Contract
米国最高裁判所判決―倒産手続きにおける商標ライセンス契約の履行拒絶の効果
米国コロンビア特別区弁護士
xx
xx
要 約
商標ライセンス契約のライセンサーが倒産手続き開始の申立てを行ったうえで当該ライセンス契約の履行を拒絶した場合において,ライセンシーの当該ライセンス権の帰趨については倒産法上明らかでない。そのため,裁判所の判断も,xxxxxxはライセンス権を喪失するという見解(Rejection as Rescission Approach)とxxxxxxはライセンス権を引き続き有するという見解(Equitable Approach または Rejection as Breach Approach) と に 分 か れ て き た。 こ の よ う な 状 況 の も と, 最 高 裁 判 所 は Tempnology 事件において当該判断に関する申立てを受理し,Rejection as Breach Approach を採用する旨を明らかにした。当該判決は,倒産手続きにおける商標ライセンス契約の取り扱い方針を示すものとして着目に値する。もっとも,当該判決の論旨および補足意見は,商標ライセンス契約の規定内容によって当該取り扱いも変わりうることを示唆する。したがって,商標ライセンス契約の起案にあたっては,当該判決にもかかわらず,引き続きの注意を払う必要がある。
目次 1.はじめに
2.倒産手続きの基本構造 3.Executory Contract の取り扱い
(1) Executory Contract の意義
(2) 裁判所の承認に関する基準 4.Executory Contract の履行拒絶の取り扱い
(1) 365(g)条
(2) 365(n)条 5.商標法独特のルール―Naked License 6.裁判例および倒産法の変遷
(1) Lubrizol 事件
(2) 連邦議会の 365(n)条に関する決議
(3) Crumbs 事件
(4) Sunbeam 事件
7.Tempnology 事件―事件の概要および最高裁判所判決に至るまでの経緯
(1) ニューハンプシャー州地区倒産裁判所
(2) 第一巡回区倒産上訴部
(3) 第一巡回区控訴裁判所 8.Tempnology 事件―最高裁判所判決
(1) 365(g)条と 365(n)条との関係について
(2) Naked License との関係について 9.実務上の課題
(1) 商標ライセンス契約における解除権の設定
1.はじめに
2019 年 5 月の最高裁判所判決によって決着をみた Tempnology 事件(1)は,「商標ライセンス契約におけるライセンサーが倒産手続きの開始を申し立てたうえで当該ライセンス契約の履行を拒絶した場合,ライセンシーの当該ライセンス権は失われるのか」という論点(以下,「本論点」という)に一定の方向性を示したものである。本論点は 30 年以上の長きにわたってさまざまな裁判および立法活動の対象となってきたという経緯もあり,体系的に理解することがなかなかに難しいものである。そこで,本稿はそれらの経緯および Tempnology 事件に関する最高裁判所判決の内容を整理するとともに,当該判決の示唆する今後の課題について紹介する(2)。
2.倒産手続きの基本構造
ある債務者またはその債務者の債権者によって倒産手続き開始の申立てがあった場合,債務者の有する資産は倒産財団を形成し(3),債務者による債務履行のための原資となる。倒産財団は裁判所による格別の第三者の任命がない限り債務者によって管理されるとこ
(2) 商標ライセンス契約におけるライセンス権の付与
ろ(4()
以下,この立場にある債務者または管財人をま
(3) 商標ライセンス権の対価の取り扱い 10.まとめ
とめて「管財人」という),管財人としては,倒産財団に属する資産を活用し,その価値の最大化を図りた
いところである。たとえば,特許権などについては,付随するライセンス契約などのない状態で,高値で第三者に売却したいと考えることもあろう。一方,対象資産との間にすでに利害関係を有する第三者が存在する場合には,その第三者との関係も考慮した資産の取り扱いが期待される(5)。たとえば,特許権に関してライセンス契約を有するライセンシーが存在する場合,当該ライセンス契約の帰趨については当該ライセンシーの納得を得られるようなものである必要があろう。そこで連邦議会はこれらを調整した倒産法の制定を行い,また,連邦裁判所はそれら規定の適切な解釈・適用に努めている。
3.Executory Contract の取り扱い
本論点の中心は倒産法 365 条(以下,単に「365 条」という)の解釈である。このうち,365(a)条は,管財人に Executory Contract の履行拒絶または引受に関する選択権を与え,裁判所の承認を得ることをもってその実行を認める(6)。ここに,Executory Contractの意義および裁判所の承認に関する基準については以下のとおりである(7)。
(1) Executory Contract の意義
そもそも Executory Contract とはどのような契約を指すのかが問題となるが,実は倒産法自体には定義がない。そこで裁判例をみると,「契約の両当事者に一定の未履行の義務が認められる契約」(8),さらに厳格なものとしては「契約の両当事者に一定の未履行の義務が認められ,かつ,一方当事者のいずれかによる義務の不履行が重大な契約違反を構成することになる契約」と定義する(9)。
ここに,「未履行の義務」については,その義務が確定的に発生するか定かでないようなものであっても足りるし(10),また,その義務が不作為の継続に関するものであったとしても足りる(11)。ライセンス契約との関係でみると,前者の例としては Indemnification Clause(xxxxxxがライセンス権を行使した結果損害を被った場合においては,それらをライセンサーが填補するという不確定の義務が生じる)が,後者の例としては Exclusive License Clause(ライセンス契約の対象となる権利について,ライセンサーがライセンシー以外の第三者に新たにライセンス権を設定しないという不作為の義務が生じる)が挙げられる。ま
た,一方当事者が他方当事者に対して負う支払い債務は「未履行の義務」として認められないが(12),ライセンシーからライセンサーに向けたライセンス権の対価の支払いに関する報告書の提出,または,xxxxxxによるライセンシーの当該支払い状況に関する監査のためライセンシーが行う記録の保管などは「未履行の義務」として認められるものとして整理されている(13)。これらはライセンス契約において一般的に見受けられる規定であるから,ライセンス契約との関係においては,ライセンサーおよびライセンシーともに
「未履行の義務」が認められ,Executory Contract に該当すると判断できる場合が多いものと思われる。
(2) 裁判所の承認に関する基準
365(a)条が管財人に Executory Contract の履行拒絶を認める趣旨は,債務者を契約上の義務から解放することにある。また,同じく 365(a)条が管財人に Executory Contract の引受を認める趣旨は,債務者が倒産手続き開始の申立てを行ったことをもって取引先が離れてしまうといった事態を防止し引き続き事業存続の機会を確保することにある。
Executory Contract の履行拒絶または引受に関する選択は,いずれの選択が倒産財団の利益にかなうかという,事業と密接な観点をもって行われるものである。そこで,裁判所は,当該選択に関する承認にあたって,管財人の判断を尊重したビジネス・ジャッジメント・ルール(14)を適用する(15)。したがって,裁判所は,管財人の当該選択が不誠実な目的に基づいて行われた,または,当該選択権限の重大な濫用のもとに行われたといった事情のない限り(16),管財人の選択を承認することになる。
4.Executory Contract の履行拒絶の取り扱い
このように,Executory Contract については,管財人に履行拒絶または引受を選択する権限が認められており,裁判所はその判断を尊重することになるのが原則である。そのうえで,管財人が Executory Contract に該当する商標ライセンス契約の履行拒絶を選択しそれを裁判所が承認した場合において,ライセンシーの当該ライセンス契約上の権利がどのように取り扱われるかという本論点については,倒産法のふたつの規定が大きな関係を有するため,次のとおりそれらを紹介する。
(1) 365(g)条
365(g)条は,管財人による Executory Contractの履行拒絶の選択は,当該 Executory Contract の違反(以下,「breach」ともいう)を構成すると規定する(17)。したがって,他方当事者は,債務者による Executory Contract の履行拒絶によって被った損害について損害賠償の請求を行うことができる。しかし,その損害賠償請求権は倒産手続き申立前債権として取り扱われ,そのほかの債権者の有する優先債権に劣後する(18)。倒産手続き開始の申立てが行われた倒産財団についてはそのほとんどが債務超過の状態にあることも考慮すると(19),その損害の填補はほとんど見込むことができない。
(2) 365(n)条
365(n)条は,債務者が「Intellectual Property」に関する Executory Contract のライセンサーである場合において,管財人がその履行拒絶を選択した場合における特別規定である(20)。すなわち,365(g)条の規定に も か か わ ら ず, 管 財 人 に よ っ て「Intellectual Property」のライセンス契約の履行拒絶が選択された場合においては,ライセンシーは,365(n)条のもと,当該ライセンス契約を解除することもできるし,または,(少なくとも当該ライセンス契約の有効期間中は)当該ライセンス契約の規定するライセンス権の対価を支払うことをもって当該ライセンス権を存続させることもできる(21)。ここに,「Intellectual Property」とは,トレード・シークレット,特許権,または著作権などを含むが,商標権を含むかについてはその明示がない(22)。
5.商標法独特のルール―Naked License
次項以下で紹介する裁判例においては,商標法独特のルールである Naked License も関係してくるため,若干の紹介を行いたい。Naked License とは,商標権のライセンス対象商品の品質管理に関する手当なしに行われた商標ライセンス契約を指す(23)。裁判所は, Naked License の対象である商標権について,商標権者による権利の放棄があったものとして取り扱う場合がある。これは,商標は対象商品の有する品質の確かさを示すものであるところ,当該品質の維持に向けた手当が確保されていない場合においてはもはや当該商標を権利として認める必要はないはずであるとの理解
に基づく(24)。商標権者が Naked License の存在に関する疑念を払拭するためには,(1)当該ライセンス契約においてライセンサーによるライセンス対象商品の品質管理権限が規定されていること(2)ライセンサーによるライセンス対象商品の品質管理が現実に実施されていること,または,(3)ライセンサーとライセンシーとの間の密接な関係をふまえると,ライセンサーがxxxxxx自身によるライセンス対象商品の品質管理能力を信頼することが相当といえることのいずれかを示す必要がある(25)。
6.裁判例および倒産法の変遷
本論点に関する裁判例およびそれをとりまく連邦議会の立法活動に関する変遷は次のとおりである。
(1) Lubrizol 事件
Lubrizol 事件は,Richmond Metal Fishers, Inc.(以下「RMF 社」という)がメタル・コーティング・プロセスに関する技術の非独占的ライセンス権を Lubrizol Enterprises, Inc.(以下,「Lubrizol 社」という)に付与するため,1982 年に締結した技術ライセンス契約に関するものである。1983 年,RMF 社は,倒産法 11 章に基づき倒産手続きの開始を申し立てたうえで,365(a)条に基づき Lubrizol 社と締結していた当該ライセンス契約の履行拒絶を申し出たため,その履行拒絶の可否および当該ライセンス契約上の権利の存続の有無が争点となった。なお,本事件の当時
(1985 年)においては,すでに紹介した倒産法のふたつの規定のうち,365(g)条のみが存在していた(つまり 365(n)条は存在していなかった)ことに留意してほしい。
この点,バージニア州東部地区連邦地方裁判所は,当該ライセンス契約は Executory Contract に該当しないとして,当該履行拒絶を認めなかった。その後, RMF 社の控訴を受けた第四巡回区控訴裁判所は,バージニア州東部地区連邦地方裁判所の判断を覆し,当該ライセンス契約はExecutory Contract に該当し,当該履行拒絶を認めるものとした。そのうえで当該ライセンス契約上の権利の存続の有無について,RMF社による当該ライセンス契約の履行拒絶は 365(g)条に基づき当該ライセンス契約の違反を構成するため Lubrizol 社には損害賠償請求権が認められるわけであり,それ以上に Lubrizol 社に当該ライセンス契約上
の権利の存続を認めることは(管財人に Executory Contract の履行拒絶または引受に関する選択権を与えた)365(a)条の趣旨を損なうものであって認められないとした(26)。
(2) 連邦議会の 365(n)条に関する決議
Lubrizol 事件の後の 1988 年,365(n)条が制定された。365(n)条の概要については先に紹介したとおりであるが,同条における「Intellectual Property」は,トレード・シークレット,特許権,または著作権などを含むものとした一方,商標権についてはその明示がないままに定義したことが本論点をさらに複雑なものとした。すなわち,365(n)条は,同条の対象となる特許権などの「Intellectual Property」と商標権との間でその取り扱いを異にする趣旨に基づき制定されたものであると理解し,管財人が 365(a)条に基づき商標ライセンス契約の履行を拒絶した場合においては,ライセンシーは 365(n)条に基づく権利またはそれと類似の権利を認められることはないとの見解(Rejection as Rescission Approach) があらわれたのであ る(27)。 つ x x,Rejection as Rescission Approach は,365(n) 条は実質的に Lubrizol 事件を再確認した規定であって,商標ライセンス契約のライセンサーが倒産手続き開始の申立てを行ったうえで 365(a)条に基づき当該ライセンス契約の履行を拒絶した場合,ライセンシーは当該ライセンス契約上の権利を喪失すると理解するものであり,以降,多数説となった(28)。
もっとも,連邦議会上院の記録は,365(n)条に
商標権を含まないものとした点について,Rejection as Rescission Approach の理解と異なる理由を示す。すなわち,商標ライセンス契約のライセンサーが倒産手続きの開始を申し立てたうえで 365(a)条に基づき当該ライセンス契約の履行を拒絶した場合の取り扱いについては,ライセンシーの販売したライセンス対象商品の品質管理をめぐる問題について十分な検討をふまえて決定すべきであることを考慮すると,当面の間は倒産裁判所によるxxの理念に基づく判断に委ねることが適当と思われるとするのである(29)。そこで,この記録などを根拠として Rejection as Rescission Approach と対立する見解(Equitable Approach および Rejection as Breach Approach)があらわれる。 Equitable Approach の代表的な裁判例とされるのが
Crumbs 事件であり,Rejection as Breach Approachの代表的な裁判例とされるのがSunbeam 事件である。
(3) Crumbs 事件
Crumbs 事件は,xx上の理念に基づき,商標ライセンス契約のライセンシーにライセンス契約上の権利の存続を認める見解(Equitable Approach)を採用した事件である。Crumbs Bake Shop, Inc.( 以下,
「Crumbs 社」という)はカップケーキ・焼き菓子・飲料などの小売りを手掛ける会社であり,それらの商標として “Crumbs” を有していた。Crumbs 社は当該商標権のライセンスに関する契約を Brand Squared Licensing, LLC( 以下,「BSL 社」という)との間で締結したが,2014 年には倒産法 11 章に基づく倒産手続き開始の申立てを行った。 その後, Crumbs 社はその資産の大部分を Lemonis Fischer Acquisition, LLC(以下,「LFAC 社」という)に売却する旨の申立てを行い,その申立てに関する裁判所の承認を得るとともに,365(a)条に基づき,BSL社との商標ライセンス契約の履行を拒絶したため,本論点の解決が必要となった。
この点,ニュージャージー州地区倒産裁判所は, Exide Technologies 事件(30)におけるAmbro 裁判官の補足意見に依拠し,xx上の理念から,商標ライセンス権を 365(n)条の保護の対象から除くべきではないとした(31)。Ambro 裁判官の補足意見の要旨は次のとおりである。「365(a)条に基づくライセンサーによるライセンス契約の履行拒絶は,当該ライセンス契約のもとライセンシーの有する商標ライセンス権の喪失を必然とするものではない。Rejection as Rescission Approach は,365(n)条の制定に際する連邦議会の記録などからうかがえる結論ではない。むしろ,裁判所はそのxx上の理念に基づいた取り扱いによって,倒産手続きを通じた債務者の新たなスタートとともに,xxxxxxが正当に保有する商標ライセンス権をも確保すべきなのである。」
これに対して,LFAC 社は,本件商標権などについては債務者から善意の第三者たる LFAC 社に向けた売却が決定しており,そのような場合にxx上の理念を持ち出すことは妥当でないと主張したが,ニュージャージー州地区倒産裁判所は,倒産法 11 章に基づく手続きにおいて一般債権者はほとんどその配当を受けることができないのが常であって,そのような一般
債権者たるxxxxxxにさらなる負担を強いることは連邦議会が 365(n)条を制定した際の意図であったとは想定しがたいとした。また,LFAC 社は,仮にライセンシーが商標ライセンス権を引き続き有するとするならば,LFAC 社は Naked License を回避するべく当該商標権に関する品質管理義務を負うことになるが,LFAC 社にはそのような能力はないとも主張した。しかし,ニュージャージー州地区倒産裁判所は,ライセンサーの要求する品質水準に沿わない商品の販売はライセンシーにとっても商標権侵害または不正競争といった問題を生じさせることになりかねないから,ライセンシーによる自発的な品質管理が期待できるとし,当該主張についても受け容れなかった。
(4) Sunbeam 事件
Sunbeam 事件は,Lakewood Engineering & Manufac- turing(以下,「Lakewood 社」という)が,送風機に関する Lakewood 社の特許権および商標権のライセンス権を Chicago American Manufacturing, LLC
(以下,「CAM 社」という)に付与するため,2008 年に締結したライセンス契約に関するものである。2009年,Lakewood 社の債権者は倒産法 11 章に基づいた倒産手続きの開始を申し立て,裁判所による任命を受けた管財人は Lakewood 社の保有する特許権および商 標 権 な ど を Sunbeam Products, Inc.( 以 下,
「Sunbeam 社」という)に売却することとした。ところが Sunbeam 社は CAM 社が Sunbeam 社の競合企業であることなどを理由として,CAM 社との間で当該ライセンス契約が維持されることを望まなかった。そこで,管財人が 365(a)条に基づき当該ライセンス契約の履行を拒絶したところ,本論点が争点となった。
イリノイ州北部地区倒産裁判所は,Ambro 裁判官の補足意見に着目したうえで Equitable Approach を採用した。つまり,CAM 社が Lakewood ブランドの送風機を製造するために多額の投資を行っている事実をふまえ,xx上,当該ライセンス契約を存続させるべきであると判断したのである(32)。
Sunbeam 社による控訴を受けた第七巡回区控訴裁判所も当該ライセンス契約を存続させるべきであるとしたが,それは,365(g)条における契約の履行拒絶の効果をふまえ,商標ライセンス契約のライセンシーにライセンス契約上の権利の存続を認める見解
(Rejection as Breach Approach)を採用したうえでの判断であった。その要旨は次のとおりである(33)。
「365(n)条が商標権について規定していないこと自体は本論点の帰趨を決定するものではない。連邦議会の記録からしても,連邦議会が 365(n)条に商標権を含めないとしたことは,Lubrizol 事件の追認を意味しないことは明らかである。また,イリノイ州北部地区倒産裁判所においてはxx上の理念に基づいた判断を行っているが,xx上の理念は法律上の規定に優先するものであってはならない。そこで 365(g)条についてみると,365(a)条に基づく管財人による契約の履行拒絶は債務者の未履行義務との関係から当該契約の違反を構成すると規定しており,それは他方当事者から債務者に対する損害賠償請求権へと転じることは理解できる。しかし,それ以上に,債務者の未履行義務以外との関係において,他方当事者の当該契約上有する権利が喪失するものと理解することはできない。倒産手続き以外の場面においても,ライセンサーによる契約違反をもって,ライセンサーがライセンシーの有するライセンス権を喪失させることは認められていない。倒産手続きにおいては契約上の関係を解消する手段として管財人に否認権が与えられている。契約関係の解消という否認権の行使と同視しうる効果を 365(a)条に基づく契約の履行拒絶に付与することを倒産法が予定しているとは考えられない。したがって,管財人による当該履行拒絶は,以降,債務者が当該契約の義務の履行から免れることを意味するのみであって,当該契約のもとすでに付与された権利を喪失させるものではない。」
7.Tempnology 事件―事件の概要および最高裁判所判決に至るまでの経緯
本論点についての見解が商標ライセンシーのライセンス契約上の権利を喪失させるという見解(Rejection as Rescission Approach)と商標ライセンシーのライセンス契約上の権利は(ライセンサーから提供済みの範囲において)存続するという見解(Equitable Ap- proach または Rejection as Breach Approach)に分かれる中,Tempnology 事件が生じた。
Tempnology, LLC(以下,「Templonogy 社」という)は “Coolcore” というブランド・ネームのもと,運動時においても涼しさを保持できる素材を開発し,その素材を用いたタオル・ソックス・ヘッドバンドな
どを取り扱う会社であった。2012 年,Tempnology社はMission Product Holdings Inc.(以下,「Mission社」という)との間で “Coolcore” を含むライセンス契 約 を 締 結 し た。 す な わ ち,Tempnology 社 は Mission 社に向けて,米国内における Tempnology 社の “Coolcore” 商品の独占的販売権,および,米国を含む全世界における “Coolcore” の非独占的ライセンス権などを付与したのである。2015 年,Tempnology社は倒産法 11 章に基づく倒産手続き開始の申立てを行ったうえで,“Coolcore” などを第三者に売却するべく,ニューハンプシャー州地区倒産裁判所に,365
(a)条に基づく当該ライセンス契約の履行拒絶に関する承認を求めた。そこで,Mission 社は,当該履行拒絶は Mission 社が有する当該契約上の権利を否定するものではないとして争った。これら争点のうち, “Coolcore” の非独占的ライセンス権の取り扱いをめぐる最高裁判所に至るまでの経緯は次のとおりである。
(1) ニューハンプシャー州地区倒産裁判所
ニューハンプシャー州地区倒産裁判所は Rejection as Rescission Approach を支持し,Mission 社は当該ライセンス契約xxしていた “Coolcore” の非独占的ライセンス権を喪失したと判断した(34)。365(n)条は意図的に商標権をその対象から除いたものであり,また,連邦議会も商標ライセンス契約についてはライセ ン シ ー を 特 別 に 保 護 し て い る「Intellectual Property」と同じ取り扱いを行う趣旨ではなかったと理解したのである。
(2) 第一巡回区倒産上訴部
Mission 社による控訴を受けた倒産上訴部は,ニューハンプシャー州地区倒産裁判所の判断を覆し, Mission 社は当該ライセンス契約によって付与された “Coolcore” の非独占的ライセンス権を引き続き有すると判断した(35)。Rejection as Breach Approach を採用したのである。
まず,Rejection as Rescission Approach については,365(n)条に商標権が含まれていないことは 365
(n)条の適用が商標権にはないこと以上を意味するものではないとして否定した。次に,365(g)条における契約の履行拒絶の効果を基礎として本論点の解決を図る(Rejection as Breach Approach を採用し
た )Sunbeam 事 件 を 支 持 し つ つ,Equitable Approach について,「裁判官はxx上の理念をもって法の内容を変更してはならない」との原則などに反するとして否定した。
(3) 第一巡回区控訴裁判所
Tempnology 社による上訴を受けた控訴裁判所は,倒産上訴部による判断を覆し,Mission 社は当該ライセンス契約によって付与された “Coolcore” の非独占的ライセンス権を喪失したと判断した(36)。Rejection as Rescission Approach を採用したのである。
まず,Equitable Approach については,連邦議会上院の記録がxx上の理念を念頭に入れていること自体は否定しないものの,当該理念はすでに倒産法のさまざまな規定に反映されているとした。また,仮に Equitable Approach を適用する場面があるとしてもそれは Equitable Approach が適用された結果生じる債務者の負担が僅少である場合に限られるべきであり,本事件のように債務者が商標権者として品質管理義務という負担を負う場面には妥当しないとした。当該管理義務を継続させることは,債務者をExecutory Contract に基づく負担から解放するという倒産法の趣旨にかなわないと判断したのである。控訴裁判所は,Rejection as Breach Approach との関係においても当該管理義務を強調した。すなわち,Sunbeam事件において控訴裁判所がライセンシーの有するライセンス権を存続させつつ債務者を商標ライセンス契約に基づく継続的な義務の履行から解放することは可能であると格別の理由を示すことなく判断したことを強く否定したのである。
8.Tempnology 事件―最高裁判所判決
第一巡回区控訴裁判所の判決を受け,Mission 社は,最高裁判所による判断を求めて裁量上訴受理(writ of certiorari)の申立てを行い,最高裁判所は第七巡回区控訴裁判所(Sunbeam 事件)と第一巡回区控訴裁判所(Tempnology 事件)との間で本論点に関する見解が分かれるという状況を解決するべく,当該申立てを受理した(37)。最高裁判所の判断は,次のとおり, Rejection as Breach Approach を支持し,Mission 社は当該ライセンス契約によって付与された “Coolcore”の非独占的ライセンス権を引き続き有するとのものであった(38)。
(1) 365(g)条と 365(n)条との関係について
365(g)条は,Executory Contract の履行拒絶は倒産手続き開始の申立て直前の日に Executory Contract との関係における「breach」が生じたものと構成する。倒産法は「breach」の定義を規定していないところ,連邦議会は,倒産法上の各文言について,伝統的に形成された定義に基づいて解釈することを意図している。そこで,「breach」の定義については契約法を参考として解釈すべきである。この点,契約法において一方当事者による「breach」があった場合,他方当事者にはふたつの選択肢がある。ひとつは契約違反に伴う損害の賠償請求を行いつつ契約関係自体は存続させるものであり,もうひとつは契約違反に伴う損害の賠償請求を行いつつ契約関係自体は終了させるものである。しかし,これらの選択肢はあくまで(契約違反の被害者である)他方当事者に与えられているものであって,契約違反の当事者に与えられているものではない。契約違反の当事者が当該契約関係を解消できる場面は存在しないのである。そしてこれらを倒産法上の問題に置き換えた場合,債務者は未履行の義務についてはその履行を拒絶できるものの,すでに履行した義務,すなわちすでに付与されたライセンス権を喪失させることはできない。翻っていえば,xxxxxxはすでに付与されたライセンス権を引き続き有するのである。
もしも Rejection as Rescission Approach のもと,契約違反の当事者たる管財人が当該契約関係を解消できるとするならば,それは実質的に否認権を行使した状態と同一視できる。しかし否認権については,たとえば倒産財団の資産を減少させるような対価性のない取引が行われた場合など,限られた場合にのみその行使が認められているのである。
また,Tempnology 社は,(365(n)条・101(35A)条などの対象である)特定の契約類型については,管財人による契約の履行拒絶があった場合においても他方当事者の契約上の権利が存続する旨を規定しているところ,商標ライセンス契約はそれら契約類型に含まれていないことを指摘し,それは商標ライセンス契約については異なった解釈(すなわち当該契約関係は解消される旨の解釈)が行われることを示唆しているとする。しかし,半世紀にわたって制定されてきたそれら規定は,むしろ管財人による契約の履行拒絶後もなお当該契約上の権利が存続することを明確化するた
め,立法機関が直面した課題に都度対応してきた結果なのである。たとえば 365(n)条は Lubrizol 事件を受けてライセンシーによる特許ライセンス権の存続を確認するべく用意された規定である。したがって, Tempnology 社の指摘するような解釈を示唆する事情は見当たらない。
(2) Naked License との関係について
Tempnology 社は,商標ライセンス権の対象商品の品質管理義務という商標法独特のルールについてふれる。Tempnology 社によると,商標ライセンス契約におけるライセンシーが引き続きライセンス権を有するならば,ライセンサーは当該管理義務の履行のために多大な出捐を要求されることになるし,さもなくば,当該商標権の価値を喪失することになると指摘する。しかし,一方でTempnology 社は,商標権は 365(n)条のような特別規定の適用対象ではないから,そのほかの権利全般とともに 365 条の一般規定に基づき取り扱うべきであると主張する。これら Tempnology 社の主張を総合的に理解すると,Tempology 社は一般規定の解釈を商標権独特のルールをふまえたうえで行うことを求めているといえるが,これは論理的ではない。そもそも倒産法はさまざまな利害関係者の調整を図ったうえで制定されたものである。したがって, 365 条における債務者の契約の履行拒絶については債務者を以降の契約上の義務から解放するものであるが,そのほかの法律に基づいて(倒産財団に属する)資産の所有者が負う責任すべてから解放するものではない。
9.実務上の課題
Tempnology 事件における最高裁判所判決は Rejection as Breach Approach を採用することを明らかにしたが,その論旨または補足意見から,次のような実務上の課題を挙げることができる。
(1) 商標ライセンス契約における解除権の設定
当該判決はあくまで倒産法との関係において,倒産手続きのもと商標ライセンス契約のライセンサーが行った当該ライセンス契約の履行拒絶によっては当該ライセンス契約に基づく契約関係は解消されないことを確認したものであって,倒産法以外の法との関係における契約関係の解消の可能性についてまでを判断し
たものではない(39)。したがって,契約当事者としては,当該ライセンス契約における解除条項などの規定内容について注意を払う必要がある。
(2) 商標ライセンス契約におけるライセンス権の付与当該判決は,商標ライセンス契約に基づく契約関 係はすでにライセンシーに付与された権利との関係で認められるとする。したがって,商標ライセンス契約の起案においては,xxxxxxが当該ライセンス権を(ライセンサーによる倒産手続き開始の申立て前から)保有していることが明らかとなるよう
配慮すべきである(40)。
(3) 商標ライセンス権の対価の取り扱い
商標ライセンス契約については,365(n)条の適用下にあるそのほかの「Intellectual Property」のライセンス契約とは関係なしに,そのライセンス権の存続を認めたものである。したがって,商標ライセンス権の対価の支払いについてはライセンサーによる商標ライセンス契約の履行拒絶に関して被ったライセンシーの損害との相殺が認められる可能性もある(41)。
10.まとめ
このように,Tempnology 事件最高裁判所判決は,本論点に関して,xxxxxxは当該契約の規定のとおりにライセンス権の対価を提供することをもってライセンス権を引き続き有する旨を明らかにしたものである。したがって,今後,商標ライセンス契約の当事者となる場合においては,当該判決を認識したうえで契約交渉にのぞむ必要がある。
(注・参考文献)
(1)Mission Prod. Holdings v. Tempnology, LLC, 139 S. Ct. 1652(2019).
(2)本稿は,筆者個人の分析・見解などを述べたものであって,筆者の所属する団体の分析・見解などではない。また,本稿の裁判例・参考文献などの翻訳はすべて筆者によるものであり,適宜,読み易さなどを考慮して補足なども付したうえでの意訳を行っている。
(3)11 U.S.C. § 541.
(4)11 U.S.C. § 1101, 1107.
(5)Xxxxxxx, Xxxxxx & Xxxxx LLP, You Can Reject Me, But You Can’t Vaporize Me: The Supreme Court Clarifies the Effect of Rejection of Trademark Licenses in Bankruptcy
(May 28, 2019), 1, xxxxx://xxx.xxxxxxx.xxx/xxxxx/Xxxxxxx/
Documents/Publications/5201300_1.pdf(last visited Sep. 4, 2019).
(6)11USC. § 365(a).
(7)E.g., Lubizol Enters. V. Richmond Metal Finishers, Inc., 756 F. 2d 1043, 1045(4th Cir. 1985)(“. . . the bankruptcy court properly interpreted Sec. 365 as requiring it to undertake a two-step inquiry to determine the propriety of rejection: first, whether the contract is executory; next, if so, whether its rejection would be advantageous to the bankrupt.”).
(8)E.g., NLRB v. Bildisco & Xxxxxxxx, 465 U. S. 513, 522(1984).
(9)See Xxxxx X. Xxxx, Bankruptcy and Debtor/Creditor(6th ed. 2014), 424(Xxxxxxxxxx xxの発表した定義であり,しばしば Countryman definition と呼ばれる旨を紹介する).
(10)E.g., In re Xxxxx Xxxxx, Inc., 26 B.R. 289, 294(Bankr. X. Xxxx. 1982).
(11)E.g., Lubrizol Enters ., 756 F. 2d at 1045.
(12)E.g., id. at 1046.
(13)E.g., id.
(14)取締役の判断は,彼らが当該事情を理解したうえで,xxに沿って,当該判断が会社にとって最善の利益であるとの誠実な信念のもとに行われているものと推定する原則をいう。 Xxxxxxx X. Xxxxx and Xxxxxxx X. Xxxx, Principles of Business Organizations(Jan. 2013), 263.
(15)E.g., Lubrizol Enters ., 756 F. 2d at 1046.
(16)E.g., id.
(17)11 U.S.C. § 365(g)(1)(“. . . the rejection of an executory contract or unexpired lease of the debtor constitutes a breach of such contract . . . immediately before the date of the filing of the petition.”).
(18)11 U.S.C. § 507.
(19)See Xxxx, supra note 9, at 467.
(20)11 U.S.C. § 365(n)(1). なお,365(n) 条および 101
(35A) 条(「Intellectual Property」の定義を定める) は 1998 年に倒産法に追加された規定である。
(21)11 U.S.C. § 365(n)(2).
(22)11 U.S.C. § 101(35A)(“The term ‘intellectual property’ means—(A)trade secret;(B)invention, process, design, or plant protected under title 35;(C)patent application;
(D)plant variety;(E)work of authorship protected under title 17; or(F)mask work protected under chapter
9 of title 17; to the extent protected by applicable nonbankruptcy law.”).
(23)See FreecycleSunnyvale v. Freecycle Network, 626 F.3d 509, 515-16(9th Cir. 2010).
(24)See e.g., Barcamercia Int’l USA Trust v. Tyfield Imps., Inc., 289 F.3d 589, 596(9th Cir. 2002).
(25)See FreecycleSunnyvale, 626 F.3d at 520 n.1.
(26)Lubizol Enters. V. Richmond Metal Finishers, Inc., 756 F. 2d 1043(4th Cir. 1985).
(27)Xxxxxx & Xxxxxxx, US Supreme Court Clarifies
Treatment of Rejected Trademark Licenses and Other Executory Contracts in Bankruptcy(Jun. 24, 2019), 4, xxxxx://xxx.xx.xxx/xxxxxxxXxxxxxxxxx/xxxxxxx-xxxxx- clarifies-treatment-of-rejected-trademark-licenses-in- bankruptcy(last visited Aug. 24, 2019).
(28)In re Tempnology, LLC, 541 B.R. 1, 7(Bankr. D. N.H. 2015).
(29)Mission Prod. Holdings v. Tempnology LLC(In re Tempnology LLC), 879 F.3d 389, 406(1st Cir. 2018)
(quoting S. Rep. No. 100-505, 100th Cong., 2d Sess. at 5
(1988))(“In particular, trademark . . . relationships depends to a large extent on control of the quality of the products or services sold by the licensee. Since these matters could not be addresses without more extensive study, it was determined to allow the development of equitable treatment of this situation by bankruptcy courts.”).
(30)In re Exide Techs., 607 F.3d 957(3rd Cir. 2010).
(31)In re Crumbs Bake Shop, Inc., 522 B.R. 766(Bankr. D.
N.J. 2014).
(32)Szilagyi v. Chi. Am. Mfg. LLC(In re Lakewood Eng’g & Mfg. Co.), 459 B.R. 306(Bankr. N.D. Ill. 2011).
(33)Sunbeam Prods. v. Chi. Am. Mfg., LLC, 686 F.3d 372
(7th Cir. 2012).
(34)In re Tempnology, LLC, 541 B. R. 1(Bkrtcy. D. NH 2015).
(35)Mission Prod. Holdings v. Tempnology LLC(In re Tempnology LLC), 559 B.R. 809(B.A.P. 2016).
(36)Mission Prod. Holdings v. Tempnology LLC(In re Tempnology LLC), 879 F.3d 389(1st Cir. 2018).
(37)Mission Prod. Holdings v. Tempnology, LLC, 139 S.Ct. 397(2018).
(38)Mission Prod. Holdings v. Tempnology, LLC, 139 S. Ct. 1652(2019). なお,最高裁判所の判決は 8 対 1 の多数決に基づいており,1 名の補足意見および 1 名の反対意見が示されている。もっとも,反対意見についても,その根拠は,当該商標ライセンス契約の有効期間はすでに失効しているため本
論点を判断する必要がないなどといった本論点とは直接の関係を有さないものによっている。
(39)See Mission Prod. Holdings, 139 S. Ct. at 1666(2019)
(8-1 decision)(Xxxxxxxxx, concurring); see also Brief of the American Intellectual Property Law Association as Amici Curiae in Support of Neither Party, Mission Prod. Holdings v. Tempnology, LLC, 139 S. Ct. 1652(2019)(no. 17-1657), 25.
(40)たとえば,ライセンス権の付与に関する表現などに配慮すべ き で あ る。See Imation Corp. v. Koninklijke Philips Elecs. N.V., 586 F.3d 980(Fed. Cir. 2009)(ライセンス契約における「[Philips] “agrees to grant and does hereby grant to [Imation] and its Subsidiaries a personal, non-exclusive, indivisible, nontransferable, irrevocable, worldwide, royalty-free license under Philips Licensed Patents to make, have made, make for others, use, lease, distribute, offer to sell, sell, import, or otherwise dispose of Licensed Products.”」との規定のうち,「agrees to grant and does hereby grant」との表現に着目して,(将来ライセンサーが保有することになる発明を含む)特許権などに関するライセンス権を当該ライセンス契約の締結をもって直ちに付与したも の で あ る と 解 釈 し た 事 案 ). But see Szombathy v. Controlled Shredders, 1997 U.S. Dist. LEXIS 5168(Bankr. N.D.Ill. 1997)(破産手続き開始の申立てを行った後の債務者の発明については破産財団ではなく債務者に帰属することを確認した事案).
(41)See Mission Prod. Holdings, 139 S. Ct. at 1666(8-1 decision)(Xxxxxxxxx, concurring). Cf. 11USC. § 365(n)
(2)(C)(i)(“If the licensee elects to retain its rights, as described in paragraph(1)(B)of this subsection, under such contract” . . . “the licensee shall be deemed to waive” . . . “any right of setoff it may have with respect to such contract under this title or applicable nonbankruptcy law”.).
(原稿受領 2019.9.7)