(注)企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面に与えるインパクトを包括的に分析し、特定され たポジティブインパクトの増大とネガティブインパクトの減少に向けた取組みを支援する融資手法。企業による SDGs 達成への貢献度合いを評価指標とし、その過程を開示します。
各 位
株式会社八十二銀行
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」第 2 号案件について
八十二銀行(頭取 xx xx)と一般財団法人長野経済研究所(理事長 xx xx)は、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(注)」の第 2 号案件となる融資契約を旭松食品株式会社(代表取締役社長 xx xx)と締結しましたので、以下のとおりお知らせします。
(注)企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面に与えるインパクトを包括的に分析し、特定され たポジティブインパクトの増大とネガティブインパクトの減少に向けた取組みを支援する融資手法。企業による SDGs 達成への貢献度合いを評価指標とし、その過程を開示します。
1. 概要
x | 約 | 日 | 2022 年 9 月 29 日(木) |
契約先 | 名称 | 旭松食品株式会社 | |
所在地 | xxxxxxxxxxx 0 xx 0-3 | ||
設立年月 | 昭和 25 年 12 月 | ||
資本金 | 1,617 百万円 | ||
金 | 額 | 200 百万円 | |
資 金 使 途 | 運転資金 | ||
モニタリング | 八十二銀行および一般財団法人xx経済研究所は、ポジティブインパクト金融原則に基づき構築した実施態勢に従い、インパクト評価を踏まえ旭松食品株式会社が設定した KPI を、融資期間中におけるパフォーマンスとしてモニタリングします。 | ||
評価の対象 | 旭松食品株式会社 |
2. 旭松食品株式会社の取組み(※ 詳細は別紙をご参照ください)
(1) 旭松食品株式会社は「私たちはお客さまの生活文化の向上と共に歩み、より快適で、健康な食生活を追求し日々に、新たに前進します。」を企業理念に、また「品質第一」「参画経営」「自主挑戦」を経営理念に掲げ、国内外において凍豆腐・加工食品等の製造販売をされています。
(2) インパクト評価では、ポジティブインパクトが期待できる主な活動として、GLOBAL G.A.P 認証大豆の原材料使用、FSSC22000 認証に則った製造管理、ASIA GAP 認証に則った自社農場での原料大豆生産による「安全で満足度の高い製品の提供」、大学等と連携し凍豆腐の健康機能性について研究継続をすることによる「快適で健康な食生活の追求」等が挙げられました。
(3) ネガティブインパクトを低減する活動としては、製品パッケージ包材の使用量削減による「非再生資源の使用量削減」や、プラスチック蓋の全廃による「廃棄物の管理および削減」に取り組まれます。
以 上
評価対象
借入人貸付人
評価書作成者
評価基準日
旭松食品株式会社
旭松食品株式会社 株式会社八十二銀行
一般財団法人長野経済研究所
2022 年8月 25 日
目次
1. はじめに 1
2. 企業概要 2
(1)基本情報
(2)沿革
(3)事業拠点
(4)連結子会社
3. 理念・方針 4
(1) 企業理念・経営理念
(2) 品質・食品安全方針
(3) SDGs への取り組み
(4) 環境への取り組み
(5) 地域社会への貢献
4. 製品 10
(1)凍豆腐
(2)加工食品(即席みそ汁等)
(3)その他食料品(医療介護食・その他)
(4)各製品群の主要製品および売上高
5. 包括的分析およびインパクトの特定 14
(1)業種別インパクトの状況
(2)国別インパクトの状況
(3)インパクトレーダーチャート
(4)インパクトの適切性確認
(5)各インパクトに関連する事業活動
(6)インパクトの特定
6. 特定したインパクトと設定 KPI 20
(1)ポジティブ・インパクトの伸長・拡大
(2)ネガティブ・インパクトの緩和・低減
7. インパクト管理体制 29
8.モニタリング方法 29
9.総合評価 29
本評価書に関する重要な説明 30
1. はじめに
一般財団法人長野経済研究所は株式会社八十二銀行が旭松食品株式会社に対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、旭松食品株式会社の活動が、社会・環境・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価した。
分析評価は、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI )が策定した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則っている。
本ファイナンスの概要
契約期間 | 2022 年9月 29 日~2027 年8月 31 日 |
金額 | 200,000,000 円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年間 |
2.企業概要
(1)基本情報
会社名 | 旭松食品株式会社 |
本店所在地 | x000-0000 xxxxxxxx 0000 xx |
本社所在地 | x000-0000 xxxxxxxxxxxxxx0x0x |
代表取締役社長 | xx xx |
創業 | 1950 年(昭和 25 年)12 月 |
資本金 | 1,617 百万円(2022 年3月末現在) |
事業内容 | こおりどうふ 凍豆腐・加工食品等の製造販売 |
単体売上高 | 7,572 百万円(2022 年3月期) |
社員数 | 234 人(2022 年3月末現在) |
(2)沿革
年 | 概要 |
1950 年(昭和 25 年) | 旭松凍豆腐株式会社として設立 |
1951 年(昭和 26 年) | 凍豆腐の製造・販売開始 |
1962 年(昭和 37 年) | 天竜工場竣工 |
1967 年(昭和 42 年) | xxx豆腐販売株式会社設立 |
1971 年(昭和 46 年) | ダイヤ豆腐株式会社と業務提携 |
同年 | 販売部門として信州豆腐販売株式会社(後の信州食品株式会社)設立 |
1972 年(昭和 47 年) | 重曹を用いた膨軟加工製品(アンモニア無添加)「xxxx豆腐」を販売 |
1978 年(昭和 53 年) | 食品研究所完成、研究開発体制を強化 |
1981 年(昭和 56 年) | 即席みそ汁「生みそずい」発売 |
1982 年(昭和 57 年) | 第4回食品産業優良企業表彰において「農林水産大臣賞」を受賞 |
1983 年(昭和 58 年) | 社名を旭松凍豆腐株式会社から旭松食品株式会社に変更 |
同年 | 「生みそずい」、「昭和 57 年度優秀ヒット賞」(日本食糧新聞社)を受賞 |
1984 年(昭和 59 年) | 納豆「なっとういち」長野県下にて発売 |
1985 年(昭和 60 年) | ダイヤ豆腐株式会社、信州食品株式会社と合併 |
1990 年(平成 2 年) | 本社機能を大阪府大阪市に移転、xx県xx市を本店とする |
1992 年(平成 4 年) | 大阪証券取引所市場第二部に上場 |
1998 年(平成 10 年) | 物流子会社旭松フレッシュシステム株式会社設立 |
2004 年(平成 16 年) | xxxxx食品有限公司(即席みそ汁用具材料の製造・販売)を設立 |
2007 年(平成 19 年) | xxxxx大進出口有限公司(販売・貿易業)を設立 |
2011 年(平成 23 年) | 納豆事業における営業権、商標権を譲渡 |
2013 年(平成 25 年) | 東京証券取引所市場市場第二部に移行(市場統合による) |
2014 年(平成 26 年) | 独自製法の炭酸カリウムを用いた膨軟加工製品販売、これを機に「xxx x豆腐」の名称に自社ブランドを統一 |
2015 年(平成 27 年) | 凍豆腐業界では初となる FSSC22000 を認証取得(医療食を除く) |
2016 年(平成 28 年) | 全社でFSSC22000 を認証取得 |
2017 年(平成 29 年) | xx県下伊那郡泰阜村に有機質肥料生産施設 旭松バイオセンター竣工 |
2021 年(令和3年) | 健康経営優良法人 2021(大規模法人部門)に認定 |
2022 年(令和4年) | 市場再編により東京証券取引所スタンダード市場へ移行 |
(3)事業拠点
種類 | 名称(所在地) |
営業 | 東日本支店(xxx中央区)、西日本支店(大阪府大阪市)、仙台営業所(x x県仙台市)、名古屋営業所(愛知県名古屋市)、飯田営業所(xx県xx市)、岡山営業所(岡山県岡山市)、福岡営業所(福岡県福岡市) |
生産 | 天竜工場(xx県xx市)、飯田工場(xx県xx市)、伊那工場(xx県上伊那郡xx町)、xx工場(xxxxxxxxxx) xxxxxxxxx(有機質肥料生産施設/xx県下伊那郡泰阜村) |
研究 | 食品研究所(xx県xx市) |
(4)連結子会社
名称 | 住所 | 当社事業との関連 |
旭松フレッシュシステム株式会社 | xx県xx市 | 製品の輸送・保管、原材料の輸送・仕入 |
xxxxxx食品有限公司 | 中国xxxxx市 | 即席味噌汁用具材料等の製造 |
xxx松康大進出口有限公司 | 中国xxxxx市 | 中国産品の貿易、グループ製品の中国 での販売 |
出典:上記(1)~(4)当社ウェブサイトおよび有価証券報告書
▲天竜工場全景
3.理念・方針
(1)企業理念・経営理念
企業理念 | 私たちは お客様の生活文化の向上と共に歩み より快適で、健康な食生活を追求し日々に、新たに前進します。 |
経営理念 | 品質第一参画経営自主挑戦 |
上記理念は、当社の凍豆腐の製造方法や原材料である大豆へのこだわり、また凍豆腐自体の健康機能性の研究・啓蒙活動などの幅広い活動に展開され、創業以来の「食を通じた社会貢献」に生かされている。
(2)品質・食品安全方針
食品メーカーとして、上記企業理念・経営理念を基に以下のとおり品質・食品安全方針を定めている。
私たちは、「企業理念」、「経営理念」を旨とし法令を遵守してものづくりを行います。私たちは、お客様の声に耳を傾け、安全で満足していただける商品を提供します。
私たちは、全てのステークホルダーと充分なコミュニケーションを取り食品安全マネジメントシステムを継続して改善します。
⮚ 凍豆腐業界で初めてのFSSC22000※認証取得
これらを反映した代表的な取り組みとして、原材料の調達から製造・物流までの全プロセスに厳格な食品安全を要求する国際的な食品安全マネジメントシステム「FSSC22000」の認証を 2015
年5月に凍豆腐業界で初めて取得(製造拠点を対象)し、翌年の 2016 年には対象を全社・全拠点に拡大し認証を取得している。
※FSSC22000
国際食品安全イニシアチブ ( GFSI : Global Food Safety Initiative ) が認証した食品安全の認証スキームの国際認証規格。食品安全マネジメントシステム の 国 際 規 格 で あ る ISO22000 を ベ ー ス に ISO/TS22002-1、追加要求事項を加えた新規格で、 ISO22000 に比べ厳しい要求事項となっている。
◀FSSC22000登録証
⮚ GLOBAL G.A.P.認証※大豆の調達
さらに、原料調達面でも安全性を重視し、GLOBAL G.A.P.認証取得農場からの原料調達を進め、凍豆腐の原材料は、一部にASIA GAP 認証大豆を使用する以外は全てGLOBAL G.A.P.認証大豆 としている。
※GLOBAL G.A.P.認証
GFSI が認証し、FoodPLUS 社(ドイツ)が運営する農業生産システムの国際規格で、食品安全・労働環境・環境保全へ配慮した持続的な生産活動を要求事項としている。欧米の食品小売・製造事業者は原材料調達において、これら認証取得を取引条件とする傾向にある。
⮚ 自社大豆栽培農場の ASIA GAP 認証※取得
※ASIA GAP 認証
GFSI が認証し、日本 GAP 協会が運営する GAP 認証。アジア共通の GAP のプラットフォームとして位置づけられ、食品安全、環境保全、労働安全、人権福祉、農場運営の要素を含む。
また、2019 年には国内自社栽培農場においてASIA GAP 認証を取得、自社製品の一部に使用するほか、地域の味噌・醤油メーカーへ原料として供給している。
▲自社栽培大豆農場 ▲ASIA GAP 指導員◻ゴ
上記認証原材料の調達や自社での認証取得により、以下に示す体制のとおり、調達・製造・流通に至る過程での品質・安全性を確保している。
認証制度による製品の品質・安全性確保に対する取り組み
大豆生産
(生産者)
流通
製造
(当社)
流通
GLOBAL
G.A.P
GFSI に認められた認証規格
ASIA
GAP
FSSC22000
小売業消費者
⮚ 製品開発と食品研究
1978 年に食品研究所を新設し、現行製品の改良や、味・栄養価の追及、高品質化のための生産技術から、容器・包装資材の適合性、食品基礎にわたる幅広い研究活動を行っている。
▲食品研究所 ▲研究活動
◇凍豆腐の健康機能性・有用性の追求
100gあたり | タンパク質 | 脂質 | 糖質 | カルシウム | 出典:当社ウェブサイトより |
凍豆腐 | 51.7g | 34.6g | 0.8g | 490mg | |
小麦粉(薄力粉) | 8.3g | 1.5g | 73.3g | 20mg | |
米国産大豆(全粒・乾) | 33.0g | 21.7g | 12.9g | 230mg |
凍豆腐は原材料に「畑の肉」とも言われる大豆を使用していることから、豊富な栄養素を含んでいる。栄養価は小麦粉・大豆に比べ、植物性タンパク質やカルシウムを多く含む反面、糖質は非常に少ない食品である。
元来、栄養価の高い食材としては知られているが、これらに加え、当社の研究成果として、凍豆腐に含まれるタンパク質の約3割を占めるレジスタントタンパク質に、血中の悪玉コレステロール値の引き下げや、食後中性脂肪の上昇を抑制するなどの脂質代謝改善効果が報告されている。また、糖質については、凍豆腐の長期摂取がもたらす血中HbA1減少による糖尿病予防・改善効果が報告されている。
さらに、機能性の研究に留まらず、大豆の持つ栄養価をよりおいしく、手軽に味わうために、即席みそ汁から医療介護食に至るまで幅広い製品アイテムの開発につなげている。なお、この開発には、消費者の声が反映されており、当社製品を使用した数多くのレシピ考案とウェブサイトでの公開にも生かされている。
◇技術開発(特許取得)による製品の減塩化に成功
塩分摂取量の多い日本の食生活改善のため、凍豆腐を柔らかくする工程(膨軟加工)で使用する重曹を炭酸カリウムに切替え、製品の食塩相当量(ナトリウム)を 95%減少させると同時に、塩分排出促進効果のあるカリウムを一般的な凍豆腐と比べ約 26 倍に増やすことに成功してい る。この取り組みにより、第6回健康寿命をのばそう AWARD「厚生労働省健康局長賞」を受賞している。
◇xxxx豆腐のスーパーフード認証取得
凍豆腐の研究開発の結果、2021 年 11 月には、当社の主力製品である「xxxx豆腐 10 個入」が国際スーパーフード・アンチエイジング学術機構から、大豆食品として初めて「スーパーフード」として認証を受けた。栄養バランス、栄養価の高さ、一部の栄養・健康成分が高いこと、食
材と健康食品としての機能を併せ持つことが認められた。
(3)SDGs への取り組み
企業理念・経営理念および品質食品安全方針の具体化策、社会・環境・経済面で当社が認識する様々な課題への対応策として、「SDGs 推進委員会」が中心となり SDGs 経営を進めている。
⮚ 組織体制
推進組織として、2020 年6月に「SDGs 推進委員会」を設置し、以降毎月、委員会を開催している。組織横断的に各部部課長から委員を選抜し、委員長は部長クラスが務め、さらにオブザーバーに2名の役員を加えることで、経営との意思疎通のしやすさを意識した体制を構築している。
⮚ SDGs 推進委員会の役割
・SDGs に関する諸施策の検討・企画立案、PDCA 管理、および経営への報告・提言
・SDGs の社内向け啓蒙活動
※xx県 SDGs 推進企業登録制度
長野県が県内企業の SDGsへの取り組み促進のために設けた登録制度で、本制度は長野県内に本店・支店等を有する事業者が、自社の SDGs への対応状況を確認し、これをベースに社会・環境・経済の3側面に関する重点取り組み項目を設定・開示し取り組むものである。現在約 1,600 者が登録し活動中である。(参考: NAGANO SDGs BUSINESS PORTAL
xx県 SDGs 推進企業情報サイト
・xx県 SDGs 推進企業登録制度※で開示した当社の重点取り組み項目の推進および管理など
▲SDGs 推進委員会活動報告
▲xx県SDGs 推進企業登録証
⮚ xx県 SDGs 推進企業登録制度での取り組み
側面 | 内容 | 2030 年に向けた指標 | 対応 SDGs |
社会 | 持続可能な原料調達への取組 | GAP 認証大豆の調達 2030 年 100% | |
環境 | 全社 CO2 の削減への取組 | CO2 総排出量 2030 年 11,818 トン 11.6%削減 (2018 年比) | |
経済 | 地元産大豆栽培をとおした地域循環型社会実 現への取組 | 地元生産大豆(つぶほまれ)使用の商品 2030 年までに累計 20 商品(2019 年以降) |
当社の開示した重点取り組み項目は以下のとおりで、社会・環境・経済を意識した取り組み内容となっている。
(4)環境への取り組み
⮚ GAP 認証原料大豆の調達
原料大豆の栽培過程での環境への配慮から、GAP 認証原料大豆の調達を進め、凍豆腐の原材料は、一部にASIA GAP 認証大豆を使用する以外は全てGLOBAL G.A.P.認証大豆としている。また、凍豆腐を始め、味噌・醤油といった地域特産品の原料に提供する大豆についても、自社
農場において GAP 認証(ASIA GAP)を取得している。
⮚ 製品包装材に係る配慮
凍豆腐製品の一部には包装材として紙が使用されているが、これらの調達段階での森林破壊に対する配慮から、主力製品の包装について 2020 年 11 月から FSC®(Forest Stewardship Council® 森林管理協議会)認証の素材に変更している。
また、2022 年7月から主力製品の一部の包装に使用するプラスチックについても、減量化を開始し、これによりプラスチック使用量を 16%減量する予定である。
▲包装材変更・減量化対象製品
⮚ 排水処理に伴う環境負荷軽減
凍豆腐の製造で使用した水は、環境関連法令に則り排水処理されているが、排水から除去された大豆由来の沈殿物について、従来は産業廃棄物として処理していた。これらの有効活用策として、自社処理施設である旭松バイオセンターでの堆肥化に成功し、地域の農場へ提供され、当社の事業活動による産業廃棄物排出量の削減につなげている。
▲旭松バイオセンター ▲製造された堆肥
⮚ CO2 排出量削減への取り組み
事業活動により排出される CO2 排出量の削減目標を掲げ、生産過程の排熱の有効利用や再生可能エネルギーの活用など、削減に積極的に取り組んでいる。
(5)地域社会への貢献
⮚ 地方公共団体との連携
◇xx県xx市との連携「つぶほまれプロジェクト」
2006 年にxx市と地域経済の自立化を目的に相互連携・協力する「パワーアップ協定」を締結している。大豆を使用する食品メーカーの立場から、xx県で開発され、地域特産種として栽培されている大豆「つぶほまれ」の栽培促進と商品化を進めている。自社農場での栽培を始め、地元農家の協力により確実に作付け面積を拡大させている。また、地元の味噌・醤油メーカーとのタイアップにより、xxxブランド商品として、地域内で凍豆腐・味噌・醤油の新商品の販売開始に至っている(2022 年3月末時点8商品)。今後はこの商品数増加を図る予定である。
◇xxxxxxxxxxxxxx
0000 年3月には、泰阜村との間で循環型社会の構築や農工業、農業と福祉の連携推進を目的に包括連携協定を締結している。自社製品の製造過程で排水から除去される大豆由来の沈殿物と村内から提供される間伐材チップを旭松バイオセンターで有機肥料として、研究・生産・製品化し、村内農場への提供を進めている。このほかには、村内遊休農地やxx放棄地での大豆栽培、学校や福祉施設への食材提供、高齢者らの農業参入の後押し、人事交流や研修会開催などを今後予定している。
◇食育事業
地元産の大豆「つぶほまれ」を学ぶ機会として、xx市内の小学校で種まきを始めとした栽培体験授業を開催している。このほかに地域の小学校の給食用として、ASIA GAP 認証を受けた自社栽培大豆から製造した豆腐や粉豆腐を提供し、食の重要性・地域農業の課題や SDGs について考える機会を創出している。
◀小学生による
栽培体験授業の様子
⮚ 農福(農業と福祉)連携事業
障がい者が農業分野での活躍を通じて自信や生きがいを持って社会へ参画することを目的とした農福連携事業を推進しており、2021 年5月からxx県下伊那郡豊丘村の就労支援事業所こぶし園と共同で大豆栽培を開始している。xx市内の遊休農地を活用した大豆栽培(肥料散布・草取り・収穫など)の共同作業を通じ、障がい者の社会進出の機会を創出している。
◀こぶし園との 共同作業の様子
4.製品
当社の事業は食料品製造事業の単一セグメントで、以下のとおり、(1)凍豆腐、(2)加工食品(即席みそ汁等)、(3)その他食料品の製品群から構成されている。
(1)凍豆腐※
当社の主力製品、製品ブランド名を「xxxx豆腐」とし、定番の1枚全形(タテ約5㎝×ヨコ約4
㎝×厚さ約1㎝、約16.5g)を基本に、多様な調理方法・好みに対応するため、1/6 サイズから1/300サイズ、粉末タイプまで、家庭用・業務用として多くの商品アイテムを取り揃えている。
なお、創業以来の生産技術の近代化・技術向上に加え、研究開発や消費者への健康機能性の訴求などの継続的な企業努力により、近年では関連品を含む凍豆腐マーケットで当社製品がトップシェア約4割を占めている。
▲調理方法に応じた様々なサイズの製品
※凍豆腐
大豆を原材料とした豆腐を、凍結・熟成・解凍・脱水・乾燥させ、常態では固形多孔質の食品である。主な調理方法は、水で戻し、だし汁で煮込むなどして味付けする。約 800 年前(一説には約 1,200 年前)から伝わる日本の伝統的食材で、栄養価の高さに加え、良質なタンパク質を多く含むため、健康機能性も認められた和食の代表的素材の一つである。古来、冬場の厳しい寒さを利用し製造する寒冷地方の食材であったが、人工的な冷凍・乾燥技術の開発により近代的通年生産が可能となった。
・表記・呼称
地域やメーカーにより、凍豆腐・こおり豆腐・xx豆腐・こうや豆腐・凍み豆腐などと表記・呼称が分かれるが、本評価書内では「凍豆腐」に統一する。
▲凍豆腐の調理例
当社の凍豆腐製造工程
2.精選・洗浄
3.浸漬
4.粉砕
1.大豆調達
8.プレス
7.凝固
豆乳から豆腐へ
6.ろ過
豆乳の抽出
5.煮沸
14.膨軟加工
ぼうなん
10.切断
11.凍結
12.低温熟成
約3週間
17.包装・出荷
13.解氷
15.乾燥
16.検査
9.冷却
▲10.切断 ▲13.解氷 ▲17.包装・出荷
(2)加工食品(即席みそ汁等)
⮚ 即席みそ汁
生みそ風の原料にお湯を注ぐタイプの即席みそ汁で、製品ブランド名を「生みそずい」とし、小袋入りとカップ入りを製造している。当初は他社の粉タイプが市場先行していたが、1981 年にみそ本来のうまみを生かす商品として、当社が業界初の生みそタイプを開発し販売、これがヒット商品となり、以降当社製品群が即席みそ汁市場をリードするきっかけとなった。
⮚ オートミール
オーツ麦を加工した全粒穀物。こちらもカップ入りのお湯を注ぐ即席タイプで、製品ブランド名は
「オートミール」。白米に比べ糖質が少なく、食物繊維が豊富で、満腹感もあることから、ごはんの代わりの主食として浸透している。アイテム数の増加に加え、SNS の活用による販売拡大戦略の効果が見られる。
(3)その他食料品(医療介護食・その他)
⮚ カットグルメ
この製品群では原材料をみそや大豆に限定せず、幅広い食材から介護食を提供している。介護を必要とする全ての人に提供するため、おいしさはもとより、調理方法を工夫し、咀嚼のしやすさに応じた、やわらか常食・きざみ食・ミキサー食・とろみ食を用意している。完全調理済みの冷凍製品で解凍のみで食用可能で、アイテム数は約 100 種類にのぼる。介護する側・される側共に配慮した製品群で、開発には医療・介護の現場の意見が反映されている。
⮚ その他
いずれの製品群にも該当しない、大豆加工品のほか、OEM 生産によるフリーズドライ納豆・油揚げ製品などがある。
(4)各製品群の主要製品および売上高 (単位:百万円)
製品群 | 主要製品 | 連結売上高 (2022 年3 月期) |
凍豆腐 | ⮚ xxxx豆腐(紙箱包装) 10 個入、5個入、5個入(粉末調味料付・減塩粉末調味料付)など ⮚ xxxx豆腐(ポリエチレン袋包装) 12 個入、8個入、6個入、5個入、1/6 サイズ入、1/20 サイズ入、1/60サイズ入、1/150 サイズ入、きざみ、うす切り、粉豆腐、小サイズ(粉末調味料付・減塩粉末調味料付)など | 3,599 |
加工食品 (即席みそ汁等) | ⮚ 生みそずい(カップ入) なめこ、あさり、しじみ汁、ひきわり納豆汁、合わせ(長ねぎ・ほうれん草・とうふ)、とん汁、大盛とん汁など ⮚ 生みそずい(小袋入り) ひきわり納豆汁3食入、合わせ(長ねぎ・ほうれん草・とうふ)3食入、とん汁4食入、なめこ汁4食入など ⮚ オートミール ほたてバター風味、めんたいこ風味、だし醤油たまご風味、鶏白湯風味、xxの藻塩、完熟トマト、きのこクリーム、まろやかチキン、x xうめなど | 2,450 |
そ の 他 食料品 (医療介護食 ・ そ の他) | ⮚ カットグルメ 常食(五目豆、きんぴらごぼう、筑前煮、ひじきの煮物など)きざみ食(豆腐の中華五目煮、こうや豆腐の寄せ煮など) ミキサー食(こうや豆腐と海老の玉子とじ、五目豆など) とろみ食(白がゆ、高濃度おもゆ、ミキサーがゆなど) ⮚ その他 大豆ミート、納豆入りみそ汁の具、フリーズドライ納豆(粒タイプ・ひきわりタイプ)など | 1,984 |
参考:上記(1)~(4)当社ウェブサイトおよび有価証券報告書
5.包括的分析およびインパクトの特定
当社の事業活動全体に対する包括的分析を実施し、インパクトを特定する。
(1)業種別インパクトの状況
側面 | インパクト領域 | ポジティブ | ネガティブ | |
社会 | 入手可能性 、ア クセス可能性 、手 ごろさ 、品 質 | 水 | ||
食糧 | ● | |||
住居 | ||||
xx・xx | ● | |||
教育 | ||||
雇用 | ● | ● | ||
エネルギー | ||||
移動手段 | ||||
情報 | ||||
文化・伝統 | ● | |||
人格と人の安全保障 | ||||
xx・xx | ||||
強固な制度・平和・安定 | ||||
環境 | 質 (物 と 理 有 的効 ・化利 学 用 的 特性 ) | 水 | ● | |
大気 | ||||
土壌 | ||||
生物多様性と生態系サービス | ||||
資源効率・安全性 | ● | |||
気候 | ● | |||
廃棄物 | ● | |||
経済 | め 人 値 の と創 経 社造 済 会 的 の 価 た | 包摂的で健全な経済 | ● | |
経済収れん |
当社の事業について国際標準産業分類(ISIC:International Standard Industrial Classification of All Economic Activities)における「他に分類されないその他の食料品製造業」として整理され、その前提のもと、UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、ポジティブ・インパ クト(以下、「PI」)及びネガティブ・インパクト(以下、「NI」)が下表のとおり分析された。
(2)国別インパクトの状況
国別インパクトについて、日本では「住居」、「雇用」、「エネルギー」、「情報」、「文化・伝統」、「移動手段」、「水(質)」、「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」、「包摂的で健全な経済」のニーズが高く設定されている。
(3)インパクトレーダーチャート
ここまでの分析を踏まえ、業種・国の観点から推定された当社の事業に係るインパクト領域は、下図のとおりである。
Default Impact Map Positive Negative
Economic convergence Inclusive, healthy
economies Waste
Climate
Resources efficiency / security
Biodiversity & ecosystems
Soil
Other
Availability - Water
Food
Housing
Health & sanitation Education
Employment
Energy
Mobility Information
Air
QualitySt-rWonagteinrsitutions, peace & stability
Justice
Culture & heritage Integrity & security of
person
(4)インパクトの適切性確認
当社の業種特性とUNEP FI のインパクト分析ツールから示されたインパクト(14 ページ)の適切性を確認し、必要に応じ追加・削除を検討する。
⮚ 社会面のインパクト
社会面ではインパクトとして「食糧」(PI)、「保健・衛生」(NI)、「雇用」(PI・NI)、「文化・伝統」(PI)が示されている。
「食糧」の PI は、食品メーカーとして安全かつ栄養価の高い食品を消費者に提供できることである。
「保健・衛生」のNI は、製品の安全性の維持にある。また、PI として研究開発による製品の健康機能性の追求が可能であることから、これを追加特定する。「雇用」の PI は、地域の雇用創出にあり、 NI は、労働条件・環境次第では労災や従業員の離職誘発懸念が想定される点にある。「文化・x x」の PI は、食品の提供を通じた文化的生活の促進があるが、和食の伝統食である凍豆腐の価 値を守る活動も考えられる。
⮚ 環境面のインパクト
環境面ではインパクトとして「水」(NI)、「資源効率・安全性」(NI)、「気候」(NI)、「廃棄物」(NI)が示されている。
「水」の NI は、環境負荷が懸念される製造に使用した排水の管理にあるが、当社では、各生産拠点で環境関連法に則った厳格な管理の下で排水処理されており、十分な抑制が確認されているため、インパクトは特定するが KPI は設定しない。「資源効率・安全性」の NI は、製造過程で使用する水の管理のほか、消費段階での製品の包装材による環境負荷が想定される。「気候」の NI は、温暖化ガス排出による気候変動への影響が想定されるが、生産工程で使用するエネルギーの一部を重油から LPG へ切替える事などで、CO2 排出削減に対応し、xx県 SDGs 推進企業としての削減目標(P7 参照)も明確であるため、インパクトは特定するが、KPI の設定はしない。「廃棄物」の NI は、同じく消費段階での包装材廃棄による環境負荷に加え、製造過程で発生する廃棄物による環境負荷が想定される。
⮚ 経済面のインパクト
経済面では、インパクトとして「包摂的で健全な経済」(PI)が示されている。
「包摂的で健全な経済」のPI は、誰もがxxxxに評価される機会を確保し、適正な報酬を受け取ることができる健全な社会にあると考える。地域に根差した企業として、地域社会・経済の発展への貢献が想定される。
⮚ その他
当社が重要視する原材料である大豆の農林資源栽培は、一般的に生物多様性の消失、気候変動、労働者の権利侵害や児童労働など、環境や地域社会に様々な課題を抱えているため、
「人格と人の安全保障」・「土壌」および「生物多様性と生態系サービス」について、インパクト追加 の検討を行ったが、これらは生産者側の対応課題であり、当社の直接的対応課題となり得ない事、更に当社が凍豆腐の原材料として調達する大豆は、一部に ASIA GAP 認証大豆を使用する以
外は全てGLOBAL G.A.P.認証大豆であり、今後もこの調達は継続される計画である事などから、これらの追加特定は不要と判断した。
(5)各インパクトに関連する事業活動
各インパクトに関連する当社の具体的事業活動(ポジティブなインパクトを伸長・拡大する活動・ネガティブなインパクトを緩和・低減する活動)は、以下のとおり認められる。
⮚ ポジティブなインパクトを伸長・拡大する活動
<側面> | インパクト 領域 | 【目的・テーマ】 活動内容 |
<社会> | 食糧 | 【安全で満足度の高い製品の提供】 ・GLOBAL G.A.P.認証を受けた原料大豆の使用による製品の品質維持 ・FSSC22000 認証に則った製造管理による製品の品質維持 ・ASIA GAP 認証に則った原料大豆生産による品質維持 (自社農場からxxxブランド製品(凍豆腐・味噌・醤油など)に原料供給中) |
<社会> | 保健・衛生 | 【快適で健康な食生活の追求】 ・凍豆腐の健康機能性の追求 |
<社会> | 雇用 | 【地域の雇用創出】 ・農福連携事業による障がい者の雇用創出活動 |
<社会> | 文化・伝統 | 【地域食・伝統食の伝承】 ・xx県xx市との「パワーアップ協定」に基づく「つぶほまれプロジェクト」の展開 地域特産大豆「つぶほまれ」の作付け拡大(遊休xx地・xx放棄地活用)、「つぶほまれ」を使用した地域特産品「xxxブランド」の開発・販売促進(凍豆腐・味噌・醤油の原料提供) 食育事業展開、学校給食食材としての提供農福連携事業の展開 【凍豆腐の有用性訴求】 ・伝統食材である凍豆腐の有用性の啓蒙活動凍豆腐を材料としたレシピ開発と提案・公開凍豆腐を材料とした新商品の開発と販売 |
<経済> | 包摂的で健全な 経済 | 【地域循環型社会構築への参画】 ・xx県下伊那郡泰阜村との循環型社会構築包括提携協定による活動 ・xx県xx市との「パワーアップ協定」に基づく取り組み ・障がい者の社会参画支援(農福連携事業) ・自社栽培「つぶほまれ」の味噌醤油メーカーへの提供 |
⮚ ネガティブなインパクトを緩和・低減する活動
側面 | インパクト 領域 | 【目的・テーマ】 活動内容 |
<社会> | 保健・衛生 | 【安全で満足度の高い製品の提供】 ・GLOBAL G.A.P.認証を受けた原料大豆の使用による製品の安全性維持 ・FSSC22000 認証に則った製造管理による製品の安全性維持 ・ASIA GAP 認証に則った大豆生産による安全な原料の提供 (自社農場からxxxブランド製品(凍豆腐・味噌・醤油等)に原料供給中) |
<社会> | 雇用 | 【従業員の健康向上】 健康管理方針に基づく全社安全衛生管理委員会を中心とした活動 ・健康経営宣言に基づく従業員の健康保持・増進 ・従業員の自律的健康管理の支援 ・インフルエンザワクチン接種費用の全額補助 ・社内喫煙率引下げへの取り組み 等 【ディーセントワーク(働きがい)の実践】働き方改革の推進 ・研修、人事ローテーション等による働き方の啓蒙 ・評価制度、教育体制(研修方法含む)の見直し ・定時退社日設定 ・時短パート社員の採用拡大 等 |
<環境> | 水 | 【凍豆腐の製造過程で使用された排水の水質管理および環境への配慮】 ・排水に係る環境関連法の遵守による環境負荷の極小化 |
<環境> | 資源効率・安全性 | 【凍豆腐の製造過程で使用された排水の水質管理および環境への配慮】 ・排水に係る環境関連法の遵守による環境負荷の極小化 【非再生資源の使用量削減】 ・凍豆腐製品パッケージ包材(プラスチック・紙)の使用量削減 |
<環境> | 気候 | 【温暖化ガス排出抑制による気候変動への影響の極小化】 xx県 SDGs 推進登録企業として、CO2 排出削減への重点的な取り組み |
<環境> | 廃棄物 | 【廃棄物の管理および削減】 ・凍豆腐製品パッケージ包材(プラスチック)の使用量削減 ・カップ商材のプラスチック使用量削減 ・最終処理排水内大豆由来沈殿物の肥料化 ・GLOBAL G.A.P.認証・ASIA GAP 認証を受けた原料大豆の使用(余剰農薬・空き容器等が管理対象) |
(6)インパクトの特定
業種別インパクトを基に、当社の事業特性・活動状況などを考慮した包括的分析の結果、当社のインパクトを下図のとおり特定する。
側面 | ポジティブ・インパクト | ネガティブ・インパクト |
社会 | 食糧 保健・衛生 雇用 文化・伝統 | 保健・衛生 雇用 |
環境 | 水(KPI 設定なし)資源効率・安全性 気候(KPI 設定なし) 廃棄物 | |
経済 | 包摂的で健全な経済 |
6.特定したインパクトと設定 KPI
特定したインパクトに対し、以下のとおり、KPI を設定する。
(1)ポジティブ・インパクトの伸長・拡大
No. | 1 | |
インパクト | 食糧<社会面> | |
目的・テーマ | 安全で満足度の高い製品の提供 | |
取り組み内容 | ①GLOBAL G.A.P.認証を受けた原料大豆の使用による製品の品質維持 ・GLOBAL G.A.P.認証大豆の原材料使用 ②FSSC22000 認証に則った製造管理による製品の品質維持 ・FSSC22000 認証に則った製造管理 ③ASIA GAP 認証に則った原料大豆生産による品質維持 ・ASIA GAP 認証に則った自社農場での原料大豆の生産 | |
KPI | ①凍豆腐の GLOBAL G.A.P.認証大豆の使用率 100%継続 ②FSSC22000 の認証維持 ③ASIA GAP の認証維持 (①から③の継続期間:2022 年度から 2027 年度まで※) ※いずれもxx的な取り組みであるが、KPI としては上記継続期間を設定する | |
対応するSDGs (ターゲット) | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 2.4 2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 |
No. | 2 |
インパクト | 保健・衛生<社会面> |
目的・テーマ | 快適で健康な食生活の追求 | |
取り組み内容 | ①凍豆腐の健康機能性の追求 ・大学等との連携を含めた凍豆腐の健康機能性についての研究継続 | |
KPI | 研究成果の公表 毎年度1件以上(期限:2027 年度まで) | |
対応するSDGs (ターゲット) | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 2.2 5 歳未満の子どもの発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを 2025 年までに達成するなど、2030 年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。 9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。 |
No. | 3 |
インパクト | 雇用<社会面> |
目的・テーマ | 地域の雇用創出 |
取り組み内容 | ①農福連携事業による障がい者の雇用創出活動 ・大豆栽培に従事する「こぶし園」利用者の雇用維持実績:2021 年度、年間延べ 220 名 |
KPI | 年間延べ作業従事者 200 名以上の維持 (維持期間:2027 年度まで) |
対応するSDGs (ターゲット) | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的 及び政治的な包含を促進する。 |
No. | 4 |
インパクト | 文化・伝統<社会面> |
目的・テーマ | 地域食・伝統食の伝承 |
取り組み内容 | xx県xx市との「パワーアップ協定」に基づく「つぶほまれプロジェクト」の展開 ・地域特産種大豆「つぶほまれ」の作付け拡大(遊休xx地・xx放棄地活用) ・「つぶほまれ」を使用した地域特産品「xxxブランド」の開発・販売促進 ・凍豆腐・味噌・醤油の原料として「つぶほまれ」の提供 ・学校給食食材としての提供 ・食育事業展開 ・農福連携事業での活用 |
KPI | ・地域特産品「xxxブランド」のアイテム数増加新アイテム発売数:毎年度2アイテム (対象期間:2022 年度から 2027 年度) |
対応するSDGs (ターゲット) | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 2.4 2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 12.8 2030 年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。 15.1 2020 年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、xx及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 15.4 2030 年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらすxx生態系の能力を強化するため、生物多様性を含むxx生態系の保全を確実に行う。 17.17 さまざまなパートナーシップの経験や資源戦略を基にした、効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。 |
No. | 5 |
インパクト | 包摂的で健全な経済<経済面> |
目的・テーマ | 障がい者の社会参画への支援 |
取り組み内容 | ①農福連携事業による障がい者の社会参画支援 ・大豆栽培に従事する「こぶし園」利用者の雇用維持 | |
KPI | 年間延べ作業従事者 200 名以上の維持 (維持期間:2027 年度まで) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を大幅に減らす。 10.2 2030 年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的 及び政治的な包含を促進する。 |
(2)ネガティブ・インパクトの緩和・低減
No. | 1 | |
インパクト | 保健・衛生<社会面> | |
目的・テーマ | 安全で満足度の高い製品の提供 | |
取り組み内容 | ①GLOBAL G.A.P.認証を受けた原料大豆の使用による製品の安全性維持 ・GLOBAL G.A.P.認証大豆の原材料使用 ②FSSC22000 認証に則った製造管理による製品の安全性維持 ・FSSC22000 認証に則った製造管理 ③ASIA GAP 認証に則った原料大豆生産による安全性維持 ・ASIA GAP 認証に則った自社農場での原料大豆の生産 | |
KPI | ①凍豆腐の GLOBAL G.A.P.認証大豆の使用率 100%継続 ②FSSC22000 の認証維持 ③ASIA GAP の認証維持 (①から③の継続期間:2022 年度から 2027 年度まで※) ※いずれもxx的な取り組みであるが、KPI としては上記継続期間を設定する | |
対応する SDGs (ターゲット) | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 2.4 2030 年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する。 |
No. | 2 |
インパクト | 雇用<社会面> |
目的・テーマ | ①従業員の健康向上 ②ディーセントワーク(働きがい)の実践 |
取り組み内容 | ①健康管理方針に基づく全社安全衛生管理委員会を中心とした活動 ・健康経営優良法人認定の維持と取り組み継続 ②働き方改革の推進 ・業務効率化による時間外労働の抑制、有給休暇の取得促進 (2020 年度実績) 月間所定外労働時間平均 15 時間年次有給休暇平均取得率 53% | |
KPI | ①健康経営優良法人の認定継続(2021 年3月大規模法人部門新規認定) (継続期間: 2027 年度まで※) ※xx的取り組みであるが、KPI としては上記継続期間を設定する ②生産性の向上 ②‐1 月間所定外労働平均時間 10 時間 ②‐2 年次有給休暇平均取得率 60% (達成期限:②‐1・②-2ともに 2027 年3月末) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 8.8 労働者の権利を保護し、安全・安心に働けるようにする移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
No. | 3 |
インパクト | 資源効率・安全性<環境面> |
目的・テーマ | 非再生資源の使用量削減 |
取り組み内容 | ①凍豆腐製品パッケージ包材(プラスチック・紙)の使用量削減 ・紙包材の森林認証素材(FSC®認証紙)使用 実績:2022 年3月末現在、紙包材は全量FSC®認証紙を使用中 |
KPI | ・森林認証素材(FSC®認証紙)紙包材の全量使用継続 (継続期間: 2027 年度まで※) ※xx的取り組みであるが、KPI としては上記継続期間を設定する | |
対応する SDGs (ターゲット) | 12.2 2030 年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。 12.8 2030 年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。 15.1 2020 年までに、国際協定の下での義務に則って、森林、湿地、xx及び乾燥地をはじめとする陸域生態系と内陸淡水生態系及びそれらのサービスの保全、回復及び持続可能な利用を確保する。 15.2 2020 年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる。 15.4 2030 年までに持続可能な開発に不可欠な便益をもたらすxx生態系の能力を強化するため、生物多様性を含むxx生態系の保全を確実に行う。 15.b 保全や再植林を含む持続可能な森林経営を推進するため、あらゆるレベルのあらゆる供給源から、持続可能な森林経営のための資金の調達と開発途上国への十分なインセンティブ付与のための相当量の資源を動員す る。 |
No. | 4 |
インパクト | 廃棄物<環境面> |
目的・テーマ | 廃棄物の管理および削減 |
取り組み内容 | ①凍豆腐製品パッケージ包材(プラスチック)の使用量削減 ・凍豆腐製品パッケージ包材(プラスチック)の使用量削減アイテム拡大 ・カップ商材のプラスチック包材の紙化や個別包装の取止めなどによる使用量削減 |
KPI | ・プラスチック蓋使用中の 29 アイテム(2022 年3月末現在)について、これらのプラスチック蓋を全廃する。 (達成期限:2027 年 3 月末) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
▲当社契約大豆栽培農場(GLOBAL G.A.P.認証取得農場/米国)
7.インパクト管理体制
旭松食品(株)では、本ファイナンスに取り組むにあたり、xxxx代表取締役社長が陣頭指揮を執り、経営管理部の部長・課長が中心となって、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動などを棚卸しすることで、社内の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
最高責任者 | 代表取締役社長 xxxx |
担当部署 | 経営管理部 |
本ファイナンス実行後においても、xx社長を最高責任者とし、経営管理部が中心となり、KPI達成に向けて役員会議や勉強会などで社内浸透させるほか、SDGs 推進委員会が連携することで各部署へ施策を展開する。
8.モニタリング方法
本ファイナンスの実行にあたり設定した KPI については、旭松食品(株)と(株)八十二銀行ならびに
(一財)長野経済研究所が少なくとも年に1回の頻度でその進捗状況および達成状況を確認・共有する。
(株)八十二銀行は、自行が持つノウハウやネットワークを活用し、旭松食品(株)の KPI の達成を適宜サポートする予定である。
モニタリング期間中に一度達成した KPI については、その後も引き続き達成水準を維持していることを確認する。なお、旭松食品(株)の事業環境の変化などにより設定した KPI が実情にそぐわなくなった場合には、旭松食品(株)と(株)八十二銀行ならびに(一財)長野経済研究所が協議し、再設定を検討する。
9.総合評価
本評価書の記載のとおり、旭松食品(株)の企業活動は、社会・環境・経済に対するポジティブな成果の伸長とネガティブな影響の緩和・軽減に寄与するものであり、これらを支援するためのサステナビリティ推進およびモニタリング体制についても十分であると、(一財)長野経済研究所では判断する。
なお、本評価書の十分性を含め、ファイナンス全体に係る UNEP FI の「ポジティブ・インパクト金融原則」などへの準拠性については、別途、(株)日本格付研究所の第三者意見書により確認を受けるものである。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1. 本評価書は、(一財)長野経済研究所が旭松食品(株)から委託を受けて作成したもので、(一財)長野経済研究所が旭松食品(株)に対して提出するものです。
2. 本評価書の評価は、依頼者である旭松食品(株)から供与された情報と、(一財)長野経済研究所が独自に収集した情報に基づく基準日現在での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、(一財)長野経済研究所は本評価書を利用したことにより発生するいかなる費用または損害について一切責任を負いません。
<本評価書に関するお問い合わせ先>
〒380-0936 xx市xx 178-13 八十二別館3階一般財団法人xx経済研究所
経営相談部 コンサルティンググループ上席コンサルタント xx x
℡:000-000-0000 Fax:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 9 月 29 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 旭松食品株式会社に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社八十二銀行 |
評価者:一般財団法人長野経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、八十二銀行が旭松食品株式会社(「旭松食品」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、長野経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定したPIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。八十二銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、長野経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、八十二銀行及び長野経済研究所にそれを提示している。なお、八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1 定義
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
八十二銀行及び長野経済研究所は、本ファイナンスを通じ、旭松食品の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、旭松食品がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2 フレームワーク
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、八十二銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:八十二銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、八十二銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、八十二銀行からの委託を受けて、xx経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めたPIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て長野経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、長野経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面の
インパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人である旭松食品から貸付人である八十二銀行及び評価者である長野経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所 サステナブル・ファイナンス評価部長 xx xx | |
担当xxアナリスト xx xx | 担当アナリスト xx xx |
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000