Contract
建設工事請負契約約款第 26 条第6項(インフレスライド条項)
運用マニュアル(暫定版)
令和5年1月
x x 市
改定履歴
年月 | 区分 | 備考 |
平成 26 年2月 | 制定 | |
令和5年1月 | 改定 | 〇マニュアル改定 ・適用対象を賃金水準の変動のみから賃金又は物価水準の変動へ拡大 〇様式改定 ・同上 ・元号の改元及び消費税率の改正等に伴う表記の適正化 |
はじめに
本資料は「xx市建設工事請負契約約款第26条第6項(インフレスライド条項)の運用の改定について」(令和5年1月 日付け通知)の具体的な運用方法についてのマニュアルとなっています。
マニュアル制定時は賃金等の急激な変動に対処するためとして、適用対象を賃金水準の変動のみとしていましたが、昨今の資材価格高騰を受け、物価水準の変動へも適用できるよう改定を行うものです。
本資料の運用にあたっては、賃金水準や資材価格動向を把握し、全体・単品スライド条項適用の可否の判断等も含め、状況に応じた適切な執行をお願いします。
1 適用対象工事
(1)xx市が発注した工事であること。
(2)インフレスライド条項の請求は、2.(3)に定める残工期が2ヶ月以上あること。
・全体スライド、単品スライド及びインフレスライドの比較
項目 | 全体スライド (約款第26条第1項から第4項) | 単品スライド (約款第26条第5項) | インフレスライド (約款第26条第6項) | |
適用対象工事 | 工期が12ヶ月を超える工事 但し、残工期が2ヶ月以上ある工事 (比較的大規模な長期工事) | すべての工事 但し、残工期が2ヶ月以上ある工事 | すべての工事 但し、残工期が2ヶ月以上ある工事 (本通知発出時点で継 xxの工事及び新規契約工事) | |
請負額変更の方法 | 対象 | 請負契約締結の日から 12ヶ月経過後の残工事 量に対する資材、労務単価等 | 部分払いを行った出来形を除く全ての資材(鋼 材類、燃料油類等の主要資材) | 基準日以降の残工事量に対する資材、労務単価等 |
負受担発 注者の | 残工事費の1.5% | 対象工事費の1.0% (但し、全体スライド又はインフレスライドと併用の場合、全体スライド又はインフレスライド適用期間における負 担はなし) | 残工事費の1.0% (約款31条「天災不可抗力条項」に準拠し、建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう定められた 「1%」を採用。) | |
再スライド | 可能 (全体スライド又はインフレスライド適用後、12ヶ月経過後に適用可能) | なし (部分払いを行った出来形部分を除いた工期内全ての資材を対象に、精算変更契約後にスライド額を算出するため、再スライドの必要がな い) | 可能 |
2 請求日及び基準日等について
請求日及び基準日等の定義は、以下のとおりとする。
(1)請求日:スライド変更の可能性があるため、発注者又は受注者が請負代金額の変更の協議(以下「スライド協議」という。)を請求した日とする。
(2)基準日:請求があった日から起算して、14日以内で発注者と受注者とが協議して定める日とし、請求日とすることを基本とする。
(3)残工期:基準日以降の工事期間とする。
・請求日について
請求に際しては、残工期が基準日(請求日から14日以内の範囲で定める)から2ヶ月以上必要であることに留意すること。
・基準日について
発注者と受注者とが協議して定める基準日は、請求日を基本とするが、これにより難い場合は、請求日から14日以内の範囲で定める。
・残工期について
残工期ついては、基準日における契約工期の残工事期間を基本とするが、基準日までに変更契約を行っていない場合でも先行指示により工期延期が明らかな場合には、その工期延期期間を考慮することができる。
3 スライド協議の請求
発注者又は受注者が行うスライド協議の請求は、書面により行うこととする。
・スライド協議の請求について
発注者又は受注者からのスライド協議の請求は、書面(別紙様式1-1又は1-2)により行うこととする。
また、基準日設定後に新たに賃金水準又は物価水準の変動が生じ、かつ、残工期が新たな基準日から2ヶ月以上ある場合には、その都度スライド協議の請求をすることができる。
・スライド額協議開始日について
発注者は、受注者の意見を聴いてスライド額協議開始日を定め、請求日から7日以内に受注者に書面(別紙様式2)により通知する。
・実施フローについて
別紙「建設工事請負契約約款第26条第6項に伴う実施フロー」を参照すること。
4 請負代金額の変更
(1)賃金水準又は物価水準の変動による請負代金額の変更額(以下「スライド額」という。)は、当該工事に係る変動額のうち請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額の100分の1に相当する金額を超える額とする。
(2)増額スライド額については、次式により行う。 S増=[ P2-P1-(P1×1/100)]
この式において、S増、P1及びP2は、それぞれ次の額を表すものとする。 S増:増額スライド額
P1:請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額
P2:変動後(基準日)の賃金又は物価を基礎として算出したP1に相当する額
(P=Σ(α×Z)、α:請負費率、Z:官積算額)
(3)減額スライド額については、次式により行う。 S減=[ P2-P1+(P1×1/100)]
この式において、S減、P1及びP2は、それぞれ次の額を表すものとする。 S減:減額スライド額
P1:請負代金額から基準日における出来形部分に相応する請負代金額を控除した額
P2:変動後(基準日)の賃金又は物価を基礎として算出したP1に相当する額
(P=Σ(α×Z)、α:請負費率、Z:官積算額)
(4)請負代金額の変更は、労務単価、材料単価、機械器具損料並びにこれらに伴う共通仮設費、現場管理費及び一般管理費等の変更について行われるものであり、歩掛の変更については考慮するものではない。
・受注者負担の割合
受注者の負担割合については、建設工事契約請負約款第31条の「不可抗力による損害」に準拠し、建設業者の経営上最小限度必要な利益まで損なわないよう定められた
「100分の1」としている。
・複数回スライドを行う場合について
スライド請求を複数回行う場合におけるスライド額の算出も上記に基づき同様に実施するものとする。なお、その場合基準日における請負代金額には、それまでに実施したスライド額を含むものとする。
・端数処理について
P1、P2:1円未満切捨て
P1×1/100:1円未満切上げ(減額スライドの場合は切捨て) S:千円未満切捨て
※いずれも税抜き
5 残工事量の算定
(1)基準日における残工事量を算定するために行う出来形数量の確認は、数量総括表に対応して出来高確認を行うこと。
(2)基準日までに変更契約を行っていないが先行指示されている設計量についても、基準日以降の残工事量についてはスライドの対象とすること。
(3)現場搬入材料については、認定したものは出来形数量として取り扱うこと。また、下記の材料等についても出来形数量として取り扱うこと。
・工場製作品のうち、工場での確認又はミルシート等で在庫確保が証明できる材料。
・基準日以前に配置済みの現地据付型の建設機械及び仮設材料等(架設用クレーン、仮設鋼材など)。
・契約書にて工事材料契約の完了が確認でき、近隣のストックヤード等で在庫確認可能な材料。
(4)数量総括表で一式明示した仮設工についても出来形数量の対象とできる。
(5)出来形数量の計上方法については、発注者側に換算数量がない場合は、受注者側の当該工種に対する構成比率により出来形数量を算出してもよい。
(6)受注者の責めに帰すべき事由により遅延していると認められる工事量は、増額スライドの場合は、出来形部分に含めるものとし、減額スライドの場合は、出来形部分に含めないものとする。
・出来形数量等の確認方法について
基準日における工事の出来形数量の確認については、通知本文 記5に基づき実施することを基本とする。
本通知に基づくスライド請求を複数回行う場合、2回目以降の基準日における出来
形数量の確認方法は、1回目の基準日における確認方法と原則同じ方法によることとする。
・出来形数量等の確認時期について
発注者は、請求日から14日以内に出来高確認を行う。
6 物価指数
発注者は、積算に使用する単価を用いた変動率を物価指数とすることを基本とする。なお、受注者の協議資料等に基づき双方で合意した場合は別途物価指数を用いること
ができる。
・積算に使用する単価について
変動後の価格を算定する際に用いる材料単価等については、発注者が積算に使用している物価資料等の基準日における価格を基礎とする。
・基準日における特別調査又は見積価格採用単価について
再調査や再見積に多大な労力又は日数を必要とする場合には、当初積算時の類似単価の物価変動率により算定することができる。ただし、当該材料等の工事費全体に占める割合が大きい場合は、別途考慮する。
7 変更契約の時期
スライド額に係る契約変更は、精算変更時点で行うことができる。
・精算変更時で行う場合
スライド額にかかる契約変更を精算変更時点で行う場合は、スライド基準日における出来形数量を確認し、残工事量を受発注者間で確認すること。
8 全体スライド及び単品スライド条項の併用
(1)建設工事請負契約約款第26条第1項から第4項までに規定する全体スライド条項に基づく請負代金額の変更を実施した後であっても、本通知によるスライドを請求することができる。
(2)本通知に基づき請負代金額の変更を実施した後であっても、建設工事請負契約約款第26条第5項に規定する単品スライド条項に基づく請負代金額の変更を請求することができる。
・建設工事契約請負約款第26条6項に規定するインフレスライド条項は、材料価格を
含む物価や賃金等の変動に伴う価格水準全般の変動について対応するものであることから、単品スライド条項の適用となっている材料を含めて、まずインフレスライド条項によるスライド額を算出することが基本となる。その上で、インフレスライド条項との重複を防止するため、インフレスライド条項の適用日の単価として単品スライド額を算出することとなる。
・また、インフレスライド条項と単品スライド条項とをそれぞれ単独で考えれば、前 者においては残工事費の1%、後者においては対象工事費の1%、それぞれで受注者 の負担が生じることとなる。両スライドルールをそのままそれぞれ適用した場合には、受注者にリスクを重複して負担させることになり、結果的にリスク負担が過大なもの となる。
・このような過大なリスク負担を回避するため、単品スライド条項のみが適用される期間においては当該機関の工事費の1%を受注者の負担とするが、インフレスライド条項の適用により受注者が負担する残工事費の1%をもって既に単品スライド条項に係る1%分の負担を求めないこととした。
・さらに、単品スライド条項に係る対象工事費は基本的には最終的な全体工事費であり、インフレスライド条項と併用した場合の対象工事費はインフレスライド条項に係るスライド額を含む変更後の総価となる。
<参 考>
・建設工事請負契約約款第26条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変動)
全体
スライド
単品
スライド
インフレスライド
第26条 発注者又は受注者は、工期内で請負契約締結の日から12箇月を経過した後に日本国内における賃金水準又は物価水準の変動により請負代金額が不適当となったと認めたときは、相手方に対して請負代金額の変更を請求することができる。
2 発注者又は受注者は、前項の規定による請求があったときは、変動前残工事代金額(請負代金額から当該請求時の出来形部分に相応する請負代金額を控除した額をいう。以下この条において同じ。)と変動後残工事代金額(変動後の賃金又は物価を基礎として算出した変動前残工事代金額に相応する額をいう。以下この条において同じ。)との差額のうち変動前残工事代金額の1000分の15を超える額につき、請負代金額の変更に応じなければならない。
3 変動前残工事代金額及び変動後残工事代金額は、請求のあった日を基準とし、物価指数等に基づき発注者と受注者が協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
4 第1項の規定による請求は、本条の規定により請負代金額の変更を行った後再度行うことができる。この場合においては、同項中「請負契約締結の日」とあるのは「直前の本条に基づく請負代金額変更の基準とした日」と読み替えて同項の規定を適用するものとする。
5 特別な要因により工期内に主要な工事材料の日本国内における価格に著しい変動を生じ、請負代金額が不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定によるほか、請負代金額の変更を請求することができる。
6 予期することのできない特別の事情により、工期内に日本国内において急激なインフレーション又はデフレーションを生じ、請負代金額が著しく不適当となったときは、発注者又は受注者は、前各項の規定にかかわらず、請負代金額の変更を請求することができる。
7 前2項の場合において、請負代金額の変更額については、発注者と受注者が協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合にあっては、発注者が定め、受注者に通知する。
8 第3項及び前項の協議開始の日については、発注者が受注者の意見を聴いて定め、受注者に通知しなければならない。ただし、発注者が第1項、第5項又は第6項の請求を行った日又は受けた日から7日以内に協議x xの日を通知しない場合には、受注者は、協議開始の日を定め、発注者に通知することができる。