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得 法務編
契約書を交わす必要性、
契約書の基本的な内容を紹介します
栃木県弁護士会 xxx中央法律事務所 弁護士
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企業の経営に契約は不可欠です。商品の仕入・販売は売買契約、アウトソーシングや製造委託は業務委託契約、融資は消費貸借契約、不動産や物の貸し借りは賃貸借契約、建物の建築は請負契約、従業員を雇い入れるのは雇用契約など、例を挙げればきりがありません。
しかしながら、法律相談を受けていると、契約書が交わされていないケース、取引の相手方が示してきた契約書を特に吟味することなくそのままサインしてしまっているケースなどがよく見受けられます。
今回は、契約書を交わす必要性や、契約書の基本的な内容をご紹介します。
第1 契約書を交わす必要性について
1 契約書は、なぜ交わす必要があるのでしょうか。
取引先との間で、契約書を交わさなくても問題なく取引ができている、というケースは多々あります。このため、
「ウチは契約書がなくてもうまくやれているから、わざわざ契約書を交わす必要性を感じない。」という意見には、もっともな部分もあります。
2 しかし、契約書は「何かがあったとき」に大きな役割を果たします。
事故があったとき、納期に間に合わないとき、納品した商品や提供したサービスに欠陥や不備があったときなど、取引先との間でトラブルが発生した際に、どちらの負担や責任で、どのように解決するか、を契約書では予め決めておくことができます。
取引を開始する時点で書面化してルールを決めておくことで、トラブルが発生してから後出しで言い訳することを防ぐこともできます。
3 一方、契約書を作らず、口約束だけの状態でトラブルが発生した場合、まず、約束をしたか否かについて、言った・言わない、という水掛け論になってしまうおそれがあります。また、双方で共通の理解をしていたつもりが、それぞれが異なった見方、独自の受け止め方をしていて、実は双方の理解が一致していなかった、ということもあります。
他にも、長期間に亘る取引では、当初の担当者の間では共通の理解となっていたことが、担当者が変わることで共通の理解が失われてしまうこともあります。
このように契約書を作っていない場合、思ってもみない責任を取らされる、対応してくれて当然だと思っていることを相手が対応してくれない、という事態が起きるリスクが高まります。
4 契約書は、当事者間で当然だと思うことを文章として記載して予め合意し、共通理解としておくことで、紛争となることを避け、紛争を解決しやすくするための予防策、自衛策となります。
このような理由から契約書を交わす必要があります。
第2 契約書の基本的な内容
1 契約書の構成
契約書は多くの場合、①タイトル、②前文、③本文、④後文、⑤作成日付、⑥当事者の署名捺印(記名押印)欄で構成されます。
内容面で重要なのは「③本文」で、当事者間の合意事項が記載されます。
2 個別の契約条項について
(1)目的条項
一般に、契約書を作成するための基本的な目的が記載される、総論的な条項です。契約書に書いていな
い事態が生じたときなどに、契約の解釈の指針とされることがあります。
【条項例】甲と乙は、甲が実施する〇〇事業について提携することとし、甲が乙に××を委託し、乙がこれを受託することを目的とする。
(2)取引の内容に関する条項
売買や賃貸借であれば何を売り買い・貸し借りするのか、③務委託であれば、何を委託するのか、を明確に定める必要があります。
当然のことのように思われますが、システム開発の③務委託契約などでは、どこまでが契約の範囲内なのか、ということが、後になって問題となることもありますので、できる限りxx的に明確に決める必要があります。
【条項例】乙は、本契約に基づき、××業務として以下の業務を行う。
①〇〇業務 本件〇〇に関し、1か月に1回、毎月□日までに、〇〇を行う。
②△△業務 本件〇〇に××が生じた際、△△を行う。
(3)費用に関する条項
企③の契約では、通常対価が発生しますので、代金、賃料、報酬といった費用を定める必要があります。併せて費用の支払時期や条件、計算方法、支払先・支払方法等を定めることになります。
③務委託や請負などの契約で、段階的に費用を支払う場合は、どの段階でいくらを支払うか、についても定めるべきこととなります。
【条項例】甲は、乙に対し、××業務の対価として、毎月○日限り、月額△円を乙の指定する口座に振り込んで支払う。振込手数料は甲の負担とする。
(4)契約期間、契約の解消に関する条項
ア 一回的な売買契約等の場合を除き、契約期間を定めます。期間限定の契約は終期を明記します。一方、特に期間を限定しない契約は、所定の時期までに当事者のいずれからも異議が出なければ同一条件で一定期間(1年間など)の自動更新とすることが一般的です。
イ 契約の解消に関する条項も定める必要があります。
契約違反があったときに、相手の意思に関係なく一方的に契約関係を解消する「解除条項」は、どの契約の類型でも必要となります。
また、継続的な契約で、互いに拘束する必要性が高くない契約類型では、一定の予告期間を置いて通知することで自由に契約関係を解消できる「中途解約条項」を定めることがあります。
近時は、反社会的勢力と関係が無いことを表明保証し、これに反したときは契約を解除できる、とする
「暴排条項」が盛り込まれることも多くなっています。
(5)一般条項
上記(1)から(4)のほかにも、以下のような条項があり、契約の種類、性質、想定されるリスク等に応じ、組み合わせたり使い分けたりして、契約書の内容を決めることになります。
・ 秘密保持条項:契約に伴いやり取りする秘密情報の取扱いを定める条項
・ 譲渡禁止条項:契約上の地位や、契約によって発生する権利義務の移転を原則として禁止する条項
・ 再 委 託 条項:委託③務の再委託を一定の場合に限り認める条項
・ 損害賠償条項:契約違反があった場合の損害賠償の金額、範囲等を定める条項
・ 不可抗力条項:契約が守れなかった場合でも、例外的に責任が生じない場合を定める条項
・ 表明保証条項:ある時点において自社に関する一定の事項がxxかつ正確であることを表明し、保証する条項
第3 最後に
今回ご紹介したのは、契約書に関するほんのさわりの部分ですが、契約書を交わすことについて、少しでも興味・関心を持っていただければと思います。契約書や契約に関し、お困りのことがあれば、弁護士にご相談ください。
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あしぎん経済月報 Vol.162 2022年12月号 あしぎん経済月報 Vol.162 2022年12月号