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資料5
平成 20 年7月 15 日
PFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方(案)
目 次
序.「PFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方(案)」の位置づけ 1
I PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置づけ 2
1.PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置づけ 2
2.本書の対象範囲 3
II 業務要求水準書に求められるもの 4
1.管理者等の意図の明確化及び民間の創意工夫の発揮から留意すべきこと 4
(1) 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化 4
(2) 対話により業務要求水準書を明確化する手順 4
(3) アウトプット仕様とインプット仕様 5
(4) 支払許容度の範囲内か否かの確認 5
(5) 業務要求水準と整合したPSC、PFI-LCCの算定 5
(6) 業務手順を明示することの必要性 6
2.基準の明確化から留意すべきこと 7
(1) アウトプットに数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性 7
(2) モニタリングの指標及び支払メカニズムとの連動 7
(3) 業務要求水準とモニタリングの指標、支払メカニズムの一体的な検討手順 7
III 業務要求水準書に関する諸課題と対応の方向性 9
1.管理者等の意図の明確化 9
(1) 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にする必要性 9
(2) 民間事業者に期待する役割の検討 12
2.業務要求水準の具体化、明確化、精緻化 13
2-1.業務要求水準の明確化 13
(1) アウトプットに数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性 13
(2) インプット仕様の適切な活用 16
(3) 管理者等側のサービス利用者(ユーザー)の関与のあり方 22
(4) 業務手順を明示することの必要性 23
(5) 官民のコミュニケーション 25
(6) 業務要求水準書に対応する予定価格の設定 28
2-2.達成すべき基準の明確化 31
(1) 業務要求水準に対応したモニタリング指標の設定及びモニタリングの基本計画
の作成 31
(2) 事業目的に合致したモニタリング指標と支払メカニズムの連動 35
(3) 組織品質や業務全体の傾向を評価する指標の活用 42
(4) 実効的なモニタリングの仕組みの構築 45
(5) モニタリング結果の公表と第三者評価 47
2-3.業務要求水準・モニタリング・支払メカニズムの三位一体の検討 48
3.その他の課題 50
(1) 事業者選定後の仕様の確定 50
(2) 優れた業務要求水準書作成ノウハウの蓄積・継承 52
IV 地球温暖化対策の観点から求められること 54
Ⅴ 業務要求水準書の構成 63
1.業務要求水準書と他の書類との関係 63
2.各書類の構成及びその考え方 64
(1) 業務要求水準書に盛り込むべき事項の考え方 64
(2) 業務要求水準書の構成 64
(3) モニタリング基本計画書の構成 70
Ⅳ 業務要求水準書の作成手順 75
1.検討の流れ 75
2.チェックリスト 76
(1) 使用方法 76
(2) チェックリスト(案) 76
A.検討手順チェックリスト 76
B.書類チェックリスト 81
序.「PFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方(案)」の位置づけ
業務要求水準書は入札参加者に対して公共施設等の管理者等(以下「管理者等」という。)の意図を示すための最も重要な書類である。業務要求水準書はPFI事業によって整備される施設やサービスの質や効率性に大きな影響を及ぼす。また、管理者等が事業の最終的な責任を負いながらも、民間の創意工夫を発揮するというPFI本来の趣旨の達成の如何も業務要求水準書によるところが大きい。
しかしながら、平成 19 年 11 月 15 日にとりまとめられた「PFI推進委員会報告-真の意味の官民のパートナーシップ(官民連携)実現に向けて」(以下、「推進委員会報告」という。)では、業務要求水準書について以下のような課題が指摘されている。
・要求水準書作成前の段階で、管理者等が何を求めているのか明確に整理しきれず、結果として民間事業者に丸投げになっている事例があること
・アウトプット仕様である要求水準書に示された管理者等の意図を民間事業者が完全に把握しきれず、後ほどの段階である契約締結段階等で管理者等と民間事業者の認識の不一致からくる齟齬が生じている事例があること
・予定価格と要求水準書が必ずしも整合性が取れた形で作成されておらず、入札参加者に当該予定価格では実現不可能な過大な内容の要求水準書を示している事例が見受け
られること
上述した課題を含めた業務要求水準書に関する諸課題に対応し、PFI事業によって整備される施設やサービスの質と効率性の向上に資することを目的に、「PFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方(案)」(以下「本書」という。)としてとりまとめた。本書は、今後のPFI事業の進捗状況の変化等を踏まえ、適宜見直していく必要があるものである。
また、本書は、限られた時間の中で整理をしたものであり、実務家の方々からの意見を踏まえてはいるものの必ずしも十分とはいえない。したがって、今後パブリックコメント等を通じ、PFIを積極的に活用している管理者等の方々や民間事業者の方々、さらにはPFIの現場で活躍されている実務家の皆様方の意見を真摯に伺うことにより、より実態に則したものに改善していくこととする。
I PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置づけ
1.PFIのプロセスからみた業務要求水準書の位置づけ
管理者等の意図を明確に民間事業者に伝達し、あわせて民間の創意工夫を最大限に誘 発するためのPFIのプロセスにおいて、業務要求水準書は最も重要な文書の一つといえる。
管理者等は、まず、PFIという手法を採用するか否かを検討するのに先立ち、管理者等による事業者毎の長期計画や中期計画に基づき、対象事業に係る基本構想や基本計画を作成し、その中で管理者等が個別の事業に関して考える政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にする。
次に、アウトプット仕様(提供すべきサービス内容及び達成すべき品質等の性能)である業務要求水準書を作成するが、これには管理者等の事業コンセプトを実現するためにどのようなサービスが提供されるべきかという観点に加えて、民間事業者が何を提供できるかという視点が必要である。従って、その作成に当たっては、官民がコミュニケーションを行い、民間事業者からの意見を考慮することが重要である。民間事業者は、自らの創意工夫を活用して、業務要求水準書に示された内容を満足するための具体的な仕様を提案し、当該仕様に基づいて公共サービスを提供する。管理者等はそのサービス水準の監視(測定・評価)(モニタリング)を行うこととなる。
PFIのプロセスから見た業務要求水準書の位置づけ
対話
提案
民間
事業者
民間事業者
の役割
事業の実現提案と実践
(アウトプット仕様を満足するサービスを提供するための仕様の提案と実施)
業務要求水準書の提示
(上記を具体化したアウトプットから、民間の創意工夫を取り入れる)
政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化
管理者等の役割
2.本書の対象範囲
本書では、一般的に業務要求水準書に記載される内容(事業の設計や運営等に係る要件)を取り扱うこととする。詳細はⅢ以降に記述するが、業務要求水準書は民間事業者に期待する役割をまとめた記述、アウトプット仕様、(必要な場合)インプット仕様(サービス内容や品質を達成するための具体的な方法や仕様)(一部)で構成され、さらに、モニタリングの基本計画を示した文書が添付されるべきものである。また、必要と判断される場合には、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)に関する記述を再記することも有用である。これら業務要求水準書そのもの及び添付書類について本書の対象範囲として、その作成の在り方について示すこととする。ただし、業務要求水準書と関連の深いその他の事項についても必要の限りにおいて記述することとする。
民間事業者に期待する
役割をまとめた記述
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)
モニタリング指標、KPI
支払メカニズム
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)
本書の対象範囲及びその関係
民間事業者に期待する役割をまとめた記述 |
アウトプット仕様 |
インプット仕様 |
インプット仕様
アウトプット仕様
モニタリング指標、KPI
支払メカニズム
なお、本書ではいわゆる財務モニタリング(経営状況の報告)については、業務要求水準を満足するサービスの提供がなされているかどうかを確認するモニタリングとは別のものとして整理し、触れていない。
II 業務要求水準書に求められるもの
管理者等は、業務要求水準書を作成する前に具体的な事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にすべきである。業務要求水準書はこの目的や成果を実現するための要求項目であり、次の 3 点がその狙いとなる。
① 管理者等が何を求めているかを明示的に示すこと
② その実現に際し、民間の創意工夫が最大限発揮されるような配慮をすること
③ 民間の創意工夫が発揮されるサービスの提供について、達成すべき基準を明確に 示すこと
1.管理者等の意図の明確化及び民間の創意工夫の発揮から留意すべきこと
業務要求水準書は事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)そのものを記述するものではなく、これらを民間の創意工夫が最大限発揮されるような形で、アウトプット仕様(性能発注)として再整理したものである。従って以下の点に留意する必要がある。
(1) 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化
導入可能性調査等のPFI事業の手続きに入る前に、管理者等は対象事業に係わる基本構想や基本計画を作成し、その中で政策目的や求める成果(アウトカム)を明確に定義する。これらが民間事業者に明確に伝わるよう、具体的な記述として取りまと め、事業の前提として業務要求水準書とあわせて民間事業者に示すことが必要である。どのような政策目的で事業が実施されるのか、求める成果(アウトカム)は何かを併せて明確に示すことにより、アウトプット仕様の背後にある考え方、優先順位が民間事業者に伝わりやすくなる。これにより、民間の創意工夫を発揮できる余地の増大が期待される。なお、事業を考慮する際の前提となる基本構想、基本計画の中にこれらに相当する事項が含まれている場合には、これらを代用又は抜粋する形で明示してもよい。また、この考えを提示する仕方としては、実施方針の中で明らかにする方法、実施方針に添付される業務要求水準書(案)の別添資料として提示する方法等が考えられる。いずれにしろ、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)は、PFIの検討の前段階で明確に整理される必要がある。
(2) 対話により業務要求水準書を明確化する手順
PFI事業は、管理者等がサービスの水準を業務要求水準書として規定し、具体的な仕様は入札参加者が個別に提案するいわゆる性能発注を前提とするため、管理者等
が期待する一定の基準から大きく離れた提案が民間事業者からなされる可能性がある。このような状況が起こることを避けるために、管理者等と民間事業者との意思の疎通 を図るための質問・回答等(以下、「対話」という。)を行うことで、管理者等と民間 事業者との意思の疎通を図ることが重要となる。管理者等は、当初から完成度の高い 業務要求水準書(案)を作成し、公表したら変更しないというのではなく、民間事業 者との対話を通じてむしろその内容を改善していくべきものであるとの考えを持つ必 要がある。
(3) アウトプット仕様とインプット仕様
PFI事業では、民間の創意工夫を活用する観点から、求めるサービスをインプット仕様として示すのではなく、アウトプット仕様として規定することが原則である。ただし、インプット仕様を業務要求水準書に全く採用すべきでないということではなく、提示したインプット仕様が民間の創意工夫を阻害するか否かで判断すべきものである。
例えば、アウトプット仕様では非常にxxの複雑な記載が必要となる場合等においては、インプット仕様を一部採用することがよりよいVFMの達成に資することもある。また、適切なリスクの移転につながる場合においても、インプット仕様を採用することがありうる。
ただし、インプット仕様を採用する場合は、これが民間事業者の提案を拘束する条件となるか否かについて、明確に提示することが必要である。参考情報として提示する場合はそれを明記し、必ずしも民間事業者の提案がこれに拘束される必要がないことを伝える必要がある。一方、法令等でインプット仕様が規定されている等による場合は、変更できない条件であることを明記した上で提示することとする。
(4) 支払許容度の範囲内か否かの確認
アフォーダビリティ(後年度財政負担能力:以下「アフォーダビリティ」という。)の観点からの検討は、基本構想、基本計画の作成等の、事業計画を検討し、事業の優先順位を決める段階で行われるべきものである。その上で、導入可能性調査段階以降に作成する業務要求水準が、基本構想、基本計画の作成段階でアフォーダビリティを確認された事業費(以下、「支払許容度」という。)の範囲内か否かについて、確認する必要がある。
(5) 業務要求水準と整合したPSC、PFI-LCCの算定
管理者等は、業務要求水準書で求めるサービスの水準を示すことに加え、対価につ
いてもその水準を明確に示していく必要がある。PFI事業の対価を設定するためには、PSCやPFI-LCCを把握する必要があり、これらは業務要求水準書で示したサービス水準に基づいて算定される必要がある。
業務要求水準と整合したPSC又はPFI-LCCを算定することにより、結果として業務要求水準に則した対価を設定することが可能となる。
(6) 業務手順を明示することの必要性
サービス提供業務の比重が重く、多数の業務から構成されている事業をはじめとしたPFI事業においては、これまで個別に発注されていた個々の業務を束ねて実施すること、また設計、建設、維持管理、運営のライフサイクル全体を通じた一気通貫の手順を改善することなどにより、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング:現状の業務手順を再編・再構築することにより、無駄を省き効率化を実現する考えをいう)を実践できる効果が大きい。
管理者等は、民間事業者によるBPRの提案を可能とするために、現状の(従来方式で行われている)業務手順・作業量及びそれによる成果の調査・分析を行い、その結果を業務要求水準書の参考資料として添付することが望ましい。
なお、事業の核となる業務を管理者等が行い、周辺業務を民間事業者が行うような PFI事業(病院、刑務所等)に関しては、管理者等が行う業務と民間事業者が行う業務のすりあわせが、ユーザーに対する一体的サービス提供という観点からも、官民のリスク分担という観点からも重要である。したがって、事業の核となる業務の業務手順(周辺業務と関連するもの)についても、調査・検討し、必要に応じて公表することが望ましい。
2.基準の明確化から留意すべきこと
業務要求水準は、管理者等と民間事業者の認識に齟齬のないよう、客観的に提示する必要がある。また、モニタリング指標に対応しうる程度の具体性を有するべきものである。
(1) アウトプットに数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性
管理者等と民間事業者との間で、業務要求水準書に示されたアウトプット仕様についての認識の齟齬が発生しやすいことが指摘されている。これを改善するためには、可能な限り、数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要がある。
(2) モニタリングの指標及び支払メカニズムとの連動
管理者等の意図を明確にするという観点からは、サービス対価の支払メカニズムは、業務要求水準書に示したサービス水準やサービスの内容に関する管理者等の優先順位
(管理者等にとって特に重要である部分とそうでない部分の区別)を明確に反映すべきである。そのため、業務要求水準書に示された遵守すべき事項について優先順位を 整理し、それぞれの事項がモニタリング指標として対応しうるよう、モニタリングの指標及び支払メカニズムを想定しながら作成する必要がある。
(3) 業務要求水準とモニタリングの指標、支払メカニズムの一体的な検討手順
モニタリングを業務要求水準を満足するサービスの提供の確保につながるものとするためには、業務要求水準の検討段階において、モニタリング指標と支払メカニズム を一体のものとして検討することが必要である。例えば、入札公告時にこれらの関係を整理したうえでモニタリング基本計画書として取りまとめ、業務要求水準書と一括して提示していくこと等が考えられる。モニタリング基本計画書で提示するモニタリング指標は原則としてそのまま運営段階に適用されるものであるが、実態に則した変更は可能とすべきである。具体的には、民間事業者の提案書の内容やそれに基づいて提示される業務仕様を踏まえて、モニタリング実施計画書(モニタリング基本計画書に基づいてモニタリング方法の詳細を定めたもの)を改めて作成するという手順をとることが合理的と考えられる。
また、サービス提供業務の比重が重く、多数の業務から構成されている事業等においては、サービス提供業務を実際に開始した後に新たに判明または発生する事項も多く、サービス提供業務開始後一年程度かけてモニタリングの項目、手法等につき、サービス提供業務の実情にあわせて適合していく仕組みを導入することが有効である。
ただし、民間事業者の積算額に大きく影響を与えるような重要な部分については、入札段階において決定されている必要があり、このような部分まで入札後の調整に委ねるのは妥当ではない。
なお、英国では「優れた業務要求水準の条件」として下表のような項目が提示されており、わが国においても参考になるものと考えられる。
表.英国における優れた業務要求水準の条件
① 発注者のその分野の政策・方針を反映させたものとすること
② 明確、簡潔であり、曖昧でないものとすること
③ 応札する可能性のある事業者に、提案内容に応じたコストを算定するための十分な情報を提供すること
④ 法令、指針等を遵守する必要性を考慮すること
⑤ 実現可能な提案を作成する上で重大な制約となる事項を特定すること。この際、強制力を有するものとそうでないものを区別する必要がある。
⑥ 入札手続中に決定された基準により提案が評価されうるようにすること
⑦ サービスの履行にとって特に重要な機能や側面を特定すること。これらは、支払メカニズムにおいて、最も重い重み付けの対象となる。
⑧ 発注者によって対価の支払が可能であり、かつ民間が履行可能な業務のみ含めるこ
と。
(Sport and Leisure Procurement Pack—Guidance--p.76 参照)
III 業務要求水準書に関する諸課題と対応の方向性
1.管理者等の意図の明確化
(1) 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にする必要性
①課題
・ 推進委員会報告においては、業務要求水準書に関する課題として、管理者等が何を求めているのかを明確に整理しきれず、結果として民間事業者に丸投げになっている事例があると指摘されている。
②考え方
・ PFI事業実施プロセスに関するガイドラインでは、「PFIは、公共施設等の整備等に関する事業を行う場合の実施方法の一つである。したがって、PFI事業の検討を行う場合、まず実施すべき公共施設等の整備等に関する事業が想定されていることが前提であり、その上で、PFIの可能性を検討することとなる」と記載されている。このように、PFI事業を実施するに当たっては、まずその前段階において管理者等自身が事業のニーズを確認したうえで、当該事業の具体的な実施方法について、新たに施設を整備するのか、それとも別の方法でサービスを提供するのかも含め、様々な選択肢を検討する必要がある。
・ その上で、管理者等としての事業の目的や方針、達成すべき成果(アウトカム)等を取りまとめることが必要である。
・ 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にするという作業自体は、基本構想や基本計画の策定段階において行われているのが一般的である。したがって、基本構想や基本計画から必要な事項を抜粋又は取りまとめることにより、これを準備できる。
・ 業務要求水準書とは、この事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の内容を実現するためのアウトプット仕様等としてまとめられたものになる。よって、導入可能性調査において業務要求水準を検討する前に、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を整理しておく必要がある(p.13 図を参照)。
・ 民間事業者が、PFI事業の提案書を作成し、また事業を実施するに際して、事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を理解しておくことは、業務要求水準の背後にある管理者等の意図を理解し、官民間の齟齬を解消するとともに、民間の創意工夫を誘発することに資するものと期待される。
・ 一方、これらの作業には、管理者等にとって、管理者等の内部で事業に関わる職員やアドバイザー間で認識を共有できるという意義もある。
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)・業務要求水準と民間事業者の提案の関係の例
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)
例:当該地域における高度医療を充実させるため、がん治療に特化した病院を整備する。
この対応は管理者等が検討、責任を負うもの
業務要求水準(アウトプット仕様)
例:
食事の提供業務
・患者の疾患及び病態に応じた食事の提供を行うこと物品管理業務
・医療用材料に関する新しい医療技術等について調査するとともに、その導入を支援すること など
この対応は民間事業者が提案・実施し、管理者等がモニタリングするもの
民間事業者の提案
(アウトプット仕様を満足する設計、運営等)
(参考:病院事業の例)
「本事業が目指すもの(事業コンセプト)」
①県下の基幹病院として、他の公的病院等との機能分担と連携のもとに、救命救急センター及び総合周産期母子医療センターさらには災害基幹拠点病院といった三次医療を担うとともに、がん医療、循環器医療、脳卒中などに対する高度医療、骨髄移植等の先駆的医療などを提供する。また、二次被爆医療機関、エイズ診療協力病院、第二種感染症指定医療機関、へき地医療拠点病院等として、災害時医療や感染症治療、へき地医療支援などの政策的医療を実施していく。
また、県民にわが国における標準的で良質な医療を安定的に提供していくことは公的病院、特に県立中央病院にとっての必須の役割である。そのために、診療科の臓器別ユニット化を進め、高度専門医療の質の向上を図るとともに、それら専門医療を支える基本的な診療部門の充実を図る。
②患者の視点に立った、信頼と満足の得られる安全な医療体制を確立するために、外来化学療法室や日帰り手術あるいは緩和ケアチーム、栄養サポートチーム、院内感染対策チームなどの充実を図り、いたわりのある良質な医療を提供するとともに、患者を中心とした信頼と満足の得られるチーム医
療を提供する。
③医師研修及び地域医療期間との連携、支援を通じ、愛媛県の医療水準の向上に貢献することは、県立中央病院に課せられた大きな役割の一つである。すなわち、卒後のスーパーローテート研修医を受け入れ、総合診療や救急医療、あるいは麻酔科、小児科、産科、内科、外科などでの臨床教育を行うことによって、バランスのとれた視野の広い医師を育て、各県立病院はもちろん県内各地の医療機関に送り出すことが求められている。また県立中央病院は教育だけでなく、診療面でも県立5病院のセンター病院としての役割が求められており、そのためにも質の高い医療を提供できる体制が常に必要とされる。
④健全な経営基盤を確保し、社会・医療システムの変革に柔軟に対応して運営することは、公共性と
経済性の両立が求められるのは公営企業として当然の責務であり、健全経営に資するものとする。
③留意点
・ 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確にし、これらを事業の前提として業務要求水準書とあわせて民間事業者に示すことが望ましい。
・ 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を明確に民間事業者に伝達するためには、基本計画や基本構想を抜粋することも有効である。この場合、管理者等は、その内容が可能な限り具体的、客観的かつ明確なものとなるよう努力すべきである。また、複数の項目がある場合には、その優先順位も明記しておくことが望ましい。また、盛り込むべき項目は、事業に係る管理者等の政策目的や達成すべき成果(アウトカム)であることから、これに該当する部分のみ抜粋し、施設整備のイメージ等は抜粋しないことが望ましい(施設整備のイメージ等は管理者等が考えるインプット仕様の例と位置づけて提示することが考えられる(p.5 Ⅱ1(3)参照)。
(2) 民間事業者に期待する役割の検討
①課題
・ PFIの目的は、民間の創意工夫を活用することにより効率的で質の高い公共サービスを実現することにある。しかし、より明確に管理者等の意図を伝達するためには、管理者等が民間事業者に期待するポイントをわかりやすく説明する必要がある。
②考え方
・ PFIを実施するにあたり、管理者等が特に何を期待しているのか、例えば、「具体 的にどこに重点をおくべきか」、「リスク移転のポイントはどこか」等について、管理者等の考え方を示す必要がある。
・ これらは事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)とは異なり、PFIを検討する民間事業者に管理者等が期待する役割をより明確に伝達するために示すも のであることから、業務要求水準書の一部として明記されることが必要である。
・ なお、最近の病院事業においては、「事業者に求める役割」を記載している例が見られるが、これらはここで示している「PFIコンセプト」の考え方と同様の観点から記載しているものと考えられる。
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)、民間事業者に期待する役割と業務要求水準の検討手順の例
基本構想・基本計画
事業に係わる政策目的や求める成果
(アウトカム)の整理
基本構想・基本計画
・事業の目的、方針
・達成すべきアウトプット、アウトカム
・サービスの概要
導入可能性調査
PFI事業化検討の前段階
政策目的や成果の内容を実現するためのアウトプット仕様
導入可能性調査
業務要求水準書(案)
・民間事業者に期待する役割
・業務要求水準
実施方針等の公表
実施方針等の公表
実施方針に事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を反映(または文書化)し、業務要求水準書(案)を添付して公表
2.業務要求水準の具体化、明確化、精緻化
2-1.業務要求水準の明確化
(1) アウトプットに数値的な基準を盛り込む等客観的に整理する必要性
① 課題
・ 推進委員会報告では、業務要求水準の記載内容の解釈に関して、可能な限り数値的な基準で示すべきとの方向性が示されている。
・ しかしながら、PFI事業によっては「おいしい食事」「円滑な利用」といった数値的な基準を示すことが困難な要素が含まれ、達成すべき水準を民間事業者に客観的に伝えることが難しい場合がある。
・ 業務要求水準書で示された各種要件の中に、例えば建築について設計図書を作成してみないと両立しえないことがわからない要件が含まれる等、矛盾する要件が設定される場合がある。
② 考え方
・ 業務要求水準書については、可能な限り、民間事業者が達成すべきアウトプットの数値的な基準を盛り込む等、客観的に整理する必要がある。
(ア) この場合、ただいたずらに数値化を図るのではなく、例えば以下のような手順でサービス内容を要素分解していくことが客観的な整理を行ううえで有用と考えられる。
(i)提供するサービスの内容を整理して文章化し、当該サービスを構成する機能や業務に分解する。
例:病院の場合、施設については機能単位(病室、手術室、診察室、待合室、トイレ等)、運営については業務単位(給食、清掃等)に分解される。
(ii)(i)で分解された個々の機能や業務の各々を、プロセスに分解する。
例:給食であれば、献立作成、材料調達、調理、配膳、片付け等のプロセスに分解して、各々のプロセスのアウトプットを検討する。この際、詳細に分割しすぎるとインプット仕様に近づくため、ある程度まとまった機能単位で考える必要がある。
(iii)各プロセスの重要度や、業務要求水準未達があった場合に事業全体に与える影響を評価し、アウトプットを定めるべき部分を特定する。
(iv)(iii)で特定された部分について、質や水準を評価するために何に着目すればよいかについて検討する。
例:配膳であれば、食事の鮮度が重要であることから、調理から配膳までの時間
を規定する等。
(イ) 特にサービス提供業務は、基準が定性的になるケースが多い。この場合、I SOやHACCP(Hazar d Analysis and Critical Control Point の頭文字をとったもので食品の衛生管理システムの国際標準)等のプロセスの基準が利用可能であれば、当該プロセスの合意により一定の品質水準を確保するなどの方法によって、客観化を図ることが考えられる。
(ウ) 数値やプロセスのような客観的な基準がなく、主観的な要素が多い場合は、顧客満足度調査やクレーム情報等に関するデータを一箇所に集約し、その履 歴(トラックレコード)の分析を行うことにより、数値化や客観化の努力を することが考えられる。こうした分析にあたっては、大量のデータの取得や 管理が必要となるため、専用ソフトウェア等の情報技術の活用が有効である。
(エ) 建築物や機械設備等の維持管理業務の水準については、重要度別に維持管理度合いを評価し、全体としての維持管理の達成度合いを客観化することも有効と考えられる。
・ 業務要求水準の明確化のレベルとしては、民間事業者がサービスの提供と併せ、これに係わるリスクを評価し、これらに必要な費用を見積もることが可能な程度に具体的に示すことが必要である。
・ 両立しえない条件を設定することを避けるためには、業務要求水準書で提示する各種のアウトプット仕様については、矛盾が生じないように十分な確認を行うこと、また、万が一矛盾が生じた際に民間事業者が混乱しないように管理者等にとっての優先順位を明確に示すことが必要である。
(参考:英国の例(英国企業へのヒアリング結果による))
・ 英国では、定量化が難しいサービスの品質についても客観化が進んでいる。一例として、「ヘルプデスクへの依頼・クレームの履歴を継続的に分析することにより、大量に寄せられる主観データ(依頼やクレーム)を客観データに置き換える」ことなどが挙げられる。すなわち、個々にみると、主観データとして捉えられるものであっても、集約して履歴を分析することにより、ある程度客観的な事実として捉えることが可能となる。
・ サービス品質を評価するためには、各項目の履歴を蓄積しておく必要があり、これらは評価のための分析資料となる。このようなサービスの履歴管理を行うために専用のソフトウェアが用いられており、大量のデータ履歴の管理や指標の作成等の手
間を省くのに役立っている。
③ 留意点
・ ②(ウ)で示した主観的な評価指標の数値化、客観化は、供用開始後のデータ収集等に依存する場合もある。こうした場合は、業務要求水準書においては、対象とな
る業務において達成すべき大まかな水準(例:過半の利用者が満足する、等)をアウトプット仕様として示し、これを達成する方法について民間事業者に提案を求める等、PFIプロセス全般にわたる実施の仕組みを検討することが望ましい。
・ アウトプットについて客観的な水準を検討する際に、現状のサービス水準に比べて過剰な水準を求める傾向が見られる。しかし、サービス水準が高くなれば一般的にコストも増大することから、安易に高い水準を規定することはVFMの実現の観点から望ましいとはいえない。管理者等は、現在のサービス水準を踏まえつつ、対象施設の用途や求められる機能を検討し、不必要に高いサービス水準を設定しないよう留意する必要がある。
(2) インプット仕様の適切な活用
① 課題
・ アウトプット仕様のみでは管理者等が何を求めているのかを民間事業者が把握しにくく、その結果、民間事業者がどのような提案をすべきかについてイメージをつかむことができない場合や、民間事業者からの提案内容が管理者等の意図に合致しない場合がある。
② 考え方
・ PFIでは、民間の創意工夫を最大限活用するため、性能発注の考え方にしたがって業務要求水準書を作成することが原則である。管理者等は業務要求水準書でアウトプット仕様を提示し、民間事業者はそれを達成するための具体的手法を提案する。
・ ただし、このことはインプット仕様を業務要求水準書に全く採用すべきでないということではない。民間の創意工夫を必ずしも阻害しない場合には、インプット仕様を採用することも可能である。
・ インプット仕様を示す場合は、民間事業者が提案を作成するに当たっての参考条件とするか、それとも民間事業者の提案において変更できない拘束条件とするかを明記することにより、民間の創意工夫を阻害しないようにする必要がある。
・ インプット仕様を活用することが想定されるケースの事例とその留意点を挙げると以下の通りである。
インプット仕様を採用する ことが想定されるケース | インプット仕様の例 | 留意点 |
ア)インプット仕様を一部採用することにより管理者等の意図をより具体的に伝達することが可能となり、よりよい VFMの達成に資する場合 | (例:病院の清掃業務) アウトプット仕様:手術室・無菌xxの清潔区域の清掃を行う場合には、細菌や埃が散乱しないような処理を講じること。インプット仕様の例:専用の清掃用具を使うとともに、HEP Aフィルター付掃除機を使用 (インプット仕様は参考例であり、アウトプット仕様が達成できる提案であれば、これを遵守 する必要はない) | この場合に示されるインプット仕様は例示であり、民間事業者の提案内容を拘束するものではない。その旨明記する。 |
イ)法令等によりインプット仕様が一意に定まる 場合 | (ごみ処理施設における機械設備の耐震) 「官庁施設の総合耐震計画基 | この場合に示されるインプット仕様は拘束条 件で変更できないこと |
準」で規定される機械設備の耐 震規定を遵守すること | を明記する。 | |
ウ)管理者等がインプット | (例:実験室の仕様) | この場合に示されるイ |
仕様を個別具体に指定 | インプット仕様:実験室は XX | ンプット仕様は拘束条 |
したい場合 | ㎡とし通路側に○○を設置す | 件で変更できないこと |
ること | を明記する。ただし、イ | |
ンプット仕様の指定は | ||
VFMの達成を阻害す | ||
る恐れがあることから | ||
必要最小限とすること | ||
が望ましい。 |
(参考:英国等における取り組み)
【基本的考え方】
●業務要求水準書は、「民間事業者が達成すべきサービスの水準」を示すもの(=アウトプット仕様)であり、「どのような方法でサービス水準を達成するか」(=インプット仕様)を示すものではない。
●民間事業者に対して、サービス改善の機会を効果的に提供し、イノベーションを促進するためには、発注者が民間事業者に求める要件が明確であることが必要である。
●ただし、アウトプット仕様にこだわりすぎると、民間事業者が最適な提案を検討でき
ない場合が懸念され、インプット仕様とのバランスをとることが望ましい。
( J oi nt Se r vice Ce nt r es PFI an d N H S LI F T p rocur e d p roject s Procur e m e nt Pack Ve r sion 2 参照)
③ 留意点
・ 参考としてインプット仕様を示す場合には、どのような趣旨で示しているか、どの程度の変更が可能なのかを明らかにすることが必要である。特に、②の表ア)に該当するケースにおいては、民間事業者の提案が満たすべきアウトプット仕様を規定した上で、参考としてインプット仕様を示し、かつ変更可能であることを分かりやすく明示することが必要である(単にインプット仕様を参考として示すのみでは、入札参加者はどの程度の変更が許容される(「失格」とならない)のかが把握できないため、別途当該業務等に関するアウトプット仕様を明確な形で示す必要がある)。
(参考:社会復帰促進センターの例)
(2)想定建物面積
国がセンターを建設することとした場合の想定面積は,おおむね次の面積表に示す全体面積欄のとおりである。
なお,要求水準を満たす限り,本面積を増減することも,また,各施設の機能を共 有し又は分離することも可能であり,入札参加者の提案を拘束するものではない。想定建物面積表
領 域 施 設 床 x x
A 管理事務領域 庁舎 1,700 ㎡車庫 150 ㎡
訓練施設 650 ㎡
職員待機所 350 ㎡
計 2,850 ㎡
(以下略)
(参考:病院事業の例)
項目 | 食事の提供業務 |
業務基本方針 | ・安全・安心で信頼される食事を提供する。 |
要求水準 (インプット仕様も含め、応募者はこれを遵守すること) | ・衛生管理を徹底し、万全な食中毒予防対策をとること。 ・HACCPに基づいた衛生管理を実施し、施設・設備及び調理器具・食器、食材の清潔確保や調理工程、配膳時における汚染などにも十分に留意した衛生的な食事を提供すること。 ・業務担当者等は、白衣等を適切に管理し、1 日 1 回以上のクリー ニング頻度を確保する事などにより、自らの衛生状態を保ち、また清潔な服装を維持すること。 |
(参考:社会復帰促進センターの例)
項目 | 保安区域境界のセキュリティ |
目的、方針 | 受刑者の逃走及び不審者の進入を確実に防止する。 |
要求水準 | ・センター内のあらゆる場所において、必要な保安構造や保安システムを設置すること。 ・保安システムについては、常時稼動できるシステムとすること。 |
インプット仕様の例 (国が実施する場合の例であり、要求水準が達成できる提案であればこれを遵守する必要はない) | ・高さ4.5m以上で,容易に登れない構造の外塀を設置する。 ①手,足掛かりのできない壁面とする。 ②平面的に90 度以下の折れを作らない。 ③隅角の部分はRを取って曲面又は鈍角とする。 ・防犯線を設置し,主要箇所に常時モニター可能な監視カメラを設置する。 (同程度の他施設では○個の監視カメラを設置) ・直線で塀の見通しが利く(極力ジグザグさせない)。 ・外塀内の建物,工作物等から乗り越えられないよう距離を保つ。 ・内塀,建物等の取り合いで足掛かりにならない。 ※なお,本施設においては,外観にも十分配慮し,収容施設であることを感じさせない保安構造とすることが重要である。 ・xxは開閉時の逃走・侵入を防止するため二重化する。 又,内外からの車による襲撃・衝突を阻止できる構造とする。 ・xxxの主な出入り口は,二重扉によるエアロックとする。 |
・ インプット仕様として、図面を活用することも考えられる。ただし、図面の提示は民間の創意工夫を阻害する可能性もある。図面が民間事業者の提案を拘束することがないよう、図面を示す意図や、民間事業者の提案に期待している事項について具体的に記載することが望ましい。
(参考:病院事業の例)
イ 要求水準書の別添資料として参考プランを提示する主旨について
(ア) 面積の割振りや位置等の取扱い
別に示す【資料1】の参考プランは、○○病院及び病院経営本部で比較検討を 重ねた上で、導き出されたものである。したがって、この参考プランは各関係者の要望を調整するための作業上の必要から策定されたものであるが、同時に本施設に要求される様々な事項をかなりの程度で満足させた案であると考える。
当然のことながら、後述の要求水準を満たす配置形状(特に各施設の配置、各 施設内での各部門の配置等)は他の可能性もあり得るので、それらの可能性を排除するものではないが、あえて参考プランを付すのは、入札参加者からの提案が多岐に渡る計画項目に拡散する事態を懸念し、むしろ都が本施設において重視している計画項目を、入札参加者が集中して検討し、時代を画するような提案を期待するからである。
したがって、入札参加者の提案によっては、参考プランが示す各施設内での各 部門の配置の変更、参考プランが示す各部門内での各諸室の面積の割り振りや位置の変更(例えば、受付、診察室、病棟等への動線、面積や位置等)も積極的な提案を期待するものである。参考プランが示す仕様の変更などを要する場合もあると思われるが、それが上記の趣旨に叶えば、妨げるものではない。
(なお、今回は、「参考プランの例示」及び「想定諸室一覧」を公表する。) (イ) 想定階等の取扱い
想定階は、「参考プラン」に基づいた階であり、要求水準を満たすのであれば、入札参加者の提案とする。(例えば、提供するサービスの内容、利用者や運営者の使い勝手、施工計画・コスト計画等から、地下階を廃止し、それらの機能を地上階に設置することも可能とする。)
・ ②の表ア)に該当するケースでインプット仕様を用いた場合、提案書が業務要求水準を満たしているかの審査はあくまでも「アウトプット仕様を満足しているかどう
か」で行う必要がある。
・ インプット仕様を提示する際に、公共施設の標準仕様に規定されたものを使用したり、標準仕様そのものを参考資料等として添付したりする場合がある。しかし、公共施設の標準仕様は、災害時の避難場所としての機能等、高い安全性を前提としたものがあるなど、必ずしも一般的に適用すべきものとは限らない。高い安全性を必ずしも必要としない施設においてこうした仕様を使うことは、不必要に高いサービス水準を求めることにつながり、VFMを低下させる恐れがある。したがって、安易に公共施設の標準仕様を参考とするのではなく、PFIにより整備する施設の用途や求められる機能を十分に踏まえたうえで、公共施設としての標準仕様を用いるかどうかを検討する必要がある。
(3) 管理者等側のサービス利用者(ユーザー)の関与のあり方
①課題
・ 病院事業や刑務所、大学、研究所等の事業では、当該事業の管理部門が発注担当者となり、実際のサービスの利用者(学校PFIの教師、病院PFIの医師、看護師等。以下「ユーザー」という。)が異なることがある。
・ この場合、管理部門が主体となって業務要求水準書を策定し、事業契約締結後にユーザーが主体となり施設の設計や仕様を検討することとなる。事業者選定後に、管理部門が主導して作成した業務要求水準書やそれに基づいた設計書、業務仕様書に対して、ユーザーから過剰な仕様であること(或いは逆に必要な仕様が含まれていないこと)が指摘されることがある。また、質疑や対話を踏まえて業務要求水準の明確化を図ったにも関わらず、その解釈の範囲を超える要求がユーザーから出される可能性がある。
②考え方
・ 制度上、管理部門が管理者等となる場合でも、ユーザー側の代表者を決め、この代表者がユーザー側の意向を集約するとともに業務要求水準書の作成等に主体的に参加することが望ましい。
・ 事業者選定の段階から、施設等の設計、事業の運営段階にわたり、業務要求水準の解釈の一貫性が図られるべきである。特に、民間事業者が提案書を作成する段階と、事業者選定後の設計協議や業務仕様書の確定の段階とで解釈が異なると、事業の円滑な運営に支障をきたすこととなる。こうした事態を防止するためには、管理者等側の各主体が、事業契約締結の前後において業務要求水準の解釈の一貫性を確保するように努めるべきである。そのためには、管理部門が自らの責任において内部調整を早い段階から行い、責任を一元化し一貫性を確保することが必要である。
③留意点
・ ユーザーの代表者が民間事業者との対話にも参加する場合には、ユーザーの代表者と管理部門との意見の相違がないよう意見の一本化に努めるとともに、責任の一元化を図る必要がある。
・ 事業によっては、ユーザーは自らが事細かに設計やインプット仕様を指示する従来方法に慣れているため、性能発注を前提とした仕様の確定手順に戸惑うことが考えられる。このため、管理部門は、性能発注の考え方について事前にユーザーに対する啓発を行うことが望ましい。
・ サービスの最終利用者(学校PFIの学生、病院PFIの患者等)が存在する場合、民間事業者は当該の最終利用者に対して良好なサービスが提供されるよう、最終利用者の意見を聞くことや、ユーザーに対して助言、提案を行うことも必要である。
(4) 業務手順を明示することの必要性
① 課題
・ サービス提供業務の比重が重く、多数の業務から構成されている事業をはじめとしたPFI事業においては、これまで個別に発注されていた個々の業務を束ねて実施すること、また設計、建設、維持管理、運営のライフサイクル全体を通じた一気通貫の手順を改善することなどによりBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング:前掲 p.6 参照)を実施できる効果が大きい。
・ 民間事業者によるBPRの提案を促し、これを積極的に受け入れるためには、管理者等が従来方式による業務手順や業務量、サービスの水準等を開示する必要がある。しかしながら、現状では従来方式の業務手順等について十分な分析や情報提供がなされていないことが多いと考えられる。
② 考え方
・ 管理者等は、民間事業者によるBPRの提案を可能とするために、現状の(従来方式で行われている)業務手順や業務量、それによる成果の調査・分析を行い、その結果を業務要求水準書の参考資料として添付することが望ましい。
・ BPRにより現状よりも高い水準のサービスを実現することを業務要求水準に規定し(すなわち、従来方式による現在の水準を最低限満たされるべき水準として規定した上で、それを上回る提案を求め)、民間事業者からの提案に基づいて具体的なサービス水準を客観的に決定することも一つの考えになる。
③ 留意点
・ 特に、管理者等側にユーザーが存在する事業では、民間事業者が所掌する業務についてBPRを実施するにあたり、ユーザー側の業務手順(病院であれば医師や看護師の業務手順)にも影響を与え、その見直しが必要となることも考えられる。この場合、落札者決定後に、民間事業者がユーザーと協議しなければ決定できない内容も多いと考えられるため、設計や運営に関する協議を通じて内容を詰める必要がある。なお、この際、ユーザーは、従前の業務の実施方法が変わること、民間事業者と合意した業務手順を遵守する必要があることに留意すべきである。また、管理者等が所掌する業務のBPRについては、組織や人員体制の変更等が必要となり、管理者等側の業務手順への影響が大きいことに留意すべきである。
・ 運営開始後においても、必要に応じて業務手順の見直しを行うことは有効である。
PFIによるBPRの対象範囲の例
•PFIによるBPRの対象外の業務
•民間事業者によるBP Rの影響を受け、業務手順が変わり得る
•PFIによるBPRの対象となる業務
•民間事業者によるBP Rにより業務手順が変わる
民間事業者の所掌業務
管理者等側の所掌業務
BPRのためには官民双方の所掌業務の業務手順の明示が必要
(5) 官民のコミュニケーション
① 課題
・ PFI事業においては、民間の創意工夫を発揮することにより、VFMの一層の向上を図ることが期待されており、そのためには官民が適切なコミュニケーションを図り民間事業者の意見を踏まえながら業務要求水準書を作成する必要があるが、実態として必ずしも適切なコミュニケーションが図られていない事例もある。
・ 特に民間事業者が従来運営を行った経験のない事業分野(刑務所、裁判所等)や、官民双方の経験が少ない事業分野では、そもそも事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)からアウトプット仕様を作成することが難しく、結果として、書面上のやり取りのみでは管理者等にとっての常識と民間事業者の認識が埋まらない可能性が高い。このような場合、効果的なモニタリングが難しくなる上、支払メカニズムの根拠も曖昧になり、VFMの達成が困難になる事態が想定される。
・ また、事業によっては警備上の観点等から業務要求水準書への諸条件の詳細な規定ができない場合も考えられる。
② 考え方
・ 管理者等が単独で業務要求水準書を作成するのではなく、行政実務と実態に関し、情報公開を徹底し、民間事業者との意識や認識のギャップを埋めること、そこで得られた内容を可能な範囲で業務要求水準書に反映していくことが必要である。例えば、以下のような方法が考えられる。
(ア)業務内容、人員布陣、予算、業務手法等、管理者等による積極的な情報公開
(イ)類似の他施設の見学・意見交換
(ウ)入札公告前段階における民間事業者からの意見の収集等の様々な対話
・ また、技術アドバイザー等と十分な議論を行い、管理者等の意図が適確に伝わるような業務要求水準書を作成するための表現の工夫がよりいっそう求められる。
・ また、書面による管理者等の意図の伝達を補完するため、入札公告後においても「P FI事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて(平成 18 年 11 月 22日PFI関係省庁連絡会議幹事会申合せ)」に従った対話、質問回答などによって、業務要求水準書をより適切なものに修正していくことが望ましい。この際、特に民間事業者が従来運営を行った経験のない事業分野については、民間事業者に対して必要な情報が適切に提供されているかを確認すべきである。
導入可能性性調調査査
実実施施方針
入入札札公告
事業者選定
契契約約締結
•導入可能性調査段階で業務要求水準書(骨子)を作成し、マーケットサウンディングを行う。
•実施方針の公表にあわせて業務要求水準書(案)を公表する。それ以降は、相対・個別での対話を官民で行い、業務要求水準書(案)に必要な修正を加える。
•入札公告後も対話を行う。
•アウトプット仕様については原則として明確化の枠組みで行い、業務要求水準書の実質的な変更は行わない限度にとどめる。
•アウトプット仕様を具体化する手段の例として記述されたインプット仕様については、当初記載された内容と同等ないしはそれ以上である場合には民間事業者から提示された代替案を採用できるものとする。
•事業者選定後は、選定された事業者との対話をさらに行う。
•入札公告前及び公告後の段階での対話を充実することで、業務要求水準書の解釈に係る官民間の認識の不一致をできる限り解消し、事業者選定以降の変更要因の最小化に努める。
<導入可能性調査段階>
・ 業務要求水準書はPFI事業の根幹をなすものであり、その骨子は早期に作成する必要がある。
・ PFI事業の導入可能性の把握あるいはコスト調査等のためにマーケットサウンディングを行う際、業務要求水準書の骨子を民間事業者に提示する。マーケットサウンディングにおいて得られるコスト情報やVFM向上のための提案を踏まえ、業務要求水準書案を作成し、実施方針に添付し公表する。なお、情報を開示する際には、民間事業者間の公平性を害しないよう配慮する必要がある。
・ 官民のリスク分担についても、導入可能性調査段階で検討を行うことが望ましい。
<実施方針公表以降>
・ 業務要求水準書の内容を充実させるため、実施方針等の公表に際して行うヒアリング、質問回答、さらに個別・相対での対話等も活用し、適宜、業務要求水準書案の内容の修正や追記を行う。
・ 官民のリスク分担は、事業契約書として具体化、明確化されるべきものであるが、実施方針公表段階でその概要を開示することも、民間事業者に管理者等の考え方を示す上で有効である。例えば、リスク分担表に加え、リスクに関する部分について重要な取引条件を記載する書面を添付することも考えられる。
<入札公告後>
・ 公表された業務要求水準書に関する確認事項については、書面による質疑回答を行
うことが一般的であるが、それに加えて、必要に応じて応募者ごとに対話を行うことが考えられる。
・ 記述が不明確である場合は、対話を通じてこれを明確にする必要がある。
(参考:入札公告後に対話を行った例)
・ A 事業(既存の複数の病院を統合して新設する事業)では、建替の対象となる既存の病院において、応募者ごとにユーザーである院長や看護部長を交えた対話を行い、応募者がユーザーのニーズを直接把握するための機会を設けた。
・ B 事業(病院の建替え事業)では、業務要求水準書に記載された個々のアウトプッ
ト仕様やインプット仕様等の解釈について、応募者ごとに対話を行う機会を設けた。
③ 留意点
・ 入札公告後の対話は、管理者等の意図を民間事業者に伝えるための有効な手段の一つであるが、あくまでも入札公告時に業務要求水準書を具体的に、明確に、精緻に示していくことがまず必要であることに留意する必要がある。
・ 特に民間事業者が従来運営を行った経験のない事業分野(刑務所、裁判所等)や、官民双方の経験が少ない事業分野では、以下に留意する必要がある。
(ア) あくまでも、入札公告時に業務要求水準書を具体的に、明確に、精緻に示していくことが前提であるが、事業の開始後になって実態に合わせるために業務要求水準の見直しが必要となる可能性がある。そのため、事業契約締結後の対話により、業務要求水準の充実を図ることも考慮すべきである。例えば、施設の設計書、業務仕様書が作成される契約締結から施設供用開始までの間、施設供用開始後一定期間後において、事業の進捗に併せて業務要求水準書やモニタリングの仕組みを見直すことが考えられる。
(イ) その際、必要に応じて、契約にも当該の見直しを反映する。このような見直しが必要と考えられる事業においては、予め、業務要求水準書及び契約書に見直しのための検討を行う旨を記載することで、業務要求水準の改善が必要であることに対する官民双方の注意を喚起することが期待できる。
(ウ) 上記の場合でも、他の民間事業者との公平性及び民間事業者や金融機関がとるリスクに対する配慮は必要である。したがって、できる限り入札公告段階で条件を具体化し、変更される可能性がある部分については、「協議」に委ねるのではなく、「サービス内容の変更」(原則対価の変更を伴う)として扱うべきである。
(6) 業務要求水準書に対応する予定価格の設定
① 課題
・ 予定価格を算定した時期には業務要求水準の内容が固まっていないため、その後に作成された業務要求水準が予定価格に見合わないものになることがある。
・ 特に、管理者等の内部や関係者の意見を幅広く取り入れること等により、結果として総花的な業務要求水準書になり、予定価格に見合わない内容となる場合がある。
② 考え方
・ 本来、業務要求水準は導入可能性調査段階で骨子が作成され、その後実施方針公表を経て公告に至るまでの間に具体化、詳細化され、業務要求水準書が確定した後にその内容を踏まえて予定価格が設定されるべきである。
・ しかしながら、現実には業務要求水準が具体化、詳細化される前の段階で、予定価格が事実上設定されることが多く、具体的には、PSC、PFI-LCCが導入可能性調査段階で算定され、これに基づいて予定価格が算定されることが多い。このような場合には、この段階までにできるだけ業務要求水準書の重要部分を詰めておくことによって、予定価格と業務要求水準の内容とが乖離しないように努めるべきである。
・ 業務要求水準書は、プロセスが進むごとに具体化、詳細化される。これにあわせて、予定価格が業務要求水準書と乖離していないかをその都度確認する必要がある。特に、実施方針公表後の官民の間での対話等に基づいて業務要求水準の内容が修正された場合は、予定価格との乖離が生じていないかを確認することが必要である1。
・ PSCの算出については、業務要求水準を満たす管理者等の案として基本設計を実施し、算出する方法が考えられるが、費用やスケジュールの観点から全ての事業で適用可能な方法とはいえない。「VFMに関するガイドラインの一部改定及びその解説」(平成 19 年 6 月 29 日)において、「(設計費、建設費、維持管理費については)従来方式で実施する場合の設計費、建設費、維持管理・運営費と同様であり、管理者等が必要な調査を実施した結果により、また、過去の実績、経験等に基づく等の方法により算出されることが望ましい。ただし、過去の実績等を用いる場合は、対象事業を現時点で実施した場合に想定される費用とする点に留意する必要がある」とされており、必ずしも設計が必要なのではなく、各種データから合理的に算定することも有効である。
・ 導入可能性調査及び実施方針公表後の望ましいコスト検討の流れを整理すると次頁の通りである。
1 業務要求水準が予定価格から乖離する理由として、①予定価格設定と業務要求水準策定のタイミングの差異(議会対策等の観点から、業務要求水準を具体化・詳細化する前の段階で債務負担行為を設定し、これに基づいて予定価格を設定することがあり、その時期のずれから乖離が生まれる)、②業務要求水準が民間事業者の意見や提案を聴取しない限り確定しないため、結果として予定価格設定に反映されないこと等が考えられる。これらの背景には制度上の予定価格の硬直性の問題がある。
業務要求水準書(骨子)
民間ヒアリング
基本設計または過去データ等調査
NO
PFI-LCC概算
PSC概算
NO
VFMがあるか
YES
手法見直
支払い許容度の範囲内か
YES
実施方針・業務要求水準書(案)の公表
民間との対話
業務要求水準書
の作りこみ
PFI-LCCの詰め
PSCの詰め
VFMの有無の最終確認
業務要求水準書の確定
手法の見直し
予定価格の設定
【可能性調査段階】
のし
【実施方針の公表〜公告まで】
③留意点
・ 国が発注するPFI事業では、予算決算及び会計令の規定を踏まえ、現状では予定価格が開示されていないことから、民間事業者は予定価格を知ることができない。一方、地方公共団体が実施するPFI事業では約2/3の事業で予定価格(公募プロポーザルの場合は参考価格や予算額)が提示されている。
①国0.0%
100.0%
共団体
66.3%
33.7%
法人等
23.1%
76.9%
合計
50.4%
49.6%
②地方公
③特殊
ア.公表している イ.公表していない
PFI事業において予定価格を公表している団体
(平成 19 年度内閣府調査による)
・ 事業実施主体の約7割を占める地方公共団体では、現状でも予定価格を公表している事業が多いことから、民間事業者への価格情報の提供の必要性が認識されつつあるといえる。2
2 コストと業務要求水準書の整合性については、推進委員会報告において、①要求水準の内容をまとめた上でPSC、PFI-LCCを積み上げ、要求水準に即した「予定価格」を設定すること、②可能な限り要求水準の明確化をはかった上で、上限拘束性のない参考価格を提示する、または、「予定価格」の算定根拠を示すこと、が具体的な対応策として示されている。これらに加え、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」(平成 17 年 3 月 31 日法律第 18 号。以下、「品確法」という。)では、公共工事について高度な技術又は優れた工夫を含む技術提案を求めたときは、その審査の結果を踏まえて予定価格を定めることができるとされており、本書の策定に当たり開催した「PFI事業実施プロセスに関するワーキンググループ」参加委員からは、こうした品確法のアプローチによるPSC、予定価格の精緻化も必要との意見が出されている。
2-2.達成すべき基準の明確化
(1) 業務要求水準に対応したモニタリング指標の設定及びモニタリングの基本計画の作成
① 課題
・ 業務要求水準書に示されたアウトプット仕様を基準に、実際に提供されるサービスについて、その達成度が確認される必要がある(モニタリング)。
・ しかしながら、業務要求水準書に対して適切なモニタリング項目が必ずしも設定されていないこと、さらにはモニタリングを実効的に行う手順についての認識が不十分であること等により、モニタリングが有効に機能していない場合がある。
②考え方
・ モニタリング指標をできるだけ客観的に示すことで、サービスの履行状況について官民の齟齬が生じないようにする必要がある。
・ 業務要求水準書で提示したアウトプット仕様に対して、それらの達成状況を計測するためのモニタリング指標を予め検討し、業務要求水準書と一体的に作成することが必要である。
・ モニタリング指標の設定方法は事業の性格により異なる。
(ア) 病院事業のように、個別の業務に対するアウトプット仕様を踏まえたモニタリング指標の検討を行うことが必要である場合、少数の指標で事業全体をモニタリングをすることは困難である。2-1(1)にあるような、ユーザーの満足度等のデータをモニタリング指標として活用することも考えられる。
(イ) 廃棄物処理事業のように、処理量や環境基準といった客観的な数値基準を満たすことが前提となる施設を運営する事業の場合には、比較的少数の基準等で施設のパフォーマンスを規定することが可能である。
事業類型によるモニタリング指標の設定のイメージ
個別の業務に対するアウトプット仕様を踏まえた モニタリング指標の検討を行うことが必要である場合
(例:病院等)
ある客観的な基準の達成のために業務が構成されている場合
指標A2
業務Aのアウトプット
全体の アウトプット
指標A1
・
(例:廃棄物処理施設等)
指標An
指標Bn
アウトプット
業務Xの
指標B2
指標B1
業務Bのアウトプット
・
・
・
・
モニタリング指標が多くなる傾向
ユーザーの満足度等
(主観的な要素)
そのため主観的な要素の活用も有効
業務X
指標3
業務B
指標2
指標1
業務A
全体の アウトプット
各業務は全体のアウトプットを発揮するための要素であり、(業務ごとの
アウトプットをモニタリングしなくとも)施設の性能を確認できる
・ 比較的事例数が多い施設整備を中心とした事業であっても、現状では「どの程度モニタリングを行う必要があるか」については具体的な基準がないため、管理者等が基準を示す必要がある。
・ 以上をまとめると、業務要求水準書の提示とあわせて、アウトプット仕様ごとに、達成状況を見るためのモニタリング指標と、その計測方法や計測頻度について可能な限り管理者等が枠組みを示すことが必要となる。これらを例えば「モニタリング基本計画書」として取りまとめ、公募書類の一つとして提示することが必要である。
・ ただし、モニタリングの具体的な内容が民間事業者の提案により影響を受けることもあることを踏まえると、モニタリングの基本計画を入札公告の段階で細部まで詰めて提示することは困難な場合があると考えられる。このような場合にあっても、モニタリング指標ごとに、可能な限り計測の具体的な方法や頻度を入札公告時にあわせて示すことで、民間事業者がモニタリングにかかる費用を見積ることが出来るようにすることが必要である。
・ 業務要求水準未達の状態になった場合に修復するための期間(修復期間:この期間内に修復された場合には、ペナルティの対象外とする)を明示することで、サービスの水準を規定することも必要である。修復期間としては、例えば4段階程度に区分し、重要度に応じて修復期間を設定することが考えられる。
・ 修復期間が明示されていない場合、民間事業者にとってどの程度の時間で修復できる体制を整えればよいのか不明であるため、見積もりが困難となる。修復期間が市場の慣行に合致していないと、高いコストが見積もられることになり、また金融機関もリスクがあると判断することになる。したがって、マーケットサウンディング
の際に案を示すこと等により、市場の慣行に従った修復期間を設定することが必要である。
(参考:英国保健省の例)
・ 英国保健省は、病院PFIについて書類の標準化を進めており、その中に標準サービスレベル仕様書(Standard Service Level Specification )がある。これは、包括的な要求事項を記述した「サービス全般仕様書(General Service Specification )」と個別サービスを対象とした「特定サービス仕様書(Service Specific Specification )」により構成されており、これがアウトプット仕様を規定している。
・ 業務ごとにアウトプット仕様を定めている「特定サービス仕様書」は以下のような項目で構成されている。この中で、アウトプット仕様の達成状況を測定するための「パフォーマンス・パラメータ」があわせて整理され、公募段階で民間事業者に提示されている(キー・パフォーマンス・インディケーターについては(3)参照)。
英国病院PFI事業における特定サービス仕様書の構成(建物サービスの例)
1.用語の定義
2.主要な目的
当該特定サービスを提供する際の目的が記述される。
3.主なカスタマー
当該特定サービスを提供する相手(例えば、患者、病院スタッフ等)が記述される
4.プロセス
4.1 スコープ
提供するサービスの内容(PFI事業者の業務所掌)が記述される。
4.2 サービス要求水準
業務要求水準の詳細が記述される。
(例えば、対応時間、要員の保有資格や業務実施条件等)
別添A:品質標準
具体的な品質の状況。例えば、床に埃、汚れ、こぼれた液体の放置が無い等。
別添B:サービスレスポンスタイムと解消所要時間
サービス品質不良の発生時のサービスレスポンスタイム(対応までの時間)とサービス品質不良の解消までの時間が記述される。
附表
パフォーマンス・パラメータ
キーパフォーマンスインディケーター(KPI)
業務要求水準書に相当
モニタリング指標に相当
(モニタリング基本計画書に規定)
③留意点
・ モニタリング指標は、出来る限りアウトプット仕様で定めることが望ましい。ただし、サービス提供業務において、品質管理のプロセス(ISO、HACCP等)を合意した場合は、当該プロセスの遵守状況等をモニタリング指標として設定することも考えられる。
・ モニタリングは費用負担や労務負担を伴うものであるため、その効果と負担を考慮して、指標や計測の頻度、方法等を設定する必要がある。具体的には、常時確認するモニタリング指標は重要性の高い目標を中心に設定する、類似したモニタリング項目は一括した指標により確認するといったように、モニタリング指標間の軽重をつけること等が考えられる。
・ モニタリング基本計画書で提示されたモニタリング指標及び支払メカニズムは原則としてそのまま運営段階に適用される。しかしながら、民間事業者から提出される実際の提案書及びそれに基づく業務仕様の内容によっては、変更が必要となることも多いと考えられる。そのため、これらをまったく変更しえないものとすると、実態と乖離して効果的なモニタリングができない可能性もある。そこで、モニタリング基本計画書に基づき、モニタリング方法の詳細を定めたモニタリング実施計画書を作成する手順を採用することが合理的と考えられる。
(2) 事業目的に合致したモニタリング指標と支払メカニズムの連動
①課題
・ モニタリング指標を総花的に設定して支払メカニズムと連動させると、重要な指標が埋没し、事業コンセプトに見合ったものとならなくなる恐れがある。
・ 業務間で類似のモニタリング指標を規定する場合に、減額の重複が生じないよう留意する必要がある。
・ 各モニタリング指標を満たさなかった場合の減額幅がバランスのとれたものでないと、民間事業者がペナルティによる減額を回避しようとして、逆にサービスの低下をもたらすこともある。例えば、海外の列車サービスの事例においては、運休とする場合の減額が大きいために、一本運休して列車の遅延を改善するという手法がとられず、遅延を継続させて大きな減額を回避し、結果として利用者の利便性が低下するという例が指摘されている。
・ また、過剰な減額を設定した場合、応募者のリスクを増大させ、応募者の参加意欲の低下や過剰な予備費の設定につながり、VFMの低下を招く可能性がある。
②考え方
・ PFI事業の支払メカニズムには、公共サービスの適正かつ確実な実施を確保するため、民間事業者に業務要求水準を満たすサービスの提供に対して強い動機付けを与えることが期待される。その意味で、支払メカニズムは、業務要求水準の達成状況を確認するためのモニタリング指標と一体的に構築される必要がある。
・ 管理者等は、原則としてこれらを入札公告時に一括して提示することが必要である。
・ そのためには、管理者等の事業コンセプトに即したサービスが提供されるよう、アウトプット仕様ごとの重み付け等を明確にした支払メカニズムを構築する必要がある。
・ アウトプット仕様ごとの重み付けにあたっては、例えば以下のような要素を考慮して総合的に判断することが考えられる。
(ア) 当該アウトプット仕様がサービスや成果に与える影響の度合い(例えば病院であれば手術室は重要だが、会議室は比較的軽微である、等)
(イ) 当該アウトプットが確保されない場合に管理者等に与える経済的影響を含めたリスク(例えば病院であれば診察ができない状態は医業収入の減少になる)
・ 業務要求水準未達時のペナルティについては、過剰な減額により民間事業者の事業の継続に支障が生じないよう、収支への影響を踏まえた設計が必要である。
(アベイラビリティとパフォーマンスについて)
・ 施設によっては、業務要求水準を満たしているか否かを、施設のアベイラビリティ3な
3 ここでいう「アベイラビリティ」とは、施設の「利用可能性」をさす。「施設が利用可能な状態である」場合に対価をはじめて支払うこととすることにより、施設の不具合や維持管理の不備により施設が
いしサービスのパフォーマンス4という2つの指標でチェックすることが考えられる。
・ アベイラビリティとパフォーマンスという概念を用いる場合には、両者の関係を明確にする必要がある。特に同じ事項について二重に減額されることがないように、どのような場合にアベイラビリティに基づく減額のみがなされ、どのような場合にアベイラビリティとパフォーマンスの双方に基づいて減額されるのか等を明確に規定しておくことが望ましい。
(参考:英国病院事業の例)
英国病院事業では、重み付けを詳細に決定した減額メカニズムが採用されている。具体的には以下のとおり。 ①通常の施設の利用が不可能になる状態を生じさせる不履行と(アベイラビリティに関するもの)、利用不可能ではないが業務要求水準違反がある場合(パフォーマンスに関するもの)に分類する。 ②アベイラビリティについては、「機能エリア」(Function al Area) ごとに重み付けを行い、さらに「機能エリア」の中の各「機能単位」(Functional Unit) ごとに重み付けをしていく(%の形で)。 但し、 「機能エリア」ごとの重み付け(%)の和は 200%以内 「機能単位」ごとの重み付けの和は 150%以内減額幅は、以下のとおり計算する。 年間のサービス対価/(365 日×6)×機能エリアの重付け(%)×機能単位ごとの重付け(%) (但し、計算結果がサービスの対価を超える場合には、サービス対価の額を上限とする) ③パフォーマンスについては、以下のように項目ごとに、重要度を「高い、中程度、低い」を示すとともに、何%までは許容範囲か、何時間以内に治癒すればよいかを併せて示すことにより、発注者にとっての重要度を明確に示している。 | |||||||
番号 | パフォーマンス指標 | パフォーマ ンス水準未 達成の分類 | 許 容 範 囲 | 猶予時間 | モニタリング方法 | ||
SP 01 | [個々の業務要求水準を記 載。]5 | 重要度高 | [0%] | 1時間 | [モニタリング方法を 記載] |
利用できないリスクを選定事業者に移転することになる。
4 ここでいう「パフォーマンス」とは、契約上の義務の履行を意味し、管理者等が業務要求水準で示したサービスの履行状況をさす。
分類 | 金額 |
重要度低 | |
重要度中 | |
重要度高 |
なお、利用不可能状態が解消されるまでの間、利用不可能な状態が生じた機能単位に関しては、当該利用不可能状態に基づく減額のみを行い、当該機能単位でパフォーマンス水準未達成が発生しても、これによる減額は行わない。(二重の減額を防いでいる)
(参考:わが国の一般的な例)
わが国では、特に重要なものとそうでないものに大まかに2分類する方法が多く用いられている。以下に宿舎の例(公務員宿舎城北住宅(仮称) 整備事業)を示す。管理者等にとって重要な部分については、「明らかに重大な支障があるとみなす事態」と扱うことによって、管理者等の意図を明確化していくことが考えられる。 (1) 減額の対象となる事態 維持管理業務が維持管理業務要求水準を満たしていないと確認された場合には、減額ポイントを加算する。その減額ポイントの加算の後、6 ヶ月分の減額ポイントが一定値に達した場合には、対象業務に対応する維持管理業務に係る対価の減額を行う。 維持管理業務が維持管理業務要求水準を満たしていない場合とは、以下に示す①又は②の状態と同等の事態をいう。 ① 居住者が日常生活を送る上で明らかに重大な支障がある場合 ② 居住者が日常生活を営むことはできるが、明らかに利便性を欠く場合各対象業務について、①又は②の状態となる基準は以下のとおりとする。 <①居住者が日常生活を送る上で明らかに重大な支障がある場合の例> | |||
対象業務 | 明らかに重大な支障があるとみなす事態 | ||
一般管理業務 | 備品(かぎ等)、帳簿類等の紛失 集会室使用料出納業務の不備(金額不一致等) 窓口・連絡業務の故意による放棄(長期に連絡が取れない、故意に甲への連絡を行わない等) 甲からの指導・指示に従わない 消防計画の未整備 等 |
5 英国保健省の標準サービスレベル仕様書では、約 600 のパフォーマンス指標がこのような形式で記載されている。
昇降機保守点検業務 | 定期点検の未実施 故障等(停止など昇降機としての機能を果たさない)状態の放置安全措置の不備による人身事故(居住者等)の発生 等 | ||
消防用設備等保守点検業務 | 定期点検の未実施 災害時の未稼動(火災等発生時において消防用設備等としての機能を果たさない事態の発生) 安全措置の不備による人身事故(居住者等)の発生 等 | ||
給水設備清掃等業務 | 定期点検の未実施不衛生状態の放置 安全措置の不備による人身事故(居住者等)の発生等 | ||
自家用電気工作物保守点検業務等(必要な場合) | 定期点検の未実施 故障等(停止など電気工作物としての機能を果たさない)状態の放置 安全措置の不備による人身事故(居住者等)の発生 等 | ||
(2) 減額ポイント 減額ポイントは以下のとおりとする。 甲は、定期モニタリング及び随時モニタリングを経て、対象業務に対応する当月の減額ポイントを確定する。 (3) 減額ポイントを加算しない場合 減額の対象となる「3-(1)-①又は②」の状態と認められたとしても、以下の①又は②に該当する場合には減額ポイントを加算しない。 ①やむを得ない事由により「3-(1)-①又は②」の状態が生じた場合で、かつ事前に甲に連絡があった場合。 ②明らかに乙の責めに帰さない事由によって「3-(1)-①又は②」の状態が生じた場合 (4) 減額ポイントの支払額への反映 モニタリングが終了し、減額ポイントがある場合には、乙に減額ポイントを通知する。対価の支払に際しては、6 ヶ月分の減額ポイントの合計を計算し、下表に従って維持管理業務に係る対象業務の対価の減額割合を定め、減額の必要がある場合には、当月の支払額 |
事 態 | 減額ポイント |
居住者が日常生活を送る上で明らかに重大な支障がある 場合 | 各項目につき20ポイント |
居住者が日常生活を営むことはできるが、明らかに利便性 を欠く場合 | 各項目につき2ポイント |
を乙に通知する。(減額ポイントは対象業務ごとに計算し、減額も対象業務ごとに行う。) <減額割合> | |||
6ヶ月の減額ポイント合計 | 対象業務の対価の減額割合 | ||
100以上 | 100%減額 | ||
58~98 | 1ポイントにつき0.6%減額 (34.8%~58.8%の減額) | ||
32~56 | 1ポイントにつき0.3%減額 (9.6~16.8%減額) | ||
0~30 | 0% (減額無し) |
③留意点
・ いわゆるペナルティポイント制(業務要求水準未達に対し減額ポイントを付与し、一定の点数以上になったときに実際に減額する仕組み)では、各項目の重み付けの工夫や、業務要求水準に規定されたサービス水準を超えた場合にリカバリーポイント(ペナルティポイントと相殺できるポイント)を付すことによって、より柔軟にインセンティブを与える仕組みを構築することも考えられる。
(参考:病院事業でリカバリーポイントを採用している例)
1)PP[ペナルティポイント]の相殺の考え方
モニタリングの第一の目的は、サービス対価の減額ではなく、乙から提供されるサービスの質の維持、向上、回復であるため、乙が提供するサービスの質が2ヶ月連続して著しく向上されたと甲が判断した場合は、「事業評価委員会」において、リカバリーポイント(以下「RP」という。)の付与並びにPPとの相殺可否の検討を行う。なお、ここでいう「サービスの質が著しく向上された」とは、例えばモニタリング項目に対する業務評価基準について、仮にABCの3段階評価を採用し、要求水準を満足するレベルを
「B」として基準設定した場合、要求水準を上回る目標レベルを「A」と設定し、当該
「A」を達成する状態を指す。
ただし、「標準環境不提供事象が確認されたモニタリング項目」及び「業務是正勧告等が行われたモニタリング項目」に関するPP[ペナルティポイント]ついては、RPとの相殺は行わない。
なお、RPは、前述のとおり甲が「サービスの質が著しく向上された」と判断できることが前提となることから、当該判断が可能であり、かつ、当該サービスの質の向上が患者サービスの向上等に直結する等、その継続的な改善への期待が大きいモニタリング項目に対して適用されるものとする。従って、全てのモニタリング項目において適用で
きるとは限らず、具体はモニタリング項目を踏まえ、甲と乙の協議の上、甲が決定する
ものとする。
モニタリング項目が該当するレベルの区分ごとに付与されうるRPを下表に示す
該当するモニタリング項目のレベル区分 | 付与されうるRP |
レベル1 | [1]RP |
レベル2 | [3]RP |
レベル3 | [5]RP |
2)PP相殺の前提条件
当該業務において、PPが付与された翌月から2ヶ月間連続して、要求水準等未達事象が発生していない場合に限り、PPの相殺を行うものとする。
3)PP相殺の手順
ア)PPがRP付与と同じ評価対象期間に発生している場合
甲は、当該PPが付与された業務と同業務のモニタリング項目について、PPが発生した月の翌月から 2 ヶ月間連続して著しくサービスの質の向上が図られていると判断した場合、当期の事業評価委員会において、RPを算定し、PPと相殺するか否かについて検討し、相殺が認められれば、甲は乙に対し、相殺の結果を踏まえ、サービス対価の支払額を確定することとする。
なお、支払い対象期間の詳細については、後述する。
イ)PPがRP付与の直前の評価対象期間に発生し、かつ対価が減額されている場合 甲は、当該PPが付与された業務と同業務のモニタリング項目について、PPが発生した月の翌月から 2 ヶ月間連続して著しくサービスの質の向上が図られていると判断した場合、当期の事業評価委員会において、RPを算定し、PPと相殺するか否かについて検討する。ここで、相殺が認められれば、甲は乙に対し、相殺の結果を踏まえ、前期の事業評価時のサービス対価の減額分の一部(相殺分)を支払うこととする。
ウ)相殺対象となるPPが未発生の場合
RPは、すでにPPが発生していなくとも、2 ヶ月間連続して著しくサービスの質の向上が図られていると甲が判断した場合、適宜算定できるものとする。ただし、当該 RPを相殺に適用できるPPは、RPを算定した月が属する評価対象期間の翌期までに、RPが算定された業務と同業務のモニタリング項目に対して発生したPPとし、翌々期以降に発生したPPの相殺には適用できないものとする。また、「RP-PP」に残分が生じた場合、当該残分についても同様にRP発生の翌期まで、相殺に適用できるものとする。
(図表 略)
4)留意事項
ア)RPが付与された月が属する評価対象期間中とその直前の評価対象期間中に、それぞれPPが付与されている場合、RPは優先的に前者との相殺に適用されるものとし、残分がある場合、引続き後者との相殺に適用されるものとする。
イ)サービスの質の著しい向上が連続して 3 ヶ月目以降も確認された場合、引継ぎ 2 ヶ月単位での確認を行い、確認されれば、RPを付与するものとする。ただし、翌事業年度における取扱いについては、年度業務計画書等を踏まえ、別途甲及び乙の協議に
基づき、甲が決定するものとする。
(3) 組織品質や業務全体の傾向を評価する指標の活用
①課題
・ 多数の請負業務を統括して管理する必要がある事業では、サービスや業務の質、セルフモニタリングの実効性、管理者等との協力体制等の選定事業者のマネジメント能力がPFI事業のサービス水準に影響を与える場合がある。このような場合、選定事業者の組織品質をいかに保持していくかが重要となる。
・ サービス提供業務が多岐にわたりモニタリング指標の数が多い事業では、モニタリングの実効性が低下することが懸念される。こうした事業では、業務毎のモニタリング指標だけでは、必ずしもサービス全体が適切に提供されているかどうかについて、十分にモニタリングできない可能性がある。
②考え方
・ 選定事業者のマネジメント能力の重要度が高い事業では、業務要求水準で示されたアウトプット仕様とは別に、組織品質を評価する指標を活用することで、民間事業者の組織品質を維持し継続的なサービス水準の改善を行うことが考えられる。
・ サービス提供業務が多岐にわたる事業においては、モニタリング指標が個別業務に対して設定されることから、業務全体の傾向を見るための経営管理的な指標を活用することで全体としてのサービス水準の傾向を把握することが有効と考えられる。
・ 英国の病院PFI事業では、SPCに統括機能を持たせているほか、組織に求める業務要求水準が規定されている。また、経営管理的な指標としてキー・パフォーマンス・インディケーター(KPI)が用いられている。
(参考:英国における組織品質等の評価の方法)
・ 英国では、SPCが各構成企業からは一種独立した立場から全業務を見渡した上でマネジメントをすることが求められている。SPCの業務範囲が広範に及び、委託先が多岐にわたる場合等においては、各種運営業務を横断的に統括する機能として
「ファシリティー・ディレクター」が置かれており、組織品質の確保の役割を担っている。
・ 組織品質を見るための指標としては、英国保健省の標準サービスレベル仕様書中のサービス全般仕様書において、リーダーシップ、スタッフ開発、組織方針や戦略、パートナーシップなどの観点から、組織に対する業務要求水準が定められ、この組織品質を評価するため 65 のパフォーマンス指標によって評価を行っている。
・ また、英国保健省の標準サービスレベル仕様書においては、事業の目的達成を促進するための経営管理的な指標としてKPI(現在は、Continuous Improvement Indicator と呼称されている。)が用いられている。KPIの定期的な測定により、サービスの品質の良否について時系列的なトレンドを把握し、サービス悪化の兆候
が明らかとなった場合は、是正計画の作成に向けた官民の調整を行う仕組みが設定
されている。
※KPI:Key Performance Indicator の略。英国の病院PFI事業では、業務全体の「傾向」をみる指標という意味で用いられており、例えば苦情処理の状況やスタッフの定着率などが対象となる。(なお、KP I はパフォーマンス指標(各アウトプット仕様に対応するもの)と同様の意味で用いられる場
合もある)
・ 国内においても、一部の病院事業においては、業務要求水準書に「統括マネジメント業務」(統括管理業務)が規定されており、選定事業者に求める要件が示されている。なお、統括管理業務の目的として、「本業務は、事業者が受託した個別業務の全てを統括することにより、適切なコスト管理及び適切な品質管理を行う」等が明記されているほか、「発注者のパートナーとして、管理者等が行う業務についても助言・協力を行い、病院の健全経営に貢献する」こと等が示されている。
・ なお、統括管理業務は、あくまで民間事業者が行う業務の統括を担うものであり、管理者等の所掌する業務(例えば病院であれば医療行為、刑務所であれば刑務官の行う業務等)や、公共サービスの提供の責任を代替するものではないことに留意が必要である。
・ 病院事業において、英国と同様の形式で、KPIに相当する経営管理的な指標が使用されている例がある。
(参考:病院事業の例)
業務要求水準書に示された以下の業務要求水準に対して、下表に示すKPIを活用することが示されている。
2) 常に事業者が提供するサービス水準の改善に努めること。
・サービスプロバイダーとして、事業者の業務のサービス水準を維持改善するよう、常に努めること。サービス水準の維持改善のため、発注者とSPCは毎年度開始時に協議して、当該年度のサービス水準(KPI)を設定する。サービス水準(KPI)の幅は、以下のように設定する。
i. 現状提供されている基準値を、「まあよい」の範囲の基準値に設定する。
ii. 値は年度ごとに見直す。
iii. 前年の設定基準値を下回る値は設定しない。
・SPCは四半期に一度、設定した水準の達成状況を発注者に報告する。SPCが提供するサービス水準が、設定した基準の「要注意」の値を下回った場合、SPCは改善対応計画を作成して[2 週間]以内に発注者の合意を得る。
項目 | 基準値 | ||
よい | まあよい | 要注意 | |
ヘルプデスクへの問い合わせ回数/月 | < [ ] 回 | [ ] ‐ [ ]回 | > [ ] 回 |
「やるべきことが行われていない状態」が発生した回数/月 | < [ ] 回 | [ ] ‐ [ ]回 | > [ ] 回 |
「サービスの質が達成されていない状態」が発生した回数/月 | < [ ] 回 | [ ] ‐ [ ] 回 | > [ ] 回 |
顧客(都職員、病院訪問者、患者)満足度 | < [ ] % | [ ] ‐ [ ] % | > [ ] % |
事業者側職員離職度 | < [ ] % | [ ] ‐ [ ] % | > [ ] % |
事業者側職員の長期欠勤 | < [ ] % | [ ] ‐ [ ] % | > [ ] % |
事業者側職員満足度 | < [ ] % | [ ] ‐[ ] % | > [ ] % |
事業者側職員の法定資格保有者数/同等の能力の事業者側職員の人数 | < [ ] 人 | [ ] ‐ [ ] 人 | > [ ] 人 |
教育研修時間/月 | < [ ] 時間 | [ ] ‐ [ ]時間 | > [ ] 時間 |
苦情件数/月 | < [ ] 件 | [ ] ‐ [ ]件 | > [ ] 件 |
③留意点
・ 経営管理的な指標の活用にあたっては、2-1(1)で示したような、履歴データを分析して利用することも検討すべきである。
・ どのような指標を使用する必要があるかについては、個別の事業の性質に応じて決定すべきであり、安易に他の事業のものを用いたり、パッケージ化されたものを用いたりするべきではない。
(4) 実効的なモニタリングの仕組みの構築
①課題
・ モニタリングの仕組みをつくっても、管理者等がモニタリングを民間事業者任せにしており、実際にはモニタリングの仕組みが機能しない可能性がある。
・ モニタリングにおいて重要なのは、業務要求水準書に則したサービス水準を確保することであるが、特にサービス提供業務の比重の重い事業については、サービス提供業務を実際に開始した後に新たに判明または発生する事項も多く、当初想定していたモニタリングの項目、手順等をそのまま適用するのでは実効的なモニタリングが行えないことが多いと考えられる。
②考え方
・ モニタリングの最終的な責任はあくまでも管理者等にあることから、管理者等は民間事業者が実施するセルフモニタリングの結果を監視し、評価を行う必要がある。この観点から、モニタリングの仕組みの構築にあたっては、モニタリング結果の監視や評価を行いやすい、実効的なものとすることが必要である。
・ サービス提供業務の比率が重く、多数の業務から構成されている事業等については、管理者等及び民間事業者により、定期モニタリングにおける評価の事実確認及び確定行為をする場として、協議を行う場を整えること(例えば定期モニタリング委員会の設置)が有効である。協議においては、セルフモニタリングの結果及び管理者等の評価を対照させながら、両者の認識を一致させ、モニタリングの基準を共同で作成していくことが想定されている。また、例えば、初めの1年間は原則ペナルティを課さないとすることも考えられる。
③留意点
・ モニタリング専用のソフトウェア(例えば、誰がいつモニタリングを行う必要があるかに関するリアルタイムでの指示、入力フォームの提供、入力結果の分析を一元的に行うことができるソフトウェア)を用いることにより、多数の指標があっても効率的かつ効果的にモニタリングを行えるようにするとともに、モニタリング結果について管理者等や金融機関等の関係者にアクセス権限を与えることで、随時モニタリング結果を確認可能とし、民間事業者に緊張感を持たせること等も有効と考えられる。もとより、これらの導入にあたっては、管理者等の状況に応じ、適宜必要性を個別に判断すべきものであることは言うまでもない。
・ モニタリング結果の検証を行うためには、十分な期間にわたり、データを蓄積、分析することが重要である。契約締結までのプロセスに関与した担当者やアドバイザーが管理者等側に加わるなど、管理者等側に十分な体制を確保することにも留意すべきである。
・ モニタリングの際に作成される書類について、管理者等、民間事業者双方にとって効率的かつ効果的なモニタリングが行えるような形で、標準化を進めていくことも考えられる。
(5) モニタリング結果の公表と第三者評価
①課題
・ 「モニタリングに関するガイドライン」においては、事業の実施に係る透明性を確保するため、PFI事業契約等に定めるモニタリング等の結果について、住民等に対し公表することが必要である旨が示されている。
・ 一方、管理者等に対するアンケート調査6によれば、モニタリング結果を公表しているのは、全体の約 2 割の事業にとどまっている。
②考え方
・ モニタリングの仕組みや指標及び結果を積極的に公表するなどの仕組みを取り入れることで、透明性の確保に加え、納税者に対する説明責任を果たすべきである。
・ モニタリングの結果は、ホームページ等により公開することが考えられる。
・ モニタリング結果について、第三者による評価を受けることも検討すべきである。例えば、一部の指定管理者制度において取り入れられているように、納税者である住民(あるいは施設の利用者)を含めた協議会により評価を行うことも考えられる。あるいは、CSR(Corporate Social Responsibility :企業の社会的責任)レポート等の公表の際に行われているように中立的な第三者等による意見書を添付することも考えられる。
・ 各事業でモニタリング結果の公表を進めることにより、ノウハウの共有が進み、わが国のPFI全体の水準が向上することが期待される。
・ また、業務要求水準書、モニタリング実施計画書、モニタリング結果を併せて公表することにより、事業類型ごとのモニタリング手法の精緻化(定型化)がなされ、官民双方の準備負担の軽減ならびに、PFI事業の水準向上が期待される。
③留意点
・ 民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのある事項については、開示にあたり配慮が必要であるため、モニタリング実施計画書の作成時点で取り決めを行う必要がある。
6 平成 19 年度内閣府調査による。
2-3.業務要求水準・モニタリング・支払メカニズムの三位一体の検討
①課題
・ 2-2で整理したように、業務要求水準はモニタリング及び支払メカニズムと密接な関係にあることから、これらを一体的に検討し、入札公告時にまとめて民間事業者に提示する必要がある。しかし、実際には一体的な検討が行われず、各々の関連性が不明確なまま民間事業者に提示されることが多く見られる。
②考え方
・ 導入可能性調査の段階から、業務要求水準、モニタリング、支払メカニズムを一体的に検討する必要がある。
・ 具体的な検討フローを、各段階における着眼点を中心に整理すると以下の通りである。
(ア)導入可能性調査段階
・ 導入可能性調査段階では、業務要求水準書と併せてどのようなモニタリング指標、支払メカニズムが想定できるかについても検討し、業務要求水準書の骨子及び重 要な取引条件を記載する書面を作成する。
・ その際は、運営段階に入っている類似事例等も参考にすべきである。
(イ)公募準備段階
・ 応募者に十分な情報を与え、公平性を確保するためには、公募書類において、業務要求水準書の提示に加え、モニタリング基本計画書、事業契約書(案)を提示することにより、モニタリングの基本的枠組みや支払メカニズムについても一括で提示することが必要である。
(ウ)事業者選定段階(入札公告後)
・ モニタリング基本計画書で提示するモニタリング指標及び支払メカニズムは原則としてそのまま運営段階に適用されるものであるが、実態に則した変更は可能とすべきである。
・ 具体的には、民間事業者の提案書の内容やそれに基づいて提示される業務仕様を踏まえて、モニタリング基本計画書に基づいてモニタリング方法の詳細を定めたモニタリング実施計画書を改めて作成するという手順をとることが合理的と考えられる。
・ モニタリングの方法については、官民の対話の中でも、その内容について確認を行うことが適当である。
アウトプットとモニタリング指標、支払メカニズムの基本的な枠組みを構築する。
事業に係わる政策目的や求め
る成果(アウトカム)を構成するアウトプット項目を設定する。
各アウトプット項目の モニタリング方法を検討する。
モニタリング指標のウェイト付けや集約を行い、測定
頻度や測定方法を検討する
減額や支払メカニズムを検討する。
業務全般に対して アウトプット仕様を設定する
モニタリング指標毎の 支払メカニズムを検討する。
アウアウトトププッットトととモニモニタリタリンンググ指標指標、、支払メカ支払メカニズムニズムのの基本基本的な的な枠枠組み組みを構築を構築する。する。
事業に事業に係わ係わるる政策政策目目的的や求や求めめる成る成果果((アアウウトトカカムム))を構を構成成するする。アウトアウトプップットト項目項目をを設定設定すするる。。
各ア各アウトウトプットプット項目項目ののモニタモニタリンリンググ方法方法をを検検討討するする。。
導入可能性調査
モニモニタタリリンンググ指指標標のウのウェイェイトト付け付けや集や集約約を行を行い、い、測定測定頻頻度や度や測測定方定方法法を検を検討討すするる。
減額減額や支や支払払メカメカニ ズムニズムをを検討検討すするる。。
業務業務全般全般に対に対ししてて
アウアウトトププッットト仕仕様様を設定すを設定する。る
モニモニタリングタリング指指標毎標 毎のの支払支払メメカニズムカニズムを検を検討す討するる。。
導入可能性調査
業務要求水準・モニタリング・支払メカニズムの三位一体の検討フローの例
モニタリング指標と支払メカニズムの妥当性を評価する。
実施方針の公表
(業務要求水準書(案)、モニタリング基本計画書(案)、重要な取引条件を記載する書面等を添付)
参考として提示する
インプット仕様を検討する
支払メカニズムの修正
アウトプット以外の指標
(KPI)の検討を行う。
公募書類
公募準備段階
(実施方針の公表から入札公告まで)
モニモニタタリンリンググ指標指標とと支払メカ支払メカニニズムズムの妥の妥当当性性を評価を評価するする。。
実実施方施方針針の公表の公表
((業業務要求務要求水水準書準書((案案))、、モモニタリニタリンンググ基基本計本計画画書(書(案案))、、重重要な要な取取引条件を記載引条件を記載するする書面書面等を添付等を添付))
参考と参考として提して提示示するす るインインプップットト仕仕様様を検を検討討すするる。
支払メカ支払メカニズムの 修正ニズムの修正
アウアウトトププッットト以以外外の指の 指標標
(K(KPPII))のの検討検討を行う。を行う。
仕様のあり方
モニタリング方法
支払メカニズム、契約条件
減額や支払メカニズムを検討する。
アウトプットとモニタリング指標、支払メカニズムの基本的な枠組みを構築する。
業務要求水準書
業務要求水準書
モニタリング
重要な取引条件を
(骨子)
(骨子)
基本計画書(骨子)
モニタリング
重要な取引条件を
基本計画書(骨子)
記載する書面
記載する書面
業務全般に対して
アウトプット仕様を設定する。。
業務要求水準書(案)
モニタリング
重要な取引条件を
業務要求水準書(案)
基本計画書(案)
モニタリング
重要な取引条件を
基本計画書(案)
記載する書面
記載する書面
モニタリング指標と支払メカニズムの妥当性を評価する。
実施方針の公表
(業務要求水準書(案)、モニタリング基本計画書(案)、重要な取引条件を記載する書面等を添付)
参考として提示する
インプット仕様を検討する。
公募書類
業務要求水準書
モニタリング
業務要求水準書
基本計画書
モニタリング
事業契約書(案)
基本計画書
事業契約書(案)
内容の確認
提案書類
インプット仕様
(設計書、業務仕様)
モニタリング
実施計画書(案)
民間事業者の提案するインプット仕様の
評価を行う。
提案するモニタリング方法の評価、確認
設計図書
業務仕様書
モニタリング
実施計画書
支払メカニズムの修正
アウトプット以外の指標
(KPI)の検討を行う。
モニタリング指標毎の 支払メカニズムを検討する。
モニタリング指標のウェイト 付けや集約を行い、測定 頻度や測定方法を検討する。
各アウトプット項目の モニタリング方法を検討する。
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を構成する。アウトプット項目を設定する。
公募準備段階
(実施方針の公表から入札公告まで)
公 告
内容の確認
提案書類
内容内容のの確認確 認
対 話
事業者選定段階
事業者選定段階
提案書提出
民間事業者の提案するインプット仕様の
評価を行う。
提案するモニタリング方法の評価、確認
民間事民間事業者業者のの提案提 案すするるインインプットプット仕様の仕様の
評価を行評価を行う。う。
提案す提案するモるモニタリニタリンンググ方法の方法の評価評価、確、確認認
提案審査
3.その他の課題
(1) 事業者選定後の仕様の確定
① 課題
・ 性能発注を旨とするPFI事業においては、提案段階では詳細な内容が詰まっておらず、事業者選定後に管理者等と民間事業者間の協議を経て設計書や仕様(主としてインプット仕様)が最終的に確定されることが多い。この際、民間事業者が想定していなかった様々な要求が管理者等からなされ、対応を求められることがあり、かつそれが民間事業者の業務の範囲を超えている場合が見られる。
・ 事業者選定後に仕様が大幅に変更されることを想定した場合、民間事業者は多くの予備費を念頭におかざるを得なくなり、結果としてVFMの発現を阻害する要因となる。
② 考え方
・ 原則として、契約締結時に業務要求水準を満足する民間事業者の提案内容に基づく仕様の主要部分を確定し、その後は価格改定を伴うサービス内容の変更(「PFI事業契約に際しての基本的考え方とその解説(案)」第 8 章参照)として対応することが、不必要な予備費の削減につながる。また、契約締結後は設計協議等により詳細化していくことになるが、あくまでも詳細化であって契約締結時に合意した仕様を超えるものについては価格改定を伴うサービス内容の変更として対応することが望ましい。ただし、民間事業者側も、例えば費用が実質的に増加しない場合には管理者等の要請に応じるなど、柔軟に対応することが望まれる。
③ 留意点
・ 落札者の決定から契約締結までの期間を十分確保し、具体的な業務内容について、官民双方で十分に詰めることができるようにすることが望ましい。
提案書 落札者
提出 決定
契約締結
(金額確定)
基本設計
確定
実施設計
確定
基本プラン
原則として
変更無し
基本プラン
設計協議
基本設計
設計協議
実施設計
提案価格 変更無し
(概算ベース)
契約金額
=提案価格
基本設計
金額
実施設計
金額
契約締結の段階で、業務要求水準を満足するインプット仕 様(基本プラン)を 確定する
契約締結後は、基本プラン
を業務要求水準に基づき詳細化する。 それを逸脱する場合は、サービス内容の変更手続き(「PFI事業契約に際しての 基本的考え方とその解説(案)」
第8章参照)をとる。
基本設計 実施設計
確定 確定
設計協議 基本設計 設計協議 実施設計
基本設計 実施設計
金額 金額
(2) 優れた業務要求水準書作成ノウハウの蓄積・継承
①課題
・ 業務要求水準書の理念や対象事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を理解していても、経験が十分でないこと等により、適切なアウトプット仕様の設定やインプット仕様の表現ができないケースが少なくない。
・ 特に地方公共団体においては、PFI事業に関する基本的考え方や導入手順等についての理解は進んでいるものの、業務要求水準書の作成やアウトプット仕様の設定は、実務知識としては新しい分野となるために内部に経験の蓄積がほとんどない場合が多いことが想定される。
②考え方
・ 上述した課題を解決するためには、特に、実施件数が重ねられ、今後需要が多いと考えられる分野の事業について、管理者等側でPFI事業を経験した人材の知識・ノウハウの共有を進め、業務要求水準書のノウハウのプラットフォームを作成することが有効と考えられる。具体的には、以下のような取り組みが考えられる。
(ア)知識・ノウハウの集約と蓄積
・ 当該分野の事業に関する知識・ノウハウを集約させ、蓄積させることが考えられる。業務要求水準書の内容は事業分野別に異なることから、関係団体等が相互に情報提供・連携することが考えられる。
・ 上記のための具体的な方法として、既に施設の供用が開始されている事業に対して、書面やヒアリング等による事後調査を行い、ベストプラクティスを蓄積するとともに、発注段階あるいは運営段階で生じた課題や対応策を整理することが考えられる。(英国 NHS ではプロジェクトの事後評価を行うための「Good Practice Guidance 」が整備されている)
(イ)業務要求水準書の標準化の推進
・ (ア)の実施において、案件同士の比較を容易にするために、業務要求水準書の様式などの標準化を図ることは有益と考えられる。
・ さらに、分野別の業務要求水準書の標準化を進め、ア)で得られた課題のフィードバックにより、継続的な改善を行うことが有効である。
(ウ)管理者等への支援体制の充実
・ 業務要求水準書を作成するにあたり、管理者等がこれまでに生じた課題も踏まえた検討を行えることが望ましい。そのための仕組みとして、以下の方法が考えられる。
(i)PFI事業の発注担当者や発注を行う部署に対し、業務要求水準書の作成方法に関する研修等を行う。
(ii)既にPFI事業を経験した人材が、同一団体または別の団体に出向し、別の事業の実施時に関与する。
③留意点
・ 人事異動等により、経験ある職員のノウハウが活用されない可能性があるため、職員が継続して業務を担当するための仕組みが存在することが望ましい。
・ ②の(ウ)において、研修等を行う者としては、先行案件の発注担当者やアドバイザー、所管官庁のPFI担当者などが考えられる。
IV 地球温暖化対策の観点から求められること
① 課題
・ エネルギー起源のCO2 排出量を削減する具体的な手法としては、(1)エネルギー効率の高い設備(省エネルギー設備)の導入、(2)太陽光発電、風力発電等の自然エネルギーの利用がある。
・ 特に前者は、当該事業のPFI-LCC低減に寄与するとともに地球温暖化対策としても有効である7ことから積極的に推進されるべきであるが、現状ではエネルギー関連施設、エネルギーコスト(光熱水費)、エネルギーマネジメント(エネルギー使用量の測定・分析およびその結果を踏まえた運用改善を通じ、エネルギー利用における環境性と経済性を継続的に向上させるための取り組みを行うこと)に対する管理者等の意識が必ずしも高くない。
・ 具体的に、PFIにおける現状の省エネルギーに関する扱いをみると、(1)具体的な評価項目に省エネルギーが含まれず、かつ光熱水費もPFI-LCCに含まれていない事業と、(2)省エネルギーについて評価項目に含まれているが、光熱水費はPF I-LCCには含まれていない事業が大半を占めている。しかし、以下のような課題が生じている。
(ア) 光熱水費をPFI-LCCに含まず、かつ省エネルギーが評価項目に含まれていない(価格評価の対象がイニシャルコストのみ)場合、高効率の省エネルギー設備は一般的に割高であるため、事業者提案において採用されにくい。すなわち、初期投資が少ないが省エネルギーという観点からは劣っている提案に高い評価がついてしまう可能性がある。
(イ) 省エネルギーが評価項目に含まれている場合でも、それによって節減できるコストに見合った点数が配分されていなければ、PFI-LCCで見れば劣る提案が採用されてしまう可能性がある。
(ウ) 将来の省エネルギー効果を採点項目にしても、実際にどの程度の削減効果が見込めるのか、採点者にとって判断が難しいことがある。
・ このように、これまでのPFI事業においては、省エネルギーに関する民間事業者の創意工夫を引き出す仕組みが構築されていないことが多く、高効率な省エネルギー設備の導入が進んでいない。また、ほとんどの事業で、運営段階において省エネルギーを促進するための具体的な手法が導入されていない。
・ 以上の結果、光熱水費の低減によりPFI-LCCを低くすることができるにもか
7 環境省の算定結果によるとわが国の温室効果ガス排出量のおよそ 9 割はエネルギー起源CO2(エネルギーの使用に伴い発生する二酸化炭素)であり、多くのPFI事業が該当する「業務その他部門」では基準年比で大幅な増加となっている。また、政府の地球温暖化対策推進本部等からエネルギー起源の CO2 排出抑制対策が重要であることが指摘されている。
かわらず、それがなされていない可能性があるといえる。
・ 地球温暖化防止をより積極的に推進するためには、自然エネルギー等の利用も有効であるが、現時点においては、一般的に高コストとなることから、経済原理に基づいた導入が期待できないという課題がある。
② 考え方
・ 管理者等は、省エネルギーの推進がCO2 排出量削減とPFI-LCC低減とを同時に達成できる重要な取組みであることを認識し、これがPFI事業における地球温暖化対策の基本となることを理解する必要がある。
・ 管理者等は、民間の創意工夫を発揮しやすく経済原理に基づいて省エネルギー(C O2 排出量の削減)が達成される事業スキームとなるよう、配慮することが必要である。
・ 現状のPFI事業をエネルギーの観点から整理すると、次のような 3 つの事業スキームに類型化できる。
事業類型 | エネルギーに関する役割分担 | |
光熱水費負担(エネルギー調達) | エネルギーマネジメント | |
類型1 | 民間事業者 | 民間事業者 |
類型2 | 管理者等 | 民間事業者 |
類型3 | 管理者等 | 管理者等 |
・ 課題で指摘したような問題点を解決し、CO2 排出量を削減するための具体的な手法としては、類型 1 のように光熱水費をPFI-LCCに含める8ことによって、省エネルギーのインセンティヴを組込む方法が最も有効と考えられる。
(ア) 民間事業者は事業構造に組み込まれたインセンティヴに応じて、エネルギーに関して設計から運営・維持管理までを一貫して最適化することが可能となる。
(イ) その結果、イニシャルコストが割高であっても、光熱水費を含めたPFI- LCC低減が実現できる場合は、省エネルギー設備の積極的な導入が期待できる。
(ウ) 運営期間中における省エネルギーの実現が自らの利益となることから、主体的なエネルギーマネジメントが実施され、継続的に省エネルギー推進に向けた創意工夫が発揮される。
・ 運営段階における省エネルギーを推進するためには、民間の創意工夫を活かしたエ
8 ここでは、エネルギー(電気・ガス・水道等)の調達を民間事業者の業務範囲とし、管理者等が支払うサービス対価に高熱水費を含めることをさす。なお、VFM評価の際には、PSC及びPFILCL CCPFI-LCC双方に参入する必要がある。
ネルギーマネジメントが重要であり、光熱水費をPFI-LCCに含めることが困難な場合は、エネルギーマネジメントを民間事業者の業務範囲として位置づけることが望ましい。
光熱水費
(低)
光熱水費
(高)
・ 管理者等が太陽光発電等の自然エネルギー設備の導入を求める場合、現時点においては、経済原理に基づいた導入が期待できないことから、業務要求水準書等において具体的に設備名称、能力等の諸条件を規定する必要がある。
LCC削減
光熱水費
(高)
従来型設備
エネルギー
関連施設費
(低)
光熱水費を事業費に含めると...
VFM拡大
省エネ設備
イニシャルコスト重視
ライフサイクルコスト重視
施設整備費
エネルギー関連施設費
運営費
維持管理費
光熱水費
エネルギー関連施設費
(高)
光熱水費
(低)
熱源システム設備費
(低)
熱源システム設備費
(高)
ライフサイクルコスト
での施設選定 での施設選定
SPC(民間事業者)
管理者等
SPC(民間事業者)
管理者等
SPC(民間事業者)
管理者等
SPC(民間事業者)
管理者等
図 エネルギー関連施設選定におけるイニシャルコスト重視型とライフサイクルコスト重視型との比較イメージ図
エネルギー
調達
エネルギー マネジメント
維持管理施設運営施設整備
設計
エネルギー
マネジメント維持管理
施設運営施設整備
設計
エネルギー
調達
エネルギー
マネジメント
維持管理
施設運営
施設整備
設計
エネルギー
調達
エネルギー
マネジメント
維持管理
施設運営
施設整備
設計
【類型 1】 【類型 2】
図 省エネルギー実現のための事業スキーム例
③ 留意点
・ 特に事業規模が大きい事業や総事業費に占める光熱水費の割合が高い事業については、管理者等にとってもメリットが大きいと考えられるため、原則として光熱水費
をPFI-LCCに含めること(類型 1)とすべきである。
・ 民間事業者にLCCO2(当該事業の事業期間中に排出されるCO2 の総量)の提示を義務付け、審査における非価格評価として適切な点数を付与することは、上記 3類型に共通して有効な手法である。
・ 事業全体のリスクの最小化に資するよう、エネルギー関連リスクを把握し、適切な官民のリスク分担のあり方を検討する必要がある。
(参考:類型 1 におけるリスク分担の考え方の例)
リスクの種類 | リスクの内容 | リスク分担の考え方 | |
運営開始時 | 運営条件に起因する計画と実需の乖離 | 提示された運営の前提条件(職員数、就業時間等)と供用開始後の実際の運営条件が異なることによりエネルギー使用量に差が生じ、光熱水費の提案価格と実績価格が 乖離するリスク | 運営開始後の諸条件が、管理者等の都合により入札公告時に示した内容と異なった場合は、管理者等に帰責事由があることから管理者等がリスクを負担する |
設計に起因する計画と実需の乖離 | 提案時の基本設計に基づいた事業期間中のエネルギー使用量の計画値と運営開始後の実績値に差が生じ、光熱水費の提案価 格と実績価格が乖離するリスク | 民間事業者の想定不備によりエネルギー使用量が計画値と異なる場合は、民間事業者に帰責事由があるため、民間事業 者がリスクを負担する | |
運営期間中 | 気温・天候の変動 | 気象条件等の変動によりエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価 格が乖離するリスク | 官民双方とも帰責者ではないため、諸条件を考慮して事業ごとに設定する |
施設運営方法の変更 | 事業期間中に施設の運営方法が変更されることによってエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価格が乖離 するリスク | 事業期間中における管理者等による施設運営方法の変更は、帰責者は管理者等であるため、管理者等がリスクを負担す る | |
設備の追加・更新 | 管理者等が事業期間中に自ら設備を更新する、あるいは当初想定していなかった設備を追加することによりエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価 格が乖離するリスク | 管理者等の都合による設備の更新・追加は、設備内容・タイミングなど民間事業者が想定できるものではなく、帰責者は管理者等であるため、管理者等がリスク を負担する | |
設備劣化による効率低下 | 民間事業者が設置・維持管理する設備が、経年劣化等により当初の性能を発揮できなくなることによりエネルギー使用量が変動し、光熱水費の提案価格と実績価格が 乖離するリスク | 設備の提案・設置・保守管理は民間事業者の業務範囲であり、それに起因した経年劣化は民間事業者の責任において対応すべき事項であることから、民間事業 者がリスクを負担する |
運転・保守管理 | 民間事業者の運転ミスや施設・設備の保守 | 設備の運転・保守管理は民間事業者の業 | |
の不備 | 管理の不備等により、エネルギー使用量が | 務範囲であり、民間事業者の責任におい | |
変動し、光熱水費の提案価格と実績価格が | て対応すべき事項であることから、民間 | ||
乖離するリスク | 事業者がリスクを負担する |
・ 主たるエネルギーの利用者が管理者等であるなど、民間事業者による需要の管理ができないにも係わらず、民間事業者に不適切にリスクを負担させることがないよう留意する必要がある。
・ 民間事業者にとって過度な負担とならないよう、電気・ガス・水道の単価変動と使用量変動を考慮したサービス対価の改定方法を予め設定しておく必要がある。
(参考:類型 1 におけるサービス価格改定の考え方の例)
項 目 | 改定 | 改定方法例 | |||
エネルギー調達業務 | 単価変動 | ○ | 指標として電気・ガス・上下水道の料金改 定率を使用 | ||
使用量 変動 | 計画と実需との乖離 (運営方法) | ○ | 一定の監視期間を設けた後、計画値を補正 した「基準使用量」を設定 | ||
気温・天候変動 | ○ | エネルギー使用量と気温との相関を確認 し、平均気温との乖離幅より算定 | |||
施設運用 | 施設運用方法の変更 | ○ | 残業時間等に応じた増減 | ||
管理者等都合による 設備更新・追加 | ○ | 新設・更新機器等による負荷変動分のエネ ルギー使用料金を算定 | |||
維持管理・運転 | - | 民間事業者による対応が原則 | |||
エネルギーマネジメント業務 | ○ | 物価変動を考慮 |
・ 予算措置上の制約等により、光熱水費をPFI-LCCに含めることが困難な場合は、次のような対策を講じる必要がある。
(ア) エネルギーマネジメント機能の具体的な業務内容を整理し、民間事業者の業務範囲として規定する。
(イ) 民間事業者が提案するLCCO2/LCCの実効性、担保性を確保するためのモニタリング方法を検討する。
(ウ) 運営段階において、省エネルギー推進のためのインセンティヴ手法(省エネルギー達成時には光熱水費削減額に応じたボーナスを支給する等)を検討する。
(参考:運営段階におけるエネルギーマネジメントの例)
改善策の立案・実行
予測値と実績値との比較・検証エネルギー利用改善策の検討
計測データ
エネルギー使用実績の測定・分析
エネルギー設備運転・施設運用
エネルギー利用計画の立案
PLAN
DO
CHECK
ACTION
・ 施設内に売店やレストラン等の民間収益施設が含まれる場合には、原則として当該施設で使用した光熱水費は、その施設の事業主体(テナント等)が負担すべきである。予めこのような施設の設置が見込まれる場合には、エネルギー使用量の計測が可能となるような設計とする必要がある。
・ 適切なVFMの評価を行うために、自然エネルギー設備の導入を業務要求水準として規定する場合は、それに見合う費用をPSCにも算入する必要がある。
・ 業務区分表の中に、光熱水費管理及びエネルギー管理中長期計画を民間事業者が実
施することを明記している。
・ 費用負担区分表においても、光熱水費の費用負担が民間事業者であることを明記されており、事業期間全体にわたり民間事業者がエネルギーマネジメント業務及びエネルギー調達業務(光熱水費負担)を行うことが示されている。
表 各業務に共通する費用負担区分表
表 業務区分表
(参考:病院事業の事例【類型 1】)
費用項目 | 発注者 | 事業者 |
病院全体にかかる光熱水費(電気、ガス、上下水道、燃料等) | ○ | |
備蓄燃料費 | ○ |
業務区分 | 業務内容 | 発注者 | 事業者 |
光熱水費管理 | 電気 | ◎ | |
水道 | ◎ | ||
エネルギー管理中長期計画 | 策定・報告 | ◎ | |
提案・助言・支援 | ◎ |
・ 以下のように、自然エネルギー利用や負荷平準化設備の導入について具体的に示し
ている。
表 各設備項目
(参考:病院事業の事例)
太陽光利用設備 | ・ 太陽光を利用した発電設備を設置する。容量は10kw以上とする。 |
電力平準化設備 | ・ 深夜電力を蓄え、昼間のピークに応じた放電を行うシステムを構築し、電力の平準化を図る。ただし、「深夜電力を利用した蓄熱設備」又は「熱電供給システム」を想定した場合は、この設備を適用しても良い。 |
(参考:病院事業の事例【類型 2】)
業務区分 | 業務内容 | 業務主体 | |
病院 | 事業 者 | ||
エネルギーマネジメント | 電気、ガス、水道等のエネル ギーの使用量の測定・分析 | ◎ | |
病院の運用面における光熱 水費削減に資する提案 | ◎ | ||
教育 | 病院職員を対象とした光熱水 費削減に資する教育 | ○ | ◎ |
・ 以下のように、エネルギーマネジメント業務について具体的に示している。
4 エネルギー マネジメント業務 (抜粋) | (1)基本的考え方 2)業務概要 本事業において整備する施設のうち、病院施設にエネルギーを供給している医学中央機械室等の運転管理及び各種エネルギー調達は、従来どおり大学で実施することから、本事業で実施するエネルギーマネジメント業務は、新築及び既存棟のエネルギー使用量の測定及び分析を行い、運用面からエネルギー使用 量の削減に資する提案を求める。 |
(2)要求水準 2)遵守事項 ァ 報告及び届け出 施設等管理業務と連携しながら、エネルギー使用量の測定及び分析を行い、必要と考える情報を記録し、作業報告書に記載すること。 3)サービスレベル ァ 協働体制の構築 a 省エネルギーに関連した情報を収集し、院内周知及び省エネルギーに関する助言を行うこと。 b 病院施設におけるエネルギー使用特性を十分に把握した上で、病院内における省エネルギー推進体制を提案すること。 イ 企画・提案 a エネルギー使用量の測定及び分析結果を踏まえて、病院のエネルギー使用量の削減に関する企画提案を毎年度 行うこと。 ゥ 健全経営への貢献 a 事業者が実施する各業務と連携しながら、エネルギー使 用量の削減に貢献すること。 | |
(3)業務区分表 当該業務にかかる業務・作業について、以下のとおり病院と事業者で区分するものとする。 凡例 ◎:当該業務の主担当 ○:従担当・協力 |
Ⅴ 業務要求水準書の構成
1.業務要求水準書と他の書類との関係
本章では、業務要求水準書に関係する要素となる事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)(p.9 Ⅲ1(1)参照)並びに業務要求水準書に添付されるモニタリング基本計画書(p.31 Ⅲ2-2(1)参照)の構造について示す。
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)を示す記述は、Ⅲに示したとおり、必ずしも業務要求水準書を構成するものではないが、管理者等の意図をより深く理解するために、その構成要素となることもある。
また、業務要求水準書との対応関係を明記したモニタリング基本計画書を作成し、公募の際に、募集要項の一部として提示する必要がある。さらに、業務要求水準書には、民間事業者に期待する役割を記載する。
2.各書類の構成及びその考え方
(1) 業務要求水準書に盛り込むべき事項の考え方
業務要求水準書においては、以下の点が明確に示される必要がある。
① 民間事業者の業務範囲(対象とするエリアや時間帯、施設等が明示されているか。)
② 管理者等が果たすべき役割(管理者等の業務範囲との区分が明確に示されているか、あるいは民間事業者が業務要求水準を満たすにあたって管理者等が果たすべき役割(事業用地確保やインフラ整備等)などの前提条件が示されているか)
③ 民間事業者に求める水準(数値等を用いてできるだけ客観的に示されているか)
④ 水準を求める背景や目的、方針(③の水準を達成する背景となった考え方が示されているか)
⑤ アウトプット仕様に関する管理者等の意図を示すにあたり、参考となるインプット仕様や図面等(p.16 Ⅲ2-1(2)参照)
⑥ 法令や基準等により遵守すべきインプット仕様
⑦ 確保すべき実施体制や、遵守すべき業務手順等
上記について、個々の業務単位、施設整備業務やサービス提供業務といったような業務種別単位、あるいは業務全体に対して、記述される必要がある。
(2) 業務要求水準書の構成
第1部 総論
事業全体を理解するために必要な情報、あるいは事業全体に共通で遵守すべき要件を総論に記載する。
①位置づけ
・ 事業者選定における本書類の位置づけ、他の書類との関係について示す。
②基本方針
・ 事業の背景や目的、事業の概要、事業目標等、事業に係わる政策目的や求める成果
(アウトカム)の内容を示す。
③民間事業者に期待する役割
・ 検討した民間事業者に期待する役割を記載する。
④管理者等が果たすべき役割
・ 民間事業者に期待する役割に基づき管理者等の役割をまとめる。
⑤法令等遵守すべき要件
・ 事業全体で遵守すべき法令や基準等がある場合、記載する。ただし、業務毎に記載したほうが分かりやすい場合、第2部(業務毎の業務要求水準)の総論において記載することも可能である。
⑥その他
・ 官民間の理解に齟齬が生じないよう、誤解が生じやすい用語の定義は、用語集を作成するなどして、できるだけ明確にする必要がある。
第2部 各論
(1)総論
・ 施設整備業務、サービス提供業務といった業務毎に、業務全体を理解するために必要な情報、あるいは業務全体に共通で遵守すべき要件を記載する。
(2)前提条件
・ 事業用地やインフラの整備など、民間事業者がPFI事業を実施するにあたり、管理者等が満たすべき前提条件は、業務要求水準とは明確に区分して示す必要がある。
・ 業務要求水準に示される個々のアウトプットを達成するにあたり、管理者等側が満たすべき前提条件がある場合、当該条件を明記する。(一般廃棄物処理事業において、投入される廃棄物の組成が一定範囲内にあること等)
・ 管理者等の前提条件の充足は、民間事業者が業務要求水準を達成できなかった場合の免責要件となる等、リスク分担上の重要事項であるため、前提条件についても、業務要求水準と同様、できるだけ具体的に記載すべきである。
・ 一方、管理者等は、自らが設定する前提条件の充足を優先するあまり、民間事業者側に不利な規定を含めることや不用意に前提条件の幅を拡げることは、民間事業者のコストを上昇させる点に配慮が必要である。
・ 業務別の前提条件がある場合は、業務別要件に記載する。
(3)業務別要件
・ 業務要求水準の記載方法を定型化することが、管理者等側の業務要求水準書作成に関する負担の軽減、民間事業者側の検討期間の短縮や理解の促進に有効である。以下のような項目を記載する。
① 基本方針
・ 個々の業務の基本方針や考え方、留意点などを示すことが民間事業者の理解の促進に資すると考えられる。
・ ただし、それが拘束力を有するものであるのか否かを明示するとともに、当該の記述が民間の創意工夫の妨げにならないよう配慮することが必要である。
② 業務範囲
・ 対象とする業務の内容をできるだけ明確に示す必要がある。
・ 病院事業や刑務所事業など管理者等との協働が前提となる事業では、業務区分や費用負担区分が明確になるよう記述することが必要である。その他の事業においても、既存施設の大規模修繕業務など、管理者等との役割分担を明確にする必要がある場合は同様の記述が必要である。
③ 業務毎の業務要求水準
・ 個々の業務毎の業務要求水準として、管理者等が求める施設やサービスの水準をできるだけ具体的に示す必要がある。
④ インプット仕様(p.16 Ⅲ2-1(2)参照)、図面等
・ インプット仕様を提示する場合には、参考情報か拘束条件かを明記する必要がある。
・ 配置や動線に関する記述等については、文章を補うために、必要に応じて、図による例示等を検討すべきである。ただし、例示によって特定のイメージが固定化しないよう留意する必要がある。
添付資料
・ 業務要求水準を構成するものではないが、PFI事業の参考とすべき書類等は、添付資料として提示する。
・ PFI事業に関連する計画、周辺施設の事業動向等、管理者等が入手できる情報については、できるだけ添付することが望ましい。
・ ただし、記載箇所が分散されることによる見落とし等を避けるため、民間事業者が遵守すべき条件については、できるだけ本文中に記載することが望ましい。
以上を踏まえた業務要求水準書の様式例を次頁に示す。
業務要求水準書の様式例(素案)
大項目 | 中項目 | 盛り込むべき内容 | ||
第1部総論 | (1) 業務要求水準書の位置づけ | 事業者選定における業務要求水準書の位置づけを記載する。 | ||
(2) 事業概要 | 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)9の内容を引用し、事業を行うに至った背景や目的、目標等を記載する。 事業名称、整備する施設と概要、管理者等、事業方 式、事業期間等について記載する。 | |||
(3) 民間事業者に期待する役割10 | PFI方式を活用することで民間事業者にどの部分に重点をおいて創意工夫を発揮してほしいのか、管理者等として民間事業者に期待する事項を具体的に記載する。 | |||
(4) 管理者等の役割 | PFI事業において、民間事業者に(3)に示す役割を期待するにあたり、管理者等がどのような役割を担うかについて具体的に記載する。 | |||
(5) 適用法令 | 本事業に適用される法律や施行令、規則、条例を具体的に記載する。 | |||
(6) その他 | 目次、業務要求水準書の構成や用語集など、応募者のより良い理解に資するものを記載する。 | |||
第2部各論 | 1.施設整備業務 | (1)総論 | 施設整備に関する基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | |
(2)前提条件 | 設計や施工にあたって前提条件として考慮すべき、対象用地、インフラ状況、事業期間、延床面積、利用者数、開業日数・時間、施設へのインプット(一般廃棄物処理事業等の場合)などを記載する。 | |||
(3)業務別要件 | ①基本方針 | 個々の業務にあたっての基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | ||
②業務範囲 | 業務範囲や内容を明記する。 役割分担が前提となる部分については、業務区分や費用負担区分についても明確に示すことが望ましい。 | |||
③業務毎の業務要求水準 | 設計にあたっての要件(全体計画、機能別要件)等について明記する。 施工にあたっての要件(環境対策、安全対策、住民対応、周辺施設、廃棄物処理、現場管理、施工管 理)について記載する。 |
9. p.9 Ⅲ1(1)参照。
10. p.12 Ⅲ1(2)参照。
大項目 | 中項目 | 盛り込むべき内容 | ||
④手順、実施体制 | 設計や施工の手順(設計、施工監理、検査、試験、検収)について記載する。 また、施工計画書の提出や実施体制の確保、報告 書提出などの実施体制や手順について記載する。 | |||
⑤インプット仕様11 | インプット仕様を用いる場合、その位置づけを明確にする。 標準仕様等については、関連のありそうなものを列記するのではなく、事業に応じた必要最低限のものの みを記載する。 | |||
2.サービス提供業 務 | (1)総論 | サービス提供に関する基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | ||
(2)前提条件 | サービス提供全般にあたって前提条件として考慮すべき、対象施設などを記載する。 | |||
(3)業務別要件 | ①基本方針 | 個々の業務にあたっての基本的な考え方、管理者等としての方針等を記載する。 | ||
②業務範囲 | 業務範囲や内容を明記する。 官民の役割分担が前提となる部分については、業務区分や費用負担区分についても明確に示すことが望ましい。 | |||
③業務毎の業務要求水準 | 業務単位で、アウトプットとしての業務要求水準を個別に記載する。 | |||
④手順、 実施体制 | 業務別仕様書の提出やマニュアルの作成、報告書提出などの実施体制や手順について記載する。 | |||
⑥インプット仕様 | インプット仕様を用いる場合、その位置づけを明確にする。 | |||
添付資料 | 図面 | 前提条件等となる図面を添付する。 | ||
現況 | 参考資料としてサービス提供等の現況に関する書類を添付する。拘束力がないことを明記する。 | |||
参考資料 | 参考資料として提示するインプット仕様や図面を添付する。 |
上記の業務区分は例示である。事業内容や業務特性にあった分類を行うことが望ましい。 また、事業者に統括的な機能が求められる事業の場合、統括管理業務について記載するこ
とも考えられる。
11.p.16 Ⅲ2-1(2)参照。
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の内容(例)
項目 | 盛り込むべき内容 |
事業の経緯 | 本事業を行うに至った背景と目的について記載する。 |
事業のニーズ | 管理者等が考える問題意識とニーズについて記載する。 |
事業の目標 | 管理者等が、事業を通じて達成したい政策目標について記載す る。 |
事業の概要 | 事業の規模や整備する施設の内容、立地や実施スケジュールな ど、事業の概要を記載する。 |
(3) モニタリング基本計画書の構成
第 1 部 総論
1.目的、位置づけ
・ モニタリング計画書は業務要求水準書と一体的に作成することが必要であり、業務要求水準書の提示とあわせて示す必要がある。
・ モニタリング基本計画書の具体的な目的について記載する。基本的には、民間事業 者が実際に提供するサービスについて、その達成度が確認されることを目的とする。
・ モニタリング基本計画書の位置づけについて記載する。特に、業務要求水準を満たすサービス提供が実現されるためには、モニタリングの指標が、業務要求水準及び支払いメカニズムと一体的に検討、設定されることが重要である。
・ モニタリングの項目によっては、モニタリング方法が民間事業者が提供するサービスの内容と方法等によって異なる場合があるため、事業契約締結後に「モニタリング実施計画書」を策定し、そこに定める。
・ なお、本書ではいわゆる財務モニタリング(経営状況の報告)については、業務要求水準を満足するサービスの提供がなされているかどうかを確認するモニタリングとは別のものとして整理し、触れていない。
2.体制等
・ モニタリングための協議の場(例えば、確認作業を担う委員会の設置、構成主体、役割、開催頻度等)について記載する。
3. 対象業務
・ モニタリングの対象業務(建設モニタリング、サービス提供時モニタリング等)について記載する。
4.モニタリング実施計画書の変更
・ モニタリングの実施方法の変更があった場合に、モニタリング実施計画書の変更となる場合、業務要求水準書の変更となる場合の区分について記載する。
第 2 部 建設モニタリング
1.モニタリングの方法
・ 設計時、施工中及び完成時に、業務計画の具体的な内容や、当該施設が業務要求水準書等の内容を満たしているかを確認する。各種計画書や業務のモニタリング方法は、一般的に書類の確認又は現地立ち入り検査により行われる。
2.業務要求水準未達の場合の措置
・ 業務要求水準未達の場合の管理者等による是正勧告や是正命令等の是正措置の内容や、支払減額や契約解除等について記載する。
第 3 部 サービス提供時モニタリング
1.モニタリングの方法
サービス提供時においては、主に以下の3段階のモニタリング方法が実施されている。
(1)日常モニタリング
民間事業者は、提供する業務パフォーマンスに対する日常的なセルフモニタリングを行い、苦情対応等も含めてその結果を業務日報としてとりまとめる。
(2)定期モニタリング
民間事業者は、日常モニタリングの結果も含めて、業務パフォーマンスのセルフモニタリング結果を月報、四半期報等としてとりまとめる。
管理者等はその報告及び定めたモニタリング項目にしたがっての現地巡回を実施し、各業務の遂行状況を確認する。
(3)随時モニタリング
管理者等は必要に応じて現地巡回し、各業務の遂行状況を確認する。また、管理者等は業務是正勧告又は業務是正命令を行った業務について、業務パフォーマンスが回復しているか否か確認を行う。
(4)その他
例えば、管理者等や民間事業者が、業務のパフォーマンスや業務全体の傾向を確認するためにサービスの最終利用者やユーザーに対するアンケートを実施することが考えられる。
2.モニタリングの種別
業務要求水準書に則ったモニタリング指標を、以下の考え方に基づき管理者等又は民間事業者の提案により設定する。
モニタリング指標については、管理者等側も主体的に関与して設定することが必要である。サービス提供業務において特に管理者等側が重要視する事項や、想定可能な事項については、本基本計画書にて指標を設定する。
(1) 業務評価(パフォーマンス12)
業務パフォーマンスの確認にあたっては、業務要求水準書に沿って民間事業者がモ
12. p.36 脚注4参照。
ニタリング項目を設定する。この各モニタリング項目について、事業全体への影響度からレベル分けをするとともに、客観的な業務判断基準を設定する。
業務評価においては、民間事業者によるセルフモニタリング結果をもとに、管理者等が日常、定期、随時モニタリングを実施する。
(2) 施設の利用可能性(アベイラビリティ13)
施設の利用可能性は、実際に問題が発生した時点で報告を受け、日常的なモニタリング結果に反映させる。
なお、施設の利用可能性の基準は、施設を用途別にいくつかのカテゴリーに分類し、その重要度に応じ設定する。
3.未達の場合の措置
以下の項目について、業務ごとに設定する。
(1) 修復期間14
未達になった場合に一定期間内の修復を義務付ける場合、その定義と修復期間の設定について記載する。問題となる事象が管理者等に報告されてから、修復行為が為され、施設が利用可能になるという報告までの期間が修復期間内であれば、ペナルティポイントや減額の対象とはならない。
修復期間の長さについては、重要度に応じてランクを設定し、提案を踏まえて具体的な期間を設定する。また、問題となる事象の発生開始時期を認識する考え方も設定する。
(2) ポイント付与の重み付け
業務評価においてはモニタリング項目のレベル分け、施設の利用可能性においては施設カテゴリーの分類により、付与されるペナルティポイントに重み付けを設定する。また、業務是正勧告・命令の発動によってもポイントの重み付けを設定する。
(3) 減額措置
減額金額の算出手順等を設定し、これに基づきペナルティポイントに応じて減額を措置する。
(4) 業務是正に関する措置
管理者等は、民間事業者に対して、当該業務を担当する協力企業等の変更の要請や、契約の一部または全部の解除が可能であることを示し、またその条件を定める。
13. p.35 脚注3参照。
14. p.32 参照。
以上を踏まえたモニタリング基本計画書の様式例を以下に示す。
モニタリング基本計画書の様式例(素案)
大項目 | 中項目 | 盛り込む内容 | 備考 | ||
第 1 部総論 | 1.目的・位置づけ | ・ | 業務要求水準等を満たすサービス提供を確認するためのモニタリングである旨、業務要求水準書や民間事業者が作成するモニタリング実施計画書との関係を記載する。 | ||
2.体制 | ・ | 各種モニタリングの実施主体、 体制について記載する。 | |||
3.対象業務 | ・ | モニタリングの対象業務(建設モニタリング、サービス提供時モニ タリング等)について記載する。 | |||
4.モニタリング実施計画書の変更 | ・ | 変更があった場合に、モニタリング実施計画書の変更となる場 合、業務要求水準書の変更となる場合について記載する。 | |||
第2部建設モニタリング | 1.モニタリングの方法 | ・ | 書類確認、現場確認等のモニタリング方法について記載する。 | 手続きの確認が中心であるため、書類確認や現場確認によるモニタリングを中心に記載 する。 | |
2.未達の場合の措置 | ・ | 未達の場合の是正措置の内容や、支払減額や契約解除等に ついて記載する。 | |||
第3部サービス提供時 モニタリング | 1.モニタリングの方法 | (1)日常モニタリング | ・ | 民間事業者が自ら行う、日報の作成や日常的な日報の確認等 について記載する。 | |
(2)定期モニタリング | ・ | 民間事業者が自ら行う、月報の作成や月報の確認、意見交換 の実施等について記載する。 | |||
(3)随時モニタリング | ・ | 管理者等が行う、必要に応じた 実地確認等について記載する。 | |||
2.モニタリングの種 別 | (1)業務評価 | ・ ・ ・ | パフォーマンス(業務評価基準)に関する指標について記載す る。 サービス対価への反映方法を記載する。 未達成の場合の業務是正措置 について記載する。 | 民間事業者の提案によらないモニタリング指標については、管理者等側が設定し、基本計画書内に盛り込む。 |
(2)施設の利用可能性 | ・ ・ ・ | アベイラビリティ(施設の利用可能性)の設定について記載す る。 標準環境不提供事象の構成要素を記載する。 施設の利用可能性の結果をサービス対価に反映する旨を記載 する。 | 業務内容を踏まえ、必要に応じて記載する。民間事業者の提案によらないモニタリング指標については、管理者等側が設定し、基本計画書内に盛り込む。 | ||
3.未達の場合の措置 | (1)修復期間 | ・ ・ | 未達になった場合に一定時間内の修復を義務付ける場合、その定義と修復期間の設定について記載する。 修復期間中はペナルティポイン トや減額の対象とはならない。 | 修復期間の長さについては、重要度に応じてランクを設定し、提案を踏まえて具体的な期間を設定する。 | |
(2)ペナルティポイント付与 | ・ ・ | 業務に応じたペナルティポイントの重み付けについて記載する。ペナルティポイントの付与の仕 方について記載する。 | これを相殺できるリカ バリーポイントの考え 方と相殺手順について 記載する。 | ||
(3)減額措置 | ・ | 減額の対象期間、サービス対価の減額率の算出式、減額金額の算出式、減額金額の上限設 定について記載する。 | |||
(4)業務是正に関する措置 | ・ ・ | 業務要求水準が満たされていない際等の、業務是正勧告・業務是正確認・業務是正命令につ いて記載する。 契約の全部または一部が解除 可能である旨を記載する。 | 協力企業の変更要請が可能である旨を記載する例もある。 |
上記の項目は例示である。事業内容や業務特性にあった内容とすることが望ましい。
また、英国の事例に見られるようなパフォーマンス指標(p.36 参照)について記載することも考えられる。
Ⅳ 業務要求水準書の作成手順
1.検討の流れ
一般的なPFIの検討手順に沿った、業務要求水準書に関連する検討事項を以下に示す。
導入可能性調査前
導入可能性調査
公募準備段階
実施方針の公表から入札公告まで
入札公告後から運営開始まで
運営開始後
・事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化
・検討体制の確保
・事業の優先順位の評価
・アフォーダビリティの確認
・事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の確認
・民間事業者に期待する役割の確認
・業務要求水準書(骨子)の作成
・モニタリング基本計画(骨子)の作成
・マーケットサウンディング
・支払許容度の確認
・業務要求水準書(案)の作成、公表
・モニタリング基本計画書(案)の作成、公表
・(業務要求水準書(案)、モニタリング基本計画書(案)への)質問回答、対話
・業務要求水準書の作成
・モニタリング基本計画書の作成
・(業務要求水準書、モニタリング基本計画書への)質問回答
・対話
・提案書の審査
・契約締結
・モニタリング結果の公表及び評価
・モニタリング結果の検証
・見直しの実施
導入可能性調査前
導入可能性調査
実施方針の策定、公表
実施方針に対する質問回答・対話
特定事業の選定
公募準備段階
実施方針の公表から入札公告まで
入札公告、入札説明書の交付
募集要項の質問回答
資格審査
対話
入札公告後から運営開始まで
審査
落札者の選定・公表
契約協議
契約締結
事業の実施
運営開始後
導入可能性調査
事業の発案
・事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確化
・検討体制の確保
・事業の優先順位の評価
・アフォーダビリティの確認
・事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の確認
・民間事業者に期待する役割の確認
・業務要求水準書(骨子)の作成
・モニタリング基本計画(骨子)の作成
・マーケットサウンディング
・支払許容度の確認
・業務要求水準書(案)の作成、公表
・モニタリング基本計画書(案)の作成、公表
・(業務要求水準書(案)、モニタリング基本計画書(案)への)質問回答、対話
・業務要求水準書の作成
・モニタリング基本計画書の作成
・(業務要求水準書、モニタリング基本計画書への)質問回答
・対話
・提案書の審査
・契約締結
・モニタリング結果の公表及び評価
・モニタリング結果の検証
・見直しの実施
一般的なPFIプロセス 業務要求水準書に関連する検討事項
2.チェックリスト
1.に示した各段階で使用するチェックリスト(案)を以下に示す。
(1) 使用方法
・ 本チェックリストは、「検討手順チェックリスト」と「書類チェックリスト」の2つに分かれている。
・ 「検討手順チェックリスト」は、業務要求水準書の検討に関してチェックすべき事項が時系列で示されている。管理者等の検討チームにおいて、各段階の実施前に必要項目を確認したうえで検討に着手するとともに、実施後にチェックを行い、記録として残すことを想定している。
・ 「書類チェックリスト」は、業務要求水準書及びモニタリング基本計画書の骨子や案及び最終版の作成にあたり、各々の業務の業務要求水準作成担当者が、業務毎にチェックを行うことを想定している。
・ チェック者は、各項目のチェックを行った後、チェック欄である□にレを記入する。当該項目が関係ない(事業や業務の性質上チェックする必要がない)場合は、備考欄に「N/A」を
記入する。その他、留意すべき点を備考欄に記入することを想定している。
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
導入可能性調査前 | 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム)の明確 化 | 管理者等の事業に係わる政策目的や求める成果 □ (アウトカム))を明確化している。 | |
上記を明確化し、それを配布することなどにより、管 □ 理者等の内部で認識を共有している。 | |||
庁内の関係者との情報共有の仕組みを構築してい □ る(庁内連絡会議の開催等) | |||
PFI事業の検討に必要な各部門のスタッフを確保し □ ている。 | |||
対象施設を利用すると想定される者(例えば学校P □ FIの教師など)も検討に参画させている。 | |||
<既にPFI事業を実施したことのある管理者等の場 □ 合>PFI事業に関与したスタッフにも関与させている。 | |||
事業の優先順 位の評価 | 納税者の視点から、事業の優先順位について検討 □ している。 | ||
導入可能性 調査 | 検討体制の確 保 | 当該分野で業務要求水準を作成するノウハウを有 □ するアドバイザーに導入可能性調査を委託してい |
(2) チェックリスト(案) A.検討手順チェックリスト
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
る。 | |||
必要に応じて、庁内の検討にかかわるスタッフを増 □ やしている。 | |||
事業に係わる政策目的や求める成果(アウ トカム)の確認 | 事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカム) □ が、明確であるかについて、再確認している。 | ||
上記が、関係者(アドバイザーを含む)の間で共有 □ されているかについて再確認している。 | |||
民間事業者に期待する役割 の確認 | 管理者等において、民間事業者に期待する役割そ □ の他PFIで何を期待しているかを具体的かつ明確に整理している。 | ||
□ 事業スキームを検討している。 | |||
民間事業者に期待する点について、管理者等にと □ っての優先順位を検討している。 | |||
民間の創意工夫を発揮することが期待される内容 □ が、民間事業者に実施可能な内容であることを確認している。 | |||
民間事業者に期待する役割を踏まえ、管理者等と □ 民間事業者の役割分担やリスク分担を明確化している。 | |||
業務要求水準書(骨子)の作 成 | 民間事業者が管理できないリスクを負わせることに □ なっていないかを確認している。 | ||
民間事業者に期待する役割の内容を業務要求水 □ 準書(骨子)に記載している。 | |||
民間事業者に期待する役割及び事業に係わる政 □ 策目的や求める成果(アウトカム)に基づき、アウトプット仕様の骨子を作成している。 | |||
作成したアウトプット仕様が、PSCやPFI-LCCの □ 算定を行うに足る程度の具体性を有していることを確認している。 | |||
モニタリング基本計画書(骨 子)の作成 | 特に重要度が高い(見積もりに影響を与える)部分 □ について、モニタリングの基本的枠組みを作成している。 | ||
管理者等にとっての重要度に応じて、支払メカニズ □ ム(減額までの仕組み、減額幅)の概要を作成している。 | |||
管理者等にとっての重要度に応じ、民間事業者の □ セルフモニタリング結果の確認手法が明記されている。 | |||
マーケットサウ | □ マーケットサウンディングの方法を検討している。こ |
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
ンディング | の際、公平性、透明性に配慮している。 | ||
□ PFI-LCC算定に必要な情報を得ている。 | |||
重要な部分で不明確な部分はないかについての意 □ 見を得ている。 | |||
市場の慣行に合致しているかについて確認してい □ る。 | |||
民間の創意工夫を阻害するような内容がないかに □ ついての意見を得ている。 | |||
支払許容度 (p.5 参照)の確認 | 業務要求水準書(骨子)に基づき算定されたPFI- □ LCC等が管理者等の支払許容度の範囲内であるかを確認している。 | ||
(留意点) | |||
・PFI-LCC等の算定に当たり、同種類似事例等の原単位等に基づき設定した場合、前提条件や時 期の違いに対する補正を行う。 | |||
実施方針等の公表から入札公告ま で | 業務要求水準書(案)の作 成、公表 | 「B.書類チェックリスト」に記載した内容に配慮し □ て、業務要求水準書(案)を作成し、実施方針に添付している。 | |
モニタリング基本計画書(案) の作成、公表 | 「B.書類チェックリスト」に記載した内容に配慮し □ て、モニタリング基本計画書(案)を作成し、実施方針に添付している。 | ||
(実施方針公 表後)質問回答、対話 | □ 以下に留意した質問回答を実施している。 | ||
(留意点) | |||
・どのような業務要求水準であれば民間の創意工夫を活かしやすいかという観点から意見を聴取す る。 | |||
・内容が曖昧である点についても意見を聴取する。 | |||
個別の対話を行う場合、予め対話手続の進め方に □ ついて基準を作成している。 | |||
(留意点) | |||
・具体的な対話の進め方については、PFI関係省庁連絡会議幹事会申合せ「PFI事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて」(平成 18 年 11 月 22 日)参照 | |||
・管理者等の担当者間で齟齬が生じないよう留意 する。 | |||
□ 以下の観点から対話ができているか確認している。 | |||
(留意点) | |||
・どのような業務要求水準であれば民間の創意工 |
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
夫を活かしやすいかという観点から意見を聴取す る。 | |||
・内容が曖昧である点についても意見を聴取する。 | |||
業務要求水準 書の作成 | 質問回答や対話の内容をふまえ、業務要求水準書 □ (案)を修正している。 | ||
内容が「B.書類チェックリスト」に照らして妥当なも □ のであるかを再確認している。 | |||
一定の時期にサービス内容の見直し・調整を行う旨 □ の規定をPFI事業契約に規定する必要がないかを検討している。 | |||
(留意点) | |||
・新規性の高い事業、複雑な事業などでは、見直しの必要性が生じる可能性がある。ただし、この場合でも、できるだけ業務要求水準は明確に規定すべきである。不明確であると、変更する際に価格算定 が困難になり不都合が生じる。 | |||
モニタリング基 本計画書の作成 | 質問回答や対話の内容を踏まえ、モニタリング基本 □ 計画書(案)を修正している。 | ||
内容が「B.書類チェックリスト」に照らして妥当なも □ のであるかを再確認している。 | |||
入札公告後から運営開 始まで | 質問回答 | 質問回答を通じて、業務要求水準書の解釈等につ □ いて明確化を図っている。 | |
運営段階で事業に携わることが予定されているユ □ ーザーの意向を質疑回答に反映させるよう努めている。 | |||
対話 | 対話を通じて、民間事業者がどのような提案が可能 □ か等について明確化を図っている。 | ||
運営段階で事業に携わることが予定されているユ □ ーザーの意向を質疑回答に反映させるよう努めている。 | |||
(留意点) | |||
・ユーザーが直接対話に参加する場合には、管理者等側の関係者の間で回答に齟齬が生じないよう に留意する。 | |||
提案書の審査 | 管理者等、ユーザーの意図が審査に反映されるよ □ うに審査基準等を設定している。 | ||
提案内容が業務要求水準を満たしているかを確認 □ している。 | |||
□ 省エネルギー又はCO2 排出量削減の取組みを 事業者選定の評価基準に含めている。 |
確認時期 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
□ CO2 削減の具体的な提案を求めることを提案 要領に記載している。 | |||
契約締結 | 重要な内容について、全て合意できていることを確 □ 認している。 | ||
建設モニタリン グ | □ 全ての業務要求水準を満たしているかを確認する | ||
運営開始後 | モニタリング結果の公表・評 価 | □ モニタリング結果を外部に公表している。 | |
施設によっては、モニタリング結果について、最終 ・ 利用者の代表者や中立的な第三者機関等による評価を行う。 | |||
モニタリング結 果の検証 | モニタリング結果を検証するための、委員会等の官 □ 民による協議の場を設定している。 | ||
見直しの実施 | モニタリング指標や実施方法が現実に見合ったも □ のでない場合、必要に応じて修正している。 | ||
(留意点) | |||
・あくまでも重要な条件は入札時までに示され、そ れに変更がないことが前提である。 | |||
業務要求水準などサービス内容についても、必要 □ に応じて見直しを行う。 |
B.書類チェックリスト
業務名( ) 記入者( )
確認書類 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
業務要求水準書 | アウトプット作成の留意点 | 民間事業者の業務範囲(対象とするエリアや時 □ 間帯、施設、許認可の取得等)を明示している。 | |
管理者等が果たすべき役割(管理者等の業務 □ 範囲との区分)を明示している。 | |||
原則として性能発注(アウトプット仕様)の形で業 □ 務要求水準の項目を記載している。 | |||
アウトプット達成にあたっての前提条件を明確に □ 示している。 | |||
事業に係わる政策目的や求める成果(アウトカ □ ム)及び民間事業者に期待する役割に適合するものであるかを確認している。 | |||
管理者等にとって不必要な過剰仕様になってい □ るところがないかを確認している。 | |||
検討チーム内外で広く意見を聴取することなど □ により、不足がないかを確認している。 | |||
数値を用いるなどできるだけ客観的に記載して □ いる。 | |||
それぞれの項目について、解釈の齟齬が生じる □ ような内容がないかを確認している。 | |||
民間事業者による見積が可能である程度の具 □ 体性があるかを確認している。 | |||
それぞれの項目について、未達が発生した場合 □ の修復期間を設定している。 | |||
多数のサービスから構成されている等統合管理 □ 力が重要な事業の場合、民間事業者の管理能力に関する業務要求水準を規定している。 | |||
法令、ガイドライン等に反する部分はないかを確 □ 認している。 | |||
業務要求水準の項目間で、矛盾が生じているも □ の(事実上、両項目を反映させた設計は困難というものも含む)がないかを確認している。 | |||
特に民間事業者の受注経験が少ない分野につ □ いては、管理者等側の「常識」が通じないことに配慮し、十分な情報を提供している。 | |||
アウトプット を補完する | インプット仕様を用いる場合には、まずインプット □ 仕様を用いるだけの理由があるかを確認してい |
確認書類 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
他の仕様作 成の留意点 | る。 | ||
例:①法令等で義務付けられている。 | |||
②管理者等(ユーザーを含む)が特定のインプ ット仕様にすることを明確に希望している。 | |||
③適切なリスク分担という点からは、インプット仕 様を示すのが望ましい事情がある。 | |||
④アウトプットで表現すると過度に複雑になる。 | |||
⑤アウトプットで表現するのでは管理者等の意 図を伝えるのが困難である。 | |||
各項目が例示(参考)にすぎないのか、拘束力 □ を有するのか明示している。 | |||
(留意点) | |||
・例示(参考)としても差支えない場合には例示として位置づけ、できるだけ創意工夫を害しない ようにする。 | |||
例示(参考)にすぎない場合には、それに対応 □ するアウトプット仕様が具体的かつ明確に示されているかを確認している。 | |||
数値や材質等、解釈の齟齬がないように客観的 □ に示されているかを確認している。 | |||
必要以上に民間の創意工夫を阻害しないもの □ になっているかを確認している。 | |||
必要に応じて、ISOやHACCP等のようなプロ □ セスの基準を利用している。 | |||
標準仕様を添付する場合には、過剰仕様になら □ ないように、不可欠な項目に絞って提示している。 | |||
地球温暖化への配慮に関する仕様規定時の留 意点 | 事業期間中のエネルギー使用量、CO2 排出量 (LCCO2)の概算値を把握している。 □ | ||
光熱水費の負担者について、官民のどちらが適 □ 当かを検討している。 | |||
□ CO2 排出量の目標値について検討している。 | |||
適切なエネルギーマネジメントの体制について □ 検討している。 | |||
省エネルギー、CO2 削減に関するインセンティ □ ヴについて検討している。 | |||
光熱水費をPFI-LCCに含める場合、以下を □ 検討している。 |
確認書類 | 大項目 | チェック項目 | 備考 |
・エネルギーに関するリスク分担 | |||
・サービス価格の見直し方法 | |||
・モニタリング項目 | |||
モニタリング基本計 画書(案) | モニタリングの内容(方法、頻度、減額幅)など □ が、民間事業者の見積もりに大きく影響を与えない程度に特定している。 | ||
モニタリング指標が、客観的に測定可能であるも □ のかを確認している。 | |||
管理者等にとっての重要度に応じて、モニタリン □ グ指標の優先順位付けを行い、これを支払メカニズムに連動させている。 | |||
未達が発生した場合の修復期間を設定している □ (業務要求水準の一部として記載)。 | |||
事業の規模や内容に比べてモニタリングが過剰 □ な負担とならないことを確認している。 | |||
入札の際の提案書において、モニタリング基本 □ 計画書(案)の内容を民間事業者がどこまで変更することができるのかを明示している。 | |||
設定された減額幅が、妥当な水準になっている □ かを確認している。 | |||
特定のモニタリング指標が過度な減額に結びつ □ くために、逆にサービスの向上を妨げるような状況が生じないかを確認している。 | |||
応札者が提案すべき内容を入札書類中で明示 □ している。 | |||
主観性が強い項目についても、満足度調査やク □ レーム情報等の履歴データにより一定程度数値化や客観化が可能かどうかを検討している。 | |||
特にサービス提供業務の比重が重い事業等で □ は、組織品質等を評価する指標の活用について検討している。 | |||
□ モニタリング結果の公表について規定している。 | |||
(留意点) | |||
・公表にあたり、民間事業者の権利、競争上の地位、その他正当な利益を害するおそれのある 事項について配慮する。 | |||
施設によっては、モニタリング結果について、最 □ 終利用者の代表者や中立的な第三者機関等による評価を行う。 |
以上