Explanatory Note (説明書)
添付資料 1
(TOPIA)
Explanatory Note (説明書)
本書は、タンカー油濁補償協定(TOPIA)の趣旨を説明するとともに、その主だった特色の簡潔な概要を記すものである。本書は、協定の一部を成すものではないが、協定の運用方針に関心を抱く方々への非公式の案内書として供することを目的としている。
TOPIA を設立するこの協定の意図するところは、1992 年責任条約(CLC92 )、1992 年基金条約及び 2003 年追加基金議定書で確立された、船舶による油濁に関する国際補償制度の下での船主の分担額の増額を行なうための機構を提供することである。
この機構は、現行の国際制度の継続的成功を確固たるものとする努力を惜しまない船主の要望を反映させたものである。また、2005 年 10 月に行なわれた国際油濁補償基金 1992
(1992 年基金)の第 10 会期の総会に船主が提出した、現行制度の対象となるクレームの全体費用を油受取人と概ね同等に分担することを確実なものとするための強制力のある契約上の機構を設けることを企図する意見書の内容も反映されている。TOPIA は、小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)2006 と共に、これらを達成するために策定され、更には、追加基金議定書の締結国の可能な限りの拡大を促進させることも目的とし、それによる議定書によって課せられる油受取人の潜在的追加負担の増加を勘案して作成されたものである。
TOPIA は、議定書国でxxxxが引き起こした油濁損害に対して、追加基金が議定書に基づいて支払う補償の 50%を船主が追加基金に補償することを規定している。
この機構は、国際グループ加盟 P&I Club に油濁事故危険をxxしているタンカー船主の間における法的拘束力をもつ協定として設立されるものである。上記に該当する船舶は一部例外を除き、クラブの保険契約の規定により自動的にこの機構に加入する。当該船舶の所有者は協定の当事者となり、「参加船主」と呼称される。
この機構は私人間契約であり、1992 年条約及び議定書の下での法的権利に何ら影響を与えず、油流出事故の被害者は、1992 年基金並びに追加基金に対して現在有する権利を引き続き享受する。これがために、この機構は、事故に関与した船舶の所有者が求償者へ責任制限額を超過する金額を直接支払うのではなく、追加基金に補償を支払うことを規定している。
追加基金は TOPIA の当事者ではないが、この協定は追加基金に法的強制権を賦与し、追加基金がこの機構に基づく権利を主張するとき、自己の名称で訴訟を提起することができる
旨を明記している。この機構は、英国法に準拠しており、英国法制が追加基金に賦与された法的権利の執行を可能とする。
保険者はこの協定の当事者ではないが、国際グループに加盟する全クラブは TOPIA に基づいて船主が負う補償支払い責任をてん補すべく、各々の保険契約規定の改定を行なった(もしくは、改定することに同意している)。また、クラブは、この機構によって追加基金が関係クラブに対してこの機構の下での支払請求に関し直接請求を行なう権利を享受できるための付帯的手続きを踏む権限を付与される。この機構の運用を支えるこれら及び他の規定は、追加基金と国際グループ加盟クラブ間で承諾される見込みである。
上記はこの機構の主要な特色であるが、その 12 条の条項は多数の詳細に言及している。第 I 条は、その大半が関連する国際条約の用語と規定に合致するように定められた様々な定義を列挙し、第 II 条と第 III 条は、この機構に関する総括的な規定から成り、この機構が「関係船」に適用される旨を定めている。以下に記す比較的小規模な船舶集団は別として、国際グループ加盟クラブに保険をxxしている全てのタンカーが関係船となる。この機構は、それら船舶の所有者がクラブによりその保険契約規定に従って組合員とされた時にこの協定の当事者となる旨を規定し、油濁危険に対する保険契約規定の下で通常当該船舶所有者は自動的に当事者となる結果をもたらす。この協定は、当該所有者が所有する関係船が自動的に機構に加入する旨も定めている。
例外として、これら規定は、国際グループ加盟クラブにxxしているが、国際グループのプール協定を通じて再保険に付されていない船舶を対象としない。この範疇に入る船舶は、機構に自動的に加入しないが、船主とそのクラブ間の書面の同意書があれば関係船(かつ機構に加入したもの)と見做されることが出来る。日本のxxタンカーは、国際グループのプール協定外で保険が引き受けられているが、それらのうち 200 総トン数を超えるもの
は 200 隻に満たない模様である。
第 IV 条は、関係船の参加船主が追加基金に補償を支払う義務を負う条件を明確に示し、正確な支払額の算出方法を規定した詳細な条項を含んでいる。本条項は、(船主の)補償が、追加基金が償還請求により回収できる損失を減額させることへの技術的疑義のために償還請求の妨げとなるような、あらゆる事態を回避するための規定も含んでいる。これに因り、償還請求(又は、将来の償還請求)手続きが予定されていない旨の通知が出されるまでは、補償は発生しない旨が規定されている。その一方で、追加基金は、支払いが見込まれる補償額と同額の内払いを受取る権利を有する旨が規定されている。当該支払いは、追加基金に対する拠出者の負担金の支払いと同時に行なわれる。本条項は、テロリスク行為に起因する油濁損害に対して支払われる補償は、事故時に有効な保険又は再保険があるとして、
その保険でてん補される金額の範囲に限定される旨も定める。これは、船主がこの種責任保険を手配することが困難な状況を勘案してのものである。
第 V 条は、第三者に対する償還請求を更に詳細に規定している。回収額は参加船主に返戻されるが、追加基金は償還請求の開始、実行、解決に関して絶対的裁量権を有する。
第 VI 条は、1992 年条約と一致させることを目的とした時効規定を含む。(かつ、追加基金議定書の下での追加基金に対する請求期間の経過後、更に 12 ヶ月の間追加基金に補償請求を認めることが意図されている)
第 VII 条は、この機構の改定を規定し、全参加船主の代理人としての国際グループが改定行うことを可能とさせている。いかなる改定も遡及効を持たず、クラブは機構改定の決定を為す前に余裕を持って追加基金と協議することを承諾している。
第 VIII 条は、1992 年基金、追加基金及び油受取人の代表者と協議のうえで、国際補償制度に基づく油濁損害クレーム総額の船主、油受取人間の概算負担割合を確定するために、10年後、以降 5 年間隔で見直しが行われることを規定し、概ね均等の負担を維持するために講じることが可能な手段(TOPIA の改定を含む)を規定している。
第 IX 条は、この機構がグリニッジ標準時の 2006 年 2 月 20 日正午以降に発生した事故に適用され、現行の国際補償制度が実質的かつ大幅に改変されるまで効力を有するとする内容で、機構の有効期間を定めている。本条項は、この協定が機能しなくなることが予想される状況下では、この協定が終了されることも規定している。クラブは、TOPIA の終了を決定する前に追加基金と協議することを承諾している。
第 X 条では、参加船主がこの機構から脱退する権利と参加船主が脱退するための条件が定められている。しかしながら、関係船の所有者は、油濁損害に関するそのクラブの保険のてん補を損なうことなく TOPIA から脱退することは通常不可能となっている。
第 XI 条は、この機構の下での追加基金の法的権利と、国際グループが直接請求に関する付随的な手続きにつき1992 年基金と合意する権限を有することが定められている。クラブは、 CLC92 と同様の条件でこの機構の下でも直接責任を負うことを承諾している。
最後に、この協定は第 XII 条により、英国法に準拠すること、また、この機構の下での争議に関し英国高等法院が排他的裁判管轄権を有する旨を規定している。
以上
タンカー油濁補償協定(TOPIA)序章
この協定の当事者は、この協定で定義される各参加船主である。
参加船主は、1992 年の民事責任条約と基金条約とによって確立された、船舶からの油濁に対する国際補償制度の成功を認識し、この制度が社会の必要に適合し続けるためには随時改定又は補足される必要があることを了知している。
議定書への加盟を選択する国において追加基金から追加補償を供与することにより 1992 年基金条約を補足する議定書が、起草・採択された。当事者は、現行補償制度が現在の形で
(但し議定書による修正を経た形で)存続できるよう、可能な限り幅広い議定書の批准を奨励するものである。
議定書により油受取人に課せられる潜在的追加負担を勘案し、この協定の参加船主は、以下に定める機構の設置に合意した。この機構により、タンカーを所有する参加船主は、油濁損害に対して議定書に基づき支払われる補償金の50%を追加基金に補償することになる。
この補償は、船主が手配可能な責任保険にテロリズム行為に対する保険の制限があるため、テロリズム行為による油濁損害に関しての補償には制限がある。
この協定は、法的関係の構築を企図するものであり、かつ相互の約定に基づき加入船の参加船主が互いに以下のとおり合意したものである。
第Ⅰ条 定義
(A) 以下の用語は責任条約第Ⅰ条と同等の意味を有する。
「事故」、「油」、「所有者」、「者」、「油濁損害」、「損害防止措置」、「船舶」
(B) 「1992 年基金」とは、1992 年基金条約によって設立された国際油濁補償基金をいう。
(C) 「1992 年基金条約」とは、1992 年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約及びその改定又は補足条約並びにそれを有効にする国内法
規をいう。
(D) 「クラブ」とは、国際グループに加盟する P&I クラブをいい、「船主のクラブ」とは、船主の所有する関係船の保険を引き受けているクラブ又は船主がxxを申請しているクラブをいう。以下、「そのクラブ」、「クラブ当事者」及び同様の表現も同様に解する。
(E) 「加入船」とは、この機構が適用される船舶をいい、「加入」も同様に解する。
(F) 「補償」とは、この協定書第Ⅳ条に基づき支払われる補償をいう。
(G) 「保険」、「保険が付された」及びこれらに関連する表現は、油濁リスクに対する
P&I カバーを指す。
(H) 「国際グループ」とは、国際 P&I クラブグループをいう。
(I) 「責任条約」とは、1992 年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約及びその改定条約並びにそれを有効にする国内法規をいう。
(J) 「参加船主」とは、当事者である加入船の船主をいう。
(K) 「当事者」とは、この協定の当事者をいう。
(L) 「議定書」とは、1992 年基金条約を補足する 2003 年議定書及びそれを有効にする国内法規をいい、「議定書国」とは、その議定書が施行されている国をいう。
(M) 「償還請求結果通知」とは、第 V 条(C)項に定める意味を有する。
(N) 「関係船」とは、第Ⅲ条(B)項に定める意味を有する。
(O) 「機構」とは、この協定によって設立されるタンカー油濁補償協定(TOPIA)をいう。
(P) 「追加基金」とは、議定書により設立された基金をいう。
(Q) 「トン」とは、1969 年の船舶のトン数測度に関する国際条約付則Ⅰに定めるトン
数測度規則に従って計算された総トン数をいい、「トン数」も同様に解する。
(R) 「計算単位」とは、責任条約第Ⅴ条第 9 項の定めと同じ意味を有する。
第Ⅱ条 総則
(A) この協定はタンカー油濁補償協定(TOPIA)と称する。
(B) 関係船の所有者は、当事者として適格であり、当該船舶の保険を引き受けるクラブによりその保険契約規定に従って当事者にされた時に当事者となる。
第Ⅲ条 TOPIA 機構
(A) この協定は、以下に規定する条件に従い、1992 年基金への補償の支払いを目的とする TOPIA 機構を設立するために締結される。
(B) 以下の条件をすべて満たす船舶はこの機構への参加資格を有し、「関係船」と称する。
(1) クラブにxxされていること
(2) 国際グループのプール協定を通じて再保険に付されていること
(C) 参加船主の所有する関係船は、船主が第Ⅱ条(B)項に従いこの協定の当事者になった時、自動的にこの機構に参加しなければならない。
(D) 前記プール協定から独立して再保険に付されているとの理由により関係船とならない船舶であっても、船主とそのクラブ間の書面での合意により関係船と看做すことができる。
(E) 一旦この機構に参加した関係船は、以下各号に定める事態が生ずるまで参加を継続する。
(1) 関係船でなくなった場合(前 III(B)項に言う保険・再保険のxxが終了した結果として)
(2) 参加船主の所有でなくなった場合
(3) 参加船主が第 X 条に従いこの協定から脱退した場合
第Ⅳ条 追加基金への補償
(A) 事故により加入船が油濁損害を起こし、(1)その船舶の参加船主に責任条約に基づく責任が発生し、(2)追加基金が議定書に基づき補償を支払ったか支払うことが予想される場合、当該船主は追加基金に本条に定める金額を補償する。
(B) 補償は以下の費用及び損害に対しては行われない。
(1) 参加船主が責任条約第 III 条第 3 項により責任を免除されている損害防止措置費用で、議定書により追加基金が支払責任を負うもの
(2) 参加船主ではなく追加基金の責めに帰する範囲内における一切の油濁損害
(C) 参加船主が追加基金に支払うべき補償金額は、油濁損害に対して追加基金が支払ったか支払う事が予想される補償金額の 50%とする。
(D) ここで述べる補償の支払い責任は、参加船主や船主のクラブが有する追加基金から事故に関連する金額を回収するための権利に影響を与えるものではなく、その権利は彼ら自身が本来有するものであるか、代位求償や債権譲渡やその他に基づくものであるかを問わない。疑義を生じさせないために、それら金額は前 IV(C)項に言及する補償額に含まれるものとする。
(E) 追加基金と別段の合意がない限り、
(1) 追加基金が第V 条(C)項に定める償還請求結果通知を出した時に追加基金に参加船主から補償を受取る権利が発生する。
(2) 前号以前にあっては、追加基金は予想される補償額と同額と見做す額と同額を、参加船主から補償の内金として受取る権利を有する。
(3) この協定に基づき追加基金が受取る権利を有する金額の支払いは、議定書の第 10 項及び第 12 項に従ってなされる当該事故に対する分担者の負担金の支払いと同時に行なわれる。
(F) (1) 前 IV(E)項に規定する内払いは以下条件により行なわれる。
(i) 追加基金により、当該事故の補償のみに関連する特別勘定に計上されること。
(ii) 参加船主が支払った金額のうち追加基金による補償が完済した後の剰余
は参加船主に返戻されること。
(iii) 第三者に対する償還請求により回収された金額から成る剰余については、以下第 V 条に従い参加船主に貸記する。
(2) 本 IV(F)項は追加基金が当該事故から生じるクレームへの支払いにこの協定によって、受取った金額を充てることを妨げるものではなく、追加基金に受取った金額(もしくは剰余金)を独立した銀行口座に保管することや追加基金の他の資産と区別して運用することを要求するものでもない。
(3) 追加基金が別段の通知を受けない限り、参加船主に保険を提供するクラブが参加船主に代わり、本条に基づく返戻金を受領する権限を有しているものと見做す。
(G) この協定の下では、追加基金が支払ったテロリズム行為に起因する油濁損害に関する金額に対し、事故時に有効な保険や再保険があるとして、その保険でてん補される範囲以外の補償は行なわない。本項は、船主が責任条約第 III 条第 2 項により責任を免除されているかいないかにかかわらず適用される。
(H) この協定において、ある行為がテロリズム行為に該当するか否かにつき争議が生じた場合、参加船主が行なう補償はいかなる場合でも、そのクラブが当該船主の負担を補償する責務を負うことを承諾するか是認するか否かによって決定される。
第Ⅴ条 第三者に対する償還請求
(A) 追加基金の第三者に対する償還請求の実行、あるいは示談解決を含む具体的な請求方法の決定に関して、追加基金は絶対的な裁量権を有する。
(B) 前 V(A)項の規定を損ねることなく、
(1) この協定の下での参加船主の支払いは、補償(もしくは内払い)として支払った金額に関して追加基金が第三者に対して有する求償権を参加船主がこの協定に従って第三者から回収することに利益のある範囲において代位取得することを条件に行なわれる。
(2) 追加基金は、参加船主又はそのクラブが実際あるいは潜在的な求償者となる償還請求について、参加船主又はそのクラブと協議することができる。
(3) この協定は、追加基金、船主及びクラブが償還請求の費用の分担や回収金額の分配に関する条件を含め、特定の事故において適切と考えられる償還請求に関する取り扱い方法に合意することを妨げるものではない。
(C) この協定において、償還請求結果通知とは、追加基金により当該事故に関し第三者に対して実行又は検討された全ての償還請求が確定的決定に至ったことの参加船主宛通知をいう。本項でいう確定的決定には、償還請求を行なわない、又は既に開始した償還請求を中止するという追加基金の決定を含む。
(D) この協定の下での参加船主の支払いは以下条件により行なわれる。
(1) 追加基金が第三者に対して償還請求することを決定した場合、別段の合意がない限り、追加基金は(a)この協定の下で参加船主が既に支払った補償額を差し引くこと無く、追加基金が支払ったか支払う予定の補償額を回収することを求めるか、あるいは、(b)要求に応じ、以下 V(D)(2)号で定める書面を作成するものとする。
(2) 追加基金が第三者に対して当該事故に関する償還請求をしない(あるいは償還請求開始後これを中止する)ことを決定した場合、追加基金は要求がありしだい、参加船主又はそのクラブがこの協定の下で支払われた補償に基づき第三者から回収することに利益のある範囲において、代位求償、債権譲渡又はその他の方法により、追加基金が当該第三者に対して有する求償権を参加船主又はそのクラブに委譲する(もしくは委譲を確約する)ために必要となる合理的な書面を作成する。
(3) 参加船主が補償を支払った後に追加基金が第三者から金額を回収した場合、追加基金は、回収額(回収のための諸費用控除後の金額)の 50%を保持し、残りの 50%を参加船主に貸記するものとする。
(E)追加基金が別段の通知を受けない限り、参加船主に保険を提供するクラブが参加船主に代わり、前 V(C)項に基づく通知の受領、前 V(D)項による参加船主へ支払わられる金額の受領、及び本条Ⅴの運用に関するすべての事項に合意する権限を有しているものと看做す。
第Ⅵ条 諸手続き
この協定に基づく補償に対して有する追加基金のあらゆる権利は、油濁損害発生日から 4年以内に何らかの訴訟を起こさない限り消滅する。しかし、どのような場合であっても油濁損害を引き起こした事故発生日から 7 年経過後はいかなる訴訟も提起できない。その事
故が連続する複数の事故から成る場合は、最初の事故発生日から数えて 7 年間とする。
第Ⅶ条 改正
(A) この協定は全参加船主の代理人としての国際グループによりいつでも改正することができる。かかる改正は国際グループが追加基金に書面により通知した日から 3 ヶ月後に効力を生じる。
(B) 各参加船主は、以下各号を条件として、国際グループが自己に代わりこの協定の改正に同意する権限を付与されることを了承する。
(1) 当該船主のクラブがこの協定の改正に関して授権し、かつ
(2) 当該船主のクラブが当該クラブの保険契約規定の改定に必要な手続きと同じ手続きによりこの協定の改正を承認していること
(C) 第 IX 条(A)項を前提として、この協定のいかなる改正も、その改正が発効する以前に発生した事故に関する権利及び義務には影響を与えない。
第Ⅷ条 再調査
(A) 2016 年に、2016 年 2 月 20 日までの 10 年間の油濁損害クレーム実績に基づき再調
査を行なう。再調査の目的は、(1)責任条約、1992 年基金条約及び議定書の下で 2006
年 2 月 20 日以降に船主と油受取人各々が負担した金額の全クレーム額に占める概算割合を確定し、(2)この協定の効能、運用、成果を検証することである。再調査は、その後 5 年毎に行うこととする。
(B) 油受取人の代表と 1992 年基金と追加基金の事務局は、本条に基づく再調査に諮問員として参加することが要請される。参加船主は国際グループに参加船主に代わり再調査を行なう権限を付与する。
(C) 本条に基づく再調査の結果、2006 年 2 月 20 日以降の期間に船主、油受取人のいずれかが前 VIII(A)項でいう全クレーム額の 60%を超える割合を負担していることが
判明した場合、概ね均等配分を維持する為に金銭上の負担を調整する手段を講じる。
(D) 前項の手段は以下を含む。
(1) この協定の下で支払われる補償の額を増減させることを規定する為のこの協定の改定。
(2) この協定の効能、運用、成果を改善する為のこの協定の改定。
(3) 船主と油受取人間の油濁による費用の配分に関する他の協定の締結もしくは改定。
(4) 概ね均等配分を維持するために適当と思われる他の手段の策定。
(E) 本条に基づく再調査の結果、船主、油受取人のいずれかが前 VIII(A)項でいう全クレーム額の 55%超 60%以下の割合を負担していることが判明した場合、上述手段を講じることが可能(ただし、強制されるものではない)。
第 IX 条 有効期間と終了
(A) この協定は、グリニッジ標準時の 2006 年 2 月 20 日正午以降に発生した事故に適用される。
(B) 以下に定める条項に従って事前に終了されない限り、責任条約、1992 年基金条約及び議定書によって設立された補償制度を実質的かつ大幅に改変するような国際条約が発効されるまで、この協定は効力を有する。
(C) 各参加船主は、以下の場合、国際グループが全参加船主に代わりこの協定を終了する権限を付与されることを了承する。
(1) クラブがこの協定に基づく補償を支払うという参加船主への責任保険の提供を取り止めた場合
(2) この協定の成果が特定の国もしくは国々において非合法となった場合(その場合、この協定は当該国に関しては終了する一方、他の国では効力を持続する余地は残る)
(3) 国際グループの再保険者がこの協定で規定される責任に対する適当な保険の提供を取り止め、それと同一条件の当該危険に対する保険を世界市場にて合理的に手配出来ない場合
(4) 国際グループが解散した場合
(5) この協定の成果を妨げ、かつ参加船主の合理的な予見を外れる事象や状況によって、当該船主のクラブがこの協定の終了に関して授権した場合(かつ保
険契約規定の改定に必要な手続きと同じ手続きによりこの協定の終了を承認した場合)
(D) この終了は国際グループが追加基金に書面により通知した日から3 ヶ月が経過するまで効力が生じない。
(E) この協定の終了は、その終了日以前に発生した事故に関する権利及び義務には影響を与えない。
第 X 条 脱退
(A) 参加船主は以下各号の場合この協定から脱退できる。
(1) 当該船主のクラブに対し 3 ヶ月以上前に書面による脱退の通知を提出した場合
(2) この協定の改正による場合、ただし以下各号を条件とする。
(i) 当該船主のクラブがその組合員にこの協定の改正の承認を求めた際に、当該船主はその改正に反対する投票権を行使していること
(ii) 当該船主のクラブの組合員が改正を承認してから 60 日以内に、当該船主は自己のクラブに対して書面により脱退の通知を行なっていること
(iii) 本項による脱退は、改正の発効と同時、又は当該船主の通知を当該船主のクラブが受領した日のいずれか遅い方に有効となること
(B) 参加船主は、関係船の船主でなくなった時、即座に当該船舶についてのみこの協定から脱退したものと看做され、当該船主又はそのクラブが関係船の船主でなくなった旨を追加基金に書面にて通知しなければならない。
(C) この協定から脱退した船主は、脱退が有効となった日以降、この協定に基づく義務を負わない。ただし、脱退日以前に発生した事故に関する権利及び義務には影響を与えない。
第ⅩI 条 追加基金の法的権利
(A) 追加基金は、この協定の当事者でなくとも、この協定に記載される補償に関する強制力のある権利を法的に享受することを意図しており、それ故追加基金は、この協
定に基づき権利を主張するとき自己の名称で参加船主に対して訴訟を提起することができる。上記訴訟は、この協定の解釈、効力又は成果に関する争点を解決するために追加基金によって参加船主に対してなされる訴訟を含む。
(B) 前 XI(A)項及び第 VII 条(A)項にもかかわらず、この協定に従ってなされる改正、終了又は脱退に関して、1992 年基金の同意は必要としない。
(C) この協定の当事者は、この協定に基づく加入船(又は以前の加入船)に関する補償に関するクレーム、もしくはこの協定の解釈、効力又は成果に関する争点を解決するための訴訟を事故発生時に当該船舶を引き受けていたクラブに対して直接請求する条件について、追加基金と合意する権限を国際グループへ付与する。この協定の当事者は、追加基金が加入船に関する債権を行使するためクラブに訴訟を提起した場合に、クラブが参加船主に当該訴訟に加わるよう要求できることを承諾する。
第 XII 条 準拠法及び裁判管轄
この協定は英国法に準拠し、この協定の下における紛議に関しては、英国高等法院が排他的裁判管轄権を有する。
以上
添付資料 2
改正小型タンカー油濁補償協定書
(STOPIA) 2006
Explanatory Note (説明書)
本書は、小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)2006 の趣旨を説明するとともに、その主 だった特色の簡潔な概要を記すものである。本書は、協定の一部を成すものではないが、 協定の運用方針に関心を抱く方々への非公式の案内書として供することを目的としている。
STOPIA2006 を設立するこの協定の意図するところは、1992 年責任条約(CLC92 )、1992年基金条約及び 2003 年追加基金議定書で確立された、船舶による油濁に関する国際補償制度の下での船主の分担額の増額を行なうための機構を提供することである。
現行 STOPIA は 2005 年 3 月 3 日に施行されたが、今般改定された。本書で言う協定は 2006
年 2 月 20 日以降に発生した事故に適用される改定版である。それ以前に発生した事故に関しては現行版が引き続き適用される。
この機構は、現行の国際制度の継続的成功を確固たるものとする努力を惜しまない船主の要望を反映させたものである。また、2005 年 10 月に行なわれた国際油濁補償基金 1992
(1992 年基金)の第 10 会期の総会に船主が提出した、現行制度の対象となるクレームの全体費用を油受取人と概ね同等に分担することを確実なものとするための強制力のある契約上の機構を設けることを企図する意見書の内容も反映されている。STOPIA2006 は、タンカー油濁補償協定(TOPIA)と共に、これらを達成するために策定され、更には、追加基金議定書の締結国の可能な限りの拡大を促進させることも目的とし、それによる議定書によって課せられる油受取人の潜在的追加負担の増加を勘案して作成されたものである。
STOPIA 2006 は、CLC92 に規定される責任制限条項の財政的影響を調整するために設立 された 1992 年基金へ船主が補償を支払う旨を規定する。この機構は、CLC92 が 5,000 総 トン数以下の船舶の最低制限額を一律 SDR4.51 百万とすることを条件に、船舶のトン数に 応じて船主の責任制限額を算出する旨を定めている点に立脚している。1992 年基金が CLC92 の制限額を超過した部分を補償するものなので、小型タンカーによる事故では 1992 年基金はかなり高い割合の負担を余儀なくされ、CLC92 に基づく最低制限額が高かったと した場合よりも多数の事故に対して補償を支払う結果となっている。かかる状況に鑑み、 この機構は、油濁事故を起こした船主が、1992 年基金に対し当該船舶の責任制限額が SDR20 百万未満であることによって基金が支払う補償金を戻し入れることを規定している。 SDR20 百万は、CLC92 が定める 29,548 総トン数の船舶の責任制限額に相当する。それ故、 STOPIA2006 は、29,548 総トン数以下の船舶が関与する油の流出に掛かる費用の全体額を 再配分するものである。
この機構は、国際グループ加盟 P&I Club に油濁事故危険をxxしている前述の範疇に入る船舶の船主の間における法的拘束力をもつ協定として設立されるものである。上記に該当する船舶は一部例外を除き、クラブの保険契約の規定により自動的にこの機構に加入する。当該船舶の所有者は協定の当事者となり、「参加船主」と呼称される。
この機構は私人間契約であり、1992 年条約の下での法的権利に何ら影響を与えず、油流出事故の被害者は、1992 年基金に対して現在有する権利を引き続き享受する。これがために、この機構は、事故に関与した船舶の所有者が求償者へ責任制限額を超過する金額を直接支払うのではなく、1992 年基金に補償を支払うことを規定している。
1992 年基金は STOPIA2006 の当事者ではないが、この協定は 1992 年基金に法的強制権を賦与し、1992 年基金がこの機構に基づく権利を主張するとき、自己の名称で訴訟を提起することができる旨を明記している。この機構は、英国法に準拠しており、英国法制が 1992年基金に賦与された法的権利の執行を可能とする。
保険者はこの協定の当事者ではないが、国際グループに加盟する全クラブは STOPIA2006に基づいて船主が負う補償支払い責任をてん補すべく、各々の保険契約規定の改定を行なった。また、クラブはこの機構によって、1992 年基金が関係クラブに対してこの機構の下での支払請求に関し直接請求を行なう権利を享受できるための付帯的手続きを踏む権限を付与される。この機構の運用を支えるこれら及び他の規定は、1992 年基金と国際グループ加盟クラブ間で承諾される見込みである。
上記はこの機構の主要な特色であるが、その 12 条の条項は多数の詳細に言及している。第 I 条は、その大半が関連する国際条約の用語と規定に合致するように定められた様々な定義を列挙し、第 II 条と第 III 条は、この機構に関する総括的な規定から成り、この機構が「関係船」に適用される旨を定めている。以下に記す比較的小規模な船舶集団は別として、 29,548 総トン数以下で国際グループ加盟クラブに保険をxxしている全てのタンカーが関係船となる。この機構は、それら船舶の所有者がクラブによりその保険契約規定に従って組合員とされた時にこの協定の当事者となる旨を規定し、油濁危険に対する保険契約規定の下で通常当該船舶所有者は自動的に当事者となる結果をもたらす。この協定は、当該所有者が所有する関係船が自動的に機構に加入する旨も定めている。
例外として、これら規定は、国際グループ加盟クラブにxxしているが、国際グループのプール協定を通じて再保険に付されていない船舶を対象としない。この範疇に入る船舶は、機構に自動的に加入しないが、船主とそのクラブ間の書面の同意書があれば関係船(かつ機構に加入したもの)と見做されることが出来る。日本のxxタンカーは、国際グループ
のプール協定外で保険が引き受けられているが、それらのうち 200 総トン数を超えるもの
は 200 隻に満たない模様である。それに対し、STOP IA2006 に加入するタンカーは約 6,000
隻に達する見込みである。
第IV 条は、関係船の参加船主が 1992 年基金に補償を支払う義務を負う条件を明確に示し、正確な支払額の算出方法を規定した詳細な条項を含んでいる。本条項は、(船主の)補償が、 1992 年基金が償還請求により回収できる損失を減額させることへの技術的疑義のために償還請求の妨げとなるような、あらゆる事態を回避するための規定も含んでいる。これに因り、償還請求(又は、将来の償還請求)手続きが予定されていない旨の通知が出されるまでは、補償は発生しない旨が規定されている。その一方で、1992 年基金は、支払いが見込まれる補償額と同額の内払いを受取る権利を有する旨が規定されている。当該支払いは、 1992 年基金に対する拠出者の負担金の支払いと同時に行なわれる。
第 V 条は、第三者に対する償還請求を更に詳細に規定している。回収額は、参加船主に返戻されるが、1992 年基金は償還請求の開始、実行、解決に関して絶対的裁量権を有する。第三者からの回収額の充当の順位は、「上流から下流へ」である。すなわち、1992 年基金が補償額を超過して支払う義務を負った金額の埋め合わせを行なった後に初めて、参加船主は回収額を受取ることが出来るのである。
第 VI 条は、1992 年条約と一致させることを目的とした時効規定を含む。(かつ、1992 年基金条約の下での 1992 年基金に対する請求期間の経過後、更に 12 ヶ月の間 1992 年基金が補償請求を認めることが意図されている)
第 VII 条は、この機構の改定を規定し、全参加船主の代理人としての国際グループが改定を行うことを可能とさせている。いかなる改定も遡及効を持たず、クラブは機構改定の決定を為す前に、余裕を持って 1992 年基金と協議することを承諾している。
第 VIII 条は、1992 年基金、追加基金及び油受取人の代表者と協議のうえで、国際補償制度に基づく油濁損害クレーム総額の船主、油受取人間の概算負担割合を確定するために、10年後、以降 5 年間隔で見直しが行われることを規定し、概ね均等の負担を維持するために講じることが可能な手段(STOPIA2006 の改定を含む)を規定している。
第 IX 条は、この機構がグリニッジ標準時の 2006 年 2 月 20 日正午以降に発生した事故に適用され、現行の国際補償制度が実質的かつ大幅に改変されるまで効力を有するとする内容で、機構の有効期間を定めている。本条項は、この協定が機能しなくなることが予想される状況下では、この協定が終了されることも規定している。クラブは、STOPIA2006 の
終了を決定する前に 1992 年基金と協議することを承諾している。
第 X 条では、参加船主がこの機構から脱退する権利と参加船主が脱退するための条件が定められている。しかしながら、関係船の所有者は、油濁損害に関するそのクラブの保険のてん補を損なうことなく STOPIA2006 から脱退することは通常不可能である。
第 XI 条は、この機構の下での 1992 年基金の法的権利と、国際グループが直接請求に関する付随的な手続きにつき 1992 年基金と合意する権限を有することが定められている。クラブは、CLC92 と同様の条件でこの機構の下でも直接責任を負うことを承諾している。
最後に、この協定は第 XII 条により、英国法に準拠すること、また、この機構の下での争議に関し英国高等法院が排他的裁判管轄権を有する旨を規定している。
以上
小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)2006
序章
この協定の当事者は、この協定で定義される各参加船主である。
参加船主は、1992 年の民事責任条約と基金条約とによって確立された、船舶からの油濁に対する国際補償制度の成功を認識し、この制度が社会の必要に適合し続けるためには随時改定又は補足される必要があることを了知している。
議定書への加盟を選択する国において追加基金から追加補償を供与することにより 1992 年基金条約を補足する議定書が、起草・採択された。当事者は、現行補償制度が現在の形で
(但し議定書による修正を経た形で)存続できるよう、可能な限り幅広い議定書の批准を奨励するものである。
議定書により油受取人に課せられる潜在的追加負担を勘案し、この協定の参加船主は、以下に定める機構の設置に合意した。この機構により、特定のトン数以下のタンカーの参加船主は、該当するタンカーが起こした油濁損害に対して、1992 年基金条約に基づき支払われる補償金の一部を 1992 年基金に補償することになる。
この協定は、法的関係の構築を企図するものであり、かつ相互の約定に基づき加入船の参加船主が互いに以下のとおり合意したものである。
第Ⅰ条 定義
(A) 以下の用語は責任条約第Ⅰ条と同等の意味を有する。
「事故」、「油」、「所有者」、「者」、「油濁損害」、「損害防止措置」、「船舶」
(B) 「1992 年基金」とは、1992 年基金条約によって設立された国際油濁補償基金をいう。
(C) 「1992 年基金条約」とは、1992 年の油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に 関する国際条約及びその改定又は補足条約並びにそれを有効にする国内法規をいう。
(D) 「クラブ」とは、国際グループに加盟する P&I クラブをいい、「船主のクラブ」とは、船主の所有する関係船の保険を引き受けているクラブ又は船主がxxを申請しているクラブをいう。以下、「そのクラブ」、「クラブ当事者」及び同様の表現も同様に解する。
(E) 「加入船」とは、この機構が適用される船舶をいい、「加入」も同様に解する。
(F) 「補償」とは、この協定書第Ⅳ条に基づき支払われる補償をいう。
(G) 「保険」、「保険が付された」及びこれらに関連する表現は、油濁リスクに対する
P&I カバーを指す。
(H) 「国際グループ」とは、国際 P&I クラブグループをいう。
(I) 「責任条約」とは、1992 年の油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約及びその改定条約並びにそれを有効にする国内法規をいい、「CLC92 年国」とは、「責任条約」が施行されている国をいう。
(J) 「参加船主」とは、当事者である加入船の船主をいう。
(K) 「当事者」とは、この協定の当事者をいう。
(L) 「議定書」とは、1992 年基金条約を補足する 2003 年議定書及びそれを有効にする国内法規をいう。
(M) 「償還請求結果通知」とは、第 V 条(C)項に定める意味を有する。
(N) 「関係船」とは、第Ⅲ条(B)項に定める意味を有する。
(O) 「機構」とは、この協定によって設立される小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)をいう。
(P) 「追加基金」とは、議定書により設立された基金をいう。
(Q) 「トン」とは、1969 年の船舶のトン数測度に関する国際条約付則Ⅰに定めるトン数測度規則に従って計算された総トン数をいい、「トン数」も同様に解する。
(R) 「計算単位」とは、責任条約第Ⅴ条第 9 項の定めと同じ意味を有する。
第Ⅱ条 総則
(A) この協定は小型タンカー油濁補償協定(STOPIA)2006 と称する。
(B) 関係船の所有者は、当事者として適格であり、当該船舶の保険を引き受けるクラブによりその保険契約規定に従って当事者にされた時に当事者となる。
第Ⅲ条 STOPIA2006 機構
(A) この協定は、以下に規定する条件に従い、1992 年基金への補償の支払いを目的とする STOPIA2006 機構を設立するために締結される。
(B) 以下の条件をすべて満たす船舶はこの機構への参加資格を有し、「関係船」と称する。
(1) 29,548 トン以下
(2) クラブにxxされていること
(3) 国際グループのプール協定を通じて再保険に付されていること
(C) 参加船主の所有する関係船は、船主が第Ⅱ条(B)項に従いこの協定の当事者になった時、自動的にこの機構に参加しなければならない。
(D) 前記プール協定から独立して再保険に付されているとの理由により関係船とならない船舶であっても、船主とそのクラブ間の書面での合意により関係船と看做すことができる。
(E) 一旦この機構に参加した関係船は、以下各号に定める事態が生ずるまで参加を継続する。
(1) 関係船でなくなった場合(トン数の再測度又は前 III(B)項に言う保険・再保険のxxが終了した結果として)
(2) 参加船主の所有でなくなった場合
(3) 参加船主が第 X 条に従いこの協定から脱退した場合
第Ⅳ条 1992 年基金への補償
(A) 事故により加入船が油濁損害を起こし、(i)その船舶の参加船主に責任条約に基づく責任が発生し、(ii)1992 年基金が 1992 年基金条約に基づき補償を支払ったか支払うことが予想される場合、当該船主は 1992 年基金に本条に定める金額を補償する。
(B) 補償は以下の費用及び損害に対しては行われない。
(1) 参加船主が責任条約第 III 条第 3 項により責任を免除されている損害防止措置費用で、1992 年基金条約第 4 条第 3 項により 1992 年基金が支払責任を負うもの
(2) 参加船主ではなく 1992 年基金の責めに帰する範囲内における一切の油濁損害
(C) 参加船主が支払うべき補償金額は、油濁損害に対して 1992 年基金が支払ったか支払うことが予想される補償額とする。ただし、
(1) 補償は、一事故当たり 20 百万計算単位相当金額から責任条約第 V 条第 1 項により制限される当該参加船主の責任限度額を差し引いた金額を超えないものとする。
(2) 前 IV(C)(1)号に規定する控除は、参加船主の責任制限が可能か否かにかかわらず行われる。
(D) ここで述べる補償の支払い責任は、参加船主や船主のクラブが有する 1992 年基金から事故に関連する金額を回収するための権利に影響を与えるものではなく、その権利は彼ら自身が本来有するものであるか、代位求償や債権譲渡やその他に基づくものであるかを問わない。疑義を生じさせないために、それら金額は前 IV(C)項に言及する補償額に含まれるものとする。
(E) 1992 年基金と別段の合意がない限り、
(1) 1992 年基金が第V 条(C)項に定める償還請求結果通知を出した時に 1992 年基金に参加船主から補償を受取る権利が発生する。
(2) 前号以前にあっては、1992 年基金は予想される補償額と見做す額と同額を、参加船主から補償の内金として受取る権利を有する。
(3) この協定に基づき 1992 年基金が受取る権利を有する金額の支払いは、1992 年基金条約の第 10 項及び第 12 項に従ってなされる当該事故に対する分担者の
負担金の支払いと同時に行なわれる。
(F) (1) 前 IV(E)項に規定する内払いは以下条件により行なわれる。
(i) 1992 年基金により、当該事故の補償のみに関連する特別勘定に計上されること。
(ii) 参加船主が支払った金額のうち 1992 年基金による補償が完済した後の剰余は参加船主に返戻されること。
(iii) 第三者に対する償還請求により回収された金額から成る剰余については、以下第 V 条に従い参加船主に貸記すること。
(2) 本 IV(F)項は 1992 年基金が当該事故から生じるクレームへの支払いにこの協定によって受取った金額を充てることを妨げるものではなく、1992 年基金に受取った金額(もしくは剰余金)を独立した銀行口座に保管することや 1992 年基金の他の資産と区別して運用することを要求するものでもない。
(3) 1992 年基金が別段の通知を受けない限り、参加船主に保険を提供するクラブが参加船主に代わり、本条に基づく返戻金を受領する権限を有しているものと見做す。
(G) この協定において、計算単位の各国通貨への換算は、責任条約第 V 条第 9 項に従い行なわれる。
第Ⅴ条 第三者に対する償還請求
(A) 1992 年基金の第三者に対する償還請求の実行、あるいは示談解決を含む具体的な請求方法の決定に関して、1992 年基金は絶対的な裁量権を有する。
(B) 前 V(A)項の規定を損ねることなく、
(1) この協定の下での参加船主の支払いは、補償(もしくは内払い)として支払った金額に関して 1992 年基金が第三者に対して有する求償権を参加船主がこの協定に従って第三者から回収することに利益のある範囲において代位取得することを条件に行なわれる。
(2) 1992 年基金は、参加船主又はそのクラブが実際あるいは潜在的な求償者となる償還請求について、参加船主又はそのクラブと協議することができる。
(3) この協定は、1992 年基金、船主及びクラブが償還請求の費用の分担や回収金額
の分配に関する条件を含め、特定の事故において適切と考えられる償還請求に関する取り扱い方法に合意することを妨げるものではない。
(C) この協定において、償還請求結果通知とは、1992 年基金により当該事故に関し第三者に対して実行又は検討された全ての償還請求が確定的決定に至ったことの参加船主宛通知をいう。本項でいう確定的決定には、償還請求を行なわない、又は既に開始した償還請求を中止するという 1992 年基金の決定を含む。
(D) この協定の下での参加船主の支払いは以下条件により行なわれる。
(1) 1992 年基金が第三者に対して償還請求することを決定した場合、別段の合意がない限り、1992 年基金は(a)この協定の下で参加船主が既に支払った補償額を差し引くこと無く、1992 年基金が支払ったか支払う予定の補償額を回収することを求めるか、あるいは、(b)要求に応じ、以下 V(D)(2)号で定める書面を作成するものとする。
(2) 1992 年基金が第三者に対して当該事故に関する償還請求をしない(あるいは償還請求開始後これを中止する)ことを決定した場合、1992 年基金は要求がありしだい、参加船主又はそのクラブがこの協定の下で支払われた補償に基づき第三者から回収することに利益のある範囲において、代位求償、債権譲渡又はその他の方法により、1992 年基金が当該第三者に対して有する求償権を参加船主又はそのクラブに委譲する(もしくは委譲を確約する)ために必要となる合理的な書面を作成する。
(3) 参加船主が補償を支払った後に 1992 年基金が何らかの理由により第三者から金額を回収した場合は、以下控除を行なったうえで参加船主へ返戻する。
(i) 1992 年基金が償還請求に要した費用
(ii) この協定の下で参加船主が支払った金額を上廻って、当該事故に関し 1992 年基金が油濁損害について支払ったか支払うことが予想される補償と同じ額。
(E) 1992 年基金が別段の通知を受けない限り、参加船主に保険を提供するクラブが参加船主に代わり、前 V(C)項に基づく通知の受領、前 V(D)項による参加船主へ支払われる金額の受領、及び本条Ⅴの運用に関するすべての事項に合意する権限を有しているものと看做す。
第Ⅵ条 諸手続き
この協定に基づく補償に対して有する 1992 年基金のあらゆる権利は、油濁損害発生日から
4 年以内に何らかの訴訟を起こさない限り消滅する。しかし、どのような場合であっても油
濁損害を引き起こした事故発生日から 7 年経過後はいかなる訴訟も提起できない。その事
故が連続する複数の事故から成る場合は、最初の事故発生日から数えて 7 年間とする。
第Ⅶ条 改正
(A) この協定は全参加船主の代理人としての国際グループによりいつでも改正することができる。
かかる改正は国際グループが1992 年基金に書面により通知した日から3 ヶ月後に効力を生じる。
(B) 各参加船主は、以下各号を条件として、国際グループが自己に代わりこの協定の改正に同意する権限を付与されることを了承する。
(1) 当該船主のクラブがこの協定の改正に関して授権し、かつ
(2) 当該船主のクラブが当該クラブの保険契約規定の改定に必要な手続きと同じ手続きによりこの協定の改正を承認していること
(C) 第 IX 条(A)項を前提として、この協定のいかなる改正も、その改正が発効する以前に発生した事故に関する権利及び義務には影響を与えない。
第Ⅷ条 再調査
(A) 2016 年に、2016 年 2 月 20 日までの 10 年間の油濁損害クレーム実績に基づき再調
査を行なう。再調査の目的は、(1)責任条約、1992 年基金条約及び議定書の下で 2006
年 2 月 20 日以降に船主と油受取人各々が負担した金額の全クレーム額に占める概算割合を確定し、(2)この協定の効能、運用、成果を検証することである。再調査は、その後 5 年毎に行うこととする。
(B) 油受取人の代表と 1992 年基金と追加基金の事務局は、本条に基づく再調査に諮問員として参加することが要請される。参加船主は国際グループに参加船主に代わり再調査を行なう権限を付与する。
(C) 本条に基づく再調査の結果、2006 年 2 月 20 日以降の期間に船主、油受取人のいず れかが前 VIII(A)項でいう全クレーム額の 60%を超える割合を負担していることが 判明した場合、概ね均等配分を維持する為に金銭上の負担を調整する手段を講じる。
(D) 前項の手段は以下を含む。
(1) この協定の下で支払われる補償の額を増減させることを規定する為のこの協定の改定。
(2) この協定の効能、運用、成果を改善する為のこの協定の改定。
(3) 船主と油受取人間の油濁による費用の配分に関する他の協定の締結もしくは改定。
(4) 概ね均等配分を維持する為に適当と思われる他の手段の策定。
(E) 本条に基づく再調査の結果、船主、油受取人のいずれかが前 VIII(A)項でいう全クレーム額の 55%超 60%以下の割合を負担していることが判明した場合、上述手段を講じることが可能(ただし、強制されるものではない)。
第 IX 条 有効期間と終了
(A) この協定は、グリニッジ標準時の 2006 年 2 月 20 日正午以降に発生した事故に適用される。
(B) 以下に定める条項に従って事前に終了されない限り、責任条約、1992 年基金条約及び議定書によって設立された補償制度を実質的かつ大幅に改変するような国際条約が発効されるまで、この協定は効力を有する。
(C) 各参加船主は、以下の場合、国際グループが全参加船主に代わりこの協定を終了する権限を付与されることを了承する。
(1) クラブがこの協定に基づく補償を支払うという参加船主への責任保険の提供を取り止めた場合
(2) この協定の成果が特定の国もしくは国々において非合法となった場合(その場合、この協定は当該国に関しては終了する一方、他の国では効力を持続する余地は残る)
(3) 国際グループの再保険者がこの協定で規定される責任に対する適当な保険の提供を取り止め、それと同一条件の当該危険に対する保険を世界市場にて合理的に手配出来ない場合
(4) 国際グループが解散した場合
(5) この協定の成果を妨げ、かつ参加船主の合理的な予見を外れる事象や状況によって、当該船主のクラブがこの協定の終了に関して授権した場合(かつ保険契約規定の改定に必要な手続きと同じ手続きによりこの協定の終了を承認した場合)
(D) この終了は国際グループが 1992 年基金に書面により通知した日から 3 ヶ月が経過するまで効力が生じない。
(E) この協定の終了は、その終了日以前に発生した事故に関する権利及び義務には影響を与えない。
第 X 条 脱退
(A) 参加船主は以下各号の場合この協定から脱退できる。
(1) 当該船主のクラブに対し 3 ヶ月以上前に書面による脱退の通知を提出した場合
(2) この協定の改正による場合、ただし以下各号を条件とする。
(i) 当該船主のクラブがその組合員にこの協定の改正の承認を求めた際に、当該船主はその改正に反対する投票権を行使していること
(ii) 当該船主のクラブの組合員が改正を承認してから 60 日以内に、当該船主は自己のクラブに対して書面により脱退の通知を行なっていること
(iii) 本項による脱退は、改正の発効と同時、又は当該船主の通知を当該船主のクラブが受領した日のいずれか遅い方に有効となること
(B) 参加船主は、関係船の船主でなくなった時、即座に当該船舶についてのみこの協定から脱退したものと看做され、当該船主又はそのクラブが関係船の船主でなくなった旨を 1992 年基金に書面にて通知しなければならない。
(C) この協定から脱退した船主は、脱退が有効となった日以降、この協定に基づく義務を負わない。ただし、脱退日以前に発生した事故に関する権利及び義務には影響を与えない。
第ⅩI 条 1992 年基金の法的権利
(A) 1992 年基金は、この協定の当事者でなくとも、この協定に記載される補償に関する
強制力のある権利を法的に享受することを意図しており、それ故 1992 年基金は、この協定に基づき権利を主張するとき自己の名称で参加船主に対して訴訟を提起することができる。上記訴訟は、この協定の解釈、効力又は成果に関する争点を解決する為に 1992 年基金によって参加船主に対してなされる訴訟を含む。
(B) 前 XI(A)項及び第 VII 条(A)項にもかかわらず、この協定に従ってなされる改正、終了又は脱退に関して、1992 年基金の同意は必要としない。
(C) この協定の当事者は、この協定に基づく加入船(又は以前の加入船)に関する補償に関するクレーム、もしくはこの協定の解釈、効力又は成果に関する争点を解決するための訴訟を事故発生時に当該船舶を引き受けていたクラブに対して直接請求する条件について、1992 年基金と合意する権限を国際グループへ付与する。この協定の当事者は、1992 年基金が加入船に関する債権を行使するためクラブに訴訟を提起した場合に、クラブが参加船主に当該訴訟に加わるよう要求できることを承諾する。
第 XII 条 準拠法及び裁判管轄
この協定は英国法に準拠し、この協定の下における紛議に関しては、英国高等法院が排他的裁判管轄権を有する。
以上
添付資料 3
1)国際 P&I グループ推奨「STOPIA2006 用船契約条項」
船主は、小型タンカー油濁補償協定 2006(STOPIA 2006)の参加船主であり、かつ本船が STOPIA2006 に加入していること、そして本契約期間中これを維持することを担保する。ただし、以下を条件とする。
(i) 本船が STOPIA2006 第 3 条に定義される関係船であり続けること
(ii) STOPIA2006 が STOPIA2006 第 9 条により終了しないこと
2)国際 P&I グループ推奨「TOPIA 用船契約条項」
船主は、タンカー油濁補償協定(TOP IA)の参加船主であり、かつ本船が TOPIA に加入していること、そして本契約期間中これを維持することを担保する。ただし、以下を条件とする。
(i) 本船が TOPIA 第 3 条に定義される関係船であり続けること
(ii) TOPIA が TOPIA 第 9 条により終了しないこと
92CLC /92 FC/追加基金/STOPIA 2006/TOPIAの補償額
300
280
760
260
740
2
40
220
200
追加基金(3rd Tier)
油社:50%
船主:50% = TOPIA
750
203
SDR (million)
180
160
92 FC
140
120
100
STOPIA 2006
80
60
92 CLC
40
20
0
10 20 30
40 50 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150
G/T (x1,000)
STOPIA 2006
92 CLC
SDR (million)
Notes) 1. 現行の”92CLC””92FC”は、2003年11月1日に発効
2. 3rd Tierは、2005年3月3日に発効
25
20
15
10
5
0
0
5
10
15
20
25
30
35
G/T (x1,000)
29.548