同社はポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域のテーマに「従業員教育制度の充実」、「CO₂排出量削減への取組」を、ネガティブ・インパクトを低減する領域のテーマ に「ワークライフバランスへの取組」、「従業員処遇の改善」を、ポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域とネガティブ・インパクトを低減する領域の両方に関連する領域 のテーマに「働きやすい職場への取組」を特定し、それぞれに目標とKPIを設定しました。当行は、定期的に達成状況や管理状況を確認し、対話やフォローアップを通じてサ...
有限会社ながたに生花との「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約締結について
~持続可能な地域社会の実現に向けてお客さまのサステナビリティ経営を支援~
南都銀行(頭取 xx xx)は、2024 年 3 月 25 日に有限会社ながたに生花(以下、同社)と自行組成の「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」の契約を締結いたしましたのでお知らせいたします。
「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」は、お客さまの企業活動が環境・社会・経済に与えるポジティブならびにネガティブな影響を特定し、ネガティブな効果を緩和しながらポジティブな効果を増大させることで、持続的な社会の実現を目指すご融資です。
同社はポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域のテーマに「従業員教育制度の充実」、「CO₂排出量削減への取組」を、ネガティブ・インパクトを低減する領域のテーマに「ワークライフバランスへの取組」、「従業員処遇の改善」を、ポジティブ・インパクトの拡大を目指す領域とネガティブ・インパクトを低減する領域の両方に関連する領域のテーマに「働きやすい職場への取組」を特定し、それぞれに目標とKPIを設定しました。当行は、定期的に達成状況や管理状況を確認し、対話やフォローアップを通じてサステナビリティ経営の実現をサポートします。
なお、本件及び本制度のフレームワークが国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の提唱する「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合していることについて、株式会社日本格付研究所により第三者意見を取得しています。
当行グループは本商品を通じて地域全体でのSDGs達成に向けた取組をリードしていくことで、持続可能な地域の成長・発展に貢献してまいります。
【本件の概要】
契約日 | 2024 年 3 月 25 日 | |
契約先 | 住所 | xxxxxxxx 0 xx 0-00 |
企業名 | 有限会社ながたに生花 | |
代表者 | 代表取締役 xx xx | |
設立年月日 | 1996 年 5 月 24 日 | |
資本金 | 3 百万円 | |
融資金額 | 100 百万円 | |
資金使途 | 運転資金 |
【本件に関するお問合せ先】
法人ソリューション部 xx・xx ℡ 0000-00-0000
こうむら
経営企画部(広報担当)xx・xx
℡ 0000-00-0000
評価対象企業:有限会社 ながたに生花
2024年3月25日
南都コンサルティング株式会社
1.資金調達の概要 | 2 |
2.事業概要 | 2 |
沿革 | 3 |
当社概要、組織図 | 4 |
創業精神、経営理念、Mission、Vision | 5 |
志事(しごと)の指針 | 6 |
ビジョンイメージボード | 7 |
店舗 | 8 |
Service Concept、当社の葬儀の特徴 | 10 |
当社の強み | 11 |
社会貢献活動 | 12 |
外部環境 | 14 |
3.包括的分析 | 15 |
UNEP FIの定めたインパクト評価ツールにより確認したインパクト一覧 | 15 |
有限会社ながたに生花の個別要因を加味したインパクトの特定 | 16 |
業種により確認したインパクトレーダー、個別要因を加味して特定したインパクトレーダー | 17 |
4.KPIの決定 | 18 |
ポジティブインパクトとネガティブインパクトの内容 | 19 |
5.サステナビリティ経営体制(推進体制、管理体制、実績) | 23 |
6.南都銀行によるモニタリングの頻度と方法 | 23 |
南都コンサルティング株式会社は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が公表しているポジティブインパクトファイナンス原則に則り、有限会社ながたに生花の包括的なインパクト分析を行った。
株式会社南都銀行は、本評価書で特定されたポジティブインパクトの向上とネガティブインパクトの低減に向けた取り組みを支援するため、有限会社ながたに生花に対し、ポジティブインパクトファイナンスを実施する。
1.資金調達の概要
資金調達者の名称 | 有限会社 ながたに生花 |
調達金額 | 100,000,000円 |
資金使途 | 運転資金 |
モニタリング期間 | 5年 |
2.事業概要
企業名 | 有限会社 ながたに生花 |
代表者 | 代表取締役社長 xx xx |
本社所在地 | xxxxxxxx0xx0-00 |
従業員数 | 26名(2023年9月末) |
拠点数 | 4か所(セレモニーホール1か所 家族葬専用式場3か所) |
売上高 | 606百万円(2023年9月期) |
資本金 | 3百万円 |
事業内容 | 葬儀業 |
販売先 | 一般顧客 |
◼ 沿革
沿革 | 1950年 奈良県xx市にて、現社長の祖父であるxxxxが「ながたに生花店」開業 1960年 葬祭事業開始 1995年 現社長の父であるxxxxが「有限会社ながたに生花」創業 2005年 セレモニーホールながたに竣工 2006年 霊柩運送事業免許取得 2014年 xxxx 取締役専務就任 2017年 家族葬専用式場 縁~えにし~xx店竣工 2020年 家族葬専用式場 縁~えにし~xx店竣工 2022年 家族葬専用式場 縁~えにし~xx店竣工 2023年 xxxx 代表取締役社長就任 |
◼ 当社概要
当社は、奈良県xx市に本社を置く従業員26名の葬儀業者である。1950年に生花小売業者として創業。1960年に葬儀業を開始し、1995年に法人化した。
グリーフケア(死別の悲しみを抱える遺族のサポート)の精神に基づいた
、当社独自の遺族への向き合い方が評価され、xx市でのシェアは70%となっている。なお、市内の葬儀社数は当社を含め4社である。
現在当社は、セレモニーホールを4か所運営している。今後も、故人への敬意を表し、遺族と心から向き合う葬儀社として、セレモニーホール空白地帯への進出等により、精神面・物質面の両面で地域の皆様に喜んでいただけるサービスを提供し、地域とともに成長していく方針である
。
式典
統括部長
◼ 組織図
マーケティングx
xx・戦略人事
社長 xxxx
経理
アフター
顧客管理
車両
xxエリア
xxエリア
生花
五条エリア
◼ 創業精神
奈良県で一番愛される企業を目指します
私たちは奈良県で創業し、本社を置く企業です。
地域の方々に葬儀というサービスを通じて、奈良県で最も感謝を生み出し、幸せに貢献する企業を目指します。
◼ 経営理念
一. 私達は、心の尊厳を要諦とし、永遠の命にやすらぎと癒しを提供し続けることにより、地域社会に貢献します。
二. 私達は、お客様やその周辺の皆様に、常に真心を持って接し、奉仕の精神に徹します。 三. 私達は、生かせて戴いていることに感謝の気持ちを忘れることなく、日常生活においても
、挨拶や態度から靴の並べ方に到るまで、細やかな気配りを身につけて、より豊かな人生を送るために、人間形成の更なる向上充実に励みます。
◼ Mission
関わる全ての方々のご縁をより深く刻み 笑顔で元気に過ごせる場所を創出すること
◼ Vision
なくてはならない存在へ
私たちはお客様の家族の一員となれる存在を目指します。そして志事(しごと)を通じて、感謝の心をお届けし、関
わる全ての方々に幸せな時間を提供します。
◼ 志事(しごと)の指針愛
ながたに生花にとって、全ての行動の基本にあるものが「愛」です。
愛を持たない行動は、どんなものであっても賞賛されるものではありません。逆に愛を持って行うことは、それがどんな結果を生み出すものであったとしても、それはながたにの「志事」につながるものです。
信念
私たちはゆるぎない想いを持ち、常にお客様に全力で向き合います。ながたには本気だからこそぶつかることも恐れません。
謙虚
私たちは自分の思い込みやプライドを隣に置き、xxであることを忘れません。ながたには仲間からの言葉を受け入れ、そして自分の成長につなげます。
寄り添う
私たちはお客様の想いを理解しながら、とことんお客様の声に耳を傾けます。
ながたには仲間が苦しんでいる、悩んでいる時に必ず手を差し伸べます。
向上心
私たちは「やったことがない」を言い訳にすることはしません。ながたには迷った時には、必ず一歩前に踏み出します。
感謝
私たちはお客様や地域に支えられ、今日があることを忘れません。ながたには「ありがとう」と「おかげさま」の心を忘れません。
信頼
私たちはお客様に「任せる」と言っていただける関係づくりを中心に置きます。
ながたには「任せる」ことを喜びとし、「任せられる」ことの責任を理解しています。
◼ ビジョンイメージボード
下図は、当社のビジョンを一枚の絵に表した「ビジョンイメージボード」である。
左側の大きな木は「なくてはならない存在」を表している。そして木の中は、志事の指針である「愛・信念・xx・寄り添う・向上心・感謝・信頼」を表している。
右側のステージを備えた建築物では、当社と関わる全ての人々(取引業者、仕出業者、生花業者等)との関係構築のあり方や、当社が今後目指す姿を表現している。
志事の指針の具現化と、関係者とのxxx大切にした事業活動の実践を通じて、創業地の奈良において、葬儀の後も顧客に愛を届け続けることで、顧客と「お葬式で終わらない関係づくり」を目指していきたいと考えている。
◼ 店舗
セレモニーホールながたに xx本館
斎場着席人数:200人
所 在 地 :奈良県xx市竣 工 :2005年
設 備 等 :親族控室、仮眠可能、シャワーあり、バリアフリー、付き添い可能特 徴 :家族葬から一般層まで、お客様の幅広い希望に対応可能
外観 斎場 親族控室
家族葬専用式場 縁~えにし~ xx店
斎場着席人数:20人
所 在 地 :奈良県xx市竣 工 :2017年
設 備 等 :親族控室、仮眠可能、シャワーあり、安置室完備、付き添い可能特 徴 :xx市初の家族葬専用式場
外観 斎場 親族控室
家族葬専用式場 縁~えにし~ xx店
斎場着席人数:50人
所 在 地 :和歌山県xx市竣 工 :2020年
設 備 等 :親族控室、仮眠可能、シャワーあり、安置室完備、バリアフリー、付き添い可能
特 徴 :家族葬専用式場
外観 斎場 仮眠室
家族葬専用式場縁~えにし~ xx店
斎場着席人数:50人
所 在 地 :奈良県葛xxx 工 :2022年
設 備 等 :親族控室、仮眠可能、シャワーあり、安置室完備、バリアフリー、付き添い可能
特 徴 :葛xxxの葬祭会館。感染症拡大防止対策として、換気空調システムを完備。安心・安全な葬儀サービスの提供を実現している。
外観 斎場 シャワー室
◼ Service Concept
日本で一番愛が溢れるお葬式
私たちはお客様を家族のように愛し そして愛され心通わせる関係を築き 日本で一番 愛が溢れるお葬式を実現します
◼ 当社の葬儀の特徴
1.遺族への説明を大切にし、葬式費用の不xxさへの不安を解消
当社では不xxな葬式費用をわかりやすく提示し、顧客の納得の上、葬式の手伝いを行っている。具体的には、顧客により必要なものが異なるため、必要なものだけ料金に含んで提示している。また、当社から宗教者を紹介する場合には、お布施の料金まで明確に提示している。
2.遺族の要望を形にした葬式を手作り
遺族の話を丁寧に聞くことで世界にひとつだけの葬式を手作りしている。具体的には、しきたりや宗教、近隣の付き合い等、遺族の要望を大事にした葬儀の手伝いを心がけている。年間 600件あまりの葬儀を手伝っており、地域の風習等を把握したスタッフが多数在籍しているため柔軟かつ丁寧な対応が可能である。
3.故人と遺族とののお別れの時間を大切にしている
故人と遺族とで想い出を語るお別れの時間をゆっくりと取っている。具体的には、お別れの時間に故人の好きだった想い出の品や写真などをお棺に納める時間をゆっくりと取っている。
◼ 当社の強み
1.グリーフケアの精神に基づいた葬祭催行により地域住民から厚い信頼を得ていること
他社にはない「グリーフケア(死別の悲しみを抱える遺族のサポート)の精神に基づいた
、当社独自の遺族への向き合い方」により、地域住民から厚い信頼を得ている。
一般に葬儀の役割には、①社会的役割(当該人物の死を社会に知らせること)と、②遺族や関係者に死を受容してもらう心理的な役割、がある。
①人はこの世に生を受け、様々な人々との関係を持ち、死を迎える。葬儀はこれらの人々に当該人物の死を告知(社会に通知)する役割があるということ。
②人の死は家族や関係者に悲しみや心の痛みをもたらすが、これを受け入れなければならない。通夜、葬儀・告別式はそのプロセスにおいて遺族の心をケアするという重要な役割を担っているということ。
当社は「社員ひとりひとりの『遺族への向き合い方』が遺族に癒しを与える」という信念に基づき、各自が人間力を高める訓練に取り組み、かつ、徹底的に故人への敬意を表すことで「遺族と向き合ってくれる葬儀社」として地域住民から信頼を得ている。
2.地域に寄り添うイベントの開催により、親しみやすい葬儀社となっていること
毎年地域住民に向け、人形供養祭、大感謝祭、野菜の朝市を行っている。人形供養は、地域住民が自由に持ち込んだ人形を、当社が供養を行う。大感謝祭は、物販、飲食、遊戯、職業体験等のブースを設置し、地域住民が自由に参加できるようにしている。これは、葬儀会館への出入りを体験することで、葬儀に対する心理的障壁を低くする効果が見込まれる。
3.生花部を有し、高いレベルの生花アレンジメントを安価で提供できる
祖業が生花小売業であり、社内に生花部を有する。xxに亘り培った生花アレンジメントスキルを活かした表現力と、安価な仕入ルートにより、顧客から高い評価を得ている。
4.幅広いノウハウと、手厚いアフターフォロー
一般葬、家族葬、一日葬(通夜を行わない葬儀)、直葬(火葬のみを行う)等、あらゆる形態の葬儀ノウハウを有している。また、葬儀後に遺族が行わなければならない諸事に関するフォロー体制も整備している。
◼ 社会貢献活動
地域密着型の企業として、歴史ある熊野の伝統文化の継承や、地域の伝統行事の支援、文化・環境の保護などに取り組むことを使命としており、さまざまな活動に取り組んでいる。
【私募債による寄贈】
2022年、南都銀行の引受によるSDGs私募債を起債。地元の中学校にワンタッチテントの寄贈を行い、持続可能な地域社会の実現に貢献。
【地域の清掃活動】
会館の前の約5,600mの道路で、定期的に清掃活動をしている。地域住民にも好評である。
【定期的なイベントの開催】
日々地域住民と交流できるよう、定期的に「大感謝祭」
「朝市」等のイベントを行っている。アレンジフラワーや野菜、仕出し弁当を格安で販売している。当社の会員だけでなく、一般の地域住民も参加可能とすることで、地域住民に交流の場を提供している。
【新型コロナウイルス感染症対策】
新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年、xx市教育委員会にマスクを寄贈。また、顧客の家を約300件訪問し、社長直筆の手紙と共にマスクを配布。地域の子供たちに、安全に教育を受けられる環境を提供する一助となった。
【地域行事やお祭りへの寄付・後援】
地元の伝統文化の継承に貢献したいという考えのもと、「吉野川祭り」を始め、地域行事やお祭り、地蔵盆等に対し、寄付や後援を行っている。
【人形供養祭】
xx回~二回の頻度で、地域住民が思い入れのある大切な人形、ぬいぐるみ等を持ち寄り、当社にて供養を行っている。
◼ 外部環境
2022年の市場規模は5,607億円、葬儀単価の下落がコロナ禍で加速
経済産業省「特定サービス産業動態統計」によると、葬儀業を営む企業の売上高は、2012年頃から6,000億円前後で推移していた。コロナ禍の影響で、社葬などの大規模なものが中止・延期になったほか、小規模葬儀の増加による葬儀単価の低下などにより、2020年は5,135億円にまで減少した。2021年も同水準であったが、2022年は5,607億円まで回復している。
また、葬儀業企業の売上高を取扱件数で除した1件当たりの葬儀売上高をみると、2006年の 152万円をピークに減少傾向となっている。特にコロナ禍ではその傾向が加速し、2020年は前年比13%減と120万円を下回り、2021年以降も低調である。この背景としては、死亡年齢の上昇による老老葬儀の増加や、都市部を中心に少人数での葬儀や家族葬、直葬(火葬のみの葬儀)が増えていることなどが挙げられる。また、インターネットの普及により、これまで不透明だった葬儀場の価格設定や利用者の評価などの開示が増え、低価格化が進んだことも要因と考えられる。
葬儀業売上高の推移
葬儀業売上高合計:棒グラフ(十億円)
700
600
500
400
300
200
100
0
葬儀業売上高合計 1件あたりの葬儀売上高
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
2000年度
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
2018年度
2019年度
2020年度
2021年度
2022年度
0.0
出所
1件あたりの葬儀売上高:線グラフ(百万円)
経済産業省「特定サービス産業動態統計」を基に、グラフは南都コンサルティングが作成
国内の年間死亡者数は増加傾向で、2040年にピークを迎える見込み
年間死亡者数の推移
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
厚生労働省の「人口動態統計」によると、年間死亡者数はゆるやかな増加傾向にある。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口推計(令和5年推計)」によると、死亡者数の増加は 2040年の167万人まで、今後も増加を続けると推計されている。ただし、コロナ禍で増えた小規模かつ低価格の葬儀が主流となっていくと、市場規模は伸び悩む可能性がある。
死亡者数(千人)
出所
2000年度
2001年度
2002年度
2003年度
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年度
2012年度
2013年度
2014年度
2015年度
2016年度
2017年度
2018年度
2019年度
2020年度
2021年度
2022年度
2023年度
厚生労働省「人口動態統計」を基に
、xxxは南都コンサルティングが
作成
3.包括的分析
PIF原則およびモデル・フレームワークに基づき、南都コンサルティング株式会社が所定のインパクト評価の手続きを実施した。
まず、UNEP FIの定めたインパクト評価ツールを用い、ポジティブ、ネガティブなインパクトトピックを判定したものが以下となる。
なお、当社の業種は、国際標準産業分類に基づき「9603 葬儀および関連業務」と判断した。
◼ UNEP FIの定めたインパクト評価ツールにより確認したインパクト一覧
インパクトエリア | インパクトトピック | ポジティブ | ネガティブ |
人格と人の安全保障 | 紛争 | ||
現代奴隷 | |||
児童労働 | |||
データプライバシー | |||
自然災害 | |||
健康および安全性 | 健康および安全性 | ||
資源とサービスの入手可能 性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 | 水 | ||
食料 | |||
エネルギー | |||
住居 | |||
健康と衛生 | |||
教育 | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
コネクティビティ | |||
文化と伝統 | |||
ファイナンス | |||
生計 | 雇用 | ||
賃金 | |||
社会的保護 | |||
平等とxx | ジェンダー平等 | ||
民族・人種平等 | |||
年齢差別 | |||
その他の社会的弱者 | |||
強固な制度・平和・安定 | 法の支配 | ||
市民的自由 | |||
健全な経済 | セクターの多様性 | ||
零細・中小企業の繁栄 | |||
インフラ | インフラ | ||
経済収束 | 経済収束 | ||
気候の安定性 | 気候の安定性 | ||
生物多様性と生態系 | 水域 | ||
大気 | |||
土壌 | |||
生物種 | |||
生息地 | |||
サーキュラリティ | 資源強度 | ||
廃棄物 |
◼ 有限会社ながたに生花の個別要因を加味したインパクトの特定
「健康および安全性(ポジティブ)」:当社は、本トピックについて特段ポジティブに資する取組を行っていないため、削除する。
「教育」:当社の強みである「グリーフケアの精神に基づいた、当社独自の遺族への向き合い方」を実現するためには、高度な社員教育が必要であり、これを実践してることから、追記する。
「雇用(ネガティブ)」:当社は、年間休日が105日と、一般的な水準との比較でやや少ないため、追記する。
「賃金」:2024年1月に平均7.3%の賃上げを実施しており、同業他社平均(382万円:厚生労働省
「令和4年度 賃金構造基本統計調査」)と比べ、概ね遜色ない水準である。よってポジティブ、ネガティブのいずれにも該当しないため、削除する。
「気候の安定性」:当社は、ドライアイスの使用量を削減することにより、CO2削減に取り組んでいる。これは、気候の安定性にポジティブに寄与するため、追記する。
「廃棄物」:当社事業の性質上、有害物質を排出することは無く、廃棄物の発生量も多くない。また
、発生した廃棄物については自治体の指導に基づき適切に処理しており、ネガティブに資するものはないため削除する。
インパクトエリア | インパクトトピック | ポジティブ | ネガティブ |
人格と人の安全保障 | 紛争 | ||
現代奴隷 | |||
児童労働 | |||
データプライバシー | |||
自然災害 | |||
健康および安全性 | 健康および安全性 | ||
資源とサービスの入手可能 性、アクセス可能性、手ごろさ、品質 | 水 | ||
食料 | |||
エネルギー | |||
住居 | |||
健康と衛生 | |||
教育 | |||
移動手段 | |||
情報 | |||
コネクティビティ | |||
文化と伝統 | |||
ファイナンス | |||
生計 | 雇用 | ||
賃金 | |||
社会的保護 | |||
平等とxx | ジェンダー平等 | ||
民族・人種平等 | |||
年齢差別 | |||
その他の社会的弱者 | |||
強固な制度・平和・安定 | 法の支配 | ||
市民的自由 | |||
健全な経済 | セクターの多様性 | ||
零細・中小企業の繁栄 | |||
インフラ | インフラ | ||
経済収束 | 経済収束 | ||
気候の安定性 | 気候の安定性 | ||
生物多様性と生態系 | 水域 | ||
大気 | |||
土壌 | |||
生物種 | |||
生息地 | |||
サーキュラリティ | 資源強度 | ||
廃棄物 |
◼ 業種により確認したインパクトレーダー
インパクト評価ツールにより確認したところ、5項目が抽出された。
(□で囲んでいる項目)
◼ 個別要因を加味して特定したインパクトレーダー
個別要因を加味し、5項目を特定した。
(□で囲んでいる項目)
4.KPIの決定
有限会社ながたに生花の事業活動が、社会・社会経済・自然環境に影響を与えるインパクトについて、重点目標に基づく取り組みと指標を設定した。以下がその要約となる。
トピック | 内容 | KPI | SDGs |
・健康および安全性 ・雇用 | ・働きやすい職場環境への取組 | • 2030年までに、全ての従業員がアンコンシャスバイアス研修を受講する • 2030年までに、全ての従業員が、外部有資格者によるコーチングを受ける(費用会社負担) | |
• 教育 | • 従業員教育制度の充実によるサービスレベルの向上 | • 2030年までに、全ての従業員がグリーフケア研修を受講する | |
• 雇用 | • 年間休日の増加 | • 2030 年までに、 年間休日を 111日まで増加させる | |
• 社会的保護 | • 従業員の退職後の安定した生活資金の確保 | • 2025年までに、確定拠出年金制度を導入する ※同制度導入以降も、従業員の生活安定に資する制度を随時導入していく | |
• 気候の安定性 | • CO2排出量削減への取組 | • 2030年までに、ドライアイス使用量を40%削減する |
◼ ポジティブインパクトとネガティブインパクトの内容
働きやすい職場への取組
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブインパクト(健康および安全性)ポジティブインパクト(雇用) |
インパクトトピック | 「健康および安全性」「雇用」 |
影響を与えるSDGsの目標
| • ターゲット3.4 2030年までに、非感染性疾患による若年死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する。 • ターゲット8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する 。 • ターゲット8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。 • ターゲット8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
内容・対応方針 | • 働きやすい職場環境への取組 |
毎年モニタリングする目標 とKPI | • 2030年までに、全ての従業員がアンコンシャスバイアス研修を受講する • 2030年までに、全ての従業員が、外部有資格者によるコーチ ングを受ける(費用会社負担) |
備考 | • アンコンシャスバイアスとは、自分が気付かないうちに芽生えている無意識な思い込みのことである。 本研修により、アンコンシャスバイアスを自覚する力、さらに、自覚した時に自らを修正するスキルの習得を目指す。 顧客や世の中全般に対しても有用なスキルである。 偏見を無くす意識を醸成することが、組織風土の改善、社員ひとりひとりが生き生きと働くことができる職場環境の形成に繋がるのである。 • コーチングとは、コーチと1対1で話をする場を設け、自分自身 について話をすることで、日頃のモヤモヤに向き合ったり、目 標について考えたりすること。忙しい毎日のなかで、自分自身 や目標、将来等についてゆっくり考えることができる。相手が 社外の人間であるため、忌憚のない想いを吐露することができ、メンタルケアやモチベーションアップの効果も期待できる。 |
取組内容
実績は、アンコンシャスバイアス研修受講者0名、コーチングを受けた者6名(全てリーダー層)である。KPIに示す通り、2030年までに全ての従業員がアンコンシャスバイアス研修及びコーチングを受けられるよう、業務内容、繁忙時期等に応じた受講スケジュールを定める。
また、受講により習得したスキルを業務に活用できているか、社長自ら日常的にモニタリング
を行とともに、受講内容については随時検証、見直しを行っていく。
従業員教育制度の充実
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブインパクト |
インパクトトピック | 「教育」 |
影響を与えるSDGsの目標 | • ターゲット4.4 2030年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。 |
内容・対応方針 | • 従業員教育制度の充実によるサービスレベルの向上 |
毎年モニタリングする目標とKPI | • 2030年までに、全ての従業員がグリーフケア研修を受講する |
備考 | • オリジナル会葬礼状作成日本一の、株式会社マコセエージェン シーが実施するグリーフケア研修を受講する。 この研修では種々の高度なスキルを得ることができるが、一つの例として遺族からのヒアリングのスキルが挙げられる。 グリーフケアでは遺族が、家族ではない第三者にしっかりと思いや気持ちを吐き出すことが重要である。 遺族の気持ちに寄り添い、故人との思い出や、感謝の言葉、 もっとしてあげたかったこと等をヒアリングするには高度なスキルが必要である。当該研修を受講することにより、これらのスキルを得ることができる。 ヒアリングした「故人に対する遺族の気持ち」を形にするお見送りやご供養を提案することで、愛が溢れるお葬式を実現できるのである。 |
取組内容
これまでに本研修を受講した者は10名である。KPIに示す通り、全ての従業員が本研修を受講
できるよう、業務内容、繁忙時期等に応じた受講スケジュールを定める。
また、受講により習得したスキルを業務に活用できているか、社長自ら日常的にモニタリングを行とともに、受講内容については随時検証、見直しを行っていく。
ワークライフバランスへの取組
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブインパクト |
インパクトトピック | 「雇用」 |
影響を与えるSDGsの目標 | • ターゲット8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する 。 • ターゲット8.5 2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。 • ターゲット8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、全ての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。 |
内容・対応方針 | • 年間休日の増加 |
毎年モニタリングする目標 とKPI | • 2030年までに、年間休日を111日まで増加させる |
備考 | • 現在、法定有給休暇(年5日)は100%取得している • 現在、残業時間は法律の範囲内で運用を行っている |
取組内容
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、従業員30人~99人の企業の平均年間休日は109.8日である。
現状、当社の年間休日は105日であり平均よりも少ないため、これを改善するべく上記KPIに取り組む。
また、全員が年間111日の休日を取得できるよう、繁閑の平準化、適正な人員配置に努める。 111日の休日を取得することが当然、という雰囲気の醸成(朝礼等の機会に、社長自ら直接示達する)に努める。
従業員処遇の改善
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ネガティブインパクト |
インパクトトピック | 「社会的保護」 |
影響を与えるSDGsの目標 | • ターゲット10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。 |
内容・対応方針 | • 従業員の退職後の安定した生活資金の確保 |
毎年モニタリングする目標とKPI | • 2025年までに、確定拠出年金制度を導入する ※同制度導入以降も、従業員の生活安定に資する制度を随時導入検討していく |
取組内容
社内での合意は形成済であり、導入に向けて支障は無い。現在、南都銀行の支援を受けて導入手続を進めている状況であり、2025年中には導入手続が完了する見込。
本件導入完了後も南都銀行には、継続的に従業員処遇の改善に関する情報提供をしてほしい旨
依頼しており、同意を得ている。
また、年金制度に関わらず、従業員処遇改善に繋がる制度で、当社の実態等を鑑み、導入可能な制度があれば随時導入を検討していく方針である。
CO2排出量削減への取組
項目 | 内容 |
インパクトの種類 | ポジティブインパクト |
インパクトトピック | 「気候の安定性」 |
影響を与えるSDGsの目標 | • ターゲット13.1 全ての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靭性 (レジリエンス)及び適応の能力を強化する。 |
内容・対応方針 | • CO2排出量削減への取組 |
毎年モニタリングする目標とKPI | • 2030年までに、ドライアイス使用量を40%削減する |
取組内容
一般的に、遺体の保全に用いられるドライアイスの使用量を削減していく取組。
当社は遺体を保全するための機械装置「ドライクーラー」を4台保有しており、この台数を増やしていく計画。
また、繰り返し使用可能な「エコドライアイス」の導入も予定している。これらにより、ドライアイスの使用量を削減する計画である。
5.サステナビリティ経営体制(推進体制、管理体制、実績)
本ポジティブインパクトファイナンスに取り組むにあたり、有限会社ながたに生花では、長谷真人代表取締役社長を最高責任者とし、事業活動とインパクトレーダー、SDGsとの関連性、KPIの設定について検討を重ね、取組内容の抽出を行っている。本ポジティブインパクトファイナンス実行後においても、社員一人一人が目標達成に向けて取組み、社会的な課題の解決への貢献とともに持続的な経営の実現を目指していく。各KPIは社長自ら統括し、達成度合いをモニタリングしていく。
有限会社ながたに生花では、地域における社会的課題や環境問題にも積極的に取り組み、当地をリードしていく企業を目指す。
最高責任者 | 代表取締役社長 長谷 真人 |
モニタリング担当者 | 代表取締役社長 長谷 真人 |
6.南都銀行によるモニタリングの頻度と方法
本ポジティブインパクトファイナンスで設定したKPIの達成及び進捗状況については、南都銀行と有限会社ながたに生花の担当者が定期的に会合の場を設け、共有する。会合は少なくとも年に1回実施する ほか、日頃の情報交換や営業活動の場等を通じて実施する。
具体的には決算が9月のため、12月に関連する資料を南都銀行が受領し、モニタリングとなる指標についてフィードバック等のやりとりを行う。南都銀行は、KPI達成に必要な資金及びその他ノウハウの提供、あるいは南都銀行の持つネットワークから外部資源とマッチングすることで、KPI達成をサポートする。
モニタリング方法 | 対面、Web会議等、モニタリング方法の指定はない定例訪問などを通じて情報交換を行う |
モニタリングの実施時期、頻度 | 毎年12月に、年1回程度実施する |
モニタリングした結果のフィードバック方法 | KPI等の指標の進捗状況を確認する 必要に応じてKPI達成のために必要なノウハウの提供、外部資源とのマッチングを検討するなど、KPI達成をサポートする |
以上
1. 本評価書は、南都コンサルティング株式会社が、南都銀行から委託を受けて実施したもので、
南都コンサルティング株式会社が南都銀行に対して提出するものです。
2. 南都コンサルティング株式会社は、依頼者である南都銀行および南都銀行がポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する有限会社ながたに生花から供与された情報と、南都コンサルティング株式会社が独自に収集した情報に基づく、現時点での計画または状況に対する評価で
、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。
3. 本評価を実施するに当たっては、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が提唱した
「ポジティブ・インパクト金融原則」に適合させるとともに、ESG金融ハイレベル・パネル設置要綱第2項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」に整合させながら実施しています。なお株式会社日本格付研究所から、本ポジティブ・インパクト・ファイナンスに関する第三者意見書の提供を受けています。
<本件に関するお問い合わせ先>南都コンサルティング株式会社 ディレクター 別所 慶和
〒630-8677
奈良県奈良市橋本町16
TEL:0742-93-3102 FAX:0742-93-3103
第三者意見書
2024 年 3 月 25 日株式会社 日本格付研究所
評価対象: 有限会社ながたに生花に対するポジティブ・インパクト・ファイナンス |
貸付人:株式会社南都銀行 |
評価者:南都コンサルティング株式会社 |
第三者意見提供者:株式会社日本格付研究所(JCR) |
結論:
本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置さ
れたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
I. JCR の確認事項と留意点
JCR は、株式会社南都銀行(「南都銀行」)が有限会社ながたに生花(「ながたに生花」)に対して実施する中小企業向けのポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)について、南都コンサルティング株式会社(「南都コンサルティング」)による分析・評価を参照し、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)の策定した PIF 原則に適合していること、および、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的であることを確認した。
PIF とは、SDGs の目標達成に向けた企業活動を、金融機関が審査・評価することを通じて促進し、以て持続可能な社会の実現に貢献することを狙いとして、当該企業活動が与えるポジティブなインパクトを特定・評価の上、融資等を実行し、モニタリングする運営のことをいう。
PIF 原則は、4 つの原則からなる。すなわち、第 1 原則は、SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること、第 2 原則は、PIF 実施に際し、十分なプロセス、手法、評価ツールを含む評価フレームワークを作成すること、第 3 原則は、ポジティブ・インパクトを測るプロジェクト等の詳細、評価・モニタリングプロセス、ポジティブ・インパクトについての透明性を確保すること、第 4 原則は、PIF 商品が内部組織または第三者によって評価されていることである。
UNEP FI は、ポジティブ・インパクト・ファイナンス・イニシアティブ(PIF イニシアティブ)を組成し、PIF 推進のためのモデル・フレームワーク、インパクト・レーダー、インパクト分析ツールを開発した。南都銀行は、中小企業向けの PIF の実施体制整備に際し、南都コンサルティングと共同でこれらのツールを参照した分析・評価方法とツールを開発している。ただし、PIF イニシアティブが作成したインパクト分析ツールのいくつかのステップは、国内外で大きなマーケットシェアを有し、インパクトが相対的に大きい大企業を想定した分析・評価項目として設定されている。JCR は、PIF イニシアティブ事務局と協議しながら、中小企業の包括分析・評価においては省略すべき事項を特定し、南都銀行及び南都コンサルティングにそれを提示している。なお、南都銀行は、本ファイナンス実施に際し、中小企業の定義を、PIF 原則等で参照している IFC(国際金融公社)の定義に加え、中小企業基本法の定義する中小企業、会社法の定義する大会社以外の企業としている。
JCR は、中小企業のインパクト評価に際しては、以下の特性を考慮したうえでPIF 原則との適合性を確認した。
① SDGs の三要素のうちの経済、PIF 原則で参照するインパクト領域における「包括的で健全な経済」、「経済収れん」の観点からポジティブな成果が期待できる事業主体で
ある。ソーシャルボンドのプロジェクト分類では、雇用創出や雇用の維持を目的とした中小企業向けファイナンスそのものが社会的便益を有すると定義されている。
② 日本における企業数では全体の 99.7%を占めるにもかかわらず、付加価値額では 52.9%にとどまることからもわかるとおり、個別の中小企業のインパクトの発現の仕方や影響度は、その事業規模に従い、大企業ほど大きくはない。1
③ サステナビリティ実施体制や開示の度合いも、上場企業ほどの開示義務を有していないことなどから、大企業に比して未整備である。
II. PIF 原則への適合に係る意見
PIF 原則 1
SDGs に資する三つの柱(環境・社会・経済)に対してポジティブな成果を確認できるかまたはネガティブな影響を特定し対処していること。
SDGs に係る包括的な審査によって、PIF は SDGs に対するファイナンスが抱えている諸問題に直接対応している。
南都銀行及び南都コンサルティングは、本ファイナンスを通じ、ながたに生花の持ちうるインパクトを、UNEP FI の定めるインパクト領域および SDGs の 169 ターゲットについて包括的な分析を行った。
この結果、ながたに生花がポジティブな成果を発現するインパクト領域を有し、ネガティブな影響を特定しその低減に努めていることを確認している。
SDGs に対する貢献内容も明らかとなっている。
PIF 原則 2
PIF を実行するため、事業主体(銀行・投資家等)には、投融資先の事業活動・プロジェクト・プログラム・事業主体のポジティブ・インパクトを特定しモニターするための、十分なプロセス・方法・ツールが必要である。
JCR は、南都銀行が PIF を実施するために適切な実施体制とプロセス、評価方法及び評価ツールを確立したことを確認した。
1 経済センサス活動調査(2016 年)。中小企業の定義は、中小企業基本法上の定義。業種によって異なり、製造業は資本金 3 億円以下または従業員 300 人以下、サービス業は資本金 5 千万円以下または従業員 100 人以下などだ。小規模事業者は製造業の場合、従業員 20 人以下の企業をさす。
(1) 南都銀行は、本ファイナンス実施に際し、以下の実施体制を確立した。
(出所:南都銀行提供資料)
(2) 実施プロセスについて、南都銀行では社内規程を整備している。
(3) インパクト分析・評価の方法とツール開発について、南都銀行からの委託を受けて、南都コンサルティングが分析方法及び分析ツールを、UNEP FI が定めた PIF モデル・フレームワーク、インパクト分析ツールを参考に確立している。
PIF 原則 3 透明性
PIF を提供する事業主体は、以下について透明性の確保と情報開示をすべきである。
・本PIF を通じて借入人が意図するポジティブ・インパクト
・インパクトの適格性の決定、モニター、検証するためのプロセス
・借入人による資金調達後のインパクトレポーティング
PIF 原則 3 で求められる情報は、全て南都コンサルティングが作成した評価書を通して銀行及び一般に開示される予定であることを確認した。
PIF 原則 4 評価
事業主体(銀行・投資家等)の提供する PIF は、実現するインパクトに基づいて内部の専門性を有した機関または外部の評価機関によって評価されていること。
本ファイナンスでは、南都コンサルティングが、JCR の協力を得て、インパクトの包括分析、特定、評価を行った。JCR は、本ファイナンスにおけるポジティブ・ネガティブ両側面のインパクトが適切に特定され、評価されていることを第三者として確認した。
III. 「インパクトファイナンスの基本的考え方」との整合に係る意見
インパクトファイナンスの基本的考え方は、インパクトファイナンスを ESG 金融の発展形として環境・社会・経済へのインパクトを追求するものと位置づけ、大規模な民間資金を巻き込みインパクトファイナンスを主流化することを目的としている。当該目的のため、国内外で発展している様々な投融資におけるインパクトファイナンスの考え方を参照しながら、基本的な考え方をとりまとめているものであり、インパクトファイナンスに係る原則・ガイドライン・規制等ではないため、JCR は本基本的考え方に対する適合性の確認は行わない。ただし、国内でインパクトファイナンスを主流化するための環境省及びESG 金融ハイレベル・パネルの重要なメッセージとして、本ファイナンス実施に際しては本基本的考え方に整合的であるか否かを確認することとした。
本基本的考え方におけるインパクトファイナンスは、以下の 4 要素を満たすものとして
定義されている。本ファイナンスは、以下の 4 要素と基本的には整合している。ただし、要素③について、モニタリング結果は基本的には借入人であるながたに生花から貸付人である南都銀行及び評価者である南都コンサルティングに対して開示がなされることとし、可能な範囲で対外公表も検討していくこととしている。
要素① 投融資時に、環境、社会、経済のいずれの側面においても重大なネガティブインパクトを適切に緩和・管理することを前提に、少なくとも一つの側面においてポジティブなインパクトを生み出す意図を持つもの
要素② インパクトの評価及びモニタリングを行うもの
要素③ インパクトの評価結果及びモニタリング結果の情報開示を行うもの
要素④ 中長期的な視点に基づき、個々の金融機関/投資家にとって適切なリスク・リターンを確保しようとするもの
また、本ファイナンスの評価・モニタリングのプロセスは、本基本的考え方で示された評価・モニタリングフローと同等のものを想定しており、特に、企業の多様なインパクトを包括的に把握するものと整合的である。
IV. 結論
以上の確認より、本ファイナンスは、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト・ファイナンス原則に適合している。
また、環境省の ESG 金融ハイレベル・パネル設置要綱第 2 項(4)に基づき設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」と整合的である。
(第三者意見責任者) 株式会社日本格付研究所 サステナブル・ファイナンス評価部長 梶原 敦子 | |
担当主任アナリスト 川越 広志 | 担当アナリスト 菊池 理恵子 |
本第三者意見に関する重要な説明
1. JCR 第三者意見の前提・意義・限界
日本格付研究所(JCR)が提供する第三者意見は、事業主体及び調達主体の、国連環境計画金融イニシアティブの策定したポジティブ・インパクト金融(PIF)原則への適合性及び環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内に設置されたポジティブインパクトファイナンスタスクフォースがまとめた「インパクトファイナンスの基本的考え方」への整合性に関する、JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該ポジティブ・インパクト金融がもたらすポジティブなインパクトの程度を完全に表示しているものではありません。
本第三者意見は、依頼者である調達主体及び事業主体から供与された情報及び JCR が独自に収集した情報に基づく現時点での計画又は状況に対する意見の表明であり、将来におけるポジティブな成果を保証するものではありません。また、本第三者意見は、PIF によるポジティブな効果を定量的に証明するものではなく、その効果について責任を負うものではありません。本事業により調達される資金が同社の設定するインパクト指標の達成度について、JCR は調達主体または調達主体の依頼する第三者によって定量的・定性的に測定されていることを確認しますが、原則としてこれを直接測定することはありません。
2. 本第三者意見を作成するうえで参照した国際的なイニシアティブ、原則等
本意見作成にあたり、JCR は、以下の原則等を参照しています。
国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブ・インパクト金融原則
環境省 ESG 金融ハイレベル・パネル内ポジティブインパクトファイナンスタスクフォース
「インパクトファイナンスの基本的考え方」
3. 信用格付業にかかる行為との関係
本第三者意見を提供する行為は、JCR が関連業務として行うものであり、信用格付業にかかる行為とは異なります。
4. 信用格付との関係
本件評価は信用格付とは異なり、また、あらかじめ定められた信用格付を提供し、または閲覧に供することを約束するものではありません。
5. JCR の第三者性
本 PIF の事業主体または調達主体と JCR との間に、利益相反を生じる可能性のある資本関係、人的関係等はありません。
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、事業主体または調達主体及び正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCRは、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。本第三者意見は、評価の対象であるポジティブ・インパクト・ファイナンスにかかる各種のリスク(信用リスク、価格変動リスク、市場流動性リスク、価格変動リスク等)について、何ら意見を表明するものではありません。また、本第三者意見は JCR の現時点での総合的な意見の表明であって、事実の表明ではなく、リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。本第三者意見は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
■用語解説
第三者意見:本レポートは、依頼人の求めに応じ、独立・中立・公平な立場から、銀行等が作成したポジティブ・インパクト・ファイナンス評価書の国連環境計画金融イニシアティブのポジティブ・インパクト金融原則への適合性について第三者意見を述べたものです。
事業主体:ポジティブ・インパクト・ファイナンスを実施する金融機関をいいます。
調達主体:ポジティブ・インパクト・ビジネスのためにポジティブ・インパクト・ファイナンスによって借入を行う事業会社等をいいます。
■サステナブル・ファイナンスの外部評価者としての登録状況等
・国連環境計画 金融イニシアティブ ポジティブインパクト作業部会メンバー
・環境省 グリーンボンド外部レビュー者登録
・ICMA (国際資本市場協会に外部評価者としてオブザーバー登録) ソーシャルボンド原則作業部会メンバー
・Climate Bonds Initiative Approved Verifier (気候債イニシアティブ認定検証機関)
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:03-3544-7013 FAX:03-3544-7026