1.設計変更ガイドラインの目的 ・・・P.1
東松山市
請負工事設計変更ガイドライン
令和3年4月
東松山市政策財政部契約検査課
目 次
1.設計変更ガイドラインの目的 ・・・P.1
2.設計変更の基本 ・・・P.2
(1)設計図書とは ・・・P.2
(2)設計変更の基本的な考え方 ・・・P.2
(3)適切な設計変更の必要性 ・・・P.2
(4)設計変更の範囲 ・・・P.3
(5)設計変更の対象事項 ・・・P.3
(6)工事記録等への概算額の記載方法 ・・・P.4
(7)設計変更の対象とならない事項 ・・・P.5
3.発注者・受注者の留意事項 ・・・P.6
(1)発注者の留意事項 ・・・P.6
(2)受注者の留意事項 ・・・P.6
4.設計図書の照査 ・・・P.8
(1)設計図書の照査とは ・・・P.8
(2)照査の結果により問題点が見つかった場合 ・・・P.8
(3)設計図書の照査の範囲を超えるもの ・・・P.8
5.設計変更の確認及び手続き ・・・P.10
(1)図面と仕様書等が一致しない ・・・P.10
(2)設計図書に誤謬又は脱漏がある ・・・P.11
(3)設計図書の表示が明確でない ・・・P.11
(4)設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が一致しない ・・・P.12
(5)予期することのできない特別な状態が生じた ・・・P.12
(6)発注者が必要があると認めるときの設計図書の変更 ・・・P.13
(7)受注者の責めに帰すことができない事由による工事の一時中止 ・・P.14
(8)受注者からの請求による工期の延長 | ・・・P.15 |
(9)発注者の請求による工期の短縮 | ・・・P.16 |
6.条件明示について | ・・・P.17 |
7.「任意」・「指定」の使い分け | ・・・P.20 |
(1)基本的な考え方 | ・・・P.20 |
(2)留意事項 | ・・・P.20 |
1.設計変更ガイドラインの目的
東松山市では、道路、上・下水道、建築物、公園等、公共施設の整備及び維持管理に関する請負工事を毎年数多く発注している。各々の請負工事は、自然条件(地質・湧水等の条件)や社会的条件(交通規制・他の公共的施設(電気・ガス・水道等)の条件)など、多様な条件の下で個別に設計・施工を実施し、多岐にわたる目的物を完成させていくことになる。ところが、工事の進捗と共に、発注時に予見できない施工条件や環境の変化などが起こり、当初の設計を変更せざるを得ないことがある。
この場合、契約の当事者である発注者と受注者は、東松山市の建設工事請負契約約款
(以下「契約約款」という。)に基づき、当初設計との一体性を損ねない範囲において、設計変更や契約変更を行う必要が生じる。
本ガイドラインは、当初設計を変更する場合において、どのような設計変更が契約変更となるのか条件を明確にし、発注者及び受注者双方で認識する、共通の手引き書とすべく、考え方を整理したものである。
なお、本ガイドラインは土木工事を基本としており、その他の公共工事(建築工事及び設備工事等)においても土木工事同様、東松山市建設工事請負契約約款を使用しているため、建築工事等にも原則運用するものとし、必要に応じて国や埼玉県のガイドラインも参考にすることとする。
2.設計変更の基本
(1)設計図書とは
発注者及び受注者は、契約約款を含む契約書に基づき、「設計図書」に従って、契約を履行しなければならない。
ここでいう「設計図書」とは、契約約款第1条第1項において「別冊の図面、仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう」と規定している。
〇図1
契約図書 契約書(契約約款を含む)
設計図書 図面、(共通・特記)仕様書、現場説明書及び質問回答書
(土木工事では工事数量総括表含む)
(2)設計変更の基本的な考え方
設計図書は、現場の自然条件、社会条件、施工時期など、施工に影響を与える様々な要因を設計時点で想定したものである。その設計図書に基づいて施工すべきであるが、真にやむを得ない事情により設計図書と現場等に差異が生じた場合、当該工事の目的を損ねない範囲において設計変更を行う。その結果、工期や請負代金額に変更が生じた場合は発注者と受注者の協議により、契約変更を行うものとする。設計条件の変更等に関しては、契約約款第 18 条及び第 19 条に規定している。
(3)適切な設計変更の必要性
「公共工事の品質確保の促進に関する法律」の基本理念に「請負契約の当事者が対等の立場における合意に基づいてxxな契約を適正な額の請負代金で締結」が示されている。また、「設計図書には適切に施工条件を明示するとともに、必要があると認められたときは適切に設計図書の変更を行い、これに伴い必要となる請負代金の額又は工期の変更を行うこと」が規定されていることから、本市はこの基本理念に則り、適切に対応するものとする。
(4)契約変更の範囲
設計変更に伴う契約変更の範囲として、昭和44年3月31日付け建設省xxx発第
31号の2「設計変更に伴う契約変更の取扱いについて」に、次のように記載されている。
・設計表示単位に満たない設計変更は、契約変更の対象としないものとする。
・一式工事については、受注者に図面、仕様書又は現場説明において設計条件又は施工方法を明示したものにつき、発注者が当該設計条件又は設計方法を変更した場合を除き、原則として契約変更の対象としないものとする。
・変更見込金額が当初請負代金の30%を超える工事は、現に施工中の工事と分離して施工することが著しく困難なものを除き、原則として別契約とする。
なお、契約の時期については、約款等に基づき、発注者・受注者間の協議が調い次第、適切な時期に行うこととする。
(5)設計変更の対象事項
契約約款において、条件変更等に伴う設計変更の対象事項は契約約款第 18 条(条件変更等)に、発注者が必要と認めるときの設計図書の変更は契約約款第 19 条(設計図書の変更)に、また、受注者の責によらない事由による工事の一時中止については契約約款第 20 条(工事の中止)に規定している。
このことから、主な設計変更の対象となる事項は下表のとおりである。
○設計変更の対象となる事項
設計変更の対象事項 | 契約約款 |
① 図面と仕様書等が一致しない | 第 18 条第 1 項第 1 号 |
② 設計図書に誤謬又は脱漏がある | 第 18 条第 1 項第 2 号 |
③ 設計図書の表示が明確でない | 第 18 条第 1 項第 3 号 |
④ 設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が一致 しない | 第 18 条第 1 項第 4 号 |
⑤ 予期することのできない特別な状態が生じた(設計図書 で明示されていない施工条件について) | 第 18 条第 1 項第 5 号 |
⑥ 発注者が必要と認めるときの設計図書の変更 | 第 19 条 |
⑦ 受注者の責によらない事由による工事の一時中止 | 第 20 条 |
⑧ 受注者からの請求による工期の延長 | 第 21 条 |
⑨ 発注者の請求による工期の短縮 | 第 22 条 |
(6)工事記録等への概算額の記載方法
設計変更を行うため、契約変更に先立ち指示を行う場合は、工事記録にその内容に伴う概算(増減)額を記載する。
ここで記載する概算額は、「参考値」であり、契約変更額を拘束するものではない。また、緊急的に行う場合又は何らかの理由により概算額の算定に時間を要する場合
には、「後日通知する」ことを添えて指示を行うものとする。
※ 契約約款第 10 条第 2 項に基づき、現場代理人の権限に請負代金の変更、工期の変更、請負代金の請求及び受領等は含まれないため、現場代理人が押印するだけの工事記録では、請負代金の変更等について受注者の了解を得られたか不明瞭である。
(⇒発注者が受注者に対し書面にて協議を依頼し、受注者からの協議の回答を書面で得ることが適正であると考える。)
しかしながら、書面の簡素化・押印の省略などが推進される昨今の状況においては、新たに書類を作成することは時代に逆行しているため、工事記録に概算(増減)額を記載することで受注者に伝えたこととし、その回答をもって了解を得たものと解する。
※ xx技術者及び監理技術者についても、建設業法第 26 条第 1 項及び第 2 項により「建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの」と規定されるのみで、設計変更に伴う請負代金の変更についての権限は無いものと解する。
(7)設計変更の対象とならない事項
以下の場合においては、原則として設計変更の対象外となる。ただし、契約約款第 26 条(臨機の措置)での対応の場合は除く。
① 設計図書に条件明示のない事項において、発注者と「協議」を行わず受注者が独自に判断し施工した場合。
受注者は契約約款第 18 条第 1 項により設計図書と工事現場の不一致、条件明示の無い事項等を発見したときはその事実が確認できる資料を書面(工事記録等)により監督員に提出し、確認を求める必要がある。
② 発注者と「協議」をしているが、協議の回答前に施工を実施した場合。
協議の回答は、発注者が契約約款第 18 条第 3 項により調査の終了後14日以内にすることとなっており、速やかな回答は発注者の責務である。しかしなが ら、協議内容によっては各種検討・関係機関調整が必要などやむを得ず、受注者の意見を聞いたうえで回答までの期間を延長する場合もある。そのため受注者はその事実が判明次第、できるだけ早い段階で協議を行うことが重要である。
③ 「承諾」で施工した場合。
ここでいう「承諾」とは、受注者が自らの都合により(⇒設計条件の変更は無く)施工方法等について、監督員に同意を得るものである。設計図書と工事現場の不一致、条件明示の無い事項等の場合は契約約款第18条による確認をすることが必要であり、安易な承諾による施工は避けるべきである。
④ 契約約款に定められている所定の手続きを経ていない場合。(契約約款第 18 条
~25 条)
発注者及び受注者は、協議・指示・一時中止・工期変更・請負代金額の変更など、所定の手続きを行う。
⑤ 正式な書面によらない事項(口頭指示、協議等)の場合。
発注者は速やかに書面による指示・協議等を行う。受注者は書面による指示・協議等の回答を得て施工する。
3.発注者・受注者の留意事項
(1)発注者の留意事項
請負工事の施工は設計図書に従って実施されるため、発注者は、受注者が工事の目的に沿った適切な施工ができるよう、必要な施工条件を明示した設計図書を作成し、また、変更の必要がある場合には、受注者に対して書面により通知しなければならない。
また、工事目的と関係ない工種の追加や、別工事(=別契約)で施工すべき工種の
追加は設計変更の対象にならないので以下の点に留意すること。
① 施工にあたり制約がある(⇒施工条件)場合は、設計図書に必ず明示する。
② 設計図書に疑義が生じた場合は、必要な指示、承諾、協議等を書面で行う。(契約約款第 9 条第 4 項)
③ 受注者から設計図書についての確認の請求があった場合は、受注者の立合いのうえ、調査を行い、調査結果を受注者に通知しなければならない。(契約約款第 18
条第 2 項及び第 3 項)
④ 調査の結果、契約約款第 18 条第 1 項の事実が確認された場合は、発注者が必要
な設計図書の訂正又は変更を行う。(契約約款第 18 条第 4 項)
⑤ 設計変更後の請負金額や工期は、受注者と協議し定める。(契約約款第 23 条、第 24 条)
(2)受注者の留意事項
受注者は、工事の目的を達せられるように施工する義務があり、完成させるために必要な手段は、設計図書に指定されていなければ、施工等に必要な一切の手段は受注者の裁量の範囲となる。ただし、設計図書に条件明示がない事項において、発注者と協議を行わず、受注者が独自に判断し施工した場合などは設計変更の対象にならないので、以下の点に留意すること。
① 設計変更を行う必要が生じた場合、必要な通知、報告等は書面で行う。(契約約款第 1 条第 5 項)
② 設計図書と工事現場に不一致がある、必要な条件明示がされていないなど、施工するうえで疑義が生じた場合は、速やかに監督員に通知する。(契約約款第 18 条
第 1 項)
③ 数量・仕様等の設計図書の変更が必要な場合は、その内容について、発注者と協議を行い、発注者の書面による指示に従い施工する(独自の判断で施工しな
い)。
④ 協議を求める場合は、協議理由及び協議内容を発注者が確認できるよう、必要となる資料を整理し、書面により行う。
4.設計図書の照査
(1)設計図書の照査とは
「設計図書の照査」とは、設計図書に問題点が無いか確認することである。
具体的には、埼玉県土木工事共通仕様書(1-1-1-3「設計図書の照査等」)に規定されているとおり、受注者は、施工前及び施工途中において、自らの負担により契約約款第 18 条第 1 項第 1 号から第 5 号に該当する設計図書の問題点が無いか確認することである。
(2)照査の結果により問題点が見つかった場合
受注者は、当初設計等に対して契約約款第 18 条第 1 項に該当する事実が発見された場合、監督員にその事実が確認できる資料を書面により提出し、確認を求めなければならない。
なお、確認できる資料とは、現地地形図、設計図との対比図、取合い図、施工図等を含むものとする。また、受注者は、監督員から更に詳細な説明又は書面の追加の要求があった場合は従わなければならない。
なお、これらの資料作成に必要な費用については契約変更の対象としない。
(3)設計図書の照査の範囲をこえるもの
受注者が行うべき「設計図書の照査」の範囲をこえる行為としては、以下のものなどが想定される。
① 現地測量の結果、横断図を新たに作成する必要があるもの。又は縦断計画の見直しを伴う横断図の再作成が必要となるもの。
② 施工の段階で判明した推定岩盤線の変更に伴う横断図の再作成が必要となるもの。ただし、当初横断図の推定岩盤線の変更は「設計図書の照査」に含まれる。
③ 現地測量の結果、排水路計画を新たに作成する必要があるもの。また土工の縦横断計画の見直しが必要となるもの。
④ 構造物の位置や計画高さ、延長が変更となり構造計算の再計算が必要となるもの。
⑤ 構造物の載荷高さが変更となり、構造計算の再計算が必要となるもの。
⑥ 現地測量の結果、構造物のタイプが変更となるもの。(標準設計で修正可能なものであっても照査の範囲をこえるものとして扱う)
⑦ 構造物の構造計算書の計算結果が設計図と違う場合の構造計算の再計算及び図面作成が必要となるもの。
⑧ 基礎杭が試験杭等により変更となる場合の構造計算及び図面作成。
⑨ 土留め等の構造計算において現地条件や施工条件が異なる場合の構造計算及び図面作成
⑩ 「設計要領」・「各種示方書」等との対比設計。
⑪ 設計根拠まで遡る見直し、必要とする工費の算出。
⑫ 舗装修繕工事の縦横断設計(当初の設計図書において縦横断面図が示されており、その修正を行う場合とする。なお、設計図書で縦横断図が示されておらず、埼玉県 土木工事共通仕様書「7-14-4-3 路面切削工」「7-14-4-5 切削オーバーレイ工」「7- 14-4-6 オーバーレイ工」等に該当し縦横断設計を行うものは設計照査に含まれる)。
5.設計変更の確認及び手続き
前出の2.(5)の事項において、設計変更を行う場合の具体的な事例と、変更を行うまでの手続きフロー図を以下に示す。
(1)図面と仕様書等が一致しない(契約約款第 18 条第 1 項第 1 号)
受注者は、図面と仕様書等が一致しない場合、監督員に発見事項を通知し、当該事実の確認を請求しなければならない。
(例)◇図面と仕様書の材料寸法、数量等の記載が一致しない場合
(受注者)
直ちに監督員に通知し、確認を請求する。(契約約款第 18 条第 1 項)
◇平面図と断面図の寸法、材料名、仕様等の記載が一致しない場合等手続きフロー図(1)
(発注者・受注者)
発注者、受注者双方立会いのうえ、調査を実施。(契約約款第 18 条第 2 項)
(発注者)
受注者の意見を聞き、調査の結果を取りまとめ、結果を受注者に通知。
(契約約款第 18 条第 3 項)
(発注者)
必要がある場合は、設計図書の訂正又は変更を行う。(契約約款第 18 条第 4 項)
(発注者・受注者)
工期、請負代金額を変更する場合は、発注者と受注者が協議により定める。
(契約約款第 23 条、第 24 条)
ごびゅう だつろう
(2)設計図書に誤謬又は脱漏がある(契約約款第 18 条第 1 項第 2 号)
受注者は、設計図書に誤謬又は脱漏がある場合には、書面により監督員に通知し、確認を請求しなければならない。
(例)
①設計図書に誤りがある場合
◇図面により同一部分の舗装構成が異なっている。
◇設計図書に示されている矢板の打設方法では、明示されている土質で施工できない。
②設計図書に記入漏れがある場合
◇条件明示する必要があるにも関わらず、土質に関する一切の条件明示がない。
◇条件明示する必要があるにも関わらず、地下水位に関する一切の条件明示がない。
◇条件明示する必要があるにも関わらず、交通誘導警備員についての条件明示がない。
◇条件明示する必要があるにも関わらず、使用する部品の品質規格等が明示されていない。
※ 手続きフロー図(1)と同じ。
(3)設計図書の表示が明確でない(契約約款第 18 条第 1 項第号)
受注者は、設計図書の表示が明確でない場合、書面によりその部分を監督員に通知し、確認(明示)を請求しなければならない。
(例)◇土質柱状図は明示されているが、地下水位が不明確である。
◇水替工実施の記載はあるが、作業時若しくは常時排水などの運転条件等の明示がない。
※ 手続きフロー図(1)と同じ。
(4)設計図書に示された(自然的又は人為的な)施工条件と実際の工事現場が一致しない(契約約款第 18 条第 1 項第 4 号)
受注者は、設計図書に示された施工条件と実際の工事現場が相違する場合、書面により監督員に通知し、確認を請求しなければならない。
(例)◇設計図書に明示された土質が現地条件と一致しない。
◇設計図書に明示された地下水位が現地条件と一致しない。
◇設計図書に明示された交通誘導警備員の配置人数等が規制図と一致しない。
◇橋梁保全工事において、設計図書に明示された構造物の状態が実物と一致しない。
◇前出の(2)(3)の手続きにより行った設計図書の訂正・変更で、現地条件と一致しない。
◇その他、新たな制約等が発生した。
※ 手続きフロー図(1)と同じ
(5)予期することのできない特別な状態が生じた(契約約款第 18 条第 1 項第 5 号)
設計図書において明示されていない施工条件について、工事着手後に予期することのできない特別な状態が生じた場合、受注者は書面により監督員に通知し、確認を請求しなければならない。
(例)◇施工中に地中障害物を発見し、撤去が必要となった場合
◇施工中に埋蔵文化財を発見し、調査が必要となった場合
◇工事範囲の一部に軟弱地盤があり、地盤改良が必要となった場合等
※ 手続きフロー図(1)と同じ
(6)発注者が必要があると認めるときの設計図書の変更(契約約款第 19 条)
発注者は、住民要望、周辺環境等の諸条件を検討した上で、工事を発注しているが、発注後の事情変化により、設計図書を変更する必要があると認める場合、発注者は変更内容を受注者に通知して、設計図書を変更することができる。
(例)◇周辺住民との協議により、変更する必要があると認める場合
◇関係官公署の行政指導により、変更する必要があると認める場合
◇関連工事との調整により、変更する必要があると認める場合
◇施設の維持管理又は利用方法が具体化したことにより、変更する必要があると認める場合等
※ 手続きフロー図(2)
(発注者)
発注者が設計図書の変更を行い、受注者にその内容を通知する。(契約約款第 19 条)
(発注者・受注者)
工期、請負代金額を変更する場合は、発注者と受注者が協議により定める。
(契約約款第 23 条、第 24 条)
(7) 受注者の責めに帰すことができない事由による工事の一時中止(契約約款第 20条)
受注者の責めに帰すことができない事由により、工事目的物等に損害が生じ又は工事現場の状態が変動したため受注者が工事を施工できないと認められる場合は、発注者は工事を一時中止させなければならない。
また、発注者は、工事を一時中止させた場合において、必要があると認められるときは、工事現場等を維持するための費用等を負担しなければならない。
(例)◇設計図書に定められた着手時期に、受注者の責めによらず施工できない場合
◇関係機関との協議が未了の場合
◇管理者間協議の結果、施工できない期間が設定された場合
◇受注者の責めによらないトラブル(地元調整等)が生じた場合
◇予見できない事態(地中障害物の発見等)が発生した場合
◇設計図書と実際の施工条件の相違又は設計図書の不備が発見された場合
※ 手続きフロー図(3)
(発注者)
発注者は、工事の一時中止を受注者に通知し、工事の全部又は一部の施工を一時中止させる。(契約約款第 20 条第 1 項、第 2 項)
(発注者)
発注者は、必要があると認められるときは、工期又は請負代金額を変更し、必要な費用を負担する。(契約約款第 20 条第 3 項)
(発注者・受注者)
工期、請負代金額を変更する場合は、発注者と受注者が協議により定める。
(契約約款第 23 条、第 24 条)
(8)受注者からの請求による工期の延長(契約約款第 21 条)
受注者は、天候の不良等、受注者の責めに帰すことができない事由により、工期内に工事を完成することができないときは、その理由を明示した書面により、発注者に工期の延長を請求することができる。
(例)◇天候不良の日が例年に比べて多いと判断でき、工期の延長が生じた場合。
◇設計図書に明示された関連工事との調整に変更があり、工期の延長が生じた場合。
◇その他受注者の責めに帰すことができない事由により、工期の延長が生じた場合
※ 手続きフロー図(4)
(受注者)
受注者の責めに帰すことができない事由により、工期内に工事を完成できない理由を明示した書面により、発注者に工期の延長を請求する。
(契約約款第 21 条第 1 項)
(発注者)
発注者は必要があると認められるときは工期の延長及び請負代金額を変更する。
(契約約款第 21 条第 2 項)
(発注者・受注者)
工期、請負代金額を変更する場合は、発注者と受注者が協議により定める。
(契約約款第 23 条、第 24 条)
(9)発注者の請求による工期の短縮(契約約款第 22 条)
発注者は、特別な理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮を受注者に請求することができる。
(例)◇工事一時中止に伴い工期延長が予想されるが、それが許容できない場合
◇関連工事等の影響により、工期の短縮が必要な場合。
◇その他の事由(地元調整、関係機関調整など)により工期の短縮が必要な場合。
※手続きフロー図(5)
(発注者)
特別な理由により工期を短縮する必要があるときは、工期の短縮を書面により受注者に請求する。(契約約款第 22 条第 1 項)
(受注者)
受注者は発注者からの請求に基づき、工期短縮を図るための施工計画を発注者に提出し、承諾を得る。
(発注者)
発注者は必要があると認められるときは請負代金額を変更し、必要な費用を負担しなければならない。(契約約款第 22 条第 1 項)
(発注者・受注者)
工期、請負代金額を変更する場合は、発注者と受注者が協議により定める。
(契約約款第 23 条、第 24 条)
6.条件明示について
明示項目 | 明示事項 |
工程関係 | 1.他の工事の開始又は完了の時期により、当該工事の施工時期、全体工事等に影響がある場合は、影響箇所及び他の工事の内容、開始又は完了の時期。 2.施工時期、施工時間及び施工方法が制限される場合は、制限される施工内容、施工時期、施工時間及び施工方法。 3.当該工事の関係機関等との協議に未成立のものがある場合は、制約を受ける内容及びその協議内容、成立見込み時期。 4.関係機関、自治体等との協議の結果、特定された条件が付され当該工事の工程に影響がある場合は、その項目及び影響範囲。 5.余裕工期を設定して発注する工事については、工事の着手時期。 6.工事着手前に地下埋設物及び埋蔵文化財等の事前調査を必要とする場合は、その項目及び調査期間。又、地下埋設物等の移設が予定されている場合は、その移設期間。 7.設計工程上見込んでいる休日日数等作業不能日数。 |
用地関係 | 1.工事用地等に未処理部分がある場合は、その場所、範囲及び処理の見込み時期。 2.工事用地等の使用終了後における復旧内容。 3.工事用仮設道路・資機材置き場用の借地をさせる場合、その場所、範囲、時期、期間、使用条件、復旧方法等。 4.施工者に、消波ブロック、桁製作等の仮設ヤ-ドとして官xxx及び発注者が借り上げた土地 を使用させる場合は、その場所、範囲、時期、期間、使用条件、復旧方法等。 |
施工条件は、契約条件となるものであることから、設計図書の中で明示するものとする。また、明示された条件に変更が生じた場合は、契約図書の関連する条項に基づき、適切に対応するものとする。
公害関係 | 1.工事に伴う公害防止(騒音、振動、粉塵、排出ガス等)のため、施工方法、建設機械・設備、作業時間等を指定する必要がある場合は、その内容。 2.水替・流入防止施設が必要な場合は、その内容、期間。 3.濁水、湧水等の処理で特別の対策を必要とする場合は、その内容(処理施設、処理条件等)。 4.工事の施工に伴って発生する騒音、振動、地盤沈下、地下水の枯渇等、電波障害等に起因する事業損失が懸念される場合は、事前・事後調査の区分とその調査時期、未然に防止するために必要な調査方法、範囲等。 |
安全対策関係 | 1.交通安全施設等を指定する場合は、その内容、期間。 2.鉄道、ガス、電気、電話、水道等の施設と近接する工事での施工方法、作業時間等に制限がある場合は、その内容。 3.落石、雪崩、土砂崩落等に対する防護施設が必要な場合は、その内容。 4.交通誘導警備員、警戒船及び発破作業等の保全設備、保安要員の配置を指定する場合又は発破作業等に制限がある場合は、その内容。 5.有毒ガス及び酸素欠乏等の対策として、換気設備等が必要な場合は、その内容。 |
工事用道路関係 | 1.一般道路を搬入路として使用する場合 (1)工事用資機材等の搬入経路、使用期間、使用時間帯等に制限がある場合は、その経路、期間、時間帯等。 (2)搬入路の使用中及び使用後の処置が必要である場合は、その処置内容。 2.仮道路を設置する場合 (1)仮道路に関する安全施設等が必要である場合は、その内容、期間。 (2)仮道路の工事終了後の処置(存置又は撤去)。 (3)仮道路の維持補修が必要である場合は、その内容。 |
仮設備関係 | 1.仮土留、仮橋、足場等の仮設物を他の工事に引き渡す場合及び引き継いで使用する場合は、その内容、期間、条件等。 2.仮設備の構造及びその施工方法を指定する場合は、その構造及びその施工方法。 3.仮設備の設計条件を指定する場合は、その内容。 |
建設副産物関係 | 1.建設発生土が発生する場合は、残土の受入場所及び仮置き場所までの距離等の処分及び保管条件。 2.建設副産物の現場内での再利用及び減量化が必要な場合は、その内容。 3.建設副産物及び建設廃棄物が発生する場合は、その処理方法、処理場等の処理条件。 なお、再資源化処理施設又は最終処分場を指定する場合は、その受入場所、距離等の処分条件。 |
工事支障物件等 | 1.地上、地下等の占用物件の有無及び占用物件等で工事支障物が存在する場合は、支障物件名、管理者、位置、移設時期、工事方法、防護等。 2.地上、地下等の占用物件工事と重複して施工する場合は、その工事内容及び期間等。 |
薬液注入関係 | 1.薬液注入を行う場合は、設計条件、工法区分、材料種類、施工範囲、削孔数量、削孔延長及び注入量、注入圧等。 2.周辺環境への調査が必要な場合は、その内容。 |
その他 | 1.工事用資機材の保管及び仮置きが必要である場合は、その保管及び仮置き場所、期間、保管方法等。 2.工事現場発生品がある場合は、その品名、数量、現場内での再使用の有無、引き渡し場所等。 3.支給材料及び貸与品がある場合は、その品名、数量、品質、規格又は性能、引渡場所、引渡期間等。 4.関係機関・自治体等との近接協議に係る条件等その内容。 5.架設工法を指定する場合は、その施工方法及び施工条件。 6.工事用電力等を指定する場合は、その内容。 7.新技術・新工法・特許工法を指定する場合は、その内容。 8.部分使用を行う必要がある場合は、その箇所及び使用時期。 9.給水の必要のある場合は、取水箇所・方法等。 |
7.「任意」・「指定」の使い分け
(1)基本的な考え方
仮設や施工方法等の「任意」・「指定」については、契約約款第 1 条第 3 項に定められているとおり、適切に扱う必要がある。
① 任意の仮設や施工方法等については、その一切の手段の選択は受注者の責任で行う。
② 任意の仮設、施工方法については、その変更があっても原則として設計変更の対象としない。
③ 任意・指定ともに当初積算時の想定と現地条件が異なる場合は変更を行う。
(2)留意事項
任意・指定の使い分けにおいては、以下の事項に留意する。
① 当初積算において発注者は、任意と指定の部分を明確にする。
② 任意においては、受注者が自らの責任で行うもので、仮設、施工方法等の選択は受注者に委ねられている。(=設計変更の対象ではない。)
(任意における不適切な対応例)
・○○工法で積算しているので、「○○工法以外での施工は不可」との対応。
・標準歩掛かりではバックホウで施工となっているので、「クラムシェルでの施工は不可」との対応。
・新技術の活用については受注者から申し出があった場合に、「積算上の工法で施工」するよう対応。
※ 発注者の指定事項以外は受注者の裁量の範囲
■自主施工の原則
契約約款第 1 条第 3 項により、設計図書に指定されていなければ、施工方法等は受注者の裁量の範囲
〈契約約款第 1 条第 3 項〉
仮設、施工方法その他工事目的物を完成するために必要な一切の手段(「施工方法等」という。)については、この約款及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、受注者がその責任において定める。
【任意と指定の考え方】
任 意 | x x | |
設計図書 | 施工方法等について具体的に 指定しない。 | 施工方法等について具体的に は指定する。 |
施工方法等の変更 | 受注者の任意(施工計画書等 の修正、提出は必要)。 | 発注者の指示又は承諾が必 要。 |
施工方法の変更がある場合の 設計変更 | 設計変更の対象としない。 | 設計変更の対象とする。 |
条件明示の変更に対応した設 計変更 | 設計変更の対象とする。 | 設計変更の対象とする。 |
その他 | <指定仮設とすべき事項> ・河川堤防と同等の機能を有する仮締切のある場合。 ・仮設構造物を一般交通に供する場合。 ・関係官公署との協議により制約条件のある場合。 ・特許工法又は特殊工法を採用する場合。 ・その他、第三者に特に配慮する必要がある場合。 ・他工事等に使用するため、工事完成後も存置される必要のある仮設。 |
※ 入札公告の際、応札者に対する参考として、発注者が積算で想定した仮設・施工方法等を「参考図」として示すことがある。「参考図」で示した内容は「任意」であり、実際の施工方法を拘束するものではない。