「JICA 海外協力隊の派遣に関する合意書」の内容について
2022 年6月青年海外協力隊事務局
「JICA 海外協力隊の派遣に関する合意書」の内容について
(日系社会青年海外協力隊、日系社会海外協力隊、日系社会シニア海外協力隊用)
JICA 海外協力隊の派遣にあたり、「JICA 海外協力隊の派遣に関する合意書」(別添)に署名を頂くことになります。派遣前訓練においても、改めて JICA 海外協力隊の制度及び待遇、合意書に関する説明を行いますが、前もって合意書の内容を理解するために、派遣前訓練までにこの解説のご一読をお願いします。
(1)合意書とは
合意書とは、JICA(甲)と派遣されるJICA 海外協力隊(乙)との間で合意を形成する契約文書のことです。JICA とJICA 海外協力隊は、この文書に署名を行うことにより、法律的な拘束力を持つ合意を相互に結ぶことになります。
(2)合意書の内容
①目的(第1条)
JICA 海外協力隊の活動(海外協力活動)の定義と、JICA がJICA 海外協力隊の海外協力活動を促進し、支援する立場であることを規定しています。
また、海外協力活動が日系人社会及び当該地域の発展又は復興に寄与するという目的を達成するために、JICA 海外協力隊が最大限の努力をすることと同時に、JICA 海外協力隊としての品位と節度を保って行動することを規定しています。
あわせて、この合意書の履行においては、JICA とJICA 海外協力隊がxxxxの原則に則ることを定めています。
②用語の定義(第2条)
この合意書で頻繁に用いられる用語の定義を説明しています。
③派遣期間等及び海外協力活動の内容(第3条)
海外協力活動を行う受入国、任地及び配属機関、職種そして派遣期間(日本を出発してから、日本に帰国するまでの期間)が記載されます。従って、個人毎に記載される内容が異なります。
④合意書の有効期間(第4条)
この合意書が効力を有する期間を定めています。すなわち、署名日から、本邦に到着する日までが合意期間となります。
また、帰国後にも、JICA 海外協力隊には、所定の手続きを行って頂く必要があるため帰国手続きを行って頂く時期についても定めています。
ただし、広報活動への協力、守秘義務、個人情報の保護、投稿等の届出、氏名等の公
開、知的財産権の帰属等については、派遣期間終了後も効力を有することを規定しています。
⑤報告書提出の義務(第5条)
派遣期間中JICA 海外協力隊は定期的に報告書を提出する必要があります。
提出時期及び記載すべき内容については、JICA 海外協力隊ハンドブック(以下「ハンドブック」)に記載されています。
なお、報告書は一般公開が原則となっていますので、記載にあたって個人情報保護の観点(むやみに個人が特定できる情報を記載しない等)を踏まえて頂くようお願いします。
⑥ 国民の国際協力に関する理解増進等への協力(第6条)
JICA 海外協力隊事業は社会からの関心が高く、マスコミ等外部への情報提供の機会も多いことから、氏名、出身都道府県市区町村、受入国、任地、配属機関、派遣職種及び派遣期間の項目については、本合意書でもって情報を公開することに同意をいただいています。
なお、出身都道府県市区町村とは、地方公共団体の最小単位を意味します。例として、出身住所が神奈川県xx市xx区の場合、地方公共団体の最小単位はxx市ですので、 JICA から外部に提供するのはxx市までとなります。
⑦ 海外手当等(第7条)
JICA は、JICA 海外協力隊の活動を支援するため、JICA の規程に基づき、海外手当、待機手当、国内手当及び旅費(以下「海外手当等」)をお支払いします。
海外手当等は、JICA 海外協力隊が第 1 条第 1 項で規定する海外協力活動の主旨に則って活動する限りにおいてJICA が行う、支援であることを規定しています。
また、海外手当等は、物価の変動、為替レートの変動、JICA の予算縮減等やむを得ない事情がある場合は、増減することがあることを規定しています。またそのうち、特に海外手当については、JICA がJICA 海外協力隊に対して行う定期又は不定期の支出状況調査等の結果により、増減を行うことが相当と考えられる場合にも増減することを規定しています。
あわせて、これらの増減を行う場合、JICA はJICA 海外協力隊に対し変更内容を通告しなくてはならない旨を定めています。
⑧ 禁止行為、遵守事項等(第8条)
ここでは、JICA 海外協力隊が派遣期間中に禁止されている行為を定めています。具体的には以下の項目です。
1)JICA の定める「JICA 関係者の倫理等ガイドライン」(セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、モラルハラスメントを行うことや利益供与・供応接待を受けること等)及び「JICA 役職員等のソーシャルメディアの私的利用に関するガイドライン」に違反すること。
2)受入国の法令に違反すること又は受入国において政治的活動、布教活動及び私
利を目的(※)とする活動を行うこと。
(※)自らの利益のため、商行為又は不動産、株式等の取引を行うこと、労務を提供し報酬を得ること等を指します。
3)JICA の事前の承認なく、受入国政府等から金品を受領すること。
4)受入国や受入国の国民を侮蔑する言動等JICA 海外協力隊の信用を傷つける行為やJICA 海外協力隊全体にとって不名誉となる行為。
5)JICA 又は受入国政府機関等の秘密を漏らすこと。
6)活動の必要上、JICA 海外協力隊に提供されたJICA が保有する個人情報を目的外で使用すること又は第三者に提供すること。
7)JICA 海外協力隊活動と関係が無い行為をするときにJICA 海外協力隊の肩書を使用すること。
8)この合意書に定める違反行為、禁止行為のほか、合意書別紙「事由」に掲げる行為を行うこと。
また、これらの禁止事項に関連して、次の事項を JICA 海外協力隊に義務付けています。
1)派遣期間中、配属機関の管理に服すること。
2)一時帰国及び任国外への旅行にあたっては、受入国政府(配属機関)及びJICAの承認を得ること。
3)海外協力活動に関して、寄稿、出版又は講演を行う場合には、JICA に事前に届け出ること。
→ この事前の届出の目的は、寄稿等の内容が、個人情報保護義務又は守秘義務に反する内容を含まないか否かを確認するためです。
4)JICA のサイバーセキュリティに関する各種規程に同意し、遵守すること。
5)公用旅券を使用する場合、紛失、毀損又は滅失しないよう最大限の注意を払うこと。
6)報告書の提出にあたって、虚偽又は誤解を生じさせる内容が無いよう注意すること。
また、JICA 海外協力隊は、JICA から違法・不正行為に関する事実確認のための調査への協力を求められた場合は、誠実に協力し、調査を妨害してはならないこと、禁止行為等が発生したときは、速やかに JICA に報告し、その指示に従うことを規定しています。
⑨ 法令に基づく情報公開請求への対応(第9条)
JICA は、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」(平成 13 年法律第 140 号)に基づき、第三者から情報開示請求があった場合には、当該情報を開示する法律上の義務を有しています。
こうした観点から、第三者の情報開示請求があった場合には JICA はJICA 海外協力隊の氏名、出身都道府県・市区町村、受入国、任地・配属機関、職種及び派遣期間については公開することを規定しています。
⑩ 安全対策(第 10 条)
JICA は、この合意書をJICA 海外協力隊と締結し、受入国に派遣するにあたり、いわゆる安全配慮義務を負うこととなります。
こうした義務を確実に履行するためには、JICA としてJICA 海外協力隊に対して、様々な形での安全対策を指示し、JICA 海外協力隊にも、この指示に従って頂くことが必要となります。
上記を踏まえ、本合意書では、外務省「たびレジ」への登録及び在留届の提出をして頂くこと、研修を受講すること、事務所と JICA 海外協力隊の連絡体制を構築(緊急連絡網の整備、携帯電話の貸与等)して頂くこと、JICA が指示する様々な安全対策措置
(避難、自宅待機、通勤経路の変更、住居の警備強化等々を言います。)に従っていただくこと及び住居選定にあたっては、JICA の指示に従っていただくことをお願いしています。
なお、本条は緊急事態が発生し、JICA の指示を得る余裕がない場合に、自らの判断で行動することを妨げるものではありません。
⑪ 知的財産権(第 11 条)
派遣期間中、JICA 海外協力隊が提出する報告書(必須添付書類を含む。)の著作権は、JICA に帰属します。
また、著作者人格権、すなわち、著作者の氏名の表示(非表示)を求めたり、著作物の内容の改変、加筆又は削除を行わないよう(同一性の保持)求めたりする権利についても、行使しないことをJICA 海外協力隊にお願いしています。
報告書以外の、活動に関連して作成した一切の成果品(報告書、マニュアル、教科書等)については、著作権はJICA 海外協力隊に帰属しますが、JICA 及びJICA の業務を受託した者は業務上必要な範囲で利用及び改変することを、JICA 海外協力隊が許諾することをお願いしています。
一方、JICA 海外協力隊が、第三者の著作物を利用し、上述の成果品を作成する場合には、JICA 海外協力隊自身で利用許諾を得て頂く必要がありますので、ご留意下さい。なお、著作権以外の知的財産権(特許権、種苗xxですが、これらには限定されませ ん。)の取扱いについては、その都度、出願の要否、出願内容及び権利の帰属につき JICA
海外協力隊とJICA で協議することとしています。
⑫ 非違行為等に対する措置(第 12 条)
JICA 海外協力隊が本合意書に定める義務に違反する行為、禁止行為等を行った場合、 JICA は、JICA 海外協力隊に対して「警告」または「厳重注意」あるいは「合意書解除」の措置を行うことがあります。(合意書別紙の内容を参照。)
⑬ 合意内容の変更及び合意の解除(第 13 条)
1)内容の変更
原則として派遣期間終了まで、締結どおりに継続することが望ましい姿ですが、諸事情により、契約期間中に合意内容、特に派遣期間、任地、配属機関を変更せざるを
得ないことがあります。
こうした場合に、当該変更がやむを得ないものと判断された場合には、JICA 海外協力隊、JICA 及び受入国政府の合意に基づき、合意内容のうち、派遣期間、任地、配属機関の変更を行い、その内容を、『「JICA 海外協力隊の派遣に関する合意書」の内容の変更に関する合意書』にて確認することとしています。
2)合意の解除
以下に定める事由がある場合には、JICA は合意書を解除することができます。また、解除の理由によっては、旅費又は国内手当の全部又は一部をお支払いしないことがあります。
(ア)政府間の合意で、海外協力隊事業そのものもしくは特定の案件が中止された場合
(イ)非常事態のため活動継続が困難となった場合
(ウ)JICA が健康上の理由で活動が困難と判断した場合
(エ)JICA 海外協力隊が派遣前訓練を修了することができない場合 (オ)JICA 海外協力隊が、合意書の内容に違反した場合
(カ)JICA 海外協力隊が故意又は過失により、JICA に損害を与えた場合
(キ)JICA 海外協力隊が私的に呼寄せ、または継続的に同居する第三者が、JICA の業務又は隊員の海外協力活動に支障をきたす恐れとなる行為をしたと JICA が判断した場合(ここで言う第三者はJICA 海外協力隊のご家族を含みます)。
(ク)受入国政府から、JICA 海外協力隊に原因がある問題により、活動の継続が拒否された場合
(ケ)JICA 海外協力隊の自己都合による場合
(コ)JICA 海外協力隊に合意書別紙「合意書解除」に掲げる項目に該当する行為があった場合
(サ)前の各号に準ずるやむを得ない事由がある場合
なお、上記(オ)、(カ)及び(コ)に該当する場合には、JICA はJICA 海外協力隊に対し、JICA 事業への参加停止等の措置を講じることができます。
⑭ 現地業務費(第 14 条)
JICA が行う海外協力隊活動支援のうち、資金による支援及びその取扱いについて定めています。
第1項では、JICA 海外協力隊が受入国に派遣された際にJICA が必要性を認めた場合に、予算の範囲内で現地業務費を JICA が負担することを定めています。必要性の有無は、受入国政府(配属機関)の財政状況、自助努力、裨益効果等を総合的に勘案して決めることとなります。従って、それぞれの受入国の状況によって判断が異なることとなります。
第2項では、現地業務費の資金を受領した場合の適正管理について定めています。すなわち、現地業務費を使用する場合には、調達方法等、JICA の会計のルールによることとなります。また、定期的に概算支給を受けた資金の使途を精算し、その結果を JICA
に報告することが求められます。
第3項では、現地業務費を利用して購入した機材、物品の使用と管理に関する責任を定めています。ここで用いられている「善良な管理者の注意義務」という言葉は、「社会通念上客観的に必要とされる程度の注意義務」という意味です。
第4項では、JICA 海外協力隊の派遣期間が終了した場合の機材・物品の取扱いを定めています。
この場合には、JICA の事前承認を得た上で、次のいずれかを行って戴きます。
1)配属機関に譲渡し、配属機関の受領書をJICA に提出する。
2)後任のJICA 海外協力隊に引継ぎ、後任からの引継書をJICA に提出する。
当然のことですが、JICA 海外協力隊が日本に持ち帰ることやJICA 海外協力隊の活動とつながりのない第三者に譲渡する等の取扱いはできません。
⑮ 災害補償等(第 15 条)
派遣期間中に、不幸にして、何らかの災害に遭われた場合の補償について、定めています。
第1項では、活動中、通勤途上並びに赴帰任の途上に何らかの災害に会われた場合を対象としています。この場合、JICA が、JICA 海外協力隊を労災保険の特別加入制度の対象として届け出ることにより、災害補償を行います。ただし、国家公務員又は地方公務員の方が、公務出張又はいわゆる「派遣法」に基づき参加される場合には、労災保険の特別加入制度ではなく、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法により補償を受けることになります。
第2項では、第1項の補償範囲外である私傷病について、定めています。この場合には、JICA の海外派遣中の関係者で構成される「独立行政法人国際協力機構国際協力共済会」に全員加入頂き、同会の規約に基づき給付を受けることとなります。同会の規約に定める補償対象とならない費用は、JICA 海外協力隊の自己負担となります。
⑯ 在外事務所長等への委任等(第 16 条)
本合意書では、JICA の代表は、青年海外協力隊事務局長となっていますが、合意書に記載されているある一定の項目については、在外事務所長等が、青年海外協力隊事務局長に代わって、JICA を代表する旨定めています。
すなわち、報告書の提出先(第 5 条)、寄稿、出版及び講演の届出(第 8 条第 9 項)、
安全対策措置の指示(第 10 条)、変更合意書の締結(第 13 条第 1 項)、自己都合によ
る派遣期間短縮(第 13 条第1項)及び現地支援費に関する申請・承認(第 14 条)は在外事務所長が、JICA の代表として行う旨定めています。
また、在外事務所長等が、JICA 海外協力隊が合意書に則した海外協力活動を行うよう勧奨することができる旨併せて定めています。
⑰ 損害に対する責任(第 17 条)
JICA 海外協力隊の故意または重大な過失により、JICA 又は第三者が損害を受けた場合にJICA 海外協力隊が負担する損害賠償責任を定めています。
ただし、JICA にも責任があると判断される場合には、責任範囲は、両者協議して決
めることとなります。
⑱ 損害賠償(第 18 条)
JICA 海外協力隊がJICA に対して、金銭や物品の返還を所定の期限までに行わない場合又は機材の先方政府への譲渡又は後任のJICA 海外協力隊への引渡しを所定の期 限までに行わない場合には、所定の遅延利息が生じることを定めています。現時点では、財務省の告示に基づき、年3%となっています。
⑲ 準拠法(第 19 条)
この合意書が、日本の法律によって解釈されることを定めています。
⑳ 紛争の解決方法(第 20 条)
この合意に関し裁判による解決が必要な場合には、JICA 海外協力隊の住所にかかわらず、その訴訟の目的の価額に応じ、東京地方裁判所又は東京簡易裁判所のいずれかで裁判を行うことを定めています。
(21)合意外の事項(第 21 条)
本合意書は、JICA 海外協力隊とJICA の関係の基本的な事項を定めておりますので、合意書に記載されていない詳細な事項については、JICA の海外協力隊派遣に関する内部規程及び派遣前訓練の際に配布される「JICA 海外協力隊ハンドブック」によることが定められています。
なお、こうした JICA の文書に定めのない事項については、両者が誠意を持って交渉して定めることとなっています。
以上