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中国外資企業の労働契約の解除について
xxxx・xx法律事務所 x xx 弁護士
中国における外資企業(いわゆる「三資企業」。以下「企業」)が労働者との間で締結した労働契約の終了又は解除時の理由および経済補償金支給の有無などについては、企業の人事労務管理担当者は中国法の規定に基づき、適切に対応しなければならない。
1. 労働契約の終了
労働契約の有効期間満了または当事者双方が約定した労働契約終了条件が生じた時、労働契約は直ちに終了する。
但し、下記「企業による即時解除」に述べた状況を除き、労働者が病気療養期間、妊娠期間、出産期間、授乳期間に労働契約の期限が満了したときは、企業は労働契約を終了させてはならない。労働契約の期間を自動的に延期し、病気療養期間、妊娠期間、出産期間、授乳期間の満了を待って終了させなければならない。
2. 労働契約の解除
労働契約の解除は、法定解除と約定解除との二種類がある。中国労働法の規定に基づき、労働契約の当事者の一方が法により解除することができ、双方が協議して解除することもできる。
(1)合意解除
労働契約当事者双方の協議による合意を経て、労働契約を解除することができる。
(2)企業による解除
A.企業による即時解除
労働者に次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合、企業は、労働契約を解除することができる。
* 試用期間中に採用条件に適合しないことが証明されたとき。
* 労働規律または企業の定める規則制度に著しく違反したとき。
* 職務怠慢または不正利得行為により、企業の利益に対して重大な損害をもたらしたとき。
* 法により刑事責任を追及されたとき。
B.企業が30日前までの通知により労働契約の解除
次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合、企業は労働契約を解除することができる。但し、30日前までに書面により労働者本人に通知しなければならない。
* 労働者が病気を患い、または仕事外の理由により負傷した場合において、医療期間満了の後に元の仕事に従事することができず、企業が別に手配 した仕事にも従事できないとき。
* 労働者が仕事に堪えることができず、訓練または職位の調整を経てもなお仕事に堪えることのできないとき。
* 労働契約締結の際に根拠とした客観的状況に重大な変化が生じ、元の労働契約を履行することができず、当事者双方の協議を経ても労働契約の変更につき合意に達することができないとき。
C.整理解雇
企業が、破産寸前の法定整理を行う期間にあるか、または生産経営状況において重大な困難が生じて確実に人員の削減を必要とする場合は、30日前までに労働組合または全従業員に対して状況を説明し、労働組合または従業員の意見を聞かなければならず、現地の労働行政機関(以下「現地の労働局」)に対して報告した後に人員の削減をすることができる。
D.解除の禁止
労働者に次の各号に掲げる事由のいずれかがある場合、企業は、前述した「企業による30日前の通知での労働契約解除」及び「整理解雇」の事由により労働契約を解除してはならない。
* 職業病を患い、または仕事上の理由により負傷し、かつ労働能力の全部または一部を喪失したことが確認されたとき。
* 病気を患い、または仕事外の理由により負傷し、規定の医療期間内であるとき。
* 女子従業員の妊娠期間、出産期間または授乳期間内であるとき。
* 法律及び行政法規の定めるその他の事由。
E.企業の即時解雇権の優先
上記の「解除の禁止」に定める状況が存在しても、上述した「企業による即時解除」に定める4種の状況のいずれかが同時に存在すれば、企業は即時解雇の法的規定に基づき労働契約を解除することができる。
F.長期病気療養者への対応
長期休暇を認められた労働者が病気療養期間の終了後に、従来の仕事に復帰でき
るときは、引き続き労働契約を履行することができる。病気療養期間の終了後に、従来の仕事に復帰することができず、また企業が準備する他の仕事にも従事することができないときは、労働鑑定委員会が労働災害及び職業病による身体障害の程度の鑑定基準を参考に、その労働能力を鑑定する。1級から4級と鑑定されたときは、職場を離れ、労働関係を解除し、病気、または仕事外の負傷による定年前退職手続きをとり、相応の定年前退職の給付を受ける。5級から10級と鑑定されたときは、企業は労働契約を解除することができ、規定により経済補償金及び医療補助金を支払う。
(※長期病気療養者とは、病気を患い、または仕事外の理由により負傷して、一般的に6ヶ月以上の治療期間を要する者と見なされている。なお、中国の労働法には「長期」を明示する規定はないため、ここでは、長期を6ヶ月以上と見なしている上海市労働局の解釈を引用。
職業病を患い、または仕事上の理由により負傷し、かつ労働能力の全部または一部を喪失した者についても、病気療養期間の終了後に労働鑑定委員会の鑑定基準に基づいて対応する必要がある。)
(3) 労働者による解除
A.労働者の退職手続き
労働者が労働契約を解除する場合は、30日前までに書面により企業に通知しなければならない。30日が過ぎたときは、労働者は企業に対して労働契約の解除手続きをとり、企業は処理手続きをとる。労働者が違法に労働契約を解除して元の企業に経済的損失を与えたときは、賠償責任を負わなければならない。
B.労働者による即時解除
次の各号事由のいずれかに該当する場合は、労働者は随時、労働契約を解除する
ことができる。
* 試用期間内にあるとき。
* 企業が、暴力、脅迫または不法に労働者の人身自由を制限する手段により労働を強制するとき。
* 企業が、労働契約に約定する通りに労働報酬を労働者に支払わず、または労働条件を提供しないとき。
3.経済的補償
(1) 労働契約終了時の補償金不払
労働契約の期間が満了または当事者双方が約定した労働契約の終了条件が認め られたときは、労働契約は直ちに終了し、企業は労働者に経済補償金を支払わないことができる。国に別段の規定があるときは、その規定に従うことができる。
(2) 解雇時の補償金の支払
上述した「合意解除」、「企業が30日前までの通知による労働契約の解除」及び
「整理解雇」に基づき労働契約を解除する場合は、関係法律に従い、経済補償金を労働者に与えなければならない。
経済補償金の金額については、労働者の企業での勤務年数に基づき計算し、一年間の勤務につき一ヶ月の賃金(労働契約解除前12ヶ月の平均月給)を支払い、多くとも12ヶ月分の経済補償金を超えない。但し、勤務期間が一年未満の場合、一年の基準に基づき経済補償金を支払う。
(3)解雇時の補償金不払
上述した「企業による即時解除」の場合、企業は労働者に対して経済補償金を支
払わないことができる。
(4)定年に近づいた時の退職者の扱い
従業員が定年退職年齢に近づいた時(関係の規定により、通常5年以内とされる)に、労働契約の期限が到来し、労働契約を終了する場合において、定年退職または定年前退職条件を満たしているときは、定年退職または定年前退職手続きをとることができる。定年退職または退職条件を満たしていないときは、労働契約の終了後に、規定に基づき失業救済金を受給する。失業救済金の受給期間満了後にあっても就業していない場合において、社会保障の条件を満たすときは、規定に従い社会保障金を受給することができ、定年退職年齢に達したときは、定年退職手続きをとり、養老保険金を受給する。
(5)補償金などの全額支給義務
労働契約の解除後、企業は規定に合致する労働者に対して経済補償金を支払わなければならない。労働者が失業救済金を受給していることを理由に、経済補償金の支払を拒否、または一定額を法令の規定によらなかったり、または本人の同意を得ずに控除してはならず、失業保険機構においても、労働者が経済補償金を受領したことを理由に、失業救済金の支給を停止し、または減額してはならない。
4.労働契約の解除に関する法律責任
(1)労働契約の解除に関する企業の法律責任
企業が法律に定める条件に違反して労働契約を解除した場合、現地の労働局が是正を命じ、労働者に対して損害をもたらした場合は、賠償責任を負わなければならない。
(2)労働者による違法退職の賠償責任
労働者が労働法の規定または労働契約の約定に違反して労働契約を解除し(同意を得ずに離職するなど)、企業に経済的損失を与えたときは、法的規定に基づき賠償責任を負わなければならない。
(3)労働契約の解除に関する労働者の法律責任
労働者が法律に定める条件に違反して労働契約を解除、または労働契約に約定する秘密保持事項に違反したり、企業に対して経済的損失をもたらした場合は、法により賠償責任を負わなければならない。
5.まとめ
予告期間 | 経済補償金 | |
「合意解除」 | 双方の協議による | 支払 |
「即時解除」 | 不要 | 支払なし |
「30 日前までの通知解除」 | 必要 | 支払 |
「整理解雇」 | 必要 | 支払 |
(1)企業による労働契約解除の場合の予告又は/及び経済補償金の支払については、次の通りまとめる。
予告期間 | 経済補償金 | |
「退職手続」 | 必要 | 支払なし |
「即時解除」 | 不要 | 支払なし |
(2)労働者による労働契約解除の場合の予告又は/及び経済補償金の支払については、次の通りまとめる。