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平成22年4月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成18年(ワ)第24088号 損害賠償請求事件口頭弁論終結日 平成22年2月26日
判 決
xxx世田谷区 <以下略>
x x 株式会社ハイパーキューブ同訴訟代理人弁護士 x x x
xxx世田谷区 <以下略>
被 告 株式会社インデックス・ホールディングス
xxx世田谷区 <以下略>
被 告 株 式 会 社 イ ン デ ッ ク ス xxxxx区 <以下略>
被 告 A
上記3名訴訟代理人弁護士 x x x x同 x x x
同 x x x x
同 x x x x
同 x x 一
同 x x x x主 文
1 被告株式会社インデックス・ホールディングス及び被告株式会社インデックスは,原告に対し,各自38万円及びこれに対する平成20年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社インデックスは,原告に対し,77万円及びこれに対する平成
20年10月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,被告株式会社インデックス・ホールディングスと原告との間においては,これを2000分し,その1を被告株式会社インデックス・ホールディングスの負担とし,その余は原告の負担とし,被告株式会社インデックスと原告との間においては,これを1500分し,その1を被告株式会社インデックスの負担とし,その余は原告の負担とする。
5 本判決の第1項及び第2項は,仮に執行することができる。
事 実 及 び 理 由
第1章 請求
第1 主位的請求
1 被告らは,原告に対し,各自33億8028万3423円及び別紙遅延損害金起算日目録記載の「月別合計」欄記載の内金に対する同目録「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告らは,原告に対し,各自3500万円に対する平成18年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告Aは,原告に対し,550万円及びこれに対する平成18年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 予備的請求
1 被告株式会社インデックス・ホールディングスは,原告に対し,24億95
94万5911円及び別紙遅延損害金起算日目録記載の「月別合計」欄記載1
~74の内金に対する同目録「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告株式会社インデックスは,原告に対し,8億4933万7512円及び別紙遅延損害金起算日目録記載の「月別合計」欄記載75~115の内金に対する同目録「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合に
よる金員を支払え。
3 被告Aは,原告に対し,500万円及びこれに対する平成12年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2章 事案の概要
第1 訴訟物及び主張の要旨
1 訴訟物の概要
本件は,原告が,被告らに対し,主位的に,別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェア(以下,著作xx2条1項10号の2の「プログラム」,同項
10号の3の「データベース」,データ等の電磁気記録及び画面に表示される
文字,画像等の映像又は影像など電磁気的に提供される情報の総体〔マニュアル,設計書等の文書は含まない。〕を意味するものとして「ソフトウェア」と
の用語を使用する。なお,別紙第1ソフトウェア目録には欠番がある。)について,著作権(複製権,翻案権,公衆送信権〔送信可能化権を含む。〕)侵害,
著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)侵害若しくはプログラム著作権のみなし侵害(著作xx113条2項)の不法行為又は著作物の利用許諾契約違反の債務不履行に基づいて,損害賠償金33億8028万3423円(弁護士費用
3000万円を含む。)及びこれに対する不法行為後の日(月ごとの計算)又は本件訴状送達日の翌日である平成18年11月8日(弁護士費用及び著作者人格権侵害に基づくものにつき)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,被告Aに対し,著作権(複製権,翻案権,公衆送信権〔送信可能化権を含む。〕)侵害の不法行為又は著作物の
利用許諾契約違反の債務不履行に基づいて,損害賠償金550万円及びこれに対する本件訴状送達日の翌日である平成18年11月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,また,予備的に,上記ソフトウェアを使用したとの不当利得返還請求権に基づいて,被告株式会社イ
ンデックス・ホールディングス(以下「被告ホールディングス」という。)に対し,
不当利得金24億9594万5911円の返還及び同不当利得金に対する受益後の日(月ごとの計算)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利
息を,被告株式会社インデックス(以下「被告インデックス」という。)に対し,
不当利得金8億4933万7512円の返還及び同不当利得金に対する受益後の日(月毎の計算)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息を,被告Aに対し,不当利得金500万円の返還及び同不当利得金に対する受益開始の日である平成12年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による法定利息の支払を,それぞれ求める事案である。
2 原告の主張の要旨
原告は,別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアは,プログラム以外の部分も含めてすべての部分について原告が著作者である著作物であるところ (原告代表者の発意に基づき原告代表者が原告の業務につき職務上作成したこと,又は同様に原告代表者が作成し原告の著作名義の下に公表することによる職務著作),被告らがこれら著作物を著作物の利用許諾期間を超えて使用したこと(以下「期間制限違反」という。),利用許諾数量を超えて使用したこと(以
下「数量制限違反」という。),許諾条件を越えて改変したこと(以下「改変」という。),原告の著作者名を表示しなかったこと(以下「氏名非表示」という。),第三者に複製物を交付してその内容を開示したこと(以下「複製物の交付」という。),第三者に改変若しくは2次的著作物を作成させたこと(以下「翻
案」という。)が著作権侵害行為に当たるとともに,著作物の利用許諾契約違反の債務不履行(以下「許諾契約違反」という。)にも当たり(選択的併合),また,被告らがこれらソフトウェアのプログラム部分を使用していることが著作xx113条2項のみなし侵害行為(以下「みなし侵害」という。)に当たると主張している。
なお,原告は,平成22年2月23日付け訴え変更申立書で,請求額を拡張する一方,別紙第2ソフトウェア目録記載のソフトウェア(「恋愛の神様DX」)
及び同第1ソフトウェア目録⑦(「愛と出会いの占い館」)以外のソフトウェアについては,その損害又は不当利得を使用許諾期限より前のものに限定し,こ
れに伴い,上記除外されたソフトウェアに係る期間制限違反の主張を撤回した。
3 被告らの主張の要旨
被告らは,上記ソフトウェアの著作者及び著作物性を争うほか,その使用に係るプログラムと上記ソフトウェアに含まれるプログラムとの間には同一性・類似性がないと反論するとともに,被告らには著作物の利用許諾契約に違反して上記の著作権侵害行為又は債務不履行をした事実はないと反論している。
なお,上記2のとおり,原告が期間制限違反の主張を一部撤回したことに伴い,期間制限違反に関する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を原告が放棄したとの被告らの反論も撤回された。
第2 前提となる事実
1 当事者等
(1) 原告
原告は,平成7年5月に有限会社として設立され,平成12年2月に株式会社に組織変更された,コンピュータによるデータの処理及び通信並びにソフトウエアの開発,制作及び販売等を目的とする資本金1000万円の株式会社である。
原告は,平成10年ころから被告ホールディングスにサーバ等のハードウェアを販売し,その保守管理の委託を受けていたが,平成11年ころからはプログラム開発の受注も受けるようになった。
原告は,主に原告代表者とその妻がプログラム開発等を行い,多いときでも社員数名程度の規模であった会社である。
(争いのない事実,原告代表者〔第1回,第2回〕,甲57,弁論の全趣旨)
(2) 被告ホールディングス
ア 被告ホールディングスは,平成7年9月に設立された株式会社であり(当
時の商号は「株式会社ノザーク・ビーエヌエス),平成9年9月に商号を「株
式会社インデックス」に変更するとともに会員を対象とした情報提供サービスの仲介・斡旋等を主たる事業とし,平成9年10月からはモバイルコンテンツ配信サービスを開始した。(争いのない事実,甲34別紙3,55,1
03,被告A,弁論の全趣旨)
イ その後,被告ホールディングスは,NTTドコモのiモードやKDDIの EZwebなどのインターネット接続が可能な携帯電話やPHSサービスにおけるコンテンツを企画,制作又は開発するとともに,これを各移動体通信キャリアに提供して利用者に配信し,各移動体通信キャリアの代金回収代行サービスを使用して情報料を利用者から直接課金,回収する事業や,ライセンス事業等を行っている。(甲3,4,34別紙3,103)
ウ 被告ホールディングスは,平成13年3月,日本証券市場に株式を店頭登録し,平成16年12月,上記店頭登録を取り消し,ジャスダック証券取引
所に株式を上場した。また,被告ホールディングスは,平成18年6月1日,
自らを新設分割会社,被告インデックスを新設分割設立会社とする会社分割を行い(以下,単に「会社分割」という。),商号を現商号に変更した。
会社分割において,被告ホールディングスは,被告インデックスに対し,コンテンツ事業(インターネットへ接続可能な携帯電話などへのコンテンツの企画,開発又は配信,顧客企業からのコンテンツを中心とした受託開発及び映像技術や映像ソフト等の開拓及び販売),ソリューション事業(顧客企業からのシステム受託開発,ブロードバンドに関連したシステムサービスの提供等,顧客企業からの請負),コマース事業(モバイル,Web,テレビショッピング等での物販)等の全事業並びにこれに係る一切の資産・負債及びこれに付随する権利義務・契約上の地位を免責的債務引受けの方法により承継させた。
(争いのない事実,甲103,乙44)
エ 被告ホールディングスにおける下記3(1)の「恋愛の神様(NTTドコモ)」
の企画開発の現場責任者は,Bであり,同人は,平成10年2月から平成1
9年1月まで被告ホールディングスに在籍していた。(乙78,証人B)
(3) 被告インデックス
被告インデックスは,平成18年6月1日,会社分割により設立された,会員を対象とした情報提供サービスの仲介・斡旋,コンピュータ及びその関連機器の販売・斡旋等を目的とする株式会社である。(乙20,弁論の全趣旨)
会社分割により,被告インデックスは,被告ホールディングスから,全事業並びにこれに係る一切の資産・負債及びこれに付随する権利義務・契約上の地位を免責的債務引受けの方法により承継した。
(争いのない事実,甲103,乙44)
(4) 被告A
被告Aは,平成9年4月から被告ホールディングスの代表取締役を務めており,同社の株式20%以上を有する。
(争いのない事実,甲34別紙3,103)
(5) 有限会社アカデメイア
ア 有限会社アカデメイア(以下「アカデメイア」という。)は,占い,心理学,
文化教養関連のスクール運営等を目的とする会社であり,その代表者はCである。
アカデメイアは,各種メディアに対する占いコンテンツの原稿制作,配信原稿の提供,各種占いサイトの企画,開発,運営等を業としている。
(甲120,乙43,証人C)
イ アカデメイアには占い師であるXが平成10年から平成16年まで取締役兼講師として稼働していた。(乙91,証人C)
2 著作権
別紙第1ソフトウェア目録記載のソフトウェアのうち,そのプログラム部分
は,原告が著作権を有する。(弁論の全趣旨)
なお,同目録⑬の「さくま式スゴロク(東海道五十三次及び奧の細道)」のプ
ログラム部分のうち,「奧の細道」のプログラム部分について成立した自白は,
原告代表者が作成した未完成プログラムである方の「⑬奧の細道」(後述)に関するものである。
3 原告プログラム
(1) 被告ホールディングスは,いずれも携帯端末向けコンテンツ配信用ソフトウェアである(ただし,後記「⑪四次婆」はパソコン向けコンテンツ配信用である〔甲53,乙93〕。),
(ⅰ)別紙第1ソフトウェア目録記載①の「四次婆」(以下,このソフトウェア及び配信されるサービスを指すものとして「四次婆(DDI)」という。以下同じ。)のうちのプログラム部分(以下「①四次婆」という。)を使用して,「四
次婆(DDI)」の配信サービスを遅くとも平成11年6月ころから,
(ⅱ)同②「恋愛の神様」(以下「恋愛の神様」(NTTドコモ)」という。)のうちのプログラム部分(以下「②恋愛の神様」という。)を使用して,「恋愛の
神様(NTTドコモ)」の配信サービスを平成11年2月から,
(ⅲ)同③「プライベートホームページ」(以下「プライベートホームページ」
という。)のうちのプログラム部分(以下「③プライべートホームページ」という。)を使用して「プライベートホームページ」の配信サービスを平成11年
4月ころから(甲55),
(ⅳ)同⑤「ツヴァイ資料請求プログラム」(以下「ツヴァイ資料請求」という。)のうちのプログラム部分(以下「⑤ツヴァイ資料請求」という。)を使用して,「ツヴァイ資料請求」の配信サービスを遅くとも平成12年2月ころか
ら(乙135の1),
(ⅴ)同⑥「リクルートフロムエーアルバイト情報検索プログラム」(以下「リ
クルート」という。)のうちのプログラム部分(以下「⑥リクルート」という。)
を使用して,「リクルート」の配信サービスを遅くとも平成11年10月ころ
から(乙146の1),
(ⅵ)同⑦「愛と出会いの占い館」(以下「愛と出会いの占い館」という。)のうちのプログラム部分(以下「⑦愛と出会いの占い館」という。)を使用して,
「愛と出会いの占い館」の配信サービスを遅くとも平成12年3月ころから(乙
153の1),
(ⅶ)同⑨「映画館空席情報」(以下「映画館空席情報」という。)のうちのプログラム部分(以下「⑨映画館空席情報」という。)を使用して,「映画館空席
情報」の配信サービスを遅くとも平成10年10月ころから(乙140の1), (ⅷ)同⑪「四次婆」(以下「四次婆(DION)」という。)のうちのプログラ ム部分(以下「⑪四次婆」という。)を使用して,「四次婆(DION)」の配信
サービスを遅くとも平成11年4月ころから(乙145の1),
(ⅸ)同⑫「ゲームコーナー」(以下「ゲームコーナー」という。)のうちのプログラム部分(以下「⑫ゲームコーナー」という。)を使用して,「ゲームコー
ナー」の配信サービスを遅くとも平成11年9月ころから(乙150の1), (ⅹ)同⑬「さくま式スゴロク(東海道五十三次及び奥の細道)」(以下,同「東
海道五十三次」部分を「東海道五十三次」,同「奥の細道」部分を「奥の細道」
という。)のうち,「東海道五十三次」のプログラム部分(以下「⑬東海道五十
三次」という。)を使用して,「東海道五十三次」の配信サービスを遅くとも
平成12年2月ころから(乙151の1),
(xⅰ)同⑯「ガチャピン・ムック」(以下「ガチャピン・ムック」という。)の
プログラム部分(以下「⑯ガチャピン・ムック」という。)を使用して,「ガチ
ャピン・ムック」の配信サービスを遅くとも平成12年2月ころから(乙15
2の1),
それぞれ,そのプログラム,データベース,データなどの電磁気記録を被告ホールディングスの南青山事務所内のサーバに記録し,文字,画像等の映像若
しくは影像又は記録されているデータなどの情報を不特定の利用者又は特定多数の利用者の携帯端末に送信することにより行っていた(以下,上記までのプログラム部分と原告が作成した「奧の細道」のプログラム部分を併せて「原告プログラム」というほか,原告が作成した特定のプログラムという意味でも「原
告プログラム」いうことがある。)。
(それぞれ掲記の証拠のほか,争いのない事実,弁論の全趣旨)
(2) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」ア 配信
被告ホールディングスは,平成10年10月,NTTドコモとコンテンツ提供契約を締結し,平成11年2月のiモードサービス開始と同時に,「②
恋愛の神様」によって制御された「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを開始した。(甲7,34別紙3,55)
イ メニュー構成
「②恋愛の神様」によって制御されていた「恋愛の神様(NTTドコモ)」のメニュー構成は,(ⅰ)「2000~の恋愛」,(ⅱ)「恋専毎日ホロスコ」,
(ⅲ)「今月の運命」,(ⅳ)「今月のプレゼント」,(ⅴ)「合コンでゴン」,(ⅵ)
「2人のxx」,(ⅶ)「片思いの行く末」,(ⅷ)「あの人との相性」,(ⅸ)「お
読みください」,(ⅹ)「無料!心理テスト」,(xⅰ)「登録コーナー」,(xⅱ)「お
まけ」から成っていた。(乙17)ウ 機能
「②恋愛の神様」によって制御されていた「恋愛の神様(NTTドコモ)」の機能としては,①占い結果,心理テスト結果,利用規約等の画面表示をする機能,②占いのための計算等をする機能,③心理テストのための計算等をする機能,④会員登録,会員プロフィール登録をする機能などがある。(乙
17)
エ プログラム言語
「②恋愛の神様」の開発に使用されたプログラム言語は,インタープリタ言語(ソースコードをインタープリタと呼ばれるプログラムに引き渡し,このインタープリタが逐次ソースコードに対応するルーチンを呼び出してプログラムを実行する言語)であるPHP3であり,iモード用のhtml(Webページを記述するマークアップ言語)の中にスクリプト(一連の処理手順の記述)として組み込まれ,その実行結果がhtml内の該当箇所に配置され,その結果,携帯電話等にhtmlに沿った表示がされる。
本件において原告から提出された「②恋愛の神様」のソースコードの総行数は3245行である。
(甲20,乙17,19)オ 構成
(ア) 「②恋愛の神様」には,占いのための計算をしたり,占い結果を画面表示するなどを行う本体プログラムと,占い結果の内容を一覧表示して内容のチェックをしたり,ユーザー情報の削除,追加などをする管理プログラムとがある。(甲22の1・3,乙34)
(イ) 「②恋愛の神様」の本体プログラムは,
(ⅰ)女性(金星)と男性(火星)のそれぞれの星座同士で男女の相性占いを行うプログラム(aisho-p.php3,aisho.php3),
(ⅱ)西洋占星術,四柱推命又は九星気学で今月の運命の占いを行うプログラム(destiny.php3),
(ⅲ)男女カップルの相性占いを行うプログラム(e-gokon.php3,gokon-p.p hp3,gokon.php3),
(ⅳ)生年月日から対応する星座を求めるプログラム(Fseiza), (ⅴ)恋愛運の占いを行うプログラム(holo.php3),
(ⅵ)ルーン石を利用したルーン占いで恋愛の行方の占いを行うプログラム (rune.php3),
(ⅶ)心理テストを行うプログラム(sinri.php3), (ⅷ)タロット占いを行うプログラム(tarot.php3), (ⅸ)関数を定義するプログラム(util)
などから成る。このうち,
上記Fseiza(甲22の3の15頁)の中に
(ⅰ)Fgetseiza関数(甲22の3の15頁20行目~。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。)が存し,
上記util(甲22の3の51頁~)の中に,
(ⅱ)Fgetnikkan関数(甲22の3の52頁。以下「日干計算のプログラム」
ともいう。),
(ⅲ)Fgetkyusei関数(甲22の3の52頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅳ)Fgetymd関数(甲22の3の51~52頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。),
(ⅴ)gifimg関数(甲22の3の51頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)
が存し,
上記aisho.php3(甲22の3の6頁~)の中に
(ⅵ)Fgethosiseiza関数(甲22の3の6頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
が存する。
(甲22の3,乙17)カ データ定義ファイル
(ア) 「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,PHP言語のarray文を使用した配列(複数の値を格納できる変数で,添字〔各値の索引〕は並び順を示
す数値となる。)又は連想配列(自由な文字列を添字とする配列)によって作成された多次元配列(階層又は表形式となった配列)を利用して定義されている。すなわち,複数のデータを配列に入れ,その配列を更に別の配列に組み
入れ,これら配列を複数集めたものを1つのデータ定義ファイルとしている。
これらデータ定義ファイルは,本体プログラムに配列として読み込まれて,本体プログラムの一部として使用される。(甲22の2・3)
(イ) 「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,
(ⅰ)百人一首の文章(000.xxxx。甲22の2の1頁~5頁。),
(ⅱ)男女それぞれの星座同士の相性度とその相性の内容説明である相性占いの文章(xxxxx.xxxx。甲22の2の6頁~16頁。以下「相性占いの結果データ定義ファイル」ともいう。),
(ⅲ)相性占いに係るサンプル文章(aisho.sample。甲22の2の17頁。),
(ⅳ)男女それぞれの生年月日とこれに対応する星座のデータ(aisho_date.
data。甲22の2の18頁~31頁。以下「相性占いの星座定義プログラム」
ともいう。),
(ⅴ)プレゼント当選者に係るサンプル文章(xxxxxxxx.xxxx。甲22の2の
32頁。),
(ⅵ)九星と干支のデータ(xxxxxxx.xxxx。甲22の2の33頁。以下「今月の運命の定義ファイル」という。),
(ⅶ)今月の運命に係るサンプル文章(destiny.sample。甲22の2の34頁。),
(ⅷ)男女それぞれの星座同士の相性度及びその相性の内容説明並びに血液型の相性度に係る文章(xxxxx.xxxx。甲22の2の40頁~43頁。以下「合
コンでゴン用データ定義ファイル」ともいう。),
(ⅸ)合コンでゴンに係るサンプル文章(gokon.sample。甲22の2の44頁。),
(ⅹ)恋愛運に係るサンプル文章(holo.sample。甲22の2の45頁。), (ⅹⅰ)季節の占いの文章(xxxxx.xxxx。甲22の46頁~47頁。),
(ⅹⅱ)メンテナンスのお知らせの文章(xxxxxxx.xxxx。甲22の48頁。),
(ⅹⅲ)お読み下さいの文章(xxxxxx.xxxx。甲22の2の49頁。),
(ⅹⅳ)ルーン石の呼称,そのルーン石の意味及びルーン占いの結果の文章
(xxxx.xxxx。甲22の2の50頁~56頁。以下「ルーン占い用データ定義ファイル」ともいう。),
(ⅹⅴ)片思いの行く末に係るサンプル文章(rune.sample。甲22の2の57
頁。),
(ⅹⅵ)99年最後の恋愛運の文章(xxxxx.xxxx。甲22の2の58頁~59
頁。),
(ⅹⅶ)星座に係るデータ(xxxxx.xxxx。甲22の2の60頁。),
(ⅹⅷ)心理テストの分類,メニュー,質問と答え,答えに応じた心理テスト
結果の文章(xxxxx.xxxx。甲22の2の61頁~72頁。以下「心理テスト用データ定義ファイル」ともいう。),
(ⅹⅸ)タロットの意味とタロット占いの結果の文章(xxxxx.xxxx。甲22の
2の73頁~75頁。),
(ⅹⅹ)タロット占いに係るサンプル文章(tarot.sample。甲22の2の76
頁。),
(ⅹⅹⅰ)バレンタインの占い結果の文章(xxxxxxxx.xxxx。甲22の2の77
頁。),
(ⅹⅹⅱ)バレンタインの占いに係るサンプル文章(valentin.sample。甲22
の2の78頁。),
(ⅹⅹⅲ)ホワイトデーの占い結果の文章(xxxxxxxx.xxxx。甲22の2の79
頁。),
(ⅹⅹⅳ)ホワイトデーの占いに係るサンプル文章(whiteday.sample。甲22
の2の80頁。),
(ⅹⅹⅴ)2000年~の占い結果の文章(y2k.data。甲22の2の81頁。),
(ⅹⅹⅵ)2000年~占いに係るサンプル文章(y2k.sample。甲22の2の8
2頁。)などから成る。 (甲22の2,乙18)
キ 画像ファイル
41種のルーン石の画像から成り,ルーン占いにおいて,占い結果に応じて該当するルーン石の画像が読み込まれ,その画像が画面に表示される。画面に表示される画像は,別紙美術対比表1~4の左欄のものである(以下,同対比表1及び2の左欄の画像を「原告カラー画像」と,同3及び4の左欄の画像を「原告白黒画像」とそれぞれいう。)。(甲19の1・2,弁論の全趣旨)
ク 会員情報の管理
会員情報の管理には,データベースを利用しており,データベースの管理にはMySQLを使用している(以下,このデータベースを「原告会員情報データベース」という。)。(甲22の3の36~37頁,乙19,弁論の全趣旨)
(3) その他
ア 「四次婆(よじばばあ)」は,もともとは平成10年2月にポケベルを媒体としてサービスを開始した文字情報サービスであり,四次元の住人である「四
次婆」をメインキャラクターとしたコミュニケーションサービスであり,当時,女子中学生の間で浸透していた架空のキャラクターである四次婆を利用したコンテンツである。「四次婆(DDI)」を当初制作したのは有限会社プ
ロシード(以下「プロシード」という。)であり,被告ホールディングスは,平成11年1月ころから「四次婆(DDI)」の配信サービスを開始した。原告は,その後,この「四次婆(DDI)」のプログラムの修正に当たった。原
告が制作に関与した「四次婆(DDI)」は平成11年6月ころから配信サービスが開始された。(甲38の1~113,55,89の1・2,乙144の1,弁論の全趣旨)
イ 「ツヴァイ資料請求」は,結婚相談所のツヴァイから被告ホールディングスが開発を受託したEZWeb向けの広告営業モデル型のサービスである。 (乙72)
ウ 「リクルート」は,株式会社リクルートから被告ホールディングスが開発を受託したDDIポケットのPHS文字情報サービスPメールDX向けのサービスである。(乙72)
エ 「さくま式スゴロク」は,さくまあきらの企画によるスゴロク式ゲームであり,「東海道五十三次」,「奥の細道」及び「西遊記」の3部作である。「東
海道五十三次」は,スゴロクの目を振って出た目の分だけ東海道を下っていくというものである。(甲55,弁論の全趣旨)
オ 「ガチャピン・ムック」は,株式会社フジクリエイティブコーポレーションの使用許諾を得た「ガチャピン」や「ムック」の画像等を利用した待ち受け画像,グリーティングカード等を配信するサービスである。(甲57,乙
94)
(4) 原稿売買
「恋愛の神様(NTTドコモ)」に関し,平成11年2月22日付けで(実際の契約書締結はそれよりも後。),被告ホールディングスとアカデメイアは,アカデメイアが制作した原稿を被告ホールディングスが使用することを許諾し,これに対して被告ホールディングスはアカデメイアに情報料の半額を支払うとする等を内容とする「iモード情報サービスに於ける占いコンテンツ用原稿売買契約書」を締結した。(乙31,証人C)
4 本件確認書
(1) 原告代表者は,被告Aの勧めもあって,平成11年8月30日,被告Aから
1株5万円で20株(合計100万円)の被告ホールディングスの株式を取得した。(甲34別紙3,48)
(2) 被告ホールディングスの配信するコンテンツには,主に原告代表者が作成したプログラムが使用されていた。また,これらコンテンツのプログラム,データが蔵置されていた被告ホールディングスのサーバは,すべて原告代表者が選定して被告ホールディングスに納入し,その構成を設定したものであり,被告ホールディングスは,原告にそれらすべてについて保守管理を委託していた。これらのサーバには原告代表者のみしか知らない管理者用パスワードが設定してあり,原告代表者以外の者が保守管理をすることはできないようにされていた。原告代表者は,主にtelnetを利用した遠隔操作により上記サーバの保守管理をしていたが,必要に応じて被告ホールディングスに出向いてサーバの保守管理に当たることもあった。(甲34別紙1,48,50,弁論の全趣旨)
(3) 上記サーバについての保守管理契約では,保守委託料が,サーバ1台又はコンテンツ1つ当たり月額10万円又は20万円(一部は5万円)とされていたが,原告と被告ホールディングスとの間では,この保守委託料の額をめぐって上げる下げるとの応酬が続いていた。被告ホールディングスに平成11年12月ころ技術担当の取締役としてEが入社すると,Eから原告に対して提出が求められたサーバ構成図,プログラム設計書などの資料を原告が提出しなかったり,Eと原告代表者との間でサーバの保守管理方法について意見が対立したり
し,被告ホールディングスと原告との間で紛議が生じるようになった。(甲1,
37,48,83,乙95,原告代表者〔第2回〕,弁論の全趣旨)
(4) 平成12年3月26日午前7時45分ころから午前11時30分ころまでの間,被告ホールディングスのサーバが設置されたビルで電気設備点検のため停電となることから,被告ホールディングスは,サーバを順次強制終了させていった。被告ホールディングスからの報告及びサーバの遠隔操作により原告代表
者もこのことを知っていた。
ところが,その後,ビルの電源が復旧したにもかかわらず被告ホールディングスのサーバは起動せず,そのため被告ホールディングスのコンテンツ配信サービスが全部停止になったことから,同日昼ころ,管理者用パスワードを知ら
ず自ら保守することができない被告ホールディングスは,原告代表者に対して,
サーバの復旧を依頼した。ところが,原告代表者は,当日は日曜日であり原告の休業日であったことを理由に,原告の営業日である翌日の月曜日の昼ころからサーバの復旧作業に取り掛かる旨を回答した。
(甲34,48,53,67,79の1,80の1,83)
(5) そのため,平成12年3月26日から同月27日未明にかけ,Eは,管理者用パスワードを解析してサーバにアクセスし,ようやくサーバを復旧するとともに,サーバ管理者用のパスワードを変更した。
ところが,その後にリモートアクセスでサーバのパスワードが変更されたことに気が付いた原告代表者は,被告ホールディングスの事務所を訪れ,サーバを元の状態に戻して自分がサーバを管理することを要求した。しかし,Eはこれに応じなかった。
(甲48,79の1)
(6) 平成12年3月27日,原告代理人弁護士高橋省は被告に対して内容証明郵便を送り(同月28日到達),原告がサーバの監視,保守を行えないのは原告のプログラムに対する権利行使を妨げているものであるから,(ⅰ)上記書面到達後3時間以内に原告が被告ホールディングスのサーバを操作できるようにすること,(ⅱ)上記書面到達後1日以内に被告ホールディングスのサーバに被告ホールディングスが加えた操作を明らかにすることを要求するとともに,原告のこの要請に被告ホールディングスが応じない場合には直ちに法的手続をするとの警告をした。(甲79の1・2)
(7) その後,原告代表者がサーバの死活監視プログラムをそのままとしていたた
め,telnetを利用した原告から被告ホールディングスのサーバへの多数回のアクセスがあったり,サーバにアクセスできずサーバ停止と判断したことによる警告メールが大量に原告から被告ホールディングスに送信された。被告ホールディングスは,これらを,原告による被告ホールディングスのサーバのダウンをねらった妨害工作と受け止めた。(甲53,80の1,81の1,8
3)
(8) 平成12年3月31日,被告ホールディングス代理人弁護士Fは,原告に対し,被告ホールディングスが自己の資産であるサーバにアクセスするのは当然の権限である,原告には被告ホールディングスからの保守依頼に応じないなどの義務履行の懈怠があったほか,そもそも,当日は,原告が遠隔操作でサーバ起動時にサービスが開始できないようにわざと設定を変えていたことが判明した,その後もサーバダウンをねらった妨害工作があったとして,業務妨害行為の中止と保守委託契約の解除,貸与した物品の返還等を申し入れた。(甲80の1・2,弁論の全趣旨)
(9) 平成12年4月11日,原告代理人弁護士高橋省は,被告ホールディングスに対し,貸与した物品等の返還には応じるが,原告が被告ホールディングスに対して貸与している物品の返還,原告に対する未払代金の支払,原告プログラムの返還等を求める旨の内容証明郵便を送った。(甲81の1・2)
(10) その後も原告と被告ホールディングスの両者間で書面による代理人弁護士を介したやり取りがあったが(甲82の1~2の2,83),被告ホールディングスの担当者及び取締役と,原告代表者及びその妻とでされた協議においては激しい口論が生じ収拾の付かない状態となることから,平成12年5月ころ,上場を目指しており紛争を抱えこむのを回避したいと考えた被告Aからの申入れにより,弁護士を介せず,被告Aと原告代表者とが直接に交渉をすることになった。両者の間では,被告ホールディングスの未払金の有無,原告代表者の保有する被告ホールディングス株式の買取り,原告が開発中であったと主張す
るプログラムの開発料の支払,原告プログラムの著作権の買取り又は使用許諾の条件などの点について協議が行われた。もっとも,被告Aとしては,金銭的な支払により紛争が円満解決すればそれでよいという態度であり,細部は原告代表者主導で進められた。(甲34,49,49別紙,乙88,被告インデックス代表者(G),原告代表者〔第2回〕,被告A,弁論の全趣旨)
(11) 原告及び原告代表者と,被告ホールディングス及び被告Aは,平成12年
6月15日,次の記載のある書面(甲1。以下「本件確認書」という。)を取り交わした。(甲49,弁論の全趣旨)
「1 ・・・〈省略〉
2 株式会社インデックスは株式会社ハイパーキューブに,別紙ロイヤリティ契約分のプログラムに関連する該当コンテンツサービスが終了するまで,備考欄のロイヤリティ割合に応じた金額を支払う。ただし,期間は平成17年3月31日までとする。
支払方法
・・・〈省略〉
3 株式会社ハイパーキューブは,別紙のプログラムの平成17年3月31日分までの使用をAに許諾し,その対価は¥15,000,000-とする。
但し,プログラムは株式会社インデックス社内での各プログラム1本づつの使用に留めることとし,それ以外の権利は株式会社ハイパーキューブが留保する。またコンテンツサービスを継続的に維持するために株式会社インデックスが行う改変については認めるがこれを除く著作権の侵害,およびプログラムを外部に漏洩・販売することは認めない。株式会社インデックスは平成17年3月31日をもって該当プログラムおよび該当プログラムから派生したプログラムの全ての使用を終了し破棄する。なおAは当該対価を平成12年7月5日までに株式会社ハイパーキューブに支払う。
4 ・・・〈省略〉
5 上記1・2の①および③の支払が完了した後に,Hが所有している株式会社インデックスの株式20株をAへ¥5,000,000-で譲渡し,株券と引き換えにHへAから譲渡代金を支払う。
6 上記以外に株式会社インデックスならびにAと株式会社ハイパーキューブならびにHの間において債権・債務はないことを確認する。なお,今後一切当事者間の不利益になるような発言等誹謗中傷行為をしないことを確認する。
(別紙)
開発費等
四次婆リニューアル ・・・〈省略〉
恋愛の神様再構築 ・・・〈省略〉
プライベートホームページ追加サーバー ・・・〈省略〉
アサヒ飲料アンケートプログラム ・・・〈省略〉
ツヴァイ資料請求プログラム ・・・〈省略〉
リクルートフロムエーアルバイト情報検索プログラム ・・・〈省略〉
保守定額分
・・・〈省略〉
DDI-P様向け四次婆・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
DoCoMo様向け恋愛の神様・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
IDO様向け愛と出会いの占い館
・プライベートホームページ・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
パソナソフトバンク様向け求人情報・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
IDO様向け映画館空席情報サービス・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
リクルートフロムエー様向けアルバイト情報検索プログラム・・・〈省
略〉
・・・〈省略〉
シンタックス様向け『ブティックホテル情報』・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
DION様向け四次婆・・・〈省略〉
ロイヤリティ契約分
DDIポケット『ゲームコーナー』・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
NTTドコモ『さくま式スゴロク』・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
アサヒ飲料アンケートプログラム・・・〈省略〉
DDIポケット『マップツアー得旅アミーゴ』・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
DDIポケット『ALBAの映画タイム』・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
NTTドコモ『ガチャピンムック』・・・〈省略〉
・・・〈省略〉
開発キャンセル分
父母会やろうよ・・・〈省略〉
さくま式3部作第二弾『奥の細道』・・・〈省略〉
特別保守費用
四次婆リニューアル/仕様書違いによる作業・・・〈省略〉
・・・〈省略〉 」
(12) 平成12年7月5日,被告Aは,原告に対し,上記許諾料1500万円及び株式買取代金500万円を支払い,原告代表者は,被告Aに対し,被告ホールディングスの株式20株を引き渡した。(甲34別紙3,50別紙,弁論の全趣旨)
5 被告の行為
(1) プログラム使用ア 原告プログラム
被告ホールディングスは,平成12年3月時点で,原告プログラム(「⑬奧の細道」を除く。)をサーバに蔵置し,これを使用してコンテンツ配信サービスを行っていた。(弁論の全趣旨)
イ 「奧の細道」
被告ホールディングスは,「奧の細道」の配信サービスを平成12年5月
以降に開始した。(甲116,乙154の1の1,弁論の全趣旨)
(2) プログラム作成
ア 「②-1旧恋愛の神様」 (ア) 開発・配信
被告ホールディングスは,平成12年5月ころ,株式会社ケンパック(現在,グローバルバリュー株式会社。以下「ケンパック」という。)に対し, PHP言語でプログラムが作成されている「②恋愛の神様」をC言語で開発し直すことを委託し,ケンパックは,ソリューションシステム・インターナショナル株式会社(以下「ソリューションシステム」という。)にプログラム開発業務を再委託し,さらに,ソリューションシステムは,株式会社サザン
・クリエイト(以下「サザンクリエイト」という。)に開発業務の一部を再委託した。プログラム開発は,ソリューションシステムとサザンクリエイトの担当者がそれぞれした。(甲18,乙3~7,14,30)
被告ホールディングスは,ケンパックから,新たなプログラムの納品を平成12年7月に受け(このプログラムが第2ソフトウェア目録記載1のソフ
トウェアのプログラム部分であり,以下,「②-1旧恋愛の神様」という。),
同年9月からこのプログラムによる「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを行っている。(乙5,16,弁論の全趣旨)
(イ) メニュー構成
「②-1旧恋愛の神様」により制御された「恋愛の神様(NTTドコモ)」のメニューは,(ⅰ)「お知らせ」,(ⅱ)「無料!心理テスト館」,(ⅲ)「恋
専毎日ホロスコ」,(ⅳ)「今週の恋の呪文」,(ⅴ)「今月の運命」,(ⅵ)「タ
ロットのお告げ」,(ⅶ)「神秘ルーン石占い」,(ⅷ)「合コンでゴン」,(ⅸ)
「あの人との相性」,(x)「2000~の恋愛」,(xⅰ)「開運プレゼント」,
(xⅱ)「恋のラッキー体験談」,(xⅲ)「お読みください」,(xⅳ)「登録コーナー」,
(xⅴ)「よくある質問」から成る。(乙17)
(ウ) 機能
「②-1旧恋愛の神様」により制御された「恋愛の神様(NTTドコモ)」
の機能は,①占い結果,心理テスト結果,利用規約等の画面表示をする機能,
②占いの計算等をする機能,③心理テストの計算等をする機能,④会員登録,
会員プロフィール登録をする機能などがある。(乙17) (エ) プログラム言語
「②-1旧恋愛の神様」の開発に使用されたプログラム言語は,コンパイラ言語(ソースコードをコンパイラでオブジェクトコードに一括変換しておいてからプログラムを実行する言語)であるC言語(一部でC++ )であり,
テキストファイルを読み込み,プログラム実行の結果としてiモード用 html文全体を生成している。
本件において被告らから提出された「②-1旧恋愛の神様」のソースコードの総行数は1万5548行である。
(乙17,19) (オ) 構成
a 「②-1旧恋愛の神様」には,占いのための計算をしたり,占い結果を画面表示するなどを行う本体プログラムと占い結果の内容を一覧表示し内容のチェックをしたり,ユーザー情報の削除,追加などをする管理プログラムとがある。(乙30,33の1~23,34)
b 「②-1旧恋愛の神様」の本体プログラムには,
(ⅰ)女性(金星)と男性(火星)のそれぞれの星座同士で男女の相性占いを行うプログラム(aisho.c),
(ⅱ)西洋占星術,四柱推命又は九星気学で今月の運命の占いを行うプログラム(destiny.c),
(ⅲ)各種共通処理の関数を定義するプログラム(form.c), (ⅳ)心理テストを行うプログラム(free.c),
(ⅴ)男女のカップルの相性占いを行うプログラム(gokon.c), (ⅵ)恋愛運の占いを行うプログラム(holo.c),
(ⅶ)テキストファイルを読み込んでiモード用htmlに変換する関数を定義等するプログラム(html.c),
(ⅷ)ルーン石を利用したルーン占いによる恋愛の行方の占いを行うプログラム(rune.c),
(ⅸ)星座等の計算関数を定義するプログラム(seiza.c), (ⅹ)タロット占いを行うプログラム(tarot.c)
などから成る。このうち,
上記seiza.c(乙30の187頁~)の中に
(ⅰ)GetSeizaNo関数(乙30の187頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅱ)GetNikkan関数(乙30の187頁~188頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。),
(ⅲ)GetKyusei関数(乙30の188頁。以下「九星を求めるプログラム」
ともいう。)が存し,
上記form.c(乙30の39頁~)の中に
(ⅳ)GetYmd関数(乙30の39頁~40頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。)
が存し,
上記html.c(乙30の71頁~)の中に
(ⅴ)GetgifTag関数(乙30の72頁~73頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)
が存し,
aisho.c(乙30の23頁~)の中に
(ⅵ)GetSyugosei関数(乙30の26頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
が存する。
(乙17,30) (カ) データ定義ファイル
a 「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,汎用的なデータ形式であるCSVファイル形式(複数のデータをカンマ等の記号で区切って並
べたもの)でデータが羅列され(一部htmlファイルが含まれている。),
本体プログラムにより構造体(複数の型の変数をひとまとめとしたもの。)又は配列として読み込まれて,本体プログラムの一部として使用される。 (乙29,54)
b 「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,
(ⅰ)男女二人の星座同士の相性度とその相性の内容説明である相性占いの文章(aisho.csv。乙29の1頁~9頁。以下「相性占いの結果データ定義ファイル」ともいう。),
(ⅱ)男性(火星)の生年月日とこれに対応する星座のデータ(aisho_mars. csv。乙29の10頁~15。),
(ⅲ)女性(金星)の生年月日とこれに対応する星座のデータ( aisho_ venus.csv。乙29の16頁~25頁。以下,aisho_mars.csvと併せて「相
性占いの星座定義ファイル」ともいう。),
(ⅳ)九星占いの文章(destiny200006.csv,destiny200007.csv。乙29の26頁~27頁。),
(ⅴ)謝罪の文章(dberrmsg.txt。乙29の29頁。),
(ⅵ)九星と干支のデータ(destiny.csv。乙29の30頁。以下「今月の運命の定義ファイル」ともいう。),
(ⅶ)FAQの文章(FAQ.csv。乙29の31頁。),
(ⅷ)心理テストの分類のデータ(free.txt。乙29の28頁,32頁。),
女性編の心理テストのメニューのデータ(01.txt。乙29の33頁。),男性編の心理テストのメニューのデータ(02.txt。乙29の34頁。),
男女共通編の心理テストメニューのデータ(03.txt。乙29の35頁。),
心理テストの質問及び答え,答えに応じた心理テスト結果の文章 (sr_boy01.csv~sr_boy11.csv,sr_boy.csv,sr_com01.csv~sr_com09.csv, sr_com.csv,sr_girl01.csv~sr_girl11.csv,sr_girl.csv。乙29の3
6頁~76頁。以下,free.txt,01.txt,02.txt,03.txtと併せて「心理テスト用データ定義ファイル」ともいう。 ),
(ⅸ)男女二人の星座の相性度及びその相性の内容説明である合コンでゴンの文章(gokon.csv。乙29の77頁~78頁。以下「合コンでゴン用データ定義ファイル」ともいう。),
(ⅹ )恋愛運の文章( holo 20000514 .csv~holo 20000518 .csv, holo
20000604.csv~holo20000608.csv,holo20000614.csv~holo20000618.csv。
乙29の79頁~93頁。),
(ⅹⅰ)格言のメニュー及び文章(kakugen.csv,kakugen.txt。乙29の1
15頁~117頁。),
(ⅹⅱ)バレンタインの占い結果の文章(valentin.csv。乙29の118
頁。),
(ⅹⅲ)ルーン占いのメニュー(rune.txt。乙29の135頁。),
(ⅹⅳ)ルーン石の呼称,そのルーン石の意味及びルーン占い(今日会った
人との相性)の結果の文章(rune01.csv。乙29の136頁~137頁。以下「ルーン占い用データ定義ファイル1」ともいう。),
(ⅹⅴ)ルーン占い(今日会った人との相性)のメニュー(rune01.txt。乙2
9の138頁),
(ⅹⅵ)ルーン石の呼称,そのルーン石の意味及びルーン占い(片思いの行
方)の結果の文章(rune02.csv。乙29の139頁~141頁。以下「ルーン占い用データ定義ファイル2」ともいう。),
(ⅹⅶ)ルーン占い(片思いの行方)のメニュー(rune02.txt。乙29の14
2頁。),
(ⅹⅷ)タロット占いのメニュー(tarot.txt。乙29の143頁。),
(ⅹⅸ)タロットの意味とタロット占い(恋人に不安あり)の結果の文章
(tarot01.csv。乙29の144頁~145頁。),
(ⅹⅹ)タロット占い(恋人に不安あり)のメニュー(tarot01.txt。乙29の
146頁。),
(ⅹⅹⅰ )タロットの意味とタロット占い( ケンカした時) の結果の文章
(tarot02.csv。乙29の147頁~148頁。),
(ⅹⅹⅱ)タロット占い(ケンカした時)のメニュー(tarot02.txt。乙29の
149頁。),
(ⅹⅹⅲ)タロットの意味とタロット占い(カップルの未来)の結果の文章
(tarot03.csv。乙29の150頁~151頁。),
(ⅹⅹⅳ)タロット占い(カップルの未来)のメニュー(tarot03.txt。乙29
の152頁。),
(ⅹⅹⅴ)2000年~の占い結果の文章(y2k2000.csv。乙29の153頁
~154頁。),
(ⅹⅹⅵ)疫病神の占い結果の文章(yakukami.csv。乙29の155頁~16
2頁。),
(ⅹⅹⅶ)生年月日とこれに対応する星座のデータ(yaku_jupiter.csv。乙2
9の163頁~165頁。)などから成る。
(乙18,29) (キ) 画像ファイル
41種のルーン石の画像から成り,ルーン占いにおいて,占い結果に応じて該当するルーン石の画像が読み込まれ,その画像が画面に表示される。画面に表示される画像は,別紙美術対比表1~4の右欄のもの(以下「被告カラー画像」という。)である。(乙27,弁論の全趣旨)
(ク) 会員情報の管理
会員情報の管理には,データベースを利用しており,データベースの管理にはSybaseを使用している(以下,このデータベースを「被告会員情報データベース」という。)。(乙19,30の151頁~153頁)
イ 「②-1新恋愛の神様」 (ア) 開発・配信
被告ホールディングスは,平成15年,合資会社ビルド(現在,有限会社ビルド。以下「ビルド」という。)に対して「②-1旧恋愛の神様」を拡張
更新するプログラムの開発を委託した。(乙3)
被告ホールディングスは,ビルドから,新たなプログラムの納品を平成1
5年5月ころに受け(このプログラムも第2ソフトウェア目録記載1のソフ
トウェアに係るプログラムであり,以下,「②-1新恋愛の神様」という。),
このころから,このプログラムによる「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスを行っている。(乙8~10,弁論の全趣旨)
なお,その後も「②-1新恋愛の神様」の拡張更新は続けられている。 (乙9,11,12,弁論の全趣旨)
(イ) プログラム言語
「②-1新恋愛の神様」は,「②-1旧恋愛の神様」と同様に,C言語で
開発されている。ただし,本件で被告らから提出されたソースコードは,後記「②-2恋愛の神様」及び「②-3恋愛の神様」が作成された後の平成1
9年1月~平成20年12月のころに作成されたものである。(乙69,9
0)
後記「②-2恋愛の神様」及び「②-3恋愛の神様」は,「②-1新恋愛
の神様」とキャリアを異にするが,おおむねその内容は共通している。(弁論の全趣旨)
(ウ) 構成
「②-1新恋愛の神様」の本体プログラムには, html.cpp(乙90の240頁~)の中に
(ⅰ)GetSeizaNo関数及びGetSeizaNum関数(乙90の291頁~292頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅱ)GetNikkan関数(乙90の294頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。),
(ⅲ)GetKyusei関数(乙90の294頁~295頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅳ)GetYmd関数(乙90の261頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。),
(ⅴ)*GetImgTag関数(乙90の265頁~266頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。)が存する。
(乙90)
(エ) 画像ファイル
41種のルーン石の画像から成り,ルーン占いにおいて,占い結果に応じて該当するルーン石の画像が読み込まれ,その画像が画面に表示される。画面表示される画像は,別紙美術対比表1~4の右欄のものであったが,平成
20年10月24日,別なものに差し替えられた。(乙27,弁論の全趣旨)後記「②-2恋愛の神様」及び「②-3恋愛の神様」は,「②-1新恋愛
の神様」とキャリアを異にするが,画像ファイルは共通である。(弁論の全趣旨)
(オ) 会員情報の管理
会員情報の管理について「②-1旧恋愛の神様」から変更はない。
後記「②-2恋愛の神様」及び「②-3恋愛の神様」は,「②-1新恋愛
の神様」とキャリアを異にするが,会員情報データベースは共通である。 (弁論の全趣旨)
ウ 「②-2恋愛の神様」 (ア) 開発・配信
被告ホールディングスは,プログラム開発会社に「②-1新恋愛の神様」
をEZwebに対応させたプログラムの開発を委託し,平成16年1月ころ,
その納品を受け,そのころ,このプログラム(このプログラムが第2ソフトウェア目録記載2のソフトウェアに係るプログラムであり,以下,「②-2
恋愛の神様」といい,同目録2記載のソフトウェア及びこれにより配信されるサービスを指すものとして「恋愛の神様(KDDI)」という。)を使用し
て,「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスを開始した。(甲76,弁論
の全趣旨)
(イ) プログラム言語
「②-2恋愛の神様」は,「②-1新恋愛の神様」と同様に,C言語で開
発されている。(乙45,50,57) (ウ) 構成
「②-2恋愛の神様」の本体プログラムの html.cpp(乙45の121頁~)の中に
(ⅰ)GetSeizaNo関数及びGetSeizaNum関数(乙45の152頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅱ)GetNikkan関数(乙45の154頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。),
(ⅲ)GetKyusei関数(乙45の154頁~155頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅳ)GetYmd関数(乙45の133頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。),
(ⅴ)*GetImgTag関数(乙45の135頁~136頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。),
(ⅵ)*GetVenusSeizaName関数及び*GetMarsSeizaName関数(乙45の152頁~153頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
が存する。
(乙45,121)
エ 「②-3恋愛の神様」 (ア) 開発・配信
被告ホールディングスは,プログラム開発会社に「②-1新恋愛の神様」をYahoo!ケータイに対応させたプログラムの開発を委託し,平成15
年8月ころその納品を受け,そのころ,このプログラム(このプログラムが
第2ソフトウェア目録記載3のソフトウェアに係るプログラムであり,以下,
「②-3恋愛の神様」といい,同目録3記載のソフトウェア及びこれにより配信されるサービスを指すものとして「恋愛の神様(ソフトバンク)」という。)を用いて「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスを開始した。(弁
論の全趣旨)
(イ) プログラム言語
「②-3恋愛の神様」は,「②-1新恋愛の神様」と同様に,C言語で開
発されている。(乙46,50,58)。 (ウ) 構成
「②-3恋愛の神様」の本体プログラムの html.cpp(乙46の123頁~)の中に
(ⅰ)GetSeizaNo関数及びGetSeizaNum関数(乙46の153頁~154頁。以下「星座を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅱ)GetNikkan関数(乙46の155頁~156頁。以下「日干計算のプログラム」ともいう。),
(ⅲ)GetKyusei関数(乙46の156頁。以下「九星を求めるプログラム」ともいう。),
(ⅳ)GetYmd関数(乙46の135頁。以下「年月日を得るプログラム」ともいう。),
(ⅴ)*GetImgTag関数(乙46の137頁~138頁。以下「画像タグを生成するプログラム」ともいう。),
(ⅵ)*GetVenusSeizaName関数及び*GetMarsSeizaName関数(乙46の154頁。以下「守護星を求めるプログラム」ともいう。)
が存する。 (乙46)
(3) 負荷分散装置の導入及び稼働ア 導入・稼働
(ア) 被告ホールディングスは,株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイーからf5
ネットワークス社の負荷分散装置であるBIG-IP(以下「BIG-IP」
という。)をリースで導入し,平成12年5月からこれを稼働させている。なお,被告インデックスは現在もBIG-IPを使用しているが,これと平成12年当時使用していた機種とは異なるものである。(争いのない事実,甲2,5の2,36別紙6,乙70,84,96,弁論の全趣旨)
(イ) 被告ホールディングスは,南青山事務所(以下「南青山」という。)にサーバを設置していたが,平成12年5月ころから平成13年にかけて,これら南青山に設置されたサーバをエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の大手町データセンター(以下「大手町」という。)に順次移管し,さらに,被告ホールディングスは,平成14年5月から,ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC株式会社(現在,ソフトバンクIDC株式会社)のデータセンター(新宿)にサーバを移管している。(甲76,乙59の1・2,117,
118,弁論の全趣旨)
大手町で被告ホールディングスが使用するサーバ群の回線は1回線のみであり,すべてのサーバがBIG-IPの配下で稼働することになっている。 (乙59の1,弁論の全趣旨)
イ 負荷分散等の意義
(ア) 負荷分散は,広い意味では複数のサーバに処理を分散し,個々のサーバに掛かる負荷を平準化(ロードバランス)することをいい,負荷分散装置を使用する方法のほか,DNS(Domain Name System。ホスト名とIPアドレスの結び付きを提供するサービス)を利用して1つのホスト名に複数のIPアドレス(物理サーバ)を順番に割り当て,ほぼ均等にそれらIPアドレスにトラフィックを振り分けるDNSラウンドロビン方式,複数のサーバが分割さ
れた機能を分担し合うクラスタリングも含まれる。負荷分散装置による典型的な負荷分散は,アクセスをトラフィックに応じて動的に複数のサーバへ分配するものであり,NAT(Network Address Translator。インターネット上におけるグローバルアドレスを内部ネットワーク上のプライベートアドレスに変換する仕組み)方式により,一定のアルゴリズムで,負荷分散装置へのあて先アドレスを各サーバのIPアドレスに変換して,ローテーションを動的に変更させながら各サーバにトラフィックを割り振り,クライアント
-サーバ間の個々のコネクションを管理するというものである。(甲36別紙6,別紙9,別紙10,乙70,77の1・2)
(イ) ファイアウォールは,内部ネットワークをインターネットなどの外部からの不正なアクセスから防止するものであり,ゲートウェイ(ネットワーク同士の接点において接続先のネットワークに合わせてプロトコルなどを変換するハードウェア)をパケットが通過する際にパケットのヘッダを解析してパケットを遮断させ又は通過させるパケットフィルタリングやプロキシ(代理)サーバ経由で外部との接続,認証を行うアプリケーションレベルゲートウェイなどがある。(甲36別紙3,別紙4,別紙5)
ウ 負荷分散の実行
被告ホールディングスは,「②-1旧恋愛の神様」,「②-1新恋愛の神様」,
「②-2恋愛の神様」及び「②-3恋愛の神様」につき,それぞれ,1台のサーバをデータベースサーバとして,2台のサーバをWWWサーバとしてプログラムを1部複製し(合計2部),この合計3台のサーバをBIG-IPの配下に置き,BIG-IPの負荷分散機能を利用し,コンテンツ配信サービスを行っている。(弁論の全趣旨)
6 前訴和解
(1) コンテンツ売却
ア 被告ホールディングスは,コミュニケーション系サイトからの整理,撤退
のため,平成13年7月31日,株式会社デリリオスエンタテインメント(以
下「デリリオス」という。)との間で,次のとおり(判決注:契約書上の呼称は本判決のものに置き換えてある。),代金1億円(消費税別)でコンテンツを売却する契約を締結した。これに伴い,平成13年8月ころ,被告ホールディングス名義による「四次婆(DDI)」,「四次婆(DION)」及び「プ
ライベートホームページ」の配信サービスは停止され,デリリオス名義による上記コンテンツの配信サービスが開始された。(甲75,76,78)
「第1条(定義)
本契約において『本件各コンテンツ』とは,被告ホールディングスが開発・運営・管理している下記の各コンテンツをいう。
1 名 称 『四次婆』
配信場所 DDIポケット『四次婆』
<URL省略>
DION『四次婆』
<URL省略>
<URL省略>
2 名 称 『プライベートホームページ』配信場所 <URL省略>
第2条(目的)
被告ホールディングスはデリリオスに対し,平成13年8月31日,本件各コンテンツ及びこれに関する下記の目的物(以下『本件目的物』という)を売り渡し,デリリオスはこれを買い受けた。
記
1 本件各コンテンツに関するプログラム(以下『本件プログラム等』という)の所有権,著作権その他一切の権利
2 別紙〈判決注:省略〉記載の商標権(以下『本件商標権』という)
・・・
第4条(引渡し)
1 被告ホールディングスはデリリオスに対し,平成13年 月 日限り,第3条2項〈判決注:省略〉に定める売買代金全額の支払いを受けるのと引き換えに本件目的物を引き渡す。
但し,本件商標権を除く本件目的物の引渡しは占有改定によるものとし,本件機材等は被告ホールディングスに設置し,デリリオスの委託の下,被告ホールディングスが引き続き保守・管理等を行うものとする。
2 被告ホールディングスは,平成13年8月31日限り,本件商標権の移転に必要な全ての手続を開始する。
第5条(権利の移転)
本件目的物の所有権,著作権,商標権等の一切の権利は,被告ホールディングスが第3条2項に定める売買代金全額の支払いを受けるのと引き換えに,デリリオスに移転する。
・・・
第10条(契約関係の承継)
デリリオスは,第5条に定める本件目的物の権利移転と同時に,被告ホールディングスと本件各コンテンツ利用者との間の本件各コンテンツ利用契約上の地位を承継する。
・・・
第12条(保守・管理等)
1 本件目的物の権利移転後,デリリオスは被告ホールディングスに対し,本件コンテンツの保守・管理等を委託するものとし,デリリオスは被告ホールディングスの指示に従い本件コンテンツを運営するものとする。
2 デリリオスは被告ホールディングスに対し,保守・管理・運営業務の対価として,1コンテンツあたり毎月金1,000,000円を支払うものとする。
3 保守管理契約の細目は,被告ホールディングス・デリリオス別途協議の上,これを定めるものとする。
・・・」
イ その後,上記1億円の売却代金は半額に減額され,平成14年8月30日,
被告ホールディングスは,受領した上記1億円のうち5000万円をデリリオスに返還した。(甲78)
ウ 被告ホールディングス又は被告インデックスは,子会社を通じるなどして,
上記契約に従い,「四次婆(DDI)」,「四次婆(DION)」及び「プライベ
ートホームページ」の配信サービスの実行を行った。(乙79)
(2) 前訴提起
原告は,平成15年7月,被告ホールディングスに対し,被告ホールディングスがビットオンに「⑯ガチャピン・ムック」と互換性のある新プログラムを制作させるに当たって「⑯ガチャピン・ムック」のプログラムを複製又は送信可能化させ,また,「ガチャピン・ムック」の画像等の画面やその表示順序を
複製又は送信可能化させたことを理由とする著作権侵害などに基づいて(ただし,訴え変更後のもの),損害賠償金1億3484万8522円の内金500
0万円の支払を求める訴え(当庁平成15年(ワ)第16027号。以下「前訴」
という。)を提起した。(争いのない事実,甲57,61,弁論の全趣旨)
(3) 裁判上の和解
原告(同事件原告)と被告ホールディングス(同事件被告)及び被告A(同事件利害関係人)は,平成18年9月1日,次のとおりの裁判上の和解(以下「前訴和解」という。)をした。(争いのない事実,甲65)
「1 本和解は,①東京地方裁判所平成15年(ワ)第16027号著作権報酬
金請求事件,②被告が別紙プログラム目録記載のプログラム『ガチャピン
・ムック』,同『プライベートホームページ』及び同『四次婆』を,原告
の許諾なく第三者に流出させたとされる紛争,並びに③別紙プログラム目録記載の各プログラムの原作品につき,被告が不適切な管理を行ったとされる紛争の各紛争を解決するものである(以下,①ないし③の各紛争を一括して『本件紛争』という。)。
2(1) 被告は,原告に対し,本件紛争の解決金として,連帯して1億600
0万円の支払義務のあることを認める。
(2) 利害関係人は,原告に対し,本項(1)記載の被告の債務について連帯保証する。
(3) 被告及び利害関係人は,原告に対し,平成18年9月29日限り,連帯して,本項(1)記載の金員を・・・〈判決注:省略〉に送金して支払
う。
3 原告と被告は,別紙プログラム目録記載の各プログラムの著作権が原告に帰属することを相互に確認する。
4(1) 原告は,被告に対し,訴外株式会社デリリオスエンタテインメント(以
下「デリリオス」という。)への再譲渡を目的として,別紙プログラム目録記載のプログラムのうち,プログラム「プライベートホームページ」及
び同「四次婆」の開発段階プログラム(別紙「『プライベートホームページ』
開発段階プログラム」及び「『四次婆』開発段階プログラム」のとおり。)の複製物及びその著作権を,合計金500万円で譲渡する。
(2) 被告は,原告に対し,平成18年9月29日限り,本項(1)記載の金500万円を・・・〈判決注:省略〉に送金して支払う。
(3) 原告は,本項(1)において譲渡した各著作物につき,著作者人格権を行使しない。
(4) 原告は,被告に対し,本項(1)記載の各プログラムについて,隠れ
たものも含め一切の瑕疵担保責任を負わない。
(5) 本項(1)記載の譲渡は,原告,被告及びデリリオスのソフトウェア開発や運用事業を何ら制約するものではない。
5 原告は,本和解成立後速やかに,被告及び利害関係人に対する本件紛争に関するすべての刑事告訴を取り下げる。
6 原告は,原告を債権者,デリリオスを債務者とする東京地方裁判所平成17年(ヨ)第22061号公衆送信等禁止仮処分命令申立事件を,本和解成立後速やかに取り下げる。
7 デリリオスが,平成18年9月1日以前に,別紙プログラム目録記載のプログラム「プライベートホームページ」又は同「四次婆」につき負荷分散装置を使用していたことを原因として,直接又は間接に原告の著作権その他の法的利益を侵害していた場合,被告及び利害関係人は,原告に対し,デリリオスの原告に対する損害賠償債務を免責的に引き受けることとし,連帯してこの損害賠償債務を弁済する。
8 別紙プログラム目録記載の各プログラムにつき,被告又は利害関係人が,負荷分散装置を使用していたことを原因として,直接又は間接に原告の著作権その他の法的利益を侵害していた場合,原告が被告又は利害関係人に対し損害賠償請求権を行使することを妨げない。
9 ・・・〈判決注:省略〉
10 原告は,被告に対するその余の請求を放棄する。
11 原告,被告及び利害関係人は,原告と被告の間,原告とデリリオスとの間,及び原告と利害関係人との間において,本件紛争に関し,本和解条項に定めるほか何らの債権債務のないことを相互に確認する。
12 ・・・〈判決注:省略〉
(別紙)
プログラム目録
原告被告間の平成12年6月15日付確認書記載の各プログラムのうち,下記のプログラム
記
1 ガチャピンムック
2 プライベートホームページ
3 四次婆
4 恋愛の神様
5 アサヒ飲料アンケートプログラム
6 リクルートフロムエーアルバイト情報検索プログラム
7 IDO向け愛と出会いの占い館
8 パソナソフトバンク求人情報サーバー
9 IDO向け映画館空席情報サービス
10 シンタックス向けブティックホテル情報
11 ゲームコーナー
12 さくま式スゴロク
13 マップツアー得旅アミーゴ
14 ALBAの映画タイム
15 父母会やろうよ
16 奥の細道 」
なお,上記前訴和解別紙プログラム目録に記載のとおり,同別紙記載のプログラムとは,本件確認書締結に当たって前提とされたプログラムであり(すなわち,本判決における原告プログラムと同旨。),前訴和解時に被告インデックスが配信中のコンテンツが使用しているプログラムではない。したがって,同目録記載15及び同16のプログラムは,原告が開発中であった未完成のプログラムの方を指している。
(争いのない事実,甲1,乙62,63,122,弁論の全趣旨)
(4) 和解確認書
原告と被告ホールディングスは,前訴和解第2項の1億6000万円の内訳をどのような名目とするかについて,前訴和解成立前から協議をしており,被告ホールディングスは,(ⅰ)「⑯ガチャピン・ムック」の未払ロイヤリティ, (ⅱ)「①四次婆」,「⑪四次婆」及び「③プライベートホームページ」をデリ
リオスに譲渡したことに伴う損害賠償金並びに(ⅲ)前訴和解条項別紙プログラム目録記載のプログラムについて不適切な管理を行ったことによる損害賠償金とする提案を行った。しかし,原告がこの内容に強く反発したことから,被告ホールディングスは,中途半端な修正にとどまってなおかつその内容に納得したと見られるよりは,一切修正を求めないことによって納得した上で合意したものではないことを示す方針を採ることとした。そして,上記前訴和解同日,原告と被告ホールディングス及び被告Aは,前訴和解第2項の1億6000万円の内訳を,(ⅰ)「⑯ガチャピン・ムック」の未払ロイヤリティ,(ⅱ)「⑯ガチャピン・ムック」,「①四次婆」,「⑪四次婆」及び「③プライベートホーム
ページ」の著作者人格権の侵害による損害賠償並びに(ⅲ)前訴和解条項別紙プログラム目録記載のプログラムの原作品の滅失につき被告ホールディングス及び被告A不適切な管理を行ったことによる損害賠償とする旨の確認書を取り交わした。(甲63,64,66,乙130)
(5) 平成18年10月30日,原告は本件訴訟を提起した。(顕著な事実)第3 争点
(権利の有無)
1 プログラムに係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
2 言語(文章)に係る著作権(複製権・翻案権・公衆送信権・送信可能化権侵害関係)
3 美術(画像)に係る著作権(複製権・翻案権・公衆送信権・送信可能化権侵害関係)
4 データベース(データ定義ファイル)に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
5 データベース(会員情報データベース)に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
6 編集著作物に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)又は著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権侵害関係)
7 画面表示に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係)
8 数値,記号に係る著作権(複製権・翻案権侵害関係) (侵害行為の有無)
9 期間制限違反
10 数量制限違反
11 改変
12 氏名非表示
13 複製物の交付
14 翻案
15 みなし侵害 (責任原因)
16 被告ホールディングスの責任
17 被告インデックスの責任
18 被告Aの責任
19 責任態様 (債務不履行)
20 許諾契約違反 (損害)
21 損害の発生
22 利益額
23 損害の額(著作権法114条2項)
24 慰謝料 (不当利得)
25 不当利得
第4 争点に関する当事者の主張
1 プログラム
(1) 対比部分の創作性ア 原告
(ア) 星座を求めるプログラム
a(a) 原告代表者は,「②恋愛の神様」を,被告ホールディングスから交
付された数枚程度の企画書を参照して独自に作成した。この際,原告がアカデメイア又は被告ホールディングスからプログラム仕様書や計算式の交付を受けたことはない。そもそも,プログラマーではない占い師がプログラムの内部変数名を詳細に指定するはずもない。
アカデメイアから占いに関する計算式が提供されていたのであれば,「②
-1旧恋愛の神様」作成時に,同プログラムの作成者は各種占いの仕組みをアカデメイアに聞けば済むはずであるが,実際には,同作成者が占いの仕組みが分からないとするコメントをソースコード中に残していたり,第三者のホームページを参考資料として閲覧したりしている。
(b) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」は,平成11年2月22日から配信サービスが開始されているが,被告らの主張するように同月10日にアカデメイアから原告代表者に対して占いの仕様が指示されたのでは,到底同月2
2日までにプログラミングが間に合うはずがない。
(c) 被告ホールディングスがNTTドコモに提出した平成11年2月3日付
け「恋愛の神様(NTTドコモ)」に係る企画書には,原告代表者の生年月日を用いたサンプル登録画面が記載されており,原告代表者が作成中のプログラムの画面を被告らが動作させてその画面表示を基に作成したものであることが明らかである。したがって,原告代表者が全面的に「恋愛の神様(NTTドコモ)」の企画を行い,その企画を被告ホールディングスがN TTドコモに持ち込んだことを裏付けている。また,既に同日時点で「②恋愛の神様」が稼働していたことを意味するから,被告らが主張するように,同年2月10日にアカデメイアが原告代表者に占いの仕様を指示するということもあり得ない。
(d) 西洋占星術にしても,四柱推命にしても,過去何百年にもわたって行われている一般的な占いであって,その仕組みは広く知られており,わざわざ占い師が仕様を定めるような特殊なものではない。また,計算方式や計算精度はプログラムの作成者にゆだねられるのであって,占いの仕組みから自動的に計算式が決定されるようなものでもない。
(e) 被告らがアカデメイアが原告代表者に指示したとする日干の計算式は不完全であるし,「②恋愛の神様」が使用している計算式とも異なる。この
ような不完全な計算式しか指示できなかったアカデメイアよりも,原告の方が占いに精通していることは一目瞭然である。また,被告らにおいてアカデメイアが原告に提供したとする資料と「②恋愛の神様」が使用している立春の区分とは異なっている。
b 「②恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは,月と日という異なる範囲を持つ数値に対し,まず,月を使用した荒い振り分けを行い,続いて各月の中で,日付を使用して星座を判断するという2段階の流れとしているものであり,原告代表者独自の表現である。
c 「②恋愛の神様」の星座を求めるプログラムのスペースや改行位置,変数名などの部分には創作性が認められる。
d 生まれた月日に対応した星座名を求めるアルゴリズムの表現方法としては,C言語で作成された「②-1旧恋愛の神様」の星座を求めるプログラムを例にとれば,(ⅰ)文法上不要な括弧やスペースの入れ方を変える,(ⅱ)
文法上不要な括弧やスペースを取り除く,(ⅲ)括弧の部分ですべてインデントをする,(ⅳ)比較演算子「<=」(以下)に代えて「<」(小なり)を使用する,(ⅴ)if文に代えて条件演算子「?:」(3項演算子)を使用する,(ⅵ) switch-case文に代えてif文のみを使用する,(ⅶ)if-else文を使用する変わりに,変数に値を代入しておきif文の条件成立の場合に変数を上書きする,(ⅷ)最後のcaseをdefaultにして範囲外の値が返されるのを防ぐ, (ⅸ)条件を反転させる,(x)月の順番ではなく星座番号の順番に従ってコードを記述する,(xⅰ)「{」の位置を上下にそろえる,(xⅱ)引数の記述順
序を変え,又はポインタを使用する,(xⅲ)変数の型をchar型に変える,(xⅳ)
変数の型をunsigned型にする,(xⅴ)星座番号をdefineで定数としておく,
(xⅵ)defineに代えてenumを使用する,(xⅶ)条件と設定値を配列にまとめて
ループで読み出す,(xⅷ)月と日を同時に判定する,(xⅸ)1年の全日付につ
いて星座番号を定めたテーブルを準備し,計算式で該当星座番号を求める,
などの多数の表現がある。 (イ) 日干計算のプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 「②恋愛の神様」の日干計算のプログラムの変数名,関数名などの部分には創作性がある。
(ウ) 九星を求めるプログラム a 上記(ア)aに同じ。
b 立春の判断方法は数多く存在しており,「②恋愛の神様」の九星を求め
るプログラムは,その中でたまたま原告代表者が採用した手法で記述されている。
c 「②恋愛の神様」の九星を求めるプログラムの「d25」,「d23」という
変数名などの部分には創作性が認められる。
d 「②恋愛の神様」の九星を求めるプログラムでは,「立春」を表す変数
名に誤って「shunbun」(春分)と命名してしまったが,このような選択は独創的である。
(エ) 年月日を得るプログラム上記(ア)aに同じ。
(オ) 画像タグを生成するプログラム上記(ア)aに同じ。
(カ) 守護星を求めるプログラム上記(ア)aに同じ。
(キ) 相性占いの結果データ定義ファイル
a たとえデータであってもプログラムの一部である。データ定義ファイルのデータの数,データの意味,データの並び順,データの分割方法に必然性はないから,創作性がある。
b 星座の種類は12種類しかないから,数値などで識別するのが一般的であるにもかかわらず,「②恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファ
イルは,星座の英語名で識別するようにしている。 (ク) 相性占いの星座定義ファイル
a 上記(キ)aに同じ。
b 「②恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルのように星座名を英語の文字列で指定することや,日付を8桁で表現することは,他に方法がないほどの必然的なものではない。12種類しかない星座をわざわざ文字列で表したならば,日付についても文字列で表す方が月日の区切り文字などを入れられて分かりやすくなる。また,年部分を2桁で表す方法も一般的に使われているが,これとも異なる表現である。
c 「②恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルは,データを先頭から昇順に並べているが,ほかにも,年を定めたテーブルを引き,次に月を定めたテーブルを引き,そして日を定めたテーブルを引き,最終的に結果を得るような方法等もあるし,そもそもテーブルを使わず計算式で答えを求める方法もある。
(ケ) 今月の運命の定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(コ) 心理テスト用データ定義ファイル a 上記(キ)aに同じ。
b 「②恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルは,データとデータの間の連結関係を示し,全体として質問のツリー構造を作り上げ,ユーザー入力に対して次々と質問を切り替えていくという簡易的なプログラム構造を規定したものである。
(サ) 合コンでゴン用データ定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(シ) ルーン占い用データ定義ファイル a 上記(キ)aに同じ。
b 「②恋愛の神様」で画面に表示すべき画像のファイル名とルーン占い用データ定義ファイルの変数名は,原告代表者が自由な発想に基づき命名したものである。
イ 被告ら
(ア) 星座を求めるプログラム
a(a) 「②-1旧恋愛の神様」のソースコードの98.9%に当たる1万5
378行には「②恋愛の神様」のソースコードとの間に類似性はない。残り1.1%に当たる170行に「②恋愛の神様」のソースコードと類似する部分があるとはいえ,この部分は占いの計算結果を計算するロジックの
関数部分であるところ,これらはアカデメイアが原告代表者に対して提供した占いの仕様(各種占いの仕組み,計算式,占い結果等)に従って作成されただけのものであり,この部分には創作性がない。
(b) アカデメイアは,平成11年2月10日,四柱推命における日の十干(日
干)に関する仕組みや日干を算出する計算式,九星気学に関する仕組みや
計算式を原告代表者に直に説明し,メモや一覧表を原告代表者に交付した。
b 星座を求める計算方法及び各星座の境界条件は,解法に該当するものであり著作物として保護されない。星座を求める計算方法は,誕生日が何月であるかを調べ,次に日付を調べて,該当する星座を見つけ出すという手法であるが,「②恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは,上記の星座
を求める計算方法をそのまま表現したわずか17行の単純なプログラムである。そして,該当する月の調べ方はswitch-case文を使用し,該当する日の調べ方はif文を使用しているが,これは大部分のプログラマーがそうしても不思議ではないありふれた表現である。「②恋愛の神様」の星座を
求めるプログラムは,PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて
簡単な指令を組み合せたものにすぎず,アイディアの凡庸な表現に該当し,
創作性がない。
c ソースコードにおけるスペースの位置や改行の位置は,何ら知的価値を創造していないものであり,保護に値する表現とはいえない。
(イ) 日干計算のプログラム a 上記(ア)aに同じ。
b 日干を求める計算式は解法であり,著作物として保護されない。「②恋
愛の神様」の日干計算のプログラムの関数名は,関数の機能を表すありふれた関数名であり,凡庸な表現である。「②恋愛の神様」の日干計算のプ
ログラムは,わずか6行の単純なプログラムであり,PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず,ア
イディアの凡庸な表現に該当し,創作性がない。 (ウ) 九星を求めるプログラム
a 上記(ア)aに同じ。
b 九星を求める計算式及び立春を求める計算式は解法に該当し,著作物として保護されない。「②恋愛の神様」の九星を求めるプログラムにおける
立春を求める計算式は,まず立春が2月4日とならない例外的な年をテーブルで持ち,その例外年と占いをする年を比較することで立春が何日になるかを判断している。効率性を重視してプログラミングする以上,「②恋
愛の神様」の九星を求めるプログラムのように例外的な年の方が圧倒的に少ない場合,数の少ない例外を列挙した方が効率的なことから,このような手法は極めてありふれた考え方である。「②恋愛の神様」の九星を求め
るプログラムは,わずか12行の簡単なプログラムであり,PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず,アイディアの凡庸な表現に該当し,創作性がない。
c ソースコードにおける変数名それ自体は何ら知的価値を創造しておらず,また,変数名は分かりやすい表現である必要があり,その表現は限られたものであるから,保護に値する表現とはいえない。
(エ) 年月日を得るプログラム a 上記(ア)aに同じ。
b 「②恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは,わずか6行の簡単なプログラムであり,PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず,アイディアの凡庸な表現に該当し,創作性がない。このような簡易なプログラムに創作性を認めては,コンピュータにおいて年月日を扱うことは極めて困難となり,今後の電子計算機の広範な利用を妨げることになる。
(オ) 画像タグを生成するプログラム
「②恋愛の神様」の画像タグ(htmlにおける画像を表示するための imgタグ)を生成するプログラムの処理手順は,一般的な手法である。「②
恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは,わずか15行の簡単なプログラムであり,PHP言語で定められた言語仕様及び関数を用いて簡単な指令を組み合せたものにすぎず,アイディアの凡庸な表現に該当し,創作性がない。
(カ) 守護星を求めるプログラム上記(ア)aに同じ。
(キ) 相性占いの結果データ定義ファイル
a 占い結果に関するデータの並び順,占い結果の記述内容は,すべてアカデメイアが提供した原稿に基づいて記述されたものにすぎない。
b 「恋愛の神様(NTTドコモ)」の相性占いは,西洋占星術における星座同士の相性を占うものであるから,その占い結果のデータは,当然に14
4通りとなる。
(ク) 相性占いの星座定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(ケ) 今月の運命の定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(コ) 心理テスト用データ定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(サ) 合コンでゴン用データ定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(シ) ルーン占い用データ定義ファイル上記(キ)aに同じ。
(2) 依拠
ア 「②-1旧恋愛の神様」
(ア) 原告
a 「②-1旧恋愛の神様」の作成に関与したビルドの井上は,データベースのデータ部分を移行するために「②恋愛の神様」のソースコードを見たことを認めている。
b 次の事実から,「②-1旧恋愛の神様」は,「②恋愛の神様」に依拠し
て作成されたプログラムといえる。
(a) 「②恋愛の神様」の関数,データ定義ファイル,文章表現,コメントなどを複製した明確な形跡がある。
(b) 「②恋愛の神様」のソースコードを参照することなしには分かるはずもないファイル名,変数名,関数名,数式,計算手順などが同一の箇所が多数見られる。
(c) 「②恋愛の神様」で使用されるデータ構造との一致点がある。
(d) 「②-1旧恋愛の神様」のソースコード中に「②恋愛の神様」のソースコードを手元に置き変換(翻訳又は複製)したと解釈するしかないコメントが残されている。
(e) 「②恋愛の神様」において「立春」と「春分」を取り違えて変数を命名してしまった間違いが,「②-1旧恋愛の神様」にもそのまま引き継がれ
ている。
(f) 「②-1旧恋愛の神様」の作成者が占いの本質を理解していなかった結果,「②恋愛の神様」のプログラムを複製することで,同一動作を確保し
ようとした明確な形跡がある 。 (イ) 被告ら
a 「②-1旧恋愛の神様」の作成に当たって,開発会社が「②恋愛の神様」
のソースコードを見たことは認める。 b その余の点については争う。
イ 「②-1新恋愛の神様」
(ア) 原告
「②-1新恋愛の神様」は,「②恋愛の神様」に依拠して作成された。
(イ) 被告ら
争う。
ウ 「②-2恋愛の神様」 (ア) 原告
「②-2恋愛の神様」は,「②恋愛の神様」に依拠して作成された。
(イ) 被告ら
争う。
エ 「②-3恋愛の神様」 (ア) 原告
「②-3恋愛の神様」は,「②恋愛の神様」に依拠して作成された。
(イ) 被告ら
争う。
(3) 類否
ア 「②-1旧恋愛の神様」 (ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
「②恋愛の神様」の星座を求めるプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の星座を求めるプログラムとでは,スペースの位置,改行位置,1つの命令であるため文法上不要である「{」と「}」の使用の有無及びその位置
も含めて構文が同一である。また,両プログラムの各星座の境界条件は同一であり,その関数名もほぼ同じである。
b 日干計算のプログラム
「②恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは,「②恋愛の神様」の日干計算のプログラムが
1行で計算しているのに対して,「②-1旧恋愛の神様」の日干計算のプ
ログラムは変数を使用して計算を分割している違いはあるが,ほぼ同じものである。両プログラムにおいて計算式が異なる部分があるものの,これは「②-1旧恋愛の神様」の日干計算のプログラムの作成者が日干の計算式の意味を理解できず,誤解したまま「②恋愛の神様」の日干計算のプログラムを引き写したことによるものである。また,両プログラムの関数名は,ほぼ同じである。
c 九星を求めるプログラム
「②恋愛の神様」の九星を求めるプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の九星を求めるプログラムとは,ほぼ同じ名称の関数名が使用され,同一の名称の変数が使われている。また,「②恋愛の神様」の九星を求めるプ
ログラムで「立春」と「春分」とを取り違えて,立春を示す変数に「shunbun」
(春分)と名付けてしまっているが,「②-1旧恋愛の神様」の九星を求め
るプログラムで立春を示す変数名にも「shunbun」と名付けられており,同じ間違いが継承されている。また,両プログラムは,変数d23,d25で定義されている配列の要素が全く同じであり,2月4日以外の例外日のみを配列にしておくというプログラムの設計思想も同一である。さらに,両プログラムの関数の計算手順も,不必要な括弧があることや変数の名称までも含めて同一である。
d 年月日を得るプログラム
「②恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは,ほぼ同じ関数名を使用している。「②-1
旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは,「②恋愛の神様」の年月
日を得るプログラムに比して,エラーを返す処理が追加されたり,sm,sdなどの配列を使用してPHP言語のsubstr関数と同様の処理を実現させたり,さらに,結果となる値を返す方法も異なっているが,それらの違いは
言語仕様の違いに起因するものであり,「②恋愛の神様」の年月日を得る
プログラムをC言語に翻訳したことにより生じたにすぎない。 e 画像タグを生成するプログラム
「②恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは,ほぼ同じ関数名を使用してるほか,pathという名称の変数を使用している点も同一である。「②-1
旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムでは,ユーザの指定がない場合の処理やアニメデータの存在のチェックなどの処理が追加されているが,ユーザがあらかじめ登録した値と携帯電話の表示性能を考慮して,カラー,白黒又はアニメのうちどの画像を表示するかを選択する処理手順という基本的機能は同一内容であり,「②-1旧恋愛の神様」の画像タグ
を生成するプログラムは,「②恋愛の神様」の画像タグを生成するプログ
ラムをC言語に翻訳しただけのものである。 f 守護星を求めるプログラム
「②恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「②-1旧恋愛の神様」
の守護星を求めるプログラムとは,守護星を得るという同じ目的のプログラムである。両プログラムの関数の名称などは異なるが,引数は同じになっている。ただし,処理結果は,「②恋愛の神様」の守護星を求めるプロ
グラムが星座名を得るものであるのに対し,「②-1旧恋愛の神様」の守
護星を求めるプログラムでは星座番号を得ることになっている点で若干異なる。
ただし,プログラムの表現は,冒頭で変数jの値を計算する式に類似性があり,変数sの使用方法にも類似性がある。しかし後半のforループ部分は,かなり異なる書き方になっている。
しかしながら,目的,引数などが同じ類似の関数であるから「②恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の守護星を
求めるプログラムとには,類似性がある。 g 相性占いの結果データ定義ファイル
「②恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルとは,定義されているデータそのものやその定義の順番,英文星座名を使用していること,相性点数,結果文章及びデータの並び順,144通りの組合せというデータ量であることのいずれの点においても一致しており,「②恋愛の神様」の相性
占いの結果データ定義ファイルをCSV形式に翻訳しただけのものである。
h 相性占いの星座定義ファイル
「②恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルとは,「②-1旧恋愛の神様」の相性
占いの星座定義ファイルが,1つのファイルであった「②恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルを2つのファイルに分割し,さらに1986年以降のデータを追加しているほかは,ファイル名,データ内容,日付を
8桁の数値で記述している点などが同一である。 i 今月の運命の定義ファイル
「②恋愛の神様」の今月の運命の定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」
の今月の運命の定義ファイルとは,同一の内容である。 j 心理テスト用データ定義ファイル
「②恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛
の神様」の心理テスト用データ定義ファイルとは,「②-1旧恋愛の神様」
の心理テスト用データ定義ファイルにデータが追加されているものの,「②
恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルに含まれているデータは,
すべて「②-1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにも含まれている関係にあり,「②-1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定
義ファイルで定義しようとしているデータの番号,文章,選択肢などが同一であるから,「②恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルを
CSV形式に変更しただけでのものである。 k 合コンでゴン用データ定義ファイル
「②恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルとは,本質的に同一である。
l ルーン占い用データ定義ファイル1
「②恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1とは,占いの結果文章は異なるが,それ以外の要素は,同一の内容であり,その配列順序も同一である。また,ルーン石の正逆(上下)方向を区別するためにルーン石の呼称として「-p」「-n」を付加するという命名法も同一である。
m ルーン占い用データ定義ファイル2
「②恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル2とは,占いの結果文章も配
列順序も同一である。また,両プログラムのルーン石の名称も同一である。
(イ) 被告ら
いずれも争う。
イ 「②-1新恋愛の神様」 (ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
「②-1新恋愛の神様」の星座を求めるプログラム(GetSeizaNo, GetSeizaNum)は,後記ウ又はエの「②-2恋愛の神様」又は「②-3恋愛の神様」の星座を求めるプログラム(GetSeizaNo,GetSeizaNum)とほぼ同一の内容であるが,さそり座といて座の境界となる部分につき,さそり座
の終わりを11月22日から同月21日としている点だけが変更されている。なお,「②-1新恋愛の神様」のGetSeizaNoはほぼ全体がコメントア
ウトされているが,コメントとはいえソースコードには残っているから,
「②-1新恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは,「②恋愛の神様」
の星座を求めるプログラムと連続性を有している。 b 日干計算のプログラム
「②-1新恋愛の神様」の日干計算のプログラムは,後記ウ又はエの「②
-2恋愛の神様」又は「②-3恋愛の神様」の日干計算のプログラムと同一である。
c 九星を求めるプログラム
「②-1新恋愛の神様」の九星を求めるプログラムは,後記ウ又はエの
「②-2恋愛の神様」又は「②-3恋愛の神様」の九星を求めるプログラムと同一である。
d 年月日を得るプログラム
「②-1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムと,後記ウ又はエの
「②-2恋愛の神様」又は「②-3恋愛の神様」の年月日を得るプログラムとは,「②-2恋愛の神様」及び「②-3恋愛の神様」の年月日を得る
プログラムが,入力文字列に対する検査について,入力文字列が年月日又は年月日時の記述であるかを桁数で判別するものであったのに対し,「②
-1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムが,これら検査に加えて年月日時分の記述も許容するように桁数が追加されている点が異なる。
e 画像タグを生成するプログラム
「②-1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと,後記ウ又はエの「②-2恋愛の神様」又は「②-3恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは,「②-1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプロ
グラムが,NTTドコモだけではなくKDDIやソフトバンクにも対応で
きるように,①画像フォーマットPNGに対応させた,②コメントアウトされていた画像フォーマットGIFの通常サイズ用処理が再度組み込まれた,③NTTドコモ505端末用の処理が一部変更になった,④ソフトバンク用処理が一部変更になった,⑤KDDI向け処理が追加されたなどの処理の一部が変更されているが,主要な部分は同一である。
f 守護星を求めるプログラム
「②恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「②-1新恋愛の神様」
の守護星を求めるプログラムとは,類似する。 (イ) 被告ら
a 星座を求めるプログラム
「②-1新恋愛の神様」の星座を求めるプログラムは,データファイルから星座を得るように全面的に書き換えられ,「②恋愛の神様」の星座を
求めるプログラムとは異なる処理のプログラムとなっており,類似しない。
b 日干計算のプログラム
「②-1新恋愛の神様」の日干計算のプログラムは,「②恋愛の神様」
の日干計算のプログラムとは異なる計算式により日干の計算をしており,類似しない。
c 九星を求めるプログラム争う。
d 年月日を得るプログラム
年月日を「YYYYMMDD」(年年年年月月日日)の8文字で取り扱い,
それぞれを分解して年月日を取得する方法は,プログラミングにおいて一般的に利用される方法である。「②恋愛の神様」の年月日を得るプログラ
ムと「②-1新恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは,いずれもこの考え方で年,月又は日を数値として取得しているが,そのソースコードの表現は異なっており,類似しない。
e 画像タグを生成するプログラム
URLを求めてこれに基づいて画像タグを生成するという手法は,一般的な方法である。「②恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「②
-1新恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムは,いずれもこの考え方で画像タグを生成しているが,そのソースコードの表現は異なっており,類似しない。
f 守護星を求めるプログラム
「②恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「②-1新恋愛の神様」
の守護星を求めるプログラムとは,類似しない。ウ 「②-2恋愛の神様」
(ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
「②-2恋愛の神様」のGetSeizaNoは,「②-1旧恋愛の神様」の星座
を求めるプログラムと全く同じ関数であるから,類似する。また,「②-
2恋愛の神様」のG et SeizaNoの改良版であるGetSeizaNumは, 上記 GetSeizaNoに引き続いてソースコードに連続して記述されているところ, GetSeizaNoでは,引数が月,日の2つの数値だったところを,GetSeizaNum
では,日付を示す文字列となっている。この変更に伴い,日付を示す文字
列から月,日の数値への変換式がGetSeizaNumの冒頭に入っている。また,
返し値である変数seiza が,GetSeizaNoでは「int seiza;」と不定値の状態のまま準備されているのに対し,GetSeizaNum では「static int seiza
= 0;」と初期化されている。 b 日干計算のプログラム
「②-2恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「②-1旧恋愛の神様」
の日干計算のプログラムとは,関数の名称,目的,関数の定義前に入れられたコメントのみが同じで,引数及び内部計算は,全く別のものとなって
いる。
c 九星を求めるプログラム
「②-2恋愛の神様」の九星を求めるプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の九星を求めるプログラムとは,「②-1旧恋愛の神様」の九星を求
めるプログラムでは九星の値として1~9を返していたものを「②-2恋愛の神様」の九星を求めるプログラムでは同値を0~8を返すように変更されているほかは,全く同じである。
d 年月日を得るプログラム
「②-2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムは,「②-1旧恋愛の
神様」の年月日を得るプログラムと比して,次の改良がなされている。 (ⅰ)「②-1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは引数を破壊
しているが,「②-2恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは,引数
を破壊しないように改良されている。
(ⅱ)「②-1旧恋愛の神様」の年月日を得るプログラムでは,引数をコピーしてから引数の妥当性を判別しているが,「②-2恋愛の神様」の年
月日を得るプログラムでは,命令の順序を入れ替えて,妥当性を判別してから引数をコピーしている。
e 画像タグを生成するプログラム
「②-2恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「②-1旧恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは,目的,引数は同じものの,関数の名称が改められたほか,内部計算も全く別のものとなった。したがって,両プログラムの内容もほぼ完全に違う。
f 守護星を求めるプログラム
「②恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムと「②-2恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムとは,引数が大きく変わり,目的によって2つのプログラムを使い分ける形に変わっており,処理内容もかなり違って
いる。しかし,両プログラムとも,日付を渡して星座名を得る関数であり,
その点では「②-1新恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムよりも,
「②恋愛の神様」の守護星を求めるプログラムの関数の動作に近い。
ソースコードが大幅に書き直されているが,「②恋愛の神様」の守護星
を求めるプログラムを発展的に改良したものであり,「②恋愛の神様」の
守護星を求めるプログラムの創作性が失われるものではないから,類似する。
(イ) 被告ら
a 星座を求めるプログラム争う。
b 日干計算のプログラム
「②恋愛の神様」の日干計算のプログラムと「②-2恋愛の神様」の日干計算のプログラムとは,それぞれ異なる計算式により日干の計算がされており,類似しない。
c 九星を求めるプログラム争う。
d 年月日を得るプログラム
年月日を「YYYYMMDD」(年年年年月月日日)の8文字で取り扱い,
それぞれを分解して年,月又は日の数値を取得する方法は,プログラミングにおいて一般的に利用される方法である。「②恋愛の神様」と「②-2
恋愛の神様」とでは,いずれもこの考え方で年月日を取得しているが,そのソースコードの表現は異なっており,類似しない。
e 画像タグを生成するプログラム
URLを求めてこれに基づいて画像タグを生成するという手法は,一般的な方法である。「②恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムと「②
-2恋愛の神様」の画像タグを生成するプログラムとは,いずれもこの考
え方で画像タグを生成しているが,そのソースコードの表現は異なっており,類似しない。
f 守護星を求めるプログラム争う。
エ 「②-3恋愛の神様」 (ア) 原告
a 星座を求めるプログラム
「『②-2恋愛の神様』」とあるところを「『②-3恋愛の神様』」と改
めるほかは,「②-2恋愛の神様」に同じ。
b 日干計算のプログラム上記aに同じ。
c 九星を求めるプログラム上記aに同じ。
d 年月日を得るプログラム上記aに同じ。
e 画像タグを生成するプログラム上記aに同じ。
f 守護星を求めるプログラム上記aに同じ。
(イ) 被告ら
a 星座を求めるプログラム
「『②-2恋愛の神様』」とあるところを「『②-3恋愛の神様』」と改
めるほかは,「②-2恋愛の神様」に同じ。
b 日干計算のプログラム上記aに同じ。
c 九星を求めるプログラム
上記aに同じ。
d 年月日を得るプログラム上記aに同じ。
e 画像タグを生成するプログラム上記aに同じ。
f 守護星を求めるプログラム上記aに同じ。
2 言語
(1) 作成者ア 原告
(ア) 別紙言語対比表の各上欄の文章を含む「恋愛の神様(NTTドコモ)」内のすべての文章は,原告代表者が独自に創作したものである。原告代表者は,被告ホールディングスより,平成11年2月22日の「恋愛の神様(NTTドコモ)」のサービスインの間近になって,アカデメイアから占いの文章について名義貸しを受けるということを聞いたが,アカデメイアが「恋愛の神
様(NTTドコモ)」に関するアイディア又はヒントを出すようになったのは,
「②恋愛の神様」のプログラム開発が終了し,そのデバックも終わった後のことであり,何らそれらが反映されることはなかった。
(イ) 被告らが被告ホールディングスにおいて「恋愛の神様(NTTドコモ)」の企画制作に当たった証拠として提出する各種書類は,内容が薄くて仕様書と呼べるレベルのものではなく,アイディア段階にとどまるものか,あるいは iモード仕様を満たさない実現不可能なものばかりである。このような仕様書で「②恋愛の神様」を制作することはできず,上記書類は,別のコンテンツの企画か,あるいはボツになった企画に関するものである。
(ウ) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」は,平成11年2月22日にサービスインしている。被告らの主張するように同月10日にアカデメイアから原告代表
者が占いの仕組みを説明されても,それから被告ホールディングスに見積書を提出したり,値引き交渉をしたりしてからプログラムの作成を始めなければならず,しかも,被告ホールディングスからもアカデメイアからもプログラム仕様書の交付はなく,かえって,被告らが証拠として提出するような誤った計算式のメモと役に立たない企画書等の資料しか交付されなかったのでは,到底サービス開始時までに「恋愛の神様(NTTドコモ)」が完成するはずはない。
(エ) 原告代表者は,「恋愛の神様(NTTドコモ)」の制作に当たり,被告ホー
ルディングスとのやり取りの中からいくつかのアイデア又はヒントを得,また,被告ホールディングスの依頼によって対応した部分もあるが,「恋愛の
神様(NTTドコモ)」内のすべての文章の創作を行ったのは原告代表者である。占いは女性利用者が多数見込まれたことから,女性の意見の代表として被告ホールディングスの女性社員の意見を聞くとの理由でBが制作に参加していたが,いくつかの意見を出したにすぎず,制作に対する関与はほとんどなかったといってよいほど極めて限定的であった。
(オ) 「②恋愛の神様」の中には,サンプルデータとして「1965年」,「2
月5日」との文章が存するが,これは原告代表者の誕生日であり,「恋愛の
神様(NTTドコモ)」内の文章が原告代表者によって制作されたことの証左である。
(カ) 原告代表者は,遅くとも昭和55年10月にはバイオリズムと星占いに関するプログラムを作成しており,その後も同じような占い用プログラムを数 回作成している。原告代表者は,占いに精通しており,アカデメイアの協力 がなくても「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章を制作する能力を十分に 有していた。むしろ,D及びアカデメイアを有名たらしめたのは,この「恋 愛の神様(NTTドコモ)」にDやアカデメイアの名が出ていたからである。 (キ) 「②恋愛の神様」の天文暦は,「完全版 日本占星天文暦 第1版」とは
大きく異なるものであり,「②恋愛の神様」の天文暦は,アカデメイアや被
告ホールディングスの関与なしに原告代表者によって創作されたものである。すなわち,アカデメイアの指示する読み方によって「完全版 日本占星天文暦 第1版」からデータを拾い出して,これと「②恋愛の神様」の天文暦とを対比すると,ほとんどが一致せず,「②恋愛の神様」の天文暦が「完
全版 日本占星天文暦 第1版」のデータに従っていないことは一目瞭然である。
(ク) 「②恋愛の神様」におけるルーン占いの方式は独特のものであり,被告ホールディングス又はアカデメイアから指示されたものではないことはもちろん,古代より伝わる伝統的なルーン占いとも異なっているものである。古代より伝わるルーン占いでは,25個のルーン石をシャッフルし,1つのストーンを取り出すことで占うものであり,16個のルーンストーンは上下の方向性があるから,方向性のあるものは50分の1の確率で選ばれ,方向性のないものは25分の1の確率で選ばれる。しかし,「②恋愛の神様」におけ
るルーン占いの方式は,どのパターンも41分の1の確率で選ばれるようになっている。
(ケ) 被告らは,「恋愛の神様(NTTドコモ)」内の文章の著作権者が原告であ
ることを自白した。イ 被告ら
(ア) 被告ホールディングスは,平成10年夏ころ,アカデメイアに対し,携帯電話で配信する占いのコンテンツの企画立案への協力と原稿制作等を依頼した。そして,被告ホールディングスは,アカデメイアより占いの種類や占い項目等について提案を受けて企画を立案し,同年8月27日,NTTドコモに企画書を提出した。その後,占いの項目を恋愛に特化する方針に変更し,アカデメイアにその方針を伝え企画を具体化していった。被告ホールディン
グスとアカデメイアは,平成10年11月上旬から下旬にかけて,メニュー,
占い結果の原稿文字数,画面遷移等について打合せを行い,アカデメイアから占いの種類,占いの項目,占い結果に関して情報提供を受け,コンテンツの内容,画面表示等について順次具体化していった。また,被告ホールディ
ングスは,同年11月30日にサンプル原稿の制作をアカデメイアに依頼し,
これを受領した。アカデメイアは,平成10年12月から本格的に原稿の作成に着手し平成11年1月中旬ころから最終的に使用する原稿の納品を開始し同年2月10日に納品を完了するというスケジュールで原稿制作作業を進めており,この結果,「恋愛の神様(NTTドコモ)」の占い文等の文章を完
成させた。
(イ) 被告ホールディングスが平成10年11月ころに原告に対して「恋愛の神様(NTTドコモ)」に係るプログラムの開発を打診した可能性はあるかも知れないが,被告ホールディングスが正式に原告にプログラム開発を依頼したのは平成11年1月ころと考えられる。被告ホールディングスは,アカデメイアから原稿が提出される都度,原告に対し電子データ又は紙媒体で原稿を交付していった。同年2月10日,被告ホールディングスは,アカデメイアに対し,原告代表者に占いの仕組みや計算式を教えてほしい旨を依頼し,アカデメイアのCは,原告代表者に日干や九星の仕組みや計算式を説明し,日干の計算式を記入したメモや九星の一覧表を交付した。
原告代表者は,これら情報提供を受けて,「②恋愛の神様」を完成させた。
(ウ) 原告は,占いに精通していない原告代表者が,専門的知識を要する占いの原稿をどのように創作したのか,原告代表者はどこで占いを学んだのか,原告代表者はどのような書籍を参考にしたのか,何ら具体的に明らかにしていない。
(エ) 「②恋愛の神様」の天文暦は,被告ホールディングスが制作したものである。この天文暦作成時,被告ホールディングスは,アカデメイアから,「完
全版 日本占星天文暦 第1版」掲載の表中の日付を単純に抽出するよう指
示を受けており,同表下部のplanet Ingress欄を参照して表中の日付を修正するようなことはしていない。被告ホールディングスの行ったデータ抽出方法によると,「完全版 日本占星天文暦 第1版」と「②恋愛の神様」の
天文暦との相違はわずか3%であり,相違した原因も入力ミスにすぎない。一方,原告は,「②恋愛の神様」の天文暦は「完全版 日本占星天文暦 第
1版」に依拠せず創作したと主張するが,両者の差異は長いものでは305
日になっているところ,このような大幅な差異は入力ミス以外に考えられず,
原告代表者が何か別の書籍やデータを参照したという理由では説明できない。「②恋愛の神様」の天文暦が「完全版 日本占星天文暦 第1版」を元
に作成されたことは明らかである。
(オ) 被告らが「恋愛の神様(NTTドコモ)」の著作権が原告にあることを自白した事実はない。仮に自白に該当するかのような事実があったとしても,既にこれを撤回している。
(2) 対比部分の創作性ア 原告
「②恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各上欄の文章には,いずれも創作性がある。
イ 被告ら争う。
(3) 依拠 ア 原告
「②-1旧恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各下欄の文章は,「②恋愛
の神様」内の別紙言語対比表の各上欄の文章に依拠している。イ 被告ら
争う。
(4) 類否
ア 原告
「②恋愛の神様」内の別紙言語対比表の各上欄の文章と,「②-1旧恋愛
の神様」内の別紙言語対比表の各下欄の文章は,別紙言語対比表記載のとおり,類似する。
イ 被告ら争う。
3 美術
(1) 作成者ア 原告
(ア) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」がサービス提供を開始した平成11年2月
22日時点では,iモードには白黒端末しか存在しなかったので,原告代表者は,端末に合わせて別紙美術対比表3及び4左欄のとおりの白黒画像(原告白黒画像)を作成した。
(イ) 平成11年末ころより平成12年初頭にかけてカラー端末が発売されたため,原告代表者は,白黒画像に彩色する形で別紙美術対比表1及び2のとおりのカラー画像(原告カラー画像)を作成した。
イ 被告ら
原告は,原告白黒画像及び原告カラー画像を創作したことについて何ら具体的な主張,立証をしていない。
(2) 創作性ア 原告
(ア) 原告白黒画像及び原告カラー画像には創作性がある。だれが作画してもこれと同じ作品ができあがるとはいえない。
(イ) 白黒画面表示においてドットを用いて濃淡を表現する技法は一般的に用いられるものであるが,原告白黒画像と既刊書「ルーンの書」におけるルーンの石の絵は,ルーン文字の書体も,線の太さも,石の図柄・外形・凹凸の形
状も,ルーン文字と石とのバランスも全く異なり,石の形状,石の表面のドット,石の側面のドット,それらドットにより表現される全体的な濃淡,全体的な印象等において異なる著作物である。
(ウ) 原告カラー画像は,原告白黒画像に着色したのみならず,石に影を付け,石への着色と背景への着色が画像ごとに異なっている。この着色や影の付加は,原告代表者の想像力の赴くままにしたものである。
(エ) 原告代表者は,既刊書「ルーンの書」を見たことがない。また,原告代表者が当初作成したルーン石の画像は上下の判別の付かない石の形状を用いた画像であったが,その後,上下非対称の石の形状を用いた画像に作り替えて
いる。既刊書「ルーンの書」の石の形状は上下の判別が付くものであるから,
同書をみて原告白黒画像を作成したのであれば,最初から上下非対称の石の形状の画像を作っていたはずである。
イ 被告ら
(ア) 原告は,原告白黒画像及び原告カラー画像の創作性について何ら具体的な主張,立証をしていない。
(イ) 原告白黒画像及び原告カラー画像は,ルーン占いで使用するルーン文字が書かれた石(ルーン石)の画像である。ルーン文字は,ゲルマン民族が紀元2
~3世紀ころから使用していた文字であり,当然ながら原告代表者が創作したものではない。原告白黒画像と既刊書「ルーンの書」に記載された石の絵 とを比較すると,両者が酷似していることが分かる。すなわち,両者とも, 平べったく周囲が角張った形状の石を点と線で描き,その石の中にルーン文 字を直線的な字体で表記している。原告白黒画像が,上記書籍に掲載されて いる石の絵を基に作られており,この絵の単純な模倣又はささいな改変を加 えたにすぎないことは明白であり,原告白黒画像に創作性は認められない。 (ウ) 原告カラー画像は,原告白黒画像に着色したものであり,やはり上記「ルーンの書」に掲載されている石の絵にささいな改変を加えたにものにすぎな
い。完全な模倣とはいえないとしても,既存の著作物にささいな改変を加えただけのものには,著作者の創造的選択は認められないから,原告カラー画像には,創作性がない。
(3) 依拠 ア 原告
被告カラー画像は,原告白黒画像又は原告カラー画像に依拠している。イ 被告ら
争う。
(4) 類否 ア 原告
(ア) 原告白黒画像と被告カラー画像は,別紙美術対比表3及び4のとおり,類似する。
(イ) 原告カラー画像と被告カラー画像は,別紙美術対比表1及び2のとおり,類似する。
イ 被告ら争う。
4 データベース1
(1) 作成者ア 原告
「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,原告代表者が作成した。イ 被告ら
争う。
(2) 対比部分の創作性ア 原告
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a(a) データ定義ファイルは,データを集積したものであり,データ利用
のために検索性を持たせてあるから,「データベース」に該当する。
(b) 仮に個々のデータ定義ファイルに創作性がないとしても,データ定義ファイルは,それぞれが密接に関連付けられ,データ定義ファイルを集めた全体が1つのデータベースを構成し,そこに極めて高い創作性がある。例えば,相性占いの星座定義ファイルにより,ユーザが入力した男女2人分の生年月日を基に,男性の金星星座,女性の火星星座を取り出し,これを基に,相性占いの結果データ定義ファイルから相性の結果を得ており,この2つのファイルには密接な関連付けが行われている。
b 相性占いの結果データ定義ファイルの全体のデータ数は144個となっており,12星座2個の組合せであって全部を網羅しているため選択はないが,結果文章の作成においては,携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し,簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守るようにしてある。また,文章内容は,原告代表者が,無限の言語表現の可能性の中から作成し,推敲を行い当該文章として選択を行った。さらに,一般的な占いで使用される太陽星座ではなく,火星星座及び金星星座が使用されている。このようにデータの分割方法,文面の長さ,内容,火星星座と金星星座の組合せを選択したことはデータベースの構成として必然的なものではなく,原告代表者がこれを選択し,体系的に構築した創作表現の発露である。
c 占いの結果文章に標準的な属性が定められているわけではなく,せいぜい結果ごとに文章が違うという程度の分割しかない。したがって,文章の中に相性度という数値を入れる必要があっても,データベース上でこれを分割して格納する必然性は生じない。そもそも,被告らが主張するようにあるものの属性が異なるとみなしたことは,すなわちそのこと自体に創作性の現れがある。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 相性占いの星座定義ファイルの星座は英語名で書かれているが,あらかじめ12個しかないと分かっているならば番号でもよい。相性占いの星座定義ファイルの生年月日は1943年(昭和18年)~1985年(昭和6
0年)の間に設定されているが,「恋愛の神様(NTTドコモ)」が平成1
1年(1999年)2月に運用が開始されているにもかかわらず,その時点までのデータを網羅しているわけではない。このように日付の範囲を19
43年からとすることも,星座を英語名で示すことも,データベースの構成として必然的なものではなく,原告代表者がこれを選択し,体系的に構築した創作表現の発露である。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b 心理テスト用データ定義ファイルのデータは,通し番号,質問又は回答を示すフラグ(Q又はA),選択肢1,飛び先1,選択肢2,飛び先2,・
・・選択肢n,飛び先nにより構成されており,質問に対して選択された内容によって次の質問の通し番号が選択され,複数の質問を経て結果にたどり着くようデータが密接な関係に立っている。また,質問のときには必ず2以上の選択肢があるが,回答のときには選択肢は存在しない。質問のときの通し番号は数値,結果のときの通し番号は大小のアルファベットになっている。また,複数選択型(回答が3択以上)や複数回質問方式(複数回の質問に連続して回答し,最後に分岐する方式)にも対応できるように独自の工夫をした。さらに,質問・結果文章の作成においては,携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し,簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守り,文章内容も,原告代表者が,無限の言語表現の可能性の中から作成,推敲を行い当該文章として選択を行った。質問又は回答を示すフラグは必ずしも必要ではなく,通し番号でデータの種別
を区別する必要もない。このようにデータの分割方法や,通し番号の体系,
文面の長さ,内容はデータベースの構成として必然的なものではなく,原告代表者がこれを選択し,体系的に構築した創作表現の発露である
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b 合コンでゴン用データ定義ファイルの全体のデータ数は144個となっており,12星座同士の全組合せであり,全部を網羅しているため選択はないが,結果文章の作成においては,携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し,簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を守っている。また,文章内容も,原告代表者が,無限の言語表現の可能性の中から作成,推敲を行い当該文章として選択を行った。このように文面の長さ,内容を選択したことはデータベースの構成として必然的なものではなく,原告代表者がこれを選択し,体系的に構築した創作表現の発露である。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b ルーン占い用データ定義ファイルにおける各ルーン石の識別子のデータは,英語のルーン名の後ろに,ハイフンを付け,向きの正逆を意味するp (ポジ)又はn(ネガ)を付けたものであるが,このルーン識別子の体系は原告代表者が創作し表現,定義したものである。一方,日本語のルーン名と正逆の別のデータは分離しているが,分離しないことも可能である。「意
味」,「暗示するもの」,「占い結果」はそれぞれデータとして分離してい
るが,「占い結果」だけでも十分であるし,データを分離しないことも可
能である。結果文章の作成においては,携帯電話が小さな表示画面しか持っていないことを考慮し,簡潔な文面にするとともに表示文字数の制限を
守り,文章内容も,原告代表者が,無限の言語表現の可能性の中から作成,
推敲を行い当該文章として選択を行った。このようにデータの分割方法,ルーン識別子の定義,文面の長さ,内容はデータベースの構成として必然的なものではなく,原告代表者がこれを選択し,体系的に構築した創作表現の発露である。
c ルーン文字は,古代ヨーロッパで使用されていた古代文字で,時代,土地により様々なものがあった。このため,文字数は定まっておらず,流派によって違いがあり,必ず25種類でならなければならいなどの標準的な仕様は存在せず,正逆(上下)を区別するかどうか,いくつの文字の組合せで占うかなども様々であり,ルーン文字には無限の選択肢がある。ルーン占いの結果が41種類というのは,古代文字を使う占いが様々考えられる中から携帯電話でも気軽に占える形式を原告代表者がたまたま選択した結果である。原告代表者が作成した占いの結果は,たまたま41通りになったのであり,そのため占い結果のデータも41通りとなったものであり,このことには原告代表者の創作性が働いたものである。
イ 被告ら
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a(a) 別紙データベース対比表の各欄の文章は,原告がデータベースと主張する「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルを構成する個々の情報を取り上げているだけであり,「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルがデー
タベースの著作物性を有するかとは関係のない事項を掲記しているにすぎない。
(b) 「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルの情報量は極めて少なく,かつ,
将来にわたって情報を追加更新することを前提としていないものであり,データベースとはいえない。
(c) データ定義ファイルは極めてシンプルな構造であり,その検索方法も1通りしか想定されておらず,多数の検索項目による縦横な検索はできず,
著作権法が想定するデータベースとは本質的に異なる。
b 相性占いの結果データ定義ファイルのデータの分割方法は,相性点数と文章という属性の異なる情報を分割したにすぎず,極めて一般的である。文面の長さ自体も,占い結果の内容にすぎず,12星座同士の組合せは網羅的であり,情報の選択にも創作性はない。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b 相性占いの星座定義ファイルの生年月日が1943年から始まっているとしても,これは陳腐なアイディアにすぎない。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b 複数の選択肢を持つ質問を多数用意し,各質問に対する回答によって,次にどの質問に回答するかを決定し,このような質問,回答を繰り返し,最終的な結果が出るというスタイルは,書籍や雑誌で頻繁に用いられているありきたりの手法にすぎない。
c 心理テストの原稿はアカデメイアが提供したのであり,心理テスト用データ定義ファイルのデータ数,データの関係,文面の長さ等は,占いの仕様として決定されていたものである上,その内容も一般的なものである。心理テスト用データ定義ファイルにおけるデータの分割方法も,属性の異なる情報を分割したにすぎず,極めて一般的である。原告の主張する「通し番号」の体系もアカデメイアの原稿はもちろんのこと,雑誌などでも用いられているごく一般的なものである。
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル上記(ア)aに同じ。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b ルーン占い用データ定義ファイルにおけるデータの分割方法は,属性の異なる情報を分割したにすぎず,極めて一般的である。ルーン占い用データ定義ファイルのルーン識別子は,41個の場合分けを選択するために使用しているのみであり,その識別子自体,ルーン石の名称そのものに正逆の区別をつけたのみであって,陳腐なアイディアである。また,ルーン占い用データ定義ファイルの文面の長さは,占い結果の内容から既に決まっている。
(3) 依拠 ア 原告
「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,「②恋愛の神様」のデ
ータ定義ファイルに依拠している。イ 被告ら
「②-1旧恋愛の神様」を作成するに当たって,開発会社が「②恋愛の神様」のソースコードを見たことは認める。
(4) 類否 ア 原告
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a 別紙データベース対比表の作成に当たっては,「②恋愛の神様」のデー
タ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルとの比較を行いやすくするため,両ファイルから本質的でない部分を削除した。すなわち,「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルから,(ⅰ)配列命令の
「array()」,(ⅱ)データ区切り記号の「,」,(ⅲ)文字列を示す記号であ
る「“」「”」「‘」「’」,(ⅳ)array文において引数とデータを結び付けて連
想配列を作成する「=>」をそれぞれ削除し,「②-1旧恋愛の神様」のデ
ータ定義ファイルからは,(ⅰ)CSVファイルでデータの区切りを示す記号である「,」,(ⅱ)無意味なデータである「EOF」を削除した。
b 別紙データベース対比表別紙1のとおり,「②恋愛の神様」の相性占い
の結果データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルとは,すべてのデータ内容が同一であり,データベースとして同一である。なお,対比に当たっては,「②恋愛の神様」の相性占
いの結果データ定義ファイルにおいては,女性の星座による連想配列を作り,その連想配列の内部に男性の星座による連想配列を組み入れているのに対し,「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルに
おいては,女性星座と男性星座とを個別にそれぞれ組み合わせているため,
「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの結果データ定義ファイルの女性星座の各部分を削除した。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙2のとおり,「②恋愛の神様」の相性占い
の星座定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルとは,すべてのデータが同一であり,データベースとして同一のものである。なお,「②恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイルでは1フ
ァイルであったが,「②-1旧恋愛の神様」の相性占いの星座定義ファイ
ルは2ファイルに変更されている。 (ウ) 心理テスト用データ定義ファイル
a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙4の1~3のとおり,「②恋愛の神様」の
心理テスト用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルとは,女性編及び男性編はすべてのデータが完全に同一であり,男女共通編はすべてのデータがほぼ同一である。また,同別紙4の4のとおり,メニュー編については,「②-1旧恋愛の神様」の心
理テスト用データ定義ファイルにおいてデータが追加されているが,「②
恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにおいて含まれていたデータは,すべて「②-1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルにすべて同じ順番のまま含まれている。なお,「②恋愛の神様」の心理
テスト用データ定義ファイルでは1ファイルであったが,「②-1旧恋愛
の神様」の心理テスト用データ定義ファイルでは,女性編,男性編,男女共通編,メニュー編の4ファイルに変更されている。
さらに,同別紙4の5~7のとおり,「②-1旧恋愛の神様」において
は未使用とされているデータについても対比をしてみると,「②恋愛の神
様」の心理テスト用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の心理テスト用データ定義ファイルは,女性編及び男性編はすべてのデータが完全に同一であり,男女共通編はすべてのデータがほぼ同一である。
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙5のとおり,「②恋愛の神様」の合コンで
ゴン用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」の合コンでゴン用データ定義ファイルは,すべてのデータが同一であり,データベースとして同一のものである。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル1及び同2 a 上記(ア)aに同じ。
b 別紙データベース対比表別紙6の1~3のとおり,「②恋愛の神様」の
ルーン占い用データ定義ファイルと「②-1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1及び同2とは,すべてのデータが同一であり,データベースとして同一のものである(ただし,「②-1旧恋愛の神様」の
ルーン占い用データ定義ファイル1については「占い結果」の文章が全く異なるため「意味」及び「暗示するもの」に係る部分に限る。)。なお,
「②恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルは,ルーン石の「意
味」及び「暗示するもの」と「占い結果」とを2つに分割していたところ,
「②-1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1及び同2においては,いずれも,ルーン石の「意味」及び「暗示するもの」に「占い結果」を各ルーン石について追加することによって「意味」,「暗示する
もの」及び「占い結果」をひとまとめにしてこれらを分割していないため,
同別紙6の1では,「②-1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義フ
ァイル1から「占い結果」の部分を削除し,同別紙6の2では,「②-1
旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル2から「ルーンの名称」
と「占い結果」だけを取り出して対比している。イ 被告ら
(ア) 相性占いの結果データ定義ファイル
a 別紙データベース対比表は,PHP言語の仕様やCSV形式のファイルに依存する部分を削除して対比を行っているが,文章以外の部分を削除すれば最後に残るのは文章のみであり,結局,個々の文章を対比していることになる。このような文章のみの対比は,データベースの対比として意味をなさない。
b 「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,配列又は連想配列の多次元
配列を使用した索引の構造を有しているが,「②-1旧恋愛の神様」のデ
ータ定義ファイルは,CSV形式のデータに対してプログラムによる計算式(何番目にあるか)によりデータの参照が行われるのであり,両ファイルの体系的構成は異なる。
(イ) 相性占いの星座定義ファイル上記(ア)aに同じ。
(ウ) 心理テスト用データ定義ファイル上記(ア)aに同じ。
(エ) 合コンでゴン用データ定義ファイル
上記(ア)aに同じ。
(オ) ルーン占い用データ定義ファイル1及び2 a 上記(ア)aに同じ。
b 「②-1旧恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイル1及び同2においては,「②恋愛の神様」のルーン占い用データ定義ファイルと異な
り,ルーン石の「意味」,「暗示するもの」及び「占い結果」をひとまと
まりのデータにしているのであるから,両者の体系的構成は異なる。
5 データベース2
(1) 作成者ア 原告
(ア) 原告会員情報データベースは,原告代表者が,データをどのように格納するか,分割格納するか,統合して格納するか,テーブルやカラムの命名をどうするか,アクセス速度をどう試験し,どう判断するか等,様々な要素を詳細に考え,何段階にも渡る試行錯誤,創作過程を経て創作したものである。
「②恋愛の神様」のinstest.php(甲22の3の28頁~29頁)は,5万回のデータベースアクセスを実行しアクセス速度を精密に計測試験するプログラムであり,アクセス速度の評価を行っていた際の名残である。
(イ) 汎用データベースソフトを使用した場合,データベースが存在する前にデータの体系的な構成が存在する状況となるが,その際の著作者は,体系的な構成を準備した者である。プログラムによって自動収集・更新される作業自体はプログラムが行っているだけの機械的なもので,自動収集・更新作業には創作的活動は認められないから,データベースの著作者は,データベースの体系的な構成を構築した者である。
(ウ) 原告会員情報データベースには,「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サ
ービスの開始直前である平成11年2月22日午前0時時点で12人の会員データが記録されていた。このデータのうち10人分は原告代表者が入力し
たテスト用の初期データである。したがって,原告会員情報データベースは,
この時点で既にデータベースとして完成していた。
その後,会員の操作によりデータが追記又は削除されているが,これらはプログラムにより機械的に自動更新されたものであるから創作性が認められず,又は追加部分が当初データベースの体系的構成の同一性を保っているものであるから,いずれにしても,更新されたデータベースも当初の体系の構成を行った者の著作物である。
イ 被告ら争う。
(2) 創作性ア 原告
(ア) レコード内にどのようなカラムが作製,記録されているかについてデータベースの著作物としての創作性があり,テーブルをどのように定義し,どのように分割するかについてもデータベースの著作物としての創作性がある。したがって,たとえデータベース内に1つもデータがない状態であっても,当該データベースには創作性がある。
(イ) 原告会員情報データベースは,「有料会員の情報を保持するテーブル」,「会
員が占いに使用する情報を保持するテーブル」,「会員の個人情報を保持す
るテーブル」及び「会員がカラー表示を希望しているかどうかを保持するテーブル」の4つのテーブルに分割され,携帯電話の個体番号を変換した文字列(uid)によってひも付けされている。会員データを1つのテーブルに保持することも容易であるが,これを4つに分割することは,だれが設計しても同じ分割になるとはいえないから,原告代表者による体系的構成の創作性の
現われである。どのようなデータ(会員の姓,会員の名,誕生日,生年月日,
ニックネーム,携帯電話番号,会員に対するアンケート,カラー表示の有無)
を収集するかということも,だれが設計しても同じになるとはいえないから,
情報の選択の創作性の現われである。イ 被告ら
会員データを4分割することは,検索の効率性からの要請にすぎない。また,課金のために必要な情報,占いに必要な情報,アンケートへの回答で得た情報,カラー表示に関する情報といった一般的な形で4分割しているのみであり,そのテーブルの分割方法に創作性はない。さらに,これら分割された情報を,個人の特定として最も確実な課金のための情報である携帯電話の個体識別番号で関連付けるという構成も,極めて一般的である。また,ユーザーに情報を入力させるに当たって,一般的な携帯コンテンツで要求される情報項目や占いサイトとして必要な情報項目を入力させるのは当然であって,情報の選択にも創作性はない。
(3) 依拠 ア 原告
原告会員情報データベースから被告会員情報データベースにデータを移行するに当たって,設計書も移行プログラムも作成されていないのは,被告会員情報データベースに全く同じ構造を使用したため,特別なプログラムの助けもなくデータの移行が完了できたことを意味している。被告ホールディングスは,原告会員情報データベースの会員データを引き継いで被告会員情報データベースに移行しているのであるから,同データベースは原告会員情報データベースと連続性がある。
イ 被告ら争う。
(4) 類否 ア 原告
(ア) 原告会員情報データベースのuidテーブル(有料会員の情報を保持するテーブル)には,uidカラム が存在する。
被告会員情報データベースのuidテーブルには,uidカラムが存在する。 したがって,両テーブルは,テーブル名,カラム名,カラムの並び順共に
ほぼ同じ定義になっている。
(イ) 原告会員情報データベースのuprof テーブル(会員が占いに使用する情報を保持するテーブル)には,uid,mynick,mybirth,myseiza,mykyusei, mynikkan,mysexのカラムが存在する。
被告会員情報データベースのuprof テーブルには,uid,mynick,mybirth,
mysexのカラムが存在する。
したがって,両テーブルは,テーブル名,カラム名,カラムの並び順共にほぼ同じ定義になっている。
(ウ) 原告会員情報データベースのuinfoテーブル(会員の個人情報を保持するテーブル)には,uid,namesei,namemei,email,keitaitel,sex,hearのカラムが存在する。
被告会員情報データベースのuinfo テーブルには,uid,namesei,namemei,
email,keitaitel,sex,hearのカラムが存在する。
したがって,両テーブルは,テーブル名,カラム名,カラムの並び順共にほぼ同じ定義になっている。
(エ) 原告会員情報データベースのucolor テーブル(会員がカラー表示を希望しているかどうかを保持するテーブル)には,uid,mycolorカラムが存在し,
mycolorカラムは,「0」,「1」及び「2」によって,それぞれ端末標準の画像,
強制的に白黒画像を使用及びアニメ画像の使用との情報を記録している。 被告会員情報データベースのucolor テーブルには,uid,mycolorのカラ
ムが存在する。mycolorカラムは,「COLOR_DEF 」,「C OLOR_MONO」及び
「COLOR_ANIME」によって,それぞれ標準,白黒及びアニメを使用との情報を記録している。
したがって,両テーブルは,テーブル名,カラム名,カラムの並び順,デ
ータ共にほぼ同じ定義になっている。イ 被告ら
争う。
6 編集著作物
(1) 作成者ア 原告
「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,原告代表者が作成した。イ 被告ら
争う。
(2) 創作性ア 原告
「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,編集著作物としての創作性がある。
イ 被告ら争う。
(3) 依拠 ア 原告
「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,「②恋愛の神様」のデ
ータ定義ファイルに依拠している。イ 被告ら
「②-1旧恋愛の神様」を作成するに当たって,開発会社が「②恋愛の神様」のソースコードを見たことは認める。
(4) 類否 ア 原告
「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルは,「②恋愛の神様」のデ
ータ定義ファイルと類似する。
イ 被告ら争う。
7 画面表示
(1) 作成者
ア 「四次婆(DDI)」 (ア) 原告
a 画面表示は原告代表者が作成した。
b プロシードの「四次婆(DDI)」のプログラムを作り替えるに当たり,原告代表者は画面表示もすべて作り替えた。
(イ) 被告ら
画面表示の内容が特定されておらず,原告代表者が作成したとの立証がない。
イ 「プライベートホームページ」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
ウ 「ツヴァイ資料請求」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。エ 「リクルート」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
オ 「愛と出会いの占い館」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。カ 「映画館空席情報」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
キ 「四次婆(DION)」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。ク 「ゲームコーナー」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
ケ 「さくま式スゴロク」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
コ 「ガチャピン・ムック」 (ア) 原告
上記ア(ア)aに同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
(2) 創作性
ア 「四次婆(DDI)」 (ア) 原告
a 画面表示には創作性がある。
b 原告の手元には最終版のプログラムはない。これは,平成12年3月2
6日~27日にかけてプログラム等を記録していたサーバの管理支配が原告から被告ホールディングスに移転したためである。
(イ) 被告
画面表示の内容が特定されておらず,画面表示に創作性があるとの立証がない。
イ 「プライベートホームページ」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
ウ 「ツヴァイ資料請求」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。エ 「リクルート」
(ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
オ 「愛と出会いの占い館」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。カ 「映画館空席情報」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
キ 「四次婆(DION)」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。ク 「ゲームコーナー」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
ケ 「さくま式スゴロク」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
コ 「ガチャピン・ムック」 (ア) 原告
上記ア(ア)に同じ (イ) 被告ら
上記ア(イ)に同じ。
8 数値,記号ア 作成者 (ア) 原告
別紙数値・記号対比表の各上欄の表現は,原告代表者が創作した。 (イ) 被告ら
争う。
イ 創作性 (ア) 原告
別紙数値・記号対比表別紙1は「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルの相性占いの点数編の点数,同別紙2は「②恋愛の神様」のデータ定義ファイルの合コンでゴンのポイント編のポイントであり,思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術の範囲に属するものである。
(イ) 被告ら
争う。
ウ 依拠 (ア) 原告
「②-1旧恋愛の神様」のデータ定義ファイルの点数,ポイントは,「②
恋愛の神様」のデータ定義ファイルの点数,ポイントに依拠している。
(イ) 被告ら
争う。
エ 類否 (ア) 原告
別紙数値・記号対比表別紙1及び2のとおり,「②恋愛の神様」で使用さ
れる点数,ポイントと「②-1旧恋愛の神様」で使用される点数,ポイントとは,同一である。
(イ) 被告ら
争う。
9 期間制限違反
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」ア 原告
被告らは,平成17年4月1日以降も,「恋愛の神様(NTTドコモ)」の
配信サービスを行っている。イ 被告ら
平成17年4月1日以降の「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスは,「②恋愛の神様」とは類似性のない「②-1新恋愛の神様」によりされ
ている配信サービスである。なお,四柱推命,九星気学の占いについては,平成14年1月をもって配信サービスを停止した。
(2) 「恋愛の神様(KDDI)」ア 原告
被告らは,平成17年4月1日以降も,「恋愛の神様(KDDI)」の配信
サービスを行っている。イ 被告ら
平成17年4月1日以降の「恋愛の神様(KDDI)」の配信サービスは,
「②恋愛の神様」とは類似性のない「②-2恋愛の神様」によりされている
配信サービスである。
(3) 「恋愛の神様(ソフトバンク)」ア 原告
被告らは,平成17年4月1日以降も,「恋愛の神様(ソフトバンク)」の
配信サービスを行っている。イ 被告ら
平成17年4月1日以降の「恋愛の神様(ソフトバンク)」の配信サービスは,「②恋愛の神様」とは類似性のない「②-3恋愛の神様」によりされて
いる配信サービスである。
(4) 「愛と出会いの占い館」ア 原告
被告らは,平成17年4月1日以降も,「愛と出会いの占い館」の配信サ
ービスを行っている。イ 被告ら
被告ホールディングスは,平成12年10月末に「⑦愛と出会いの占い館」
の使用を終了し,同年11月からはビットオンに依頼して全面リニューアルした新プログラムを使用して「愛と出会いの占い館」の配信サービスをしている。そして,「愛と出会いの占い館」は,平成13年6月に配信サービス
が終了している。
(5) 会員情報データベースア 原告
原告会員情報データベースは,「②恋愛の神様」と一体的に扱われるもの
であるから,本件確認書によって平成17年3月31日までの使用のみが許諾された。そうすると,被告会員情報データベースが原告会員情報データベースを改変したものであるならば,被告会員情報データベースは原告会員情報データベースの2次的著作物であり,平成17年3月31日にその使用を
終了しなくてはならない。一方,被告会員情報データベースが,新たな著作物であるならば,被告らは原告会員情報データベースを無断で複製したものであり,使用許諾期間を問うまでもなく,被告らは当初から著作権侵害をしていたことになる。
イ 被告ら争う。
10 数量制限違反
(1) 「恋愛の神様(NTTドコモ)」ア 原告
(ア)a 被告ホールディングスは,平成12年5月ころ,緊急課題であったサーバの負荷分散のため,BIG-IPを導入した。株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイーの雑誌広告(甲2)におけるEの発言からみて,被告らは負荷分散装置を使用するに当たって原告プログラムの複製物を少なくとも3本作成した。また,サイベース株式会社の雑誌広告(甲7)におけるIの発言からみて,被告らは毎週サーバを増設しており,その度ごとに原告プログラムの複製をした。
b 原告としては,被告ホールディングスが負荷分散装置を採用する場合も当然に想定して本件確認書を作成し,リスクヘッジをしなければならない状況にあった。一方,被告らは,負荷分散装置の導入を考慮していたものの,どの程度の複製をするのかが決まっておらず,負荷分散装置を導入しない可能性もあった。一方で,被告らには著作権の買取りをする資力もなかった。そこで,必要に応じて被告ホールディングスが使用する原告プログラムの本数を増やすこととし,本件確認書では,あえて「1本のみの使用とする」ことが明示されたのである。
c コンピュータソフトウェア業界には,多用な使用許諾方式があるが,いずれの方式にあっても,可能な限り使用量を正確にカウントしようとして
いるのであり,使用許諾契約は厳密に解釈されなければならない。本件確認書は,プログラムの使用本数でカウントする方式であり,CPUの数やプロセッサコアの数やサーバ台数や接続ユーザー数はカウントの対象ではない。「プログラム1本」であるならば,プログラムの数に依る。
d アクセス数の増加によりサーバの許容できる処理量を超えたとしても,必然的に負荷分散装置の使用が帰結されるのではなく,サーバの性能を上げて許容処理量を引き上げたり,あるいは,新規会員の募集を一時停止して処理量の増加を食い止めるという方策により,簡単にアクセス数の増加に対応できる。
e 被告ホールディングスが負荷分散装置の導入の検討を始めたのは,平成
12年初めころであり,そのきっかけとなる平成11年末ころの「恋愛の神様(NTTドコモ)」のアクセス数は20万アクセス超であった。このことから,被告ホールディングスは,20万アクセスが負荷分散の必要性の指標となることを理解することになった。
1台のサーバの処理能力が20万アクセスであることの共通認識は,「恋
愛の神様(NTTドコモ)」や「四次婆(DDI)」の実際の運用から導かれたものであり,原告から被告ホールディングスに対する平成11年6月~
7月付けの見積書にもそのように記載されている。したがって,20万アクセスが負荷分散装置に当該プログラムをかけるか否かの目安である。
サーバのCPUの負荷率を上げているのは,インタープリタ言語で記述されている原告プログラムの実行に当たってのインタープリタ作業であり,したがって,アクセス数こそがサーバ増設の指標である。いずれの原告プログラムも原告代表者が作成している以上,コンテンツの特性はCP Uの負荷率にほとんど影響がない。会員数が増加すればデータベースサーバの処理が遅くなるが,会員数が増加すれば当然ながらアクセス数が増加するのであるから,結局のところ,やはりアクセス数がサーバ増設の指標
である。被告ホールディングスによるBIG-IP導入の動機が,正にこの装置を導入する時点のアクセス数であるはずがない。
f プログラムが負荷分散機能に対応するか否かについての技術的に大きなポイントは,データベースサーバを使っているか否かである。データベースサーバを使った場合,複数のWWWサーバがデータをデータベースサーバ上で共有管理できるので,負荷分散していることになる。原告プログラムは,すべてデータベースサーバを用いたデータベース連携WWWシステムであるから,負荷分散機能に対応したものである。
原告プログラムがこのように負荷分散機能に対応するものであることは,被告Aも知っていた。被告ホールディングスが負荷分散装置の導入を検討していた時期は,原告と被告ホールディングス間で紛争が発生する前
であるから,もし原告プログラムが負荷分散機能に対応していないならば,
1台のサーバ装置をより高速な装置に置き換えるという選択しか被告ホールディングスにはなく,使用用途のない負荷分散装置の選定作業を進めるはずがない。
g ファイアウォール機能(パケットフィルタリング)やキャリアごとの閲覧制限機能を求めるならば,高額な負荷分散装置を導入する必要はなく,より安価なルータやファイアウォール専用装置でそれらを実現すればよい。当時,被告ホールディングス社内には既にルータが導入済みであり,その設定を変更するだけで,ファイアウォール機能,キャリアごとの閲覧制限機能等の各種の機能を容易に実現できた。
h プログラムを全面的に作り直すためには,プログラムのすべての動作を網羅的に緻密に解析する必要があり,比較的高度な作業が要求されることはいうまでもない。これに対し,負荷分散機能に対応しているか否かは,データベースのアクセス形式やファイルのアクセス形式等の形式について調査,解析をすれば足りるのであり,プログラムのすべての動作を解析す
る必要もない比較的簡単なことである。被告ホールディングスにおいて原告プログラムの設計書やマニュアルがなくとも原告プログラムを全面的に作り直すことができたというならば,負荷分散機能に対応しているか否かを解析するのにも原告プログラムの設計書やマニュアルは必要ない。端的に開発者であった原告代表者に尋ねればもっと簡単である。
i 平成12年3月以前には,原告プログラムを管理下に置きプログラムの使用をしていたのは原告のみであり,被告ホールディングスが使用していたという事実はない。したがって,被告ホールディングスが原告からプログラムの使用態様に制限を受けていなかったのは当然である。本件確認書により,初めて,被告Aのみが原告プログラムを許諾を受けて使用できるようになったのである。
j 「WAP占い」サーバには,「③プライベートホームページ」も格納し
ていた。当時,「③プライベートホームページ」の管理画面に発言チェッ
ク機能があったところ,被告ホールディングスのサーバ構成図(乙59の
1)の「WAP占い」サーバの下部に「発言チェック」サーバが記載されている。そうすると,同構成図からは,被告ホールディングスが引き続き
「WAP占い」サーバ内に「③プライベートホームページ」の本体プログラムを格納し,「③プライベートホームページ」の発言チェック機能は別
のサーバに格納していたことが分かる。したがって,乙59の1によれば,
原告プログラムが負荷分散されていることが明らかである。
k 原告が「ガチャピン・ムック」に複数のWWWサーバを設定していたのは,プログラムを複製したためではなく,プログラムを分割したためである。「⑯ガチャピン・ムック」のプログラムをメニュー部分と2つのコン
テンツ部分の3つに分割し,メニューサーバ1台と2台のコンテンツサーバに配置した。分割されたプログラムのファイルを複数台のWWWサーバ
に分割して配置しても,全体としてプログラムが本件確認書にいう「1本」
であることには変わりない。確かに,プログラムを複数台のWWWサーバに分割して配置するときには,動作上の必要性から,一部のファイルは重複して配置されるが,これはプログラムの分割の必要から行われるものであり,プログラムが複製されて複数本になったわけではない。
l 「四次婆(DDI)」と「四次婆(DION)」とは,「四次婆」のタイト
ルを冠し,「四次婆(DDI)」で掲示板に書き込まれた内容が「四次婆(D
ION)」で閲覧できるという特徴を持つものの,「①四次婆」と「⑪四
次婆」とは全く別のプログラムであり,それぞれ独立して創作したものであり,別々のサーバに収容されていた。したがって,「①四次婆」と「⑪
四次婆」とを併せた1本のプログラムが複数のサーバに蔵置されていたものではない。
m 著作権法47条の5は,インターネットサービスプロバイダー(ISP)の業務の便宜を図るために制定されたものであり,自己のために自動公衆送信をし,また,プログラムを複製した被告らには同条の適用はない。同条は,公衆送信の対象ではないプログラムの複製を許容していない。そもそも原告の本件請求はいずれも平成22年1月1日から施行された同条の新設前の行為だけを問題にしている。
(イ) 被告らは,BIG-IPを稼働させて「恋愛の神様(NTTドコモ)」の配信サービスをするに当たり,少なくともその複製物を3部作成した。
(ウ) 平成12年ころ,「恋愛の神様(NTTドコモ)」は,他のコンテンツ用の
プログラムを「恋愛の神様(NTTドコモ)」用のサーバから分離していった結果,専用のWWWサーバと専用のデータベースサーバを使用する状態にあった。平成12年4月ころには「恋愛の神様(NTTドコモ)」がパンク状態でクレームが相次ぐ状況であったことから,被告ホールディングスはサーバを増設してこれに対応し,平成12年夏以降にはデータベースソフトを Sybaseに入れ替えて対応しているが,そうであれば,被告ホールディ
ングスは,平成12年4月から同年9月ころまでの間,WWWサーバを増設していたことになる。それはすなわち,それらWWWサーバ内に「②恋愛の神様」の複製物を蔵置したことにほかならない。したがって,被告ホールディングスは,負荷分散装置の負荷分散機能を用いていなかったとしても,「②
恋愛の神様」を複製し,DNSラウンドロビンのような単純な方法で負荷分散を行っていたはずである。
イ 被告ら
(ア)a 甲2は宣伝用の書類であり,そこに掲載されているコンテンツ画面は,被告ホールディングスのコンテンツサービスとして記載されているだけで あり,負荷分散装置の負荷分散機能を使用しているコンテンツとして掲載 されているのではない。また,そこに掲載されているイラストは,単なる 概念図であり,実際にサーバを何台使用しているかを示すものではない。 b 本件確認書は,被告ホールディングスが引き続いてコンテンツ配信サービスをすることを目的としているところ,負荷分散機能がコンテンツ配信 を円滑に行いサービス提供の中断を回避する機能を有している以上,これ を利用するために必要な範囲でプログラムの複製を行うことは,本件確認 書による許諾の範囲内の行為である。負荷分散機能を使用したとしても, 配信されているコンテンツサービスは1つであり,当該コンテンツサービ スとは別途独立したコンテンツを配信したり,又は第三者に複製物を譲渡 若しくは貸与して同一のコンテンツサービスが別途配信される場合とは異 なる。また,負荷分散装置で複数のプログラムを稼働させてコンテンツ配 信をしたとしても,複数のコンテンツサービスが提供されているわけでは ないから,売上げが増加するという関係になく,許諾者の許諾対価に不足
が生じるわけではないから,原告に不測の損害を与えるものでもない。 c 原告と被告ホールディングスとの間の本件確認書締結前の関係は,著作
権の帰属についてこそ双方の認識に相違があったものの,「ロイヤリティ
契約分」については,売上げに応じたロイヤリティを支払うことで,それ以外のプログラムについては,初期開発費用を支払うのみで,プログラムを期間の定めなく使用することができた。その使用の態様も,原告自ら1コンテンツにつき複数のサーバを被告ホールディングスに購入させ,被告ホールディングスは複数のサーバを使用してコンテンツの配信をしていたというものである。コンテンツ配信に必要である限り,被告ホールディングスの使用態様には何ら制限がなかった。したがって,従前にこのような態様で使用していたにもかかわらず,本件確認書で従前の使用態様に制約を課すようなことを被告ホールディングスが了承するはずがない。少なくとも,従来どおりにコンテンツ配信に必要な使用を可能とすることが,本件確認書締結時点での最低限の条件であった。
d 本件確認書は,被告ホールディングスと原告との関係をすべて清算し,被告ホールディングスが何らの支障なくコンテンツ配信サービスをすることを目的とするものであり,急激なアクセス増加に対応できるよう負荷分散をするためにプログラムの本数を追加する場合にすら原告に追加許諾料を支払う必要があるという趣旨であれば,何ら紛争の抜本的な解決にはならない。そのような将来の紛争の余地を残すような確認書の締結に被告ホールディングス及び被告Aが応じることはあり得ない。
e 原告が証拠として提出するコンテンツへのアクセス記録が正しいものと
しても,アクセス数のみがCPUやメモリの負荷率を高める要素ではなく,
会員数,コンテンツの特性,プログラムの処理計算量,データ量,サーバのスペック等を総合的に勘案しなければならず,一律に20万アクセスを超えればサーバの負荷分散が必要になるという前提そのものが誤りである。「恋愛の神様(NTTドコモ)」にしても,BIG-IPを導入した平
成12年5月時点のアクセス数は43万~50万アクセスである。
f 原告プログラムが負荷分散機能に対応していることを原告は何ら具体的