Contract
ドイツにおけるM&A法務の実務
企業買収・売却の法的手続きおよび契約内容
ミュンヘン日本人会セミナー
2019年7月11日
アーキス法律事務所
xxxx(ドイツ弁護士・パートナー)
xxxxx・xx(ドイツ弁護士・パートナー)
現在位置
1. はじめに
2. 契約交渉段階
3. シェアー・ディール
4. アセット・ディール
5. 契約内容
6. M&Aのその他の手法
7. そ の 他
8. ま と め
注: 本セミナー資料にはドイツ法に関する一般的な情報が含まれています。それは法律相談を意味するものではなく、また個別の法律相談に代わるものでもありません。とくにここに含まれる情報の的確性、適切性、完全性については責任を負いかねますのでご了承下さい。
アーキス法律事務所のご紹介
3
• 2006年1月に設立
– 設立パートナーは大手国際法律事務所出身
• 事務所
– デュッセルドルフ
– 東京
– ミュンヘン
• 弁護士数50名(内パートナー15名)
• 幅広いネットワーク
– 世界各国の弁護士事務所と提携
− 法務アドバイスをパッケージすることにより窓口を一本化
− ワンストップサービス
– 各案件に応じてチームを柔軟に編成
• 主な業務分野
プロジェクト関連
M&A・ジョイント・ベンチャー
日系企業によるドイツ案件のサ ポート実績に関しては添付資料(1
40ページ以降)をご参照ください
企業再編
一般企業法務
会社法
商法
労働法
データ保護法
不動産法
知的財産保護法
訴訟・紛争解決
法務コンプライアンス
• ジャパン・デスク(デュッセルドルフ事務所)
– 日本語対応のローヤー7名
• デュッセルドルフ: 6名(ドイツ弁護士5名、日本弁護士有資格者1名)
• ミュンヘン: 1名(ドイツ弁護士)
– 法律事務所のジャパンデスクとしてはドイツ最大級
– ドイツ法に関する専門的なアドバイスを直接日本語で提供
– おもに日本企業のドイツにおけるサポート
– 使用言語: ドイツ語、英語、日本
• アーキス外国法事務弁護士事務所(東京事務所)
– ドイツおよび日本の弁護士で構成
そのうちドイツ弁護士5名
– TMI総合法律事務所との外国法共同事業
弁護士380名
弁理士65名
Dr. Xxxxxx Xxxxxxxxx
経歴
1971年生まれ、2000年ドイツ弁護士登録
職歴
2000~2005: xxxx・xxxxxxx&パートナー法律事務所
2006~: アーキス法律事務所(デュッセルドルフ) 、設立パートナー
学歴
ミュンヘン大学法学部卒。デュッセルドルフ大学法学部にて学位取得。
その他フライブルク大学法学部、東京大学社会科学研究所(客員研究員)で学ぶ。司法修習: ミュンヘン高等裁判所、ニューヨーク国際弁護士事務所等
在デュッセルドルフ日本商工会議所・法務委員会・専門委員
主な業務分野
M&A、ジョイント・ベンチャー、会社法
言語
日本語、ドイツ語、英語
Dr. Xxxxxx Xxxxxxxxx, Partner
8 T: x00 000 00000-000
Dr. Xxxxx Xxxxxxxx
経歴
1979年生まれ、2010年ドイツ弁護士登録
職歴
2002~2009: フライブルグ大学国際私法研究室研究員
2010~: アーキス法律事務所(デュッセルドルフ)
2013: Sojitz Europe plc 法務部(ロンドン)に出向
学歴
1998~2004: フライブルグ音楽大学ピアノ科卒
2000~2005: フライブルグ大学法学部卒
2005~2007: ロンドン、ベルリン、フライブルグにて司法修習
2007~2010: フライブルグ大学法学部博士課程、京都大学に研究者として一年間滞在
2012: 博士号取得
主な業務分野
M&A、ジョイント・ベンチャー、会社法、商法
言語
ドイツ語、英語、日本語
Dr. Xxxxx Xxxxxxxx, Partner
>>
9 T.: x00 00 000000-000
1. はじめに
2. 契約交渉段階
3. シェアー・ディール
4. アセット・ディール
5. 契約内容
6. M&Aのその他の手法
7. そ の 他
8. ま と め
注: 本セミナー資料にはドイツ法に関する一般的な情報が含まれています。それは法律相談を意味するものではなく、また個別の法律相談に代わるものでもありません。とくにここに含まれる情報の的確性、適切性、完全性については責任を負いかねますのでご了承下さい。
• 「M&A」=企業の合併・買収(Mergers & Acquisitions)
• 日系企業によるドイツにおけるM&Aは2000年頃から増え、
2009年/2010年は金融危機の影響で低水準となるが、
2011年(震災)以降は増加傾向
• 2019/2018年の例
− 京セラによるドイツの部品メーカー、フリアテックからのセラミック事業の買収(2019年)
− 住友電工による焼結部品メーカーSinterwerke Herne(ドイツ)とSinterwerke Grenchen(スイス)の買収(2019年)
− 三協立山によるAluwerk Hettstedtからの棒材鋳造事業の買収(2019年)
− 京セラによるセラミック製品の製造・販売を行うH.C. Starck Ceramicsの買収(2019年)
− 浜松ホトロニクスによる通信測定向けのレーザーの製造販売会社Menlo Systemsへの出資(2
019年)
− 構造計画研究所による屋内デジタル化プラットフォームを提供するNavVis GmbHへの出資(20
18年)
− JX金属によるタンタル・ニオブ製品(高純度金属粉)メーカーのH.C.Starck Tantalum and Niobiumの買収(2018年)
− xx製作所によるターボ分子ポンプのサービスを手がけるinfraserv Vakuumserviceの買収
(2018年)
• ディールの規模
– ネガティブな買収価格から4000億円の事例までさまざま
– 多いのは2桁および1桁ミリオン・ユーロの中小規模の買収
> とくにオーナー系企業の買収
• 対象会社の事業分野
– 多岐にわたるが製造業が中心
• 対象会社の所在地
– 旧西ドイツが中心
• 対象会社の形態
– 圧倒的に有限会社(GmbH)が多い
• ドイツの会社の魅力
– 市場自身
– 高い技術力
– 質の高い労働者
– 東欧への窓口
– 法的・政治的安定性
• 『トレンド・トピック』
– オークションへの参加の増加
> 特にバイサイド
– 表明保証保険(W&I(Xxxxxxxx & Indemnity Insurance))の活用
> 活用例:売主がPEファンドの場合等
> 注:税務・環境に関する補償(indemnification)、買主が認識している具体的なリスク等には原則として適用なし
– 売却の事例
> xx電機によるトランスメーカーMarschner GmbH & Co. KGの売却 (2018年)
> マニーによる歯科用器材を販売するドイツ子会社の Schütz Dental の売却(2018年)
• 『トレンド・トピック』(続)
– ドイツ連邦経済エネルギー省(BMWi)への届出
> ドイツの公的秩序および安全が脅かされる危険がある場合、経済エネルギー省が取引を禁止することが可能
– 倒産会社からの事業買収(例)
> xx合成による倒産した自動車部品メーカーのメテオールからのゴム部品事業の取得
(2014年)
> xxグループによる倒産したBBS社のモータースポーツ部門およびBBSブランドのホイール商標権の買収(2011年)
• 対象会社の形態
– 圧倒的に有限会社(GmbH)が多い
• ドイツにおける形態別企業数(2016年12月31日現在)
– 有限会社 | 1,219,452 | 80% | |
– 合資会社 | 263,108 | 17% | |
– 合名会社 | 23,815 | 2% | |
– 株式会社 | 15,137 | 1% | |
– 参考までに | |||
> 個人企業 | 2,158,708 |
• 株式会社(Aktiengesellschaft, AG)
– 最低資本金は5万ユーロ
– 株主の義務は、株式の引受価額を出資することのみ、会社債権者に対しての責任は負わない
J KK
J AG
– 組織
> 株主総会
> 監査役会
> 取締役会
株主総会
選任・解任
監査役会
選任・解任監督権
取締役会
• 有限会社(Gesellschaft mit beschränkter Haftung, GmbH)
– 最低資本金は2万5千ユーロ
– 社員は有限の間接責任を負う、それぞれの出資額が限度
– 簡単な組織
> 社員総会
> 特別決議は投票数の75%以上
> 取締役(各自共同または単独の代表権をもつ)
> 代表権をもたない取締役はいない
社員総会
J KK
J GmbH
選任・解任指示権
取締役
• 有限会社(Gesellschaft mit beschränkter Haftung, GmbH)
– オンライン商業登記簿にて確認可能(例)
> 登記事項(商号、所在地・住所、会社の目的、取締役等)
> 定款
> 社員(株主)構成
> 簡易決算書
• ドイツ有限会社の社員(株主)の法律上の権利
注:特に記載がない場合は、ドイツ有限会社法の条文による。大抵の場合において、多数決要件は、定款の定めによって変更が可能である。
以下の事項に関する最低比率 | |||
基本資本金 | 総会における投票数 | 法的根拠 | 社員の権利 |
> 10% | 第50条1項 | 総会の招集 | |
> 10% | 第50条2項 | 総会決議の目的事項通知の要請 | |
> 10% | 第61条2項 | 重大な理由がある場合に会社を解散させる訴訟の提起 | |
> 10% | 第66条2項 | 重大な理由がある場合に裁判所に精算人を選任させる申請 | |
> 25% | 特別決議を阻止できるブロッキング・マイノリティー(少数阻止勢力)。投票数の75%以上を必要とする事項は以下をご参照 | ||
> 50% | 第47条1項 | 社員決議における原則: 投票数の過半数が必要。 例えば取締役の選任及び解任、年次決算書の承認、利益の処分等 |
以下の事項に関する最低比率 | |||
基本資本金 | 総会における投票数 | 法的根拠 | 社員の権利 |
> 75% | 第53条2項 | 定款変更(商号および所在地変更、増資等も含む) | |
> 75% | 第57c条4項 | 準備金の基本資本金への転換 | |
> 75% | 第60条1項2号 | 会社の解散 | |
> 75% | ドイツ組織変更法 第50条1 項 、同法第56条 | 会社の合併 | |
> 75% | ドイツ組織変更法第125条 | 会社の分割 | |
> 75% | ドイツ組織変更法第240条 | 他の資本会社(例えば株式会社)への組織変更 | |
> 75%及び合資会社の無限責任社員になる全社員の同意 | ドイツ組織変更法第233条2項 | 合資会社への組織変更 | |
100%及び欠席した全社員の同意 | 同法第233条1項 | 合資会社以外の人的会社への組織変更、例えば合名会社、民法上の組合等への組織変更 |
• 共同出資の場合
– 合弁会社(GmbH)におけるガバナンス
株主J
株主D
株主間契約
取締役提案権:J1、J2
取締役提案権:D
選任・解任
xxxxxxx・xxx(顧問会)
• 設置は任意
• 対象会社の取締役は利益相反の観点から兼任は原則不可
xxxxxxx・xxx
顧問、事前承認等
選任・解任
取締役J1
取締役J2 取締役D
• 合名会社(Offene Handelsgesellschaft, OHG)
– 2名以上の無限責任社員から成る「会社」
– 実態は民法上の組合
– 社員は会社債務者に対し無限の直接責任を負う
• 合資会社(Kommanditgesellschaft, KG)
– 二種類の社員からなる合名会社(oHG)の一変形
> 無限責任社員 (Komplementär, general partner)
会社の代表権および業務執行(経営)権
> 有限責任社員 (Kommanditist, limited partner)
債務者に対し直接責任を負うが、出資額が限度
– 税務上の理由からオーナー系の会社の形態として選択されることが多い
> 合資会社は人的会社として法人税の対象外なので、社員は合資会社からの欠損(または所得)と他の源泉からの所得(または欠損)とを相殺できる(パス・スルー)
• 有限合資会社(GmbH & Co. KG)
– 有限会社が無限責任社員になっている合資会社
– 例:
> Mr AはKGの有限責任社員およびA-GmbHの社員である
> A-GmbHはKGの無限責任社員であるが、有限会社なのでMr AのA-GmbHの社員としての責任は有限である
> 結果としてMr Aの責任は有限である
Mr A
有限責任社員
A GmbH
無限責任社員
A GmbH & Co. KG
• 契約の主体はGmbHではなくあくまでGmbH & Co. KG
• 署名欄:„A GmbH & Co. KG,
represented by its general partner A GmbH, represented by its managing director X“
MD X
• 有限合資会社(GmbH & Co. KG)(続)
– 個人の無限責任を避けながら、KGの人的会社としての税務上のメリットを活用することができるので、特にオーナー系の会社で広く利用されている
– 日系企業によるドイツ子会社としての活用例はほぼないが、ドイツにおけるオーナー系企業の買収の場合に対象会社の形態としてしばしばある
• 買主のタイプ
– 日系企業が買主の場合おもに戦略的目的の事業会社(strategic buyer, industrial buyer)
• 売主のタイプ
– 事業会社からファンドまでさまざま
• 目的
– 戦略的目的
> EU市場進出の足がかり
> 顧客の獲得・シェア-の拡大
▪ 例:対象会社が大手カーメーカーのアカウントをすでに有する
> 販路・チャネルの拡大
> 技術
> 資材供給の確保
> 商品及びサービスの拡充
> 事業ポートフォリオの拡充
> 注:上記の目的の一部は子会社の設立でも達成することは可能だが、M&Aにおいては
「時間」を買える利点がある。判断基準はケース・バイ・ケース
– 特定資産の取得(日系企業による事例は稀)
– 対象会社を再編し再び売りに出す(日系企業による事例はほぼない)
• いつM&Aになるのか
– 関係者からの打診、関係者へのアプローチ
> 取引関係にある会社
> 対象会社のマネージメント・株主と交流
– 銀行・アドバイザーからの情報提供
– オークションへの参加
– 新聞報道等
• M&Aの手法による分類
– 持分の取得
> 株式市場での買い集め(上場会社の場合)
> 公開買付(上場会社の場合)
> 新株・持分の引き受け
対象会社に資金が入るスキーム
シェア-・ディール(売主に資金が入る)とのセットで行われる場合もある
> 相対取引(シェア-・ディール)
– 特定財産の取得(アセット・ディール)
– 組織再編法(Umwandlungsgesetz)に基づく手法
• セミナーの重点は日系企業によるドイツ企業買収でもっともよくつかわれるシェア-・ディール(約75%)およびアセット・ディール(約20%)
– 公開買付は5%以下
1. はじめに
2. 契約交渉段階
3. シェアー・ディール
4. アセット・ディール
5. 契約内容
6. M&Aのその他の手法
7. そ の 他
8. ま と め
• 現地法人の関与
– 案件のイニシアチブ
– 契約当事者(買主)
– 現地法人の機能、所属事業部
• 駐在員の役割
– 情報収集(対象会社のリストの作成、アドバイザーの選択等)
– コーディネーション
– 社内担当チームの一員としてDD・契約交渉への参加
• チーム
– 社内担当チーム
> M&A経験者がいるとベター(例えば法務部)
– 弁護士
– 会計士
– 税理士
– ファイナンシャル・アドバイザー(FA)
– その他環境コンサルタント、HRコンサルタント、ビジネス・コンサルタント等
• アドバイザーの有効的な活用法
– いつ依頼xxxx
> 実務上よくあるのは秘密保持契約またはLOI締結後
> アドバイス:原則として遅くてもLOI交渉時(オークションの場合は、1次ビッド提出時)に依頼すること
– 弁護士
– 会計士
– コスト節約のためにメリハリを利かせて活用
• 例:翻訳等は外注又は社内で処理し、適宜アドバイザーにレビューをしてもらう
• コンフリクト・チェック
• 共通のプロジェクト・ネーム
• タイムテーブル
– 現実的な計画
– 社内手続きのタイミング(経営会議、取締役会議等)を考慮
– ドイツでは、イースター、夏休みシーズン(州によって異なる)、クリスマスは動きが鈍くなることに留意
• 契約交渉段階における典型的な手続
– 秘密保持契約(2.2)
– レター・オブ・インテント(2.3)
– その他の交渉段階での「契約」(2.4)
– デュー・ディリジェンス(2.5)
• オークションにおける手続の特徴(2.6)
• 売却の場合の留意事項(2.7)
• ドイツの契約交渉の特徴(2.8)
• その他(2.9)
• 概念: 「Non-Disclosure Agreement」、「Confidentiality Agreement」
• 締結時期
– 契約交渉の初期の段階、通常M&A取引における最初の契約
– オークションにおいては対象会社のインフォメーション・メモランダム(information memorandum、「IM」)開示前
• 法的保護の不充分性
• 目的と機能
– 主に売主の保護:対象会社の秘密情報が第三者に開示される又は契約交渉とは異なる目的で使用されることの防止
– 売主と買主の保護:契約交渉自体が第三者に開示されることの防止
> 売主の立場:市場の混乱、従業員の士気への影響の恐れ
> 買主の立場:競合者による対抗手段の恐れ
• 形態:個別の契約(一般的)又はレター・オブ・インテントの一部
• 秘密保持契約の欠如
– 交渉の開始によって所謂「契約締結前の信頼関係」(vorvertragliches Vertrauensverhältnis)なる法的関係が発生する
> 原則:秘密保持義務
> 開示が許される例外:合理的理由がある場合(例:銀行との融資の交渉等)
– 注:契約締結前の信頼関係に基づく秘密保持義務の範囲は定かではなく、個別の件によって異なる可能性がある
> アドバイス: 秘密保持契約の締結
• 典型的な契約内容
– 定義、特に秘密情報の定義
> 開示されるあらゆる情報
> 「秘密」(confidential)として開示される特定な情報
– 情報開示義務
– 秘密保持義務及びその例外
– 書類等の返却又は破棄義務
– 違約金
– 秘密保持義務の継続期間
– 準拠法、裁判管轄条項又は仲裁条項
• 概念:「Letter of Intent」(以下「LOI」)
• 締結時期
– 対象案件の主要事項に関する当事者間の了解が得られた時点
– M&A取引における重要な区切り
> 主要事項に関する交渉の終了
– 契約対象
– 譲渡価格等
> 通常LOI締結直後にデュー・ディリジェンスが行われる
• 形式
– 契約:売主、買主の両当事者が署名
– 買主によるレター
• 目的と機能
– 交渉内容の確認
– 誠実交渉義務
> LOI締結後、最終契約(Definitive Agreements)の締結に向けて誠実に交渉する義務
> 法的拘束力はない、道徳的拘束力のみ
– 法的拘束力を有する条項(デュー・ディリジェンスの実施、秘密保持、優先交渉権の確保等)
– 最終契約をドラフト、交渉する際のガイドライン、解釈の補助的基準
– 注: LOIの道徳的拘束力は強力
• 典型的な契約内容
– 主要事項に関する合意(契約対象、譲渡価格等)
> 価格算定方式
– 課題事項
– タイム・フレーム
– デュー・ディリジェンス
– 秘密保持(別途締結されていない場合)
– 条件
• 典型的な契約内容(続)
– 優先交渉権
> 優先交渉権
> 優先締結権
> 売主からの一時金の支払い要求
– 費用の分担、ブレイク・フィー
– 準拠法、裁判管轄条項又は仲裁条項
• アドバイス:アドバイザーの早期関与
• MOU (Memorandum of Understanding)
– LOIとの比較
> 交渉内容の確認という点ではLOIと似ている
> しかし、誠実交渉義務および法的拘束力を有する条項の欠如
• ターム・シート(Term Sheet)
– 特にジョイント・ベンチャー、ベンチャー・キャピタルにおいて
• 議事録(Minutes)
• 仮契約(Vorvertrag)
– 注:通常は最終契約(Definitive Agreements)を締結する義務あり
• オプション契約(Optionsvertrag)
• 枠組み契約(Master Agreement、Framework Agreement)
– 活用例:数カ国において個別のLocal SPAまたはLocal APAを締結する必要がある場合
• 概念
– 「Due Diligence」(直訳:相当の注意)
– 対象会社の内容の精査
• 主な種類
– リーガル・デュー・ディリジェンス
– 会計デュー・ディリジェンス
> 注:企業価値評価(Valuation)とは別
– 税務デュー・ディリジェンス
– ビジネス・デュー・ディリジェンス
– 環境デュー・ディリジェンス
– 人事デュー・ディリジェンス
• 買主によるリーガル・デュー・ディリジェンスの主な目的
– 法的リスクのチェック
> 取引遂行の是非の決定
– 弊所の経験:リーガル・デュー・ディリジェンスのファインディングがディール・ブレーカーになることは稀
> 取引条件の決定
> 表明保証条項および補償条項の内容の決定
– 金融機関、保険会社に対する情報
– 買主のマネージメントの免責
– 売主によるリーガル・デュー・ディリジェンス(Vendor Due Diligence)の目的
– 売却前に対象会社の弱点を発見し克服する
– 取引条件、譲渡価格の裏付け
– オークションにおいて
> インフォメーション・メモランダム(IM)またはファクトブックの基礎資料
• 3段階:①準備、②実行、③報告段階
• ①準備段階
– 範囲と期間の決定
– スタッフィングの決定
> 対象会社が同業者の場合、競争法違反にならないよう注意
売主の対応 | 買主の対応 |
価格・顧客情報を削除又は塗りつぶした上で開示 | 事業担当者も閲覧可能 |
価格・顧客情報を一般的な資料と分けて「クリーン・ルーム」において別途開示 | アドバイザー等の第三者のみによる閲覧 事業担当者を除いた「クリーン・チーム」による閲覧 「クリーン・レポート」を別途作成 |
– 資料リストの作成(Due Diligence Checklist)
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)
– 会社の組織
> グループ組織図、株主・社員構成(株式・持分に関する譲渡制限、担保等に関する情報)、商業登記簿、定款、過去のxx証書(設立、増資、持分譲渡関連)、取締役会内規、議事録(株主・社員総会、取締役会)等
> 過去の持分又は資産譲渡に関する契約書(chain of title)
> ファインディング(例):
資料不足によりchain of titleを完全に把握できない
対象会社の持分に銀行の担保が設定されていた
グループ会社が倒産手続中
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)
– 労働法関係
> 従業員のリスト(年齢、雇用形態(正社員、アルバイト等)、職種、資格、勤続年数、年収、インセンティブ等)、雇用契約(雛型も含む)、集団契約(労働協約(Tarifvertrag)、事業 所協定(Betriebsvereinbarung))、企業年金制度、取締役との契約、事業所委員会に 関する情報等
データ保護の観点から従業員関連の資料は匿名化される
> ファインディング(例):
取締役の契約におけるtransaction bonusの規定
親族間雇用:給与は支給されるが実態のない「雇用」
形はフリーランサー契約(仕事の時間等をフリーランサーがある程度自由に決めることができる)だが実態は主従関係のある雇用関係(社会保険料の追徴リスク)
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– 資産
> 不動産(土地登記簿謄本)
> 重要動産のリスト及び動産に対する担保
> ファインディング(例):
所有者であるはずの対象会社が土地登記簿に登記されていない
対象会社の工場が所在する土地に抵当権が設定されていた
対象会社に不要な親族所有の土地に関する親族者有利の賃貸契約
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– 知的財産権・競争法・独禁法関係
> 知的財産権の一覧表、ライセンス契約、ドメイン・ネーム
> 不正競争法・独禁法上の手続、同法上問題がありそうな行動・協定(特殊な宣伝、価格協定、市場分割協定等)
> ファインディング(例):
対象会社の特許が無効手続の対象になっている
対象会社製品が他社の特許を侵害したとして侵害訴訟に巻き込まれてる
ドメインが対象会社ではなくオーナー名義で登録されている
従業員発明に関する対価の支払いが不明
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– 重要な契約
> 顧客との契約(販売約款を含む)、サプライヤー契約(買い入れ約款を含む)、販売仲介者との契約(代理商契約、代理店契約等)、技術援助・研究開発契約、ジョイント・ベンチャー契約、賃貸・リース契約、関連会社との契約等
> 価格・顧客情報に関する留意点(クリーン・チーム等)は上記をご参照
> 注:特に契約期間、解約条件、瑕疵担保・保証、Change in Control条項(シェアー・ディール)
> ファインディング(例):
もっとも重要な顧客との契約にChange in Control条項
対象会社と非対象会社による連帯債務(グループ・クレジットライン等)
顧客との契約に法外な違約金の規定
対象会社自身が当事者となっている(関連会社の)ジョイント・ベンチャー契約における様々なオプション規定(プット、コール)
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– ファイナンス関係
> 取引銀行、口座、金銭の貸し付けまたは貸り入れに関する契約、抵当権設定・担保設定・保証に関する契約
> 注:特にChange in Control条項(シェアー・ディール)
> ファインディング(例):
対象会社による非対象会社のための保証(賃貸契約の保証人等)
オーナーによる対象会社のための個人保証、個人所有の土地への抵当権の設定
(売主の問題)
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– 保険
> 保険契約の内容を記載した一覧表、過去の保険適用事例
> 親会社のグループ保険?
– コンプライアンス、行政法関連
> 法令・規則遵守
> GDPR・データ保護
> 各種許認可(営業法、建設法等)
> 補助金
> ファインディング(例):
対象会社の取締役が脱税で有罪判決を受けていた
対象会社の外国子会社の営業許可が延長されていなかった
補助金の不正利用:グループ会社Aで申請し受領した補助金で雇用された従業員が実際は別のグループ会社Bで業務していた
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– 環境
> 廃棄物・有害物質の産出・処分に関する説明資料
> 施設に関する環境関連の許認可
> 各種汚染に関する資料
> ファインディング(例):
環境関連の許認可の欠如
建築物の一部がアスベスト等の汚染物質に汚染されている
土壌汚染、地下水汚染
• 資料リスト(Due Diligence Checklist)(続)
– 訴訟及び紛争
> 系属中、解決済みまたは発生する恐れのあるすべての訴訟、仲裁またはその他一切の法的手続き(民法、刑法、行政法等)に関する説明、一覧表、判決、記録および書類等
> ファインディング(例):
継続中の訴訟でのxx万ユーロの敗訴xxx
顧客との品質問題
• ②実行段階
– 資料の準備(売主・対象会社)
> 注:対象会社で対応できる者が限定されるので相当時間がかかることに留意
– プロセスが遅れる理由のひとつ
– 資料の検討(買主)
> バーチャル・データルーム(主流)
> フィジカル・データルーム
> コピーの送付
– サイトビジット
– マネージメント・プレゼンテーション(「マネ・プレ」) 、Q&A
> 資料に関する質問
> 会社運営の実務に関する質問
• ③報告段階
– デュー・ディリジェンス・リポート
> 前文
> エグゼクティブ・サマリー(Executive Summary)
> 本文
> 添付書類
– 場合によっては別途「クリーン・レポート」も作成
– 報告会
• 売主主導の手続き
仮のオファー
(1次ビッド)
(買主)
企業概要書
(売主)
秘密保持契約 プロセス・レター/IM
(売主)
セレクション
(売主)
プロセス・レター
(売主)
デュー・ディリジェンス
(買主)
最終のオファー
(2次ビッド)
(買主)
セレクション
(売主)
プロセス・レター 交渉
(売主)
サイニング
• 匿名の企業概要書(teaser)
– 売主又はそのアドバイザー(投資銀行等)による
• 秘密保持契約
• 売主側によるプロセス・レター(process letter)
– オークション手続の概要
– 買主候補による仮のオファー(indicative offer)の期限および記載事項。例:希望価格、経営戦略、マネージメントの編成、買主候補における事前承認(取締役会の承認、株主・社員総会の承認、マージャー・コントロール)の必要性等
– インフォメーション・メモランダム(IM)
– 場合によっては最終契約のドラフト
• 買主候補による仮のオファー(indicative offer)
– 1次ビッド/ 1次入札とも言う
• 売主による第2のプロセス・レター(process letter)
– 次のステップの概要
• デュー・ディリジェンス
– 上記2.5ご参照
• 買主候補による最終のオファー(definitive offer又はbinding offer)
– 2次ビット/最終入札ともいう
– 「Definitive」、「binding」といっても法的拘束力が発生しないように書く
– 最終契約のマーク・アップを添付
– 売主はこのオファーに基づいて契約交渉相手(複数も可)を決定する
– Indicative offerでもdefinitive offerでも基本的には価格が勝負
> 例外:オーナー系会社の場合、価格より会社・事業の持続性、雇用の保護等が大事になる場合も多い
• 売主による第3のプロセス・レター(process letter)
– 交渉ラウンドへの招待
• 契約交渉
– 契約交渉相手が複数の場合
> 並行に交渉
> または特定の候補者に優先交渉権を与える
• 契約締結
• 注:全体的に迅速な意思決定が必要
• 本資料は基本的に買収・売却の両方に適用
• 当然だが買主とは逆の視点
– 優先交渉権
> できるだけ付与しない
– 価格調整
> できるだけなし(Locked Box)
– クロージングの条件
> 取引の確実性のためにできるだけ少なくし、サイニングとクロージングの間の期間を短くする
> 理想的にはサイニングとクロージングの同日開催
– 表明保証・補償
> できるだけ少なくする
– 金額的限定(cap等)
> できるだけ低く設定
– 時間的限定(時効)
> できるだけ短く設定
• 日系企業がドイツで売却する背景(例)
– 事業からの撤退
– シナジー効果が得られなかった
• 業績が芳しくないドイツ子会社の売却の課題
– 買手候補をみつけるのが困難
– みつかったとしても良い値がつかない
– 相対取引の場合交渉の立場が弱い
– 推奨:FAを起用し、オークションを実施
• xxx:相対取引で買手候補1社と交渉していたところ、足元を見られ相当不利は条件を突きつけられ交渉が難航
– FAに入ってもらい、独占交渉権消滅と同時に相対取引からオークションに移行
– 「本命」に対してcompetitive pressureをかけ状況打開
• 準備
– チーム編成(上記2.1をご参照)
– 場合によってはマネジメントにtransaction bonus等を約束し、売却に協力してもらうインセンティブを付与
> 額は売主負担として通常譲渡価格からdebtとして差し引かれる
– データルームの準備
– グループ間契約の整理
> 特に保証、連帯債務等に注意
– 場合によってはVendor Due Diligence
• 最初のドラフト(傾向)
– LOI: 買主によるドラフト
> 最初のアプローチは買主からの場合が多い
– 最終契約(SPA、APA): 売主によるドラフト
> 売主は対象会社を知っているので合理性はある
• 最終契約の最初の交渉はアドバイザーのみの場合が多い
– テクニカルおよびマイナーな点についての合意
– プリンシパルの決定が必要となる争点の洗い出し
• 高い玉を投げ合って妥協点を探すスタイル
– あまり遠慮しなくてもよい
• 注:LOI等で合意済みの点に関する再交渉のハードルは高い
• 現法の設立
– 新設または既存のペーパー・カンパニー
– どこで設立するか
– 銀行口座の開設
• 買収資金の調達
– 新設会社が買主になる場合
> 売主が日本の親会社による保証を求める場合が多い
• 対象会社自身の資金調達
• 保険
– 最終契約に関する表明保証保険
– 対象会社のクロージング後の保険
1. はじめに
2. 契約交渉段階
3. シェアー・ディール
4. アセット・ディール
5. 契約内容
6. M&Aのその他の手法
7. そ の 他
8. ま と め
3. シェアー・ディール
買収前:
D AG
= 売主
D GmbH
A事業 B事業
SPA
J GmbH
= 買主
買収後:
• 持分の相対的取引による取得
• 契約当事者は対象会社ではなく、対象会社の持ち主
D AG
= 売主
J GmbH
= 買主
D GmbH
A事業 B事業
• 契約対象は対象会社の形態による、特に有限会社の持分
(GmbH-Geschäftsanteile)
• 注:持分については株券のような有価証券はない
– 持分の譲渡は権利の売買(Rechtskauf)および譲渡(Abtretung)
• 手続
– xx証書(notarielle Urkunde)による売買・譲渡契約(Kauf- und Abtretungsvertrag, Share Purchase and Assignment Agreement, “SPA“)
> 公証人が契約を一字一句読み上げる
– 半日から一日かかる
> トピック: 費用的にドイツより安いバーゼル(スイス)の公証人によるxx証書が認められるか?(後述)
> 注:実務上は、社内決済を受けたSPAのバージョンと公証証書となった最終版は多少なりとも異なる
修正の範囲:誤字脱字の修正、規定の整合性・内容の修正、新規定の挿入等ピンからキリまで
場合によっては、サイニングが休憩をはさみ数日間にわたる、さらに、稀だが最悪の場合は案件自身がブレイクすることもある
• 手続(続)
– 委任状(POA)
> 代理人(弁護士、社内担当者等)によるxx証書(契約書)への署名も可
> 委任状の署名者
買主が日本の株式会社の場合:代表取締役
買主がドイツのGmbH(現地法人)の場合:Geschäftsführer
> 委任状の署名方法
法律上サインの認証は原則として不要
» 例外:クロージング後に基本資本金の増資を予定する場合
実務上サインの認証は必要
日本の公証人が認証する場合の留意点
» 目撃認証vs代理認証
» 更にアポスティーユが必要
> 商業登記簿謄本とそのドイツ語の認証翻訳(買主が日本の株式会社の場合)
• 手続(続)
– 譲渡価格の支払い
> 実務上の問題:クロージング日の即日入金が可能か
– 定款上の譲渡制限に注意
> 承認の必要性(取締役、社員総会の決議等)、社員や第三者の先買xx
– 売主が個人の場合で、対象持分が売主の全資産に相当する場合
> 売主の配偶者の同意が必要
– 商業登記簿への新しい社員名簿の提出
> 公証人の義務
譲渡価格 (百万ユーロ) | ドイツ 単位:ユーロ | バーゼル 単位:スイスフラン(ユーロ) |
1 | 3114 | 2340(2060) |
3 | 9114 | 3420(3000) |
5 | 15114 | 5670(4990) |
10 | 21514 | 8070(7100) |
20 | 34314 | 12870(11325) |
50 | 51714 | 19400(17070) |
60 | 52274 (上限額) | 同上 |
70 | 同上 | 19800(17424) |
• 公証人の最低費用の比較(有限会社を対象とするシェアー・
ディール)
─ 注:基本費用のみ。実際の費用はその他の業務・費用項目を加算すると倍以上になることもある。
─ その他の費用(弁護士費用、旅費等)も考慮すると5百万 ユーロ前後から検討の余地あり
─ ドイツは60百万で費用にキャップがかかる
換算レート(2018年10月)
1CHF=0,88ユーロ
• トピック:費用的にドイツより安いバーゼル(スイス)の公証人によるxx証書が認められるか?
– 2010年:ドイツの一部の商業登記簿がバーゼルの公証人による公証を認めないとし、修正社員名簿の受理を拒否
> 理由:2008年の有限会社法の改正によって、持分譲渡で社員に変更があった場合、 公証人が直ちに修正社員名簿を商業登記簿に提出することが義務付けられた。しかし、ドイツ法はドイツの公証人しか拘束できない。
– 高裁レベルではxxxxの公証人による公証を認める高裁(デュッセルドルフ:2011 年)と認めない高裁(ミュンヘン:2013年)があり、実務上は安全を見てドイツの公証人の面前での公証する傾向にあった。
– 2013年12月17日:最新のドイツ連邦裁判所の決定はxxxxの公証人による公証および修正社員名簿の提出を認めた。
> 理由:ドイツ法はバーゼルの公証人を拘束することはできないので、バーゼルの公証人にはかかる義務はないが、権利はある。
> バーゼルの公証人の資格がドイツの公証人と同等とみなされる限り社員名簿の提出を認めるべき。
– その後、バーゼルにおける公証が増えることが予想されたが、日系企業によるドイツ案件の場合は安全を見てドイツ公証人の面前での手続が多い
オーナー系製造販売会社の買収
買収前
X X.X.
Mr. X
NewCo
GmbH
SPA
Seller
GmbH
担保
B
GmbH
C Real Estate X Operation
GmbH GmbH
A
GmbH
X Holdings GmbH
• 買主グループ:製造販売会社
• 目的
– 特にEU市場進出の足がかり
– 製造販売会社の買収を希望
– 対象会社の販売網を活用し、自社製品をEUで販売したい
• 対象会社の選定
– Seller GmbH
– X Holdings GmbH
– 事業会社 (A社)
• 買主会社の選定
– X X.X.
– NewCo GmbH
• オーナー会社(X氏)
– 最終契約の言語
– 契約関係が不透明
> 書面による契約の欠如
> どの会社が契約当事者なのか?
例:X Holdings GmbH? X Operation GmbH?
> 身内・関係者との契約、グループ内契約
• 不要子会社(B社)の扱い
• X Holdings GmbHの持分への担保の扱い
• 事業所(土地の一部はA社所有物、一部はC社所有でC社から賃貸)
– A社所有の土地はC社に売却
– A・C社間でその売却土地を含めた新規の賃貸契約の締結
• 非対象会社(X Operation社)がクロージング後も一定期間はA社占有の敷地に残ることを希望
– A・ X Operation社間でサブ・リースおよびサービス契約の締結
• 対象会社(A社、X Holdings社)による非対象会社のための保証(賃貸契約の保証人等)
– 保証の解除
• 対象会社(A社、 X Holdings社)と非対象会社による連帯債務(グループ・クレジットライン、アドバイザーとの契約等)
– 対象会社の連帯責任からの解除
• 対象会社(A社、 X Holdings社)の銀行借入の組み替え
– 旧ローンの払い戻し
• X氏提供の対象会社(A社、 X Holdings社)のための個人保証
– 個人保証
– 銀行預金への担保
– 個人所有の土地への抵当権
• HoldCoにおける社名変更
– “X Holdings GmbH“から“J Holdings GmbH“
• 取締役の選解任
– X氏の解任
– 新取締役の選任
買収後
X X.X.
NewCo
GmbH
A
GmbH
X Holdings GmbH
Mr. X
Seller
GmbH
B
GmbH
C Real Estate X Operation
GmbH GmbH
合併 Upstream Merger
1. はじめに
2. 契約交渉段階
3. シェアー・ディール
4. アセット・ディール
5. 契約内容
6. M&Aのその他の手法
7. そ の 他
8. ま と め
買収前:
D AG
J GmbH
= 買主
APA
D GmbH = 売主
A事業
B事業
• 対象会社の事業(特定資産)の取得
• 契約当事者は対象会社自身
買収後:
J GmbH = 買主
D AG
D GmbH = 売主
A事業
B事業
• シェアー・ディールとの共通点
– 契約交渉段階でのステップ
– 契約の各規定にも多数の共通の規定がある
• シェアー・ディールとの違い
– シェアー・ディールの場合、対象会社の特定資産ではなく対象会社自身を取得するので…
> 対象会社の資産の所有権に変更はない
– 特定資産に関する個別の譲渡行為(土地に関する譲渡契約等)は不要
> 対象会社の契約関係(賃貸契約、雇用契約、顧客との契約)は存続する
– 対象会社の契約相手の同意は原則として不要
– 例外:Change in Control条項
– 注:アセット・ディールの場合、 Change in Control条項の有無に関わらず、契約関係の移転に契約相手の同意がそもそも必要
• シェア-・ディール又はxxxx・xxxxのどちらを選ぶかは個別のケースによる
– 日系企業のドイツにおける企業買収の場合、約75%がシェア-・ディールで約20%がアセット・ディール(残り5%以下は公開買付)
– 下記は判断基準の例
シェア-・xxxx | xxxx・xxxx |
• 対象会社の事業が単一的な場合 • 対象会社の事業が多岐にわたるが全ての事業を引き受けたい場合 | • 対象会社(売主)の事業が多岐にわたり、特定事業のみを譲渡・買収したい場合 |
• 対象会社の財務状況が健全な場合 | • 対象会社が倒産している、または財務状況が芳しくない場合 原則として引き受ける資産・債務を取捨選別のうえ特定することが可能 |
• 手続き
– 全体的にシェアー・ディールより煩雑
> 対象となる資産・債務をリストアップし特定する必要がある
> カーブアウトの場合、クロージング後のスタンド・アローンを確保するために様々な付随的契約が必要
– 包括的な資産売買・譲渡契約(Kauf- und Abtretungsvertrag, Asset Purchase and Assignment Agreement, “APA“ )
– xx証書は原則不要
> 例外:売手の全資産(或いはほぼ全ての資産)の買収の場合
– その他の手続きは契約対象による
• 固定資産(Anlagevermögen)、流動資産(Umlaufvermögen)
– 引渡しが必要
• 不動産
– アセット・ディール契約はxx証書によって行う
– 土地登記簿への登記変更申請
• 持分
– ドイツ有限会社の持分の場合アセット・ディール契約はxx証書によって行う
– 外国会社の持分の場合、当該外国の法律に基づく持分譲渡の手続きが必要
• 知的財産権(特許等)
– 買主が登録し直す必要がある
• 契約関係・債務
– 相手方当事者・債権者の同意が必要
– 注:この機会に条件の(再)交渉を強いられる可能性有り
• 債権
– 債務者への通知が望ましい
• 許認可
– 場合によって買主が取得し直す必要がある
• 顧客との関係、ノウハウ
• 原則として引き受ける債務について、取捨選別のうえ特定することが可能
• 例外:法による債務の引き受け
– 商法25、26条(商号の続用のよる債務の引き受け)
> 買主が売主の債務を負担しないと合意し、その旨を商業登記簿に登記するか個別に第三者に対して通知することによって、対外的にも債務負担を回避できる
– 民法613a条(事業の取得による従業員の引き受け)
> 契約において契約当事者間の債務負担についての規定は可能
– 租税法75条(企業の包括的取得による一部の租税義務の引き受け)
> 契約において契約当事者間の債務負担についての規定は可能
買収前
工業系製造事業の買収
C事業
B事業
A事業
Seller GmbH
APA
X X.X.
J-GmbH
日本
ドイツ
特 許 X Y Z
Seller Ltd.
X工場
APA
NewCo Ltd.
第三国
• 買主グループ: 製造販売会社
• 目的
– 特定事業部門の買収
> A事業とB事業に興味がある
– 特に資材供給の確保(S社とは取引あり)
> 競合者に買収されることは絶対に避けたい
• ドイツにおいて現地法人(販売会社)はすでにある
• 買収対象資産の選定
– A事業に関連する資産は、一部ドイツ、一部海外(X工場の一部製造ラインを含む)に所在
> 2つのアセット・ディール契約(ドイツ法、外国法)の同時締結
> 海外のX工場に関しては、土地買取オプション付・リースおよびサービス契約を締結しX
1工場およびX2工場に「分離」
– B事業に関連する資産は、売主も必要なので買収対象外
> 委託製造契約(Toll Manufacturing Agreement)
– C事業は不要
• 買収対象資産の選定(続)
– A製品製造の為にはS社保有の特許X、Y、Zが必要
> 特許Xは買収対象
> 特許Yは買収対象だが、売主の他の事業にとっても有益なので売主(S社)が買主(J GmbH)からバック・ライセンス
> xxXは売主の他の事業にとって必要不可欠なので買収対象外、買主(J GmbH)が売主(S社)からライセンス
• A事業部門は、買収後も売主の敷地に当面は残す
– リースおよびサービス契約が必要
買収後
日本
X X.X.
Seller GmbH
C事業
J-GmbH
ドイツ
特許
Z
特 許 X
Y
第三国
Seller Ltd.
NewCo Ltd.
X1工場
X2工場
A事業
B事業
1. はじめに
2. 契約交渉段階
3. シェアー・ディール
4. アセット・ディール
5. 契約内容
6. M&Aのその他の手法
7. そ の 他
8. ま と め
• はじめに
– 契約の言語
> 原則として英語のみでよい
– 問題:売主が英語が得意でない場合(オーナー系会社の場合よくある)
» 安易にドイツ語のみまたは独英併記の契約を認めるとプロセスのスピードに悪影響
> 例外:土地の売買契約
ドイツ語版もあることが必須
– 準拠法
> 原則としてドイツ法
– 譲渡価格の支払い
> エスクロー口座の活用?
• はじめに(続)
– 最初のドラフトを誰が作るか(上記2.8をご参照)
– xx証書(上記3.1をご参照)
> 必要性
– 委任状(上記3.1をご参照)