ver1.0
データの利用権限に関する契約ガイドライン
平成 29 年 5 月
ver1.0
IoT 推進コンソーシアム経済産業省
目次
目次
○「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」との関係 3
1 デ ー タ が 広 く 利 活 用 に 供 さ れ る 観 点 5
2 ケ ー ス 毎 に x x ・ 適 正 に 利 用 権 限 を 定 め る 観 点 5
第 2 契 約 前 段 階 で の 合 意 形 成 プ ロ セ ス と 利 用 権 限 の 定 め 方 6
(1) デ ー タ の 利 用 権 限 を 契 約 に 定 め る こ と の 申 入 れ 6
(2) 合 意 形 成 プ ロ セ ス と 条 項 イ メ ー ジ の 確 認 8
(1) 各 当 事 者 が 求 め る デ ー タ の 選 定 9
(2) デ ー タ カ タ ロ グ 等 の x x 、 提 示 、 意 見 x x 10
(4) 問 題 と な り や す い デ ー タ の 扱 い 11
(3) 利 用 権 限 を 契 約 で 定 め る こ と の 効 果 19
(4) 利 用 権 限 を 定 め る こ と が で き な い と き 19
3-1 第 三 者 提 供 を 制 限 す る と き ( 事 前 同 意 を 要 す る 例 ) 26
3-2 利 用 に 係 る コ ス ト 分 担 を 定 め る と き 26
8 共 同 利 用 デ ー タ に 関 す る 取 扱 い 32
10 契 約 期 x x に お け る デ ー タ の 利 用 権 限 の 取 決 め 34
本契約ガイドラインの目的
Internet of Things(IoT)や人工知能(AI)といった技術革新が進展し、事業活動により生み出されるデータはこの数年で爆発的に増加している。こうしたデータは、組み合わされること等により、新たな価値が生まれるなど競争力の源泉であり、事業規模の大小を問わず多くの事業者が、業種を超えたデータ連携などによるオープンイノベーションを通じた、革新的な成果をもたらすものと期待されている。しかしながら、データの利活用は必ずしも進展していない。その要因としては、事業者の過剰な囲い込み意識やプライバシー保護の懸念等が背景にあるとされている。
データは無体物であって民法上の所有権の対象ではない。非パーソナルデータについていえば、著作権や営業秘密といった知的財産として保護されるものを除いて、契約等私的自治の下で利活用に供されるものである。しかし、このようなデータの性質を踏まえて、適正かつxxに契約でそうした定めがなされる例は必ずしも定着しておらず、実務上も手探りの状態にある。殊に中小企業の場合には、意識せずして契約でデータの利用権限が相手方に設定されてしまっているとの指摘もあり、契約の高度化、とりわけ契約におけるデータの利用権限の明確化が急務となっている。
利活用価値が高まったデータが爆発的に増加しているという状況の変化を踏まえれば、様々な取引においてデータの利用権限を定めておくことが求められてきているということである。この問題に正面から対処していくためには、取引に関連して創出されるデータについて、利用権限が契約事項として定められること、そして、利用権限が、データの創出に対する寄与度、保存や管理におけるコスト負担等を考慮して、xxの観点から具体的かつ詳細に取り決められることが、有用なデータの創出に対するインセンティブ付与の観点からも望ましい。
このため、本ガイドラインは、事業者間の取引に関連して創出し、取得又は収集されるデータの利用権限を契約で適正かつxxに定めるため、その手法や考え方をまとめたものである 1。各企業において契約交渉や契約締結業務を担当されている方はもちろん、データ利活用に関心をお持ちの方々に広く活用して
1 なお、本契約ガイドラインは、経済産業省において開催した「商務流通情報分科会 情報経済小委員会 分散戦略ワーキンググループ」(平成 28 年 3 月~同年 11 月)での検討内容を反映したものである。
もらうことを期待している。
なお、契約ガイドラインを各業界の契約実務で有効活用を期待し、今後定期的に見直しを行い、必要に応じて分野別のユースケースを充実させていく。
本契約ガイドラインの目的
契約においてデータの利用権限をxxに取り決めるための考え方を示すこと
本契約ガイドラインの構成
「データの利用権限に関する契約ガイドライン」(以下「本契約ガイドライン」という。)は、
・基本的な考え方
・契約前段階の合意形成プロセスと利用権限の定め方
・契約における規定事項等 の3つのパートで構成される。
事業者間の取引(BtoB)においては、取引対象となる目的物や成果物以外にも、それらを造り出す過程で、若しくはそれらの利用等を通じて、目的物や成果物とは別の財産的価値を有する多くのデータが創出されることがある。こうしたデータの創出に対して寄与した関係者は強い利害関係を有することがある一方で、利用権限を契約に定めることは実務上必ずしも定着していない。そのため、まずは、データの利用権限に関する基本的な考え方を踏まえた上で、データの利用権限を契約に定めるために、契約前の交渉段階における合意形成プロセスに焦点を当て、利用権限の定めに関する協議の在り方や利用権限の定め方等を説明する。
また、章を改め、取引に係る契約の締結に当たり当該契約に規定する事項等を条項案とともに示す。
さらに、別添としてデータカタログ案(サンプル)とモデル条項を、参考のために末尾に掲載する。
○「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」との関係
経済産業省では平成 27 年 10 月に「データに関する取引の推進を目的とした契約ガイドライン」(以下「データ取引推進ガイドライン」という。)を策定・公表している。当該ガイドラインと本契約ガイドラインとは目的や趣旨が異なるため、必要に応じて両ガイドラインを活用することになる。
すなわち、データ取引推進ガイドラインはデータに係る権利者が当事者間において明らかであることを前提に、当該権利者がデータを提供するための条件やポイント等を示したものである。他方、本契約ガイドラインはデータの利用権限が誰にあるかを取り決めるための考え方を示すものであるため観点を異にするが、データ取引推進ガイドラインも参照してもらうために適宜本契約ガイドライン本文中に引用している。
本契約ガイドラインの対象
本契約ガイドラインでは、「契約」、「データ」及び「利用権限」の各用語について、以下を対象とすることを想定している。
○「契約」
「契約」とは事業者間の契約を想定している。契約の種類及び形態等は問わない。
なお、事業者間の契約であればよく、データの取得を目的とする契約であるかどうかは問わない。
○「データ」
利用権限を定めるべき「データ」とは、契約に係る取引に関連し 2、当事者双方が関わって創出等されるデータを対象とする。対象のデータとしては、パーソナルデータを含まない所謂産業データ(特に、生データ)を想定するが 3、それ以外のデータ(例えば、パーソナルデータのほか、ノウハウが含まれるデータや加工済みデータ)を対象から排除するものではない。
○「利用権限」
「利用権限」とは、当事者の合意に基づく利用権限であり、その具体的な内容は当事者が合意して決める。特段の合意がないときは、データを利用、管理、開示、譲渡(利用許諾を含む。)又は処分することのほか、データに係る一切の権限をいうと解し得る。
なお、当事者以外の第三者から利用許諾を受けたデータに関する「利用権限」は、本契約ガイドラインにいう利用権限としては想定していない。
2 なお、データと取引との関連性については、第2の2(1)①参照。
3 パーソナルデータについては、本人の権利について別途の考慮が必要であること、個人情報保護法等により本人との間でどのような調整を行った上で利活用を行うべきかが既に明らかになっていること等から、利用権限を定めることを目的とする本契約ガイドラインでは基本的には「データ」の対象として想定しないこととした。
第1 基本的な考え方
本契約ガイドラインは、事業者間の取引に係る契約においてデータの利用権限を適正かつxxに定めてもらうために策定されたものであり、基本的な考え方は、以下のとおり。
1 データが広く利活用に供される観点
技術革新とともにデータ量も爆発的に増加しているが、それとともにデー タのもつ価値も向上し、データの利活用の期待が高まっている。とりわけ業 種を超えた複数のデータの組み合わせがオープンイノベーションをもたら し、それぞれのデータの付加価値を高め競争力を強化するためには、利活用 するデータを広げ、多様な組み合わせで利活用することが重要となっている。取引で創出されるデータについては、特定の事業者において過剰に囲い込ま ず、取引当事者でxxに利用権限を設定し、データ利活用における Win-Win の関係構築を目指すことが必要になってきている(必要性 )。
他方、データはその無体物性ゆえに公共財的性質や非排他性 4を有するとされており、データは、知的財産制度により保護されるものを除き、何人も独占的な権利は有さず、広く利活用されるべきものであり、広く利活用されてこそ価値が最大限発揮され得るものである(許容性 )。
2 ケース毎にxx・適正に利用権限を定める観点
データを巡る状況は変わり、新しいデータ利活用社会になりつつある。いかに多様なデータを利活用するかが競争力に繋がっており、そうした事情の変化やデータの重要性の高まりに鑑みれば、当事者間がデータについて契約で利用権限の明確化を図ることが望ましい。
データは無体物であり所有権の対象ではないから、最初に取得した当事者が排他的に独占するという物権的な発想は必ずしもなじまない。むしろ、その利用権限は契約により自由に定めることができるものであるから、データの創出に対する寄与度等を考慮し、当事者で協議して柔軟に利用条件を取り決め、利用権限をxxに定めていくことが必要である。また、事業者によってはデータの利用権限を意識せず、その結果データの利活用の機会を損失しているという面もあるため、そうしたリスクにも配慮して利用権限を取り決めることが重要である。
4 同じデータに対して競合せず、利活用により消失あるいは直ちに価値が減少するものではなく、複製して多数の主体による利活用が可能であるという性質。
第2 契約前段階での合意形成プロセスと利用権限の定め方
本章では、データの利用権限を定めるための手続面に焦点をおき、契約前段階において当事者間の協議により利用権限を定めるに当たっての合意形成プロセスの在り方、利用権限の定め方を説明する。
各種取引を行うに当たり、取引の対象となった目的物等からデータの創出が想定される場合には、あらかじめ当事者間で協議し、データの利用権限を明確に定めておくことが望ましい。このことは、契約書に明記することだけではなく、当事者間でデータの利用権限がxxで具体的かつ詳細に取り決められるということでもある。契約締結に向けて、他の契約条項とともに、データの利用権限について協議による合意形成のプロセスが適切に遂行されなければならない。当該プロセスは、業界の慣行や各取引における個別事情により様々であるが、標準的には以下のとおりということができる。
データの選定
図表1:合意形成プロセス
申入れ、事前確認
条項の作成
利用権限の決定
以下では、このプロセスに沿って各項目の説明を行う。
なお、実際にはデータの選定をしながら利用権限の決定も行うなど「データの選定」と「利用権限の決定」がプロセス上明確に分けられないことも多いが、ここでは便宜上分けて検討する。
1 申入れ、事前確認
(1) データの利用権限を契約に定めることの申入れ
取引に関連してデータの創出が見込まれるときには、契約を行う事業者は、契約前段階において、取引に関連するデータの利用権限を契約に定めること
について相互に確認しておく。
データの利用権限を契約で定めるため、当事者はその旨、相手方に申入れ をしていく。そうした申入れをすること自体は法律上全く制限されていない。
また、当事者が相手方に対して取引上の依存関係等(優越的地位 5)があり、相手方の要求を受け入れざるを得ないような場合に、そのような申入れに対して、相手方が、利用権限の取決め(データの提供)に係る協議に一切応じず、取決めの条件として過大な負担を求めるなど、当事者が不当に不利益を強いられる場合は、競争法上の問題が別途生じ得る 6。当該申入れに対し、相手方として利用権限を定めないと考える場合には取引に関連してデータの創出が見込まれる余地がないといった具体的な理由を説明することが望まれる。
5 取引先への依存度、取引先の市場における地位、取引先の変更可能性(他の事業者との取引開始や取引拡大の可能性、相手方との関係で既に行った投資等を考慮して判断)等を踏まえて、相手方と取引できないことが事業経営上大きな支障をきたすため、当事者が不利益を受け入れざるを得ないような地位(独占禁止法 2 条 9 項 5 号)。
6 この問題を直接扱ったものではないが、xx取引委員会の指針によれば、情報成果物の役務の委託取引において、取引上優越した地位にある委託者が、受託者に対し、当該成果物が自己との委託取引の過程で得られたこと又は自己の費用負担により作成されたことを理由として、一方的に、これらの受託者の権利を自己に譲渡させたり、当該成果物等を役務の委託取引の趣旨に反しない範囲で他の目的のために利用することを制限する場合などには、不当に不利益を受託者に与えることとなりやすく、優越的地位の濫用として問題を生じやすいとされる(平成 23 年 6 月 23 日改正「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法の指針」)。このような場合に、成果物等に係る権利の譲渡又は二次利用の制限に対する対価を別途支払ったり、当該対価を含む形で対価に係る交渉を行っていると認められるときには、問題とならないが、他方で、対価が不当に低い場合や成果物等に係る権利の譲渡等を事実上強制する場合など、受託者に対して不当に不利益を与える場合には、優越的地位の濫用として問題となるとされる。
7 例えば、①システム開発委託契約において、優越的な地位にあるメーカー(委託者)が中小企業のシステム開発事業者(受託者)に対して、今後の継続的発注等の可能性を暗示しながら、システム開発において創出された一切のデータ(アルゴリズム等を含む)に係る利用権限を受託者に専属的に認めるよう強制し、受託者側は取引継続を期待し、若しくは継続的取引の中止等をおそれて委託者の要求をのまざるを得ないといった事例、②金型製作供給契約において、優越的な地位にあるメーカー(委託者)が中小企業である金型メーカーに対して、金型製作において創出されたデータ(図面等データ等を含む)に係る利用権限を受託者に認めてデータを提供するよう強制し、受託者側は取引の力関係を背景にこれに応じざるを得なかった事例等が想定される。
(2) 合意形成プロセスと条項イメージの確認
データの利用権限を契約に定めることを確認したことを踏まえて、その後 のプロセスとして、具体的な段取りを確認し共有しておく。データの利用権 限については、知的財産権の帰属の問題とは異なり、契約実務では必ずしも 定着しておらず、手探りの部分も多い。データの利用権限を契約に定めるこ とを確認したもののその取決めが形骸化するといった事態にならないように、あらかじめ段取りを確認して効率的に協議を進めていくことが肝要である。
具体的には、前記図表1で示したプロセスを参考に、一連の大まかな段取りについて当事者間で確認する。特に、次に述べる「データの選定」に関しては、手続的な面でありながら取引内容によっては時間を要するため、十分に認識合わせをしておく。
また、最終的には協議により定めた内容が契約書に具体的条項として落とし込まれるが、条項のイメージをあらかじめ具体的に共有しておくと、それぞれの用語の意義や取決めに関する見解の相違を防ぐことに役立つ。
2 データの選定
データの利用権限を定めるに当たっては、対象のデータとして何をどのように選定するかが非常に重要である。当事者間で利用権限を分け合うことに全く異存がないものもあれば、営業秘密となるデータのように自社の生命線となり自社のみで保有したいものもあり得る。また、当事者が得たデータが当該取引と何らの関連性がないときや、創出に相手方の寄与がないときにまで利用権限を分け合うようなことはデータ創出に対するインセンティブを失いかねない。
よって、利用権限を定める対象となるデータについては、当事者間で十分に協議して選定していくことが必要である。この観点から以下にデータ選定のための手法やプロセスとして一つの考え方を示す。
なお、ここで示した手法等は一つの例であり、他の適切な手法等で代替しても構わない。
図表2:データ選定のプロセス例
各当事者が求めるデータの選定
データカタログ等の作成、提示、調整
データの分類
(参考)問題となりやすいデータの扱い
ポイント
○利用権限を定めるデータは、取引関連性と利活用可能性の観点から選び出し、カタログ化等する。
○当事者間で意見の相違等があるデータを明らかにする。
○データを切り分けるなどして利用権限の対象とし得る範囲を探る。
この点を踏まえて、契約当事者はそれぞれ、利活用を求めたいデータすなわち利用権限を明らかにしたいデータを可能な限り漏れなく選定し協議のテーブルに乗せることが肝要である。
(1) 各当事者が求めるデータの選定
利用権限を定めるに当たっては、まずは、当事者間の取引に関連して創出したもので、当事者が利活用を求めるものを選定していくことになる。
①取引関連性の観点
当事者間の取引とは全く関連せずに創出したデータについて、取引をx xとしてデータの利用権限を求めることは合理的とはいえない。対象デー タには取引と一定の関連性が必要である。そこで、「取引関連性」の考え 方が問題となるが、取引の目的物、成果物若しくは役務・サービス又は取 引の存在自体がデータの創出、取得又は収集に関わり、取引内容からみて 当該データの取得が容易に想定される場合には関連性を認めてよいと本 契約ガイドラインでは解する(もちろん一つの考え方であって、取引によ ってはより密な関連性を求める場合もあり得る。)。間口は広く解した上で、当事者の寄与等が全く認められないデータであれば後のプロセスで排除 していけばよい。
8 例えばシステム開発契約のように、一方当事者(委託者)にとっては一旦取引を開始してしまうと途中で開発を中止させることが現実的に困難となり、そのために交渉力を失うことがある(いわゆるホールドアップ問題)。契約交渉の初期段階から協議を進めておくことが重要である。
例えば、相手方の支配域内や管理下で創出されるデータであっても、取引に関連して創出し、取得又は収集されるデータである限り取引関連性を認め得る。
図表3:取引類型と関連データの例
取引類型 | 関連データ例 |
売買基本契約(卸売契約) | 店舗データ、商品データ、在庫データ、販売 履歴データ(POS データ、レシートデータ) |
機器売買契約 | 稼働状況データ、運転モードデータ、モーダ ルデータ、アラーム関連データ、プログラム |
傭船契約 | 航海データ(速度、位置等)、気象・海象データ、物理データ、燃費データ、船舶エンジ ンログデータ |
②利活用可能性の観点
当事者間で利用権限を定めるべきデータについては、取引に関連するデータである限り制限がない。よって、当事者が自ら利活用したいデータ、若しくは他者と共有して利活用したいデータはこの段階で全て選び出しておく。
(2) データカタログ等の作成、提示、意見調整
(1)により各当事者が選び出したデータを相手方に提示するが、提示の方式は問わない。
データの種類や内容を的確に把握することをできるように、共通のデータカタログやリスト等を作成し、メタデータ 9を記載して示すのが分かりやすい(データカタログのサンプルは別添1を参考のこと)。データカタログ等は最終的に契約書別紙として活用できるものとすると便宜である。
各当事者が作成したデータカタログ等は合綴した上で、意見の調整を行う 10。一方当事者がデータカタログ等に挙げたデータに対して、相手方が、自社のオープン&クローズ戦略等を踏まえながら、「利活用可」、「利活用不可」・「該当データなし」若しくは「条件付で利活用可」などといった意見を明らかにしつつ整理していくと簡便である。
交渉段階においては、メタデータの正確性や時間的制約により適切にデー
9 データに関連するデータであって、作成日、作成者、データ項目、データ形式、タイトル等によりデータがどのようなデータであるかを示すもの。データのデータ。
10 データカタログ等を付き合わせる際には、当事者によってそれぞれ意味するデータが相違することがないように留意する必要がある。
タを選び出すことが難しい場合も想定される。必要に応じてデータの切分けや加工の提案等も相手方に対して併せて行い、相手方から「利活用可」の意見が得られるよう努める(後述「問題となりやすいデータの扱い」参照)。
利用権限がどの当事者にあるかにつき当事者間で見解の相違や利害対立等があるデータについては、当事者間で協議の上利用権限の配分やその利用条件を決定する。次項でその決定手法等を説明する。
他方で、当事者間で利用権限がどの当事者にあるかについて意見等の相違がなく利用条件の設定も不要とされるデータについても、契約で利用権限を確認しておく。
(3) 想定し得なかったデータ
可能な限り契約前にデータの創出を想定して選定しておくことが重要であるが、契約締結後に、契約前には想定し得なかったデータが創出、取得又は収集されることがあり得る。そのため、契約では、一定の手続を経て利用権限の対象データの範囲を適宜変更することができるようにしておくことが望ましい。
(4) 問題となりやすいデータの扱い
取引に関連するデータであっても取引前にその内容を具体的に想定することが容易でないものもあり、データによってはその創出の経緯が明瞭ではなかったり、多数の関係者が関与したりしている場合があり得る。こうした場合における、当事者間で利用権限を定めるに適したデータとするための処理方法について簡単に触れる。基本的には契約関係やデータそれ自体を分解して処理し、可能な限り利活用を図ることになる。
①複数の当事者又は第三者がデータ創出等に関わる場合
取引に関連するデータとはいえ、必ずしも当該取引に係る契約当事者のみがその創出等に関与しているわけではない。当事者以外の第三者がデータ創出等に関わる場合もある。例えば、工作機械の稼働データをみても、機械の仕様によっては契約当事者(工作機械メーカー、購入した製造会社)のほか、センサメーカーやソフトウェアメーカーが関与していることがある。また、第三者が創出したデータが含まれる場合もある。
契約当事者間で行った取決めは当事者間でのみ効力を有するため(相対的効力)、当事者以外の第三者がデータ創出等に関わる場合、当該第三者には契約の効力は及ばず、データの利用権限の取決めが不完全となる場合がある。
このような場合には、データを巡る契約関係を整理した上で、契約当事
者と当該第三者との契約関係(当該第三者も取決めに巻き込み、三者間(あるいはそれ以上)の契約にすることも含む)においてデータの利用権限の処理を行い、あるいは対象データから第三者が関わるデータを除外、分離したりするなどの処理が考えられる。その上で、本取引に係る契約において利用権限を取り決める。
ケース1
製造会社Aが工作機械メーカーBから購入した工作機械に、AがセンサメーカーCから購入した新たなセンサを取り付けてより詳細なデータを創出させた場合
ケース2
建設会社Aと施主Bとの請負契約において、Aが他社Cと共同開発したシステムを導入してビルを施工した場合
ケース3
製造会社Aから購入した機器にC社の解析用ソフトウェアをインストールして稼働させ、解析に最適な構造化されたデータを取得する場合
ケース4
製造会社Aが工作機械メーカーBと同メーカーCからそれぞれ工作機械を購入して同じシステムでデータ連携させ、稼働データが創出される場合
②営業秘密、ノウハウの場合
また、一方当事者において営業秘密やノウハウとして保有され得るデータについては、相手方に当該データの利用権限を認めることは通常期待できない。もっとも、営業秘密として扱われるデータであっても、適切に秘密保持契約等を締結することにより、秘密管理性を確保しつつ共有することができることにも留意する必要がある。
一方当事者において営業秘密として扱われるデータであっても、改めてその要件に照らしてデータ内容等を検証し、データを技術、利用方法又は用途ごとに細分化するなどし、営業秘密となるデータとそれ以外のデータと可能な限り区分けして、利活用に振り分けていくのが望ましい(要件については、平成 27 年 1 月 28 日改訂「営業秘密管理指針」、平成 28 年 2 月
「秘密情報の保護ハンドブック」(経済産業省経済産業政策xx的財産政策室)を参照のこと)。
ノウハウについても同様であり、ノウハウを構成するデータを部分的に切り出していくことが考えられる。
ケース5
製造会社Aと工作機械メーカーBとの工作機械に関する売買契約について、工作機械から得られる稼働データのうちメンテナンスのためのデータを切り出し、工作機械メーカーにもその利用権限を認める場合
③パーソナルデータを含む場合
本契約ガイドラインは産業データ(非パーソナルデータ)を想定するが、データによっては、パーソナルデータに該当するデータか判別が困難なものもある。例えば、商業施設で取得される人流データや事業用自動車の走行データといったものである。こうしたパーソナルデータが含まれ得るデータをどのように扱い、利活用するかは事業者の懸念も大きい。
一般的には、パーソナルデータそのものについては、個人を差しおいて事業者間のみで利用権限を取り決めることが実際上難しい。利活用の目的に照らし、データの切り分けや加工等 11を行ってデータから個人情報を含むパーソナルデータを分離することができれば利用権限を定めやすいため、当該データを求める側でそうした分離を提案していくことも考えられる。ただし、パーソナルデータを含むデータについても、個人情報保護法等関連法令や本人のプライバシー等に配慮しつつ利用権限を定め得る。
3 利用権限の決定
ポイント
○「白地」からxxに判断する。
○考慮要素等に照らして具体的に検討していく。
○利用条件の設定を工夫するなどして共同利用の余地も検討する。
データの利用権限について当事者間に見解の相違や利害対立等があるとき は、当事者間で協議の上利用権限の配分やその利用条件を決定することになる。以下では、「利用権限の配分」と「利用条件の設定」の各問題を便宜上分けて 述べるが、実際上は「一定の条件を付す限りにおいて相手方への利用権限の配 分を認める」といったように各問題を纏めて検討されることも多いと思われる。
(1) 利用権限の配分について
当事者間におけるデータの利用権限の配分については、各取引における個別的事情も様々であり、また、当事者の果たすべき役割や各産業分野におけるデータ利活用に関する考え方も取引により異なり得ることから、一律には判断し得ない。なお、いずれかの当事者のみにデータの利用権限を認める必要はなく、検討の結果共同利用することになっても構わないし、むしろそのように調整されることが望ましい(データの非排他性)。
ここでは、
11 パーソナルデータと非パーソナルデータとの区別は法律上明瞭ではなく、個人情報保護委員会が公表する「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」等を参考に個別に判断していく。
・適正かつxxに定めるために着目すべき考慮要素と、要素毎の考え方の基本的な方向性を確認する
・個別の取引について、当事者が各要素に照らして主張し、必要に応じて取引内容・取引条件を調整する
という手法を示す。
以下に例示した、創出/取得、保存/管理、利用及び当事者の観点から挙げた考慮要素等を斟酌し、利用権限を検討する。ただし、各考慮要素は数値化等が困難であるため、考慮要素に照らした総合判断ということになる 12。
-考慮要素表の見方-
・個別の取引について、項目ごとに各当事者に有利な事情となり得るかを検討する。
・項目によっては自らに有利な事情とならないものであっても、取引内容・取引条件を一部見直すなどして有利な事情となり得るか検討する。
・相手方の利用権限を認めるに当たって、特定の項目について取引条件の新たな設定・変更を求めるなどし、調整する。
<要素1>創出/取得
項目 | 考え方の方向性 |
寄与度 | データ創出やデータ価値等に対する技術的寄与、データ内容面の寄与の有無・程度。 ケース6 独自のセンサ技術、アルゴリズムによりデータ創出等のために技術的な寄与をしたとき ケース7 サービス事業者が IT サービスを提供するに当たり、ユーザーから元データの提供を受けているとき |
コスト負担(経済的寄与度) | データ創出等に係るコスト負担の程度(例:センサ取付、データ送信等に係る費用負担等)。 ケース8 データ創出のためのセンサ取付等の費用について、当事者が応分の費用を負担しているとき(両当事者に認めやすい) |
機器所有権 | データを創出等させる機器の所有権がいずれの事業者 にあるか。 |
12 内閣官房 IT 総合戦略室本部の「農業 IT サービス標準利用規約ガイド」(平成 28 年 3 月 31 日公表)によると、農業 IT サービスに係るサービス環境において生成するデータについては、「アルゴリズムの寄与度や、比較指標値等の作成元データの構成、ビジネスモデル等により、データの帰属が異なる」と説明されている(7 頁)。
施設等 | データを創出する環境や施設をいずれの当事者が有し、 提供するか。 |
操作主体 | データを直接創出させた機器等の操作主体や実施者は いずれの当事者に属するか。 |
契約目的 | 契約の目的が特定の当事者のデータ取得にあるか。 ケース9 委託者が利用する物性データの測定を目的とした調査委託契約であるとき |
データとの関連性 | 契約の目的物・サービスがデータ創出等とどの程度関わりを有するか。データ創出と全く関連しない機器等を対象とする契約であるか。 ケース 10 それ自体ではデータを創出させない部品や機械の売買契約、化学品・天然資源の供給契約であるとき |
独自性 | ・データ創出等のために当事者の独自の知見や知的財産等を活用したか。 ・当該データと同種のデータを当事者以外の第三者からも容易に提供を受けられるか。 |
<要素2>保存/管理
項目 | 考え方の方向性 |
コスト負担(経済的寄与度) | 創出したデータの保管・管理、メンテナンス・保守運用等のコスト負担の程度。 ケース 11 データ保管等の費用について、当事者が応分の負担をしているとき(両当事者に認めやすい) |
安全管理、セキュリティ | データに対する安全管理体制の状況。データの内容・性質等を踏まえて、データの漏えい防止措置や損害賠償責任の負担等がなされているか。 ケース 12 契約当事者間でデータを安全かつ適切に管理し、運用する体制の整備がなされているとき(両当事者に認めやすい) |
守秘義務 | 厳格な秘密保持義務を負担するか。暗号化等により転々流通を防止する措置を講じているか。 ケース 13 契約当事者間でデータに係る秘密保持義務が定められているとき(両当事者に認めやすい) |
知財処理との整 合性 | データに基づき、若しくはデータが寄与して創出された 知的財産権の帰属先はいずれの当事者か。 |
対個人の責任の所在 | データに個人情報やパーソナルデータを含み得る場合、当該個人に対応する者(同意を取得した者等)はいずれ の当事者か。 |
データに係る責任の所在 | 第三者に対してデータに係る責任(漏えい時における責任、データ信憑性の保証責任等)を負担しているか。 |
<要素3>利用
項目 | 考え方の方向性 |
対価 | 契約における対価(代金額)にデータ取得の対価が実質的に含まれているか。代金額を定めるに当たって、データの利用権限取得に係る費用も含めて評価されているか。 ケース 14 機器の売買に当たり、売主がデータを利用することを踏まえた代金額に設定しているとき |
協調領域・競争領域 | データの位置付け(競争領域、協調領域)を考慮し、ノウハウ等が含まれない協調領域での利用に当たるもの か。いずれかの当事者の競争領域と関連性が高いか。 |
メリット・インセンティブ提供の有無 | ・データを利用させることについて当事者にメリットがあるか。 ケース 15 建設会社の重機のセンサデータを重機メーカーが利用することによりメンテナンスコストを削減できるとき ・データを共同利用することにより、データを用いて生み出された成果のフィードバックがなされるか。 |
データの 必要性・有用性、自らの事業との関連性、活用能力、データの用途 | 当事者にとって、自らの契約履行や事業活動等のために利用の必要性や有用性を認めるデータか。 ケース 16 一方当事者において、データを自らの事業のために全く利用する可能性がなく、第三者に利用許諾する見込みもないとき ケース 17 プラントから創出するデータのうち特殊な検知データでありそれ自体はプラント保有者にとって利用可能性に乏しい一方、プラントメーカーにとっては製品開発に有用であるとき |
データの公共性 | 公的利用に供され得る社会的価値のあるデータか(気象データ、耐震データ、医療・公衆衛生データ等)。データを広く社会に提供することが社会的要請であるといえるか。 ケース 18 建設会社が施工したビルに設置したシステムから耐震データや災害データを取得するとき |
<要素4>当事者等
項目 | 考え方の方向性 |
当事者の市場に おける地位 | 一方当事者がデータを独占している事業か。 |
取引先変更の可能性、当事者と取引することの 必要性 | データを求める当事者にとって、取引先を変更することが困難か。 |
当事者の関係性 | 当事者間の事業規模の格差、取引の対象となるサービス の需給関係等。 |
商慣習 | 当該取引に関連する商習慣の内容。 ※特定の業界においては、発生した各種データを特定の当事者に取得させるのが商慣習に合致するとされているとしても、他の当事者がデータを取得することが否定されているわけ ではない 13。 |
以上の考慮要素についてはあくまで例示的に挙げたものであり、また、各
13 xxな競争秩序の維持、促進の立場から是認される正常な商慣習であっても、当事者の行為が現に存在する商慣習に合致することをもってそれが直ちに正当化されるものではない(前掲xx取引委員会指針)。
産業分野によっても考慮すべき要素や考慮を要しない要素があったり、重点となる要素が異なってきたりし得る。どのように要素を重点的に考慮し判断していくべきかの明確な方向性を示すことは難しいが、要素毎に調整しながら妥結点を探ることになる。
(2) 利用条件の設定について
データの利用権限を決定するに当たっては、当該データの利用権限をいずれの当事者に認めるかの観点はもとより、利用条件の設定を工夫してなるべく両者が利用できるよう交渉を進めることも考えられる。上記(1)の考慮要素を考慮しつつ、利用条件を適切に設定すれば、利用権限を柔軟に配分することが可能となる。
当事者がデータを共有するための条件をあらかじめ検討しておき、当事者が適宜選択して柔軟に条件設定できるようにしておくことが望ましい。こうした利用条件としては以下のような例が考えられる 14。
図表4:データに関する共有条件の設定例
項目 | 具体例 |
第三者提供等の制限 | 第三者提供・利用許諾の禁止、事前同意の義務付け 等 |
加工 | 加工処理や統計データ化されたデータの利用に制 限 |
セキュリティ | データの暗号化を義務付け、高度な安全管理措置・ セキュリティ環境の要求、守秘義務契約の締結等 |
データ粒度、範囲 | 営業秘密やノウハウを除去若しくは希薄化する程 度にデータ内容を限定 |
利用目的、利用範囲 | 利用目的や範囲を制限(例えば、特定の協調領域での利用に限定、当事者において既に決まっている研 究開発計画での利用に限定等) |
期間 | 利用できる期間を制限 |
利益分配・損失負担 | 当該データの利用により得た経済的利益(知的財産権を含む。)や被った損失についてあらかじめ合意 した方式に従って分配・負担することを規定 |
地域 | データを活用できる国・地域を制限 |
14 こうした利用条件の設定は、ライセンス契約等においてライセンサーがライセンシーに対してどのような条件の下で利用を許諾するかを取り決める場合と同様に考えられる。その考え方を知るものとしてデータ取引推進ガイドラインも参照のこと。
(3) 利用権限を契約で定めることの効果
契約でデータの利用権限を定めた場合は、当該当事者は、当該データの利用権限を有し、合意した内容に従いデータを利用することができる。相手方がデータの利用を妨げるときは、当該当事者はデータの利用権限を正当に主張することができる。なお、契約でデータの利用権限を定めていない場合であっても、当事者の利用権限が認められないわけではない。
当事者は契約で定められた範囲でデータの利用権限があり、当事者間で特段の合意がない限り利用権限を有する当事者は当該データを自由に利活用し、収益を取得することができるのであり、データの利用により一方当事者が経済的利益を上げ、あるいは損失を受けたとしても、前項の共有条件として定められた利益分配・損失負担を超えて、相手方がその利益の分配を求め、あるいは相手方に損失の分担を求めることはできない。
なお、データの利用権限は当事者が契約で定める相対的な権利であるため、契約当事者以外の第三者に対して当該データに係る利用権限等を主張し、あ xxx取決めの内容を主張することはできない。
(4) 利用権限を定めることができないとき
契約前に当事者間でデータの利用権限を定めることができないときは、契約後であっても適宜利用権限を定めることができるとする一般的な条項を規定しておく必要がある(後記条項案「契約期間中におけるデータの利用権限の取決め」を参照)。ただし、契約前には定められない特段の事情がない限り、契約後に利用権限を定められる見込みは薄く、このような規定では利用権限の取決めの実効性は相当程度低くなると考えられる。
4 条項の作成
ポイント
○特にデータの利用権限を契約に定める実務が定着していない業界や事業者では、条文ベースで契約交渉を進め、イメージの共有を図る。
○契約書別紙等を利用しながら、対象データを明確化する。
以上を踏まえて、取引に係る契約(売買契約、製造委託契約、取引基本契約等)に規定する条項の作成を行う。当該条項は取引に係る契約に組み込まれるもので、必ずしも当該条項をもって別途の契約とするわけではない。
データの利用権限に関して、必要な条項を網羅的に規定する。次章において、条項毎にポイントを説明する。
また、併せて適宜、データ取引推進ガイドラインを参照されたい。
なお、必要に応じ、データの利用権限を得た各当事者においては、データマネジメント実施体制を契約で明確化しておくことが望ましい。
第3 契約における規定事項等
本章では、データの利用権限について、本取引に係る契約書に規定することが考えられる事項とその条項案を示す。
以下の条項案は、本取引に係る契約書に、他の条項とともに組み込まれるものであり、他の条項との整合性も図り、取引が全体として適切に行われるよう広い視野が必要である。
条項案の構成
定義
データの利用権限の配分免責
継続的創出に対する非保証利用条件等
事前同意
分担金の支払い
関係者が複数の場合の処理データの提供等
データの形式
データの秘密管理
共同利用データに関する取扱い対象データの変更
契約期間中におけるデータの利用権限の取決め契約終了時のデータの取扱い
その他
1 データの特定
(定義)
第○条 本契約において、次に掲げる用語は次の定義による。
一 「データ」とは、本取引に関連して創出し、取得又は収集した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の近くによっては認識できない方式で作成される記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)をいう。
二 「甲利用データ」とは、甲が利用権限を有するものとして別紙● に定めるデータをいう。
三 「乙利用データ」とは、乙が利用権限を有するものとして別紙● に定めるデータをいう。
四 「甲乙利用データ」とは、甲乙が利用権限を有するものとして別紙●に定めるデータをいう。
[ポイント]
・データ 15を定義する。
・利用権限を有する主体に応じて対象データを区分する。
・データカタログを別紙として活用するなどし、対象データを可能な限り特定する。
[解説]
・本条項案では、「データ」の定義では内容の限定はしていない(例えば、個人情報は対象外とする等)。個人情報を対象外とするときは別紙で特定されるデータをそのような内容にしておけばよい。・データには明瞭な外縁がないため、利用権限の対象データを考えたときにその範囲を明確に定めることが一般的に容易ではない。必要に応じて、サンプルデータ等を分かりやすい形式で掲載するなどして可能な限り特定することが望ましい。
・リアルタイムに継続して発生するデータについては必要に応じて対象の期間を明らかにしておく。データの取得が長期に及ぶ場合もあり得るため、あらかじめその期間も定めておくべきこともあり得る。データが取得できる限りいつまでもデータの利用権限を認めるとすると、当事者が思わぬ負担を負うこともある。データの取得にはシステムの確保、メンテナンス、継続してデータを取得し続けるための人的資源の確保が必要だからである。
15 「情報」と「データ」とは意味内容に相違があると一般的に解されているが、他条項との整合をとるために「データ」に代えて「情報」を用いて定義しても構わない。
2 当事者のデータの利用権限
2-1 データの利用権限の配分
(データの利用権限の配分)
第○条 甲乙は、次に定めるとおりデータの利用権限を有する。一 甲利用データについては、x
x 乙利用データについては、x
x 甲乙利用データについては、甲及び乙
2 前項の利用権限の内容は、別紙●ないし●においてデータ毎にそれ ぞれ定める。特段の定めがないときは、データを利用、開示、譲渡(利用許諾を含む)及び処分することのほか、データに係る一切の権限を含むものとする。
[ポイント]
・データの利用権限を有する者を定め、利用権限の内容を定める。
・協議により選定されたデータについて、それぞれ単独又は共同の利用権限を規定する。
[解説]
・本条項のタイトルは「データの利用権限の配分」としたが、他に「当事者のデータの利用権限」又は「データに関する権利の配分」等が考えられる。データ(例えば、営業秘密やノウハウ)について、知的財産権と同じく「データは○○に帰属する」と定める例もあるが、データそれ自体は権利ではないため帰属の概念になじまない。また、「配分する」と定めるだけでは、相手方に対して如何なる主張が可能であるかが不明であるため、具体的な権利の内容を明らかにしておく必要がある。
・「利用権限」の内容としては、別紙でそれぞれ定めるものとするが、そのような定めがないときは原則としてデータを利用等する一切の権利と解している。・本契約ガイドラインで想定するデータは機器等から取得される産業データであるため、膨大なデータを対象としてもそれ自体では著作xxに定める
データベース著作権(第 12 条の 2)は発生し得ないと考えられる。
データ名 | データ項目 | 対象期間 | その他利用条件 | |
1 | ○○○○ | 機器 ID、センサ ID、・・・、稼働場所、日付、データ詳細内容 ※加工方法、データ粒度も適宜含む。 | 契約締結日から ○ヶ月間 | ※破棄の方法 ※利用目的、利用範囲の制限等。 ※第三者提供の制限等は 本文中に詳細に条件を定めることもある。 |
2 | ||||
3 |
○別紙例別紙●
2-2 免 責
(免責)
第○条 甲乙は、第○条に定める利用権限によりデータを利用したことに起因して発生した責任及び損害(第三者の権利の侵害も含む。)については、自らこれを負担する。ただし、相手方の故意又は重大な過失により当該データに瑕疵があり、これによって損害が生じたときはこの限りでない。
[ポイント]
・データをいかなる目的で利用するかは利用権限を有する当事者の自由である一方で、その利用による責任等は利用した者にあるとして、免責の規定を定める。
[解説]
・ここでのデータの利用権限は相手方から利用許諾を受けて取得するものではなく、当事者の合意に基づいて取得し、合意の範囲で自由にデータを利用することができる権利であるため、データの利用等により損害が生じ、あるいは第三者の権利(知的財産権、プライバシー権、名誉xx)
を侵害して損害を与えたときの責任は、原則としてそれぞれが負うものとしている。
・ただし、例えば、データの創出等に関わる当事者が故意に虚偽のデータを含ませ、それにより当該データを活用した相手方に損害が発生したとき等には相手方に賠償請求できるものとしている。
2-3 データの非保証
(継続的創出に対する非保証)
第○条 甲乙は、それぞれ相手方に対し、相手方が利用権限を有するデータについて、当該データが必ず創出されることを保証するものではない。ただし、甲又は乙が、相手方に損害を与えることを目的として、故意にデータの創出、取得又は収集を行わず、又はそれらの行為を妨害したときはこの限りでない。
[ポイント]
・データが創出しない場合の対応を定める。
・当初の想定とは異なり、データが創出せず、又は当事者が創出させなかったとしても、原則として、当事者双方に責任はない(データを創出させる義務が生じたり、遡って代金額等に影響したりすることはない)ことを定める。
[解説]
・工作機械から得られる稼働データのように、一方当事者の事業活動(とそれに基づく実際の操作)により初めて創出されるデータについて、仮に相手方に(も)利用権限があったとしても、必ずしも当該機械の稼働を継続してデータを創出させ続けなければならないわけではない。
3 特約条項(参考)
当事者間の特約により利用権限等に一定の制限を課すことも考えられる。こうした制限は契約書別紙中にデータ項目等とともに記載することもあれば、本文中に条項として規定することもある。
3-1 第三者提供を制限するとき(事前同意を要する例)
(事前同意)
第○条 甲乙は、第三者に対して、第○条(データの利用権限の配分) に定める自己の利用権限に係るデータを開示、譲渡(持分譲渡を含む)、利用許諾又は担保の目的とするときは、相手方の事前の書面による同意を得なければならない。
[解説]
・当事者が自ら利用権限を有するデータについては、自らのデータであって、第三者に対して利用許諾することも本来は自由なはずである。もっとも、共同利用データや、単独利用データであっても相手方と競合関係にある第三者に利用許諾する場合には、相手方の利益が侵害されることもあり得る。
・必要に応じて、当事者間で、データの開示、譲渡、利用許諾又は担保設定に当たり相手方の事前同意を要するとすることも考えられる。
3-2 利用に係るコスト分担を定めるとき
(分担金の支払い)
第○条 乙は、甲に対して、[データ保管費用]の分担金として甲乙が別途協議の上定める金員を支払う。
[解説]
・既に述べたとおり、当事者が自ら利用権限を有するデータについては自由に利用等できるが、その利用等に当たり当事者間で利用条件を定めることもできる。
・データの利用権限を定めるに当たって当事者のコスト負担の程度を考慮し、当事者間でその調整を行ったときには、コスト負担等に関連して応分負担のための分担金を定めることがあり得る。本条項案はこの観点か
ら定められた規定である(データ保管費用の負担)。このような例によらず、本来の代金や対価に反映させることもあり得る。
・なお、利用権限の取決めに係る費用について、データの利用許諾(ライセンス)に係る使用料(ライセンスフィー)といった、本ガイドラインで想定する取決めの実態と乖離した解釈・評価がなされないよう、税法上の観点からの考慮も必要である。
4 関係者が複数の場合の処理
(関係者が複数の場合の処理)
第○条 甲乙は、一方当事者が利用権限を有するデータに第三者の知的財産権の対象となるデータが含まれる等、相手方の利用につき制限があり得ることが判明した場合には、速やかに甲乙が協議の上、協力して当該第三者の許諾を得ること又は当該データを除外する措置を講じること等により一方当事者が利用権限を行使できるよう努める。
[解説]
・第2の2(4)で説明したとおり、データの創出等に第三者が関与したり、第三者が創出したデータも含まれたりする場合、どのように処理するか問題となる。関係する第三者も含めた契約関係を整理し、本取引に係る契約を中心に調整を図ることになる。必要に応じてデータを切り分けして本取引に関連するデータに限定したり、当該第三者との間で権限処理をしたりする。
5 データの提供方法等
(データの提供等)
第○条 甲乙は、相手方が利用権限を有するデータを自ら収集又は取得し、相手方よりその提供を求められたときは、相手方の指定する方法により、相手方又は相手方が指定した者に提供する。その提供方法について費用が発生するときは甲乙が別途協議して負担割合等を決定する。
[ポイント]
・自ら直接データを取得できないときは、当該データにアクセスできる当事者が、データに効率よくアクセスし提供するなど、自由で円滑な利用の保証が重要である。
[解説]
・データの取得方法は様々であり、利用権限がある当事者が直接取得することもあれば、相手方から提供を受ける場合もある。
・当事者がデータにどのような手段を用いてアクセスし、あるいは自己の管理下におくかを明らかにしておくことが必要である。データは日々リアルタイムに発生するため、当事者の効率的な利活用のためには、アクセスできる者から円滑に提供を受ける必要がある。
6 データ形式
(データの形式)
第○条 本契約に基づき利用権限を定めるデータについては、データの利活用が容易になるよう、必要に応じて甲乙で共通のデータ形式を定める。
[ポイント]
・当事者が使いやすいデータ形式を定める。
[解説]
・必要に応じて利活用の用途に適した共通形式に加工することを検討し、データの性質や創出、取得又は収集の態様により最適なデータ形式を決めておくことが望ましい。
7 データの秘密管理
(データの秘密管理)
第○条 甲乙は、相手方の書面による同意を得ない限り、相手方のみに利用権限があるデータ(以下「相手方データ」という。)について、第三者に対して開示し又は漏えいしてはならない。ただし、次の各号のいずれか一つに該当するデータについてはこの限りでない。
一 本契約に違反することなく、既に公知であったもの二 自己が正当に保有していたもの
三 自己の責によらず公知となったもの
四 正当な権利を有する第三者より秘密保持義務を負うことなく入手したもの
2 甲乙は、相手方データの安全な管理に必要な措置を講じる。
[解説]
・相手方の利用データについて守秘義務、安全管理措置を定める。
・自己に利用権限があるデータについては、それぞれの責任で管理を行う。
・データに個人情報を含み得る場合には、個人情報保護法等に従った安全管理に配慮が必要である。
8 共同利用データに関する取扱い
共同利用データ(「甲乙利用データ」)については、以下の点で別途考慮が必要である。
・知的財産権の帰属の問題
当該データそのもの又は当該データの利用によって、知的財産権が発生する場合又は発生することが想定される場合には、その権利関係や帰属関係を規定しておく。
・データの保存方式、報告義務
データの管理・保管にかかる費用負担等
・利用権限の放棄
データの保存や提供の負担に鑑み、時間の経過によって利用価値が減少するデータについては、保存・提供を終了し、放棄する時期をあらかじめ決定することも検討する。
9 対象データの変更
(対象データの変更)
第○条 甲乙は、本契約締結時にはその創出を想定し得なかった新たなデータを取得又は収集することができることを知り、そのデータの利活用を求めるときは、相手方に対してその旨通知し、自らの利用権限に係るデータの変更を求めることができる。
2 甲乙は、前項により通知を受けたときは、甲乙が別途協議の上、データの変更が必要であるか決定し、必要があると決定したときは甲乙が合意した手続きに従って変更を行う。
[ポイント]
・自らの利用権限の対象データを変更する可能性を定めておくことが不可欠である。
[解説]
・契約前にデータを選定している場合、実際に取引が開始される前の見込みで想定しているため、当初想定し得ないデータが創出、取得又は収集される可能性は十分にあり得る。そのため、この場合に当該データを利用権限の対象とするための追加手続を規定しておく必要がある。
・この場合は、当事者の合意の上で、手続を経て対象データを変更することができるようにしておく。
10 契約期間中におけるデータの利用権限の取決め
契約前段階における当事者間の協議によってもデータの利用権限を定めるに至らない場合もある。この場合、いわば次善の策として、各当事者のデータの利用権限をあらかじめ定める規定に代えて、以下のような規定をおくことも考えられる。
(契約期間中におけるデータの利用権限の取決め)
第○条 甲乙は、データの利用権限の取決めについて相手方の申入れがあったときは、当該申入れにおいて特定されたデータについて、協議により利用権限を定める。
2 前項により当事者間で協議してデータの利用権限を定めるに当たっては、データ創出に対する寄与度、データの創出、取得又は保存等に関するコスト負担の程度その他一切の事情を総合的に考慮して定める。
11 契約終了時の取扱い
(契約終了時のデータの取扱い)
第○条 本契約が終了したときは、別紙●ないし●において契約終了時におけるデータ破棄が明記されたものについて、別途甲乙で定める手続に従い、速やかに破棄する。
[ポイント]
・継続的取引等において、契約終了後のデータの破棄を要する場合には、データの消去等ルールを定めておく。必要に応じて破棄の証拠化も定める。
[解説]
・契約終了後においても、それまでに当事者が利用権限を有するデータについてはそれぞれが任意に利用し続け、自らの意思により処分できる。
・もっとも、データによっては、契約期間中のみの利用に限定しても必ずしも不合理ではないものもある(機器の保守運用に関するデータ等)。このような場合に、契約終了時に当該データをどのように処理するかあらかじめ決めておく。
・準拠法
当事者がデータを蓄積する場合、サーバが設置された国やネットワークを 経由する国におけるそれぞれの法律が適用される可能性がある。したがって、それぞれの国の法律や法解釈、今後の制度整備についても確認することが必 要である。
・紛争解決、管轄裁判所
取引に係る契約に関して、準拠法と、紛争解決の管轄裁判所を合意により定める。個別の取引の事情(取引規模、当事者関係)に応じて仲裁もあり得る。
・データマネジメント実施体制
当事者がデータの利用権限を取得し、適正に行使するためには、データマネジメントの実施体制が整備されていることが望ましい。データ意味、鮮度、データ量、コード体系、システム構造、データ管理・品質等における責任者、セキュリティ等の体制整備が重要となる。
・製造会社が、工作機械メーカーから購入した工作機械を、ソフトウェアベンダから購入したミドルウェアを用いて工場内で稼働させる場合
事例
・製造会社Aが、工作機械メーカーBから工作機械を購入し、ソフトウェアベンダC から購入したミドルウェアを用いて自社工場において工作機械を稼働。工作機械から創出する稼働データについてAB間で利用権限を定める。
・AB間、AC間にはそれぞれ売買契約が成立しているが、BC間には直接の契約関係はない。
1 申 入 れ 等
(1) データの利用を希望する事業者(ABのいずれか一方又は両方)からの申入れに基づき、当該データが取引に関連して発生するものであることについて確認。
(2) AB間の工作機械の売買契約において、データの利用権限も定めることを確認。
2 データ選択
(1) 各当事者からのデータの提示する。
取引関連性及び利活用可能性の観点から、A及びBが利用を求めるデータを整理してそれぞれ提示 ※便宜上簡潔に記載している。
A・B |
Bの工作機械の稼働によって生じる機械の運転状況や処理項目等の稼 働データ |
(2) データカタログ等の作成
当事者によって提示されたデータについて協議し、利用権限の取決め対象とするデータにつきデータカタログを作成する。※実際にはより詳細に記載する。
データ項目 | データ詳細 | 利用当事者 |
稼働データ | Bの工作機械の稼働によって生じる運転状況や処理項目等のデ ータで、Cのミドルウェアによ | A B |
って蓄積、管理されるデータ |
(3) Cに関する権限の処理
上記(2)のデータカタログに記載したデータについては、Aが第三者 Cから購入したミドルウェアを利用して創出等しているため、AB間で利用権限を取り決めるに当たってはAC間の利用権限の処理も必要であることを確認し、Aにおいて併せて行う。
3 利用権限の決定
データ 項目 | 当事者 | |||
A | B | |||
稼働データ | 主張 | ・(主張の前提)AC間における利用権限の取り決め内容を踏まえ主張 ・工作機械、ミドルウェアともにAの所有物 ・創出等に寄与している(稼働データはA所有の工場内でAの事業活動によって発生) ・Bの事業に必要なし ・Bに利用権限を認めるとしても、AC間でCの利用権限に関する合意がある場合に、AC間の合意内容に抵触しない範囲でBの権限設定可 | 主張 | ・データ発生源である工作機械を開発・製造、データ取得には同機械独自の構造等が寄与 ・データ分析によるAの生産性向上に資するサービス提供等可 ・販売価格減やデータ管理コストの負担等可 ・データ範囲、守秘義務担保、利用目的制限可 等 |
取決め | 利用権限:有 | 取決め | 利用権限:有 ・第三者提供はAの同意を得る等により利用権限あり ・AC間の合意内容に抵触しな い範囲で利用権限あり | |
利用権限:無 ・Aのみが稼働データの利用権限を有することを踏まえて工作機械の代金を定めている ・稼働データがAにおいて高度 に機密情報として扱われてい |
当該データについて、考慮要素等に照らして各当事者が主張し、取引条件・利用条件を調整して、利用権限を決定する。
る | ||||
A | C | |||
主張 | ・(主張の前提)AB間における利用権限の取り決め内容を踏まえ主張 ・工作機械、ミドルウェアともにAの所有物 ・創出等に寄与している(稼働データはA所有の工場内でAの事業活動によって発生) ・Cの事業に必要なし ・Cに利用権限を認めるとしても、AB間でBの利用権限に関する合意がある場合に、AB間の合意内容に抵触しない範囲でCの権限設定可 | 主張 | ・工作機械におけるデータの取得にはミドルウェア独自の機能等が寄与 ・データ分析によるAの生産性向上に資するサービス提供等可 ・販売価格減やデータ管理コストの負担等可 ・データ範囲、守秘義務担保、利用目的制限可 等 | |
取決め | 利用権限:有 | 取決め | 利用権限:有 ・第三者提供はAの同意を得る等により利用権限あり ・AB間の合意内容に抵触しな い範囲で利用権限あり |
4 条 項 x x
上記を踏まえてAB間、AC間それぞれの売買契約に組み込む条項を作成する。
・製造会社が自社データをサービス提供事業者に提供し、AI分析等によるサービスを受ける場合
事例
・製造会社Aはサービス提供事業者Bにデータを提供し、AI分析等によるアウトプットデータの提供等のサービスを受ける。
・Bは、当該取引において生成された学習済みモデル等のアルゴリズムを、他の事業者へのサービス提供にも活用することを検討。
1 申 入 れ 等
(1) データの利用を希望する事業者(ABいずれか一方又は両方)からの申入れに基づき、当該データが取引に関連して発生するものであることについて確認。
(2) AB間のサービス提供契約において、データの利用権限も定めることを双方で確認。
2 データ選択
(1) 各当事者からのデータの提示
取引関連性及び利活用可能性の観点から、ABそれぞれが利用を求めるデータを整理して提示 ※便宜上簡潔に記載している。
A |
Aが提供したデータ(インプットデータ)を利用して作成されたアル ゴリズム |
B |
① Aから提供されたデータ(インプットデータ)を利用して作成されたアルゴリズム ② サービス提供契約に基づきAに納入したアウトプットデータ |
※インプットデータについてはAB間の取引において新たに発生したデータではないこと(取引関連性が無いこと)、アウトプットデータのAにおける利用権限については当然にサービス提供契約に定められていると考えられることから、それぞれ選定の対象としていない。
(2) データカタログ等の作成
各当事者によって提示されたデータについて協議し、利用権限の取決め
対象とするデータについてデータカタログを作成 ※実際はより詳細記載する。
データ項目 | データ詳細 | 利用当事者 |
アルゴリズム | Aから提供された元データ (インプットデータ)を利用して作成したもの | A B |
サービス提供データ(アウトプットデータ) | インプットデータを元にアルゴリズムを利用して生成した診断結果データ、統計データ、レポ ートデータ | B |
3 利用権限の決定
それぞれのデータについて、考慮要素等に照らして各当事者が主張し、取引条件・利用条件を調整して、利用権限を決定する。
データ項目 | 当事者 | |||
A | B | |||
アルゴリズム | 主張 | ・学習のための元データを提供しており、寄与あり ・サービス対価増額等によりコスト負担可 ・守秘義務担保、利用目的制限可 等 | 主張 | ・元データ以外のデータも学習させている ・利用目的は制限可 ・B活用に伴う利益分配は不可 ・一部B独自データで学習させている ・Aは分析結果を踏まえて事業を展開するのが目的であって分析サービス事業を行うことが目的ではないため、分析ツー ルのアルゴリズムは不要 |
取決め | 利用権限:有 サービス対価増額、Bへの利益分配請求不可等の取 引条件により利用権限あ り | 取決め | 利用権限:有 ただし、寄与度等に応じて、第三者へのサービス提供に はAの同意を要する場合あ り | |
利用権限:無 Bのみが学習済みモデルのアルゴリズムの利用権限を有することを踏まえ |
てサービス代金を定めている ・学習済みモデルのアルゴリズムがBにおいて高度 に機密情報として扱われ ている | ||||
サービス提供データ (アウトプットデータ) | 主張 | ・創出等に寄与している ・Bの事業に必要なし ・本データは本サービス提供契約の目的 | 主張 | ・創出や保存等に寄与している ・A競合会社には提供制限や利 益分配可 |
取 決め | 利用権限:有 | 取 決め | 利用権限:有 第三者提供はAの同意を得る等により利用権限あり |
4 条 項 x x
上記を踏まえてサービス提供契約に組み込む条項を作成する。
(別添1)データカタログ案(サンプル)
製品・機器名/製品・ 機器 ID | センサ ID | 稼働場所 | データ項目 | データ集計対象期間 | データ形式 | |
1 | ○○○○ | ○○○ | ○○工場 | 選定対象データの詳細 (例)加工時間/アラーム時間/主軸負担/油圧/温度/振動/自動運転時間/停止時間/ 電流/位置偏差/モーター負荷/モーター温度/消費電力/ 異常負荷トルク | 2017/ ○ / ○ -2017/○/○ | ○ ○ 形式 |
※対象デー | ※対象機器 | ※対象データ取 | ※ 納 入時 | |||
タを生成、蓄 | 等の設置場 | 得期間を特定す | のデー タ | |||
積等する製 | 所、稼働場所 | る日付 | 形式 | |||
品・機器の名 | 又は機器が | |||||
称、管理番 | 搭載された | |||||
号、製造番号 | 製品等 | |||||
等 | ||||||
2 | ||||||
3 |
(別添2)モデル条項
(定義)
第○条 本契約において、次に掲げる用語は次の定義による。
一 「データ」とは、本取引に関連して創出し、取得又は収集した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の近くによっては認識できない方式で作成される記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)をいう。
二 「甲利用データ」とは、甲が利用権限を有するものとして別紙●に定めるデータをいう。
三 「乙利用データ」とは、乙が利用権限を有するものとして別紙●に定めるデータをいう。
四 「甲乙利用データ」とは、甲乙が利用権限を有するものとして別紙●に定めるデータをいう。
(データの利用権限の配分)
第○条 甲乙は、次に定めるとおりデータの利用権限を有する。一 甲利用データについては、x
x 乙利用データについては、x
x 甲乙利用データについては、甲及び乙
2 前項の利用権限の内容は、別紙●ないし●においてデータ毎にそれぞれ定める。特段の定めがないときは、データを利用、開示、譲渡(利用許諾を含む)及び処分することのほか、データに係る一切の権限を含むものとする。
(免責)
第○条 甲乙は、第○条に定める利用権限によりデータを利用したことに起因して発生した責任及び損害(第三者の権利の侵害も含む。)については、自らこれを負担する。ただし、相手方の故意又は重大な過失により当該データに瑕疵があり、これによって損害が生じたときはこの限りでない。
(継続的創出に対する非保証)
第○条 甲乙は、それぞれ相手方に対し、相手方が利用権限を有するデータについて、当該データが必ず創出されることを保証するものではない。ただし、甲又は乙が、相手方に損害を与えることを目的として、故意にデータの創出、取得又は収集を行わず、又はそれらの行為を妨害したときはこの限りでない。
【特約】(事前同意)
第○条 甲乙は、第三者に対して、第○条(データの利用権限の配分)に定める自己の利用権限に係るデータを開示、譲渡(持分譲渡を含む)、利用許諾又は担保の目的とするときは、相手方の事前の書面による同意を得なければならない。
【特約】(分担金の支払い)
第○条 乙は、甲に対して、[データ保管費用]の分担金として甲乙が別途協議の上定める金員を支払う。
(関係者が複数の場合の処理)
第○条 甲乙は、一方当事者が利用権限を有するデータに第三者の知的財産権の対象となるデータが含まれる等、相手方の利用につき制限があり得ることが判明した場合には、速やかに甲乙が協議の上、協力して当該第三者の許諾を得ること又は当該データを除外する措置を講じること等により一方当事者が利用権限を行使できるよう努める。
(データの提供等)
第○条 甲乙は、相手方が利用権限を有するデータを自ら収集又は取得し、相手方よりその提供を求められたときは、相手方の指定する方法により、相手方又は相手方が指定した者に提供する。その提供方法について費用が発生するときは甲乙が別途協議して負担割合等を決定する。
(データの形式)
第○条 本契約に基づき利用権限を定めるデータについては、データの利活用が容易になるよう、必要に応じて甲乙で共通のデータ形式を定める。
(データの秘密管理)
第○条 甲乙は、相手方の書面による同意を得ない限り、相手方のみに利用権限があるデータ(以下「相手方データ」という。)について、第三者に対して開示し又は漏えいしてはならない。ただし、次の各号のいずれか一つに該当するデータについてはこの限りでない。
一 本契約に違反することなく、既に公知であったもの二 自己が正当に保有していたもの
三 自己の責によらず公知となったもの
四 正当な権利を有する第三者より秘密保持義務を負うことなく入手したもの
2 甲乙は、相手方データの安全な管理に必要な措置を講じる。
(対象データの変更)
第○条 甲乙は、本契約締結時にはその創出を想定し得なかった新たなデータを取得又は収集することができることを知り、そのデータの利活用を求めるときは、相手方に対してその旨通知し、自らの利用権限に係るデータの変更を求めることができる。
(契約終了時のデータの取扱い)
第○条 本契約が終了したときは、別紙●ないし●において契約終了時におけるデータ破棄が明記されたものについて、別途甲乙で定める手続に従い、速やかに破棄する。
【参考】(契約期間中のデータの利用権限の取決め)
第○条 甲乙は、データの利用権限の取決めについて相手方の申入れがあったときは、当該申入れにおいて特定されたデータについて、協議により利用権限を定める。
2 前項により当事者間で協議してデータの利用権限を定めるに当たっては、データ創出に対する寄与度、データの創出、取得又は保存等に関するコスト負担の程度その他一切の事情を総合的に考慮して定める。