Contract
第13回 買戻権・地上権に関する登記買戻権に関する登記
1 買戻特約の登記
(1)買戻特約の性質
・買戻しの特約は、売買契約をすると同時に売買代金および契約費用を返還すれば解除することができる、とする売買契約の附款として扱われているが、登記された買戻権は一個の物権取得権たる性格を有するので、権利移転型の担保制度としても利用される。
・通常の売買契約で、売主が買主に対して、売買代金を払って買い戻すというような特約をすることは、売主にとっては売買代金を返さなければならないし、買主からすれば住宅ローンまで組んで売買代金を支払ったにもかかわらず、買い戻されたのでは生活設計が狂ってしまうということもあり得る。
・したがって、通常の売買契約であれば買戻し特約をすることはほとんどないが、住宅供給公社等の公的資金において、自宅の取得を促進するために、利益追求ではなく、持ち家政策の一環として買戻し特約を設定するということがある。
・その場合には自宅として買った買主が、投資用として使用している場合には目的外売買として買戻権を実行するという形で利用される。
・通常の売買において、自家用として購入すると使用目的を記載しても、売買代金完済後に目的外使用ということで契約を解除することは難しく、このような買戻し特約の制度を利用することが威力を発揮する。
・買戻し特約の対象となる権利は不動産の所有権に限らず、売買の対象となるものであれば、地上権、永xxx、賃借権はもとより、xx、工場財団等 1 も含む。
・買戻特約の登記をした場合は、第三者に対しても対抗することができ(民法 581 条 1 項)、所有権の移転登記に買戻特約の付記登記がされることにより、買戻権は登記上も独自の処分となり、買戻権も転々譲渡されることが可能となる。
図1
A
B
C
D
E
買戻権の行使が可能
買戻権
所有権
(2)買戻特約の登記の申請
・買戻しの特約の登記の申請は、売買による所有権移転の登記の申請と同時に、別個
1 不動産登記法上、擬制不動産と言われるものです
の申請情報によって申請する(S35・3・31・民甲 712 号通達)。
・しかし、建物を新築した場合には、所有権保存登記 2 と同時に買戻しの特約の登記を申請することもできる(S38・8・29 民甲 2545 号通達)。
・また、所有権移転または移転請求権の仮登記を申請する場合には、買戻特約の仮登記を、所有権の仮登記と同時に申請することはもちろん、所有権の仮登記の後に買戻特約の仮登記を申請することもできる(S36・5・30・民甲 1257 号通達)。
・仮登記の段階では上記のとおり、同時でなくてもよいが、本登記を申請するときには、所有権移転の本登記と買戻特約の登記は同時にしなければならない。
・所有権移転の登記と買戻特約の登記を同時に申請しなかった場合には、後日、買戻特約の登記を追加する更正登記は申請できない(登記研究 122 号)。
・なお、売買と同時に登記するというのが 1 つの要件となっているので、所有権の移転が売買ではなく、譲渡担保や代物弁済のように売買契約以外の買戻しの特約については登記をすることができない(S37・1・10 民甲 1 号回答)
・申請情報の一般的記載事項以外に、買戻特約に特別な記載事項としては売買代金と契約費用ならびに買戻期間がある。
① 売買代金
・売買代金については「売買代金 金何円」のように、買主が現実に支払った代金を記載する。
・売買代金を分割払いする場合には、支払済の代金と総売買代金が登記事項となり、
「売買代金 総代金 金何円 支払済代金 金何円」のように記載する。登記時点において支払済の代金がない場合には総売買代金と支払額のない旨を登記する。
・なお、利息制限法の潜脱を防止する意味で、売買代金に利息を併記することはできない(S35・8・1・民甲 1934 号通達)。
・売買代金の定め方に関連して、複数の不動産を一括して売買した場合が問題になる。買戻特約は原則として、各不動産に対して買戻権を行使できるので、不動産の価格は各不動産ごとに定めなければならない(S43・2・21 民甲 335 号回答)。しかし、敷地権付き区分建物の一体的処分の場合や、各不動産ごとに売買代金を定めることが不可能と認められるときには、「売買代金 何番、何番の土地とともに金何円 契約費用 何番、何番の土地とともに金何円」と記載してよい
(S35・8・1 民甲 1934 号通達)。
② 契約費用
・契約費用とは、契約書を作成の費用、その他 3 、売買契約締結のための費用で、買主が現実に支払った金額をいい、もし、売買代金だけを返還して買戻ができる旨の特約がある場合には「契約費用返還不要」と記載し、契約費用がないときに
2 BがAの表題登記のみの新築建物を買戻特約付きで買った場合、B名義で建物の表題登記がされた場合において、Bの所有権保存登記と同時にAのための買戻しの特約の登記を申請することができます
3 印紙代、xx証書作成用、測量費用、不動産鑑定費用など
は「契約費用なし」と記載する。
・現実に支払があった金額なので、売買契約書を添付した場合に、当該契約書の金額と違っていたとしても登記申請は受理される(S35・8・1 民甲 1934 号通達)。
③ 買戻期間
・買戻期間については、定めがあるときには登記するという任意的記載事項である
(96 条)。買戻期間は 10 年を超えることができず、もし 10 年を超える期間を定めたときには、その期間は 10 年とされ(民法 580 条)、登記原因証明情報に、10年を超える期間の定めがあったとしても、当該期間を 10 年として登記申請すれ
ば、当該申請は受理される(登記研究 558 号 56 頁)。
・なお、買戻期間を「売買代金支払期間が 10 年を超えるときには平成年月日までの 10 年間、5 年内のときには平成年月日までの 5 年間、5 年間を超え 10 年に満たないときには売買代金支払の完了まで」とする買戻の特約の登記は期間が不明確なのでできない(S34・1・27・民甲 126 号回答)。
・ただし、売買契約の日から一定の期間経過後(10 年内に限る)、または一定の停止条件の成就した後に買戻しをすることができる旨の定めの登記はすることができる。
所有権移転の登記申請書
登記の目的
原 因
x x 者
x x 者添 付 書 面
課 税 価 格登録免許税
登記申請書(同時申請 2 分の 1)*1
所有権移転
平成 21 年 6 月 1 日売買*2
(住所省略) B
(住所省略) A
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書住所証明書 資格証明書 代理権限証書
金 1,000 万円
*1 登記申請は売買による所有権移転登記と同時に別個の申請でするため、売買による所有権移転登記を(同時申請 2 分の 1)とし、買戻特約の登記を(同時申請 2分の 2)として同時に申請する。
*2 所有権移転の登記申請については通常通りであるが、登記原因は買戻特約付き売買ではなく、単に売買と記載する。
4 所有権移転登記には通常通りの登録免許税がかかります
買戻特約の登記申請書
登記の目的
原 因
売 買 代 xx 約 費 用期 間
x x 者
x x 者添 付 書 面登録免許税
登記申請書(同時申請 2 分の 2)買戻特約
平成 21 年 6 月 1 日特約
金 1,000 万円
金 10 万円
平成 26 年 6 月 1 日まで
(住所省略) A
(住所省略) B
登記原因証明情報 資格証明書 代理権限証書 *1
金 1,000 円 *2
*1 登記識別情報については、売買の登記と同時に申請するので、登記義務者の登記識別情報は存在せず、登記識別情報及び印鑑証明書は添付しない。
*2 付記登記なので一筆 1,000 円。
申請後の登記記録
[権利部(甲区)]
順位番号】 | 【登記の目的】【受 | 付年月日・受付番号】 | 【原 因】 | 【権利者その他の事項】 | ||
1 | 所有権保存 | 平成○年○月○日 第○○号 | 余白 | 所有者 (住所省略) A | ||
2 付記 1 号 | 所有権移転 | 平成 21 年 7 月 1 日 第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日 売買 | 所有者 (住所省略) B | ||
買戻特約 | 平成 21 年 7 月 1 日第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日特約 | 売買代金 金 1000 万円契約費用 金 10 万円 期間 平成 26 年 6 月 1 日まで 買戻権者(住所省略) A |
【
2 買戻権の移転・変更登記等
(1)買戻権の移転登記
・買戻権は売買による所有権移転登記の既登記としてされるが、買戻権自体も独立して取引の対象とされており、買戻権の移転登記が可能である。
・買戻特約は付記登記でされているので、買戻権の移転登記は付記登記の付記登記による。
・このように買戻権、所有権どちらも転々と移転することがあり、買戻権を買戻期間中に実行しようとする場合には、最終の買戻権者が、最終の所有者に対して売買代金と契約費用を支払って買戻権の実行をする。
登記の目的
原 因
x x 者
x x 者
添 付 書 面
登録免許税
2 番付記 1 号買戻権移転
平成 21 年 8 月 1 日 売買
(住所省略) C
(住所省略) A
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書*1資格証明書 代理権限証書
金 1,000 円*2
*1 所有権を目的とする買戻権の移転の場合は所有権移転と同様印鑑証明書を添付する。
*2 付記登記なので一筆 1,000 円。
申請後の登記記録
順位番号】 | 【登記の目的】 【受 | 付年月日・受付番号】 | 【原 因】 | 【権利者その他の事項】 | ||
1 | 所有権保存 | 平成○年○月○日 第○○号 | 余白 | 所有者 (住所省略) A | ||
2 付記 1 号 付記 1 号の 付記 1 号 | 所有権移転 | 平成 21 年 7 月 1 日 第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日 売買 | 所有者 (住所省略) B | ||
買戻特約 | 平成 21 年 7 月 1 日第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日特約 | 売買代金 金 1000 万円契約費用 金 10 万円 期間 平成 26 年 6 月 1 日まで 買戻権者(住所省略) A | |||
2 番付記 1 号 買戻権移転 | 平成 21 年 9 月 1 日 第 901 号 | 平成 21 年 8 月 1 日 売買 | 所有者 (住所省略) C |
[権利部(甲区)]
【
(2)買戻権の変更・更正登記
① 売買代金の変更・更正
・売買代金を増額する変更の登記はすることができない(S43・2・9 民三 34 号回答)
・分割払いの売買代金に関する支払済売買代金の増加の登記はできる。
・売買代金の減額による変更の登記はすることができる。
・売買代金の増額又は減額の更正登記はすることができる(登記研究 249 号 P64)。これは売買代金の増額は利息制限法の潜脱を防止するため禁止されているが、増額の更正登記は初めから増額後の金額であったはずなので登記が可能ということである。
② 契約費用の変更・更正
・契約費用については現実に支払った費用なので、後から変更ということはあり得
ないが、契約費用を「契約費用を返還不要」とするような変更登記は可能である。
・契約費用の増額または減額の更正登記は双方とも売買代金と同様に可能である。
③ 買戻期間の変更・更正
・買戻期間の定めがある場合には、後日これを伸長することはできない(民法 580
条 2 項)が、買戻期間を短縮する変更の登記は申請できる。
・また、買戻期間を伸長や短縮する更正登記は、変更ではないので、登記することができる(登記研究 113 号 64 頁)。
(3)買戻権の行使による権利移転登記
・買戻権の行使は、買戻期間内に、買戻権者が所有者に対し、契約で定めた売買代金および契約費用を支払うことにより行うが、買戻権が実行されると、買戻しの登記後に買戻しの目的物に設定された第三者の権利等は当然に消滅する。
・買戻権を行使した場合の登記手続については、所有権(またはその買戻権の目的物)を買戻権者に移転 5 する方法により行われる。
・買戻権の行使による所有xxの移転登記がされると、買戻特約の付記登記を残しておく意味がなくなるので、登記官の職権により抹消される(規則 174 条)。このとき、買戻権を目的とする第三者の権利がある場合には、それらの者の承諾証明情報を提供しなければならない(令別表 26 添付情報欄ヘ)が、所有権は移転の形式をとるので、所有権を目的とする権利については、それらの者の承諾証明情報を提供する必要はない。
・買戻権の行使は、買戻期間内 6 に行われなければならないが、登記の申請は買戻期間経過後に申請されたとしても受理される(登記研究 227 号 74 頁)。
登記の目的
原 因
x x 者
x x 者添 付 書 面
課 税 価 格登録免許税
所有権移転
平成 21 年 10 月 1 日買戻
(住所省略) C
(住所省略) D
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書住所証明書 資格証明書 代理権限証書
金 1,000 万円
金 20 万円 *1
買戻権の行使があった場合所有権移転の登記申請書
*1 所有権移転登記には通常通りの登録免許税がかかる。
5 実体法上は解除権の行使ですが、登記手続き上は常に所有xxの移転登記によります(大正元年9月310 日第414号)
6 申請情報や登記原因証明情報から、買戻期間を経過後に買戻権の行使がされたことが明らかな場合には却下されます(25条5号)
申請後の登記記録
順位番号】 | 【登記の目的】 【受 | 付年月日・受付番号】 | 【原 因】 | 【権利者その他の事項】 | ||||
1 | 所有権保存 | 平成○年○月○日 第○○号 | 余白 | 所有者 | (住所省略) | A | ||
2 | 所有権移転 | 平成 21 年 7 月 1 日 第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日 売買 | 所有者 | (住所省略) | B | ||
付記 1 号 | 買戻特約 | 平成 21 年 7 月 1 日 第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日 特約 | 売買代金 金 1000 万円 契約費用 金 10 万円 期 間 平成 26 年 6 月 1 日 まで 買戻権者(住所省略) A | ||||
付記 1 号の 付記 1 号 | 2 番付記 1 号 買戻権移転 | 平成 21 年 9 月 1 日 第 901 号 | 平成 21 年 8 月 1 日 売買 | 所有者 | (住所省略) | C | ||
3 | 所有権移転 | 平成○年○月○日第○○号 | 平成○年○月○日売買 | 所有者 | (住所省略) | |||
4 | 所有権移転 | 平成 21 年 10 月 5 日 第 1005 号 | 平成 21 年 10 月 1 日 買戻 | 所有者 | (住所省略) | C | ||
5 | 2 番付記 1 号 買戻権抹消 | 余白 | 余白 | 4番所有権移転登記により | ||||
[権利部(甲区)]
【
(4)買戻権の抹消登記
・買戻特約自体が無効であったり、買戻特約のみについて取消や解除がされたときには、買戻特約の登記のみを抹消することができる。
・この場合には買戻権の目的たる権利の登記名義人が登記権利者、買戻権の登記名義人が登記義務者として、共同申請に 9 より抹消登記を申請する。
・買戻権の抹消登記の申請には、買戻権が所有権を目的とする場合には買戻権者の印鑑証明書を添付しなければならない(S34・6・20 民甲 1131 号回答)。
登記の目的
原 因
x x 者
x x 者添 付 書 面
登録免許税
2 番付記 1 号買戻権抹消
平成 26 年 6 月 1 日 買戻期間満了
(住所省略) B
(住所省略) A
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書資格証明書 代理権限証書
金 1,000 円 *1
*1 抹消登記なので一筆 1,000 円。
7 所有権が移転している場合は最終の所有者が登記義務者となる
8 買戻権抹消の登記は職権で主登記でし、買戻の特約の登記を抹消する
9 買戻権や所有権が転々と移転している場合には、現在の登記名義人が当事者となります
申請後の登記記録
順位番号】 | 【登記の目的】【受 | 付年月日・受付番号】 | 【原 因】 | 【権利者その他の事項】 | ||||
1 | 所有権保存 | 平成○年○月○日 | 余白 | 所有者 (住所省略) A | ||||
第○○号 | ||||||||
2 | 所有権移転 | 平成 21 年 7 月 1 日 第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日 売買 | 所有者 (住所省略) B | ||||
付記 1 号 | 買戻特約 | 平成 21 年 7 月 1 日 第 701 号 | 平成 21 年 6 月 1 日 特約 | 売買代金 金 1000 万円 契約費用 金 10 万円 期間 平成 26 年 6 月 1 日 まで 買戻権者(住所省略) A | ||||
3 | 2 番付記 1 号 買戻権抹消 | 平成 26 年 6 月 5 日 第 605 号 | 平成 26 年 6 月 1 日 | 余白 | ||||
[権利部(甲区)]
【
(5)所有権の抹消登記
・買戻特約の登記のある所有権の抹消登記を申請するときには、これと同時にまたはこれに先立って、申請により買戻しの特約の抹消の登記を申請しなければならない
(S41・8・24 民甲 2446 号回答)
10 買戻権抹消の登記は主登記でし、買戻の特約の登記を抹消する
地上権の登記
1 地上権設定登記
(1)総説
・地上権とは、工作物または竹木を所有するため、他人の土地を使用する物権のことである(民法 265 条)。
・地上権の効力は、設定された土地の上下に及ぶが、地下または空間の一定の上下の範囲のみを目的として、地上権を設定することもできる(民法 269 の 2 第 1 項)。これが区分地上権である。
(2)設定の可否
① 重複して設定することの可否
・地上権は物権であり、地上権者はその土地を排他的に使用する権利を有する。よって同一の土地に重ねて地上権を設定することはできない。既に地上権の設定登記がされている土地に、重ねて地上権の設定登記が申請されたときは、その申請は却下される(不xx 25 条 13 号、大判 M39・10・31)
・登記上の存続期間の満了した地上権の設定の登記がされている土地についても、その登記を抹消しなければ、新たに地上権の設定の登記をすることはできない。
(S37・5・4、民甲 1262 号回答)
② 一筆の土地の一部を目的として設定することの可否
・実体法上は、一筆の土地の一部を目的として地上権を設定することは妨げられない。しかし、その設定登記を申請することはできない(不xx 25 条 13 号・令
20 条 4 号)。地上権が設定された範囲を登記記録上明らかにすることが困難だからである。
・一筆の土地の一部を目的として設定した地上権を登記したい場合は、土地について分筆の登記をし、地上権が設定された土地全体を目的として設定登記を申請しなければならない。
③ 共有持分を目的として設定することの可否
・xxの共有にかかる土地において、ある共有者の持分のみを目的として地上権を設定することはできない(S37・3・26 民甲 844 号通達)。
(3)登記申請手続
地上権設定登記の登記申請書
登記の目的
原 因
目 的
存 続 期 間
地 代
地上権設定 *1
平成年月日設定 *2
建物所有
30 年
1 平方メートル 1 年金 10 万円
支 払 時 期 毎年末日
地上権者 (住所省略)A設 定 者 (住所省略)B
添付書類 登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 代理権原証書課税価格 金 1,000 万円
登録免許税 金 10 万円 *3
*1 「地上権設定」と記載する。
*2 設定契約が成立した日をあげて、「設定」とする。ただし農地法所定の許可を要する場合、日付は契約成立の日または農地法の許可書到達の日のうちいずれか遅い日となる。
*3 不動産価額を課税価額として、その 1,000 分の 10(登税法別表第一 1(3)イ)。
① 登記事項
(ア)地上権設定の目的(78 条 1 号)(絶対的登記事項)
・地上権は「他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利」であるため、具体的な設定の目的を記載する。
・「ゴルフ場所有」「スキー場所有」を目的として地上権の設定の登記をすることができる(S47・9・19 民三 447 号回答、S58・8・17 民 4814 号)。
(イ)地代またはその支払時期の定め(78 条 2 号)(任意的登記事項)
・地上権は地代の支払いを要件とせずに設定できるが、当事者間で地代の支払いにつき定めることもできる。地代・支払時期について定めたときはその内容を記載する。
(ウ)存続期間の定め(78 条 3 号)(任意的登記事項)
・存続期間を定めるか否か、その期間の長短については当事者の自由である。定めたときはその内容を記載する。ただし、建物の所有を目的とする地上権は借地借家法の適用を受け、原則として 30 年以上という制限がある(借地借家法 3 条・ 22~24 条)。詳しくは賃借権の項目、「借地権が設定された場合の登記事項」の表を参照のこと。
② 申請人
・地上権者を登記権利者、設定者である所有権登記名義人を登記義務者とする共同
申請による。
③ 添付情報
(ア)登記原因証明情報(61 条・令 7 条 1 項 5 号ロ・別表 33 添付情報欄ハ)
(イ)登記識別情報(22 条)または登記済証(附則 6 条 3 項)
(ウ)登記義務者の印鑑証明書(令 16 条 2 項・令 18 条 2 項、規則 48 条 1 項)
・登記義務者が所有権登記名義人であるときは、その者の、申請書または委任状に押印した印鑑についての作成後 3 か月以内の印鑑証明書を添付する。
(エ)代理人によるときは、代理権限証明情報(令 7 条 1 項 2 号)
(オ)第三者の承諾証明情報(令 7 条 1 項 5 号)
・農地または採草放牧地に地上権を設定する場合、原則として、農地法の許可を証する情報を提供しなければならない。
申請後の登記記録
[権利部(乙区)]
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 地上権設定 | (省略) | 原因 平成年月日設定目的 建物所有 存続期間 30 年 地代 1 平方メートル1 年金10 万円支払時期 毎年年末 地上権者 (住所省略) A |
2 区分地上権の登記
(1)総説
・区分地上権とは、工作物を所有するため、地下または空間に、上下の範囲を定めて設定される地上権である(民法 269 条の 2)
・地上権の効力は土地の上下に及び、実際に地上権者が工作物を設けない部分につ いても土地所有者は利用することができない。そこで土地の有効利用を図るため、土地の地下または空間の上下の範囲を定め、その部分のみを目的として区分地上 権を設定することが認められた。
(2)設定の可否
① 既に第三者が使用収益をする権利を有する土地についても、その者およびその権利を目的として権利を有する第三者の承諾を得たときは、重ねてその土地に区分地上権を設定することができる(民法 269 の条の 2 第 2 項)。
② ①のように、通常の地上権の設定登記がある土地につき区分地上権の設定登記をすることはできるが、区分地上権の設定登記がある土地につき、通常の地上権を設定することは重複しての地上権設定となり、できない。
③ 階層的区分建物の特定階層の区分所有を目的とする区分地上権を設定することはできない。階層的区分建物の特定階層は、一棟全体の構造の一部であり、不可分であるため、設定の目的を特定階層のみの区分所有とすることができないためである(S48・12・24 民三 9230 号回答)。
(3)登記申請手続
区分地上権設定登記の登記申請書
登記の目的
原 因
目 的
x 囲
地 代
支 払 時 期 特 約
地上権者
設 定 者添付書類 課税価格
登録免許税
地上権設定 *1
平成年月日設定 *2
高架鉄道敷設
東京湾平均海面の上 100 メートルから上 30 メートルの間
1 平方メートル 1 年金 10 万円毎年末日
土地の所有者は高架鉄道の運行の障害となる工作物を設置しない
(住所省略)A
(住所省略)B
登記原因証明情報 登記識別情報 印鑑証明書 代理権原証書金 1,000 万円
金 10 万円 *3
*1 「地上権設定」と記載する。「区分地上権設定」とはしない。
*2 設定契約が成立した日をあげて、「設定」とする。ただし区分地上権の設定契約より後に農地法の許可や、土地の利用権者等の承諾を得たときは、許可・承諾の日となる。
*3 不動産価額を課税価額として、その 1,000 分の 10(登税法別表第一 1(3)イ)。
① 登記事項
(ア)地上権設定の目的(78 条 1 号)(絶対的登記事項)
・区分地上権は「工作物を所有するため」設定される地上権であるため(民法 269
条の 2 第 1 項)、その旨を「高架鉄道敷設」等と記載する。
(イ)地代またはその支払時期の定め(78 条 2 号)、存続期間の定め(78 条 3 号)(任意的登記事項)
・通常の地上権と同じく、定めがある場合に記載する。
(ウ)地下または空間の上下の範囲(78 条 5 号)(絶対的登記事項)
・範囲を明らかにする図面を提供する必要はない。
(エ)土地所有者の土地の使用に関する制限があるときはその旨(78 条 5 号)(任意的登記事項)
・区分地上権の設定においては、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる(民法 269 条の 2 第 1 項後段)。定めたときはその旨を記載す
る。
② 申請人
・区分地上権者を登記権利者、設定者である所有権登記名義人を登記義務者とする共同申請による。
③ 添付情報
・通常の地上権とほぼ同様であるが、第三者の承諾証明情報(令 7 条 1 項 5 号)について注意を要する。
・目的たる土地について、既に使用・収益を目的とする権利(地上権・賃借権・地役xx)、およびこれらの権利を目的とする権利の登記(抵当権・差押・仮差押の登記等)がされているときは、これらの権利者の承諾証明情報の提供を要する。
申請後の登記記録
[権利部(乙区)]
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 地上権設定 | (省略) | 原因 平成年月日設定目的 高架鉄道敷設 範囲 東京湾平均海面の上 100 メートルから上 30 メートルの間 地代 1 平方メートル1 年金10 万円支払時期 毎年末日 特約 土地の所有者は高架鉄道の運行の障害となる工作物を設置しない 地上権者 (住所省略) A |
3 地上権の移転登記
(1)総説
・地上権は設定者の承諾を得ることなく、第三者に譲渡することができる。また地上権者の死亡により、相続により移転する。
(2)登記手続
・xx、贈与等の特定承継によるときは、地上権を取得した者を登記権利者、譲渡した者を登記義務者とする共同申請による(60 条)。
・地上権者の相続、合併の包括承継によるときは、相続人や承継会社が単独で申請できる(63 条)。
・登記記録上、存続期間の満了している地上権については、存続期間経過後の日を原因日付として、地上権の移転登記を申請することはできない(S35・5・18 民甲
1132 号通達)。
(3)添付情報の注意点
・農地に設定された地上権を移転する場合には、農地法の許可を要し、移転登記の申請に際しては、農地法の許可証明情報を提供しなくてはならない。
・設定者たる所有権登記名義人の承諾証明情報の提供を要しない。
(4)登録免許税
① 相続・合併による移転登記
・不動産価額を課税価額として、その 1,000 分の 2(登税法別表第一 1(3)ロ)。
② 上記以外(売買・贈与等)による移転登記
・不動産価額を課税価額として、その 1,000 分の 10(登税法別表第一 1(3)ニ)。
4 地上権の変更登記
(1)総説
・地上権の設定登記がされた後、登記事項について変更があったときは変更の登記をすることができる。
(2)申請人
・地上権者に利益となる変更は、地上権者が登記権利者、設定者が登記義務者となる共同申請による。設定者に利益となる変更は、設定者が登記権利者、地上権者が登記義務者となる共同申請による。
(3)添付情報の注意点
・登記上の利害関係人が存在するときは、申請情報と併せてその承諾、またはその者に対抗できる裁判があったことを証する情報を提供したときは、変更登記は付記登記でなされ、提供しないときは主登記でなされる(66 条)。
申請人・利害関係人のまとめ ①
変更の態様 | 登記権利者 | 登記義務者 | |
存続期間の延長 | 地上権者 | 所有権登記名義人 | |
地代の減額 | |||
範囲の拡張 | 区分地上権者 | 所有権登記名義人 | |
利害関係人 | 後順位の・担保権の登記名義人 ・所有権移転(請求権)仮登記名義人 ・差押え、仮差押えの登記名義人 |
申請人・利害関係人のまとめ ②
変更の態様 | 登記権利者 | 登記義務者 | |
存続期間短縮 | 所有権登記名義人 | 地上権者 | |
地代の増額 | |||
範囲の縮小 | 所有権登記名義人 | 区分地上権者 | |
利害関係人 | 当該地上権を目的とする ・担保権の登記名義人 ・差押え、仮差押えの登記名義人当該地上権の移転(請求権)仮登記名義人 |
(4)通常の地上権から区分地上権へ、または区分地上権から通常の地上権への変更
・登記されている通常の地上権について、地下または空間の上下の範囲の定めを追加して、区分地上権とする変更登記ができる(S41・11・14 民甲 1907 号通達)。
・登記されている区分地上権について地下または空間の上下の範囲の定めを廃止して、通常の地上権とする登記もできる(同通達)。
・ただし、すでに通常の地上権がある場合に、同一不動産上の区分地上権を通常の地上権に変更することはできない。重複して通常の地上権を設定したのと同様の結果となるためである。
(5)登録免許税
・不動産 1 個につき金 1,000 円(登税法別表第一 1(14))。
5 地上権の抹消登記
(1)総説
・地上権が、混同・存続期間の満了・合意解除等によって消滅したときは、地上権の抹消登記を申請することができる。
(2)登記申請手続
・抹消登記は、現在の所有権登記名義人を登記権利者、地上権登記名義人を登記義務者とする共同申請による(60 条)。存続期間が満了したことが登記記録上明らかであっても所有権登記名義人が単独で抹消登記を申請することはできない。
・抹消登記の申請情報と併せて、登記上の利害関係人の承諾証明情報またはその者に対抗できる裁判があったことを証する情報の提供を要する(68 条)。利害関係人に該当するのは、抹消される地上権を目的とした抵当権者、差押債権者、地上権移転(請求権)仮登記名義人等である。
・登録免許税は不動産 1 個につき金 1,000 円である(登税法別表第一 1(15))。
6 用益権の登記事項のまとめ
登記事項 | 設定 の 目的 | 範囲 | 地代等 | 支払時期 | 存続期間 | その他 |
地上権 | ◎ | *1 | △ (地代) | △ | △ | 借地借家法 22 条の定め |
永xxx | ◎ | △ | △ | 民法 272 条ただし書の定め永小作人の権利義務に関す る定め | ||
(小作 料) | ||||||
地役権 | ◎ | ◎ | 民法 281 条 1 項ただし書の定め 民法 285 条 1 項ただし書の定め 民法 286 条の定め | |||
賃借権 | ○ | ◎ | △ | △ | 譲渡・転貸を許す旨の定め借地借家法 22 条、 23 条 1 項、38 条 1 項、 39 条 1 項の定め 処分能力または権限のない者の設定である旨 | |
(借賃) | ||||||
採石権 | △ | △ | ◎ | 採石権の内容 | ||
(採石 料) |
◎ 絶対的登記事項 △任意的登記事項
*1 区分地上権の場合は、地下または空間の上下の範囲が絶対的登記事項となる。