Contract
各 位
株式会社八十二銀行
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」第 3 号案件について
八十二銀行(頭取 xx xx)と一般財団法人長野経済研究所(理事長 xx xx)は、「ポジティブ・インパクト・ファイナンス(注)」の融資契約を株式会社ミールケア(代表取締役 x xx)と締結しましたので、以下のとおりお知らせします。
(注)企業活動が環境・社会・経済のいずれかの側面に与えるインパクトを包括的に分析し、特定され たポジティブインパクトの増大とネガティブインパクトの減少に向けた取組みを支援する融資手法。企業による SDGs 達成への貢献度合いを評価指標とし、その過程を開示します。
1. 概要
x | 約 | 日 | 2022 年 12 月 8 日(木) |
契約先 | 名称 | 株式会社ミールケア | |
所在地 | xxxxx 000 xx 0 | ||
設立年月日 | 平成 2 年 12 月 12 日 | ||
資本金 | 4,459 万円 | ||
金 | 額 | 70 百万円 | |
資 金 使 途 | 設備資金 | ||
モニタリング | 八十二銀行および一般財団法人長野経済研究所は、ポジティブインパクト金融原則に基づき構築した実施態勢に従い、インパクト評価を踏まえ株式会社ミールケアが設定した KPI を、融資期間中におけるパフォーマンスとしてモニタリングします。 | ||
評価の対象 | 株式会社ミールケア |
2. 株式会社ミールケアの取組み(※ 詳細は別紙をご参照ください。)
(1) 株式会社ミールケアは「”嬉しさ”を実感できる会社をつくります。」を経営理念に、また「ミールケアの「給食道」を通し、世界中の人たちを健康に導きます。」を経営ビジョンに掲げ、給食事業、自園サポート・食育事業、物販販売、外食事業等をされています。
(2) インパクト評価では、ポジティブインパクトが期待できる主な活動として、栄養士等公的資格取得支援や資格保有者のスキル向上研修の開催等による「正しい知識・スキルに基づく質の高い食育事業の展開」、考食師による食育推進活動や食文化体験の提供による「食育を通じた食文化の伝承」等が挙げられました。
(3) ネガティブインパクトを低減する活動としては、HACCP に基づく食品衛生管理による「食の安全性維持と必要量の安定供給」や、地域の規格外野菜の使用やシステム構築によるフードロスの可視化による「環境負荷軽減」に取り組まれます。
以 上
評価対象兼借入人 株式会社ミールケア貸付人 株式会社八十二銀行
評価書作成者 一般財団法人長野経済研究所評価基準日 2022 年 11 月 11 日
目次
Ⅰ.はじめに 1
Ⅱ.企業概要 2
1.基本情報
2.沿革
3.事業拠点
4.関連組織
5.事業セグメントおよび売上構成
6.新規開始予定の飲食事業概要
Ⅲ.経営理念等の事業活動への展開 6
1.社是・経営理念等
2.安全・品質・衛生管理等への取り組み
3.SDGs への主な取り組み
4.地域社会への貢献
Ⅳ.サステナビリティへの取り組み 10
1.社会面
2.環境面
3.経済面
Ⅴ.包括的分析およびインパクトの特定 13
1.業種別インパクトの状況
2.国別インパクトの状況
3.インパクトレーダーチャート
4.特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動等との関連性
5.インパクトの特定
Ⅵ.特定したインパクトと設定 KPI 17
1.ポジティブ・インパクトの伸長・拡大
2.ネガティブ・インパクトの緩和・低減
Ⅶ.インパクト管理体制 22
Ⅷ.モニタリング方法 22
Ⅸ.総合評価 22
本評価書に関する重要な説明 23
I. はじめに
一般財団法人xx経済研究所は株式会社八十二銀行が株式会社ミールケアに対してポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施するに当たって、(株)ミールケアの活動が、社会・環境・経済に及ぼすインパクト(ポジティブな影響およびネガティブな影響)を分析・評価した。
分析評価は、株式会社日本格付研究所の協力を得て、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI )が策定した「ポジティブ・インパクト金融原則」および ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブ・インパクト・ファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に則っている。
本ファイナンスの概要
契約期間 | 2022 年 12 月8日~2029 年 11 月 25 日 |
金額 | 70,000,000 円 |
資金使途 | 設備資金 |
モニタリング期間 | 7年間 |
Ⅱ.企業概要
1.基本情報
会社名 | (株)ミールケア |
本社所在地 | xxxxxxxx 000 xx1 |
代表取締役社長 | x xx |
創業 | 1990 年 |
資本金 | 4,459 万円 |
事業内容 | 給食事業、自園サポート・食育事業、外食事業、物販事業 |
単体売上高 | 7,782 百万円(2022 年3月期) |
従業員数 | 1,759 人(男性 234 人・女性 1,525 人)(2022 年 10 月末) |
2.沿革
年 | 概要 |
1990 年 | xx県xx市内において(有)xxヒューマンシステムを設立し、創業 |
1994 年 | 持ち帰り弁当事業開始 |
1997 年 | 仕出し弁当事業に特化し、(有)サンテ長野に商号変更 |
1998 年 | 医療機関・介護福祉施設での給食事業受託開始 |
2000 年 | (株)ミールケアに商号・組織変更 |
2001 年 | HACCP 認証取得 |
2002 年 | 幼稚園・保育園での給食事業受託開始 |
2007 年 | 食育事業開始 |
2013 年 | こうしょくし 社内認定資格「考食師※」認定制度開始 ※考食師:P8Ⅲ.3.(2)にて説明 |
2015 年 | 環境省主催 Good Life Award にて「環境と食農」特別賞受賞 |
2016 年 | xx県xx市穂保に自然食ビュッフェレストランを出店し、複合拠点として「み~る んヴィレッジ」を開設、当拠点敷地内でパンの製造・販売も開始 |
同年 | 「考食師」の育成・認定等を目的に、一般財団法人日本 educe 食育総合研究所を設立 |
同年 | 日本生産性本部等主催日本サービス大賞にて経済産業大臣賞受賞 |
2017 年 | 「み~るんヴィレッジ」内に本社移転 |
同年 | xx県 SDGs 推進企業登録(制度第1期登録) |
同年 | 経済産業省から「地域xx牽引企業」に選定 |
2018 年 | 中小企業庁から「はばたく中小企業・小規模事業者 300 社」に選定 |
2019 年 | 台風 19 号の水害により、本社を含め「み~るんヴィレッジ」全体が被災 |
2021 年 | 「み~るんヴィレッジ」内に本社、パン工場、およびベーカリーショップ設置 |
同年 | パン工場を対象サイトとして HACCP 認証を取得 |
2022 年 | 日本能率協会主催 KAIKA Awards にて KAIKA 大賞受賞 |
(12 月予定) | 「み~るんヴィレッジ」内に「信州ビュッフェレストランみーるマ~マ」を開業 |
3.事業拠点
種類 | 名称(所在地) |
営業拠点 | 本社(xx県xx市)、東京オフィス(xxx中央区)、大阪オフィス(大阪府xx 市)、松本オフィス(xx県xx市)、その他サテライトオフィス |
複合拠点 | 拠点名:み~るんヴィレッジ(xx県xx市) 拠点内施設:本社、パン工場、ベーカリーショップ、体験農場、教育・研究施設 |
教育・研究拠点 | (一財)日本 educe 食育総合研究所(xx県xx市) |
▲複合拠点「み~るんヴィレッジ」全景
4.関連組織
名称 | 住所 | 当社事業との関連 |
(一財)日本 educe 食育総合研究所 | xx県xx市 | 資格認定、食育研究等 |
(株)まつりや(菓子製造販売業) | xx県上水内xxx町 | 商品開発の連携 |
5.事業セグメントおよび売上構成
事業 セグメント | 主要製品・サービス | 売上構成 (%) (2022 年3月期) |
給食事業 | 【委託元】幼稚園、保育園、医療福祉施設、一般企業等 【受託形態】当社従業員による献立作成から受託元での調理・食事提供まで、一貫して受託。 ・ xx県を中心に全国 357 カ所の施設で 67,000 食/日の給食を提供。 ・ 管理栄養士を配置し、年間を通じた食育計画の下で独自の献立作成を行い、給食と食育の一体化を進めている。 ・ 医療福祉施設においては、病院・特別食等の多様な献立にも対応。 | 90.2 |
自園※サポート・ 食育事業 | 【委託元】幼稚園、保育園、認定こどもxx 【受託形態】当社では食育・栄養指導・献立提供まで受託し、調理・食事提供は委託元調理スタッフによる。 ・ 全国 157 カ所の施設に対し、サポート実施中。 ・ 献立作成、食材発注、衛生管理、労務管理、アレルギー対策、食育等に関する自社技術・ノウハウを提供。 ・ 当社有資格者(考食師)による受託元での食育・食文化伝承について の講演・授業を開催。 | 7.0 |
物販事業 | ・ 給食事業からの派生事業で、商品開発から販売まで当社独自開発の食品を扱う。 ・ み~るんヴィレッジ内のベーカリーショップのほか、EC サイトも運営。 ・ 自社パン工場は、アレルゲン・グルテンフリーに対応。 | 1.5 |
外食事業 | ・ xx市内のホテルレストランでの料理提供の受託 | 1.3 |
※自園:幼稚園・保育園等
6.新規開始予定の飲食事業概要
当社では 2022 年 12 月上旬に新たな複合拠点(み~るんヴィレッジ)事業の一環として、飲食店舗(ビュッフェレストラン)の開業を予定している。本事業は、2019 年の台風 19 号による大規模被災からの復興のシンボルとして位置付け、複合拠点の利用者全てにおいしさ、楽しさ、幸せを感じてもらい、持続可能性を具現化する体験価値の提供を目指すものである。以下は、計画中の事項も含めた新規開業する飲食店舗の概要である。
▲新規開業予定飲食店舗のロゴ
開店予定日 | 2022 年 12 月9日(金) |
開業場所 | み~るんヴィレッジ(xx県xx市) |
店舗名 | 信州ビュッフェレストランみーるマ~マ |
客席数 | 約 170 席 |
メニュー等 | ・ビュッフェ形式メニュー ・近隣農家や自社農園で栽培した地元自然食材を利用 ・規格外野菜のメニュー化 ・食器類は地域素材や地域製品を使用 |
ターゲット年代 | ファミリー世代からシルバー世代まで幅広く想定 |
コンセプト | ・ 当社独自の自然食材の提供、おふくろの味の伝承 ・ LIVE キッチンの導入 ・ 利用者の五感を観察しながら、より良い商品やサービス提供のためのデータ収集・実証実施 ・ 複合拠点内の農場を利用した循環型スマートフードチェーン構築のため の中核施設 |
DX への取り組み | ・ 顧客利便性向上と会計業務省力化 ・ クラウド型 POS レジを導入、顧客がレジ画面で受付・会計を行い、セルフ化・キャッシュレス決済も実現 ・ 接触機会低減による感染症対策、会計時間の短縮化による顧客満足実現 |
フードロス対策と拠点内循環型モデ ルの確立 | ・ フードロスを可視化するとともに削減課題を抽出 ・ 拠点内循環型モデル(レストラン内で発生するフードロス対策) ロスフード→堆肥化→農園野菜の育成に使用→収穫野菜→料理提供 |
Ⅲ.経営理念等の事業活動への展開
1.社是・経営理念等
(1)社是
”ずく”出して
みんなの夢に Let's Try!
「ずく」とは、xx県の方言であり、当社ではこれを「元気を出してやろう!」という意味に解釈し、この本質的な位置付けとして、損得の「得」ではなく、道徳の「徳」を生き方の中心に置くミールケア社員の「ずく魂」としている。また、「徳」とは、良き道を歩み、思いやりを持つ人格者に備わった品性とし、この「ずく精神」の下で、人々に尊敬され、信頼される「徳」を身に付ける徳望経営に徹している。
(2)経営理念
”嬉しさ”を実感できる
会社をつくります。
当社のゴールデン・ルールでは、「人にしてもらいたいことをあなたも人にしてあげなさい」と謳っている。社員が互いに相手を思い合い、幸せを実感できる社風であれば、自ずとお客様の幸せも実現できるとし、お客様満足を実現するのは人であり、当社社員であるため、当社社員の「幸せ」を優先した利用者満足を追及し続けることを基本としている。
(3)経営ビジョン
ミールケアの「給食道」を通し、
世界中の人たちを健康に導きます。
当社では、茶道の「お手前」に倣い、利用者に給食を美味しく提供し、給食を通じて幸せにすることを第一とし、「給食に命を捧げ、道を究める給食の道」を当社が目指す「給食道」としている。この「給食道」をもって世のため人のため、人類健康のために貢献するとしている。
(4)理念の追求
当社では、従業員にとって、利用者の喜びを社員自身の喜び・誇りとしており、美味しい食事を提供することは当然として、利用者の人生に寄り添うような存在でありたいと考えている。利用者から、
「あなたがいてくれて良かった」と思ってもらえるよう、当社では3つの理念を追求している。
◄追求する理念の関連図(当社ウェブサイトより)
①本物の追求~「正しいおふくろの味を創る」ために
「安心」「安全」「健康」の考え方を基本に、「体に良いものを選び、多くの人に健全な体を作っていただく」を掲げ、「生産者履歴の明確な食材」を取り扱っている。また、接客に関しても利用者に
「感動」「満足」を与えられるよう、スタッフ全員で最高のサービスを追及している。
【取り組み例】契約農家の食材使用、手作りダシの使用、食材の情報開示、品質・衛生・安全面の独自マニュアル構築等
②教養の追求~「正しい子供の舌を創る」ために
従業員の継続的なキャリアアップを図るために、栄養士研修、調理師研修、衛生管理講習等を開催する社内学校「ミールカレッジ」では、心の勉強会等幅広い研修を設け、社会人として教養を備えた総合的人材育成に取り組んでいる。
【取り組み例】栄養士研修、調理師研修、おもてなしビジネスマナー研修、理念研修、組織と人の向上xxxx等
③楽しさの追求~「父のほほ笑みを創る」ために
利用者が心から喜ぶ笑顔を当社の喜びとし、食材や調理技術以外から得られるよう食事の中にも様々なイベントを取り入れ、楽しく食べる環境を用意し、食事の次元を越えた働く人の道、「ミールケア・ウェイ」で、利用者に「喜んでもらう」ために全社員が取り組む事としている。
【取り組み例】 公開調理など食環境の演出、収穫祭・夏祭り等の各種イベント、meal 屋台等
2.安全・品質・衛生管理等への取り組み
当社では安全管理、品質管理、衛生管理、およびアレルギー対策の点から安全性を追求する事により、「安心」「安全」な食事を利用者に提供している。
(1)安全管理
安全管理規定に従い、厨房内における事故・過誤の予防措置の徹底、安全衛生講習の実施、一定期間ごとの点検および、機器始動前のチェックを実施している。
(2)品質管理
ISO9001 規格に沿い、仕入れ段階、保管段階、食品調製、調理・加工段階、配送等の過程における、安全品質確保に取り組んでいる。
(3)衛生管理
パン工場で HACCP 認証を取得しており、これを遵守した衛生管理を実施している。微生物汚染の危害について重要管理事項(CCP)を定め、これら遵守状況について常時モニタリングすることにより、製造工程全般を通じた製品の安全確保を図っている。
(4)食物アレルギー対策
給食事業では、厚生労働省や文部科学省が言及している食物アレルギー対応ガイドラインに沿い、委託元の給食体制や、食物を扱う授業や校外活動の有無等にも配慮している。食物アレルギーには高い専門性が求められるため、管理栄養士が委託元の幼稚園・保育園等と協働し、アレルギーの予防方法・園児の事前調査に基づき個別対応している。
3.SDGs への主な取り組み
当社では、「“ずく”出して みんなの夢に Let‘s Try!」を社是とし、経営ビジョンでは、「ミールケアの給食道を通じて、世界中の人たちを健康に導きます。」を掲げている。これらは、当社が事業を通じて地域社会の発展に貢献する信念を明示したものであり、持続可能な開発目標で社会実現を目指すSDGs の方向性にも合致している。
◄SDGs ロゴ(当社ウェブサイトより)
(1)ダイバーシティの推進
業容の拡大に伴い、多様な人材を確保するため、高齢者、女性、障がい者を積極的に採用し活用している。特に65 歳以上の雇用については敬意を込めて「ミールマイスター」と呼称し、2年以上の勤務実績により、調理師免許の取得を奨励する等、個々の「生きがい、やりがい」につなげている。
(2)考食師の育成と食育
食育のプロの資格として、「考食師」制度を設けており、考食師による幼稚園・保育園等での食育事業を展開している。食育活動拡大のためには、資格取得者の増加が必要であるため、従業員に対しては積極的に本資格取得を奨励している。なお、資格認定の独立性を保つため、関連組織である
(一財)日本 educe 食育総合研究所を設立している。
「考食師」制度 | |
制度の目的 | 従業員の食と食育に関する専門性を高め、広く食育を広めるため |
認定機関 | (一財)日本 educe 食育総合研究所 |
受験資格 | 和食文化・歴史、農業経験、栄養学、調理技術、プレゼン力等の保有 |
資格保有者 | 約 150 人(直近合格率約 50%以下) |
(3)xx県 SDGs 推進企業への登録と活動
長野県では県内企業・事業所の SDGs への理解と活動を促進するため、2017 年に「xx県 SDGs推進企業登録制度」を設け、SDGs に積極的に取り組む企業の登録・公表制度をスタートさせている。当社は本制度第 1 期に登録を完了させ、他社に先駆け SDGs への取り組みを進めてきている。以下は当社の推進企業登録の概要である。
【SDGs 達成に向けた経営方針等】
日本の美しい食文化をxxに伝えます
【重点的な取り組み】
No. | 内容 | 指標概要 |
1 | 「考食師」資格取得の推奨 | 毎年 20%の資格取得のための支援 |
2 | ダイバーシティの推進 | 女性管理職員比率の 40%以上への引上げ |
3 | 無洗米の使用・推奨 | 食事提供数年率1%の増加 |
4.地域社会への貢献
当社は、2019 年の台風 19 号により、本社、ビュッフェレストラン、パン工場等を備えた複合拠点である「み~るんヴィレッジ」全体が河川氾濫により甚大な被害を受けた。復興に当たっては多くのボランティアや近隣住民の支援を受けたことが契機となり、当社の地域貢献の取り組みにつながっている。
⮚ 「いのちの森づくり」活動
▲植樹祭の様子
▲いのちの森イメージイラスト
水害が再度発生しても従業員や近隣住民の生命を守るために、複合拠点周辺に避難所となる森づくりを進めている。土地に根を張り成長する木々の様に、100 年先も地域に根を張り貢献できる企業になる事を意識しており、これらは、草取りやゴミ拾いなど地域美化活動へも発展している。
Ⅳ.サステナビリティへの取り組み
社会・環境・経済へのインパクトもたらす当社の事業活動、慈善活動は以下のとおりである。
1.社会面
テーマ | 活動内容 | アウトプット | アウトカム※ |
食の安全 | ・ パン生産工場では、子供のアレルギーに配慮した給食用パンの生産性向上ため、自動化により、被災前の 1.7倍まで生産量を増加させている。 ・ 安全性を確保するため、パン生産ラインでは HACCP 認証を受けている。 ・ アレルゲン・グルテンフリー対応食品 を開発製造中。 | ・利用者の食の安全確保 | ・ 利用者(幼児)の食に対する喜び・満足向上 |
食育 | ・ 給食委託元各園の給食献立やレシピに対するより付加価値の高い給食・食育事業を行う食育コンサルティングの提供(社内認定資格制度「考食師」資格の保有者による食育事業)。 ・ 「考食師」資格取得奨励。 ・ みーる劇団(構成員は従業員)による幼稚園・保育園等向け公演活動。 ・ 食育事業の中で、日本の食文化と歴史の理解、命の大切さ等を伝え、食べ 残しを減らす事につなげている。 | ・食育事業の拡大 ・食育コンサル受託先の増加 ・従業員のスキルアップ ・食育の認知度向上 | ・ 食育教育の重要性についての社会的認知向上 |
ダイバーシティの実践 | ・ 業容拡大に伴う人材不足に対し、積極的に高齢者、女性、障がい者を雇用 し、多様な人材の活用を図っている。 | ・多様な人材の活用 | ・ 多様な人材の社会的活躍の場 の提供 |
社内システムのデジタル化 | ・ 水害を教訓に社内情報の管理方法を整備、顧客への提供価値最大化を念頭にシステムを構築。クラウド化により災害に強く、情報の共有、給食サービスの向上、従業員教育、利用者情報の把握など、従業員の働きやすxx新しい事業を進めるためのプラットフォー ムとなっている。 | ・従業員の働きやすさ ・業務効率化 ・ディーセントワークの促進 ・サービスレベルの向上 | ・ 地域社会の DX促進 |
※アウトカムとは、事業活動による直接的な成果物や結果ではなく、社会・環境・経済に対する効果・価値創造を指す。
◄食育活動の様子
2.環境面
テーマ | 活動内容 | アウトプット | アウトカム |
複合拠点周辺の緑化 | ・ 「いのちの森づくり」活動として、2020 年9月に一般公募を経て、地域の気候に適した広葉樹(ブナ・コナラ・ヤマザクラ等)を専門家の指導を得ながら複 合拠点周辺に植樹している。 | ・緑地拡大 ・地域の美化 ・従業員の働きやすい環境の提供 | ・ CO2 吸収による温暖化対策 ・ 地域環境保護 ・ 社員の生産性のxx |
xx放棄地の活用 | ・ 近隣のxx放棄地を自社で借り上 げ、野菜の生産や農業体験ファームとして活用。 ・ コンポスト※を設け、ロスフードを堆肥化。 ※生ゴミや落ち葉、枯れ草等の有機物を微生物の発 酵分解により堆肥化するための設備 | ・xx放棄地の発生抑制 ・自社廃棄物の削減 | ・ 環境保護 ・ 地域の農業生産性維持 ・ 地域雇用促進 ・ 循環型農業実践 |
環境美化 | ・ 東京オフィス周辺の清掃活動(毎朝実施)、10 年以上取り組んでおり、xxx中央区から感謝状の贈呈を受けて いる。 | ・事業拠点周辺の美化 | ・周辺企業の環境美化意識向上へ貢献 |
水質汚染防止 | ・ 給食事業委託元に対し、無洗米の使 用を推奨している。 | ・水道使用量の抑 制 | ・ 水質汚染による 環境負荷軽減 |
▲xx放棄地での農業体験活動
3.経済面
テーマ | 活動内容 | アウトプット | アウトカム |
フードロス削減 | ・ 規格外野菜のパン材料への利用促進。 | ・規格外野菜の有効活用→「やさい パン」への利用 | ・ 経済的損失抑制 ・ 環境負荷軽減 |
地産地消 | ・ 給食事業では基本的に食材の発注は地元の生産者が確認できる材料を使 用し、一部には契約農場も使用。 | ・安全な食材の使用 | ・ 地域経済活性化 |
生産性向上 | ・ パン生産工場でのアレルギー対応給食用パンの生産性向上(自動化によ り、被災前の 1.7 倍まで生産量増加)。 | ・市場ニーズへの対応 | ・ 製造コスト低減による利用者の経済的負担軽 減 |
社内システムのデジタル化 | ・ 水害を教訓に社内情報の管理方法を整備、顧客への提供価値最大化を念頭にシステムを構築。クラウド化により災害に強く、情報の共有、給食サービスの向上、従業員教育、利用者情報の把握など、従業員の働きやすxx新しい事業を進めるためのプラットフォー ムとなっている。 | ・従業員の働きやすさ ・業務効率化 ・ディーセントワークの促進 ・サービスレベルの向上 | ・ 従業員が働きやすい職場 ・ 従業員の業務効率化 |
ダイバーシティの実践 | ・ 業容拡大に伴う人材不足に対し、積極的に高齢者、女性、障がい者を雇用 し、多様な人材の活用を図っている。 | ・多様な人材の活用 | ・ 地域雇用の創出 |
Ⅴ.包括的分析およびインパクトの特定
当社の事業活動全体に対する包括的分析を実施し、インパクトを特定する。
1.業種別インパクトの状況
側面 | インパクト領域 | ポジティブ | ネガティブ | |
社会 | 入手可能性 、ア クセス可能性 、手 ごろさ 、品 質 | 水(入手可能性) | ||
食糧 | ● | |||
住居 | ||||
xx・xx | ● | |||
教育 | ||||
雇用 | ● | ● | ||
エネルギー | ||||
移動手段 | ||||
情報 | ||||
文化・伝統 | ● | |||
人格と人の安全保障 | ||||
xx・xx | ||||
強固な制度・平和・安定 | ||||
環境 | 質 (物 と 理 有 的効 ・化利 学 用 的 特性 ) | 水(質) | ● | |
大気 | ||||
土壌 | ||||
生物多様性と生態系サービス | ||||
資源効率・安全性 | ● | |||
気候 | ● | |||
廃棄物 | ● | |||
経済 | め 人 値 の と創 経 社造 済 会 的 の 価 た | 包摂的で健全な経済 | ● | |
経済収れん |
当社の事業について国際標準産業分類(ISIC:International Standard Industrial Classification of All Economic Activities)における「調理食品製造業」として整理され、その前提のもと、UNEP FI のインパクト分析ツールを用いた結果、ポジティブ・インパクト●(以下、「PI」)およびネガティブ・インパクト●(以下、「NI」)が下表のとおり分析された。
2.国別インパクトの状況
国別インパクトについて、日本では「住居」、「雇用」、「エネルギー」、「情報」、「文化・伝統」、「移動手段」、「水(質)」、「生物多様性と生態系サービス」、「資源効率・安全性」、「気候」、「廃棄物」、「包摂的で健全な経済」のニーズが高く設定されている。
3.インパクトレーダーチャート
ここまでの分析を踏まえ、業種・国の観点から推定された当社の事業に係るインパクト領域は、下図のとおりである。
Default Impact Map Positive Negative
Economic convergence Inclusive, healthy
economies Waste
Climate
Resources efficiency / security
Biodiversity & ecosystems
Soil
Other
Availability - Water
Food
Housing
Health & sanitation Education
Employment
Energy
Mobility Information
Air
QualitySt-rWonagteinrsitutions, peace & stability
Justice
Culture & heritage Integrity & security of
person
4.特定されたインパクト領域とサステナビリティ活動等との関連性
UNEP FI のインパクト分析ツールから示されたインパクト領域(13・14 ページ)と当社のサステナビリティ活動・業種特性の関連性を確認し、必要に応じ追加・削除を検討する。
⮚ 社会面のインパクト
社会面ではインパクトとして「食糧」(PI)、「保健・衛生」(NI)、「雇用」(PI・NI)、「文化・伝統」(PI)が示されている。
「食糧」の PI は、調理食品として安全かつ栄養価の高い食品を消費者に提供できることである。当社では、給食事業者として必要な栄養管理対応は十分であることからインパクトは特定するが、 KPI は設定しない。「保健・衛生」の NI は、食品の安全性の維持にある。「雇用」の PI は、ダイバーシティの推進による地域の雇用創出にあり、NI は、有給休暇の取得奨励等によるディーセントワ
ークの促進にある。「文化・伝統」の PI は、食育を通じた食文化の伝承である。また当社では、食育を重要な事業の柱としており、「考食師」を通じて利用者へ食の重要性を伝える活動が期待されることから、「教育」をPI に追加する。
⮚ 環境面のインパクト
環境面ではインパクトとして「水」(NI)、「資源効率・安全性」(NI)、「気候」(NI)、「廃棄物」(NI)が示されている。
「水」の NI は、環境負荷が懸念される調理に使用した排水の管理にあるが、当社では、今後も受託先も含めた各拠点で環境関連法に則った厳格な管理の下での排水処理が求められる。「資 源効率・安全性」の NI は、調理過程で使用する水に加え、エネルギー使用量の管理が求められ る。これらの量的管理は適正であることからインパクトは特定するが、KPI は設定しない。「気候」 の NI は、温暖化ガス排出による気候変動への影響を想定するが、調理過程での使用量管理は 適切で、気候変動への影響は少ないためインパクトは特定するが、KPI の設定はしない。「廃棄物」のNI は、調理段階での材料の過剰カットによる廃棄に加え、食べ残しによるフードロス廃棄による環境負荷が想定される。
⮚ 経済面のインパクト
経済面では、インパクトとして「包摂的で健全な経済」(PI)が示されている。
「包摂的で健全な経済」のPI は、ダイバーシティの推進(多様な人材の採用等)による地域雇用の創出にあると考えられる。給食事業を柱とする当社の業容拡大の状況と離職率の低さから当インパクト領域への取り組みは十分と考えられることから、インパクトは特定するが、KPI は設定しない。
5.インパクトの特定
業種別インパクトを基に、当社の事業特性・活動状況などを考慮した包括的分析の結果、当社のインパクトを下図のとおり特定する。
側面 | ポジティブ・インパクト | ネガティブ・インパクト |
社会 | 食糧 (KPI 設定なし) 教育 (追加) 雇用 文化・伝統 | 保健・衛生 雇用 |
環境 | 水(質) 資源効率・安全性 (KPI 設定なし) 気候 (KPI 設定なし) 廃棄物 | |
経済 | 包摂的で健全な経済 (KPI 設定なし) |
Ⅵ.特定したインパクトと設定 KPI
特定したインパクトに対し、以下のとおり、KPI を設定する。
1.ポジティブ・インパクトの伸長・拡大
No. | 1 | |
インパクト | 教育<社会面> | |
目的・テーマ | 正しい知識・スキルに基づく質の高い食育事業の展開 | |
取り組み内容 | ・栄養士、管理栄養士、調理師等の公的資格取得支援 ・栄養士、調理師等資格保有者のスキル向上研修の開催 ・「考食師」の資格取得支援 | |
KPI | 「考食師」の新規資格取得者 80 人/毎年までへの引上げ(2028 年度までに) (直近実績約 50 人/年) | |
対応するSDGs (ターゲット) | 4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知 識及び技能を習得できるようにする。 |
No. | 2 | |
インパクト | 雇用<社会面> | |
目的・テーマ | 女性の活躍推進 | |
取り組み内容 | ・女性管理職の積極登用、役職付与による活躍の場の提供、働きがいの追求 | |
KPI | 女性従業員に占める役職者(課長級以上)比率 20%以上への引き上げ (期限:2028 年度) | |
対応するSDGs (ターゲット) | 5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい 仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 |
No. | 3 | |
インパクト | 文化・伝統<社会面> | |
目的・テーマ | 食育を通じた食文化の伝承 | |
取り組み内容 | ・考食師による食育推進活動 ・みーる劇団の劇を媒体とした食育の普及活動 ・み~るんヴィレッジ来園者に対する食文化の体験提供 (植樹、農園体験、レストランでの食育体験等) | |
KPI | みーる劇団による幼保園向け食育劇の公演活動 25 回/毎年(2028 年度まで) (過去ピーク時には年間 20 回程度開催) | |
対応するSDGs (ターゲット) | 4.7 2030 年までに、持続可能な開発のための教育及び持続可能なライフスタイル、人権、男女の平等、平和及び非暴力的文化の推進、グローバル・シチズンシップ、文化多様性と文化の持続可能な開発への貢献の理解の教育を通して、全ての学習者が、持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする。 8.9 2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。 |
2.ネガティブ・インパクトの緩和・低減
No. | 1 | |
インパクト | 保健・衛生<社会面> | |
目的・テーマ | 食の安全性維持と必要量の安定供給 | |
取り組み内容 | ・HACCP に基づく食品衛生管理によるパン製造 ・パン製造ラインの安定稼働による生産性維持 ・PDCA による確実な安全管理の運用とレベルアップ | |
KPI | パン工場のHACCP 認証の維持 (xx対応事項であるが、2028 年度まで KPI を設定) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 2.1 2030 年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。 |
No. | 2 | |
インパクト | 雇用<社会面> | |
目的・テーマ | ディーセントワークの促進 | |
取り組み内容 | ・業務見直しと効率化、AI の導入 ・社内業務システムの活用促進・高度化 ・業務互換性の向上、個々人のスキルアップ | |
KPI | 全従業員の有給休暇保有日数に対する利用割合 60%以上までの引き上げ (期限:2028 年度) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 5b 女性の能力強化促進のため、ICT をはじめとする実現技術の活用を強化する。 8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一労働同一賃金を達成する。 |
No. | 3 |
インパクト | 水(質)<環境面> |
目的・テーマ | 環境負荷軽減 |
取り組み内容 | ・給食事業受託先での洗剤使用量・排水量の削減、水の効率的使用 ・無洗米使用の促進 ・自社ブランド無洗米の販売促進 |
・従業員の家庭での節水・排水抑制、環境意識向上 | ||
KPI | 給食事業受託業務での無洗米使用率5%引上げ(期限:2028 年度) (給食事業受託先の無洗米使用率は一定の水準まで達しているものの、KPI として設定することで、より環境負荷軽減を目指す) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。 6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。 12.4 2020 年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。 |
No. | 4 | |
インパクト | 廃棄物<環境面> | |
目的・テーマ | 環境負荷軽減 | |
取り組み内容 | ・食育事業による給食事業受託先のロスフード削減 ・自社製品「やさいパン」原料として地域の規格外野菜の使用 ・規格外野菜を使用した商品開発 ・12 月オープン予定のレストランからの残菜のコンポスト堆肥化 ・システム構築によるフードロスの可視化 | |
KPI | 複合拠点内事業(12 月オープン予定レストラン含む)で発生するフードロス割合 3.5%以下とする。〔算定ベース:重量(純ロスフード重量/食品仕入れ重量)〕 (期限:2028 年度) | |
対応する SDGs (ターゲット) | 11.6 2030 年までに、大気の質及び一般並びにその他の廃棄物の管理に特別な注意を払うことによるものを含め、都市の 一人当たりの環境上の悪影響を軽減する。 |
12.3 2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。 12.5 2030 年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。 |
Ⅶ.インパクト管理体制
(株)ミールケアでは、本ファイナンスに取り組むにあたり、xxx取締役副社長が陣頭指揮を執り、ブランド推進本部が中心となって、社内の制度や計画、日々の業務や諸活動などを棚卸しすることで、社内の事業活動とインパクトレーダーや SDGs との関連性、KPI の設定について検討を重ねた。
最高責任者 | xxx取締役副社長 |
担当部署 | ブランド推進本部 |
本ファイナンス実行後においても、関副社長を最高責任者とし、ブランド推進本部が中心となり、KPI 達成に向けて役員会議をはじめとした諸会議・ミーティングで社内浸透させることで各部署へ施策を展開する。
Ⅷ.モニタリング方法
本ファイナンスの実行にあたり設定した KPI については、(株)ミールケアと(株)八十二銀行ならびに
(一財)長野経済研究所が少なくとも年に1回の頻度でその進捗状況および達成状況を確認・共有する。
(株)八十二銀行は、自行が持つノウハウやネットワークを活用し、(株)ミールケアの KPI の達成を適宜サポートする予定である。
モニタリング期間中に一度達成した KPI については、その後も引き続き達成水準を維持していることを確認する。なお、(株)ミールケアの事業環境の変化などにより設定した KPI が実情にそぐわなくなった場合には、(株)ミールケアと(株)八十二銀行ならびに(一財)長野経済研究所が協議し、再設定を検討する。
Ⅸ.総合評価
本評価書の記載のとおり、(株)ミールケアの企業活動は、社会・環境・経済に対するポジティブな成果の伸長とネガティブな影響の緩和・軽減に寄与するものであり、これらを支援するためのサステナビリティ推進およびモニタリング体制についても十分であると、(一財)長野経済研究所では判断する。
なお、本評価書の十分性を含め、ファイナンス全体に係る UNEP FI の「ポジティブ・インパクト金融原則」などへの準拠性については、別途、(株)日本格付研究所の第三者意見書により確認を受けるものである。
以 x
x評価書に関する重要な説明
1. 本評価書は、(一財)長野経済研究所が(株)ミールケアから委託を受けて作成したもので、(一財)長野経済研究所が(株)ミールケアに対して提出するものです。
2. 本評価書の評価は、依頼者である(株)ミールケアから供与された情報と、(一財)長野経済研究所が独自に収集した情報に基づく基準日現在での計画または状況に対する評価で、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、(一財)長野経済研究所は本評価書を利用したことにより発生するいかなる費用または損害について一切責任を負いません。
<本評価書に関するお問い合わせ先>
〒380-0936 xx市xx 178-13 八十二別館3階一般財団法人xx経済研究所
経営相談部 コンサルティンググループ上席コンサルタント xx x
Tel:000-000-0000 Fax:000-000-0000
第三者意見書
2022 年 12 月 8 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 株式会社ミールケアに対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社八十二銀行 |
評価者:⼀般財団法人⻑野経済研究所 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトフ
ァイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、八十二銀行が株式会社ミールケア(「ミールケア」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、長野経済研究所による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。八十二銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、長野経済研究所と共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、八十二銀行及びxx経済研究所にそれを提示している。なお、八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえで PIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体である。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とし
た中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1 定義
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
八十二銀行及びxx経済研究所は、本ファイナンスを通じ、ミールケアの持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、ミールケアがポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2 フレームワーク
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、八十二銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
(1) 八十二銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(出所:八十二銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、八十二銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、八十二銀行からの委託を受けて、長野経済研究所が分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本 PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全てxx経済研究所が作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、xx経済研究所が、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面の
インパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及び ESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるミールケアから貸付人である八十二銀行及び評価者である長野経済研究所に対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所
サステナブル・ファイナンス評価部長
xx xx
担当xxアナリスト 担当アナリスト
xx xx xx xx
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・xxな立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候変動イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000