Contract
建設工事における適正な下請契約
近畿地方整備x
xxな競争基盤の確立のため、元請企業による下請企業への不当なしわ寄せとなる行為を法律により規制
建設生産システムにおける 『しわ寄せ』 等の状況
近畿地方整備x
x 設 業 法 の 制 定
建設業法令遵守ガイドラインの概要( H 1 9 . 6 策定)
1.策定の趣旨
本ガイドラインは、元請負人と下請負人との関係に関して、どのような行為が建設業法に違反するか具体的に示すことにより、法律の不知による法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及びxxかつ透明な取引 の実現を図ることを目的として策定
2.本ガイドラインの内容
(1)建設業の下請取引における取引の流れに沿った形で、見積条件の提示、契約締結といった以下の12項目について、
・留意すべき建設業法上の規定を解説 ・建設業法に抵触するおそれのある行為事例を提示
1.見積条件の提示(建設業法第20条第3項)
2.書面による契約締結【書面の交付等(下請法第3条)】
2-1.当初契約(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3)
2-2.追加・変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3)
2-3.工期変更に伴う変更契約(建設業法第19条第2項、第19条の3) 【H20.9改訂】
3.不当に低い請負代金(建設業法第19条の3)【買いたたきの禁止(下請法第4条Ⅰ⑤)】
4.指値発注(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第3項)
5.不当な使用資材等の購入強制(建設業法第19条の4)【購入・利用強制の禁止(下請法第4条Ⅰ⑥)】
6.やり直し工事(建設業法第18条、第19条第2項、第19条の3)【不当な内容の変更、やり直し禁止(下請法第4条Ⅱ④)】
7.赤伝処理(建設業法第18条、第19条第1項、第19条の3、第20条第3項) 【減額の禁止(下請法第4条Ⅰ③)】
8.工期(建設業法第19条第2項、第19条の3)
9.支払保留(建設業法第24条の3、第24条の5)【支払代金の期日(下請法第2条の2)等】 10.長期手形(建設業法第24条の5第3項)【割引困難な手形の交付禁止(下請法第4条Ⅱ②)】
11.帳簿の備付け及び保存(建設業法第40条の3)【書類等の作成保存(下請法第5条)】
※ 上記は類似の規制を示したものであり、同じ内容ではないことに留意。
(2)関連法令の解説として以下の内容を掲載
12-1 独占禁止法との関係について(建設業の下請取引に関する建設業法との関係)
12-2 社会保険・労働保険について(社会保険等のへの加入) 【H24.7改訂】
12-3 労働災害防止対策について(実施者と経費の負担の明確化) 【H26.10改訂】
12-4 下請代金の支払手段について(下請中小企業振興法・振興基準の改正) 【H29.3改訂】
背 景
○下請代金の支払手段に係る動き
平成28年12月に下請中小企業振興法に基づく振興基準等が改正され、下請代金の支払手段について見直し。
○関係法令の改正
建設業法施行令が改正され、物価上昇及び消費税増税等を踏まえ、施工体制台帳の作成等を要する金額要件を引き上げ。
建設業法令遵守ガイドラインの改訂について (平成29年3月改定)
近畿地方整備局
改正概要
○下請代金の支払手段について項目を追加
下請中小企業振興法に基づく振興基準等の改正を踏まえ、下請代金の支払手段に係る項目を追加し、下記内容について明記。
① 下請代金はできる限り現金払い
② 手形等による場合は、割引料を下請事業者に負担させることがないよう、下請代金の額を十分協議
③ 手形期間は120日を超えてはならないことは当然として、将来的に60日以内とするよう努力
○違反行為事例の充実
立入検査で多く見られる違反(のおそれのある)行為事例を追加。
○関係法令の改正への対応
平成28年6月1日施行の建設業法施行令の改正内容を反映させるため、帳簿の添付書類である施工体制台帳等の作成金額要件について改正。
適正な下請契約の在り方
近畿地方整備局
建設工事の下請契約締結までの標準的な手順は、以下のとおりです。
書面で依頼
内訳を明示
建設工事の当事者は、各々の対等な立場に おける合意に基づいてxxな契約を締結し、xxに従って誠実に これを履行する義務を負います。
(建設業法第18条)
着工前に交付
〔事例〕
① 元請負人が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により下請負人に見積りを行わせた
②
3日として下請負人に見積りを行わせた
元請負人が、予定価格が700万円の下請契約を締結する際、見積期間を
見積条件の提示
(法第20条第3項)
近畿地方整備局
上記①のケースは、法第20条第3項に違反する恐れがあり、
②のケースは違反に該当します。
元請負人は、下請契約を締結する以前に、工事の具体的内容を下請負人に提示し、その後、下請負人が見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられています。
建設業法第20条第3項(建設工事の見積り等)
建設工事の注文者は、請負契約の方法が随意契約による場合にあつては契約を締結する以前に、入札の方法により競争に付する場合にあつては入札を行う以前に、第19条第1項第1号 及び第3号 から第14号までに掲げる事項について、できる限り具体的な内容を提示し、かつ、当該提示から当該契約の締結又は入札までに、建設業者が当該建設工事の見積りをするために必要な政令で定める一定の期間を設けなければならない。
上記②の場合、予定価格が500万円を超えていることから、通常は10日以上の見積期間が必要です。
見積り依頼の方法 (法第20条第3項、施行令第6条)
近畿地方整備局
☞見積条件の提示に当たっては、下請契約の具体的内容を提示する
建設工事の請負契約を締結するにあたっては、請負金額の算定に当たり適正な見積りを実施することが必要です。
建設業法では、見積を依頼する際は、法第19条第1項のうち第2号(請負代金の額)を除く工事内容、工期等の事項について、できる限り具体的な内容を提示して依頼することを求めています。
施工条件が確定していないなどの正当な理由がないのに具体的な内容を示していない場合、法第20条第3項に違反します。
☞予定価格の額に応じて、一定の見積期間を設ける(施行令第6条)
①予定価格が500万円に満たない工事 1日以上
②予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事 10日以上
③予定価格が5,000万円以上の工事 15日以上
(ただし、②③についてはやむを得ない事情があるときは5日以内で短縮が可能)
☞下請契約の見積条件の内容は、書面で提示することが望ましい
〔事例〕
① 下請工事に関し、書面による契約を行わなかった
②
着手し、工事の施工途中又は工事終了後に契約書面を相互に交付した
元請負人からの指示に従い、下請負人が書面による請負契約の締結前に工事に
書面による契約締結①
(法第19条第1項)
近畿地方整備局
上記のケースは、いずれも法第19条第1項に違反します。
建設工事の請負契約は、請負代金の額を問わず、下請工事の着工前に書面により行うことが義務づけられています。
注文書・請書で契約する場合は、別途基本契約書を交わすか、基本契約約款を添付する必要があります。
建設業法第19条(建設工事の請負契約の内容)
建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。(以下略)
2 請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。
書面による契約締結② (法第19条第1項)
近畿地方整備局
☞契約は下請工事の着工前に書面により行う
☞契約書面には建設業法に定める一定の事項を記載する
建設工事の請負契約の当事者は、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして、相互に交付しなければなりません。
①工事内容(構造・仕様・数量等、下請負人の責任施工範囲、施工条件等を具体的に記載)
②請負代金の額
③工事着手・工事完成の時期
➃請負代金の全部又は一部の前払金又は出来高部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑤当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑥天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑦価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
Ⓑ工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑨注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑩注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑪工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑫工事の目的物の瑕疵を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑬各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
⑭契約に関する紛争の解決方法
契約書に記載しなければならない事項14項目。見積依頼時にも「②請負代金」を除いた13項目が必要。
書面による契約締結③ (法第19条第1項)
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☞注文書・請書による契約は一定の要件を満たすことが必要
●注文書・請書+基本契約書
1. 基本契約書には、注文書及び請書に記載される事項を除き法第19条第1項各号に掲げる事項を記載し、当事者の署名又は記名押印をして相互に交付する。
2. 注文書及び請書には、法第19条第1項第1号から第3号(前頁の1~3)に掲げる事項、その他必要な事項を記載する。
3. 注文書及び請書には、それぞれ注文書及び請書に記載されている事項以外の事項については基本契約書の定めによるべきことを明記する。
4. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は記名押印する。
●注文書・請書+基本契約約款
1. 注文書及び請書のそれぞれに、同一の内容の基本契約約款を添付又は印刷する。
2. 基本契約約款には、注文書及び請書の個別的記載事項を除き、法第19条第1項各号に掲げる事項を記載する。
3. 注文書又は請書と基本契約約款が複数枚に及ぶ場合には割印をする。
4. 注文書及び請書の個別的記載欄には、法第19条第1項第1号から第3号に掲げる事項その他必要な事項を記載する。
5. 注文書及び請書の個別的記載欄には、それぞれの個別記載欄に記載されている事項以外の事項については基本契約約款の定めによるべきことを明記する。
記名押印する。
両者の合意
注文者
(元請負人)
下請負人
注文書 請書
基本契約書がない場合は
注文書・請書の双方に 基本契約約款を添付してくださいね
署名・押印OK、
基本契約約款に割印もOKだ。
基本契約約款を
忘れずに、と。署名よし。
押印よし。
6. 注文書には注文者が、請書には請負者がそれぞれ署名又は
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追加工事 ・ 工期変更 (法第19条第2項)
近畿地方整備局
☞追加工事等の着工前に書面による契約変更が必要
追加工事等の発生により請負契約の内容を変更するときは、法第19条第2項により、追加工事等の着工前にその変更内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。
工事状況によりその都度変更契約を締結することが不合理な場合は、元請負人は、以下の事項を記載した書面を着工前に下請負人と取り交わし、追加工事等の内容が確定した時点で遅滞なく変更契約を行う必要があります。
① 下請負人に追加工事等として施工を依頼する工事の具体的な作業内容
② 当該追加工事等が契約変更の対象となること及び契約変更等を行う時期
③ 追加工事等に係る契約単価の額
☞工期変更にかかる工事の着工前に書面による契約変更が必要
工期を変更するときは、法第19条第2項により、工期変更にかかる工事の着工前にその変更内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。
下請工事に着手した後に工期が変更になった場合は、変更後の工期が確定した時点で遅滞なく変更契約を行う必要があります。
〔事例〕
① 元請負人が、自らの予算額のみを基準として、下請負人との協議を行うことなく、下請負人による見積額を大幅に下回る額で下請契約を締結した
②
ることなく、これにより積算した額で下請契約を締結した
元請負人が下請負人に対して、契約単価を一方的に提示し、下請負人と合意す
不当に低い請負代金① (法第19条の3)
近畿地方整備局
上記のケースは、いずれも法第19条の3に違反する恐れがあります。
注文者(元請負人)が、自己の取引上の地位を不当に利用して、通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結することは禁止されています。
建設業法第19条の3(不当に低い請負代金の禁止)
注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
不当に低い請負代金② (法第19条の3)
近畿地方整備局
☞自己の取引上の地位の不当利用とは
「自己の取引上の地位の不当利用」とは、取引上、優越的な地位にある元請負人が、下請負人を経済的に圧迫するような取引等を強いることです。
下請負人
注文者
(元請負人)
下請負人の保護と
適正な施工のため
このような下請契約をしてはいけません
この額で
請け負わないなら次から
注文しないよ
これでは
必要な原価に
達しません
このような下請契約を締結した場合、下請負人の経営の安定が阻害されるばかりでなく、工事の施工方法・工程等に無理な手段・期間等の採用を強いることになり、公衆災害や労働災害等の原因となるおそれがあります。
不当に低い請負代金③ (法第19条の3)
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☞法定福利費や労働災害防止対策経費は『通常必要と認められる原価』
健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入に際し建設業者が義務的に負担しなければならない法定福利費や、建設工事現場において元請負人及び下請負人がそれぞれの立場に応じて講じる労働災害防止対策経費についても、「通常必要と認められる原価」に含まれるものです。
よって、下請負人の見積書に法定福利費が明示され又は含まれているにもかかわらず、元請負人がこれを尊重せず、法定福利費を一方的に削除したり、実質的に法定福利費を賄うことができない金額で下請契約を締結し、その結果「通常必要と認められる原価」に満たない金額となる場合には、当該元請下請間の取引依存度等によっては、法第19条の3に違反する恐れがあります。
労働災害防止対策経費についても同様です。
○詳しくは「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」、
「元方事業者による建設現場安全管理指針(平成7年4月21日労働省基発第267号の2)」参照。
〔事例〕
① 元請負人が合理的根拠がないのにもかかわらず、下請負人による見積額を著しく下回る額で下請代金の額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結した
②
工事を着手させ、工事の施工途中又は工事終了後に元請負人が下請負人との協議に応じることなく下請代金の額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結した
元請下請間で請負代金の額に関する合意が得られていない段階で、下請負人に
指値発注 (法第19条の3)
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「指値発注」とは、元請負人が下請負人と十分な協議をせず又は下請負人との協議に応じることなく、一方的な請負代金の額を提示して、その額で請負契約を締結することをいいます。
指値発注は、元請負人としての優越的地位の不当利用に当たるものと考えられることから、法第19条の3に違反する恐れがあります。
〔事例〕
① 下請契約の締結後に、元請負人が下請負人に対して下請工事に使用する資材又は機械器具等を指定、あるいはその購入先を指定した結果、下請負人は予定していた購入価格より高い価格で資材等を購入することとなった
不当な使用資材等の購入強制 (法第19条の4)
近畿地方整備局
「不当な使用資材等の購入強制」が禁止されるのは下請契約の締結後における行為に限られます。
建設業法第19条の4(不当な使用資材等の購入強制の禁止)
注文者は、請負契約の締結後、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事に使用する資材若しくは機械器具又はこれらの購入先を指定し、これらを請負人に購入させて、その利益を害してはならない。
これは、注文者の希望するものを作ることが建設工事の請負契約の目的であることから、請負契約の締結に当たって、注文者(元請負人)が自己の希望する資材やその購入先等を指定することは当然のことであり、下請負人は、それに従って適正に見積りをすることができるため、その利益は害されないと考えられるためです。
〔事例〕
① 元請負人が、元請負人と下請負人の責任及び費用負担を明確にしないままやり直し工事を下請負人に行わせ、その費用を一方的に下請負人に負担させた場合
やり直し工事 (法第19条の3)
近畿地方整備局
やり直し工事を下請負人に依頼する場合、原因が当該下請負人の責めに帰すべき場合を除き、やり直し工事で生じた費用を一方的に下請負人に負担させることは、法第19条の3に違反する恐れがあります。
また、下請負人の責めに帰さないやり直し工事を下請負人に依頼する場合は、変更契約が必要です。
〔事例〕
① 元請負人が、下請負人と合意することなく、一方的に提供又は貸与した安全衛生保護具等に係る費用、下請工事の施工に伴って副次的に発生した建設廃棄物の処理費用及び下請代金を下請負人の銀行口座へ振り込む際の手数料等を下請負人に負担させ、下請代金から差し引く場合
赤伝処理① (法第20条第3項、第19条第1項、第19条の3)
近畿地方整備局
「赤伝処理」とは、元請負人が
① 一方的に提供・貸与した安全衛生保護具等の費用
② 下請代金の支払に関して発生する振込手数料等
③ 副次的に発生する建設廃棄物の処理費用
➃ 駐車場代、弁当等のごみ処理費、安全協力会費等を下請代金の支払時に差引く(相殺する)行為です。
赤伝処理を行う場合、その内容を見積条件、契約書面に明示していない場合は、法第20条第3項、第19条第
1項、第19条の3などに違反する恐れがあります。
赤伝処理② (法第20条第3項、第19条第1項、第19条の3)
近畿地方整備局
☞赤伝処理を行う場合は、元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要
赤伝処理を行うことが直ちに建設業法上の問題となることはありませんが、その内容や差引く根拠等について元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要であることに留意しなければなりません。
赤伝処理を行う場合には、元請負人は、その内容や差引額の算定根拠等について見積条件や契約書面に明示する必要があり、当該事項を見積条件に明示しなかった場合については法第20条第3項に、契約書面に記載しなかった場合については法第19条第1項又は第2項に違反します。
☞赤伝処理は下請負人との合意のもとで行い、差引額についても下請負人 の過剰負担となることがないよう十分に配慮する
赤伝処理は、下請負人に費用負担を求める合理的な理由があるものについて、下請負人との合意のもとで行えるものです。
よって、赤伝処理に当たっては、差引額の算出根拠、使途等を明らかにして、事前に下請負人と十分に協議を行うとともに、例えば、安全協力費については下請工事の完成後に当該費用の収支について開示するなど、その透明性の確保に努め、赤伝処理による費用負担が下請負人に過剰なものにならないよう十分に配慮することが必要です。
支払保留 ・ 支払遅延① (法第24条の3、法第24条の5)
近畿地方整備局
〔事例〕
① 下請工事が完成し、元請負人の検査及び引渡しを終了したが、工事全体が終了(発注者への完成引渡しが終了)するまでの長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わなかった
② 元請負人が注文者から請負代金の出来形部分に対する支払を受けたにもかかわらず、下請負人に対して、元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合に相応する下請代金を1ヵ月以内に支払わなかった
上記①のケースは法第24条の3及び法第24条の5に違反する恐れがあり、②のケースは法第24条の3に違反する恐れがあります。
工事が完成し、元請負人の検査及び引渡し終了後、正当な理由がないにもかかわらず、長期間にわたり保留金として下請代金の一部を支払わないことは、法第24条の3又は法第24条の5に違反します。
支払保留 ・ 支払遅延② (法第24条の3、法第24条の5)
近畿地方整備局
☞下請代金支払の原則(法第24条の3)
元請負人が注文者から請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、下請負人に対して、元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、 支払を受けた日から1ヵ月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければなりません。
建設業法第24条の3(下請代金の支払)
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、当該支払の対象となつた建設工事を施工した下請負人に対して、当該元請負人が支払を受けた金額の出来形に対する割合及び当該下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、当該支払を受けた日から1月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない。
支払保留 ・ 支払遅延③ (法第24条の3、法第24条の5)
近畿地方整備局
☞元請負人が特定建設業者の場合の支払義務(法第24条の5)
元請負人が特定建設業者であり下請負人が一般建設業者(資本金額が4,000万円以上の法人であるものを除く。)である場合、発注者から工事代金の支払があるか否かにかかわらず、下請負人が引渡しの申出を行った日から起算して50日以内で、かつ、できる限り短い期間内において期日を定め、下請代金を支払わなければなりません。
☞特定建設業者は「1ヵ月以内」と「50日以内」の早い方で支払う
特定建設業者は、法第24条の3に基づく支払義務と法第24条の5に基づく特定建設業者としての支払義務の両方の義務を負うことから、出来高払及び竣工払を受けた日から1ヵ月以内と、引渡しの申出日から50日以内のいずれか早い方で支払を行う必要があります。
建設業法第24条の5(特定建設業者の下請代金の支払期日等)
特定建設業者が注文者となつた下請契約(下請契約における請負人が特定建設業者又は資本金額が政令で定める金額以上の法人であるものを除く。以下この条において同じ。)における下請代金の支払期日は、前条第二項の申出の日(同項ただし書の場合にあつては、その一定の日。以下この条において同じ。)から起算して50日を経過する日以前において、かつ、できる限り短い期間内において定められなければならない。
2 特定建設業者が注文者となつた下請契約において、下請代金の支払期日が定められなかつたときは前条第二項の申出の日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは同条第二項の申出の日から起算して50日を経過する日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
(参考)
検査及び引渡し (法第24条の4第1項、第2項)
近畿地方整備局
☞完成通知後20日以内に検査、直ちに工事目的物の引渡し
元請負人は、下請負人から工事完成の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から 20 日以内でかつ、できる限り短い期間内にその完成を確認するための検査を完了し、下請負人から引渡しの申し出があったときは、直ちに工事目的物の引渡しを受けなければなりません。
建設業法第24条の4(検査及び引渡し)
元請負人は、下請負人からその請け負つた建設工事が完成した旨の通知を受けたときは、当該通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、その完成を確認するための検査を完了しなければならない。
2 元請負人は、前項の検査によつて建設工事の完成を確認した後、下請負人が申し出たときは、直ちに、当該建設工事の目的物の引渡しを受けなければならない。ただし、下請契約において定められた工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合には、この限りでない。
〔事例〕
① 特定建設業者である元請負人が、手形期間が120日を超える手形により下請代金の支払を行った
長期手形① (法第24条の5第3項)
近畿地方整備x
x請負人が特定建設業者である場合は、下請代金の支払に当たって一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはいけません。
(下請負人が特定建設業者又は資本金4,000万円以上の法人である場合を除く。)
手形期間120日を超える長期手形は、「割引を受けることが困難である手形」と認められる場合があります。
建設業法第24条の5(特定建設業者の下請代金の支払期日等)
3 特定建設業者は、当該特定建設業者が注文者となつた下請契約に係る下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない。
長期手形② (法第24条の5第3項)
近畿地方整備局
☞下請代金の支払は、できる限り現金によるものとすること
☞手形を併用する場合でも、労務費相当分については現金払とすること
元請負人が特定建設業者か一般建設業者かを問わず、下請代金の支払については、できる限り現金払とし、現金払と手形払を併用する場合であっても、支払代金に占める現金の比率を高めるとともに、少なくとも労務費相当分については、現金払としなければなりません。
〔事例〕
① 建設業を営む営業所に帳簿及び添付書類が備付けられていなかった
②
10年間保存されていなかった
発注者から直接請け負った建設工事の完成図等の営業に関する図書が、
帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存 (法第40条の3)
近畿地方整備局
上記のケースは、いずれも法第40条の3に違反します
建設業者は営業所ごとに帳簿を備え、5年間(新築住宅建設工事に係るものは10年間)保存しなければなりません。また、発注者から直接建設工事を請け負った場合は、営業所ごとに、営業に関する図書(完成図、打合せ記録、施工体系図)を10年間保存することが必要です
建設業法第40条の3(帳簿の備付け等)
建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所ごとに、その営業に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え、かつ、当該帳簿及びその営業に関する図書で国土交通省令で定めるものを保存しなければならない。
帳簿に記載すべき事項と添付書類 (規則第26条第1項、第2項)
近畿地方整備局
帳簿に記載すべき事項 (規則第26条第1項)
1.営業所の代表者の氏名及びその就任年月日
2.注文者と締結した建設工事の請負契約に関する次に掲げる事項
(1) 請け負った建設工事の名称、工事現場の所在地
(2) 注文者との契約日
(3) 注文者の商号・名称(又は氏名)、所在地、注文者が建設業者であるときは、その者の許可番号
(4) 注文者から受けた完成検査の年月日
(5) 工事目的物を注文者に引き渡した年月日
3.発注者と締結した住宅の新築工事の請負契約に関する次の事項
(1) 当該住宅の床面積
(2) 建設業者の建設瑕疵負担割合
(3) 発注者に交付している住宅瑕疵担保責任保険法人(資力確保措置を保険により行った場合)
4.下請契約に関する事項
(1) 下請負人に請け負わせた建設工事の名称、工事現場の所在地
(2) 下請負人との契約日
(3) 下請負人の商号・名称及び所在地、下請負人が建設業者であるときは、その者の許可番号
(4) 下請工事の完成を確認するために自社が行った検査の年月日
(5) 下請工事の目的物について下請業者から引き渡しを受けた年月日
注)特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限らない。)となって、一般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人企業を除く。)に建設工事を下請負した場合には、以下の事項についても記載が必要となります。
① 支払った下請代金の額、支払った年月日及び支払手段
② 支払手形を交付したときは、その手形の金額、交付年月日、手形の満期
③ 代金の一部を支払ったときは、その後の下請代金の支払残額
➃ 遅延利息の額・支払日(下請負人からの引き渡しの申出から50日を経過した場合に発生する遅延利息(年14.6%)の支払いに係るもの)
帳簿の添付書類 (規則第26条第2項)
1.契約書又はその写し(電磁的記録可)
2.特定建設業の許可を受けている者が注文者(元請工事に限らない。)となって、一般建設業者(資本金が4,000万円以上の法人企業を除く。)に建設工事を下請負した場合には、下請代金の支払済額、支払った年月日及び支払手段を証明する書類
(領収書等)又はその写し
3.建設業者が施工体制台帳を作成したときは(元請工事に限る。)、工事現場に据え付ける施工体制台帳の以下の部分。
(工事完了後に施工体制台帳から必要な部分のみを抜粋します。)
(1) 当該工事に関し、実際に工事現場に置いた監理技術者の氏名、有する監理技術者資格
(2) 監理技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名、その者が管理を担当した建設工事の内容、有するxx技術者資格
(3) 下請負人(末端までの全業者を指しています。以下同じ。)の商号・名称、許可番号
(4) 下請負人に請け負わせた建設工事の内容、工期
(5) 下請業者が実際に工事現場に置いたxx技術者の氏名、有するxx技術者資格
(6) 下請負人がxx技術者以外に専門技術者を置いたときは、その者の氏名、その者が管理を担当した建設工事の内容、有するxx技術者資格
工事の一括下請負(丸投げ)とは、工事を請け負った建設業者が、施工において実質的に 関与を行わず、下請負人にその工事の全部又は独立した一部を請け負わせることをいいます。建設業法では、これを「一括下請負」と呼び、原則として禁止しています。
建設業法が一括下請負を禁止している理由
◆ 発注者が建設業者に寄せた信頼を裏切る行為
◆ 施工責任があいまいになることで、手抜き工事や建設労働従事者の労働条件の悪化につながる
◆ 中間搾取を目的とした施工能力のない商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招く
発 注 者
元 請 負 人
下請契約
一次下請負人
下請契約
二次下請負人
一括して人に請け負わせてはいけません。
(第22条第1項)
一括して人から請け負ってはいけません。
(第22条第2項)
下請負間でも一括下請負は禁止!
一括下請負は、公共工事については全面禁止!民間工事についても原則禁止!
工事の一括下請負(丸投げ)禁止 (法第22条)
近畿地方整備局
●一括下請は、公共工事については、全面禁止されています。
●民間工事は、発注者の書面による事前承諾がある場合を除き、禁止されています。
ただし、一定の民間工事(共同住宅を新築する工事)については、一括下請が全面禁止されています。
①元請(発注者から直接請け負った者)が果たすべき役割
②下請(①以外の者)が果たすべき役割
施工計画の作成 | ○請け負った建設工事全体の施工計画書等の作成 ○下請負人の作成した施工要領書等の確認 ○設計変更等に応じた施工計画書等の修正 |
工程管理 | ○請け負った建設工事全体の進捗確認 ○下請負人間の工程調整 |
品質管理 | ○請け負った建設工事全体に関する下請負人 からの施工報告の確認、必要に応じた立会確認 |
安全管理 | ○安全確保のための協議組織の設置及び運営、作業場所の巡視等請け負った建設工事全体の労働安全衛生法に基づく措置 |
技術的指導 | ○請け負った建設工事全体におけるxx技術者の配置等法令遵守や職務遂行の確認 ○現場作業に係る実地の総括的技術指導 |
その他 | ○発注者等との協議・調整 ○下請負人からの協議事項への判断・対応 ○請け負った建設工事全体のコスト管理 ○近隣住民への説明 |
施工計画の作成 | ○請け負った範囲の建設工事に関する施工要領書等の作成 ○下請負人が作成した施工要領書等の確認 ○元請負人等からの指示に応じた施工要領書等の修正 |
工程管理 | ○請け負った範囲の建設工事に関する進捗確認 |
品質管理 | ○請け負った範囲の建設工事に関する立会確認(原則) ○元請負人への施工報告 |
安全管理 | ○協議組織への参加、現場巡回への協力等請け負った範囲の建設工事に関する労働安全衛生法に基づく措置 |
技術的指導 | ○請け負った範囲の建設工事に関する作業員の配置等法令遵守 ○現場作業に係る実地の技術指導※ |
その他 | ○元請負人との協議※ ○下請負人からの協議事項への判断・対応※ ○元請負人等の判断を踏まえた現場調整 ○請け負った範囲の建設工事に関するコスト管理 ○施工確保のための下請負人調整 |
一括下請負禁止の明確化について
近畿地方整備局
○「実質的に関与」とは、自ら施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、技術的指導等を行うことをいい、具体的な元請・下請の役割については以下のとおりです。
「一括下請負の禁止について(平成28年10月14日付国土建第275号)」
⇒ 元請は、以上の事項を全て行うことが求められる ⇒ 下請は、以上の事項を主として行うことが求められる
(注)※は、下請が、自ら請けた工事と同一の種類の工事について、
単一の建設企業と更に下請契約を締結する場合に必須とする事項 82
下請負人に対する特定建設業者の指導等 (法第24条の6)
近畿地方整備局
発注者から直接建設工事を請け 負った特定建設業者(元請)は、建設工事の下請負人が、その下請
負に係る建設工事の施工に関し、
法令等に違反しないよう指導
①建設業法
②建設工事の施工に関する法令
(建築基準法、宅地造成法等)
③建設工事に従事する労働者の使用に関する法令(労働基準法、職業安定法、労働安全衛生法等)
に違反しないよう
当該下請負人の指導に努める
ものとする。
(参考) 建設工事紛争審査会について
近畿地方整備局
建設工事紛争審査会(以下「審査会」という。)は、建設工事の請負契約をめぐるトラブルの解決を図る準司法機関として、国土交通本省と各都道府県に置かれています。
建設工事の請負契約をめぐる紛争の解決を図るためには、建設工事に関する技術、商慣行などの専門的な知識が必要となることが少なくありません。
審査会は、こうした建設工事の請負契約に関する紛争について、法律・建設技術・行政等の専門家から任命された委員が、xx・中立な立場に立って、迅速かつ簡便な解決を図ることを目的として、法第25条に基づいて設置された公的機関です。
審査会名 | 担当部局 | 住 所 | 電話番号 |
x x | 国土交通省土地・建設産業局建設業課紛争調整官室 | 〒100-0000 xxxxxxxxxx0-0-0 | 00-5253-8111( 内24764) |
xx県 | 土木部土木管理課建設業グループ | 〒900-0000 xxxxx0-07-1 | 0000-00-0000 |
滋賀県 | 土木交通部監理課建設業担当 | 〒500-0000 xxxxx0-0-1 | 077-528-4114 |
京都府 | 建設交通部指導検査課建設業担当 | 〒600-0000 xxxxxxxxxxxxxxxxxx | 000-451-8111(内5222) |
大阪府 | 住宅まちづくり部建築振興課建設指導グループ | 〒500-0000 xxxxxxxxxx0-04-16 | 00-0000-0000 |
兵庫県 | 県土整備部県土企画局総務課建設業室 | 〒600-0000 xxxxxxxxxx0-00-1 | 078-341-7711(内4576) |
奈良県 | 県土マネジメント部建設業・契約管理課 | 〒600-0000 xxxxxxx00 | 0002-27-5429 |
和歌山県 | 県土整備部県土整備政策局技術調査課建設業班 | 〒600-0000 xxxxxxxx0-0 | 073-432-4111(内3070) |
(注) ① 審査会は、建設業者を指導・監督したり技術的な鑑定を行う機関ではありません。
② 不動産の売買に関する紛争、専ら紛争に関する紛争、工事に伴う近隣者との紛争、直接契約関係にない元請・孫請間の紛争などは取り扱うこととができません。
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E-mail:xxx-xxxxxxxxxxX000@xxxx.xX.xx
※ナビダイヤルの通話料は発信者の負担となります。
【受付時間】10:00~12:00,13:30~17:00
(土日、祝日、閉庁日を除く)
●労務単価、品確法の運用指針、社会保険加入対策などの建設業に関する様々な相談を総合的に受け付けます。
●加えて、建設業法令遵守ガイドラインの内容や、取引に関する法令上の規定などを確認したい場合の相談も受け付けます。
センター
東京
【受付時間】9:30~17:00土日、祝日、年末年始を除く)
●元請・下請xxの取引で「困ったことが起きたが、どうしたら良いかわからない」という方には、その解決方法をアドバイスし、「どこに相談したら良いかわからない」という方には、相談先である関係行政機関、紛争処理機関等をご紹介します。
建設業フォローアップ相談ダイヤル 検 ❹
建設業取引適正化センター 検 ❹
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センター
大阪
※ナビダイヤルの通話料は発信者の負担となります。
【受付時間】10:00~12:00,13:30~17:00
(土日、祝日、閉庁日を除く)
● 主に国土交通大臣許可業者を対象に建設業に係る法令違反行為の通報を受け付けます。
● 法令違反の疑いがある建設業者には、必要に応じ立入検査などを実施し、違反行為があれば指導監督を行います。
駆け込みホットライン 検 ❹
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最新の建設業法関連通達、ガイドライン、マニュアルは、国交省のホームページにて御確認下さい。
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関係通達、ガイドライン、マニュアル
近畿地方整備局
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『建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者』『適正な下請契約に向けて』等のパンフレットは、近畿地方整備局ホームページよりダウンロードできます。
(参考) 建設業法関係パンフレットについて
近畿地方整備局
①トップページの「まちづくり・建設産業」を開く
②建政部ページの右側バナーにパンフレットを公開
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