(3)PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)の構成 (4)PDM 作成の留意点
草の根技術協力事業に係る業務実施ガイドライン
2020 年 5 月
独立行政法人国際協力機構国内事業部
調達・派遣業務部
目 次
はじめに 3
第1章 採択から契約締結までに必要な手続き
1.採択団体向け説明会 4
2.実施計画の協議(契約交渉に向けた準備) 4
(1)実施計画の協議
(2)業務の内容(事業内容)の確定にかかる留意事項
(3)PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)の構成
(4)PDM 作成の留意点
(5)プロジェクト目標・成果・活動の関係
3.ODA 事業として実施するための準備(契約締結の前提条件) 9
(1)相手国政府からの了承取付
(2)NGO 登録
4.契約交渉 11
(1)契約金額を確認するにあたり確認が必要な事項
5.契約締結 12
(1)契約締結における確認事項
(2)契約書の内容
第2章 安全対策
1.業務従事者等の安全対策について 14
(1)安全対策措置
(2)安全対策研修の受講
(3)海外旅行傷害保険への加入
(4)安全対策にかかる経費
(5)安全管理ブリーフィング
(6)渡航に伴い実施する事項
第3章 契約の管理
1.契約における JICA および受託者の役割 17
(1)本事業に関わる JICA 部署と役割
(2)契約の性質と監督職員
(3)プロジェクトマネージャー
(4)打合簿
2.監督職員の権限 19
(1)業務の内容に関すること
(2)契約金額の内訳に関すること
(3)業務従事者に関すること
(4)契約変更に関すること
3.契約履行過程での具体的な手続き 22
(1)物品・機材の調達・管理
(2)第三者への再委託が発生する場合
(3)現地工事(修繕・修理等を含む施設等の建設など)を行う場合
(4)本邦研修受入れ
(5)不可抗力
第4章 モニタリングと評価
1.モニタリング・評価の意義・目的 27
(1)モニタリング
(2)評価
2.モニタリングの実施方法 28
(1)報告書の種類
(2)JICA と受託者との情報共有
(3)活動計画・実績表
(4)業務達成状況報告書
(5)事業評価報告書(様式自由)
3.評価の実施方法 32
(1)評価の準備
(2)終了時評価の視点
(3)終了時評価の評価項目
(4)終了時評価の進め方
4.NGO-JICA イコール・パートナーシップ振返りシート 36
5.事業終了後のモニタリングと評価 36
(1)特定の地域や課題を対象とした評価
(2)アンケート調査及びフォローアップ調査
別添1:採択から事業開始までのフロー別添2:様式一覧
はじめに
独立行政法人国際協力機構(以下、「JICA」という。)が実施する草の根技術協力事業
(以下、「本事業」という。)は、案件の採択から、事業計画の策定、業務委託契約の締結及び事業の実施・モニタリングの段階において、本業務実施ガイドライン(以下、「本ガイドライン」という。)及び別途定める草の根技術協力事業に係る経理処理ガイドライン
(以下、「経理処理ガイドライン」という)に沿って実施します。
なお、本事業に係るガイドラインは、上記の2つに集約されていますので、事業計画の作成・協議、契約交渉・締結、事業実施に当たっては、これらの2つのガイドラインの内容について、十分ご理解ください。
本ガイドラインの内容は、「事業としてのマネジメント」と「業務委託契約のマネジメント」の2つの視点からの解説となっています。この2つの視点については、重複する部分も多いですが、その目的は、前者が「事業の成果の最大化」であるのに対し、後者が「適切な公的資金の執行」であり、異なっています。
「事業としてのマネジメント」については、事業計画の策定及びモニタリング・評価の意義・目的を解説するとともに、その具体的な実施方法について示しています。
一方、「業務委託契約のマネジメント」については、契約管理や契約履行期間中における具体的な手続きについて示しています。また、打合簿が必要となるよくある事例について「打合簿事例集」をウェブサイトにて公開しておりますので、手続き効率化の一助としてください。
本ガイドラインが、適切な業務委託契約のマネジメントに役立ち、また、草の根技術協力事業の個別案件の質の向上に資することを期待しています。
第1章 採択から契約締結までに必要な手続き
案件の採択後から契約の締結までは、本章と併せて別添1「採択から事業開始までのフ ロー」(以下、「フロー」)に沿って進めてください。
採択案件については、原則として採択通知から1年以内に契約を締結し、事業を開始してください。特段の理由なく、1年以内に実施に至らない場合は、採択取消しとなりま す。また、やむを得ない事情があった場合でも、2年以内に実施に至らない場合は採択取消しとなる場合があります。速やかな事業開始に向け、採択直後から所管国内機関と密に連絡を取り、契約締結までに必要な手続きや所要時間等を確認し、双方でスケジュールの進捗管理を行います。
なお、国や案件ごとに必要となる手続き等が異なるため、フローは定期的(進捗・遅延がある場合に限らず、少なくとも四半期に1度程度)に更新のうえ活用ください。また、フローで確認した契約締結時期は、実施計画の協議、契約交渉及び相手国政府からの了承 取付の進捗等に影響を受けるため、このフローを以て確約するものではない点、予めご承知おき願います。
あくまでも、JICA と採択団体(契約締結後は「受託者」と呼ぶ)とで必要な手続きや進捗を管理し、速やかな事業開始を目指すための1つのツールとして案件ごとにカスタマイズのうえ活用ください。
1.採択団体向け説明会(時期:採択通知から1か月前後)
採択団体を対象とし、「採択団体向け説明会」を開催しています。本説明会では、業務委託契約の考え方や案件の開始準備、また、契約締結にかかる留意事項等についてご説明します。案件が採択された団体のプロジェクトマネージャー、国内調整員及び現地調整員の方は必ずご参加ください。
2.実施計画の協議(契約交渉に向けた準備)
(1) 実施計画の協議
「実施計画の協議」とは、採択団体と所管の JICA 国内機関との間で、事業提案書及び審査の段階で付された「実施にあたっての留意事項」を踏まえ、改めて事業内容(プロジェクト目標を達成するための活動・成果・投入・方法・アプローチ・スケジュール等)や、必要な経費の積算につき見直すことを指します。
本段階で、事業を ODA 事業として実施するにあたり、途上国の開発への貢献及び公的資金の執行にかかる説明責任が果たせるかといった観点で、改めて採択団体と JICA との間で、事業計画につき協議・確認します。
採択を以てご提案いただいた事業内容や経費について、JICA が承認しているものでは ない点、また、JICA との協議により提案時の事業内容と経費内訳が修正となる点につき、ご理解願います。
フロー策定に際し、契約に際して重要となる以下の点を協議・確認します。
・事業の開始時期
・支払方法(概算払/四半期部分払/精算払)
・事業総額(年度別内訳額含)
・課税事業者であるか、免税事業者であるか
・全体事業期間を、複数の契約書に分割して契約するか(期を分けた契約とするか)
上記を確認したうえで、本協議では、JICA が受託者に委託する「業務の内容(事業内容)」
について、確認します。具体的には、事業提案書を踏まえ、採択団体と JICA 国内機関とで改めて「業務の内容(事業内容)」を確認します。
その際、審査の段階で付された「実施にあたっての留意事項」についての対応方針につ き協議・合意し、事業計画に反映することが求められます。
【業務の内容(事業内容)」の構成】
・プロジェクト目標
・成果
・プロジェクト目標を達成するための活動内容
・対象地の位置図
・事業の実施スケジュール
・業務従事者の配置計画
・必要な経費の積算
上記の「業務の内容(事業内容)」のうち、プロジェクト目標、成果、プロジェクト目 標を達成するための活動内容については、契約書附属書Ⅱ特記仕様書にとりまとめ、ここで定められた業務が、JICA が採択団体(契約締結後は「受託者」)に委託する業務となります。なお、草の根パートナー型については、事業の具体的内容として取りまとめる PDM
(プロジェクト・デザイン・マトリックス)の作成を必須とします。地域提案型/地域活性 化特別枠についても、事業開始後に提出する半期ごとの業務達成状況報告書では、PDM に準拠した報告様式を使用するため、契約締結までの作成を推奨します。
契約書附属書 II 特記仕様書とは?
契約書附属書Ⅱ特記仕様書は、JICA が業務委託契約によって受託者に委託する「業務内容」の設計図となります。
業務委託による事業は補助金事業とは性質を異にし、JICA が提案団体に業務委託して団体と JICA との協力関係のもとに実施する共同事業です。契約書上、団体が特記仕様書で定めるプロジェクト目標及び成果を達成 することが、JICA が契約金額(報酬)を支払う根拠となります。このため、実施計画の協議の段階で、「業務の内容(事業内容)」についてでき
るだけ具体的な内容を記述することが求められます。
なお、特記仕様書は、PDM や実施スケジュール、業務従事者配置計画等が添付されることとなっていますが、特記仕様書に主に記載すべき「業務の内容」とは、具体的にはPDM に含まれる「活動」の内容となります。契約約款第1条第2項において、「(前略)業務を実施するために必要 な方法、手段、手順については、受託者の責任において定める」と規定しているとおり、実施スケジュールや業務従事者配置計画等についての変更は、受託者の裁量が広く認められるため、特記仕様書の附属となっており
ますが、実施中に打合簿等にて実施時期、人月の振替等が可能です。また、特記仕様書に定める内容は事業のモニタリング・評価の前提となります。
(2)業務の内容(事業内容)確定にかかる留意事項
業務委託契約の締結以降は、契約書で定めた業務の進捗と達成を、受託者と JICA 双方で定期的に確認します。業務の内容(事業内容)を変更する際にも、「当初の計画」を基に協議・合意しながら事業を進めます。したがって、契約書締結時点でできるだけ具体的な計画を策定しておくことが求められます。
途上国における事業であるため、本協議の時点で協議・確定した計画が事業実施期間を通じて全く変わらないことは想定しづらいかと思いますが、事業計画を変更するに際しても、「当初の計画でどのように想定していたのか?」が変更を検討する基礎となりますので、協議時点で把握している状況に基づき、合理的な計画を策定してください。また、事業開始後も定期的に、監督職員とプロジェクトマネージャーとが業務の進捗を確認のうえ、事業の全体計画について見直しを行うほか、必要に応じ、契約変更を行って業務内容を変更することとなります。
(3)PDM(プロジェクト・デザイン・マトリックス)の構成
PDM とは、業務の内容をより論理的かつ客観的に関係者間で把握するためのツールで、プロジェクトの設計図と位置付けられます。PDM の構成は以下のとおりです。
PDM フォーマット例
プロジェクト要約 (Project Summary) | 指標 (Indicator) | 指標データ入手手段 (Means of Verification) | 外部条件 (Important Assumptions) | ||
上位目標(Overall Goal) 間接的・中・長期的に期待される効果・インパクト | |||||
プロジェクト目標(Project Purpose) ターゲットグループや対象社会への直接的な効果 | 社会的変化 (Outcome)指標を記載 | 上位目標達成に影響を与える阻害要因 | |||
アウトプット(Output) 活動を行うことによって産出される財・サービス | 活動結果 (Output)指標を記載 | プロジェクト目標達成に影響を与える阻害要因 | |||
活動(Activity) アウトプットを産出するための活動 | 投入(Input) | アウトプット達成に影響を与える阻害要因 前提条件(Pre-conditions)プロジェクト開始前に満 たされるべき事柄 | |||
【PDM 用語解説】
◆ 上位目標(Overall Goal)
プロジェクトを実施することによって期待される中・長期的(事業終了後3年~5年)な効
果。プロジェクトの直接的な効果が継続、あるいは更に発展することにより、実現したいと考える目標。
◆ プロジェクト目標(Project Purpose)
プロジェクト終了時に、プロジェクト実施によって達成が期待されるアウトカムであり、タ
ーゲットグループや対象社会に対する直接的な効果・変化。
◆ アウトプット(Output)
プロジェクト目標達成のためにプロジェクトが生み出す財やサービスのこと。プロジェクト
目標はターゲットグループをはじめとする受益者に対するプラスの変化を表しているのに対し、アウトプットはプロジェクトを実施する側が産出する事柄。
(4)PDM 作成の留意点
PDM は、国際協力事業を行う際に効率的かつ効果的な協力を行うことを目的として、広く一般的に用いられている手法です。草の根技術協力事業に対して PDM を活用する場合の簡単な留意点を以下に提示します1。
1)上位目標
草の根技術協力事業については、その規模が大きなものではないため、プロジェクト成果のみで、「間接的・中長期的に期待される効果・インパクト」を具体的に想定することは困難です。このため、上位目標については、相手国関係政府機関との合意文書にも契約書附属書 II 特記仕様書本文にも記載されません。位置づけとしては、
「(事業終了後の)中長期的な展望」として検討し、設定してください。
2)プロジェクト目標
プロジェクト目標の設定に際しては、複数の目標が掲げられていたり、事業実施期間では達成が困難と思われる過大な設定となっていたりするケースが散見されます。あくまでプロジェクトによる投入の結果もたらされる効果という位置づけですので、ひとつの現実的な目標を設定してください。
3)指標
プロジェクト目標の達成を測るための指標については、効率よく入手できる指標を設定する必要があります。目標の達成を図るために適切であっても、入手に時間やコストがかかる指標や信頼性が確保できない指標は避けなければなりません。事業の開始時点で指標を定めるのが困難な場合には、いつまでにどのようなプロセスで具体的な指標を確定させるかについて、打合簿を交わしてください。
4)事業成果の持続性
PDM に示されたプロジェクトにおいては、受託者が JICA との契約に基づき、必要な活動、投入を行いますが、プロジェクトの終了後に同程度の活動が継続可能か、プロジェクトで生み出された事業成果が持続するか等についても、配慮が必要です。
これは、当該地域での受託者の活動の全体構想とも関連すると考えます。すなわち、受託者がプロジェクト終了後にもプロジェクトへの関与を継続する場合には、継続する関与を含めて、事業成果の持続性確保を検討することとなります。
また、C/P の実施体制、支援体制なども、事業成果の持続性確保に大きな要素です。
【相手国実施機関(カウンターパート「C/P」)とは】
草の根技術協力事業における相手国実施機関(カウンターパート)とは、受託者とともに対象地域の受益者の生活向上に資する支援・活動を実施している、共同事業者としての役割が期待されている機関です。受託者と協働で案件進捗管理・評価を行います。共同事業者としての役割を果たしつつ、プロジェクト活動を通じ、相手国実施機関自身の能力向上も行なう場合があります。
1 JICAは、草の根技術協力事業等の実施に際して必要となる、開発途上国における事業実施に係るNGO等の能力強化に資する研修を実施しています。xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxx/xxx_xxxxxxx/xxx_xxx/xxxxx.xxxx
(5)プロジェクト目標・成果・活動の関係
事業において実施する個々の活動は、すべてが、プロジェクト目標の達成に資する内容である必要があります。
以下の図で示すとおり、個々の活動がアウトプット(成果)につながっているか、それぞれのアウトプットがプロジェクト目標の達成につながっているかを、実施計画の協議において、採択団体と JICA とで確認します。
また、事業実施期間中における計画変更においても、「活動⇒成果⇒プロジェクト目標」の道筋が論理的であるか、常に見直しする必要があります。
図:プロジェクト目標、アウトプット、活動及び各指標の関係
指標
指標1-1,1-2
指標2
指標3-1,3-2
活動 活動 活動
1 1 1
| | |
1 2 3
活動 活動 活動 活動
2 2 2 2
| | | |
1 2 3 4
活動 活動
3 3
| |
1 2
アウトプット3
アウトプット1
アウトプット2
プロジェクト目標
【PDM の省略】
「業務の内容(事業内容)」のうち、プロジェクト目標、成果、プロジェクト目標を達成するための活動内容については、PDM にとりまとめられますが、草の根技術協力事業のうち、草の根協力支援型については、「国民等の協力活動の促進及び助長」(国際協力機構法第 13 条第 1 項第 4 号)という目的をより重視している事業であるため、効率的かつ効果的な援助を目的として設定されるPDM の作成を必須とはしません。
また、地域提案型/地域活性化特別枠については、事業提案時には PDM の提出を必須とはしていませんが、実施に当たっては適切な計画策定や案件管理・評価のために作成していただくことを強く推奨します。
3.ODA 事業として実施するための準備(契約締結の前提条件)
前述2.と並行して、本事業が、政府開発援助(ODA)の一環として実施されることから、採択された案件を実施するためには、事業実施国の法令に基づき、契約締結前に予め手続きを了しておく必要があります。
必要な手続きは、「相手国政府からの了承取付」と「NGO 登録」の2つです。
実施計画の協議の際に、必ず所管の国内機関に必要な手続きにつきご相談ください。
なお、これらを行う過程で発生する現地への渡航や国内での打合せ等に伴う経費は、基本的に JICA が負担することはできません。
(1)相手国政府からの了承取付(全案件において必要な手続き)
契約締結に先立って、相手国の政府から事業実施について了承を取り付ける必要があります。了承取付の手続きは、採択団体に一部書類の作成を頂いたうえで、原則としては、JICA 在外事務所が主体となって手続きを行います。ただし、国によっては、採択団体にて手続きを進めていただく必要がありますので、JICA ウェブサイト2を参照のうえ、具体的な手続きについて所管の国内機関にご相談ください。ただし、ウェブサイト掲載の情報が必ずしも最新ではないこともありますので、必ず所管の国内機関にご連絡のうえ手続きを進めてください。
【了承取付方法の種類】
草の根技協における相手国政府からの了承取付方法については、予め我が国政府と相手国政府との協議によって定められており、以下の方法があります。
1)合意文書(会議議事録:xxxx)の署名・交換
JICA 在外事務所と受託者及び相手国実施機関(カウンターパート。以下「C/P」とします。)(又は関係省庁、援助窓口機関など)との間で合意文書(会議議事録=M/M: Minutes of Meeting)を締結する方法です。書類作成から合意文書(ミニッツ)締結に至るまでに、国によっては数か月~1年を要することもあります。
標準的な手続きは以下のとおりとなります。
a. 合意文書(ミニッツ)本文の原案(雛型は JICA ウェブサイト参照)は JICA が用意し、受託者と協議します。合意文書に添付すべき書類(Project Outline、PDM 等)を受託者に作成いただきます。
b. 本文と添付文書を所管の国内機関から JICA 在外事務所へ送付します。在外事務所は必要に応じて文案を修正し、C/P 等と協議の上、署名を行います。
c. 受託者の代表者の署名も必要となる場合は、署名頂いた合意文書を本邦から送付したり、実際に現地へ出張する等の方法で署名します。
2)JICA 在外事務所からの通知文書の発出
JICA 在外事務所から C/P(又は関係省庁、援助窓口機関など)に対して、事業の実施を文書により一方的に通知する方法です。国によっては C/P 等から、No Objection Letter(異議なしを表明する文書)等の取付け手続きを踏む場合もあり、1)の会議議事録(ミニッツ)と比較すると迅速かつ簡単な方法です。
標準的な手続きは、上述の合意文書の流れと同じです。
3)日本国大使館からの通知文書の発出
事業実施国の日本国大使館から相手国援助窓口機関などに対して政府間の正式文書
(口上書)により、案件の実施について簡潔に通報する方法です。数週間から数か月程度要します。
標準的な手続きは以下のとおりとなります。
a. 事業実施国の日本国大使館から相手国政府に対して発出する通知文書に添付すべき書類を受託者に作成いただきます。
b. JICA は外務省に対して通知文書の発出を依頼します。この依頼を受けて日本国大使館が先方政府へ通知文書を発出します。
c. 外務省から JICA へ結果が通知され、所管の国内機関から受託者に連絡します。
4)国際約束の締結
国際協力機構法の規定では、草の根技術協力事業の実施について国際約束の締結は必要とされていませんが、相手国政府の意向により国際約束の締結が必要となる場合があります。その場合、日本国大使館と相手国援助窓口機関などとの間で、政府間の正式文書(口上書)を交換することによって国際約束を締結します。比較的時間を要する方法で、半年程度から、場合によっては2年近くを要します。
標準的な手続きは以下のとおりとなります。
a. 国際約束を形成する口上書に添付すべき書類を受託者に作成いただきます。添付文書は国によって異なりますので、詳細は所管の国内機関からお知らせします。
b. JICA は外務省に対して国際約束の締結を依頼します。この依頼を受けて、日本国大使館が先方政府と国際約束を締結(口上書の交換)します。
c. 外務省から JICA へ結果が通知され、所管の国内機関から受託者に連絡します。
d. 国際約束の締結後、更に実施機関レベル(JICA 在外事務所、受託者及び C/P 等)の間で合意文書の署名・交換が必要な場合があります。
(2)NGO 登録(対象国・案件等により手続きの要不要が異なる)
多くの国では、その国で NGO 等が活動するにあたり、法律や政令に基づき、登録や認証を行う必要があります。この NGO 登録は国によって制度が異なりますが、主に相手国政府が外国 NGO の活動を把握すること、外国 NGO の活動と政府の活動との整合性を確保すること、外国 NGO が活動しやすい仕組みを提供すること等を目的としています。国によっては、採択団体が NGO 以外の場合であっても、何らかの手続きを求める場合もあります。
事業実施国の NGO 登録の方法については、JICA ウェブサイト3を確認の上、所管の国内機関と相談しながら、必要な対応を採択団体自ら行ってください。
応募前に NGO 登録を了していることが必須要件になっている国もあるため、既に
NGO 登録を済ませている受託者はその旨、所管の国内機関へご連絡ください。
【NGO 登録の種類】
NGO 登録としては、主に以下の2つの方法があります。
1)登録制度
NGO NGO 担当省庁、当該分野を担当する省庁等との合意形成
受託者と相手国担当省庁等との間で、受託者のその国での活動等について覚書
(MOU: Memorandum of Understanding)等の文書を交換することが必要な国もあります。
4.契約交渉
上述の 2. 及び 3.を踏まえ、契約交渉を行います。
契約交渉では、採択団体と JICA の双方が対外的な説明責任を果たせるように、事業内容
(プロジェクト目標を達成するための具体的活動・成果・投入・アプローチ方法・スケジュール等)に紐づけた必要な経費の積算を、経済性・効率性・有効性・合規性・正確性の観点で確認します。
草の根パートナー型及び地域提案型/地域活性化特別枠については、所管の国内機関に加えて、JICA 調達・派遣業務部が契約交渉に同席します。調達や契約管理の観点から、積 算した経費の妥当性等を確認した結果、実施計画の協議で確認した内容から変更を求める場合があります。予めご承知おき願います。
(1)契約金額を確定するにあたり確認が必要な事項
実施計画の協議で合意した特記仕様書の内容を踏まえ、契約金額とその内訳を確定するための協議を行います。契約金額に係る見積りは、特記仕様書の内容を踏まえ、特に、以下の点に留意して、「経理処理ガイドライン」に規定する基準によって積算してください。
1)特記仕様書で規定する業務に主体的に関わる人員「業務従事者」について、業務従事者ごとの氏名・担当分野、居住地、業務内容について、業務従事者配置計画に記載してください。なお、業務従事者配置計画は、直接人件費や航空賃等の経費の計上の有無にかかわらず、本事業に従事する業務従事者を記載してください。また、業務従事者ごとに、特記仕様書で規定する業務を実施するために必要な業務従事期間(現地渡航時期、現地業務及び国内業務の従事人月等)を特定し、業務従事者配置計画を作成してください。現地業務補助員については経費の計上の有無に関わらず、記載は不要です。
主な適用対象業務/役割 | |
プロジェクトマネージャー及びその 他同等の役割を果たす業務従事者 | 事業全体を一貫して運営管理する業務従事 者のリーダー |
現地調整員及びその他同等の役割を果たす業務従事者 | 主に現地において事業に直接従事し、日常的な進捗管理を担当。併せて、日本国内との連絡調整、現地での資機材の調達や、経理管理 の役割も担う。 |
国内調整員(コーディネーター)及びその他補佐的な業務を担う業務従事 者等 | 主に日本国内において事業に直接従事し、日常的な進捗管理を担当。併せて、現地及び JICA との連絡・調整や契約手続きも担う。 |
2)各担当業務の難易度に応じ、格付を特定してください。
3)業務従事者配置計画に基づき、直接人件費や旅費等を積算してください。
4)特記仕様書で規定する業務の内容を踏まえ、業務実施上必要となる直接経費(海外活動費、国内活動費、設備・機材費等)を積算してください。特記仕様書で規定する業務に関係しない経費は積算できませんのでご留意ください。
5)契約金額とその内訳が合意できたら、合意された金額と内訳を最終見積金額 内訳書として提出してください。契約が複数の期間に分かれる場合は、事業全体 の最終見積金額内訳書に加え、各契約期間の見積金額内訳書を提出してください。
5.契約締結
契約交渉を踏まえ、委託者の代表者である JICA の契約担当役と、受託者の代表者との間で「業務委託契約」を締結します。
(1)契約締結時における確認事項
契約交渉において協議、合意された事項については、基本的に契約書に反映されるものですが、全ての合意事項を契約書に反映させることは困難です。このため、契約書に記載するほどではないが、文書に残しておくべき事項については、「契約締結時における確認事項」として、打合簿に記録しておくことを推奨します。
また、事業開始時点で必ずしも明確になっていない点(例:評価指標、ベースライン調 査の内容等)がある場合には、それらをいつ頃までにどのようなプロセスで明確にするか等について検討するとともに、後述する実施計画レビューの時期(事業開始後半年から1年を目途)についても協議のうえ、これら同意内容を打合簿で交わしてください。
途上国における業務の実施においては、特記仕様書で規定した業務以外の業務を追加で実施する必要が生じることも多いと想定します。その場合、草の根技術協力事業の予算には上限があるため、実施予定だった業務を削減する必要も出てきますが、予め、どのような業務が業務量の調整対象と想定されるかを協議しておくことは、契約管理の観点から有意義です。
また、事業のPDM 等が変更される可能性がある場合においても、予めどのような状況が発生したら、又は明らかになったらPDM 等の変更を協議するのか、事前に整理しておくと、PDM 等の変更の協議も円滑に行う事がxxxx。
契約締結時点で確認しておくことが望ましい事例を打合簿事例集にウェブサイトにて公開していますので参考としてください。
(2)契約書の内容
契約書は JICA と受託者との関係を規定する法的拘束力を持つ文書ですので、必ず熟読の上、内容を理解してください。要点を解説すると以下のとおりです。
1)契約書の構成
契約書の構成は以下のとおりです。このうち、契約約款と共通仕様書については、定型の雛型を一切変更せずに使用します。契約約款と共通仕様書の条項を変更、削除しようとする場合は、契約書にその旨記載して合意することになります。
⮚ 草の根技術協力事業 業務委託契約書
⮚ 草の根技術協力事業 業務委託契約約款
⮚ 附属書Ⅰ「共通仕様書」
⮚ 附属書Ⅱ「特記仕様書」
別紙 1:「対象国及び地域の位置図」
別紙 2:「事業の実施スケジュール(事業実施期間全体)」別紙 3:「PDM」
※草の根パートナー型は作成必須。地域活性化特別枠は作成を強く推奨。別紙 4:「業務従事者配置計画(事業実施期間全体)」
⮚ 附属書Ⅲ「契約金額内訳書」
2)契約の性質
草の根技術協力事業における業務委託契約の性質は、契約約款第1条第1項に規定されているとおり、「受託者は、(中略)業務の完成を約し、委託者は(中略)受託者 に対しその対価を支払うもの」で、一般的に請負契約4といわれるものです。受託者が業務を完成(部分的な完成を含む。)させなければ、JICA はその対価である契約金額
(報酬)を支払うことができないという契約であることをご理解ください。
このため、「完成させるべき業務とは何か?」を双方で確認すること、JICA がどのような方法で「業務が完成している」と判断するのかを双方で理解しておくことが重要となります。
3)監督職員とプロジェクトマネージャー
契約書は、JICA 契約担当役(委託者)と団体代表権者(受託者)との間で締結されますが、業務の実施過程においては、委託者と受託者のそれぞれから授権された監督職員(委託者)とプロジェクトマネージャー(受託者)との間で契約が管理されます。
授権されている権限の範囲、それに基づく具体的な契約管理方法等について、「第3章 契約の管理」に詳述していますので、受託者及び主要な業務従事者はその内容を十分理解した上で、業務に従事してください。
4)契約金額の支払い
官庁契約における支払は、業務の完了を確認した後に、一括で行われる精算払が原則ですが、草の根技術協力事業においては、受託者の資金繰りへの支援を目的として、四半期毎の部分払又は概算払の制度を用意しています。
支払方法の詳細については、経理処理ガイドラインを参照してください。
4 より正確には、「委任契約と請負契約の混合契約であり請負性の高い契約」と位置付けられます。
第2章 安全対策
JICA と受託者は、契約約款第 17 条(安全対策措置等)のとおり、特記仕様書の「業務従事者配置計画」に記載された業務従事者等の安全確保に最大限協力して努めることとしています。
1. 業務従事者等の安全対策について
(1) 安全対策措置
JICA は安全対策の一環として、事業を実施している国ごとに安全対策のルールとして
「安全対策措置(渡航措置及び行動規範)」を定めています。本草の根技術協力事業の対象国・地域としている外務省海外安全情報が「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」に指定されている国や地域であっても、JICA の安全対策措置に照らし、事業実施可能場所や実施手段等に様々な制約が生じる場合があります。
国別の「安全対策措置(渡航措置及び行動規範)」、「安全対策マニュアル」については、契約締結の際に所管の国内機関より提供します。
JICA は、上述の安全対策措置により、現地での急激な情勢の悪化や感染症の流行等を理由として、採択後に契約締結を保留としたり、案件の採択を取消とさせていただくこともあります。また、実施中の事業においては、業務従事者等の身体及び財産の安全を確保するために、危険地域からの退避及びその他安全対策措置を業務従事者等に指示する場合があります。
契約書附属書Ⅱ別紙 4「業務従事者配置計画」に記載された「業務従事者」は、経費の 計上の有無にかかわらず、すべからく JICA の安全対策措置を遵守いただく必要がある旨、ご了解ください。現地業務補助員についても、安全対策措置の対象となりますが、業務従事者配置計画に記載いただく必要はありません。
なお、安全対策措置は JICA のウェブサイトからも入手可能です。入手方法は、以下のウェブサイトからログインID及びパスワードを申請のうえ、情報をダウンロードして閲覧ください。
●JICA 国別安全対策情報
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxx/xxxx.xxxx
(2)安全対策研修の受講
現地に渡航する業務従事者は、安全対策研修を受講してください。ただし、提供されている研修素材の言語を理解できない者については、この限りではありません。
詳しくは以下をご参照ください。
●JICA 安全対策研修・訓練
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxx/xxxxxxxx.xxxx
安全対策研修 | 主な内容 | 必須受講対象者 |
渡航者向け研修 (Web 版)理解度テスト | 安全対策に関する基礎的な知識を習得するためのウェブ研修及び理解度テスト(80%で 合格) | 業務従事者全員。 ただし「渡航者向け研修(対面式)」の受講者は受講不要。 |
渡航者向け研修(対面式) | テロ対策を含む講義型研修。セキュリティ対策の基本、最近のテロの事例、公開情報の活用方法等。派遣される国の 脅威度に依らない内容。 | プロジェクトマネージャーないし現地調整員のうち、少なくとも代表者 1 名。 |
安全対策研修(管理者向け研修編) | 組織・団体の安全管理責任者及び安全管理担当者を対象に、事件・暴動など 緊急事態が発生した際の本邦や現地対応、危機管理・対応にかかる 内容。 | 必須の受講者は無し。 (任意受講) |
※「プロジェクトマネージャーないし現地調整員のうち、少なくとも代表者 1 名」の受講を必須としている「渡航者向け研修(対面式)」に係る旅費は、契約とは別に JICA 国内機関から支払います。その他、任意としている研修受講にかかる経費は、間接経費から支出願います。
(3)海外旅行傷害保険への加入
開発途上国では、様々な安全上のリスクが生じます。また、急病やケガ等への対応に、非常に高額な経費がかかる場合があります。これらの経費は受託者にて間接経費より負担いただくこととなります。
現地に渡航する業務従事者については、契約書約款第24条にて、保険加入が義務付けられています。必ず、十分な補償内容の海外旅行保険(緊急移送サービス付き)にご加入ください(保険料は間接経費にて計上ください。)。(経理処理ガイドライン 2020 年 4 月
版 17 頁【間接経費】参照)。
また、現地から関係者が来日して研修や業務等に従事する場合も、本邦研修期間における生命、財産、身体への損害などに関する保険加入については受託者が責任を負いますので、適切に保険をxxください(保険料は受入諸費にて実費計上ください)。(経理処理ガイドライン 2020 年 4 月版 28 頁【直接経費・国内活動費(1)受入諸費 1)定義・考え方】参照))。なお、渡航にあたっては、JICA 安全対策措置に従っていただく必要があります。
加入内容については、現地業務連絡先届及び研修員受入連絡届にて、保険加入状況(保険会社名、連絡先電話番号、保険証券番号、緊急移送サービスにかかる保険xx状況等)を確認させていただきます。
(4)安全対策にかかる経費
安全対策にかかる経費は、直接経費の海外活動諸費にて計上いただくことが可能です。事業対象国・地域の治安状況により採択後に安全対策に必要な経費(警備員傭上費用等)の計上をお願いすることがあります。
(5)安全管理ブリーフィング
初回渡航時には現地のJICA在外事務所に立ち寄り、安全管理ブリーフィングを受けてください。また、2回目以降の渡航においても、可能な限り現地JICA在外事務所に立ち寄り、必要に応じ安全管理ブリーフィングを受けてください。詳しくは渡航前に所管のJICA国内機関へご相談ください。
(6) 渡航に伴い実施する事項
現地の治安状況等により、JICAの安全対策措置を変更している場合もあるため、必ず国別「安全対策措置」の最新状況をご確認ください。
本事業は、現地への渡航に際して以下をご準備いただきます。
1) 連絡体制・緊急連絡網(対象国への業務従事者の到着後)
2) 現地業務連絡先届 (渡航する前月の20日までに提出)
3) たびレジの登録
【たびレジの登録について】
渡航の都度、「たびレジ」に登録し、 渡航先国及び経由国について 大使館が発信する海外安全情報を確認してください 。
※「たびレジ」とは、海外旅行や海外出張される方が、旅行日程・滞在先・連絡 先などを登録すると、渡航先の最新の安全情報を受け取ることができ、緊急時には現地の大使館などから連絡が受け取れる、外務省が提供するシステムです。
※外務省ウェブサイトxxxxx://xxx.xxxxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxx/
第3章 契約の管理
1.契約における JICA 及び受託者の役割
本事業は、JICA が受託者に業務を委託する「業務委託契約」に基づき実施いただくことになります。この章では、契約管理の考え方に基づき、双方の役割につき説明しています。
(1)本事業に関わる JICA 部署と役割
JICA は委託者として、案件の採択から、事業計画の策定、業務委託契約の締結及び事業の実施・モニタリングの段階において受託者への助言・支援を行う役割を担います。本事業に関係する JICA の主たる部署及び各部署の役割分担は次のとおりです。
主な部署 | 主な役割 |
国内機関 | ・業務主管部門 ・応募前の個別相談の受付 ・監督職員としての事業の実施監理(契約交渉・契約x x、事業モニタリング・進捗管理、成果品の検査、予算x x、安全管理情報の提供等) |
調達・派遣業務部契約第二課 | (草の根パートナー型及び地域活性化特別枠において、契約・経理事務を調達・派遣業務部が担当している案件) ・契約事務(契約交渉、契約書の締結等) ・経理処理面からの契約管理支援 ・受託者からの請求に基づく各種支払にかかる事務(精算書類確認含む) |
在外拠点 (在外事務所/支所) | ・分任監督職員としての現地での実施監理にかかる支援 ・安全管理ブリーフィングの実施 ・安全管理情報の提供 ・JICAが有するC/P機関・関連機関等の情報の提供 ・JICAの他事業等の各種情報の提供 ・JICAが受注者に貸与している物品・機材の管理(受託者の管理状況の把握) |
国内事業部 | ・制度全体にかかる業務(事業の全体とりまとめ、募集・ 選考にかかる業務、業務実施ガイドライン等の策定等) |
(2)契約の性質と監督職員
草の根技術協力事業の業務委託契約は、契約約款第1条第2項において、「(前略) 特別の定めがある場合を除き、業務を実施するために必要な方法、手段、手順については、受託者の責任において定める」としています。
一方、契約締結時に、特記仕様書において委託業務の具体的詳細を規定することは困難であるため、契約履行(業務実施)過程において、委託者と受託者の間で、業務の進捗に応じ、逐次個別業務を具体的に確認(必要に応じ、変更を合意)していく必要があります。
この契約履行過程における具体的な業務(活動)の確認(必要に応じ、変更の合意)は、委託者と受託者から授権された監督職員とプロジェクトマネージャーが行います。具体的には、「業務(活動)の確認」とは、日々の情報共有/意見交換や四半期毎の四 半期モニタリング会合、四半期業務報告書などを通じた業務(活動)の進捗状況の把握を指します。
監督職員の業務は、契約約款第4条第2項に規定されています。
【草の根技術協力事業業務委託契約約款第4条第2項】
監督職員は、本契約の履行及び業務の実施に関し、委託者からの授権を得て、次に掲げる業務を行う。
(1)第1条第5項に定める書類の受理
(2)本契約書に基づく、受託者又は受託者のプロジェクトマネージャーとの協議
(3)仕様書に規定されている業務内容の変更の承諾(ただし、契約金額又は契約期間等の変更を伴うものを除く。)
(4)契約金額内訳書に示す直接経費に係る流用等の承諾
(5)本契約に基づく、業務工程の監理及び立会
(3)プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、契約変更を要する業務内容の軽微でない変更等を除き、受託者を代表する権限を有するものとし、監督職員と協力して、適切に業務を実施する責任を負います。
【草の根技術協力事業業務委託契約約款第5条第2項】
プロジェクトマネージャーは業務の実施についての総括管理をつかさどるほか、本契約に基づく受託者の行為に関し、受託者を代表する権限(ただし、契約金額の変更、作業項目の追加等業務内容の重大な変更、履行期間の変更、損害額の決定、本契約に係る支払請求及び金銭受領の権限並びに本契約の解除に係るものを除く。)を有するものとする。
プロジェクトマネージャーは、監督職員が委託者から授権されている権限とほぼ同
様の権限を受託者から授権されていることから、両者の間で契約書に基づいた契約管理を行うことが可能となります。
(4)打合簿
上述の監督職員とプロジェクトマネージャーの間の打合せ事項(協議及び承諾)を記録として残すものが「打合簿」となります。
【草の根技術協力事業業務委託契約約款第4条第3項】
前項の規定に基づく監督職員の協議及び承諾は、原則としてこれを委託者が指定する書面(以下「打合簿」という。)に記録することとする。打合簿は、監督職員とプロジェクトマネージャーがそれぞれ一部ずつ保管するものとする。
協議や承諾は、事態が発生する前に行うこととし、打合簿の日付は、実際に協議や
承諾(電話やメールのやり取り、担当者等を通じた協議や承諾を含む。)を行った日付としてください。
打合簿は、弊機構理事が契約担当役となっている案件の場合には、内容に応じて、 JICA 監督職員(国内機関)・プロジェクトマネージャー(受託者)・JICA 調達・派遣業務部契約第二課長との三者、もしくは JICA 監督職員(国内機関)・プロジェクトマネージャー(受託者)の二者で打合簿を交わします。また、契約担当役が国内機関長の場合は、JICA 監督職員・プロジェクトマネージャーとの二者で打合簿を交わします。
打合簿を必要とする具体的な事項については、第3章の「3.契約履行過程での具体的な手続き」を参照のうえ、ウェブサイト掲載の「打合簿事例集」を併せてご確認ください。
2.監督職員の権限
監督職員とプロジェクトマネージャーが共同して契約を管理(業務を実施)していくに当たって、常に認識しておかなければならないことは、監督職員とプロジェクトマネージャーがそれぞれ委託者と受託者から授権されている権限の範囲です。この権限の範囲を超えた事項については、打合簿による対応ではなく、契約変更を行う必要があります。
下表では、監督職員に授権されている権限の範囲(下記 3 点)について、契約変更で対応すべきもの(監督職員に授権されていない事項)、打合簿で対応すべきもの(監督職員に授権されている事項)、受託者の裁量によるもの(そもそも受託者の裁量による事項)に分類/整理します。
① 業務の内容(主に契約書附属書Ⅱ「特記仕様書」に記載)に係ること、
② 契約金額の内訳(契約書附属書Ⅲ「契約金額内訳書」に記載)に係ること、
③ 業務従事者に係ること
監督職員の権限の範囲(概要)
業務内容 | 契約金額内訳 | 業務従事者 | |
契約 変更 | ・仕様書記載の業務内容の軽微でない変更 | ・契約金額または費目(大項目)注)の変更 | |
打合簿 | ・仕様書記載の業務内容の軽微な変更及び確定 | ・10%を超える費目(中項目)注)間流用 | ・プロジェクトマネージャー/現地調整員の交代 ・業務従事者の交代・確定 |
受託者の裁量 ※ | ・仕様書記載の業務内容を実施するために必要な方法、手段、手順の変更及び確定 | ・10%を超えない費目(中項目)注)間流用 ・費目(小項目)注)間流用 | ・業務従事者間の人月振替 ・現地業務人月と国内業務人月振替 ・従事時期の確定・変更 ・業務従事人月や渡航回数の変更(ただし、契約金額の増額を認めるもの ではない。) |
注)費目の分類については、次ページ「費目の構成」を参照して下さい。
※受注者の裁量とはいえ権限の濫用が認められるものではありません。業務委託契約書の趣旨に沿って、プロジェクト目標の達成に必要な業務(活動)経費である場合に限ります。監督職員により支出の妥当性が認められない場合には、精算対象外になることもありえます。したがって、活動前に監督職員の確認を取ることを推奨します。
(1)業務の内容に関すること
共通仕様書(契約書附属書Ⅰ)及び特記仕様書(契約書附属書Ⅱ)(以下、合せて
「仕様書」。)に記載されている業務の内容に関する事項については、一般的に契約変更による対応とすべきです。ただし、草の根技術協力事業の業務委託契約については、途上国における業務であることに加え、業務実施に係る C/P が現地 NGO や地方行政団体等の脆弱な組織であること、事業の裨益者が草の根レベルの多様な住人でありこれら裨益者のニーズに細かく対応する必要があることから、契約履行過程において、軽微な業務内容の変更が頻繁に必要となり、かつ適時の対応が必要と想定されます。このため、監督職員に一定の範囲での「業務内容の変更」にかかる協議及び承諾の 権限を授権していますので、この範囲にある業務内容の変更については、契約変更で
はなく、打合簿による対応が可能です(打合簿事例集参照)。
ただし、プロジェクト目標は、原則として変更することはできません。アウトプットや活動(Activities)等に関する変更は、原則として契約変更の対象となりますが、軽微な変更であれば、監督職員とプロジェクトマネージャーが合意し、打合簿にその内
容を記録することで対応して構いません。
監督職員とプロジェクトマネージャーは、常に密接な連絡を取り、業務内容の変更を含めて、業務の進捗について情報共有に努めて下さい。
【受託者の裁量で変更できる事例】
・業務実施時期の軽微な変更(8 月上旬セミナーが 9 月中旬に延期)
・事業で作成し配布する教材の印刷部数が 500 部から 350 部に減った。
(2)契約金額の内訳に関すること
契約金額の内訳(下表「費目の構成」参照。)は、契約金額内訳書(契約書附属書Ⅲ)に記載されています。
費目の構成
費目 (大項目) | 費目 (中項目) | 費目(小項目) |
直接経費 | 海外活動費 | 旅費(航空賃) |
旅費(その他) | ||
海外活動諸費 | ||
国内活動費 | 受入諸費 | |
国内業務費 | ||
設備・機材費 | 基盤整備費(海外分) | |
資機材購送費 | ||
直接人件費 | - | - |
間接経費 | - | - |
契約金額の内訳の変更、すなわち「費目間流用」とは、他の費目で余剰となった経費を、業務実施上不足している費目において、契約書の契約金額内訳に示されている当該費目の金額を超えて支出することを認めることをいいます。
途上国における業務における現地事情の流動性を考慮し、直接経費に関しては、以下の原則に基づき、費目間流用を認めています。
1)費目(大項目)間の流用は認められません。これら費目の額を変更するのであれば、契約変更が必要です。
2)費目(中項目)間の流用(当初契約金額内訳書に計上されていなかった費目(中項目)への流用を含む。)については、流用先費目における契約金額内訳の+10%以内については受託者(プロジェクトマネージャー)の裁量で流用可能であり、+ 10%を超える場合は監督職員の権限の範囲内としています。+10%を超える流用については、打合簿を交わす必要があります。(打合簿事例集参照)。
3)費目(小項目)間の流用については、受託者(プロジェクトマネージャー)の裁量により流用(当初契約金額内訳書に計上されていなかった費目(小項目)への流用を含む。)が可能であり、打合簿の作成は不要です。ただし、「業務と関連した支出である」ことと「経理処理ガイドライン(4.費目の定義と積算・精算に当たっての留意事項)」で規定する直接経費の範囲内である」ことが必要であるため、契約当初に計上されていない費目(小項目)を計上する場合には、国内機関に事前に確認してください。場合によっては、精算時に認められないことがあります。
(3)業務従事者に関すること
業務従事者の交代又は確定を行う場合は、打合簿を交わしてください。(草の根3号以上の格付とする場合には当該業務従事者の履歴書を添付)。交代又は確定した業務従事者が、当該格付の資格(例:草の根2号では、業務経験年数大卒 12 年以上相当)があるかについては、その履歴書を基に確認します。ただし、現地業務補助員については、受託者裁量の範囲内です。
業務従事者の変更については、これまでは受託者裁量としていましたが、居住地(生活の拠点になっている場所)が変更になる場合、内国旅費の変更、国内業務と現地業務の適切な振替、日当・宿泊料の変更などが必要になることから、打合簿による確認が必要です。
なお、プロジェクトマネージャーと現地調整員の交代は、業務実施体制に大きな影響を与えると認められますので、やむを得ない場合を除き、基本的に認められません。交代が必要になる場合は、代替候補者の適性を含め、監督職員とプロジェクトマネージャーとで協議を行い、監督職員が承諾します(打合簿事例集参照)。
業務従事者の配置については、原則として受託者(プロジェクトマネージャー)の裁量となります。具体的には以下の事例について、打合簿は不要です。ただし、契約金額内訳の直接人件費や旅費(航空賃)等の増額を認めるわけではありません。
・ 渡航回数の増減
・ 業務従事者間の人月の振替え
・ 現地業務と国内業務の人月の振替え
・ 業務従事者間の渡航回数の振替え
(4)契約変更に関すること
監督職員の権限の範囲は、上記(1)~(3)の記載のとおりであり、記載の権限を越える事項は契約変更にて対応する必要がありますが、契約変更に当たっても、監督職員は一定の役割を果たします。
具体的には、まずは、監督職員とプロジェクトマネージャーとの間で、①契約変更の経緯と理由、②変更される業務内容等、③変更特記仕様書(案)、④変更契約金額内訳書(案)について、協議、合意し、その内容を打合簿にて確認することとします。
監督職員が、逐次委託者である「契約担当役」に事前確認しておくことにより、打合簿締結後速やかに、JICA 内の契約変更手続きを行えることとなります。
【契約変更の考え方】
契約変更は、主に以下の3点について行われます。
1.業務内容の軽微でない変更(業務が削減される場合を含む。)
2.契約金額の変更(主に増額。費目(大項目)の変更を含む。)
3.業務履行期間の変更
草の根技術協力事業においては、個別案件における予算の制約があるため、事業の成果を確保するためやむを得ず業務を追加する際は、まずは他に業務委託契約に含まれる業務を見直し、全体の業務量を調整することを検討します。
しかしながら調整が困難な場合は、業務の追加及びそれに伴う契約金額の増額(全体事業経費の増額)に係る契約変更について、委託者と受託者の間で協議させて頂きます。
ただし、契約金額の増額を伴う契約変更は、原則として、追加の業務が発生せざるを得ない場合に限られ、単に「予定していた現地業務期間に(受託者の責任で)業務が終わらなかった。」場合や「現地で物価が上がって、海外活動費が増えた。」という
理由では、契約変更の協議に応じられません(不可抗力や為替の大幅な変更等に際しては、協議させて頂きます)。
3.契約履行過程での具体的な手続き
(1)物品・機材の調達・管理
草の根技術協力事業の受託者が行う物品・機材調達は、受託者の責任の下、調達先を選定し、契約・発注し、納入品を検査し、支払を行うことになりますが、調達プロセスについては、国からの交付金であること踏まえ、可能な限り透明性、xx性、競争性を担保する必要があります。
なお、調達した物品・機材は、原則事業終了時に C/P 等に譲渡することとなります ので、現地にて必要な物品・機材か MM 等にて事前に確認・合意を得るようお願いいたします。また、その後のメンテナンス等の観点から、現地で一般的に流通している物品・機材を選定し、現地で購入することを優先的に検討してください。
草の根協力支援型については、設備・機材費の計上を認めていません。以下、具体的なプロセスを解説します。
1)物品・機材の内容確定
・契約締結時に調達すべき物品・機材や調達方法について確定する。
・200 万円を超える物品・機材の調達をする場合で、契約締結時に物品・機材や調達方法が確定できない場合、別途、監督職員の承諾を得る。(打合簿事例集参照)。
2)物品・機材の調達をする場合
・200 万円を超える物品・機材の調達をする場合は、履行開始後の物品・機材の購入前に、内容・調達方法について事前に承諾を得て、調達先との契約締結後速やかに調達経緯報告書を提出する。
3)調達方法の確定
調達すべき物品・機材の内容に基づき、採用すべき調達方法(見積合わせ、見積競争、競争入札等)は、基本的には下表の通りとします。特に、特命随意契約(特定の供給者から機材を調達すること)や見積競争や競争入札を行う場合の銘柄指定(特定の銘柄を指定して機材を調達すること)については、相当の理由を要することから、 JICA として慎重に検討させて頂きます。
なお、JICA が海外で物品・機材を調達する際の手引きや英文様式などは、受託者の求めに応じ、個別に提供することが可能です。
契約金額 | 選定方式 | 精算時に必要な書類 |
1,000 万円超 | 競争入札 | 調達経緯に係る打合簿の写添付1:調達経緯説明書添付2:契約書 領収書 |
1,000 万円以下 ~200 万円超 | 見積競争 | |
200 万円以下 ~50 万円超 | 見積合わせ | 見積書(2者以上) 領収書 |
50 万円以下 | 見積書徴取省略可 | 領収書 |
4)契約締結の報告
契約相手方が決定したら、契約書を締結し、物品・機材を発注します。契約書の様式についても、受託者から希望があれば、JICA が一般的に使用している契約書雛形
(英文)の提供が可能です。
契約金額が 200 万円を超える物品・機材を調達した場合は、契約締結後速やかに、調達経緯説明書をもって報告してください(打合簿事例集参照)。調達経緯説明書には、調達した物品・機材の概要、選定方法、競争参加者、契約相手方、契約金額等を記載し、契約書の写しを添付してください。
5)物品・機材の納入
物品・機材が納入されたら、検査調書をもって機材納入結果を確認します。発注書や契約書の機材リストと照合し、物品・機材品目や数量が間違っていないか、付属品等が不足なく含まれているかを確認するとともに、可能な範囲で動作確認を行ってください。検査の結果不合格となった場合には、契約相手方に対し、契約書等に基づき適切な物品・機材を納入するように指示してください。
なお、JICA の資金により調達した機材には、「JICA マーク」(英・仏・西・葡・アラビア語)及び「日章旗マーク」(英・仏・西・葡・アラビア語)を貼付することになっていますので、検査の際に併せて貼付するようにしてください。「JICA マーク」「日章旗マーク」は、JICA 在外事務所の担当者から受取ってください。これらのマークの貼付はプロジェクトに直接関係する場合に限られます。他の目的に用いることは不適切ですので、ご留意ください。
6)納入業者への支払い
支払いは、物品・機材が納品され、検査を了した後に行います。支払いは、支払いの事実確認を容易なものとするため、現金ではなく、可能な範囲で銀行振込としてください。
前金払は、契約が履行されない場合のリスクを受託者が負う条件で実施可能ですが、
JICA は推奨しません。
7)輸出規制法令の順守
本邦で調達した物品・機材を外国に輸出する場合、受託者は輸出者として、輸出x x規制法令を遵守し、これら法令に基づき必要な手続きを行わなくてはなりません。具体的には、受託者は、別に提示する「JICA 輸出管理ガイドライン(業務受託者
向け)」5 に基づき、輸出規制品の有無を確認し、輸出の可否について審査のうえ、その結果を JICA に提出し、JICA は受託者からの報告内容を確認します。輸出許可・輸出承認を得る必要がある場合には、受託者が所管省庁に申請し取得します。
なお、本邦調達に限らず、第三国から輸入する場合も同様に輸出管理規制法令に基づく手続きが必要です。
8)物品・機材の管理
草の根技術協力事業において受託者が調達した物品・機材は、事業実施期間中 JICAに所有権があり、受託者に無償で貸付けているとの位置付けであることから、受託者は善良な管理者の注意をもって、使用、管理してください。
なお、万が一、受託者に貸し付けている物品・機材に紛失や故障・破損等が生じた場合は、契約に基づき「同等品を代替品として返還し、若しくは原状に復し、又は損害を賠償」していただくこともありますので、物品・機材の使用・管理に当たっては、十分注意を払ってください。紛失や故障・破損等が生じた場合については、速やかに
5 xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxx/xxxxxx/xxxxxxxxx/xxxxxxxxxx/xxxxxx.xxxx
監督職員に連絡してください。
調達した物品・機材は、JICA に所有権があり、受託者に無償で貸付けている整理になりますので、業務履行期間中は、貸付けを受けている「貸与物品」を管理する目的で「貸与物品リスト」(JICA ウェブサイトに様式を提示。)を作成し、四半期業務報告書に添付して頂きます。「貸与物品リスト」には、当該四半期に調達した物品・機材だけでなく、受託者が契約に基づき契約履行期間中に調達した物品・機材(ただし、消耗品 6 を除く。)の全てを記載ください
同一の事業について、複数の契約履行期間に分割して契約書を締結している場合は、当該契約書の契約履行期間に調達した物品・機材のみではなく、先行する契約におい て調達した物品・機材を含めて、貸与物品リストに掲載してください。
複数の契約履行期間に分割して契約書を締結している場合で、契約と契約の間の端境期が生じる場合には、その端境期に物品・機材の調達や輸出・譲渡等が行われることのないよう留意願います。
9)物品・機材の譲渡
草の根技術協力事業が終了する際には、貸付けしている全ての物品・機材(すなわち、貸与物品リストに含まれるすべての物品・機材)を C/P 等(公的機関が望ましい。譲渡先の適否については、必要に応じ、監督職員と相談してください。)に譲渡することとしてください。
譲渡に際しては、当該機関の長又はそれに準ずる者が署名した受領書を徴取してください。取り付けた受領書の原本は事業完了報告書に添付し、写しを最終契約の経費精算報告書の「証拠書類」として添付して提出してください。
(2)第三者への再委託が発生する場合
業務委託契約約款第3条に定めるとおり、日本国内・現地を問わず、第三者への「再委託」は原則として禁じられていますが、ベースライン調査など、第三者の知見や専門性を活用することが適当と判断される場合には、契約書の特記仕様書で定めた再委託可能な業務の範囲の中で、業務の一部を再委託することが可能です。特記仕様書で定めていない場合で、新たに再委託を必要とされる場合には、その妥当性を JICA 国内機関で判断のうえ、打合簿を交わしたうえで変更契約の手続きが必要です。
・再委託する場合には、規模・金額に関わらず全てのケースにおいて、3.3)調達方法の確定に記載の、採用すべき調達方法(見積金額内訳書合わせ、見積競争、競争入札等)に準じて、事前に監督職員の承諾を得てください。
・契約締結後に「調達経緯報告書」をもって打合簿とともに提出し、契約締結の報告をしてください。(打合簿事例集参照)。
・印刷、製本、資料整理、翻訳、通訳、国内旅行の手配等の軽微な業務については、契約約款第 3 条第 3 項の規定に基づき、JICA の事前の承諾は必要ありません。
6 消耗品とは、「1 件の取得単価が 5 万円以上かつ使用可能期間が 1 年以上のもの、又は 5 万円未満かつ使用可能期間が 11 年以上のもの」に該当しないものをいいます。
(3)現地工事(修繕・修理等を含む施設等の建設など)を行う場合
業務対象国において現地工事(修繕・修理等を含む施設等の建設など)の実施に際しては、施設等を建設(修繕・修理等を含む)する場合は、規模の大小にかかわらず安全面のリスクが伴います。住民参加型による工事の場合も住民の能力等に応じた適切な指導や安全配慮が必要です。小さな工事も含め、まずは、安全確保の見地から外部技術者の傭上や現地で信頼のおける専門業者(第三者)に「下請負」として工事を発注することを検討してください。
施設建設の目的と概要、施設が建設される土地や建物等の所有権の状況、設計・施工方法、実施体制、周辺住民や関係者等に対する安全配慮(工事現場のみならず資材置き場や通路、車両の出入り口、駐車場等の安全対策を含む)、完工後の譲渡先に関する合意状況等は、事前に打合簿にて詳細を確認させていただきます(打合簿事例集参照)。なお、現地にて工事等を(第三者)に「下請負」として発注せず、住民参加型等の方法により独自で行う場合においても上記と同様に、事前に打合簿にて詳細確認が必要です。
現地工事を行う場合においては、規模・金額に関わらず、内容・調達方法について事前に承諾を得てください。また、土地の確保(所有権の確認を含む)、竣工後の譲渡、安全対策等を確認してください。
施設建設(修繕・修理等を含む)工事を第三者へ「下請負」として発注する場合は、契約締結後に調達経緯報告書を提出してください。
JICA が海外で工事やサービスを調達する際の手引き 7 や英文様式などは、受託者の求めに応じ、個別に提供することが可能です。
1)工事を第三者へ「下請負」として発注する際の留意点
業務委託契約約款第3条に定めるとおり、第三者への「下請負」は原則として禁じられています。現地工事を行う必要がある場合には、特記仕様書にて第三者への「下請負」が可能な業務を定め、事前に承諾を得るようにしてください。また、金額のみで契約者を選定する調達方法(競争入札、見積競争)は工事には不向きであるため、金額の多寡にかかわらず、技術や経験、実施体制、安全対策等の評価を加味した総合評価方式や見積合わせを原則としてください。工事の内容や調達方法は、事前に監督職員の承諾を得てください(打合簿事例集参照)。外部の技術者や施工業者に工事を発注する際は、金額の多寡にかかわらず必ず契約書を締結し、①検査、②違約金/遅滞金、③契約の変更・解除または履行中止の場合の損害負担、④瑕疵担保責任、⑤安全配慮等について確認を行ってください。また、第三者との契約締結後は速やかに「調達経緯報告書」を作成し、契約書を添付の上、打合簿と共に提出してください(打合簿事例集参照)。
2)完工後の手続き
完工後は速やかに施設を C/P 等(公的機関が望ましい。譲渡先の適否については、必要に応じ、監督職員と相談してください。)に譲渡し、当該機関の長又はそれに準ずる者が署名した受領書を徴取して、原本を四半期業務報告書に添付し、その写しを四半期支出状況報告書または経費精算報告書の「証拠書類」として添付してください。必要に応じ、事業終了まで、受託者に施設の利用を認めることについて、施設譲渡先と合意してください。
7 ODA 建設工事の安全対策への取り組みxxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxxx/xxxxxxx/xxx_xxxxxx/xxxxx.xxxx(草の根技術協力事業においては上記ウェブサイト内のガイダンスの適用は求められていないものの、特に「作 業員向け危険予知トレーニング教材及び安全対策改善事例集」については、草の根技術協力事業においても参考になる内容ですので安全対策を検討するにあたりご参照ください。
(4)本邦研修受入れ8
現地の関係者を日本に招き研修を実施する際には、研修実施前に「研修員受入連絡届」を提出ください。また、研修実施後に四半期業務報告書にて実施結果を報告してくださ い。特に投入の大きな研修や契約時点の想定を大幅に異なる研修を行う場合には、研修 計画書を作成し、全体行程及び受入れ予定の研修員氏名等について、監督職員の事前の 承諾を得てください(打合簿事例集参照)。なお、詳細計画に基づいて積算した時点で、 契約書に計上した金額を超える可能性がありますが、国内活動費の費目(中項目)内で あれば、受託者の裁量で流用が可能です。
研修が終了した際には、四半期業務報告書において、研修概要、研修日程・カリキュラム、研修参加者、研修結果(所見)等を報告してください。
(5)不可抗力
業務委託契約約款第 18 条(天災その他の不可抗力の扱い)に基づき、不可抗力や天災(大規模デモ、大規模な洪水被害、地震等)が発生し、予定どおりの業務が困難となった場合は、速やかに監督職員へ第一報を連絡してください(打合簿事例集参照)。
受託者は合理的に実行可能な限りにおいて、業務の履行を続ける努力を行う必要がありますが、契約期間に業務を完成することが出来ない場合の契約期間の延長や、不可抗力により生じた追加的な経費についての措置、業務内容の変更について監督職員と協議し、打合簿により基本的な対処方法について合意形成を行った上(打合簿事例集参照)、必要に応じ契約変更します。
8 研修員受入手続に関しては、業務委託契約の中に全ての経費及び受入にかかる一切の手配を包括することが前提です。
第4章 モニタリングと評価
1.モニタリング・評価の意義・目的
草の根技術協力事業は、JICA と受託者とのパートナーシップに基づき、政府開発援助
(ODA)の一環として、JICA が受託者に委託して実施されるものです。よって、①事業をより効果的・効率的に実施すること、②委託契約を適切に実施すること、そして③国際協力に対する市民の理解と支持を得ることが必要です。
これらの目的を達成するため、事業のモニタリングや評価を適切に実施することが求められています。
(1)モニタリング
草の根技術協力事業をより効果的・効率的に実施するためには、定期的なモニタリングにより、事業計画の進捗状況や発生した問題点等を適時に把握し、受託者と JICA との間で共有し、事業内容を見直して適宜計画の軌道修正、更には必要に応じて契約内容の変更を行う必要があります。
なお、事業の初期段階に実施計画を点検し、必要に応じて計画の軌道修正を行うため、事業開始後半年から1年を目途に、契約時の PDM や実施スケジュールの適正化・精緻 化のためのレビュー(実施計画レビュー)を必ず行ってください。JICA は必要に応じ て現地調査を実施し、レビューの内容の確認を行います。
また、モニタリングにより、事業の実績と効果を適時適切に確認しておくことで、事業終了時にプロジェクト目標の達成度を確認する際、重要なデータとして活用することができます。
更にモニタリングが持つ重要な役割は、業務委託契約書に基づき委託された「業務」が適切に実施されているかの管理です。契約金額(報酬)は、契約で委託された業務の完了を確認した上で支払われることとなっていますが、この「業務の完了」を確認するには、業務実施過程のモニタリングが不可欠です。公金を使った事業であることから、適切な契約の履行、適切な契約金額(報酬)の支払は最低限求められるものであることにご理解をお願いします。
(2)評価
事業の終了に際して、これまでの活動実績をふり返り、事業の効果・目標の達成状況や実施プロセスを評価することで、評価対象事業及び類似プロジェクトの改善に資する教訓・提言を引き出すことができます。このような教訓・提言は、評価対象事業へフィードバックして事業の改善に役立てるとともに、今後のより良い案件の形成・実施、草の根技術協力事業の制度そのものの改善や受託者や関係者の相互学習の促進に利用可能です。
また、事業への投入や効果等を公開することにより、事業実施内容の透明性を確保し、日本国民(納税者)及び関係者への説明責任を果たすことができます。
2.モニタリングの実施方法
(1)報告書の種類
■契約履行期間中にご提出いただく報告書には、以下の種類があります。
様式は、JICA ウェブサイトを参照願います。また、各報告書の構成要素は、別添2様式一覧をご確認ください。
・ | 業務月報 |
・ | 四半期業務報告書 |
・ | 四半期支出状況報告書 |
■契約期間の契約履行完了時には、以下を提出頂きます。
・ | 業務完了報告書 |
・ | 経費精算報告書 |
■本契約の全期間の業務を完了した時には、以下を提出頂きます。
・ | 事業完了報告書(業務完了報告書の様式を、名称を替えて提出) |
■事業終了後には、以下の報告書を作成します。
・ | NGO-JICA イコール・パートナーシップ振返りシート (受託者が NGO の場合のみ、NGO と JICA 双方が作成) |
・ | 終了時評価表 (JICA が作成) |
各報告書にかかる詳細は以下のとおりです。
【月毎に提出する報告書】
業務委託契約を締結して事業を開始した後は、月毎に「業務月報」を提出頂きます。様式については、JICA ウェブサイトを参照願います。
1)業務月報
業務従事者の月毎の業務の実施状況を確認するための報告書であり、直接人件費及び日当・宿泊料の計上の根拠となる書類です。以下に示す四半期業務報告書が主に業務の達成状況(アウトプット)の報告を目的としているのに比べ、業務月報では、業務従事者等が実施した業務内容を報告いただきます。
また、併せて業務従事者等の従事計画・実績表を添付することにより、当該月の業務従事実績を確認します。
●業務月報の記載対象は、以下のとおりです。
①業務従事者配置計画に記載された業務従事者については全て記載ください。
②直接人件費を計上していない業務従事者は、備考欄に「直接人件費の計上なし」と記載願います。
契約履行期間中は、毎月月初めから5営業日までに前月の業務月報を作成のうえ、監督職員へ提出してください。なお、契約履行期間の最終月は、事業完了報告書とともに契約履行期間終了日までに提出してください。
【四半期毎に提出する報告書】
事業開始後、四半期毎に「四半期業務報告書」を提出頂くとともに、JICA と受託者
との間で四半期モニタリング会合を開催することとします9。また、経費に係る報告書として、四半期支出状況報告書を提出頂きます。
なお、契約終了日が属している四半期については、業務完了報告書及び経費精算報告 書を提出いただきますので、以下の四半期業務報告書及び四半期支出状況報告書の提出は不要です。
2)四半期業務報告書
四半期毎の業務進捗・達成状況を報告頂くため、当該四半期終了月の翌月末日まで
10に提出を求めている報告書です。本報告書に基づき、四半期モニタリング会合を開
催し、事業計画の進捗・達成状況や発生した問題点等を受託者と JICA との間で共有します。必要に応じ、事業内容を見直して適宜計画を修正してください。
また、四半期部分払を行う場合は、本報告書及び四半期モニタリング会合等に基づき、当該四半期の業務完了の確認を行うことになります。
具体的には、以下の文書を作成、添付頂きます。 a)活動計画・実績表
b)業務達成状況報告書(第2四半期及び第4四半期のみ)
c)貸与物品リスト(契約履行期間中に調達した物品・機材全てが対象。調達が無い場合には、その旨記載のうえ提出ください。)
d)活動の様子が分かる写真
3)四半期支出状況報告書
四半期毎の支出状況を報告頂くため、四半期業務報告書と同時に提出を求めている報告書です。本報告書に基づき、事業に係る経費が適切に支出されているか確認しています。 四半期部分払を行う場合は、本報告書に基づき、JICA 側にて当該四半期の契約金相当額を算定し、四半期部分払の上限額(当該四半期の契約金相当額の9割)を受託者に通知することとなります。また、概算払いの場合は、当該四半期の業務(活動)内容を踏まえた受託者の申請額に基づき JICA にて概算払可能額を確認し通知します(契約全体金額の 9 割上限)。
1) 表紙(押印付)
2) 四半期支出状況報告書総括表/経費精算報告書総括表
3) 旅費(航空賃)内訳書
4) 旅費(その他)内訳書
5) 費目別支払簿
① 海外活動諸費
② 受入諸費
③ 国内業務費
④ 基盤整備費
⑤ 資機材購送費
6) 直接人件費内訳書
7) 業務従事者の従事計画・実績表(当該四半期最終月を含むもの)
9 四半期モニタリング会合は、必ずしも面談会議方式で実施する必要はなく、テレビ会議、電話会議等の会議方法を運用してください。
10 複数年度契約(年度末を超える契約)において、四半期部分払いを適用する場合には、契約約款第 14 条第 5 項において、第4四半期を 1 月 1 日から 4 月 15 日と設定しています。その場合は、当該四半期終了月が 4 月となりますので、四半期業務報告書は 5 月末日までに提出すればよいことになります。
8) 証拠書類(領収書等)一式
※領収書等に加え、支出を行う上での前提となる打合簿(調達経緯報告書等)の写しや施設・建物等や資機材の受領書、複数見積書等を併せて提出してください。
【契約履行完了時に提出する報告書】
契約履行完了時には、業務完了届に「業務完了報告書」を添えて提出して頂きます。四半期報告書提出時と同様に、JICA と受託者との間でモニタリング会合を開催し、契約で委託さている業務が完了しているか、JICA が確認させて頂きます。同一の事業について、複数の契約履行期間に分割して契約書を締結している場合、各契約期間の契約履行完了時に「業務完了報告書」を提出頂きます。
また、これとは別に、経費精算報告書を提出頂きます。
4)業務完了報告書
契約の履行が完了する際に、当該契約履行期間の業務完了を検査するため、契約履行期間終了日までに提出を求めている報告書です。業務完了報告書の提出までに、契約書に記載された業務がすべからく完了している必要があります。なお、契約履行完了日が属している四半期の四半期業務報告書は提出不要です。
具体的には、以下の文書を作成、添付頂きます。 a)活動計画・実績表
b)業務達成状況報告書 c)貸与物品リスト
d)活動の様子が分かる写真
5)経費精算報告書
契約の履行が完了する際に、当該契約履行期間の直接経費の支出状況を検査するため、原則契約履行期間終了日から起算して 30 日以内に11提出を求めている報告書です。本報告書に基づき、JICA が契約金額の範囲内で JICA が支払うべき金額を確定し、受託者に通知することとなります。
具体的な提出文書は、契約履行完了日が属している四半期にかかる「四半期支出状況報告書」に加え、経費精算報告書総括表12を作成、添付頂きます。
【全契約履行完了時(事業終了時)に提出する報告書】
全契約の履行が完了する際(最後の契約の履行完了時)には、上記の「業務完了報告書」に替えて、業務完了届に「事業完了報告書」13を添えて提出して頂きます。業務完了報告書との違いは主に「c)事業評価報告書」を添付する点となります。
業務完了報告書と同様に、JICA と受託者との間でモニタリング会合を開催し、全契約で委託さている業務が完了しているかについて、確認させて頂きます。
また、国内関係者(支援者、市民一般)へ草の根技術協力事業の成果を積極的に発信して説明責任を果たすとともに、国際協力への理解・支持を拡大するという観点から、市民向けの報告会やセミナー等の開催を推奨しています(その際、開催場所として、 JICA 国内機関の活用も、状況に依りますが、可能ですのでご相談ください。)。
11 ただし、契約履行期間終了日が 2 月 1 日から 3 月 31 日までの間に設定されている場合、JICA の会計処理のため、JICA が指定する期日までに提出して頂くこととなります。
12 2014 年度以前契約用のフォーマットでは、「経費精算報告書内訳」(別添 3-13)を指します。
13 契約約款第 7 条第 4 項では、「業務完了報告書」と規定されていますが、事業終了時(最後の契約の終了時)には、これを「事業完了報告書」と読み替えることとします。
6)事業完了報告書
全契約の履行が完了する際(事業に係る最後の契約の履行が完了する際)に、最後の契約履行期間の業務完了を検査するとともに、事業全体の評価を行うため、契約履行期間終了日までに提出を求めている報告書です。
具体的には、以下の項目を記載頂きます。
a)活動計画・実績表 b)業務達成状況報告書 c)事業評価報告書(様式自由) d)費目別支払簿
e)貸与物品リスト
f)活動の様子が分かる写真
(2)JICA と受託者との情報共有
事業の適切なモニタリングには、報告書の作成のみではなく、JICA 及び受託者の適時適切な情報共有が不可欠です。
上述のとおり、各四半期、契約終了時、事業終了時に、JICA 及び受託者との間でモニタリング会合、事業完了報告会を実施しますが、これらの機会以外にもプロジェクトマネージャーと監督職員の間で、定期的な情報共有に努めてください。その際、JICA 国内機関や在外事務所に設置されているTV 会議システムの活用も可能です。
(留意事項)
上述の報告書の他、現地業務連絡先届及び研修員受入連絡届(JICA ウェブサイトに様式を提示。)の提出が、契約書附属書Ⅰ「共通仕様書」第 7 条に規定されており、提出が義務付けられます。
現地業務連絡先届について、共通仕様書第 7 条には「現地業務開始前に提出」となっていますが、現地業務を行なう前月 20 日(安全管理に係る協議を要する国は個々に定められた期日)までの提出をお願いします。前月(あるいはそれ以前)より継続滞在中の業務従事者についても明記のうえ、毎月提出してください。
(3)活動計画・実績表
活動計画・実績表は、事業の進捗状況をモニタリングするためのツールです。PDMに記載されている活動(Activities)計画を踏まえ、取組み状況をバーチャートや、研修等の実施回数があるものについては星印等で示し、当該四半期の『活動実績』を記載頂きます。
記載頂いた活動実績に基づき、業務の完了の確認を行いますので、可能な限り、具体 的な記載をお願いします。特に、業務完了報告書又は事業完了報告書に添付する場合は、 事業開始から当該時期までの全期間が対象となり、様式内の記載欄のみでは十分な記載ができないと考えますので、別紙への記載も可能です。
(4)業務達成状況報告書
業務達成状況報告書は、活動計画・実績表に基づき報告頂く活動により、事業の目標 やアウトプットがどの程度達成できているかをモニタリングするためのツールです。 PDM に記載されているプロジェクト目標(Project Purpose)及びアウトプット毎に、
『達成状況』を記載頂きます。記載の範囲は、事業開始当初から当該四半期までのアウ
トプットの達成状況(目標値に向けて、どこまで達成したか。)を累計した記載としてください。
これに加え、『モニタリング報告』として、以下の項目について、記載頂きます。特 に、業務完了報告書又は事業完了報告書に添付する場合は、事業開始から当該時期までの全期間が対象となり、様式内の記載欄のみでは十分な記載ができないと考えますので、別紙へ記載ください。
・ 事業により目指していた変化の有無とその内容
・ 案件実施の意義を具体的に伝えられるエピソード
・ より大きな成果を生み出すための創意工夫
・ 当該業務期間中に起きた問題点や計画通りにいかなかった場合の阻害要因
・ 同じく計画通りに行かなかった場合のマネジメント方法
・ 業務実施により認識された教訓
・ 今後の課題
・ 計画変更があった場合の変更内容・その理由
・ 日本の市民へのアプローチ
・ 次期継続契約における業務に係る基本方針(業務完了報告書に添付する場合に限る。)
・ 事業や受託者への自治体の関与等(地域提案型/地域活性化特別枠)において、自治体が指定した団体が事業を実施した場合に限る。自治体担当者が記述。)
・当該四半期までの達成状況を踏まえ、翌四半期以降に取り組むべき事項、計画の変更等
(5)事業評価報告書(様式自由)
自由記述形式ですが、JICA が作成する次節「3.評価の実施方法」の「(3)終了時評価の評価項目」に記載されている項目を参考に、事業の振返り及び自己評価を記載してください。作成にあたっては、「現地の状況に合わせた適時適切な事業計画の見直しを行うことができたか」(評価項目「実績とプロセス」)といった観点から、結論だけではなく、プロセスや具体的内容についても記載願います。
3.評価の実施方法
(1)評価の準備
適切な評価を実施するためには、事業開始に当たって、業務内容を適切に設定しておく必要があります。業務内容の設定には、PDM(Project Design Matrix)を活用します。
(2)終了時評価の視点
草の根技術協力事業の終了時評価では、提出された事業完了報告書、報告会、受託者からの聞き取り、必要に応じて実施する現地調査等を踏まえ、以下の視点に基づいて評価を行います。
1)事業の評価
草の根技術協力事業は国際協力機構法第 13 条第 1 項第 4 号に「開発途上地域の経済及び社会の開発又は復興に協力することを目的とする(国民等の協力)活動を促進し、及び助長する」ものと規定されています。これを踏まえ、草の根技術協力事業はその事業目的を以下の2つとしており、契約書で定めたプロジェクト目標の達成状況に加え、これらの目的に則した評価を行います。
・市民の力による開発への貢献が質・量ともに拡大する。
・途上国や日本の地域の課題解決への理解・参加が促進される。
上述の 2 つの柱を軸としつつ、事業の評価では、契約書で定めた個々の案件のプロジェクト目標の達成状況にかかる評価を行います。
2)社会開発の効果の把握
コミュニティを対象とする社会開発事業においては、目に見える効果が発現するまで時間がかかる場合があります。住民の意識変化、行動変容などの定性的な変化がみられることも多いですが、このような効果は指標の設定や評価判断の数値化が難しいことが知られています。
このような場合でも、事業開始時の状況(ベースライン)を把握し、事業終了時にどのような変化が生まれたかを比較することで、事業の効果を図ることが可能であることから、可能な範囲内で様々な要素をモニタリングし、情報を蓄積し、事業効果を確認することが求められます。
3)客観性を持った評価
草の根技術協力事業における終了時評価は、受託者及び JICA が実施する内部評価と位置付けられますが、透明性の高い適正な評価とするため、客観的な視点をもって事業をふり返ることが求められます。
このため、事業の受益者や C/P 等の声をできるだけ評価に反映させることが重要となります。また、事業終了前には、JICA は可能な限り現地調査を実施する(現地調査の際には、専門的知見を持った外部人材が参加することもあります。)ことにより、終了時評価の内容の適正化を図ります。
(3)終了時評価の評価項目
終了時評価においては、草の根評価4項目(妥当性、実績とプロセス、効果、持続性)に加え、市民参加の実績及びグッドプラクティス、教訓、提言等の6つの項目で評価を行います。
1)妥当性:計画設計は妥当性があったか?
DAC 評価5項目 14 の「妥当性」に相当する評価項目であり、具体的には主に以下の視点から評価します。
・ プロジェクトは現地事情やニーズに合っていたか?
・ 受託者だからこそ可能であった現地の課題の発掘の手法を活かした計画であったか?
・ ターゲットグループ、対象地、C/P 等の選定は適切だったか?
・ 計画やアプローチはプロジェクト目標で目指す問題解決を実現するのに適切だったか?
・ 計画やアプローチは、対象国にある物や既存の制度、また、これまでに活動経験がある場合、その地域において受託者が培ってきた経験や実績、関係者との信頼関係を活かせたか? 事業開始時の(プロジェクト目標達成のための)外部条件の認識は十分だったか?
14 1991 年に経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)が発表した「DAC 評価基準」の中で、
援助事業の評価を行う視点として提唱された 5 項目。妥当性(relevance)、有効性(effectiveness)、効率性(efficiency)、インパクト(impact)、自立発展性(sustainability)で構成される。
2)実績とプロセス:事業は予定通り行われたか?プロセス・マネジメントを含め、やるべきことをやったか?
DAC 評価5項目の「効率性」に加え、プロセス・マネジメントの適切性も検証しま す。特に、草の根技術協力事業においては、多様化する開発途上国のニーズに対応す べくきめ細やかな協力を行うことを目指しており、途上国のニーズや状況の流動性や、相手国協力機関等の脆弱性、また、ターゲットグループが抱える課題の複雑性等に 対応した取り組みが求められるという特徴があります。これらの特徴を踏まえ、現 地の状況に合わせた適時適切な事業計画の見直しを行うことができたか、といった 観点での振り返りを重視しています。
具体的には主に以下の視点から評価します。
・ アウトプットは達成されたか?
・ 計画(人員・予算・機材調達)は予定どおりの投入と期間ですべて実施されたか?
・ 予定どおりいかなかった場合、どのような阻害要因によりそれは引き起されたか?
・ 予定どおりいかなかった場合、どのように現場状況に適した対応・事業運営を行い、アウトプット達成を目指したか(途中の計画やアプローチの変更等)?
・ お金や労力は無駄なく使われ、実績を上げたか(cost-effective だったか)?
・ 本事業が、受託者が同地域で行っている他の事業と関連している場合、それらの事業と連携させることにより期待される本事業の効果
3)効果:事業はよい変化をもたらしたか?
DAC 評価5項目の「有効性」と「インパクト」に相当する評価項目であり、具体的には主に以下の視点から評価します。
・ 事業により目指していた変化はもたらされたか(プロジェクト目標は達成されたか)?
・ 事業の取組みは問題の解決に役立ったか?事業によりもたらされた変化は、当該事業によるものか?プロジェクト目標達成に対し、アウトプットはどのように貢献したか(因果関係の検証)?
・ 変化をもたらす上で、どのような促進要因があったか(うまくいった理由:プロジェクト内および外部からの両方の要因について)?
・ 目指していた変化が達成できなかった阻害要因は何か(うまくいかなかった理由:プロジェクト内および外部からの両方の要因について)?
・ 事業はどのような直接的な変化をもたらしたか?また、どのような予期しなかった効果をもたらしたか(プラス面、マイナス面のどちらからも検証)?
4)持続性:事業によってもたらされた変化はこれからも継続するか?
DAC 評価5項目の「自立発展性」に相当する評価項目であり、具体的には主に以下の視点から評価します。
・ 事業によりもたらされた変化が草の根技術協力事業終了後も持続するための工夫はなされているか(人的/組織的/予算的体制の整備などのインプット。受託者の人的/予算的体制を含む。)?
・ 上記の工夫のために必要とされるインプット等は、現地の人々が自ら考えて行動し、本事業終了後も事業成果の維持・発展に主体的に関わり続けられるようにするための工夫、また、政府等の取組で対応できるよう工夫できたか?
・ 上記対応に支障がある場合、その阻害要因は何か?また、それを克服するにはどのような手立てが必要か?
5)市民参加の観点からの実績
草の根技術協力事業の目的である「国民等の協力活動の促進、助長」について記載します。具体的には主に以下の視点から評価します。
・ 草の根技術協力事業を実施したことにより、受託者の事業運営や組織面の強化につながった点はあるか(会計業務、プロジェクト・マネジメント等)?
・ JICA の NGO 等活動支援事業の機会活用により、受託者の事業運営や組織面の強化につながった点はあるか(経理・会計業務、広報、ファンドレイジング、事業計画策定、事業評価、組織マネジメント等)?
・ 本事業を通じ、日本の市民の国際理解促進の機会となる工夫・活動として、どのような取組みを行ったか(例えば、市民向けセミナー等)?
・ 本事業を通じ、市民に JICA 及び ODA 事業について周知する工夫・活動として、どのような取組みを行ったか?
6)グッドプラクティス、教訓、提言等
上記評価項目を踏まえ、気づきの点について記載します。具体的には主に以下の視点から評価します。
・ 案件実施の意義を具体的に伝えられるエピソード
・ 他団体等に共有したいグッドプラクティス、教訓
・ 今後に向けた提言(当該事業の今後の展開、類似プロジェクトへの反映、草の根技術協力事業の制度の改善、受託者の独自事業への反映、JICA/現地関係機関/国内関係者とのパートナーシップ改善など)
(4)終了時評価の進め方
終了時評価の結果は、「事業完了報告書(受託者が作成)」及び「終了時評価表(JICAが作成)」として、以下の手順で取りまとめます。
1) JICA は事業の終了に際して、可能な限り現地調査を行い、受託者・JICA 双方で現地状況を確認する。
2) 受託者が、事業完了報告書を提出する。(契約履行期間終了日まで)
3) JICA は、事前調査で確認した内容及び受託者から提出された事業完了報告書を参考にして、終了時評価表をとりまとめる。(終了時評価表作成に際して、受託者からの追加の情報提供をお願いすることがあります。)
なお、終了時評価表は JICA ウェブサイトにて公開します。(公開の対象となるのは、
2015 年度以降に採択した草の根パートナー型及び事業費 5,000 万円以上15の案件です。)
15 ただし、事業総額 5,000 万円以上の案件であっても、2011 年度以前に終了した草の根パートナー型は公開対象にはなりません。
4.NGO-JICA イコール・パートナーシップ振返りシート
NGO-JICA 協議会での合意に基づき、受託者が NGO である場合は、「NGO-JICA イコール・パートナーシップ振返りシート」を作成します。作成の目的は、事業実施中から双方がイコール・パートナーであるという意識を常に保ち、振返りの結果得られた教訓を今後のパートナーシップ向上に活かすことです。
振返りシートは、事業終了後(最後の契約が終了した後)、NGO・JICA がそれぞれ作成し、これを交換します。JICA では振返りシートから得られる情報を国内事業部で集積し、定期的に JICA 内関係者へフィードバックするほか、課題が認められた場合には、 NGO-JICA 協議会で情報共有することとします。
5.事業終了後のモニタリングと評価
(1)特定の地域や課題を対象とした評価
草の根技術協力事業の制度自体の評価を行うことを目的として、特定の地域や課題を対象に、第三者の視点を入れた調査を定期的に実施します。制度の成果と課題を抽出し、制度改善等に役立てる目的で行うものであるため、実施の際はご協力をお願いします。
(2)アンケート調査及びフォローアップ調査
終了した事業についての事後現況の把握を目的として、事業終了後3年程度が経過した時期を目途として、事業終了後の現況に係るアンケートを実施します。
また、アンケート調査や受託者への聞き取り調査等を踏まえ、フォローアップが必要と判断された事業については、事業終了後の状況に係る調査を実施します。
これら調査を実施する際には、ご協力をお願いします。
以 上