に関しては、従前から損失補償にかかる債務負担行為のみが設定されており、校舎の購入義務にかかる債務負担行為は設定されていません。横浜市は、直ちに先行準備資産としての学校校舎の買い取り計画を策定し、計画に整合した学校校舎の購入にかかる債務負担行為を設定し、その実行可能性を確保すべきであると考えます。また、先行取得については、開発公社と同じように今後新たに発生する全ての購入義務についても債務負担行為を設定しなければならないと考えます。
こうすることによって、横浜市が開発公社や保全公社に取得を依頼した土地や学校の買取りを先送りする間に金利が膨れ上がるといった事態や、横浜市が購入代金を支払わないまま公園や学校などに供用するといった、不健全な財政運営に一定の歯止めがかかるものと期待できます。(財政局、教育委員会事務局)
【参考文献】
醍醐聰「自治体会計における負債の認識と開示」『JICPA ジャーナル』平成 12 年 7 月
醍醐聰編著『自治体財政の会計学』平成 12 年9月、新世社
5.事業用資産の時価評価差額
各公社で保有する先行取得土地、事業資産および賃貸用資産の土地について、時価の変動に伴う時価評価差額が認められます。平成 15 年度末の状況は以下のとおりです。
≪表 3-17 平成 15 年度末の時価評価差額≫ (単位:百万円)
科目 | 保全公社 | 助成公社 | 供給公社 | 開発公社 | 合計 |
流動資産 先行取得土地 | - | - | - | 306,639 | 306,639 |
流動資産 事業資産 | - | - | 10,202 | - | 10,202 |
固定資産 賃貸用資産 | - | 16,384 | 23,113 | - | 39,497 |
評価対象資産合計 | - | 16,384 | 33,315 | 306,639 | 356,338 |
時価評価差額 | - | △681 | 5,093 | △156,038 | △151,626 |
資産合計 | 6,121 | 368,175 | 46,993 | 309,432 | 730,722 |
修正後資産合計 | 6,121 | 367,493 | 52,086 | 153,394 | 579,095 |
正味財産又は資本 | 20 | 10,670 | 5,238 | 14,809 | 30,737 |
修正後正味財産又は資本 | 20 | 9,989 | 10,331 | △141,229 | △120,889 |
(注)供給公社の「正味財産又は資本」の金額には、特定準備金の金額を含んでいます。
上表のとおり、4公社合計の時価評価差額は 151,627 百万円となります。以下に各公社に認められる時価評価差額による修正後の財政状態を図示してみます。
≪図 3-3 時価評価差額を考慮した修正財政状態≫
評価差額
評価差額
負債
負債
負債
負債
負債
負債
資産
資産
資産
評価差額
資産
資産
資産
資本
正味財産
助成公社 供給公社 開発公社
正味財産
資本
資本
保全公社は土地を保有していないので時価評価差額は発生していません。
助成公社は建物事業を行っており、一部の建物については土地を自前で所有しています。その中でもヨコハマポートサイドビルの土地については、取得年度が平成6年度であり、取得価額に比して現在の時価は著しく下落しており、その時価評価差額はマイナス 1,440 百万円となっています。建物事業全体ではマイナスの時価評価差額 681 百万円となっています。
供給公社には、分譲・建設事業の資産と賃貸管理事業の資産に時価評価差額が認めら れます。分譲・建設事業については、事業を継続するとしていますが、平成 15 年度末時 点において、保有する事業用の分譲資産を売却した場合、1,413 百万円の損失が発生する ことが見込まれています。売却時に損失の計上を行うのではなく、分譲資産の事業執行額が売却時の正味実現可能額を超過すると認められた場合に損失を計上する、いわゆる低価基準を適用することが望ましいとされています。また、賃貸管理事業については、一般賃貸住宅であるポートサイド・レイナ、ファンテの取得が平成5年3月であるため、現在の時価に比較してマイナス 2,842 百万円の時価評価差額が認められますが、事業全
体ではプラスの時価評価差額 6,506 百万円となっています。分譲・建設事業と賃貸管理
事業を併せてプラスの時価評価差額 5,093 百万円となっています。
開発公社では、先行取得土地の帳簿価額が 306,639 百万円となっており、総資産の 99.1%を占めています。その先行取得土地についても、いわゆるバブル期に取得したものが大半を占めており、現在の時価と比較すると 156,038 百万円のマイナスの時価評価差額が認められます。
6.各公社の事業の課題と事業再構築
(1)連結経営
横浜市のまちづくりを担う、土地・建物の開発・供給・管理等の事業を行っている出資団体については、社会経済状況の変化を踏まえ、そのあり方等が検討されています。
一方、民間企業において、連結経営が叫ばれて久しくなります。連結経営とは、従来 からの親会社のみの業績の伸長を重視する経営ではなく、子会社も含めた企業集団全体の業績を重視する経営であり、総合的にグループ企業全体の実態を的確に把握・判断し、経営の舵取りを行おうとするものです。
横浜市においても、市が過半を出資した外郭団体が多数存在します。これらを連結経営のグループ企業と見て、横浜市を中心とした公的サービス供給主体としてグループ全体の最適化を図るという視点で再度見直してみることにより、横浜市の改革がより実効性の上がるものになると考えます。横浜リバイバルプランの下、各団体においても様々な改革が実行されつつありますが、民間企業ではスタンダードとなりつつある連結経営的な局や団体の枠を超えた視点での検討が不可欠と考えます。
今年度の包括外部監査では、保全公社、助成公社、供給公社、開発公社、およびその所管局を監査対象としています。このように広い範囲を敢えて監査対象としたのは、横浜市と外郭団体とを一体として見た場合に、オール横浜市的な見地からの判断ができるのではないかと考えたためです。
(2)各公社の事業の課題
以下の各章でそれぞれの公社が抱える事業の課題を分析・検討していますが、事業の方向性と併せてこれを要約すると次のとおりです。
≪表 3-18 各公社の事業の課題と方向性≫
公社・事業 | 事業の課題 | 事業の方向性 |
保全公社 | ⚫ 教育委員会からの委託工事が全体の 75%と依存割合が高い。 ⚫ 横浜市関連の派遣職員は全体の 85%を占めており、その平均年齢もかなり高いものとなっている。 ⚫ 工事発注金額の 91%が随意契約となっている。 ⚫ 修繕した施設のデータが蓄積されていない。 ⚫ 保全事業と関連性がない学校施設の建設を行っている。 | |
保全 | ストックマネジメントの観点から全市的な施設保全の機能を分担する。 | |
学校建設・譲渡 | 学校建設事業を収束させる。 | |
助成公社住宅融資 建物・駐車場 | ⚫ 債権回収会社(サービサー)への回収業務の委託化を検討する。 ⚫ 貸出債権の流動化を検討する。 ⚫ 現状実施している融資業務の存廃を検討する。 ⚫ 融資業務廃止に伴う人員配置の見直しを検討する。 ⚫ 建物事業および駐車場事業の切り離しを検討する。 | 個人住宅融資事業の廃止に伴い、債権回収に専一する。 融資業務と関連性が認められないため分割する。 |
供給公社 住宅分譲・建設 | ⚫ 今後、新たに土地を取得しての一般的な分譲住宅事業は行わない。含み損を抱えた分譲事業を早期に終了させる。 ⚫ 今後は住宅関連の支援・管理運営を中心事業とするが、横浜市営住宅管理の受託業務は、指定管理者制度への移行の可能性が検討されている。 ⚫ 助成公社との統合が検討されているが、市が要望していた供給公社が融資事業を実施できるとする地方住宅 供給公社法の改正の行方が見込めない状況である。 | 一般分譲住宅事業の終了に伴い、中心事業を住宅関連の支援・管理運営とする。 |
開発公社 土地取得・処分 附帯(賃貸) | ⚫ 保有土地に著しい時価評価差額が認められる。 ⚫ 平成 17 年開始事業年度から改訂経理基準要綱の適用が予定され、保有土地の時価評価差額の計上が強制される場合がある。 ⚫ 中期の事業見通しでは、今後の土地の処分いかんによっては、横浜市の財政支援が必要となることが予想される。 | 保有土地の早期処分を計画的に進める。 |
(3)事業の再構築
4公社の現在の事業を分類整理し、これを4つの事業群に再構成します。連結経営的な視点で事業の課題を検討するためのもので、必ずしも4つの経営体をイメージするものではありません。その上で各事業群の将来の方向性を示し、早期に整理縮小や終了が見込まれる順に並べてみました。
≪図 3-4 4公社の事業の性格的分類≫
現行
保全公社
事業の性格別分類 整理・継続の方向性
保全
学校建設・譲渡
処分・所管替後、早期に終了
助成公社
住宅融資
団体信用生命保険市街地整備融資
早期の買取後、清算
建物賃貸
公共駐車場運営
供給公社
住宅分譲
賃貸住宅・施設管理
管理受託住宅管理受託事業
民間で広く行われており、将来的に収束
長期割賦
開発公社
効率的な経営形態を採用し存続
土地取得・造成・処分
附帯(賃貸)
事業系
金融系
先行取得
処分・所管替
以下に、事業の性格別分類に基づいた、事業の整理・継続の方向性を説明します。
□処分・所管替(個別事業ごとに処分・所管替えを実施し早期に終了する。)
助成公社の建物等賃貸および公共駐車場運営、供給公社の一般分譲住宅については、民間でも同種の事業が営まれていることから、公社がこれらの事業を行うこと自体の意義が問われています。また、これらには不採算の事業も見られ、別団体に処分または移管して統合した方が経済的・効率的なものもあります。
なお、供給公社の一般分譲住宅事業については、今後新たな土地の取得を伴う一般分譲住宅を行わないことを既に決定しています。
□先行取得(早期の買取り後、清算する。)
開発公社の先行取得土地、保全公社の学校校舎建設について、横浜市の買取りが完了すれば、追加取得がない限り清算される事業です。開発公社の附帯事業である未利用地の一時貸付については、当面は事業系に貸し出すことで賃貸料を得て、その利益で横浜市の買取り価格を引き下げることもできます。
□金融系(民間で広く行われており将来的に収束する。)
助成公社の融資および団体信用生命保険を中心に、供給公社で行われている長期割賦を加え、融資をメイン事業とした金融系団体をイメージします。金融系は、法的規制の面だけでなく、内部統制面からも事業系とは分割することが望ましいと考えます。こうした融資事業は、民間で広く行われており、地方公共団体が独自に行う意義が低いため、将来的には収束に向かうものであると考えます。
なお、助成公社の個人住宅融資事業については、民間金融機関の住宅融資が充実してきたこと等から平成 15 年度末の申し込みをもって廃止することを決定しています。
□事業系(効率的な経営形態を採用し存続する。)
保全公社の保全をはじめ、供給公社の賃貸管理、管理受託といった事業は金融系と切り放して一まとめにした事業系団体とします。一般住宅分譲を除いて、開発から建設、賃貸管理、保全まで一貫して手掛けます。ただし、保全事業と賃貸管理事業等とでは、そのサービス利用者が前者は行政、後者は市民とそれぞれ異なることから、事業の効率性の面からは別々の経営体が求められることも考えられます。
なお、開発公社の未利用土地の賃貸事業は、本来は速やかに買い取られ供用されるべきですが、現状における実業面を無視できないため事業系に加えてあります。
公社の整理・統合・あり方等が各所で検討されていますが、公社の存廃よりは、まずは個別の事業や物件ごとにスポットを当て採算性や存続意義を検討する視点が不可欠であり、時として所管局を超えて他団体の類似事業や近接事業と併せて検討することが必要であろうと考えます。同類の事業を整理・再構築することにより、各団体の目標が明確になるだけでなく、公社としての役割を再確認することができます。また、組織形態についても、より効率的な運営ができるようになるものと考えます。
その結果として、自ずと公社の整理・統合・あり方等が導かれるものであると考えます。横浜リバイバルプランの理念である「民の力が存分に発揮される社会をつくる」を基本線に熟慮した結果です。ここに示したものはあくまでも試案であり、これを実行するためには、詳細な検討や慎重な効果測定が必要になります。これらを考慮しながらも、よりよい改革を推進する上での検討の参考になればと思います。