経済産業省におけるAI・データ契約ガイドラインの検討状況について
経済産業省におけるAI・データ契約ガイドラインの検討状況について
経済産業省
平成30年5月
データ契約ガイドラインver1.0の概要と寄せられた声
●概要
〇経済産業省では、2017年5月、「データの利用権限に関する契約ガイドラインver1.0」を公表。
○取引に関連して当事者が関与のもとで創出されるデータ(主に産業データ)につき、その利用権限に関する考え方を整理。
○当該データの利用権限は当事者の合意に基づくものであると捉え、利用権限を定める際の考慮要素を提示。
●合意形成プロセスの流れ
申入れ
・事前確認
データの選定
利用権限の決定
・寄与度等、以下に例示するような考慮要
取決めの申入れ 素に照らして、利活用権限の有無を「白地」
からxxに検討。
条項作成
モデル条項と解説
データの分類
データカタログ等の作成、意見調整
各当事者が求めるデータの選定
データ契約ガイドラインver1.0に寄せられた声
<活用例>
・工場内データの取り扱いについて協議にも応じてくれなかった納入先
(機械)の企業がGLを参照して相互にメリットがある連携の方策の 議論に乗ってくれた。(プラントメーカー)
・定見がない分野であり、実務的な指針が示されたことは大きい。契約先企業でも契約において参照されつつある(大手弁護士事務所)
<課題(対象範囲、AI契約、海外実務との連携など)>
・産業機械データに関しては、営業秘密に近いディープデータの取扱い の明確化、一方的にオープンデータを求めるようなものではなく、データ提供者に対する利益還元等の方策の充実も期待。(業界団体)
・契約条項例はもっとバリエーションを用意してほしい。分野に応じて異な る考慮要素があることを示すと使えるようになる。
・趣旨は理解するも、現場での活用が課題。さらに現場の具体的 なユースケースや課題を踏まえた改訂を望む。(業界団体)
・海外企業との契約に関するケースや海外のデータ移転規制等に 関する実務に対応した検討を。(業界団体)
・AI(機械学習系)の開発の実務に即した場合には、利用しにくい部分が見られる。(AI開発ベンダー)
・AIの契約実務は企業に知見が無いため、事業部門・研究部 門・法務・知財部門の間で社内調整しているだけで半年や1年 かかり世界のスピードについていけない(AIベンチャー)
・中小企業の契約能力の問題を考慮し、利益配分やリスク負担に ついての条項例を記載すべき
まとめ:方向性は賛同が多いが実務で使えるようにするには課題あり →抜本改訂へ
(①AI技術を巡る基礎的概念やAI開発・利用契約に関する論点の整理、②データ契約に関する各種ガイドラインの一本化と契約類型の整理、③具体的なユースケースを踏まえた充実、④海外企業との契約の観点の考慮 など)
AI・データ契約ガイドライン検討会
期 間:H29/12~H30/3回 数:全3回実施済
進め方:①ガイドラインの改訂方針について検討
②作業部会での検討内容を議論
③ガイドライン案について議論、検討
運 営:原則公開
事務局:NTTデータ経営研究所
●委員(敬称略)
xxxxx(東大教授)
〇xxxx(青学大准教授)xxxx(法大教授)
xxxx (弁護士)
〇xxxx(弁護士)xxxx(弁理士)
〇xxxxx(弁護士)
●オブザーバー
検討会
xxxx(ABEJA)
○xxxx(PFN)
xx xx(トヨタ自動車)
xxxx(日本工作機械工業会)xxxx(JEITA)
xxx (日本化学工業協会)xxxxx(経団連)
(〇は作業部会併任)
内閣府、総務省、経産省関係各課室、NEDO、東京中企投育、JILS 等
・データ
契約ガイドライン案
アウトプット
AI
契約ガイドライン案作成・提出
事業者
作業部会
各局原課各検討会
NEDO
中小企業投資育成、 INCJ 等
法律事務所特許事務所
AI・契約ガイドライン作業部会
スケジュール:H29/12~H30/3 全5回実施済
テーマ:データ利活用のための契約の取決め方
AIに係る法的論点(責任/権利)、契約の考え方・取決め方
個別案件相談
ケース持ち込み
進め方:事業者が持ち込んだケースを議論(お悩み相談所式)運 営:原則非公開
ケース数:データ6、AI5
●メンバー(敬称略)
【座長】xxxx(東大教授)
【データ班】(◎は主査)
◎xx弁護士、xx弁護士、xx弁護士、xxxxx、xx弁護士、xxx弁護士、xx弁護士
【AI班】(◎は主査)
◎福岡弁護士、xx弁護士、xxxxx、xx弁護士、xx弁護士、xxx弁護士、xx弁理士
取扱い分野:自動車、産業機械、物流、損保等
・企業法務、契約、知財等を専門とする新進気鋭の学者・弁護士等で構成
・構成員の弁護士の半数を公募
・個別案件(詳細なお悩み事例)について議論し、法的見解を纏めて提示、ユースケース集も別途作成
・議論を踏まえてガイドライン作成
AI・データ契約ガイドライン
(「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」)
「AI開発」契約 | |||
AI編 | |||
「AI利用」契約 |
新たなガイドライン策定
「データ共用型」契約
(「プラットフォーム型」契約)
新たな契約類型の追加
AI開発に係る各種契約における AI技術やデータに関する権利関係・責任関係の考え方を整理
データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン
(H27.10)
データの利用権限に関する
契約ガイドライン ver.1.0(H29.5)
ガイドラインの一本化
ver1.0からの拡充
「データ提供型」契約
データ編
「データ創出型」契約
データの取得・利用の基本的考え方
や契約についてはデータ編を参照
契約類型別にデータの取扱いに関する法的論点や契約での取決め方等について整理
作業部会では、事業者や業界団体から具体的な相談事例としてデータ関係及びAI関係それぞれについて以下のケース提供を受け、検討を行った。
カテゴリ | ユースケース | ユースケースの特徴等 | ||||
国際 | 契約類型 | 業態・取引類型 | その他特徴等 | |||
データ | 1 | IoTデータ情報連携プラットフォーム | PF | 業界内PF | PF外利用の禁止等 | |
2 | 業界横断型物流データ連携プラットフォーム | PF | 日用品メーカー | 物流上の課題 | ||
3 | リース会社におけるリース機器のデータ活用事例 | 外国人データ | 提供・創出・PF | リース | 三者間問題、パーソナルデータの取扱い | |
4 | 工作機械製造業者におけるデータ活用事例 | 海外販売 | 創出・提供 | 工作機械 | パーソナルデータの取扱い | |
5 | 自動車分野におけるデータ活用事例 | - | 提供 | 輸送機械 | パーソナルデータの取扱い | |
6 | ブロックチェーン技術を用いた情報連携 | - | 提供・PF | 金融 | 分散台帳技術 (ブロックチェーン) | |
A I | 1 | PoC及び開発段階の学習済モデルの権利帰属に関する事例 | 海外取引 | POC・開発 | 損保 | 知的財産処理、オープンクローズ |
2 | AI開発ベンダーにおける開発システムに対する権利等の事例 | - | 開発 | 開発ベンダー | 機械学習開発成果におけるノウハウとその利用範囲 | |
3 | 機器製造事業者が開発するAIの責任等の事例 | - | 開発 | 機器製造 | 学習済モデルに係る責任分担 | |
4 | 産学連携によるAI開発における権利関係 | - | POC・開発 | 工作機械・大学 | 産学連携、中小企業 | |
5 | 学習済モデル開発に供したデータの利用権限及びリバース・エンジニアリング対応 | - | 開発 | 開発ベンダー | 学習データセットの利用権限、蒸留問題 |
――IoTデータ情報連携プラットフォーム
相談者:データ共有事業者事案の概要
相談事業者相談者の論点
データ提供者における不安・要望に対応するための条項をどうするか?
データ共有PF
機器所有者
データ利用権限設定
個々データの識別性を排除しつつ、利用者のニースに応える具体化実現するための条項をどうするか?
X
(プラットフォーム事業者)
X社DB
PFサービス利用規約
データ利用管理者
条件付データセット利用契約
データ利用契約
データ解析・アプリ事業者
データ購入者
※個別のデータのやり取りは、本PFを通じて授受を行う
外部からのデータ権限の主張に対応できるようにするための条項・対応策をどうするか
• XはIoT情報提供を促進するためのプラットフォーム(PF)サービス提供を計画している。
• 当PFは、データ提供に係る者と、データを購入したいとする者の参加が予定されており、PF上に参加する者はPF利用サービス規約への合意が、また個別に 利用契約等を締結がデータ交換には必要とする。
• 本PFに参加する者の間でのデータ交換はPFを通じて行われる。
• データ利用管理者は、機器所有者などからデータ提供を受け、利用権限の設定を受けている。ここから、PF上の各データ利用者に対してデータの提供がなされる。
• データ解析・アプリ事業者や、データ購入者は、データ利用管理者から、それぞれの契約に基づいて、データの提供及び利用権限の付与がなされる。
作業部会におけるコメント
• データの守秘義務を担保するためには、守秘義務条項だけではなく、セキュリティ方法や対価設定のあり方なども含めた議論が必要である。
• 法的問題よりもビジネス設計の問題が大きい。加えて参加を希望する者から立ち上げるスモールスタートから進めることが望ましい。
• エアラインのデータの共有や工場のデータ利活用などのケースも参考として用いることができるのではないか。
――PoC及び開発段階の学習済モデルの権利帰属に関する事例
相談者:データ保有事業者(AIベンチャーとの連携) |
事案の概要 |
相談事業者 開発したモデルについてYは、早期にYの単 権利化 独出願で特許を取得をして、横展開したい 相談者の論点 としている。Xは当該モデルのノウハウを一定 X(利用者企 Y(データ 期間独占的に使用したいので、権利化に対業) 解析企業) して慎重である。Yの権利化の主張に対して、 開発委託契約 どのように対応すべきか Xは、開発した学習済モデルAの解 データ提供 析企業側(Y)の貢献をどのように X社DB 開発 考えるべきか。自社の独占的な権利 学習済 を主張できるか。 モデルA 学習済 納品 モデルA Xは、当該学習済モデルAをデータの追加に 高度化 より高度化した場合、高度化されたモデルの権利関係をどのように捉えるべきか |
• Xでは、自社が保有する各種データを機械学習等により活用するために、Y社と開発委託契約を締結し、学習済みモデル開発(学習済モデルA)の委託を行っている。なお一旦PoCとして委託し、その上で本開発に移行する。 • Xとしては、データ自体が自社保有のデータであり、学習済モデルAの開発に係る費用についても開発委託契約において負担していることから、学習済モデルAの権利についても、自社の権利と考えている。Y社は学習済モデルAの開発においては、自社のノウハウも含まれているから、Xの独占的な権利という主張に、異論を持っている。 • またXにおいては、開発した学習モデルAに対して、今後さらにデータを追加して、当該モデルの高度化も検討している。 |
作業部会におけるコメント |
• 一般的には、Yに一旦プログラムなどの権利が成立して、これをXに譲渡するという構成になる。 • X-Y間のプロフィットシェアの考え方は、本開発がPoCか、本番開発などで異なる。3ヶ月~数ヶ月という短い期間で行ったPoC段階では成果 物を開発者側のものとし、その後の共同開発フェーズでその権利も含めた扱いをどうするか別途検討するというやり方もある。 • 独占的な使用については、期間を限定した競業者排除条項などを設定することが有効である。 |
【データ編の目的】
契約段階ではその価値がはっきりしないことが多いデータの流通や利用を対象とする契約について、各契約当事者の立場を検討し、一般的に契約で定めておくべき事項を改めて類型別に整理した上で列挙するとともに、その契約条項例や条項作成時の考慮要素を提示。
これにより、契約締結の際の取引費用を削減し、データ契約の普及・データの有効活用の促進を目的とする。
【4つの基本的視点】
①データ流通・利活用の重要性と課題:データは保有するだけでは大きな価値がなく、利用する方法を開発することで価値が創出される。契約に際しては、データの利用権限および発生した利益を、適切に分配することが重要。他方、データの流出や不正利用のリスクへの配慮も必要。
②契約の高度化:本ガイドラインは、あくまで契約で定めておくべき事項を示したにとどまる。したがって、契約当事者が協議し、本ガイドラインを参考としつつ、データの創出や利活用に対する寄与度等を考慮し、取引の実状に応じて契約を高度化させていくことが望ましい。
③イノベーションの促進:多様な立場に配慮したデータ契約の考え方や契約条項例等を示すことにより、データ利用の促進を図り、オープン・イノベーションを促進する。
④国際協調:xxx・xxxx取引が一般化する状況下、データの越境に関する問題も考慮する。
【想定する読者】
・データ契約に関係する全ての者(契約担当者のみならず、事業部門、経営層、システム開発者等を含む)を想定、平易な表現に努めつつ、先端的・専門的な内容も掲載。
【適切な対価・利益の分配】
・適正な対価設定の在り方は、ケース・バイ・ケースであり、xx的に示すことはできないが、一般的な考慮要素を示すこととしている。
契約類型を3つに整理し、それぞれ、構造・法的性質、課題、法的論点、適切な取決め方法、モデル契約書案等を整理
「データ提供型」契約 | 「データ創出型」契約 | 「データ共用型」契約 |
・データ提供者から他方当事者に対してデータを提供する際に、他方当事者のデータ利用権限等を 取り決める契約(対象データをデータ提供者のみが保持しているという事実状態が明確である場合) | ・複数当事者が関与することによりデータが新たに創出される場面において、データ創出に関与した当事者間で、当該データの利用権限を取り決める契約 | ・プラットフォームを利用したデータの共用を目的とする類型の契約 |
別添2 ユースケース集 作業部会において検討した5ケースについて構成員の法的見解と併せて完全収載)
7
別添1 産業分野の事例紹介
【目的】
AI ソフトウェアの特性を踏まえた上で、開発・利用契約を作成するにあたっての考慮要素、当事者の適切なインセンティブ形成の方法、トラブル予防方法等についての基本的考え方を提示。当事者が納得する合理的な契約を締結するための情報を示し、契約プラクティスを形成する一助とする。
【AI技術の解説】
・基本的概念(AI、AI技術、機械学習)の説明等
・本ガイドラインが想定するAI技術の実用化の過程 学習段階(学習用データセット生成段階、学習済みモデルの生成段階)、利用段階
●AI技術の特性
・学習・推論の結果、生成される学習済みモデルの性質・効果が契約締結時に不明瞭な場合が多いこと
・学習済みモデルの性質・効果が学習用データセットによって左右されること
・ノウハウの重要性が高いこと
・生成物について再利用の需要が存在すること
【AI開発における基本的な考え方】
AIソフトウェアの開発・利用を巡る契約の現状、契約検討に向けた視点、当事者間で問題が生じうる事項、契約内容の決定、独禁法の問題
学習済みモデルの開発契約におけるポイント
◆ 学習済みモデルの開発類型:学習済みモデルのみ開発する類型、学習済みモデルを含んだシステムを開発する類型、学習済みモデルの開発の再受託を受ける類型
◆ 開発方式:ソフトウェア開発方式(ウォータフォール型/非ウォータフォー
ル型)、学習済みモデル開発に適した開発・契約方式
◆ 契約における考慮要素:契約の法的性質、契約における交渉のポイントと留意点
学習済みモデルの利用契約におけるポイント
◆ 学習済みモデルの利用サービス類型:ベンダが学習済モデルを提供し、ユーザが利用するサービス、ベンダが学習用プログラムを提供し、ユーザ が利用するサービス方式等
◆ サービスの提供方式:クラウドサービス型/オンプレミス型/その他
◆ 契約の形式:クラウドサービス契約/ソフトウェアライセンス契約等
◆ 契約における考慮要素:学習済みモデルのカスタマイズ、入力データ、
再利用モデル、AI生成物
国際的取引の視点
◆ 適用法の確定・紛争解決手段の選択
◆ AI技術を利用したソフトウェア開発・利用で問題となりうる事項:データ作成段階(著作物を含む場合、パーソナルデータを含む場合、表明保証条項の
活用)、学習済みモデルの開発段階(権利帰属、リバースエンジニアリングの禁止)、学習済みモデルの利用段階(外為法・技術輸出入規制)
モデル契約書案と解説 探索的段階型開発を想定したそれぞれの段階における契約(秘密保持契約書、導入検証契約書、ソフトウェア開発契約書)
別添ユースケース集 作業部会において検討した5ケースについて構成員の法的見解と併せて完全収載
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【AI編における全体的なポイント】 ①AI技術の特性のポイントを詳しく解説 ②AI技術の特性を考慮した、「探索的段階型」の開発手法と、その開発手法に沿ったモデル契約を提示(下図) ③契約における権利関係や責任関係についての交渉のポイントと留意点を紹介し、権利関係については、利用条件をきめ細やかに設定することでユーザとベンダの利害調整を図る枠組みを提示 | ||||||
目的 | 一定量のデータを用いて学習済みモデルの生成可能性を検証する | 学習用データセットを用いてユーザが希望する精度の学習済みモデルが生成で きるかどうかを検証する | 学習済みモデルを開発する | ベンダが納品した学習済みモデルについて、追加の学習用データセットを使っ て学習をする | ||
成果物 | レポート等 | レポート等 | 学習済みモデル等 | 再利用モデル等 | ||
契約 | 秘密保持契約書等 | 導入検証契約書等 | ソフトウェア開発契約書等 |
【モデル契約の想定】
①契約当事者:大企業から中小企業までの全ての企業
②対象ソフトウェア:事業やオペレーションに関する一定の目的を実現するためのAI技術を利用したソフトウェア
【本モデル契約のポイント】
①探索的段階型の開発手法に沿った契約書(秘密保持契約書、導入検証業務委託契約書、ソフトウェア開発契約書)を提示した。
②ユーザが提供するデータの保護と利活用を図るため、データの取扱いに関する規定を充実させた。
③成果物等の取扱いについて、利用条件をきめ細やかに設定することでユーザとベンダの利益調整を図る規定を提示した。
④ベンダは成果物の完成義務や性能の保証を行わない案を提示した。
9
●新ガイドライン案について、経団連等の業界団体や事業者と意見交換等を行い、パブコメを実施。
●普及啓発や国際連携のための取組みを引き続き実施。
新ガイドラインの普及と活用に向けた今後の取組のイメージ
ガイドラインの普及・啓発 活用事例の創出・改訂 国内外での連携
• 業界団体や事業者(中小企業を含む)向けに説明会を開催
• 継続的な産業界との対話等を通じた個別分野への浸透・展開
• 個別分野における契約ガイドラインの策定や活用のために積極的に働きかけ
• 契約ガイドラインを補助金・各制度でも活用
• 実施状況の実態調査とともに、産業分野ごとに留意すべき点の整理を行い個別分野への展開を進める
• ユースケースの蓄積
• 活用指南の窓口として、データ流通促進WG等も活用
• 改良やメンテナンスのための検討会を継続も検討
• 展開に向けた関係省庁との連携
• xx等の政府機関や有識者との議論・意見交換
• 海外事業者との取引を見据えた英語版の作成
5月
6月
夏ころ
意見交換会の開催(経団連、JEITA、日機工、日弁連、新経連、関経連等)
パブコメ 4/27~5/26
ガイドライン公表
・普及啓発に向けた各種説明会等
・法律雑誌連載
・ガイドライン英語版公表
10
今後のスケジュール
参考資料
11
データ提供型契約(ガイドラインデータ編 24~45ページ参照)
ガイドライン
課 題
データ提供型契約とは
データに関する一切の権限を失う
データに関する一切の権限の移転
データ受領者
データの利用権限
データ提供者
データの譲渡
「目的外利用」とは何かについて事例 ベースで考え方を整理。目的外利用制限の規定例も紹介。
責任の所在やxxな分担の在り方を説明。損害賠償責任や責任制限等の規定を条項例とともに紹介。
データ品質問題の考え方を整理し、保証責任や免責等の取決め方について例示。
派生データの種類・性質について説明するとともに、その利用権限や知財処理、利益分配の取決め方やポイントを示す。
1 | 提供データから派生したデータの利用権限はどう決めたらよいか |
2 | データの品質が不十分であった場合誰に責任があるか |
3 | データの利用に起因して生じた損害は誰が負担すべき |
4 | 提供データの目的外利用をどう食い止めるか |
5 | クロスボーダー取引における留意点 |
6 | 提供データの利活用がノウハウの流出につながるとの懸念がある |
一方当事者(データ提供者)のみが取引の対象となるデータを保持しているという事実状態において、データ提供者から他方当事者に対して当該データを提供する際に、他方当事者の利用権限その他データ提供条件等を取り決めるための契約
データ提供者
データの利用権限
データの利用権限の付与
データ受領者
データの利用権限
データ流出や不正利用を防止する各種手段について説明、適切な契約上・技術上の措置を採ることでリスクを最小化することの意義を示す。
諸外国におけるデータ・ローカライゼーション、越境移転規制を整理して示す。
データの利用許諾
データ創出型契約(ガイドラインデータ編 49~62ページ参照)
ガイドライン
課 題
「データ創出型」契約とは
創出に複数の当事者が関与するが、利用権限の調整 ルールが明確ではない
1
取引に関連して創出されるデータについて当事者間で定めるべき事項、利用条 件(利用目的・範囲、第三者提供の制限、データ内容の保証、コスト負担等)を明らかにしつつ、それらにおける考え方を整 理。
複数当事者が関与することにより、従前存在しなかったデータが新たに創出される場面において、データの創出に関与した当事者間で、データの利用権限について取り決める契約
アドバイス・保守
工作機械の使用者
取得
稼働データ
稼働データ
工作機械の製造業者
2
創出がなされる場合でも、その利用方法が必ずしも明ら
かでない場合が多い
創出型のユースケースを挙げ、共有のイメージを醸成するとともに、どのような基準で利益を分配するか留意点等を示す。
個人情報及びプライバシー権に対する配慮はどうするか
3
具体的に契約で定めるべき条項における内容を整理、説明。
個人情報及びプライバシー権の観点か ら留意すべき点を示すとともに、これらへの配慮を促す。
自社製品の開発に活用
定めるべき利用条件等に基づき、具体的にどのように 取り決めたらよいか
4
その他のケース
・ウェアラブル端末から取得したバイタルデータの事例
・施設、車両に設置した環境センサーから取得した気象データの事例
データ共用型契約(ガイドラインデータ編 66~104ページ参照)
ガイドライン
課 題
「データ共用型」契約とは
データ共用のためのプラットフォーム組成はどのように行うか、そもそもPFはどのようなものか
1
PFの構造としていくつかのパターンを示した上で、PF組成の進め方、当事者間の法律関係やデータフロー・利用の仕組みを整理して示す。
プラットフォームが、データ提供者からデータ提供を受け、集約・保管した上で、当該 データをそのまま一次データとして、又は加工・分析を加えた二次データとして、データ利用者に提供して共用・活用する契約
データ提供者
データ利用者
P
集約F 加工保管 分析
3
当事者関係が複雑化するが、信頼されるPFを組成するにはどのような点に留意したらよいか
以下の観点から、PFの体制整備の在り方を整理。
①目的
②提供者の数・参加者の範囲
③データの種類・範囲
④データの利用範囲
⑤利用促進の仕組み
⑥競争・国際化の視点 等
前例が少ないため、利用規約には何を定めればいいか分からない
2
中立性・信頼性を確保し、適正な利益分配や権利帰属等を実現するための利用規約の在り方を検討。
定めるべき事項
①利用範囲
②提供者の責任
③派生データ等成果物の権利・利益分配
④監査、苦情・紛争処理
⑤PFの義務・責任
⑥終了時の対応 等
※提供データの加工・分析結果に基づいて利用サービスを開発、提供することもある。
第1 総論
1 目的
2 データ流通・利活用の重要性と課題
3 契約の高度化の意義
4 イノベーションの促進
5 国際協調の意義
「第1 総論」の概要
• 「1 目的」では、「契約段階ではその価値がはっきりしないことが多いデータの流通や利用を対象とする契約について、具体的な事案に基づく専門家の議論をふまえたうえでデータ契約の各当事者の立場を検討し、一般的に契約で定めておくべき事項を改めて類型別に整理した上で列挙するとともに、その契約条項例や条項作成時の考慮要素を提供」することを、本ガイドライン(データ編)の目的としている。
- 従前のガイドラインでは取り扱われなかった点(例:派生データの取扱い、【データ共用型(プラットフォーム型)】)
- 従前のガイドラインに対し寄せられた意見(例:ユースケースの充実、xxx・xxxx、個人情報)
• 「2 データ流通・利活用の重要性と課題」では、データ流通による価値創出のメリットと、流出・不正利用リスクの双方に目配りをすることの重要性を示し、適切な契約上・技術上の措置を採ることでリスクを最小化した上で、正しいリスクと便益の評価に基づき、合理的なデータ契約を締結することの意義を示している。
• 「3 契約の高度化の意義」では、各事業者自身が、契約自由の原則を活かし、本ガイドライン(データ編)を参考としつつ、データの創出に対する寄与度等を考慮し、当事者で協議して柔軟に利用権限などの具体的な内容を定めることで、取引の実状に応じて契約の高度化を図る必要性について示している。
• 「4 イノベーションの促進」では、従来型のイノベーションを尊重しつつも、多様な立場に配慮したデータ契約の考え方や契約条項例等を用意することにより、データ利用の促進を図り、オープンイノベーションの可能性を広げることも、本ガイドライン(データ
編)の一目的としていることを示している。
• 「5 国際協調の意義」では、本ガイドライン(データ編)において、グローバルな場面でも通用するデータ流通と利活用に関する契約について検討を行うことの重要性を示し、国際的な新潮流(オープンデータ等)にも言及している。
第2 ガイドラインの対象
1 想定読者
2 契約類型と本ガイドライン(データ編)の全体構成
3 交渉の在り方・交渉力
4 AI編との関係
「第2 ガイドラインの対象」の概要
・データ利用に係る契約類型として、【データ提供型】、【データ創出型】、【データ共用型】、の3類型で検討することを示した上で、
「1 想定読者」、 「2 契約類型と本ガイドラインの全体構成」、「3 交渉の在り方・交渉力」、「4 AI編との関係」などについての説明を行っている。
・「1 想定読者」では、想定読者については、契約締結に携わる者以外に、経営層や関連システムを開発する者等、幅広く設定する旨を示す。
・「2 契約類型と本ガイドラインの全体構成」では、上述のように、データ編で整理した契約類型について説明するとともに、データ編の構成について示している。
【データ提供型】:一方当事者から他方当事者にデータを提供する場面
【データ創出型】:複数当事者が関与することで、従前存在しなかったデータが新たに創出される場面
【データ共用型】:複数事業者がデータをプラットフォームに提供し、プラットフォームがデータを加工、分析等し、複数事業者がプラットフォームを通じて当該データを共用する場面
このうち、【データ提供型】と【データ創出型】については、主なモデル契約条項例も示している。
・「3 交渉の在り方・交渉力」では、契約締結前の段階において当事者間の協議により契約を締結するにあたっての交渉の在り方・交渉力について説明しつつ、競争法上の問題意識についても言及している。
・「4 AI編との関係」では、データ編で示すデータ利用について、AI編におけるデータ開発・利用においても参考となる旨を示している。
-例)派生データの取扱いの議論は、AI開発における学習済みモデル等の検討に際しても参考となる
第3 データ契約を検討するにあたっての法的な基礎知識
1 データの法的性質
2 データ流出や不正利用を防止する各種手段
3 適正な対価/利益の分配
「第3 データ契約を検討するにあたっての法的な基礎知識」の概要
• 「1 データの法的性質」では、無体物たるデータの法的性質、とりわけ知的財産権との関係や、「データ・オーナーシップ」をめぐる議論にも言及した上で、データに所有権その他の排他的な権利を観念することは原則としてできないのであり、あくまで契約において債権的な観点からデータの利用権限の調整を図ることが望ましいことを説明している。また、データの分類((非)構造化データ、(非)パーソナルデータ)や、データ利用においての競争政策との関わりについて説明している。
• 「2 データ流出や不正利用を防止する各種手段」では、(1)契約による保護、(2)不正競争防止法(改正案を含む)、 (3)民法上の不法行為による保護、(4) 不正アクセス禁止法による保護などの法的な対応による保護のほか、(5) 不正利用等を防止する技術を活用した保護などの方法について説明し、適切な契約上・技術上の措置を採ることでリスクを最小化することの意義を示している。
• 「3適正な対価/利益の分配」では、データ契約における対価/利益の分配に影響を及ぼす考慮要素として、データの種類、データの利用権限、データの利用範囲(地理的制限を含む)、データが生み出す価値、派生データの利用権限、創出された知的財産権の権利関係、損害が発生した場合の責任分担、ライセンスフィーやロイヤリティの設定、データ創出や管理に要する費用分担がある旨を示した上で、契約自由の原則を前提としつつも、データ契約における適正な対価または利益の分配のあり方についての検討を行っている。なお、データの価値の試験的な検証方法についても言及している。
第4 「データ提供型」契約(一方当事者から他方当事者へのデータの提供)
1 構造
2 データ提供型契約における主な法的な論点
3 データ流通を阻害する原因とその対処法
4 適切なデータ提供型契約の取決め方法
「第4 「データ提供型」契約(一方当事者から他方当事者へのデータの提供)」の概要
• 取引対象となるデータを一方当事者(データ提供者)のみが保持しているという事実状態が明確である場合の契約類型を想定して、その対応について説明している。
• 「1 構造」では、(1)データ提供型契約の意義、(2)データ提供型契約の法的性質(下図参照)、 (3)主体の個別性
(1:1, 1:N)などの整理を行っている。
• 「2 データ提供型契約における主な法的な論点」では、(1)提供データを活用した派生データ等の利用権限の有無、(2)提 供データが期待されたものではなかった場合の責任(提供データの品質) (3) 提供データを利用したことに起因して生じた損害についての負担、(4)提供データの目的外利用、(5)クロス・ボーダー取引における留意点(データ・ローカライゼーション等)、 (6)個人情報等を含む場合の留意点などについて、それぞれ検討し、説明している。
• 「3 データ流通を阻害する原因とその対処法」では、(1)提供データの利活用がノウハウの流出につながるとの懸念とその対処法、(2)データの価値算定の困難性などの、データ流通阻害要因となるものについての対処法等の説明を行っている。
• 「4 適切なデータ提供型契約の取決め方法」では、具体的に契約で定めるべき条項における内容について整理している。
第5 「データ創出型」契約(複数当事者が関与して創出されるデータの取扱い)
1 構造
2 データ創出型契約における主な法的論点
3 適切なデータ創出型契約の取決め方法
「第5 「データ創出型」契約(複数当事者が関与して創出されるデータの取扱い)」の概要
• 複数当事者の関与により、従前存在しなかったデータが新たに創出されるという場面において、データの創出に関与した当事者間で、データの利用権限について合意する必要のある場合の契約類型を想定して、その対応について説明している。
• 「1 構造」では、具体的ケースを踏まえたデータ創出のパターンを挙げた上で、データ創出型契約における課題について検討し
ている。
- ケース1:工作機械に設置したセンサーから取得した稼働データの事例
- ケース2:ウェアラブル端末から取得したバイタルデータの事例
- ケース3:施設、車両に設置した環境センサーから取得した気象データの事例
• 「2 データ創出型契約における主な法的論点」では、本類型で取り決めるべき内容について整理している。すなわち、(1)当事者間で設定すべき利用条件、(2)対象データの範囲・粒度、(3)利用目的、利用範囲の設定、(4)分析・加工および派生データの利用権限、(5)第三者利用等の制限、(6)データ内容および継続的創出の保証/非保証、(7)収益分配、(8) コスト・損失負担、(9)管理方法、セキュリティ、(10)利用期間、地域、(11) 契約終了時の扱い、(12)準拠法・裁判管轄、 (13)消費者との契約の場合の留意点、(14)独占禁止法・下請法などの項目を挙げて、随所で具体的なケース毎の問題意識にも言及しつつ、説明している。
• 「3 適切なデータ創出型契約の取決め方法」では、具体的に契約で定めるべき条項における内容について整理している。
第6 「データ共用型(プラットフォーム型)」契約(プラットフォームを利用したデータの共用)
1 構造
2 プラットフォーム型における主たる検討事項
3 プラットフォーム型における主な法的論点
4 利用規約における主要事項
「第6 「データ共用型(プラットフォーム型)」契約(プラットフォームを利用したデータの共用)」の概要
• 企業や系列の既存の枠を超えて、プラットフォームを利用したデータの共用を目的とする類型の契約を想定して、その対応について説明している。
• 「1 構造」では、プラットフォームを利用したデータの共用を目的とする類型の契約における要素や、構造としていくつかのパター
ンを示した上で、当事者間の法律関係や、データのフロー・利用の仕組み等についての説明をしている。
• 「2 プラットフォーム型における主たる検討事項」では、本類型で取り決めるべき内容について整理している。すなわち、(1) データ活用の目的・方法、(2)データ提供者の数・参加者の範囲(プラットフォームの開放の程度)、(3)データ提供者とデータ利用者間の利害関係の調整、(4)対象となる提供データの種類および範囲(競争力への影響度合い、オープン・クローズ、不要なデータを対象としない)、(5)データの利用範囲(利用者、データの範囲、利用目的)、(6)プラットフォーム事業者の選定(中立性・信頼性の確保)、(7)利用規約の要否、(8)プラットフォームの活用を促すための仕組み、(9)プラットフォーム間の競争・国際化の視点などの項目を挙げて、説明している。
• 「3 プラットフォーム型における主な法的論点」では、(1)利用規約の要否・種類、(2)データの利用範囲を利用規約に記載する意義、(3)データの種類、(4)参加者の範囲、(5)誰がプラットフォーム事業者になるか、などに関する法的な論点の検討を行っている。
• 「4 利用規約における主要事項」では、具体的に利用規約で定めるべき条項における内容について説明している。
第7 主な契約条項例
1 データ提供型
2 データ創出型
「第7 主な契約条項例」の概要
• 本ガイドライン(データ編)で述べた考え方などを踏まえて、「データ提供型」及び「データ創出型」の契約類型について、それぞれの契約における条項例として示した。
• 条項例では雛形となる条項のほか、各条項におけるポイントや解説を併せて示すことにより、利用者が適宜、雛形となる条項をカスタマイズ
できる内容としている。
別添1 産業分野の事例紹介
1 自動走行・モビリティ・物流
2 製造・ものづくり
3 素材・バイオ
4 インフラ・プラント保安
5 スマートライフ
6 その他(農業等)
別添2 作業部会で取り上げたユースケースの紹介
学習済みモデルの開発契約(ガイドラインAI編 37~55ページ参照)
ユーザがデータの提供を行い、ベンダが単独で学習済みモデルを開発するケース
1
AI技術/AI特性に理解・認識のずれがあり、契約交渉が進まない。
ベンダから一方的に示された条件で契約している。
AIに関する、用語定義、技術的特性、実用化過程、開発方式といった基本事項について解説。当事者の相互理解を促進し、技術的な知識の差を埋める。
ガイドライン
課 題
ベンダ
開発委託契約
ユーザ
データ提供
DB
納品
学習済みモデル
AI開発のためにはどんな契約をするのが適切なのか分からない。
学習してみないと分からないので手戻りを許し、リスク回避する内容にしてほしい。
データが保護されないと十分に提供されない。
実務が乏しく、権利・責任関係の取決め方が手探り
3
4
2
柔軟な開発方式の提示 →探索的段階型として4つのフェーズに分ける。 |
契約条件の取決め例(モデル契約書)と利害調整の枠組み・ポイントを提示。 |
データ編とも連携し、データの適切な保護のためのポイントを整理してまとめた。 |
5
クロスボーダー取引ではどのような点に留意すべきか。
留意すべき外国の法規制や契約上の留意点を詳述して紹介。
学習済みモデルの利用契約(ガイドラインAI編 59~63ページ参照)
利用条件等をあらかじめ定めるものとし、そのための方法等を掲載。
利用契約の位置づけをAI技術の特性等も紹介しながら示し、適切な権利関係の定め方を紹介。
製造業者
サービス利用契約
入力
DB
稼働データ
インターネット
サービス事業者
学習済みモデル
出力
AI
生成物
AI
生成物
追加学習や再利用モデルの意義等を解説し、適切な権利帰属や利用条件の取決め方を紹介。
責任の定め方(非保証、違約金、損害賠償責任の規定)等をその考え方とともに解説。
寄与の考え方や考慮要素等を示し、適切な取引の在り方を示す。
ガイドライン
課 題
1 | サービスが期待する成果が得られない場合に備え、どのように責任を決めるべきか。 |
2 | 入力データ等は適切に保護されるか。権利関係はどのように定めるか。 |
3 | AI生成物の権利関係を どのように考えるべきか。 |
4 5 | 学習済みモデルの誤作動により事故が起きた場合の責任関係はどのよ うに定めるべきか。 |
追加学習により生成された再利用モデルの権利関係等はどのように定めるか。 |
ユーザ(製造業者)が自己のデータを、 インターネット経由でサービス事業者のサーバにある学習済みモデルに入力し、 AI生成物(出力)を利用するサービスを 提供するケース
第1 総論
1 目的
2 問題の所在と解決方法
3 対象
4 全体構成
5 本ガイドライン(データ編)との関係
「第1 総論」の概要
・本章では、本ガイドラインにおけるAI編の目的、AIの開発関係をめぐる問題の所在・解決方法、AI編において対象となる読み手・開発対象などを示すほか、AI編の構成及びデータ編との関係についても示す。
・AI編における目的としては、「AI技術を利用したソフトウェアについて、その特性を踏まえた上で、開発・利用契約を作成するにあたっての考慮要素、当事者が適切なインセンティブを形成する方法、トラブルを予防する方法等についての基本的考え方を提 示することによって、当事者の双方が納得する合理的な契約を締結するための情報を提供し、契約プラクティスを形成する一助となることで、AI技術の開発・利用を促進する」ことを目的としている。
・「2 問題の所在と解決方法」では、以下のケースについて、トラブルが生じやすい問題の所在として整理している。①AI技術の特性を当事者が理解していないこと、②AI技術を利用したソフトウェアについての権利関係・責任関係等の法律関係が不明確であること、③ユーザがベンダに提供するデータに高い経済的価値や秘密性がある場合があること、④AI技術を利用したソフト
ウェアの開発・利用に関する契約プラクティスが確立していないこと。これらについての問題の所在を明らかにするとともにその解決方法の方向について示している。
・本編では、事業者を限定せずに読み手として想定し、AI技術を利用したソフトウェアを対象している。
・データ編との関係では、データの提供・利用に関する法的問題や利害調整の方法については、データ編が正面から取り上げて、詳細な検討を行っている。AI編では、AI技術を利用したソフトウェアの開発との関係で発生するデータ(学習用データセット、学習済パラメータ等含む)の利用などについて、特に焦点を当てて記述している。
24
第2 AI技術の解説
1 基本的概念の説明
2 本ガイドライン(AI編)が対象とする機械学習
3 本ガイドライン(AI編)が想定する実用化の過程
4 AI 技術の特性
「第2 AI技術の解説論」の概要
・「第2 AI技術の解説」では、AIに関する基本的な概念を説明した上で、本ガイドラインが対象とする機械学習の位置づけなどを示し、AI技術を利用したソフトウェアの開発過程について整理する。その上で、AI技術に根ざしたAI技術を利用したソフトウェア開発における特徴を示している。
・「1 基本的概念の説明」では基本的概念(AI、AI技術、機械学習(教師あり学習、教師なし学習、ディープラーニング))などの概念を整理している。
・「2 本ガイドライン(AI編)が対象とする機械学習」では、 AI技術を利用したソフトウェア開発の性質や、AI編における機械学習の位置づけについて示している。
・「3 本ガイドライン(AI編)が想定する実用化の過程」では、下図に示す生データから学習済モデルの生成過程を示した上で、学習過程及び利用過程における要素、関与者について整理している。
・「4 AI 技術の特性」では、AI技術の特徴として、①学習済みモデルの性質等が契約締結時に不明瞭な場合が多いこと、②その性質等が学習用データセットに依存すること、③その生成に際してノウハウの重要性が高いこと、および④各種生成物について再利用の需要が存在すること、などについて整理した上で、学習済みモデルの特性を理解することの重要性についての説明を行っている。
生データから学習済モデルが生成される過程
25
第3 基本的な考え方
1 AI技術を利用したソフトウェアの開発・利用をめぐる契約の現状
2 契約の検討に向けた視点
3 当事者間の問題が生じうる事項
4 契約内容の決定
5 独占禁止法上の問題
「第3 基本的な考え方」の概要
• 「第3 基本的な考え方」では、「AI技術を利用したソフトウェアの開発・利用をめぐる契約の現状」、「契約の検討に向けた視点」、「当事者間の紛争が生じうる事項」、「契約内容の決定」、「独占禁止法上の問題」など、契約成立に向けての基本的な考え方や留意点等について整理している。
• 「1 AI技術を利用したソフトウェアの開発・利用をめぐる契約の現状」では、当事者の利害が対立することが発生することや、事業上の優越関係や技術的な知識の格差等を背景一方的な契約条項が押しつけられる状況が発生しうることを示した上で、学習済みモデルの特性と法律上のルールの内容を理解することで、合理的な条項に合意することができる場合もあるとする。
• 「2 契約の検討に向けた視点」では、各契約当事者の立場や考え方の違いや、 知的財産に関する整理などを行い、契約締結の前提となる状況等の説明を行っている。
• 「3 当事者間の問題が生じうる事項」では、AI技術を利用したソフトウェアの開発または利用に関して、当事者間で問題となる、または交渉が難航するケースについて、示している。
• 「4 契約内容の決定」では、権利帰属・利用条件の設定、 責任の分配についてのあり方について示している。「権利帰属・利用条件の設定」では、知的財産権としての対象の有無に応じた対応、取決めに際しての考慮要素について示している。「責任 分配」では、学習済モデルの開発や学習済モデルの利用において、発生しやすい問題点や事前の対応方策などを整理している。
• 「5 独占禁止法上の問題」では、AI技術を利用したソフトウェアに関する契約に際しての、優越的地位の濫用、排他的条件付取引や拘束条件付取引等、下請法などに観点からの留意点について整理している。
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第4 学習済みモデルの開発契約
1 学習済みモデルの開発とは
2 開発方式
3 契約における考慮要素
「第4 学習済みモデルの開発契約」の概要
• 「第4 学習済みモデルの開発契約」では、「1 学習済みモデルの開発とは」、「2 開発方式」、「3 契約における考慮要素」、「4 具体例による解説」の説明から構成されており、AI技術を利用したソフトウェアの開発における考慮事項、ポイントなどを、AI技術の特殊性を踏まえて示している。
• 「1 学習済みモデルの開発とは」では、学習済モデルの開発の類型を整理している(図1)
• 「2 開発方式」では、AI技術を利用したソフトウェア開発について、その特徴を踏まえて、多段階型の方式を採用することが、両当事者のリスクを軽減する観点から妥当である旨を示している(図2)。
• 「3 契約における考慮要素」では、AI技術を利用したソフトウェア開発に適した契約の法的性質、開発において取り扱うデータ・
プログラム等(生データ、学習用データセット、学習用プログラム、学習済モデル、学習済パラメータ、推論プログラム、ノウハウ)に即した契約交渉上のポイント・留意点を示している。
図1 学習済モデルの開発類型
図2 学習済モデル開発に適した開発方式
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第5 AI技術の利用契約
1 AI技術の利用とは
2 学習済みモデルの利用サービス
3 契約における考慮要素
「第5 学習済みモデルのサービス利用契約」の概要
• 「第5 学習済みモデルのサービス利用契約」では、「1 AI技術の利用とは」、「2 学習済みモデルの利用サービス」、「3 契約における考慮要素」の説明から構成されており、AI技術を用いたサービスの類型や考慮事項などを示している。
• 「1 AI技術の利用とは」では、AI技術を利用したサービス利用の多様性について説明した上で、例として学習済モデルをサービスに供する場合と、学習用プログラムをサービスに供する場合について示し、本項では学習済みモデルをサービスに供しているケースを想定して説明することとしている。
• 「2 学習済みモデルの利用サービスの概要」では、1.で整理した類型のうち、学習済みモデルのサービス利用についての概要、利用方式・利用形態、契約形式について説明している。
• 「3 契約における考慮要素」では、学習済みモデルの利用サービスの考慮要素(カスタマイズされた学習済モデル、入力データ、再利用モデル、AI生成物、に関する権利関係、結果に対する責任範囲)などについて整理している。
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第6 国際的取引の視点
1 一般的な留意事項
2 AI技術を利用したソフトウェア開発・利用で問題となりうる事項
「第6 国際的取引の視点」の概要
• 「第6 国際的取引の視点」では、国際契約を締結する際の一般的な留意事項のほか、AI開発、サービス利用において特に留意する点を示している。
• 一般的な留意事項については、国際契約締結に際して、準拠法の選択、適用法の調査、紛争解決手段の選択などについて示している。
• AI技術を利用したソフトウェア開発・利用については、全般的を対象とする内容(著作物を含む場合や個人情報を含む場合における
各国の法制との関係などについての留意の必要性、表明保証条項の活用の有効性など)について示している。また学習済みモデルの開発について重要な要素(開発の進め方、権利関係、利用条件)、学習済みモデルの利用における留意点(責任制限規定、各種規制への対応)などについての説明を行っている。
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第7 モデル契約について
1 位置づけ
2 特徴
3 各モデル契約の前提や留意点
「第7 モデル契約」の概要
• 「第7 モデル契約」では、モデル契約の位置づけ、特徴、各モデル契約の前提や留意点を示している。
• 位置づけについては、本ガイドラインで示す内容を踏まえた、AI技術を利用したソフトウェア開発のモデル契約として示すことを述べたうえで、具体的な利用の場面において、必要な修正等の対応を行う必要があることを示している
• 特徴については、本モデル契約における考え方に関する特徴を説明している。
• 各モデル契約の前提や留意点については、探索的段階型開発を想定したそれぞれの段階における契約(秘密保持契約書、導入検証契約書、ソフトウェア開発契約書などのほか、追加学習段階における契約)についての前提や留意点について整理している。
第8 総括
「第8 総括」の概要
• 「第8 総括」では、AI編の全体的な総括、今後の改定の必要性などについて示している。
別添 作業部会で取り上げたユースケースの紹介
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