Contract
二訂版
二訂版
目 次
C o n t e n t s
第 1章
介護事業所が守らなければならない法定事項
1 雇用管理の重要性 4
2 労働契約法と契約期間・更新 6
3 労働条件の明示 8
4 就業規則 10
5 就業規則(パートタイマー、有期契約労働者等) 12
6 パートタイマーの雇用管理 14
7 労働時間の管理 16
8 時間外労働・休日労働・深夜労働 18
9 変形労働時間制 20
10 派遣労働者の受入れ 22
11 休憩時間・休日 24
12 年次有給休暇 26
13 賃金の基本 28
14 割増賃金 30
15 退職管理 32
16 解雇・雇止め 34
17 女性労働者の保護(産前産後休業、生理休暇、母性健康管理等) 36
18 育児・介護休業 38
19 子育てサポート企業、女性活躍推進企業 40
20 外国人労働者 42
21 健康診断・安全衛生管理 44
22 メンタルヘルスとストレスチェック制度 46
23 職場のハラスメント対策 48
24 労働保険・社会保険 50
25 個人情報保護 52
26 訪問介護労働者の移動時間の取扱い 54
27 訪問介護サービスのキャンセル時の対応と休業手当 56
C o n t e n t s
第 2x
xが採用でき定着する工夫
28 処遇改善加算 60
29 介護事業経営 62
30 介護事業の人事戦略 64
31 人事評価と目標管理 66
32 教育訓練(人材育成) 68
33 人材不足と対応策 1. 採用 70
34 人材不足と対応策 2. 定着 72
35 業務効率化 74
36 コミュニケーション 1「評価軸は部下の行動変容」 76
37 コミュニケーション 2「強みを活かしたネットワーク作り」 78
38 定着のための取組み(事例) 80
39 雇用管理上のリスクマネジメント 82
参考資料
⃝ 職場環境等要件について〈共通〉 84
⃝ 働き方改革関連法のうち、介護事業所に関わりのあるものの主な内容と施行時期 … 85
⃝〔居宅介護系職員用〕労働条件通知書(パートタイマー) 86
⃝
⃝〔施設介護系職員用〕労働条件通知書(フルタイム) 88
時間外労働休日労働
に関する協定届 89
⃝ 利用者からのハラスメント 90
⃝ 雇用管理相談 92
⃝ 介護労働安定センター支部(所)の一覧 93
第 1章
介護事業所が 守らなければならない
法定事項
1 雇用管理の重要性
雇用管理は人材定着の礎です。人材が定着する「魅力ある職場」を作るためには、「働きやすさのための雇用管理」と「働きがいのための雇用管理」、どちらも整えることが重要です。
1 人材定着と雇用管理
雇用管理は、良質な人材の定着・育成のために欠かすことのできない重要な基盤です。
雇用管理には、「働きやすさ」と「働きがい」の側面があります。「働きやすさ」とは、労働時間や勤務場所の配慮、就業規則の整備やワークライフバランス等仕事の形式的側面の問題です。また、「働きがい」とは、仕事そのものや適正な人事評価、教育訓練等仕事の内容的側面に関連し、仕事への喜び・満足、モチベーションの向上の問題です。
「働きやすさ」が十分に確保されていなければ、多くの職員が不満を持つでしょう。しかし、「働きやすさ」が十分に整っているということだけでは、仕事への積極的な動機づけにならないかもしれません。
また、「働きがい」のみを重視し、「働きやすさ」を疎かにすれば不満が高まり、離職につながることになります。介護事業所においては、仕事のやりがいを重視されがちですが、就業環境の整備や労働条件、健康管理等を同時に進めていく必要があります。
人材の定着する「魅力ある職場」のためには、「働きやすさ」(労働環境等)と「働きがい」(やる気・意欲)
雇用管理の全体像
+
『働きがい』の要素
(労働への喜びと満足
・モチベーションアップ)
組織の活性化・職員の満足・サービスの充実
自己実現
(±0)
達成感 承 認
成 x x 進キャリアアップ
仕事そのもの 納得の評価
賃 金 労働条件 相談窓口メンタルヘルス
『働きやすさ』の要素
(不満の少ない環境
・定着率アップ)
ワークライフバランス
経営理念 人間関係 就業規則法令順守 衛生管理 作業条件
4
-
組織が停滞ぎみ・職員の不満足・サービスの低下
上司の質
を高める雇用管理の双方の取組みを進めることが重要です。それは、組織の活性化をもたらし、介護サービスの質の向上や経営安定にもつながります。
2 雇用管理改善の進め方~『介護の雇用管理改善CHECK&ACTION25』の活用
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
介護労働安定センターでは、『介護の雇用管理改善 CHECK&ACTION 25』を作成し、これを活用して介護事業所の雇用管理改善の支援を行っています。
本書では、職員の働きやすい・働きがいのある職場づくりに重要な取組を A~E の 5 領域・25 項目で構成し、それぞれの内容を 25 項目のチェックリストにより、領域別または項目別に自法人・事業所の取組課題(弱み)を発見することができます。
法人責任者ばかりでなく、現場の管理者や職員の方々にも活用していただき、雇用管理の取組み状況を振り返って確認してみましょう。課題が確認できたら、課題ごとに目標と改善計画を作成し、PDCA サイクルにより実施に向けて進めてみましょう。詳しくは、当センターホームページを参照ください。
介護労働安定センターホームページ xxxx://xxx.xxxxxx.xxxxx-xxxxxx.xx.xx/xxxx0.xxxx
『介護の雇用管理改善CHECK & ACTION25』
A 情報共有・コミュニケーション
B 労務管理 E 職場環境・組織風土
C 評価・報酬 D 人材採用・育成
働きやすい
STEP1 「CHECK & ACTION25」による現状把握
雇用管理改善の進め方
STEP2 自法人・事業所における課題設定
⬇
STEP3 課題ごとの目標設定と実行計画の作成
⬇
STEP4 取組の実施と進捗管理
⬇
⬇
働きがいのある職場づくり
STEP5 結果の振返り・検証と次に向けての課題設定
3 介護労働者雇用管理責任者を選任しましょう
厚生労働省は、介護分野の事業所において介護労働者の雇用管理改善への取組み、介護労働者からの相談への対応、その他の介護労働者の雇用管理改善等に関する事項の管理業務を担当する者を「介護労働者雇用管理責任者」として選任し、周知するよう促しています。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
5
例年、介護事業所において雇用管理に責任を有する者等を対象に「介護労働者雇用管理責任者講習」が実施されています。
働きやすさと働きがいのある魅力的な職場作りに努めている
介護労働者雇用管理責任者を選任している
□
□
2
労働契約法と契約期間・更新
(労働契約法)
労働契約を結ぶときは、就業規則や法律の基準に反する労働条件で締結してはなりません。5 年を超えて契約を更新している有期労働契約の労働者から無期労働契約への転換を申し込まれたときは、法律xxx申し込みを承諾したものとみなされ、拒否できません。
1 労働契約法
(1)労働契約の原則
労働契約法は、労働契約の基本的な事項(労働契約の原則、労働契約の変更、有期労働契約など)について定めた法律で、2008 年(平成 20 年)3 月 1 日に施行されました。
労働契約の原則
①労使対等の原則 ④xxxxの原則
②均衡考慮の原則 ⑤権利濫用の禁止
③仕事と生活の調和への配慮の原則
(2)就業規則を下回る労働条件を定めた労働契約
就業規則で定める基準に満たない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となり、就業規則で定めた労働条件が当事者間の労働条件になります。
(3)法違反の労働契約
法律で決められた基準に反する労働の条件は無効で、無効となった部分は法律で定められた基準が適用されます。
2 労働契約
労働契約には「期間の定めのない契約」(無期労働契約)と「期間の定めのある契約」(有期労働契約)の 2 種類があります。「期間の定めのある契約」は原則として 3 年を超えて契約を結ぶことはできませんが、次の例外があります。
有期労働契約の契約期間
原則:3 年まで
例外:① 3 年を超えて契約できる場合
・一定の事業の完了に必要な期間を定める場合
・労働基準法第 70 条による職業訓練のために長期の訓練期間が必要な場合
②最長 5 年の契約ができる場合
・高度で専門的な知識等を有する者
・満 60 歳以上の者
6
※「高度で専門的な知識を有する者」については厚生労働省告示で定められています。
3 有期労働契約から無期労働契約への転換
有期労働契約が繰り返し更新されて通算 5 年を超えたときは、労働者の申し込みにより期間の定めのない契約(無期労働契約)に転換することができます。通算する労働契約は、2013 年(平成 25 年)4 月 1 日以降に開始した労働契約が対象となります。2013 年(平成 25 年)3 月 31 日以前に開始した有期労働契約は、通算期間に含めません。無期労働契約への転換の申し込みは労働者の自由ですが、申込まれたときは法律x xx申込を承諾したものとみなされ、使用者は拒否できません。
(1)申込権が発生する時期と転換
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
契約期間が 1 年の場合、無期転換申込の権利の発生時期は「有期労働契約の期間を通算した期間が 5 年」に達した労働者がその次の「6 年目」に入る労働契約をしたときに発生します。無期労働契約への転換は、
第1章
「7 年目」の契約からとなります。
契約期間が 1 年の場合
1年
有期労働契約の締結
1年 1年 1年 1年 1年
雇入れから 5年
無期労働契約 7 年目に転換
6 年目に無期転換の 申込権が発生します。
(2)無期転換申込権のクーリング期間(空白期間)
通算契約期間が 1 年以上の場合、契約と契約の間(契約のない期間)が 6 か月以上空けて契約をしたときは、前後の契約期間は通算しません。
(3)有期労働契約から無期労働契約に転換した後の労働条件
原則として、労働者が無期転換の申し込みをしたときの有期労働契約と同じ労働条件となります。契約期間が有期から無期に変更になるだけです。
(ただし、就業規則や個別の労働契約などで別の労働条件を定めることも可能です。)
(4)定年(60 歳以上)に達した後、再雇用されている有期雇用労働者について
「有期雇用労働者等に関する特別措置法」に基づいて計画届を労働局に届け出て認定を受けた事業所は、再雇用の有期雇用労働者が、その事業主に定年後引き続いて雇用されている期間は、無期転換申込権が発生しません。
無期契約転換については、就業規則の内容確認と整備が必要です。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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有期労働契約から無期労働契約に転換した労働者に適用する就業規則がない場合は、就業規則の修正が必要になります。例えば、有期労働契約のときには定年の定めがなかったが、無期労働契約への転換に際し、新たに定年を設ける場合は、定年の定めを規定する必要があります。
労働契約を結ぶときは就業規則や法令を遵守している
有期労働契約から無期労働契約へ転換する労働者に適用する就業規則がある
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□
3 労働条件の明示
(労働基準法、職業安定法)
正社員、パートタイマー、登録ヘルパーなど雇用形態や呼び名に関係なく、労働者と雇用契約を結ぶ際には、労働条件の明示を書面(FAX・電子メール、SNS 等)で行いましょう。明示する労働条件は事実と異なる内容としてはなりません。
1 労働条件の明示
使用者が労働者を雇い入れるときは、必ず労働条件を明示しなければなりません。労働条件の明示には「必ず明示しなければならない事項」と「定めをした場合に明示しなければならない事項」があります。
(1)必ず明示しなければならない事項
①労働契約の期間
②期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
③就業の場所・従事すべき業務
④始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を 2 組以上に分けて就業させる場合の就業時転換に関する事項
⑤賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期
⑥退職に関する事項(解雇の事由を含む)
①から⑥は書面で明示しなければならない事項です。
⑦昇給に関する事項
(2)定めをした場合に明示しなければならない事項
①退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法及び支払いの時期
②臨時に支払われる賃金、賞与等及び最低賃金額に関する事項
③労働者に負担させる食費、作業用品などに関する事項
④安全・衛生
⑤職業訓練
⑥災害補償、業務外の傷病扶助
⑦表彰、制裁
⑧休職
(3)パートタイマーに労働条件を明示するとき
上記の「必ず明示しなければならない事項」①から⑥の他に、次の事項も書面等で明示しなければなりません。
①昇給の有無
②退職手当の有無
③賞与の有無
④相談窓口(担当者の部署、役職、氏名)
(4)労働条件の明示方法
8
労働条件の明示は、書面の交付による明示の他、労働者が希望した場合は、FAX や電子メール、SNS等で行うことができます。電子メールや SNS 等で明示するときは、出力して書面が作成できる形式に限られます。印刷や保存がしやすいよう添付ファイルで送りましょう。
2 労働条件明示のタイミング
ハローワーク等への求人申込みや自社ホームページでの募集の際に、職業安定法に定める労働条件を明示する必要があります。
募集時に明示した労働条件と採用時の労働条件が変更になる場合は、労働契約を締結する前に変更内容を明示する必要があります(2018 年(平成 30 年)1 月に法改正)。
第1章
募集のとき
求人票や募集要項などで労働条件を明示する必要があります。
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
※自事業所ホームページでの募集の際も労働条件の明示は必要です。
労働条件に変更があった場合
当初明示した労働条件が変更になる場合は、変更内容を明示しなければなりません。
※面接等の過程で変更があった場合は求職者に速やかに通知します。
労働契約締結時
労働基準法に基づき、労働条件通知書等で労働条件を通知する必要があります。
労働者の募集時に明示しなければならない労働条件等
①業務内容 ②契約期間 ③試用期間 ④就業場所 ⑤就業時間・休憩・休日・時間外労働の有無
⑥賃金 ⑦労働保険・社会保険の適用 ⑧募集者の氏名又は名称 ⑨受動喫煙防止措置の状況 等
2020 年(令和2年)4月1日から、従業員の募集や求人申し込みの際に受動喫煙対策の内容について明示することとなりました。
「固定残業代」(時間外労働の有無にかかわらず定額で一定の割増賃金を支給する制度)を採用する場合は、募集要項や求人票に次の内容を明示する必要があります。
①固定残業代を除いた基本給の額
②固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
③固定残業時間を超える時間外労働については割増賃金を追加で支払う旨
3 有期契約労働者の労働条件の明示
有期契約の労働者には、左ページの労働条件の明示事項に加えて有期労働契約の更新の有無と更新の判断基準を書面で明示しなければなりません。
契約の更新の有無に関する記載例
⃝自動的に更新する。
⃝更新する場合があり得る。
⃝契約の更新はしない。 ※など
更新の判断基準に関する記載例
⃝契約期間満了時の業務量 ⃝能力
⃝勤務成績、態度 ⃝会社の経営状況
⃝従事している業務の進捗状 況など
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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※有期労働契約の更新をしないことが明らかな場合は、更新の基準の明示義務はありません。
労働条件通知書をすべての労働者に渡している
有期契約労働者には、契約の更新の有無と判断基準を通知書に明示している
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4 就業規則
(労働基準法)
就業規則は、労働時間や賃金などの労働条件や、職場内の規律を定めた職場の規則です。常時 10 人以上の労働者を使用している事業場では、就業規則を作成し、労働者代表の意見書を添付して労働基準監督署に届出をしなければなりません。
1 就業規則の作成義務
常時 10 人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成しなければなりません。常時 10 人以上の労働者には、パートタイマーやアルバイトなどを含みます。
労働者の人数が時として 9 人以下になることがあっても、常態として 10 人以上である場合は、作成しなければなりません。
常時使用する労働者の人数が 9 人以下の事業場では、就業規則の作成義務はありませんが、働きやすさ向上のために就業規則を作成するようにしましょう。
2 就業規則の記載事項
就業規則には、必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)と、定めをする場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)があります。
作成する際は、就業規則は労働基準法などの法令や労働協約に反してはなりません。また、就業規則で定める基準に達しない労働契約は、その部分については無効となります。
(1)必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)
①始業及び終業の時刻
②休憩時間
③休日
④休暇
⑤労働者を 2 組以上に分けて交替で就業させる場合の就業時転換に関する事項
⑥賃金(臨時の賃金等を除く。)の決定の方法
⑦賃金(臨時の賃金等を除く。)の計算及び支払の方法
⑧賃金(臨時の賃金を除く。)の締切り及び支払時期
⑨昇給に関する事項
⑩退職に関する事項
⑪解雇の事由に関する事項
育児休業・介護休業について
10
育児・介護休業法に基づく育児休業・介護休業は、「休暇」に該当し絶対的必要記載事項になるため、必ず就業規則に規定しましょう。
(2)定めをする場合には記載しなければならない事項(相対的必要記載事項)
①退職手当に関する事項
・適用される労働者の範囲 ・退職手当の決定 ・計算及び支払の方法
・退職手当の支払の時期
②臨時の賃金等(退職手当を除く。)に関する事項
③最低賃金に関する事項
④労働者に食費、作業用品、その他の負担に関する事項
⑤安全及び衛生に関する事項
⑥職業訓練に関する事項
⑦災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑧表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
⑨以上のほか、事業場の労働者のすべてに適用される定めに関する事項
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
第1章
3 就業規則の作成・変更手続き
(1)意見聴取
就業規則を作成・変更する際には、労働者代表の意見を聴かなければなりません。意見を聴く労働者代表とは、事業場の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、そのような労働組合がなければ全労働者(パートタイマー、アルバイトを含む。)の過半数を代表する者のことです。
(2)届出
就業規則を作成・変更したときは、事業場を管轄する労働基準監督署に労働者代表の意見書を添付して届出をします。
就業規則は事業場単位で作成し届出をします。複数の事業場がある場合は、それぞれの事業場を管轄する労働基準監督署に届出をします。
(3)周知
届出をした就業規則は労働者に周知をして、労働者がいつでも見られる状態にしておく必要があります。
就業規則の周知方法
①常時各作業場の見やすい場所に掲示または備え付ける。
②労働者に書面で交付する。
③社内LANなどで常時閲覧できるようにする。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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「意見聴取」とは、あらかじめ就業規則の内容を知らせて意見を聴くということで、同意を取り付けることや、その意見に拘束されることではありませんが、労働者には規則の内容をよく説明して理解を得られるようにしましょう。
就業規則を作成する際に、労働者代表の意見を聴取している
就業規則を労働者に周知している
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就業規則(パートタイマー、
5 有期契約労働者等)
(パートタイム・ 有期雇用労働法)
パートタイマーや登録ヘルパーを含め常時 10 人以上の労働者を使用する使用者は、パートタイマー等に適用される就業規則を作成する義務があります。トラブルを未然に防ぐためにも就業ルールをしっかりと定めましょう。
1 就業規則の対象労働者
就業規則は、事業所で雇用されているすべての労働者について作成しなければなりません。xx職員のほかに、「契約職員」「パートタイマー」「登録ヘルパー」など雇用形態が異なる労働者がいる場合には、それぞ れに応じた就業規則を作成することが必要となります。
職員(xx職員)就業規則
契約職員(有期労働契約職員)就業規則
就業規則 パートタイマー(短時間職員)就業規則
非常勤職員(嘱託職員)就業規則
登録ヘルパー就業規則
「パートタイマー等の休職に関して、別に定めるところによる。」としながら、別規程が見当たらない事業所も見受けられます。このような場合、パートタイマーに対しても長期雇用を前提とするxx職員と同じような労働条件(休職)を適用しなければならなくなってしまう場合もあります。
2 パートタイマーからの意見聴取
短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)ではパートタイマーの就業規則を作成・変更しようとするときは、パートタイマーの過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めなければなりません。
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この意見聴取については、書面を労働基準監督署に届け出るなどの手続きは不要ですが、事業所内では何らかの形で書面に残すようにするとよいでしょう。
就業規則作成・変更にあたっての意見聴取の違い
労働基準法 パートタイム・有期雇用労働法
事業場の全労働者の過半数代表の意見を聴かなくてはならない。
労働基準監督署に意見書を添付して届け出なければならない。
事業場のパートタイマーの過半数代表の意見を聴くように努めなければならない。
意見書の添付は不要
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
3 パートタイマー等の就業規則を作成する際のポイント
パートタイマー等の就業規則を作成する場合、xx職員就業規則と労働条件や待遇について、労務トラブルを防ぐ観点から考慮するポイントについて確認しておきましょう。
職務内容の限定、配置転換
正社員への転換を推進するための措置
特別休暇
育児・介護休業等休職制度
賞与・退職金健康診断
相談窓口
xx職員と業務内容や配置の変更の範囲などが同じであれば基本給や賞与などの待遇で差別することは禁止されているため、パートタイマー等の職務内容や配置転換について、xx職員とは異なることを明らかにする必要があります。
xx職員への転換を推進するための措置について、会社は必ず講じておかなければなりません。
法律で定める有給休暇のほか、特別休暇を設ける必要性があるのかを検討しましょう。
育児・介護休業法に則って、対象者の要件をしっかり定めておく必要があります。パートタイマー等に休職制度を適用するかどうかを検討しましょう。
パートタイマー等に賞与・退職金を支給するかどうかを検討しましょう。
要件を満たすパートタイマーに対しては、一般健康診断(雇入れ時の健康診断、定期健康診断等)を行う必要があります。
事業所は、パートタイマーからの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備する必要があります。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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xx職員とパートタイマー等の労働条件を検討するにあたっては、パートタイム・有期雇用労働法でも規定されていますが、xx職員との均衡待遇・均等待遇を考慮にいれなければなりません。『13. 賃金の基本』でも触れていますが、同一労働同一賃金の実現に向けて「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」が発表されています。この指針で示されている待遇差の合理性・不合理性をしっかり確認した上で、規定を設けるようにしましょう。
雇用区分に応じた就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出ている
パートタイマー等をめぐる法的なポイントを押さえている
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パートタイマーの雇用管理
(パートタイム・有期雇用労働法)
パートタイマーや登録ヘルパーは、人によって休日や労働時間などの労働条件が異なることが多いため、トラブルを防止するためにも労働条件を明確にしておきましょう。
1 労働条件の明示
労働契約を締結するときは、その締結の際に、使用者は労働者に対して賃金や労働時間その他必要な労働 条件を書面で明示しなければならないことになっていますが、この規定は、パートタイマーにも適用されます。パートタイマーには、さらに 4 つ、昇給、退職手当、賞与の有無、相談窓口を書面で明示すべき事項に加
える必要があります。
パートタイマーも労働基準法上の労働者なので、労働基準法、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などの労働関連法規が原則としてそのまま適用されます。また、パートタイマーのための法律として「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム・有期雇用労働法)」があります。
2 パートタイマーへの待遇に関する説明義務
パートタイマーを雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容(賃金や教育訓練、福利厚生、正社員転換推進措置など)について説明することが義務づけられています。
また、パートタイマーの待遇について、パートタイマーから求めがあったときは、事業所は通常の労働者との待遇差の内容、理由などについて説明しなければなりません。パートタイマーが説明を求めたことにより、不利益な取り扱いをすることは禁止されています。
説明が課される事項
【雇入れ時(第 14 条第 1 項)】 【説明を求められたとき(第 14 条第 2 項)】
⃝不合理な待遇の禁止に関する事由
⃝待遇の差別的取扱い禁止に関する事由
⃝賃金の決定方法
⃝教育訓練の実施
⃝福利厚生施設の利用
⃝通常の労働者への転換を推進するための措 置
⃝待遇内容及び待遇決定に際しての考慮事項
⃝通常の労働者との間の待遇差の内容や理由
⃝労働条件の文書交付等
⃝就業規則の作成手続
⃝待遇の差別的取扱い禁止に関する事由
⃝賃金の決定方法
⃝教育訓練の実施
⃝福利厚生施設の利用
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⃝通常の労働者への転換を推進するための措置
3 不合理な待遇差の禁止
同じ事業所内で、同じ職種に従事するxx職員とパートタイマーとの間で、不合理な待遇差を設けることは禁止されており、「均衡待遇」と「均等待遇」が義務づけられています。
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
xx職員・パートタイマーそれぞれ、①職務内容(業務内容、責任の程度)、②職務内容・配置の変更範囲(配置転換、転勤、異動の有無や範囲)、③その他の事情(職務の成果、能力、経験など)に応じた待遇が求められます。
第1章
図表 均衡待遇と均等待遇
(出所)『東商新聞 News&Opinions 第 2119 号』東京商工会議所 一部改
4 パートタイマーの相談に対応するための体制整備
パートタイマーからの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。相談に対応するための体制整備の例としては、以下のようなものがあります。
⃝雇用する職員の中から相談担当者を決め、相談に対応させる。
⃝短時間雇用管理者を相談担当者として定め、相談に対応させる。
⃝事業主自身が相談担当者となり、相談対応を行う。
⃝外部専門機関に委託し、相談対応を行う。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
15
+α パートタイム・有期雇用労働法では、パートタイマーからxx職員への転換を推進するための措置を講ずるよう義務が課されています。
パートタイマー、登録ヘルパーと雇用契約書を締結している
パートタイマー、登録ヘルパーを不利益に取り扱っていない
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7 労働時間の管理
(労働基準法)
使用者は、労働者の労働時間を適正に管理しなければなりません。タイムカードや出勤簿には始業・終業時刻を正しく記録しましょう。
参加を義務づけている教育・研修は労働時間に該当します。
1 労働時間とは
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。
(1)労働時間にあたるもの
①業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)
②業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内で行った時間
③手待ち時間
④参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講
⑤使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間
※「③手待ち時間」とは、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間をいいます。
(2)労働時間にあたるかどうかの判断
労働契約や就業規則の定めによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価できるか客観的にみて判断されます。労働者の行為が使用者から義務づけられ、またはこれを余儀なくされていた等の状況の有無から、個別具体的に判断されます。
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)より
(3)研修に参加する時間
⃝参加が義務づけられている研修
研修に参加しないと就業規則の制裁や人事評価でマイナス評価される場合
労働時間になる
⃝自由参加の研修
研修に参加しなくても就業規則の制裁や人事評価に影響しない場合
労働時間にならない
(4)健康診断の受診時間
一般健康診断の受診時間は、労働時間としなくても労働基準法上問題はありませんが、厚生労働省の通達では「労働時間とすることが望ましい」とされています。
16
なお、特殊健康診断の受診時間は労働時間として取り扱わなければなりません。
2 労働時間の原則
(1)法定労働時間
使用者は労働者に休憩時間を除いて、1 日に 8 時間、1週間に 40 時間を超えて労働させることはできません。
(2)特例措置事業場
事業場の規模が 10 人未満の「特例事業場」は、1 日 8時間、1 週間 44 時間まで労働させることが認められています。
介護事業は保健衛生業にあたります。
法定労働時間と所定労働時間のちがい
特例措置事業場
(10 人未満の下記の事業)商業
映画演劇業(映画の製作の事業を除く。)保健衛生業
接客娯楽業
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
法定労働時間:労働基準法 32 条または 40 条で定められている労働時間(1 日 8 時間、1 週 40 時間ま
たは 44 時間)をいいます。
所定労働時間:事業所において、就業規則、労働契約などによって決められた 1 日または 1 週間などの労働時間をいいます。
3 労働時間の管理
使用者は、労働時間を適正に管理しなければなりません。労働時間の管理については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(厚生労働省)に詳しく定められています。
また、労働者の健康確保措置を適切に実施する観点から労働安全衛生法、同施行規則において「労働時間の状況の把握」の方法についても規定しています。
使用者が講ずべき措置
1.始業・終業時刻を確認し、記録すること
2.記録方法
①使用者が自ら現認することにより確認し、適正に記録すること
②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
※自己申告制の場合の措置についてもガイドラインに細かく規定されています。
管理監督者には労働基準法で定める労働時間、休憩、休日の規定が適用されません(深夜業、年次有給休暇の規定の適用はあります。)。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
17
管理監督者にあたるかどうかの判断は、「経営者と一体的な立場と呼ぶにふさわしい重要な職務内容、責任となっており、それに見合う権限の付与が行われている」「重要な職務と責任を有していることから、現実の勤務が実労働時間の規制になじまない」等、一定の基準があります。管理職=管理監督者ではありませんので注意が必要です。
参加を義務付けている研修時間は労働時間として扱っている
タイムカードや出勤簿には始業・終業時刻の記録を行っている
□
□
8
時間外労働・休日労働・深夜労働
(労働基準法)
労働者に時間外労働や休日労働を行わせる場合は、36 協定を労働者代表と締結し、労働基準監督署に届出をする必要があります。2019 年 4
月 1 日から時間外労働の上限が法律で定められましたので注意しましょ
う。(中小企業は 2020 年 4 月 1 日から)
1 時間外労働・休日労働・深夜労働
(1)時間外労働とは
1 週間および 1 日の法定労働時間(1 日 8 時間、1 週 40 時間または 44 時間)を超えて労働させることをいいます。
(2)休日労働とは
法定休日(1 週 1 日または 4 週 4 日の休日)に労働させることをいいます。
法定休日と所定休日のちがい
法定休日:労働基準法 35 条で定められている休日(1 週 1 日または 4 週 4 日)をいいます。所定休日:事業所において、就業規則、労働契約などによって決められた休日をいいます。
(3)深夜労働とは
22:00 から 5:00 までの時間に労働させることをいいます。
2 36 協定
時間外労働や休日労働をさせる場合は、あらかじめ「時間外労働・休日労働に関する労使協定」(36 協定)を締結し、事業場を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。この協定を届け出ることによって、法定労働時間を超えて時間外労働をさせ、法定休日に休日労働をさせることができます。2019 年 4 月からの法改正にあわせて 36 協定届の様式が変更になりました。(中小企業は 2020 年 4 月から適用されました。)
労使協定(36 協定新様式)で協定する事項
①労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
②労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる労働者の範囲
③対象期間(1 年間に限る)
④ 1 年の起算日
⑤有効期間
⑥対象期間における 1 日・1 か月・1 年について労働時間を延長させることができる時間又は労働させることができる休日
⑦時間外労働と法定休日労働の合計が、月 100 時間未満、2 ~ 6 か月平
18
均 80 時間以内を満たすこと
労使協定(36 協定)を締結すれば、何時間でも時間外労働をさせることが認められるわけではありません。 2019 年 4 月 1 日から時間外労働の限度時間が法律に定められました。(中小企業は 2020 年 4 月 1 日から適用されました。)
時間外労働時間の限度時間
第1章
期間
1 か月
1 年間
限度時間
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
一般労働者の場合
1 年単位の変形労働時間制が適用される労働者の場合
45 時間 42 時間
360 時間 320 時間
※医業に従事する医師の業務については 2024 年 3 月 31 日までの間、限度時間の適用は猶予され、具体的な上限時間は今後検討の予定となっています。
特別条項付き 36 協定
限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別な事情がある場合は、「特別条項付き 36 協定」を届け出ることで限度時間を超えて労働させることができます。ここでいう「特別な事情」とは、「臨時的なもの」に限られていて「業務上の都合」「業務多忙なとき」「使用者が必要と認めるとき」といった理由を限定していないものや、年間を通じて適用されることがあきらかなものは特別な事情にはあたりませんので注意が必要です。特別条項付き協定を締結した場合の時間外労働の限度時間は次の通りです。
1.特別条項付き協定の限度時間
①時間外労働時間+休日労働時間:1 か月 100 時間未満(2 か月~ 6 か月平均 80 時間以内)
②時間外労働時間:1 年 720 時間以内(休日労働は含まない) 2.限度時間を超えることができる月数
① 1 か月 45 時間の限度時間を超える月数:1 年間で 6 か月以内
② 1 年単位の変形労働時間制適用者の場合
1 か月 42 時間の限度時間を超える月数:1 年間で 6 か月以内
※上記に違反した場合には、罰則(6 か月以下の懲役または 30 万円以下の罰金)が科されることがあります。
3 災害など臨時の必要がある場合の時間外労働・休日労働
震災のような「災害その他避けることができない事由」によって、臨時に時間外や休日に労働させることが必要となった場合は、その必要な限度内で労働させることができます。
この場合、「非常災害等の理由による労働時間延長休日労働許可申請書」であらかじめ管轄の労働基準監督署の許可を受けるか、事前に許可を受ける時間的余裕がないときは、事後に遅滞なく届け出を行います。
36 協定は事業場単位で締結します。
36 協定は、労働基準監督署に届出をしてはじめて有効になります。有効期間が過ぎた協定
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〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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は無効になりますので、有効期間が 1 年間の場合、毎年協定を更新して届出をする必要があります。
36 協定を労働者代表と締結している
36 協定を労働基準監督署に届出をしている
□
□
9 変形労働時間制
(労働基準法)
介護事業では、サービス形態の違いにより、複雑な労働時間管理が求められます。
1 か月単位の変形労働時間制を有効に活用して効率的な労働時間管理を行いましょう。
1 変形労働時間制
介護事業所では、日勤の他に早出・遅番・夜勤とさまざまな勤務時間があり、1 日または 1 週間の所定労働時間を法定労働時間どおりにシフトを組むことができません。労働基準法では、一定の要件のもとで 1 日
または 1 週間の法定労働時間を超えて労働することを認めています。それが変形労働時間制です。
2 1 か月単位の変形労働時間制
1 か月以内の一定の期間を平均し、1 週間の労働時間が 40 時間(特例措置事業場は 44 時間)以下の範囲で、
特定の日や週について 1 日及び 1 週間の法定労働時間を超えて働かせることができる制度です。
1 か月単位の変形労働時間制は、平均して 1 週あたりの労働時間が 40 時間以内であればよいので、1
日または 1 週間の労働時間について上限があるわけではありません。
(1)1 か月単位の変形労働時間制の導入方法
①「労使協定または就業規則等」により、1 か月単位の変形労働時間制をとることを定めます。
②「1 か月を平均し、1 週間の労働時間が法定労働時間(40 時間または44 時間)を超えない」定めをします。
③「1 週間の労働時間が法定労働時間を超える特定の週」や「1 日 8 時間を超える特定の日」を定めます。
④「就業規則その他これに準ずるもの」により、変形労働時間制をとる場合の起算日を明らかにします。
(2)シフトを組むときの注意点
1 か月の勤務時間が「1 か月の変形期間の所定労働時間の総枠」を超えないようにシフトを組みます。
1 か月の暦日数 1 か月の変形期間の所定労働時間の総枠
(法定労働時間が 40 時間の場合)
31 日の場合 177.1 時間
30 日の場合 171.4 時間
29 日の場合 165.7 時間
28 日の場合 160.0 時間
20
所定労働時間の総枠= 40 時間×変形期間の暦日数÷ 7
1 か月の変形労働時間を導入する場合の勤務時間の例
日 月 火 x x 金 土
1 2 3 4
8 時間 8 時間 8 時間 休み
5 6 7 8 9 10 11
休み 9 時間 9 時間 9 時間 休み 8 時間 8 時間
12 13 14 15 16 17 18
休み 休み 8 時間 8 時間 9 時間 8 時間 8 時間
19 20 21 22 23 24 25
休み 7 時間 7 時間 6 時間 6 時間 6 時間 6 時間
26 27 28 29 30 31
休み 8 時間 8 時間 8 時間 7 時間 休み
第 1 週 24 時間第 2 週 43 時間
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
第1章
第 3 週 41 時間第 4 週 38 時間第 5 週 31 時間
合計 177 時間(1 か月の所定労働時間の総枠範囲内)第 2 週と第 3 週は週
法定労働時間を超えていますが、平均すると週 40 時間以内となっています。
3 1 か月単位の変形労働時間制の割増賃金の算定方法
「1 日」→「1 週間」→「変形期間(1 か月)」の順で時間外労働を算出し、その合計時間数が時間外労働時間数となります。
(1)1 日の法定労働時間外労働
1 日 8 時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は 8 時間を超えて労働した時間
(2)1 週の法定労働時間外労働
1 週 40 時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は 1 週 40 時間を超えて労働した時間
((1)で時間外労働となる時間を除く。)
(3)変形期間の法定労働時間外労働
変形期間における法定労働時間総枠(40 時間×変形期間の暦日数÷ 7 日)を超えて労働した時間((1)または(2)で時間外労働となる時間を除く。)
1 か月単位の変形労働時間制の「導入方法」の要件を満たさないときは、労働時間の計算は
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原則(1 日 8 時間、週 40 時間)に戻ってしまいます。導入の要件は、就業規則または労使協定に必ず定める必要があります。
変形労働時間制について就業規則または労使協定に定めている
シフトを組むときは 1 か月の所定労働時間の総枠を超えないように組んでいる
□
□
10 派遣労働者の受入れ
(労働者派遣法)
派遣労働者は自事業所の労働者ではありませんので、職員と同様に管理してはなりません。派遣契約に基づき管理を行いましょう。
1 派遣労働者の管理
派遣労働者は自事業所の職員ではありません。派遣労働者は雇用関係と指揮命令が別のため、自事業所の職員とは明確に区別する必要があります。
派遣労働者、派遣元、派遣先の関係
雇用関係
派遣元
派遣労働者
派遣契約
指揮命令・労務の提供
派遣先
派遣労働者は、派遣契約に基づき派遣されているので、この契約に基づき業務を依頼し、派 遣契約内容以外の業務を依頼してはなりません。
2 派遣労働者の派遣受け入れ期間
派遣契約ではすべての業務に対して、①派遣先事業所単位と、②派遣労働者個人単位の 2 種類の期間制限が適用されます。
①派遣先事業所単位の期間制限
派遣先の同一の事業所で派遣労働者を受け入れできる期間は、原則、3 年が限度となります。3 年を超えて受け入れるためには、派遣先企業での過半数労働組合等への意見聴取が必要です。
②派遣労働者個人単位の期間制限
同一の派遣労働者が、派遣先の同一組織で働ける期間は、3 年が限度となります。この組織とはいわゆる「課」や「グループ」などが該当します。途中で業務内容が変更になった場合も組織が変わらなければ最長 3 年に変更はありません。
22
+α
例外として、「派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者」や「60 歳以上の派遣労働者」、「産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の代替としての派遣労働者」などの派遣の受入れは期間制限の対象外とされています。
3 労働契約申込みみなし制度
派遣先が違法派遣であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合、派遣労働者に対し、その時点における同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
違法派遣とされるものは、以下のとおりです。ただ、違法派遣と知らず、また、違法派遣であることを知らなかったことに過失がない場合には、この制度の適用は除外されます。
違法派遣とされるもの
①禁止業務への派遣受け入れ
②無許可・無届の派遣元からの派遣受け入れ
③期間制限を超えての派遣受入れ
④偽装派遣
第1章
4 派遣先の責任と派遣労働者の労務管理
派遣労働者との間に雇用関係は成立していませんが、就業場所である派遣先にも、下の図表のように労働基準法上の責任を負担することになります。介護職員として派遣労働者を活用する際には、派遣先としての労務管理を確実に行いましょう。
派遣元・派遣先の労働基準法上の責任
派遣元が責任負担 派遣先が責任負担
労働契約
公民権行使の保障
賃金
産前産後の時間外・休日労働、深夜業に係るもの
有給休暇の付与
36 協定の締結
労働時間、休憩、休日育児時間
時間外・休日及び深夜の割増賃金産前産後休業に関するもの
就業規則 労働者名簿
生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置
「派遣労働者の労働基準法の適用について」(静岡労働局)より一部作成。詳しくは
xxxx://xxxxxxxx-xxxxxxxxxxx.xxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx_xxxxx_xxxxxxxxx/xxxxxxxxxxx_xxxxxxx/xxxxxx_ xxxxx/kantoku54.html
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『6.パートタイマーの雇用管理』で記載されている不合理な待遇差の禁止ついて、派遣労働者にも適用されます。派遣労働者に対しては、①派遣先の労働者と派遣労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件を満たす労使協定による待遇、のいずれかを確保しなければなりません。
派遣労働者に対して、派遣契約内容以外の業務を依頼していない
派遣労働者に関する労働基準法等の責任を確実に実施している
□
□
11 休憩時間・休日
(労働基準法)
休憩時間は、労働者が自由に利用できる、労働から離れることが保障された時間です。
休日は、原則として暦日(午前 0 時から午後 12 時までの 24 時間)で与えなければなりません。夜勤者の法定休日の確保に注意しましょう。
1 休憩時間の原則
労働時間が 6 時間を超える場合は少なくとも 45 分、8 時間を超える場合は少なくとも 1 時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければなりません。
一部の業種を除いて、休憩時間は一斉に与え、自由に利用できるようにする必要があります。ただし、介護事業は業務の性質上、一斉休憩の適用は除外されています。
(1)労働時間が 6 時間を超える場合
(例) 9:00 ~ 17:00 (休憩 45 分)
休憩
9:00 12:00 12:45
所定労働時間 7 時間 15 分
(例) 時間外労働によって 1 日 8 時間を超える場合は 15 分の休憩を追加します。
17:00
休憩
休憩
9:00 12:00 12:45
所定労働時間 8 時間 30 分
(2)労働時間が 8 時間を超える場合
(例) 9:00 ~ 18:00 (休憩 1 時間)
休憩
9:00 12:00 13:00
所定労働時間 8 時間
17:00 18:30
18:00
2 休日・休日の振替と代休
休日とは、労働義務のない日のことです。休日は、原則として暦日(午前0 時から午後12 時まで)で与えます。
(1)原則と例外
原則:1 週間に 1 日の休日(法定休日)
例外:4 週間を通じて 4 日以上の休日(変形休日制)
24
4 週 4 日制は、就業規則等により「4 週間の起算日」を明らかにする必要があります。
(2)夜勤者の休日
シフト表を作成する際には、下図を参考に暦日(午前 0 時から午後 12 時まで)で休日を確保しましょう。
シフト表の例と法定休日の考え方
例)早出 6:00 ~ 15:00 遅出 14:00 ~ 23:00 夜勤 22:00 ~翌 7:00(休憩各 1 時間)
氏名 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
Aさん 早 早 早 早 遅 遅 遅 遅 早 早 早 夜 早 早 早 早 遅 遅 遅 遅
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
第1章
Bさん 早 遅 夜
早 遅 夜
早 遅 夜
早 遅 夜
早 遅 夜
早 遅 夜 早 遅
緑色の日については、暦日(午前 0 時から
午後 12 時まで)としての休日が確保され、
「法定休日」と評価することができます。
黒色の日については、午前 7 時まで勤務しているため暦日としての休日が確保されておらず、「法定休日」と評価することができません。
A さんと B さんのシフトは、月 28 日に対してどちらも 20 日出勤であり、週 40 時間はクリアしていますが・・・
→ A さんのシフトは、法定休日も 4 週に 4 日以上あり、労働基準法上の問題はありません。
→ B さんのシフトは、法定休日と評価できる日が 4 週に 2 日しかなく、法定の日数を下回っています。
→ B さんのシフトについては、改善が必要です。
「休日」とは連続24 時間の休業ではなく暦日の休業をいいます。夜勤明けの日は法定休日には該当しません。
(3)休日の振替とは
休日を勤務日にする代わりに、勤務日を休日とするように休日と他の勤務日をあらかじめ振り替えることをいいます。
(4)代xとは
休日の振替手続きをとらず、本来の休日に労働を行わせた後に、その代わりの休日を与えることをいいます。
3 勤務間インターバル制度
働き方改革に伴う労働時間法制の見直しにより「勤務間インターバル」制度が努力義務となりました。
◯勤務間インターバルとは
1 日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。たとえば、11 時間の勤務間インターバル制度を導入した場合、23 時まで勤務した翌日は、 11 時間を空けた 10 時からの勤務となる制度です。休息時間を確保することで、労働者の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。勤務シフトを作成する際に、勤務間インターバルを意識して作成し、介護スタッフの休息時間が十分確保できるように心がけましょう。
⃝休日の振替:あらかじめ振替休日を使用者が指定する必要があります。
振替休日が同一週の場合は、休日出勤日は割増賃金は発生しません。
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⃝代休:休日出勤日については割増賃金が発生します。
休憩は確実に取得できるようにしている
法定休日を確保している
□
□
12 年次有給休暇
(労働基準法)
心身ともにリフレッシュした状態で仕事に取り組めるように、職員が年次有給休暇を取得できるようにしましょう。
1 年次有給休暇の付与日数
年次有給休暇とは、休日とは別に一定の日数の賃金を保障された休暇のことで、無条件で与えられるものです。よって、職員に休みたい理由があれば、「病気」、「子供の世話」、「病人の付き添い」、「旅行」など利用目的は自由です。
職員が入職後、6 か月以上勤務しており、この間 8 割以上出勤していれば年次有給休暇を与えなければなりません。
○ 1 週間の所定労働時間が 30 時間以上、または、1 週間の所定労働日数が 5 日以上の職員
勤続期間
付与日数
6 か月
10 日
1 年
6 か月
11 日
2 年
6 か月
12 日
3 年
6 か月
14 日
4 年
6 か月
16 日
5 年
6 か月
18 日
6 年
6 か月以上
20 日
○ 1 週間の所定労働時間が 30 時間未満で、1 週間の所定労働日数が 4 日以下(または、1 年間の所定労働日数が 216 日以下)の職員
労働日数
週所定
4 日
3 日
2 日
1 日
1 年間の所定
169 日~ 216 日
121 日~ 168 日
73 日~ 120 日
48 日~ 72 日
勤 x x 数
労働日数
6 か月 1 年 6 か月 2 年 6 か月 3 年 6 か月 4 年 6 か月 5 年 6 か月 6 年 6 か月
7 日 8 日 9 日 10 日 12 日 13 日 15 日
5 日 6 日 6 日 8 日 9 日 10 日 11 日
3 日 4 日 4 日 5 日 6 日 6 日 7 日
1 日 2 日 2 日 2 日 3 日 3 日 3 日
パートタイマーであっても要件を満たした場合、年次有給休暇を与える必要があります。ただ、労働時間・労働日数が少ないパートタイマーには、通常の年次有給休暇よりも少ない年次有給休暇が労働日数により与えられることになります。
26
+α
登録ヘルパーなど不定期な勤務シフトで勤務するパートタイマーについて、年次有給休暇が比例付与される日数は、原則として基準日において予定されている今後 1 年間の所定労働日数に応じた日数となります。ただ、これが難しい場合は、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出します。 例えば、入社後半年が経過した時点で、勤務実績が 80 日だとすると、年換算した 160 日が 1 年間の所定労働日数となります。
2 年次有給休暇の与え方
年次有給休暇は、原則として午前 0 時から午後 12 時までの暦日単位で与えなければなりません。つまり、午後 9 時から翌日の午後 9 時までの 24 時間という与え方はできません。
年次有給休暇は 1 労働日を単位として与えるものですが、職員から「半日単位」の請求があった場合、使用者がそれを認めることは許されています。
また、職員の過半数で組織する労働組合、もしくは職員の過半数を代表する者との間で書面による協定(労使協定)を締結し、年次有給休暇を「時間単位」で与えると定めた場合においては、「時間単位」で与えるこ
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
とも可能です。
第1章
時間単位の年次有給休暇の仕組み
5 日以内
職員の年次有給休暇の付与日数 1 時間× 8 などに分割
時間単位で年次有給休暇を与える場合は、労働者代表等との労使協定の締結が必要で、時間単位の付与は 5 日以内となります。
3 年次有給休暇の賃金
年次有給休暇を取得した場合の賃金の支払いについては、次の 3 つの方法があります。
①平均賃金を支給する
②通常の賃金で支給する
③健康保険の標準報酬月額で支給する
①の方法はその都度計算しなければなりません。③の方法を採用するには、労使協定の締結が必要となります。そのため、実務的には②の方法をとるのが一般的です。
4 使用者による年次有給休暇の時季指定
年次有給休暇が 10 日以上付与される職員に対して、使用者は毎年 5 日以上時季を指定して付与する義務が課せられています。ただし、職員の時季指定や計画的付与により取得された年次有給休暇の日数分については指定の必要はないとされています。つまり、年 10 日以上の休暇が発生している職員が自主的に 5 日以
上を消化しない場合、使用者としては職員の希望を聞いて休暇を指定して最低 5 日は消化させなければなりません。
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なお、違反した使用者については、労働者 1 人当たり 30 万円以下の罰金が科され、また、年次有給休暇の取得状況を把握するために、年次有給休暇の管理簿作成義務(3 年間保存)が設けられています。
年次有給休暇を取得した職員に対して、不利益な取扱いをしていない
パートタイマーにも年次有給休暇を付与している
□
□
13 賃金の基本
(労働基準法)
毎月の賃金は、職員の 1 か月の生活を支える大切な原資となります。賃金についてトラブルが発生しないように、ルールをしっかり守りましょう。
1 賃金支払いのルール
賃金は職員の生活の糧となる大変重要なものです。労働基準法では確実に職員の手に渡るように、賃金の支払いについて賃金支払いの 5 原則を定めています。
①通貨で
使用者は
②全額を
③毎月 1 回以上
④一定の期日に
⑤直接労働者に に支払う
賃金支払いの 5 原則と例外
原則 例外
①通貨で支払う
労働協約:通勤定期乗車券などの現物支給
厚生労働省令:銀行口座などへの振込み(職員の同意が必要)
②全額を支払う
法令:源泉所得税や社会保険料の徴収等労使協定:労働組合費の徴収等
③毎月 1 回以上支払う 臨時に支払われる賃金や賞与、査定期間が 1 か月を超える場合の精勤手当・能
④一定期日に支払う
⑤直接労働者に支払う
率手当など 使者なら可能
時給制などの場合、交替制勤務における引継ぎ時間、業務報告書の作成時間等、介護サービスに直接従事した時間以外の労働時間も通算した時間数に応じた賃金を支払わなければなりません。
2 最低賃金
28
賃金は、地域別最低賃金以上の金額を支払わなければなりません。最低賃金はその事業所の本社がある都道府県ではなく、本社や支店などの事業場(派遣労働者の場合は派遣先)がある都道府県ごとに定められた金額が適用されます。
支払う賃金と最低賃金額との比較方法
◯支払う賃金と最低賃金額との比較方法
当該期間における
第1章
れぞれ1週間、4週間、1年間
た賃金
(時間給)
(時間額)
時間数が異なる場合には、そ
よって定められ
定められた賃金
最低賃金額
(日、週、月によって所定労働
日、週、月等に
時間によって
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
+ ÷ 所定労働時間数 ≧
の平均所定労働時間数)
3 同一労働同一賃金
(出所)「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」(厚生労働省)
同じ仕事をしていればxx職員かパートタイマー等かの雇用形態に関係なく、同じ賃金を支払うべきだという考え方です。「働き方改革」の一環として、パートタイマーや派遣労働者、有期労働契約職員等とxx職員との不合理な賃金格差の解消を目指すものとなっています。
「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(同一労働同一賃金ガイドライン)」(厚生労働省告示第 430 号 H30.12.28)で、パートタイマーや有期労働契約職員等の待遇に関して、原則となる考え方や具体例を示しています。
不合理な待遇の禁止等に関する指針の具体例
【○:問題とならない例、×:問題となる例】
基本給
基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契
○ 約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の雇用契約開始時から通算して勤続年数を評価した上で支給している。
基本給について労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約
× を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の雇用契約開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみにより勤続年数を評価した上で支給している。
賞 与
賞与について、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給しているA社においては、通常の労働
× 者には職務の内容や会社の業績等への貢献等にかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。
「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(厚生労働省)より一部抜粋
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〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
29
同一労働同一賃金の観点から、xx職員とxx職員以外の労働者との待遇の相違があるならば、その相違に合理性があるのか、しっかり説明できるようにしておかなければなりません。
賃金支払いの 5 原則を守っている
最低賃金以上の賃金を支払っている
□
□
14 割増賃金
(労働基準法)
時間外労働、深夜労働、休日労働を行わせた場合は、労働時間に応じた割増率を適用して割増賃金を支払わなければなりません。
1 割増賃金の割増率
法定労働時間を超える時間外労働、深夜労働、休日労働を行わせた場合には、通常の賃金額に次の割増率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
(1)割増賃金の割増率
時間外労働(月 60 時間以内)
時間外労働(月 60 時間超)※深夜労働(22:00 ~ 5:00)法定休日労働
割増率
25%
50%
25%
35%
※中小企業に対しては、「月 60 時間を超える時間外労働の割増率 50%」の適用は猶予されていますが、 2023 年 4 月 1 日から中小企業においても月 60 時間を超える時間外労働の割増率は 50%となります。
(2)適用が猶予される中小企業の範囲
業種
資本金の額または出資の総額
常時使用する労働者数
小売業 サービス業
5,000 万円以下
5,000 万円以下
50 人以下
100 人以下
卸売業
1 億円以下
100 人以下
その他
3 億円以下
300 人以下
介護事業所はサービス業に該当します。
「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する労働者数」のどちらかが該当すれば中小企業になります。
2 割増賃金の算定基礎から除外される賃金
1 時間あたりの割増賃金(割増賃金単価)の算出には、基本給と諸手当が含まれますが、次の 7 種類の手当については、割増賃金の計算基礎に含まなくてよいこととなっています。
(1)割増賃金の算定基礎から除外される賃金
①家族手当(扶養家族数に応じて支給される手当)
②通勤手当(通勤に要する費用、通勤距離に応じて支給される手当)
③別居手当
④子女教育手当
⑤住宅手当(住宅に要する費用に応じて支給される手当)
⑥臨時に支払われた賃金
30
⑦ 1 か月を超える期間ごとに支払われる賃金
3 割増賃金の計算方法
(1)時間外労働と深夜労働の計算
(所定労働時間)8 時間 4 時間 1 時間
第1章
9:00 18:00
22:00
23:00
(2)休日労働と深夜労働の計算
時間外労働 25%以上
時間外+深夜労働 50%以上
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
(休日労働)8 時間
4 時間
1 時間
9:00 18:00
22:00
23:00
休日労働 35%以上 休日+深夜労働 60%以上
※休日労働の場合は、すべてが休日労働時間となるため休日労働が 8 時間以上に及んだ時も 35%以上の割増賃金を払えばよいことになります。
(3)1 時間当たりの割増賃金(割増賃金単価)の計算式
①時給制
割増賃金単価=時間給×割増率(時間外 1.25、休日 1.35、深夜 0.25)
②月給制
割増賃金単価=
基本給+手当 1 か月平均所定労働時間
×割増率(時間外 1.25、休日 1.35、深夜 0.25)
③ 1 か月平均所定労働時間の算出方法
(365 日または 366 日-年間所定休日日数)× 1 日の所定労働時間÷ 12 か月
+α ダブルワークなど複数の事業所で雇用される場合の労働時間と割増賃金
1 日に複数の事業所で働く労働者の労働時間は通算して計算します。たとえば、A 事業所で
4 時間、B 事業所で 5 時間働いた場合の 1 日の労働時間は 9 時間となります。この場合、法
定労働時間 8 時間を超える 1 時間は時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります。通常は、労働者と後から契約した事業所が割増賃金を支払うこととなります。
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31
ただし、先に契約した事業所が、その労働者が他の事業所で労働することを知りながら、労働時間を延長して時間外労働を発生させた場合は、先に契約した事業所が割増賃金を支払うこととなります。
割増賃金は法定の割増率もしくはそれ以上で計算している
割増賃金の計算単価に手当を含めて計算している
□
□
15 退職管理
(労働基準法、高年齢者雇用安定法)
退職時の証明は労働者から請求があった場合、遅滞なく交付する必要があります。その際、請求されていない事項は記入してはなりません。 労働者が退職する際は、退職届を提出してもらいましょう。
1 退職
退職とは、労働者の一方的な意思表示または労使の合意による労働関係の終了をいいます。労働者が自らの意思で退職することについて、民法では、退職はその意思表示から 2 週間で効力が生じますが、労働基準法に規定はありません。
口頭による退職の意思表示も有効ですが、トラブルを防ぐため、退職届を提出してもらいましょう。また退職の手続に関することを就業規則に明記しておきましょう。
(1)就業規則に定めておくこと
①自己都合退職の場合の申し出時期 ②退職日までに引継ぎを完了させること
③退職届の提出 ④退職日までに会社から貸与されているものを返還することなど
2 定年
定年制は、労働者がその年齢に達したときに自動的に労働契約が終了する制度です。高年齢者雇用安定法では、定年の定めをする場合には 60 歳を下回ることはできないとしています。2021 年(令和3年)4月1日の法改正により、従来の 65 歳までの雇用確保措置(義務)に加え、65 歳から 70 歳までの就業機会を確保するための措置(努力義務)を講じることが定められました。
(1)60 歳未満の定年禁止(高年齢者雇用安定法第8条)
(2)65 歳までの雇用確保措置(義務)
定年を 65 歳未満に定めている事業主は、次のいずれかの措置を講じる必要があります。
① 65 歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③ 65 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入
(希望者全員を定年後も 65 歳まで継続雇用する制度を導入する。)
(3)70 歳までの就業機会の確保(努力義務)
32
65 歳までの雇用確保(義務)に加え、65 歳から 70 歳までの就業機会を確保するため、次のいずれかの措置を講じるよう努力する必要があります。
① 70 歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③ 70 歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入
④高年齢者が希望するときは、70 歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤高年齢者が希望するときは、70 歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
・事業主が自ら実施する社会貢献事業
・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
3 退職時の手続
(1)退職時の証明
退職した労働者から、退職に関する証明を請求されたときは、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。
退職時に証明する事項
①労働者の使用期間 ②業務の種類 ③その事業場における地位
④退職の事由(解雇の場合はその理由を含みます。)
※労働者が請求しない事項は記入しません。解雇の時も同様です。
(2)賃金の支払いと金品の返還
労働者の死亡または退職の場合に、権利者から請求があったときには、7 日以内に賃金を支払い、積立金等労働者の権利に属する金品を返還しなければなりません。
権利者とは
労働者が退職した場合:退職した労働者本人 労働者が死亡した場合:労働者の相続人
(3)記録の保存
労働契約が終了した場合は、「労働者名簿」に必要な事項を記入しなければなりません。労働者名簿は 3 年間保存する必要があります。
労働者名簿に記載する事項
労働者が退職(解雇)したとき:①退職(解雇)年月日 ②退職(解雇)事由労働者が死亡したとき :①死亡年月日 ②死亡の原因
退職にはいろいろなかたちがあります。
⃝自己都合による退職 ⃝雇用契約期間満了による退職
⃝休職期間満了による退職 ⃝死亡による退職 ⃝定年退職
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退職理由によって手続きが異なることがありますので適切に対応するように注意が必要です。
退職に関する事項を就業規則に定めている
退職者には退職の意思表示を文書(退職届)で提出させている
□
□
16 解雇・雇止め
(労働基準法、労働契約法)
解雇・雇い止めについては、労働基準法、労働契約法等で定められたル ールを遵守することはもちろん、解雇・雇い止め等に関する裁判例も参考にして適切な労務管理を行い、労使間でトラブルにならないようにしましょう。
1 解雇
解雇とは、労働契約を将来に向けて解約する使用者側の一方的な意思表示のことです。労使の合意による労働契約の解約や労働契約期間の満了は、解雇には該当しません。
(1)解雇の種類
①普通解雇:労働契約の継続が困難な事情があり、やむを得ず行う解雇で整理解雇、懲戒解雇に該当しないもの
・勤務成績が著しく悪く、指導を行っても改善の見込みがないとき
・著しく協調性に欠けるため業務に支障を生じさせ、改善の見込みがないとき など
②整理解雇:企業経営の悪化により、人員整理のために行う解雇
③懲戒解雇:悪質な規律違反や著しい非行があった場合に懲戒処分として行われる解雇
(2)解雇の法律上の禁止
一定の場合には、解雇が法律上禁止されています。
①業務上傷病により休業する期間及びその後 30 日間の解雇
②産前産後の休業期間及びその後 30 日間の解雇
③国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
④労働者が労働基準監督署へ申告したことを理由とする解雇
⑤労働組合の組合員であること、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇
⑥性別を理由とした解雇
⑦女性労働者が婚姻、妊娠、出産したこと、産前産後休業をしたことを理由とする解雇
⑧育児・介護休業等の申出をしたこと、または育児・介護休業等をしたことを理由とする解雇
(3)解雇の効力
①期間の定めのない労働契約の場合
解雇権濫用法理
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効になります。
②有期労働契約の場合
やむを得ない事由がある場合でなければ、期間中の解雇はできません。
(4)解雇の手続き
34
解雇を行う場合には、解雇しようとする労働者に対して次の手続が必要です。
①少なくとも 30 日前に予告
②予告を行わない場合には、平均賃金の 30 日分以上の解雇予告手当の支払い
※解雇予告期間が 30 日未満の場合は不足日数分の解雇予告手当を支払う必要があります。
(5)就業規則等に明記
労働者と労働契約を結ぶとき、労働条件を明示する際には、解雇について明示する必要があります。また就業規則などで解雇の事由を明確に定めておく必要があります。
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
2 有期労働契約の雇止め
使用者は、有期労働契約を更新しない場合には、あらかじめ更新しないことが明示されている場合でない限り、少なくとも契約期間が満了する 30 日前までに更新しない(雇止めをする)ことを予告しなければな
りません(労働基準法第 14 条第 2 項)。
有期労働契約の終了時のトラブル防止のための、使用者が講ずべき措置について「有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準」:xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxxxxxxx/xxxxxxxxxxxxxXx/ dl/14.pdf が定められています。
雇い止めの予告が必要な場合
①契約を 3 回以上更新している場合
② 1 年以下の契約期間の労働契約が更新されて、最初の契約から連続して通算して 1 年を超える場合
③ 1 年を超える契約期間の労働契約を締結している場合
使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇い止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なく交付しなければなりません。
3 雇止めの法理
有期労働契約であっても、①有期労働契約の反復更新により無期労働契約と実質的に異ならない状態であるもの、または②有期労働契約の期間満了後の雇用継続について、合理的期待が認められるものについては、雇止めが客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は、雇止めが認められず「同一労働条件で労働契約が更新・締結されたもの」とみなされます。(労働契約法第 19 条)
合理的理由の判断要素
①業務の客観的内容 : 従事する仕事の種類・内容・勤務の形態
②契約上の地位の性格 : 地位の基幹性・臨時性(嘱託・非常勤等)
③当事者の主観的態様 : 継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等
④更新の手続き・実態 : 契約更新の状況、更新時の手続の厳格性の程度
⑤他の労働者の更新状況 : 同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無等
⑥その他 : 有期労働契約を締結した経緯、勤続年数・年齢等の上限の設定等
解雇や雇止めをめぐるトラブルは事業所にとって大きな問題です。トラブルを防止するためには、法令のルールの遵守はもちろん、労使間で充分な話合いを行うことや信頼関係を損なうような方法を避けることが重要です。裁判例では解雇が「権利濫用の法理」により、また雇止めが「雇止めの法理」等により認められなかった事案もあります。解雇や雇止めを検討しなければならない場合には、ぜひ、労働基準監督者や労務管理の専門家に相談しましょう。
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解雇の規定を就業規則に定めている
雇止めの予告が必要な場合は 30 日前までに予告をしている
□
□
17
女性労働者の保護
(産前産後休業、生理休暇、母性健康管理等)
(労働基準法、育児・介護休業法)
女性労働者の母性を保護するために、女性労働者の就労にあたって、さまざまな法規制があります。また、妊娠・出産等を理由とする不利益な取り扱いは禁止されています。
1 女性労働者の保護
(1)産前産後休業
原則として産前 6 週間(多胎妊娠の場合は 14 週間)の間にある女性労働者から請求があった場合と、
産後 8 週間の間にある女性労働者は就業させることはできません。ただし、産後 6 週間を経過した女性労働者が請求した場合には、医師が支障がないと認めた業務に就かせることができます。
産前産後休業の期間
産前 6 週間
出産日
産後 8 週間
本人から休業の請求があった場合は就業させることはできない。
※出産日(出産予定日)は産前に含めます。
本人からの請求の有無に関係なく就業させることはできない。
(2)生理休暇
生理日の就業が著しく困難な女性労働者が休暇を請求したときは、その女性労働者を生理日に就業させることはできません。生理日の休暇の日数は、その女性労働者に必要な日数であって、就業規則などで休暇日数を限定することはできません。
※生理日の休暇を有給休暇として取り扱う必要はありませんが、有給にするか無給にするかは、就業規則などで明確に定めておきましょう。
(3)育児時間
生後満 1 年未満の子を育てている女性労働者は、通常の休憩時間のほかに、1 日 2 回、それぞれ少な
くとも 30 分の育児時間(授乳などのための時間)を請求することができます。使用者は請求があれば、育児時間中、その女性労働者を就業させることはできません。
(4)妊娠中と出産後の母性健康管理に関する措置
36
妊娠中または産後 1 年を経過しない女性労働者については、母子保健法の規定による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければなりません。また、女性労働者が保健指導または健康診査に基づく指導事項を守ることができるように、勤務時間の変更、勤務の軽減など、必要な措置をとる必要があります。
2 妊娠・出産等による不利益取り扱い (育児・介護休業法)
妊娠・出産等を理由とする不利益な取り扱いは禁止されています。
(例) ①解雇すること
②期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと
③あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に回数を引き下げること
④退職または労働契約内容の変更の強要を行うこと
⑤降格させることなど
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
3 産前産後休業期間の社会保険料
産前産後休業期間中の社会保険料免除
産前42 日(多胎妊娠の場合は98 日)、産後56 日のうち、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間について、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)が被保険者分及び事業主分ともに免除になります。
4 健康保険の給付制度
健康保険に加入している女性が出産した場合、出産手当金や出産育児一時金などの給付金を受けることができます。
(1)出産手当金
健康保険においては、産前産後の休業期間中 1 日につき平均標準報酬日額の 3 分の 2 の金額が出産手当金として支給されます。
出産手当金が支給される期間
産休開始 出産予定日 出産日
産後 8 週間
○支給期間
出産予定日以前 42 日分 α
出産の翌日以後 56 日分
出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日以前 42 日(多胎妊娠の場合 98 日))から出産の翌日以後
56 日目までの範囲内で会社を休んだ期間。
出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間(α日分)についても出産手当金が支給されます。
(2)出産育児一時金
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
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出産したときに胎児 1 人につき 42 万円(産科医療補償制度対象出産ではない場合は、40.4 万円)が支給されます。
女性労働者の保護について就業規則に規定している
妊娠・出産等を理由とする不利益な取り扱いはしていない
□
□
18 育児・介護休業
(育児・介護休業法)
育児休業、介護休業は、男性・女性労働者ともに取得できる制度です。育児・介護と仕事の両立を支援するために、取得しやすい環境を整備しましょう
1 育児休業制度
育児休業とは、労働者が 1 歳に満たない子を養育するためにする休業です。
子が 1 歳の時点で保育所に入所できない等事情がある場合は、1 歳 6 か月まで延長ができます。子が 1 歳
6 か月の時点で保育所に入所できない等事情がある場合は、2 歳まで延長することができます。
女性が育児休業を取得する場合
出産 1歳 1歳6 か月 2歳
産後休業 育児休業
子が 1 歳になるまで
子が 1 歳 6 か月になるまで延長
子が 2 歳になるまで再延長
子が 1 歳の時点で保育所に入所できないときは、1 歳 6 か月まで延長できます。
男性が育児休業を取得する場合
出産予定日から育児休業を取得することができます。
子が 1 歳 6 か月の時点で保育所に入所で
きないときは 2 歳まで再延長できます。
2021 年(令和3年)6月に育児・介護休業法が改正され、2022 年(令和4年)4月1日から段階的に施行されます。主な改正内容は、①子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の創設、②育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や、妊娠・出産の申し出をした労働者への周知・意向確認の措置の義務づけ、③育児休業の分割取得、④育児休業の取得状況の公表義務づけ、⑤有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和などです。
2 介護休業制度
介護休業とは、労働者が要介護状態にある対象家族の介護のためにする休業です。対象家族 1 人につき、
通算して 93 日を限度に 1 ~ 3 回に分散して取得することができます。
(1)要介護状態とは
「負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2 週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」をいいます。
(2)対象家族とは
38
配偶者(内縁関係を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫をいいます。
3 そのほかの制度
(1)育児に関する制度
子の♛護休暇 対象:小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者
1 年に 5 日まで(子が 2 人以上の場合は 10 日まで)病気・けがをした子の♛護または子に予防接種・健康診断を受けさせるために休暇を取得できる。
第1章
所定外労働を制限
対象:3 歳に満たない子を養育する労働者
する制度
時間外労働を制限する制度
深夜業を制限する制度
所定労働時間の短縮措置
xxxを養育するために請求した場合、所定労働時間を超えて労働させてはならない。
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
対象:小学校の始期に達するまでの子を養育する労働者
xxxを養育するために請求した場合、1 月 24 時間、1 年 150 時間を超えて労働時間を延長してはならない。
対象:小学校の始期に達するまでの子を養育する労働者
xxxを養育するために請求した場合、午後 10 時から午前 5 時において労働させてはならない。
対象:3 歳に満たない子を養育する労働者
1 日の所定労働時間を短縮する制度(原則 6 時間とする。)
(2)介護に関する制度
介護休暇 対象:要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者
1 年に 5 日まで(対象家族が 2 人以上の場合は 10 日まで)介護その他の世話を行うために休暇が取得できる。
所定外労働を制限
対象:要介護状態にある対象家族を介護する労働者
する制度
時間外労働を制限する制度
深夜業を制限する制度
所定労働時間の短縮措置
その対象家族を介護するために請求した場合、所定労働時間を超えて労働させてはならない。
対象:要介護状態にある家族を介護する労働者
その対象家族を介護するために請求した場合、1 月 24 時間、1 年 150 時間を超えて労働時間を延長してはならない。
対象:要介護状態にある対象家族を介護する労働者
その対象家族を介護するために請求した場合、午後 10 時から午前 5 時において労働させてはならない。
対象:常時介護を要する対象家族を介護する労働者
対象家族 1 人につき、利用開始から 3 年以上の間で利用を可能とする制度
2021 年(令和3年)1月1日から子の♛護休暇、介護休暇は時間単位で取得できるようになりました。
育児休業・介護休業は就業規則の絶対的必要記載事項に該当するため、就業規則に定める必要があります。
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育児休業・介護休業の申出をしたことを理由に労働者に不利益な取扱いは禁止されています。
育児休業・介護休業について就業規則に定めている
育児休業・介護休業の申出をした労働者に不利益な取り扱いをしていない
□
□
子育てサポート企業、女性
19 活躍推進企業
(次世代育成支援対策推進法、
女性活躍推進法)
仕事と子育て両立や女性が活躍できる職場は、魅力ある職場です。
子育てサポート企業(xxxん認定)や女性活躍推進企業(えるぼxx認定)を受けることを目指し、雇用管理改善に取り組みましょう。
1 次世代育成支援対策推進法と一般事業主行動計画
次世代育成支援対策推進法(以下「次世代法」)では、次代の社会を担う子どもの健全な育成を支援するため、企業は、労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」を策定することとなっています。
そのうち、常時雇用する労働者が 101 人以上の事業主は、次世代法に基づき、仕事と子育て両立を図るため、一般事業主行動計画の策定・届出、公表・周知が義務づけられています。この計画は都道府県労働局に届出なければなりません。
また、100 人以下の事業主についても一般事業主行動計画の策定のうえ届出ができます。
一般事業主行動計画に定める事項
①計画期間
②次世代育成支援対策の実施により達成しようとしている目標
③目標達成のための支援対策の内容及び実施時期
事業主に求められる次世代育成支援対策としては、育児休業の取得推進や所定外労働の削減、年次有給休暇の取得促進や子どもの健やかな育成のための地域貢献活動などが挙げられます。具体的には下記のような例があります。
⃝職員に対する雇用環境の整備(例)
・育児休業及び育児短時間勤務制度等を周知し、取得促進を働きかける。
・平均所定外労働時間を 1 人 1 か月当たり 10 時間未満とする。
・働く親の姿を子どもに見せる「子ども参観日」を実施する。
⃝地域貢献活動(例)
・子どもの健やかな育成のための活動を行うNPO 法人への参加を支援する。
一般事業主行動計画を作成するメリット
「xxxんマーク」は、子育て支援に積極的な事業所の証であり、また、雇用管理が適切に行われていることの証としてホームページや名刺等に付けることができます。
最近では、合同就職説明会で「xxxん認定企業」が優先的に参加できるようになってきているほか、求職者にも「xxxんマーク」の有無が大きな注目ポイントになっています。
40
また、税制優遇措置や公共調達で有利になることがあります。
2 xxxん認定・プラチナxxxん認定
行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の要件を満たした場合、「子育てサポート企業」として認定(xxxん認定)を受けることができます。xxxの上部に最新の認定年が記載され、☆の数で、これまで認定を受けた回数を表しています。
xxxん認定企業のうち、より高い水準の取組を行った企業が一定の要件を満たした場合、優良な「子育てサポート企業」として特例認定(プラチナxxxん認定)を受けることができます。
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
第1章
認定には、10 項目の全ての要件を満たす必要があります。2017 年(平成 29 年)4 月 1 日から一部の基準が改正されました。認定基準の詳細は、下記厚生労働省URL 参照ください。
(厚生労働省 「xxxん認定・プラチナxxxん認定の認定基準、認定マークが改正されました」) xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxx/00-Xxxxxxxxxxxxx-00000000-Xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx/x0-0.xxx
3 女性活躍推進法による「えるぼし」認定
常時雇用する労働者が 301 人以上の事業主は、女性の活躍に向けた行動計画の策定等が義務付けられてい
ます。また、2022 年(令和 4 年)4 月 1 日からは常時雇用する労働者が 101 人以上の事業主へも女性の活躍に向けた行動計画の策定等が義務となります。
また、行動計画の策定、届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進の取組実施状況等が優良な企業には、都道府県労働局への申請により「えるぼし」マークの認定を受けることができます。①採用、②継続就業、
③労働時間等の働き方、④管理職比率、⑤多様なキャリアコースの 5 つの評価項目を満たす項目数に応じて取得できる認定段階が決まります。さらに、えるぼし認定企業のうち、一般事業主行動計画の目標達成や女性の活躍推進に関する取組の実施状況が特に優良である等の一定の要件を満たした場合は、「プラチナえるぼし」マークの認定を受けることができます。
認定企業等は公共調達で有利になる場合があります。
*認定基準の詳細については、以下の厚生労働省のURL を参照して下さい。
(厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ) xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxx/xxxxxxxxxxxxxxx/xxxxx/0000000000.xxxx
えるぼし認定段階
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
41
認定の区分は、次の4つになります。
常時雇用する労働者 101 人以上の事業主として一般事業主行動計画を届け出ている □一般事業主行動計画の目標達成とともに「xxxん認定」を目指している □女性活躍推進に取組み、「えるぼし」認定を目指している □
20 外国人労働者
(出入国管理法・技能実習法)
外国人労働者は安価な労働力の確保を目的として利用してはならず、一般の職員と同じように労働関連法規が適用されます。
1 外国人技能実習制度
国際貢献として開発途上国へ日本の技能の移転を目的とする「外国人技能実習制度」ですが、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われ、劣悪な労働条件で使用するなどトラブルが絶えません。そこで、外国人の技能実習の適正な実施と技能実習生の保護を図るため、2016 年(平成 28 年)11 月 28 日に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(以下、「技能実習法」)が公布され、 2017 年(平成 29 年)11 月 1 日から施行されています。
それに合わせて、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加されています。介護職種の技能実習においては、介護サービスの特性に基づくさまざまな懸念に対応するため、介護固有要件を定めています。
介護職種追加の基本的な考え方
①介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージにならないようにすること
②外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないよう
にすること
③介護のサービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること
2 技能実習制度の流れ
技能実習法に基づく技能実習生の入国から帰国までの主な流れは下図のとおりとなります。
技能実習制度の流れ
技能水準(目標)
入国 帰国
1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目
2級(上級)
3級(専門級)
帰国後経験年数
優良な監理団体・実習実施者に
限定した拡充措置
基礎級(初級)
在
(
約
)(
格
資
5ヶ月前
留 技能実習1号イ、ロ
技 講
事前準
技能実習2号イ、ロ 修
労働関係法令適用
技能実習3号イ、ロ
得
技
発
実習
習
実
能の
揮
(※77職種139作業)
13 9作業)
(※77職種
流実
備 の能 習 実習
れ習
)
基
・ ・ ・ ・ (
礎 在
技 技 在 査 実
級 留
能 能 留 証 技
受 資
実 実 資 申 試
習 習 格 請 験 検
3 一 2
在
留
級 旦 級
資
在
在
受 帰 受
留 検 国 留 検
計→ 計→ 認 及 格
期 ( ( 格 期 ( 帰
画 画 定 び 変
1 認 証 学 更
号 x x 科 又
準 申 書 試 は
備 請 交 験 取
付 必 得
申 須
請 )
実 1 変
以 又
月
国
間 技 更 x
x 試 更
) 取
x
x 験 は 新必
須 得
)
実技試験必
)
須 (出所)(JITCO ホームページ)
42
※2017年12月現在の職種・作業数
○企業単独型:日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式
○団体監理型:事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
第1章
入国 1 年目
入国 2、3 年目
入国 4、5 年目
企業単独型
在留資格「技能実習 1 号イ」
在留資格「技能実習 2 号イ」
在留資格「技能実習 3 号イ」
団体監理型
在留資格「技能実習 1 号ロ」
在留資格「技能実習 2 号ロ」
在留資格「技能実習 3 号ロ」
技能実習生に関する要件について、技能実習制度本体の要件に加えて、介護職種においては、日本語能力要件が特別に定められています。
+α 介護職種の技能実習制度の関係法令や介護固有要件の概要、技能実習計画のモデル例等については、厚生労働省ホームページで公表されています。
( xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxx/xxxxxxxxxxxxxxx/xxxxx/0000000000.xxxx )
3 特定技能制度
2018 年(平成 30 年)12 月 8 日に改正出入国管理法が成立し、新たな在留資格「特定技能」が創設されました。創設された背景は、中小企業や小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足の中で、生産性向上や国内人材の確保に取り組んでいても人材確保が困難な産業での人材確保を図ることにあります。
特定技能は、「特定技能 1 号」と「特定技能 2 号」の 2 段階で設けられています。単純作業など比較的簡単な
仕事に就くことが考えられる「特定技能 1 号」の外国人人材の受け入れ対象となる業種は、人手不足が顕著と
なっている 14 業種(特定産業分野)に限られており、介護業も含まれています。なお、介護業の受け入れ見込
み人数は 2019 年(平成 31 年)度から 5 年間の最大数 60,000 人となっています(2019 年(平成 31 年)度
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
43
から 5 年間の最大数)。
技能実習生に対し、適切に実習するための体制が整備されている
外国人労働者に労働関連法規がしっかり適用されている
□
□
21
健康診断・安全衛生管理
(労働安全衛生法)
ケガや病気を未然に防ぐ安全衛生管理体制の整備は、働きやすい職場環境の基本です。また、職員の健康管理のために定期に健康診断を実施しましょう。
1 健康診断
事業所は、常時使用する労働者に対して、医師による健康診断の実施が義務づけられています。また労働者も、事業所が行う健康診断の受診義務があります。
健康診断の種類
健康診断の種類 対象となる労働者 実施時期
雇入時の健康診断
一般健康診断
定期健康診断
特定業務従事者(夜勤)の健康診断
給食従事者の検便
常時使用する労働者(常時使用する短時間労働者含む)
常時使用する労働者(常時使用する短時間労働者含む)
対象となる労働者
(夜勤従事者等)
事業に付属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者
雇入れの際
1年以内ごとに1回
左記業務への配置替えの際、6月以内ごとに1回
雇入れの際、配置換えの際
以下のいずれの要件を満たす場合、健康診断を行わなければなりません
①期間の定めのないパートタイマー(期間の定めのある契約により使用される者の場合は、
1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者)
②1週間の労働時間数がその事業場で同種の業務に従事している通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であるパートタイマー
+α 法的に健診義務のない職員への健康診断
44
「常用労働者ではなく、安衛法上の健診義務のない者」については、健診の義務はないものの、介護労働という業務の性質から考えると、「雇入時健康診断」及び「定期健康診断」は受診させることが望ましいでしょう。
2 安全衛生管理体制の整備
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じた事業場における職員の健康障害の防止、健康の保持増進、労働災害の防止は、組織がxxとなって取り組むべき課題です。労働安全衛生法では、下記のような衛生管理者や産業医の選任、衛生委員会の設置が義務づけられています。
(1)常時使用する労働者が 50 人以上
①産業医
職場巡視などの業務を担う産業医を選任しましょう。※
産業医を選任した事業者は、産業医に対し以下の情報を提供しなければなりません。
(イ)健康診断・面接指導・ストレスチェック後の就業上の措置の内容
(ロ)月 80 時間を超えた職員の氏名、労働時間に関する情報
(ハ)職員の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業等の回数、時間数などのうち、産業医が職員の健康管理等を適切に行うために必要と認めるもの。
②衛生管理者
第1種衛生管理者または第2種衛生管理者を選任しましょう。※
③衛生委員会の設置・開催
毎月1回以上開催し、議事内容を職員へ周知する。なお、委員会開催の都度、委員会の意見や当該意見を踏まえて講じた措置の内容、委員会における議事で重要なものを記録し、3 年間保存しなければなりません。
・労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
・労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
・労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
・前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項。
※選任したときは、遅滞なく、選任報告を所轄の労働基準監督署長に提出しましょう。
(2)常時使用する労働者が 10 人以上 50 人未満
衛生推進者
衛生推進者は衛生業務について権限と責任を有する者の指揮を受け、衛生に係る業務を担当します。
(3)9人以下の事業所においても、安全衛生管理体制を整備することが望ましいでしょう。
第1章
介護事業所では「感染症対策」や「腰痛予防対策」についても予防や事後対策が求められます。
○「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」(厚生労働省)2013 年(平成 25 年)3月 xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxxx/xxxxx/xxxxxxx/xx0000-0/
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
45
○「職場における腰痛予防対策指針」(厚生労働省)2013 年(平成 25 年)6月 xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxx/xxxxxx/xxxxxxxxxxxxxx.xxxx
対象者ごとに必要な健康診断を実施している
安全衛生管理体制を整備し、職員の安全衛生を確保するための措置を講じている
□
□
22
メンタルヘルスとストレスチェック制度
(労働安全衛生法)
労働者の心の健康の保持増進のために介護事業所が取り組まなければならない措置を計画的に実行し、メンタル不調の未然防止と早期発見・早期対応の体制づくりをしましょう。
1 メンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアは、「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」及び「事業場外資源によるケア」の4つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要です。
事業者は、①心の健康計画の策定、②関係者への事業場の方針の明示、③労働者の相談に応ずる体制の整備、
➃関係者に対する教育研修の機会の提供等、⑤事業場外資源とのネットワーク形成などを行いましょう。
心の健康づくり計画の策定
①セルフケア 全労働者
4つのケア
①ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
②ラインによるケア
③事業場内産業保健スタッフ等によるケア
➃事業場外資源によるケア
(管理監督者も含む)
管理者監督者(上司)
産業医、人事管理部門等
事業場外の機関、専門家
②ストレスへの気づきと対処
①職場環境の把握と改善
②部下の相談対応
③職場復帰支援など
①具体的なメンタルヘルス対策の企画立案
②個人情報の取り扱い
③事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
④職場復帰支援など
①情報提供や助言を受ける等のサービスの活用
②ネットワークの形成
③職場復帰支援など
○メンタルヘルスケアの教育研修・情報提供(管理監督者を含む全ての労働者が対応)
○職場環境等の把握と改善(メンタルヘルス不調の未然防止)
○メンタルヘルス不調への気づきと対応(メンタルヘルス不調に陥る労働者の早期発見と適切な対応)
○職場復帰における支援
46
介護職員は奉仕の精神が旺盛な方が多く仕事を抱えてしまうことや夜勤など生活のバランスが崩れやすいことなどから複層的なストレス対策が求められます。予防策としては個人と組織の両面からストレス管理に取り組むことが大切です。
2 職員の休職・復職
休職制度の導入は法律で義務付けられたものではありませんが、職員がどのような状態になった場合に休職として取り扱うか、休職期間をどの程度とするかを就業規則に定め、職員に周知しなければなりません。
また、職員が復職を希望する場合、最終的に誰が復職を決定するか、主治医からの意見聴取をどのような手順で進めていくかなど復職までのプロセスの明確化が求められます。加えて、休職をする職員に対して休職制度の内容と、休職期間満了後の取り扱いについては、適切な説明を行っておく必要があります。
第1章
職場復帰支援プログラム
第1ステップ 病気休業開始及び休業中のケア 第2ステップ 主治医による職場復帰可能の判断第3ステップ 職場復帰の可否の判断及び職場
復帰支援プランの作成 第4ステップ 最終的な職場復帰の決定
職場復帰
第5ステップ 職場復帰後のフォローアップ
50 人以下の事業所は、「各都道府県の産業保険総合支援センター」へ相談
上司+メンタルヘルス推進担当者
職場復帰支援プラン作成
(試し出勤等)
第3ステップ
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
主治医の復職可能との診断書(必須)
産業医との復職面談
復職判定委員会(仮称)との面談
復職可否の判断
(産業医の意見書、復職判定委員会により)
+α 復職後の一定期間内に同一傷病または類似傷病で再度休職したときの取得日数の取り扱いは、すでに取得した休職期間を再び開始した休職期間に加えることが一般的です。
3 ストレスチェック制度
職場におけるメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的に、常時 50 人以上の労働者を使用する事業場に対して、医師、保健師などによる年1回のストレスチェックとその結果に基づく面接指導などの実施が義務づけられています。
ストレスチェックをきっかけに働く職員一人ひとりが自らのストレスの状況に気づき、セルフケアなどの対処をするとともに、事業所は長時間労働の改善や職場内のコミュニケーションのあり方などを含めた職場環境の見直しを行い、働きやすい職場づくりを進めることが重要です。
集団分析及びその結果の活用状況(%)
事業場規模 50 ~ 99 人 100 ~ 299 人 300 ~ 999 人 1,000 人以上 計
集団分析を実施し、その
60.4% 66.1% 74.1% 73.6% 63.7%
結果を活用した事業場割合
厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)平成 30 年特別集計
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
47
職場ごとのストレスの状況を把握などすることを集団分析といいます。集団分析の結果を、業務内容や労働時間など他の情報と併せて評価し、職場環境改善に取り組むよう努めましょう。
メンタルヘルスケアの取組「心の健康づくり計画」「4つのケア」を実施している
(労働者 50 人以上の事業場)ストレスチェック制度を実施している
□
□
23
職場のハラスメント対策
(男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、労働施策総合推進法)
職場でのあらゆるハラスメントは許されません。事業所は、雇用管理の問題として職場のセクシュアルハラスメント対策やパワーハラスメント対策等の防止措置等を講じて、快適な職場づくりに取組みましょう。
1 セクシュアルハラスメント(いわゆる「セクハラ」)
「セクハラ」とは、職場において性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触など意に反する性的な言動が行われ、拒否したことで不利益を受けたり、職場の環境が不快なものとなることをいいます。事業主は、次のような措置を講ずる義務があります。
事業主が雇用管理上講ずべき措置 (男女雇用機会均等法第 11 条、いわゆる「セクハラ指針」)
①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
④相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置とその周知
⑤相談したこと・事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、職員に周知すること
2 パワーハラスメント(いわゆる「パワハラ」)
「パワハラ」とは、職場において行われる次の①~③までの要素を全て満たすものをいいます。
①優越的な関係を背景とした言動であって、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③労働者の就業環境が害されるもの
2020 年(令和2年)6月1日(※)からは労働施策総合推進法によって、パワハラがないよう、職員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることが義務となりました。※中小企業については、2022 年(令和4年)4月1日から義務化されます。中小企業の範囲については、30 ページ「14 割増賃金 1(2)適用が猶予される中小企業の範囲」をご覧ください。
パワハラ対策の基本的枠組み
≪予防するために≫
①トップのメッセージの発信 ⇒ 「職場のパワハラをなくす!」という意思表明
②ルールを決める ⇒ 就業規則の整備・労使協定の締結など
③実態を把握する ⇒ 職員アンケートを実施する
④教育する ⇒ パワーハラスメント研修を実施する
⑤周知する ⇒ 事業所の方針や取組を周知・啓発する
≪解決するために≫
⑥相談や解決の場を設置する ⇒ 対応責任者を決め、相談窓口を設置する
⑦再発防止のための取組 ⇒ 行為者に対する再発防止研修等を行う
48
(厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」より)
~セクハラとパワハラの違い~
セクハラもパワハラも目的と手段の適切さが認められなければなりません。その上で、セクハラについては、受け手が意に反することを明確に示しているにも関わらず、その行為が繰り返される場合は、職場におけるセクハラと解されます。
一方でパワハラ(身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)は受け手の感じ方によってのみ判断されるものではありません。業務指導の許容範囲である可能性が高いという特性もあります。そのため、各事業所で「何が業務の適正な範囲で、何がそうでないかを明確にする取組」が求められます。
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
第1章
3 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント
妊娠・出産したこと、育児や介護休業等を理由とする解雇等の不利益取り扱いは法律で禁止されています。また、妊娠・出産したこと、育児や介護のための制度利用をしたこと等に関して、上司・同僚が就業環境
を害する言動を行うことを「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」といいます。2017 年(平成 29 年)1月から事業主に防止措置を講じることが義務づけられました。
ハラスメントの内容 (男女雇用機会均等法第 11 条の2、育児・介護休業法第 25 条)
①制度等の利用への嫌がらせ型
妊娠・出産に関する制度・措置の利用に関する言動により就業環境が害されること
②状態への嫌がらせ型
妊娠したこと・出産したこと等に関する言動により就業環境が害されるもの
具体例
①制度等の利用への嫌がらせ型:男性労働者が育児休業を申し出たところ、上司から「男のくせに育児休業をとるなんてありえない」と言われ、休業を断念した。
②状態への嫌がらせ型:先輩から「就職したばかりなのに妊娠して、産休・育休とるなんて図々しい」と何度も言われ、就業意欲が低下した。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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+α 職場のハラスメントには、上記の他に、モラルハラスメント等様々なものがありますが、ハラスメント防止策を講じて、労働者が働きやすい環境整備をすることが求められています。
セクシュアルハラスメント防止措置を講じているパワーハラスメント防止措置を講じている
妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント防止措置を講じている
□
□
□
24
労働保険・社会保険
(労働保険徴収法、労災保険法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法)
労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保 険)の適用・加入は、組織の秩序を維持するための前提条件です。各制度の適用範囲・給付内容等を正しく理解し適正に手続きをしましょう。
1 労働保険・社会保険の適用範囲
労働保険(労災保険・雇用保険)と社会保険(健康保険・厚生年金保険)の適用範囲を確認しましょう。
(1)労災保険
職員(パートを含む)を1人以上雇用したとき、加入しなければなりません。
加入するためには、労働保険の保険関係成立届を原則として所轄の労働基準監督署に提出します。
(2)雇用保険
次の労働条件のいずれにも該当する職員(パートを含む)を雇用したときは加入手続きが必要です。
①1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること ② 31 日以上の雇用見込みがあること
(3)健康保険、厚生年金保険
法人(会社)で常時職員(事業主のみの場合を含む)を使用するときは、加入手続が必要です。2022年 10 月からは段階的に社会保険の適用範囲が拡大され、一部のパートタイマーも社会保険の加入が義務化されます。(※)
⃝厚生年金の被保険者数が常時 500 人以下の事業所の場合
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事するxx職員の4分の3以上であるパートタイマーは、加入しなければなりません。
⃝厚生年金保険の被保険者数が常時 501 人以上の事業所の場合
下記の①~④全てを満たすパートタイマーは、加入しなければなりません。
①週の所定労働時間が 20 時間以上であること ②雇用期間が1年以上見込まれること
③賃金の月額が 8.8 万円以上であること ④学生でないこと
※ 2022 年 10 月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大
▶︎
現 在 従業員数
501人以上
50
企業
2022年10月〜従業員数
▶︎
101人以上
企業
2024年10月〜従業員数
51人以上
企業
check
check
週の所定労働時間が 20時間以上
2ヶ月を超える雇用の見込みがある
check
check
月額賃金が 8.8万円以上
学生ではない
2 労働保険・社会保険の給付内容
(1)労働保険(労災保険・雇用保険)
「労働保険」とは労災保険と雇用保険とを総称した呼称です。保険給付は、両保険制度で別個に行われていますが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われています。
労災保険の給付内容
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
業務災害(労働者が業務を原因として被った負傷、疾病または死亡(以下「傷病等」)と通勤災害(通勤によって労働者が被った傷病等)に対して必要な保険給付等が行われます。
<代表的な給付の種類>
○療養(補償)給付・・・労災指定医療機関等で療養を受けるとき
○休業(補償)給付・・・傷病の療養のため労働できず、賃金を受けられないとき上記以外にも、「障害(補償)給付」や「遺族(補償)給付」などがあります。
雇用保険の給付内容
労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由などが生じた場合に必要な給付等が行われます(この他にもさまざまな就業促進のための給付や労働者の福祉の増進のための施策があります。)。
<代表的な給付の種類>
○基本手当・・・・・失業中の期間について最短 90 日~最長 360 日の範囲で支給する。
○育児休業給付・・・育児休業期間中(子が1歳になるまで、最長2歳まで)に支給
○介護休業給付・・・介護休業期間中(同一の対象家族に通算 93 日を限度)に支給
(2)健康保険の給付内容
労働者またはその被扶養者の業務災害または通勤災害以外の疾病、負傷もしくは死亡または出産に関して保険給付を行う。「療養の給付」や「傷病手当金」、「出産手当金」など生活の安定と福祉の向上に大きく寄与するためのものです。
+α 労働保険や社会保険に加えて、民間の傷害補償(総合生活保険)や損害賠償保険もあります。これらに加入することで、介護業務中の急激かつ偶然な外来の事故によるケガ(一部例外あり)
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
51
や対象となる感染症が発生した場合の補償や介護業務中に他人の身体を傷つけたり、物を壊したりした場合などの賠償金の補償を受けることができます。
労働保険の適用範囲を理解し、必要な加入等の手続きを行っている
社会保険の適用範囲を理解し、必要な加入等の手続きを行っているケガや病気が発生した場合、速やかに請求手続を行っている
□
□
□
25 個人情報保護
(個人情報保護法、マイナンバー法)
介護関係事業者は、多数の利用者やその家族について他人が容易には知り得ないような個人情報を知りうる立場にあるので、個人情報の適正な取扱いが求められます。
1 個人情報保護法とマイナンバー(番号)法
個人情報保護法は、民間事業者における「個人情報」の取扱いルール等を定めている法律です。従来は、取扱う個人情報の数が 5,000 人分以下の事業者には適用されていませんでしたが、2017 年(平成 29 年)5
月 30 日からは、すべての事業者に適用されています。
一方、マイナンバー(番号)法は、マイナンバー(個人番号)や特定個人情報(マイナンバーを含む個人情報)の取扱いについて、個人情報保護法の特例を定めた法律です。
個人情報と特定個人情報
個人情報
(生存する方の情報であることが前提)
特定個人情報生存する方の
マイナンバー(個人番号)
亡くなられた方の
マイナンバー(個人番号)
亡くなられた方の個人の情報は、「個人情報」に該当しませんが、医療・介護関係事業者においては、保存している場合、個人情報と同等の安全管理措置を講ずる必要があります。
(出所)「『個人情報』と『特定個人情報』の主な違い」個人情報保護委員会事務局より一部修正
個人情報とは、氏名、生年月日など特定の個人を識別できるものをいいます。そのため、介護関係事業者における個人情報は、ケアプラン、介護サービス提供にかかる計画、提供したサービス内容等の記録、事故の状況等の記録なども該当します。
個人情報保護法とマイナンバー(番号)法
項目 個人情報保護法 マイナンバー法
対象事業者 1人でも個人情報を取扱うすべて事業者 特定個人情報を取扱うすべての事業者
利用範囲
第三者への提供
利用目的の範囲に制限がない(事業者が自由に決められる)
同意があれば可
マイナンバー法で定められた税、社会保障、災害対策に限定
不可(法令に掲げる場合のみ可)
マイナンバーの就業規則例は、本書巻末の「参考資料」を参照下さい。
52
医療・介護関係事業者は、個人情報を取得するにあたって、あらかじめその利用目的を公表しておくか、個人情報を取得した場合、速やかに、その利用目的を、本人に通知し、または公表しなければなりません。
2 安全管理措置
個人情報保護法が求める安全管理措置と、マイナンバー法が求める安全管理措置とでは、その基本的な要素(漏えい、滅失またはき損の防止その他安全管理のために必要かつ適切な措置)はおおむね共通するため、基本的な内容は同じです。
ただ、マイナンバーの安全管理措置には、一部マイナンバー法固有の観点から講ずることとされている措置もあります。
第1章
組織的安全管理措置
人的安全管理措置
物理的安全管理措置
技術的安全管理措置
医療・介護関係事業者における安全管理措置
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
⃝職員の責任体制の明確化を図り、具体的な取組みを進めるため、医療における個人情報保護に関し十分な知識を有する管理者、監督者等(例えば、役員などの組織横断的な監督が可能な者)を定める。
⃝個人情報保護の推進を図るための部署、もしくは委員会等を設置する。
⃝医療・介護関係事業所で行っている個人データの安全管理措置について定期的に自己評価を行い、見直しや改善を行うべき事項について適切な改善を行う。
⃝雇用契約や就業規則において、就業期間中はもとより離職後も含めた守秘義務を課すなど職員の個人情報保護に関する規程を整備し、徹底を図る。
⃝取扱う個人データの適切な保護が確保されるよう、職員に対する教育研修の実施等により 、個人データを実際の業務で取り扱うこととなる職員の啓発を図り、職員の個人情報保護意識を徹底する。
⃝個人データの盗難・紛失等を防止するため、以下のような物理的安全管理措置を行う。
-入退館(室)管理の実施
-盗難等に対する予防対策の実施
-機器、装置等の固定など物理的な保護
⃝不正な操作を防ぐため、業務上の必要性に基づき、個人データを取り扱う端末に付与する機能を限定する。
-スマートフォン、パソコン等の記録機能を有する機器の接続の制限および機器の更新への対応
⃝個人データの盗難・紛失等を防止するため、個人データを取扱う情報システムについて以下のような技術的安全管理措置を行う。
-個人データに対するアクセス管理
-個人データに対するアクセス記録の保存
-不正が疑われる異常な記録の存否の定期的な確認
-個人データに対するファイアウォールの設置
-情報システムへの外部からのアクセス状況の監視及び当該監視システムの動作の定期的な確認
-ソフトウェアに関する脆弱性対策
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
53
(出所)『医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス』個人情報保護委員会/厚生労働省より一部修正して作成
個人情報や特定個人情報の取扱いにルールや責任者を決めている
外部からの不正アクセスなどから保護するしくみを導入している
□
□
26
訪問介護労働者の移動時間の取扱い
(労働基準法)
訪問介護職員の労働時間の管理・把握を適正に行う必要があります。特に、移動時間等が労働時間に当たる場合は、これを労働時間として把握しましょう。
1 移動時間と通勤時間の違い
「労働時間」は、使用者の指揮監督の下にある時間をいい、介護サービスを提供している時間に限るものではありません。「労働時間」に該当するかどうかは、指揮監督の実態により判断されます。
「移動時間の考え方」
介護サービス利用者
「Aさん宅」
②移動時間
介護サービス利用者
「Bさん宅」
①通勤時間
①通勤時間
③移動時間
③移動時間
労働者の自宅
①通勤時間
事 業 場
⃝移動時間・・・使用者が、業務に従事するために必要な移動時間を労働者に命じ、この移動時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められる時間
⃝通勤時間・・・労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を往復する時間
2 移動時間の具体例
移動時間が、業務に従事するために必要な移動のための時間であるかどうかは、使用者の指揮監督の実態によって判断されます。例えば、就業の場所A地点から就業の場所B地点への移動に要した時間であって、その時間が通常の移動に要する時間程度である場合には労働時間に該当するものと考えられます。なお、移動時間の賃金を介護サービス提供時の時給と別に定めることはできますが、訪問介護労働者への丁寧な説明が求められます。
54
また、移動時間の賃金が最低賃金を下回らないよう注意しましょう。
ケース1
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
自宅から
労働時間(休憩時間を除く)
休憩
所へ
事務
第1章
Aさん宅へxx
Aさん宅で
介護サービス 移動
事務所
事務所
Bさん宅へ移動
Bさん宅で介護サービス
自宅へ直帰
このケースでは、Aさん宅での介護サービス開始時刻から、Bさん宅での介護サービス終了時刻までの時間のうち、休憩時間を除いたものが労働時間となります。
ケース2
労働時間
労働時間
自宅から Aさん宅へxx
Aさん宅で介護 サービス
Bさん宅へ移動
Bさん宅で介護サービス
自宅へxx
休憩
このケースでは、Aさん宅での介護サービス提供時間、Bさん宅への移動時間およびBさん宅での介護サービス提供時間が労働時間となります。移動時間はBさん宅への移動に要した時間であり、それ以外の「空き時間」については、その時間には労務に服する必要がなく、労働者に自由利用が保障されている限り、労働時間として取り扱う必要はありません(Aさん宅での介護サービス終了時刻からBさん宅での介護サービス開始時刻までの時間すべてを労働時間として取り扱う必要はありません)。
ケース3
労働時間
自宅から Aさん宅へxx
Aさん宅で介護サービス
自宅へ直帰
このケースでは、Aさん宅での介護サービス提供時間のみが労働時間となります。
「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」(厚生労働省)より一部抜粋
~待機時間の管理と把握~
利用者宅から直接次の利用者宅に移動する場合、次のサービスまでの間に「移動時間」とは別に「待機時間」が発生することがあります。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
55
「待機時間」については、使用者が急な業務等に対応するため事業場等において待機を命じ、当該時間の自由利用が労働者に保障されていないと認められている場合には、労働時間に該当します。
移動時間と通勤時間の違いを正しく理解している訪問介護労働者ごとに移動時間を管理している
労働時間に該当する移動時間分の賃金を支払っている
□
□
□
27
訪問介護サービスのキャンセル時の対応と休業手当
(労働基準法)
訪問介護サービスにおいて、利用者からキャンセルや利用時間帯の変更を理由に労働者を休業させる場合、休業手当の支払いが必要かどうか、具体的事例で確認しましょう。
1 勤務日確定後のキャンセル
労働基準法では、使用者(会社)の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中の労働者に休業手当を支払わなければならないと定められています。
「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、勤務表が出来上がり、ヘルパーに示され、勤務日(勤務時間)が特定され、ヘルパーはその勤務日(勤務時間)に働くべく、労働の用意をし、労働の意思を持っているにもかかわらず、次に掲げる理由などによって働くことができなくなり、休業を余儀なくされることをいいます。
⃝利用者からの利用申込みの撤回(キャンセル) ⃝その他使用者の責に帰すべき事由
⃝利用者からの利用時間帯の変更
「使用者の責に帰すべき事由」は、他の利用者宅での勤務等、その労働者に代替業務を行わせる可能性も含めて判断し、使用者として行うべき最善の努力を尽くしたとかどうかが問題となります。
ただし、以下に該当する場合は「休業」に当たらないため休業手当を支払う必要がありません。
就業規則の規定に基づき、事前に休日の振替による労働日の変更を行った場合
その勤務日(勤務時間)に、他の利用者宅で勤務させる等代替業務の提供を行った場合
就業規則の規定に基づき、事前に始業・終業時刻の繰上げ、繰下げによる勤務時間帯の変更を行った場合
代替業務を行わせる可能性等を含めて判断し、使用者が行うべき最善の努力を尽くしたと認められる場合
2 休業手当の計算方法
【賃金に含めないもの】
・臨時に支払われるもの
・3か月を超える期間ごとに支払われるもの
・通貨以外のもの
(1)月給者の休業手当の計算方法
56
× 60%
休業手当を支払うべき日以前3か月間の総賃金休業手当を支払うべき日以前3か月間の暦日数
暦日数に含めないもの
・業務災害休業期間 ・産前産後休業期間
・育児休業期間 ・試用期間
・使用者帰責事由休業期間
【休業手当を支払うべき日以前3か月間】賃金締切日:当月末日の場合
休業手当を支払うべき日(4月 20 日)
4月
▽
1月(31 日)
1か月目
300,000 円
(計算式)
2月(28 日)
2か月目
300,000 円
3月(31 日)
3か月目
300,000 円
第1章
介護事業所が守らなければ
ならない法定事項
(300,000 円+ 300,000 円+ 300,000 円)÷(31 日+ 28 日+ 31 日)= 10,000 円(平均賃金) 10,000 円 × 60% = 6,000 円(休業手当)
(2)時給者の休業手当の計算方法(※4)
休業手当を支払うべき日以前3か月間の総賃金 × 60% × 60%休業手当を支払うべき日以前3か月間の労働日数
【休業手当を支払うべき日以前3か月間】賃金締切日:当月末日の場合
休業手当を支払うべき日(4月 20 日)
▽
1月(31 日) 2月(28 日) 3月(31 日)
1か月目 2か月目 3か月目
4月
賃金締切日:当月末日の場合
99,000 円(※1)66,000 円(※2)88,000 円(※3)
※1 99,000 円= 1,100 円×5時間× 18 日
※2 66,000 円= 1,100 円×5時間× 12 日
※3 88,000 円= 1,100 円×5時間× 16 日
1日5時間 時給 1,100 円
(計算式)
(99,000 円+ 66,000 円+ 88,000 円)÷(18 日+ 12 日+ 16 日)× 60%= 3,300 円(平均賃金) 3,300 円 × 60% = 1,980 円(休業手当)
※4 時給者であっても、月給者の休業手当の計算方法で算出した額が、時給者の休業手当の計算方法で算出した額 を上回る場合は、月給者の休業手当の計算方法で算出した額を用います。
~具体的事例から休業手当を計算してみましょう~
上記2の時給者が、他の利用者宅でサービスを提供したときその日、他の利用者宅でサービスを2時間提供した場合…
時給 1,100 円×2時間= 2,200 円> 1,980 円(休業手当)であるため
…休業手当を支払う義務はありません。
その日、他の利用者宅でサービスを 1 時間提供した場合…
時給 1,100 円×1時間= 1,100 円< 1,980 円(休業手当)であるため
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
57
…差額(880 円)を休業手当として支払う必要があります。
突然のキャンセルに対応できる人員体制を整えている
職員に対して利用者のキャンセル時の賃金について適切な説明を行っている休業手当の計算方法を正しく理解し、適切に対応している
□
□
□
58
Memo
第 2x
xが採用でき定着する工夫
28 処遇改善加算
介護職員等の処遇改善を図るため、本制度の趣旨を正しく理解し、加算取得区分に応じて、キャリアパス要件及び職場環境等要件等を満たして運用しましょう。
1 介護職員処遇改善加算区分
介護職員処遇改善加算+介護職員等特定処遇改善加算のイメージ
令和3年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業者については、1年の経過措置期間を設ける
※就業規則等の明確な書面での整備・全ての介護職員への周知を含む
<キャリアパス要件>
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
②資質向上のための計画を策定して研修の実施又は研修の機会を確保すること
③経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること
<職場環境等要件>
○ 賃金改善を除く、職場環境等の改善
令和3年1月 18 日「社保審ー介護給付費分科会第 199 回資料1」および令和2年 11 月 26 日「社保審ー介護給付費分科会第 194 回資料8」を基に作成
2 令和元年度における処遇改善加算・特定処遇改善加算の取得状況(加算の種類別)
厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によれば、9 割の事業所が何らかの介護職員処遇改善加算を取得し、取得している事業所のうち多くの事業所は加算(Ⅰ)を取得しています。
また、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の届出をしていると回答した事業所のうち、6割の事業所が介護職員等特定処遇改善加算を取得しています。
処遇改善加算・特定処遇改善加算の取得状況(加算の種類別)
※令和元年度における取得状況
60
※特定処遇改善加算の取得割合は、処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の事業所に対する割合
3 介護職員等特定処遇改善加算の算定要件
1
要件 介護職員処遇改善加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)のいずれかを算定していること
要件
2
介護職員処遇改善加算の職場環境等要件に関し、それぞれ1つ以上の取組を行っていること。( 令和3年度は、6つの区分から3つの区分を選択し、 選択した区分でぞれぞれ1つ以上の取組を行っていること )
※ 区分については、84 ページ「職場環境等要件について〈共通〉」をご覧ください。
3
要件 介護職員処遇改善加算に基づく取組について、ホームページへの掲載等を通じた見える化を行っていること
●以下の内容について、介護サービス情報公表制度を活用し、公表していること
・処遇改善に関する加算の算定状況
・賃金以外の処遇改善に関する具体的な取組内容
●事業所のホームページがある場合は、そのホームページでの公表も OK
配分対象と配分方法
第2x
xが採用でき定着する工夫
▶︎ ①経験・技能のある介護職員において「月額8万円」の改善又は「役職者を除く全産業平均水準(年収 440 万円)」を設定・確保
→ リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準を実現
※小規模な事業所で開設したばかりである等、設定することが困難な場合は合理的な説明を求める。
▶︎ 平均の処遇改善額が、
・①経験・技能のある介護職員は、②その他の介護職員より高くすること
・③その他の職種(役職者を除く全産業平均水準(年収 440 万円)以上の者は対象外)は、②その他の介護職員の2分の1を上回らないこと
※①は、勤続 10 年以上の介護福祉士を基本とし、介護福祉士の資格を有することを要件としつつ、勤続 10 年の考え方は、
事業所の裁量で設定
※①、②、③内での一人ひとりの処遇改善額は、柔軟に設定可能
※平均賃金額について、③が②と比べて低い場合は、柔軟な取扱いが可能
都道府県
4 職場環境等要件
加算の届出の流れ
職場環境等要件として、職員の離職防止・定 着促進を図る観点から『入職促進に向けた取組』
『資質の向上やキャリアアップに向けた支援』
介護職員
『両立支援・多様な働き方の推進』『腰痛を含む心身の健康管理』『生産性向上のための業務改善の取組』『やりがい・働きがいの醸成』を毎年度実施することが求められています。
事業者
④賃金の改善
①加算届出
②加算請求
または市町村
支払の委託
③加算支払
国保連
◯介護職員の研修機会の確保や雇用管理の改善などとともに、加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。
◯都道府県などへ加算の届出をした上で、加算請求は国保連に行う必要があります。
(処遇改善加算取得(届出)事業所)
取得(届出)したキャリアパス要件を満たしている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
61
職場環境等要件の例示に記載された施策のうち、いずれかを実施している □
29 介護事業経営
魅力的な労働環境の整備や職員の処遇改善のためにも、経営戦略に基づき、事業経営を行っていく必要があります。
1 経営戦略
経営戦略のない事業経営は、地図や日程表を持たない気ままな旅のようなもので、何を目指すべきなのかが分からないばかりでなく、無駄やリスクも多くなってしまいます。場当たり的な経営から脱却して、事業 機会を捉え、リスクの軽減を図り、競争力のある経営を継続するために必要なものが経営戦略です。
経営戦略は外部関係者に対しては、サービス利用者や地域に向けての事業方針や提供価値を示すものであり、金融機関や支援機関に対しては、経営方針や実施計画などの理解を促すものとなります。
一方、内部関係者に対しては、方針と具体的な取組みを共有し、職員の業務行動の基本方針を示すものとなります。また、想定と実態との間で乖離が発生した際の方針修正の基本となります。
経営戦略の活用
社 内 社 外
2 経営戦略策定のプロセス
経営戦略は難しいと思われがちですが、経営戦略の概要や基本プロセスを確認したうえで、まずは着手してみましょう。策定する際には、客観的な視点を忘れないことがポイントとなります。
経営戦略策定のフロー
経営理念
その事業は何のために存在するのかということであり、社会的な役割・責任、行動指針などを、簡潔な文章やシンボルで表現したもの
経営目標 長期的に達成しようとしている最終ゴールを示したもの
環境分析
サービス利用者や介護保険制度動向などの外部環境と、自事業所のサービスや人材などの内部環境を分析すること
62
ドメイン
対象とする利用者は「誰」なのか、その利用者に「何を」提供するのか、それを具体的に「どのように」行うのかを決めること
経営戦略策定のプロセス
第2x
xが採用でき定着する工夫
人事戦略は経営戦略の下位にあたるもので、経営戦略をしっかり策定した上で、採用や評価、教育訓練などの人事戦略を策定することになります。
3 経営戦略の実行管理
経営戦略を策定しても、実行が伴わなければ「絵に描いた餅」となってしまいます。経営戦略に沿って、誰が、何を、いつまでに行うのかなどの事業計画を作成します。そして、計画どおりに実行されているか、計画の進捗はどうかなどをマネジメントしていく必要があります。
マネジメント・サイクル
| 目標を設定して、それを実現するためのプロセスを設計(改訂)する |
計画を実施し、そのパフォーマンスを測定する | |
測定結果を評価し、結果を目標と比較するなど分析を行う | |
プロセスの継続的改善・向上に必要な措置を実施する |
自事業所の「強み」や「弱み」をしっかり把握している □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
63
経営理念・ビジョンに基づき、事業を経営している □
30 介護事業の人事戦略
介護事業は「人」がいないと成り立ちません。職員の職能を高めつつ、職場での定着率を高めるためにも、戦略的な人事制度を構築する必要があります。
1 介護事業の人事戦略
介護事業は、人員基準や配置基準など介護保険制度に大きく規定され、法規制や社会制度など経営を取り巻く環境に照らしながら、経営戦略に基づき、人事戦略を考えていくことになります。これに合わせて、利用者に対する対人サービスという大きな特徴を持っており、以下の図表のような点も踏まえておくことが必要です。
サービスの特徴
サービスの特性 説明
無形性(非物質性) 物理的な商品のように、購入前に見たり触ったりできない。
物理的な商品と異なり、サービスは貯蔵・保存し、在庫を持つことが
非貯蔵性(消滅性)
生産と消費の不可分性取引の不可逆性
需要の時期的集中性
異質性(品質の変動性)労働集約性
できない。
サービスは、提供されるその場、その時に購入者である消費者がいないと成り立たない。
提供されたサービスは、返品することはできない。サービスは、繁閑の差が激しい。
サービスの品質は、標準化することが難しい。
サービスは、人間の活動に委ねられているウエイトが非常に大きい。
2 人事制度の目的
人事制度とは「配置」「評価」「賃金」「教育訓練」といった人に関する制度をいいます。従業員を採用した場合、能力・適正に応じて「配置」し、勤務態度や仕事ぶりを「評価」します。評価の結果は、「賃金」に反映され、「教育訓練」ニーズの把握と実施、さらに適材適所への「配置」などに役立てます。
各制度が密接に関連しながら人材を活用することで、最終的に事業所の目標を達成することができます。
64
人事制度は、時代や経済、経営環境の影響を受け、業種、社歴、規模、トップの考え方などにより制度もさまざまです。自事業所に合うのか、運用できるのかを検討して構築することが重要です。
人事制度の体系
3 介護キャリア段位制度
第2x
xが採用でき定着する工夫
介護分野における実践的なキャリア・アップの仕組みを構築することで、介護職員の実践的な職業能力を評価する取組みの効果的な運営と定着を図るための制度として、介護プロフェッショナルの「キャリア段位制度」があります。
「キャリア段位制度」は、事業所ごとにバラバラで行われている職業能力評価に、共通のものさしを導入することで、職員の実際の能力を明確にしようとするのがねらいとなります。
キャリア段位制度導入の効果
(出所)『介護プロフェッショナルキャリア段位制度』〔厚生労働省ホームページ〕
(xxxxx://xxxxxxxxxxxxxxxx.xxx/xxxx/xx00000000000000.xxx)
キャリア段位制度の取組みにあたっての詳しい内容は、厚生労働省『介護プロフェッショナルキャリア段位制度』ホームページで確認してみましょう。
xxxxx://xxx.xxxxxxxxxxxxxxxx.xxx/xxxxxxxxxx/xxx/
経営戦略と整合性がとれた人事制度となっている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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自事業所に合った人事制度を設計、運営している □
31 人事評価と 標管理
評価に対する不満は、モチベーションの低下に直結するため、評価にあたっては、xx性、透明性、納得性を担保することが必要です。
1 人事評価
人事評価とは、人事管理に活用するために、個々の職員の職務遂行能力、勤務態度、勤務成績を一定の項目に従って、上司等が査定する制度です。人事評価を活用する目的には、①昇給査定、②昇進・昇格、③賞与査定、④配置・異動、⑤教育訓練・能力開発があります。
(1)人事評価の項目
評価項目には、勤務記録や生産・能率記録などの客観的データの他に、能力や勤務意欲・態度のような主観データも含まれます。通常、管理職になるに従って成果や実績の比重が増え、勤務態度や能力の比重が減ってきます。
評価項目
能力評価 仕事経験や教育訓練をとおして、ストックされた「職務遂行能力」を評価対象とする。
業績評価 一定期間にどの程度企業に貢献したかという「顕在的貢献度」を評価対象とする。
情意評価 職務に取組む意欲や勤務態度、積極性や協調性などを評価対象とする。
(2)評価方法
人事評価には、絶対評価と相対評価があります。絶対評価とは絶対的な基準に基づいて評価する方法で、相対評価とは評価する対象者の中で比較により、優劣を決定する方法です。
職員に期待するものは、一定レベル以上の能力や業績であり、本来は他と比較して良いか悪いかではありません。よって、本来人事評価は絶対評価で行うことが望ましいといえます。
評価の運用ツールとなる評価表は、職員にとって客観性を担保する観点から「わかりやすさ」と「具体性」が求められます。厚生労働省のホームページから、各業種のモデル評価シートがダウンロードできるので活用してみましょう。
66
ジョブカードモデル評価シート・モデルカリキュラム(厚生労働省) xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxxxx/xxx_xxxx00/xxxxxxx00.xxxx
納 得 性
評価の留意点
2 標管理
第2x
xが採用でき定着する工夫
人事評価制度の一つに「目標による管理(MBO:Management By Objectives)」があります。これは、組織全体の目標と個人の目標を関連付けてチャレンジ目標に挑戦させる自主的管理方法です。ドラッカーの
『現代の経営』で紹介され、現在も多くの企業で定着しており、中小企業でも比較的普及している制度です。目標による管理を実施する場合、目に見える形で、達成可能、測定可能な目標を設定することが必要とな ります。しかし、数値目標の設定が必要なため、運用を誤ると弊害が生じ、本来の狙いが実現されず問題が
発生してしまうので、注意が必要です。
目標による管理の問題点と留意点
問題点 留意点
とにかく数値化(定量化)すれば良いと
① 誤解する。
②
自分や自部門の目標達成を中心に考え、組織における目標のつながりを忘れる。
③
長期目標よりも短期目標の達成を優先しがちになる。
④ 目標水準を低く設定する傾向が生じる。
⑤ 目標として設定したこと以外をやらない。
⑥ 環境変化への対応が難しい。
仕事のプロセスも考慮した目標設定を行う。
組織全体の目標から個人の目標を設定する。
目標設定時に、目標の及ぼす影響を考え、長期と短期の目標のバランスをとる。
ある程度努力しなければ到達できない目標を設定させる。
目標達成に向けたプロセスや目標以外の成果についても評価の対象とする。
評価の結果を報酬・配置・能力開発等、他の人事システムにも十分反映させる。
進捗状況や状況変化に応じて、目標や目標達成方法を修正できる仕組みにする。
人事評価を運用するにあたって、「xx性」「透明性」「納得性」が担保されている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
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目標管理制度を活用するにあたって、上司と部下の面談の機会を設けている □
32 教育訓練(人材育成)
介護事業において、利用者にサービスを行うのは「人」です。そのため、優秀な人材を育成し、活用するためにも、効果的な教育訓練は重要な課題となります。
1 教育訓練の 的
介護事業所は労働集約型の産業であり、サービスを生み出すのは「ヒト」となります。そして、事業所が職員に求めるのは、仕事に関係した能力(職務遂行能力)です。教育訓練は、職員の職務遂行上必要な知識と技能を与え、その知識を活用できる技能を習得させるとともに、職員の能力をレベルアップさせる目的で行います。
教育訓練の目的と効果
2 教育訓練の体系
教育訓練は、その実施形態から、OJT、Of f - JT、自己啓発の 3 つに分けられます。OJT(職場内教育)を基軸に、Off–JT(職場外教育)および自己啓発を、職員の能力や学習ニーズに合わせ、バランスよく組み合わせながら実施すると効果的です。
人材育成の体系
教育訓練の体系
OJT
Off-JT
自己啓発
日常業務の遂行を通じて上司・先輩が部下や後輩を指導育成していく教育方法
日常業務を離れて内部・外部の専門家等を招いて行われる能力開発
社員自らの意思で行う能力xx
xx労働省のホームページから、各業種のモデル訓練カリキュラムがダウンロードできるので活用してみましょう。
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ジョブカードモデル評価シート・モデルカリキュラム(厚生労働省) xxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxxxxx/xxx_xxxx00/xxxxxxx00.xxxx
3 OJT 実施のポイント
OJT は職場において上司が日常の業務遂行の中で教育訓練を行うことをいいます。職務遂行の具体的知識が身につくのはOJT による場合が多く、教育をしながら効率的な職務遂行が可能なので、教育訓練の基本となります。
OJT を効果的なものとするためには、上級者の下級者に対する教育訓練の能力を高め、下級者への教育訓練に責任があることを自覚させることが必要です。
OJT の基本的な流れ
①教育が必要なテーマの把握
②達成目標の設定
③場面、時間、指導者の決定
④実施方法の詳細の設定
⑤効果(期中、期末)の検証
⑥面接の実施による結果のフィードバック
第2x
xが採用でき定着する工夫
4 キャリア開発の必要性
➍次期課題の設定
長期的に介護人材の確保・定着の推進を図るためには、職員が将来展望を持って介護の職場で働き続けることができるよう、能力・資格・経験等に応じた処遇が適切になされることが重要です。そのため、入社してどういうキャリアを描いていくか、そのためにどういう教育訓練を計画的に進めていくか、こうしたキャ リアパスに関する仕組みを、事業所に導入していく必要があります。その取組みを動機づけるための制度として、本書の第 2 章「28.処遇改善加算」で述べられている“ 処遇改善加算” があります。
介護事業のキャリアパスへの取組み
● 介護職員が誇りを持って生き生きとその能力を発揮して働くことができる環境整備
● 介護サービス事業者が良質な介護職員を十分に確保できる雇用管理体制の整備
● 介護職員のキャリアパスに関する懇談会の意見も参考に、厚生労働省が決定
場当たりなものではなく、計画的で体系的な教育訓練を実施している □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
69
職員に対し、どういうキャリアを描いているかキャリアパスを明示している □
33 人材不足と対応策 1. 採用
採用活動を行うにあたっては、働き手の目線に立って、人材募集(求人像、方法)や自事業所のアピール方法を見つめ直してみましょう。
1 人材不足対応に向けた基本的な考え方(採用)
生産年齢人口の減少による労働力人口の減少や、緩やかな景気回復に伴う求人数の増加等、労働市場が縮小均衡する中では、採用活動は非常に厳しいのが現状です。「人材確保」が課題である介護事業所は、今後の業務を遂行する上で求める人材をいかにして集めるかがポイントとなります。
人手不足の要因
2 求人像の明確化
人材が不足している業務の内容やその業務(人材)の役割、業務を遂行するために必要な能力を明確にします。そうすることで、応募者にとっても、求める人材の役割と能力を明確化して採用の条件として提示することで、応募の際の業務に関するイメージのギャップ解消や応募者の不安軽減が期待できます。
求人像明確化のポイント
●人材が不足している業務の内容は何か
●人材が不足している業務(人材)の役割は何か
70
●人材が不足している業務を遂行するために必要な能力は何か
3 アピール方法の検討
人材募集にあたって、重要なことは「働き手の目線」で、自事業所のアピールをすることです。介護事業所は、他の業種と比較して離職率が高い傾向にあります。これは採用の段階、つまり初めから事業所と働き手のお互いの理解が不十分であることが理由の一つとも考えられます。
このアピールの内容は、必ずしも良い情報でなければならないということでもなく、むしろ自社が普通であること、あるいは欠点を隠さずに発信していくことで、かえって働き手から共感が得られやすい場合さえあるようです。
実際に応募をかける前に、応募者に訴えたい自事業所の強み、らしさとは何なのかをしっかり整理しましょう。
アピールポイントの調査項目
□ 事業・サービスの特徴は?
□ 職員、職場の雰囲気は?
□ 経営者の人となりは?
□ 社内制度・仕組みはどうなっているか?
□ 仕事の進め方は?
4 採用方法の検討
第2x
xが採用でき定着する工夫
採用ルートとしては、「ハローワークなどの公的な職業紹介機関」「民間の職業紹介事業者」「情報誌などの紙媒体」「知人、社員等からの紹介」などが考えられます。
求人方法
① ハローワーク
② 求人誌
③ 自社ホームページ
④ 求人サイト
特徴
•多くの求職者に募集がかけられる
•求人票への情報の掲載が限られ、採用のミスマッチが起こる場合もある
•業界紙や専門誌などでターゲットを絞った求人も可能
•広告サイズが小さいと、仕事内容、会社の特徴や魅力を伝えにくい
•伝えたいことをすべて伝えられる
•求職者を自社のホームページへ誘導する施策が必要
•多くの求職者に具体的に発信でき、特定の人材へのアプローチも可能
募集広告だけでなく、自社のホームページ、SNS などを連動させ、より高い効果を狙うことも必要です。募集要項のみならず、企業の様子がわかる写真など、求職者がイメージしやすい情報をより多く発信することが、応募者の安心感へとつながります。
採用したい人材のターゲットが明確となっている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
71
働き手の視点に立ち、自事業所の特徴や魅力を伝えている □□
34 人材不足と対応策 2. 定着
今いる人材や採用した人材が、離職せずに長く定着してもらえるよう、働き手の目線で、職場環境を見つめ直しましょう。
1 人材不足対応に向けた基本的な考え方(定着)
限られたリソースで採用を行う介護事業者にとって、優秀な人材を採用できても、定着に向けた事業所内体制の整備が十分でないために、せっかくの人材が定着しないことも深刻な問題となります。人材の教育コストを考えれば、定着を図るほうが新たに人材を獲得するよりも優先されることとなります。
人手不足の要因
2 職場環境の整備
職場環境は、勤務時間や休日・休暇といった「労働時間」に関わること、各種手当、支援など「賃金」「福利厚生」に関わること、「人事評価」などのさまざまな制度、「安全衛生」にも関わる機材や設備等のインフラ、さらには上司・同僚・後輩ひいては外部の取引先にまで至る周囲の「人間関係」など、さまざまな要素が含まれ、形成されています。今いる人材や採用した人材が、離職せずに長く定着してもらえるよう、職場環境を整備することが重要です。
(1)労働関連法規の遵守
72
近年、インターネットを駆使しさまざまな情報を仕入れることに長けた若い世代を中心に、労働関連法規に限ることなく、会社がコンプライアンスに違反していないか、厳しい視線を注いでいます。法を
守らないような事業所に、有能xxな働き手が集まることは決してありません。まずは、本書の第 1 章の内容を確認して労働関係法規を遵守しているか確認しましょう。
労働関連法規確認のポイント
□ 日頃の労務管理は誰が行っているのか
□ 従業員各自の労働条件や勤務状況を適切に把握、整理しているか
□ 就業規則を作成しているか、法改正などに併せ随時改訂を行っているか
(2)人的資源管理の運用
ヒト・モノ・カネ・情報からなる 4 つの経営資源要素のうち、ヒトに関する企業のマネジメントの総称として使われ、HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)と呼ばれています。「人的資源管理」にはヒトが持ち合わせる能力をプラス思考でポジティブにとらえ,その能力を最大限引き出し発揮させ、モチベーションの向上を図り、人材の定着に寄与するものと考えられます。
第2x
xが採用でき定着する工夫
人的資源管理の流れ
配置 配置転換、職務充実・拡大、ジョブローテーション
育成 OJT、Off-JT、自己啓発、キャリアパス
評価 能力評価、情意評価、業績評価処遇 賃金制度、昇給・昇格
人事評価制度や人材育成制度を積極的に採り入れ、事業所が職員のことをしっかり見守り、育てようとしている姿勢を働き手にアピールします。
+α
2017 年(平成 29 年)3 月に中小企業庁より『中小規模事業者における人手不足対応研究会とりまとめ~中小企業・小規模事業者人手不足対応ガイドライン~』が公表されていますので確認してみましょう。 xxxx://xxx.xxxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxx/xxxxx/0000/000000xxxxxxxxxxxxXX.xxx
労働基準法をはじめとする労働関係法規をしっかり遵守している □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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人事評価制度や人材育成制度を積極的に採用し、運用している □
35 業務効率化
介護事業では介護事務処理の効率化を図ることが「生産性向上」の観点から重要な課題です。介護記録の作成等の事務処理の改善のみならず、 ICT の活用が業務効率化の方策として注目されています。
1 ICT 活用による業務効率化
(1)ICT の活用
介護分野においても、業務効率化を図ることを目的にペーパーレスに向けた取組とデータの効率的な蓄積と活用等のためにICT の導入が進んでいます。
介護サービスの種類を問わず、職員間の情報共有にスマートフォンのコミュニケーションアプリを活用する事業所が見られます。また、情報共有だけでなく、勤怠管理から介護記録の作成、さらには賃金計算からシフト管理に至るまでICT 化を進めている事業所もあります。
また、ICT を導入した後のフォローも大切です。スマートフォンなど ICT 機器に不慣れな職員に対して日頃から電子機器について気軽に相談や質問できる体制づくりと、個別のフォローを継続することが ICT 活用を定着させることになります。
≪ ICT 活用の例≫
•ヘルパーからサービス提供責任者への報告にコミニュケーションアプリを活用している。
•全社員にタブレットを配布し、シフト調整や業務連絡を行っている。
•独自に開発したスマートフォンアプリによりヘルパーに対して訪問予定を一斉に連絡している。
•ヘルパーのサービス開始・終了時刻とその場所を確認できる勤怠管理システムを活用している。
•サービス予定・実績管理の事務を自動シュミレーションにより把握できるシステムを活用している。
ICT 化に伴い、介護事業所では様々な個人情報を取り扱っていることから、情報セキュリティ対策の徹底が重要です。介護事業所に求められる安全管理措置に関する取組み(本書第 1 章「25 個人情報保護」を参照)を推進することはもちろんですが、情報漏えいが起こらないよう、日頃から、従業員の教育研修、入退室の管理や書類の整理整頓、ID・パスワードの管理等の取組みを行うことが必要です。
(2)介護ロボットの活用等
介護労働者の負担軽減から、介護現場において介護ロボット技術の活用が強く期待されています。その一方で、このような先進技術の活用は、なかなか進んでいないのが実態です。そのような中で、国は介護従事者の負担軽減と利用者の自立支援の実現を目指して、ロボット介護機器の開発・導入の支援事業等を展開しています。
74
厚生労働省・経済産業省「ロボット技術の介護利用における重点分野」(2017 年(平成 29 年)10 月改訂) xxxx://xxxxxxxxx.xx/?xx0000
2 事務書類の簡易化による業務効率化
訪問介護サービスでは、介護記録や報告書等の事務書類の作成業務が多く、訪問介護職員やサービス提供責任者等の書類作成業務の効率化を図ることが課題となっています。
そのため、事業所ではこれら問題への対応策として、①必要な項目を盛り込んだ法人統一様式の作成、②チェック形式を中心とした書式による「書く」作業の省力化、③記録の書き方のルールに関する教育が行われています。下記のような業務効率化の取組みがみられます。
≪事務書類の簡易化の例≫
•介護記録の書式について自由記述部分を極力減らし、書式にあらかじめ記載した項目へチェック「✓□」をすることで必要な情報が記録できるようにする。
•実地指導の結果や法改正内容、現場スタッフからの要望を踏まえ、また、事業所として必要な情報を効率的に収集・記録するためにチェック項目を随時変更している。
≪事務書類の作成研修の実施等≫
•ヘルパーが介護記録の書式を正しくチェックできるように、ヘルパー研修等で帳票の書き方を指導している。
•様式の変更がなされると、管理者会議で情報共有された後、サービス提供責任者会議で伝達され、次回の全体会議でヘルパーにも伝わるといった情報伝達経路が明確になっている。
第2x
xが採用でき定着する工夫
3 介護職員の多能工化による業務効率化
多能工とは、1 人で複数の業務をこなすことができる職員のことで、一般的な生活支援や身体介護のみならず、難病者のケアや生活リハビリニーズの対応、♛護師との連携などができる職員のことをさします。「多能工化」とは、職員をより一層介護の専門職としての多能工(マルチスキル)を教育・訓練する仕組みともいえます。このような多能工化は、事業所としての対応力を高めるだけでなく、人材不足を補うことが可能となります。結果としてシフト調整の負担軽減につながります。
≪多能工化を進めるポイント≫
•各職員の介護技術水準や資格等の現状について「見える化」により把握し、いつでも容易にできる仕組みを構築する。
•職員が主体的に多能工化を目指す機運を高める。
•多能工化を積極的に促進する職員研修を行う。
公益財団法人介護労働安定センター『訪問介護事業所のための事務効率化Q&A』より
(xxxx://xxx.xxxxxx.xxxxx-xxxxxx.xx.xx/xxxx0.xxxx)
ICT 導入による業務効率化を進めている □
事務書類の簡易化による業務効率化を進めている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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多能工化による業務効率化を進めている □
36
コミュニケーション1
「評価軸は部下の行動変容」
~効果的な面談~
上司の言葉は職員に大きな影響力を与えます。
管理者には、採用から定期的な人事考課、日常業務における指導場面での面談をより効果的に行うことが求められます。
1 人材採用の見極め
(1)「やってきたこと」•「できること」•「やってみたいこと」を確認
職務経歴書から把握できる業務内容と実際現場で行われていたことが一致するとは限りません。中途採用に関しては、これまで働いていた職場で求められていた働き方を確認し、保有資格をどのように活かしてきたのか確認してみましょう。
(2)コミュニケーション能力•適性
どんなに優れた人材であっても、事業所内の人間関係の悪化が離職につながりかねません。そこで採用面接の中ではその人のコミュニケーションの特徴を見極める必要があります。例えば、人に対して興 味関心を持っているか、相手の気持ちを汲み取ることができるか、相手にわかりやすく話すことができるかなど、コミュニケーション能力を確認しましょう。
2 部下指導:モチベーションの維持
(1)人材育成とモチベーション
定期的な評価面談を苦手に思っている職員は少なくありません。評価面談時の何気ない会話も含め普段言えないことを確認しあい、職員との信頼関係を深めるよい機会と捉え、モチベーションの向上につなげていきましょう。
(2)成長
できなかったことができるようになった、わかることが増えたときの変化を見逃さず職員に対しフィードバックしてみましょう。そのためには、常に職員の変化を観察し、小さな成功をそのまま伝えることで行動が強化されます。
(3)やる気を引き出す
知識やスキルの力量を把握する必要があります。現状を理解したうえで、少し頑張ればできそうな課題であれば高いモチベーションを発揮することができるでしょう。職員の適正な力量の査定がやる気を引き出すチャンスとなります。
(4)適切な問題指摘
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論理的に適切な表現で問題を指摘することによって、課題や目標が明確になり、そのための行動について考えることができるようになります。
3 面談に必要なスキル
(1)聴く力
発する言語のみならず、非言語情報から意識的に聴いてみましょう。表情(目線・口元・顔色・目つき)・声(トーン・スピード・抑揚)・エネルギー・動きを観察し、非言語に意識を向けてみましょう。
① 評価・アドバイスすることなくまずはありのままを聴く。
② 職員の言葉をそのまま返してあげることで「私は聴いている」という姿勢を伝える。
③ 自分が話したくなっても聴くことに徹する。
例:「◯◯さんは〇〇って考えているんだね。」
※部下の言葉をそのまま返す。
(2)質問する力
より深く理解するために、関心の中心を職員に向けてみましょう。
① 一度に多くの質問はしない。
② 質問した際の職員の非言語に注意を払う。
③ 結論を急がない。
例:「何で遅刻したの?」× 「何があったの?」◯
※理由を言う機会を与える。
(3)伝える力
感じたこと、考えたことを率直にxxに、その場・その職員にあった適切な方法で伝えてみましょう。
① してほしいことを率直に伝えてみる。
② 感情・心境も明確に伝える。
③ 「伝えた」から「伝わった」「わかった」から「できる」まで。
例:「昨日話した◯◯だけど(事実)、負担になっているんじゃないかと心配だった(感情)。もしよかったらやってみないか(してほしいこと)
※この順番:事実 + 感情 + してほしいこと
人が採用でき定着する工夫
第2章
管理者に求められるコミュニケーション
非言語に意識を向ける
聴く
率直にxxに 職員に関心を向けて
伝える
行動変容 質問
コミュニケーションの効果
部下へ「言葉」を「伝えた」ことで満足していませんか。コミュニケーションの結果は、相手の反応です。そして、部下が「できる」という自信をもち、「する」=「行動変容」して初めて「言葉」が成果を生み出します。コミュニケーションの成果は、伝えた言葉の意味を部下が理解し、部下の行動が変わって初めて「伝わった」と言えるでしょう。
自分自身のコミュニケーションのあり方を客観視できている □
職員の反応に関心を持つことができている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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自らの行動を変える試みを取り組むことができている □
37
コミュニケーション2
強みを活かしたネットワーク作り
~地域での優位性を発揮~
介護の事業所との関りは一回限りの付き合いではなく、事業所同士が地域の中でかかわり続ける特徴を持っています。同じ地域•同じ要件の中で優位性を発揮し、結果として利用者、介護職員から選ばれる事業所を目指しましょう。
1 顔の見える関係づくり:唯一の強み
(1)継続性
介護業界は地域単位で営業活動を行うため、関係が深まりやすいという特徴を持っています。しかし親しい関係だからこそついつい電話だけの対応やFAX 報告だけになりがちです。大切なことは相手と「顔の見える」関係作りであり、継続的に訪問することが営業活動の基本です。
(2)信頼関係
大切なことは、約束を守る、迅速な対応です。「約束」を守ることは当たり前のことですが、「時間の約束」
「いつまでに返事をする」「どのようなサービスを設定する」など重要な要素です。適切なツールを使用し、相手の予測より早い対応により信頼を勝ち得ていきましょう。積み重ねていくことにより関係が深まります。
(3)人の優位性
介護保険制度下のサービスは、差別化やサービスの価格の違いで競うことは難しいです。大きく差がない商品をどのように売り込むかは、「サービスの優位性」ではなく「人の優位性」、人の差別化が独自の優位となります。差別化は営業する人の付加価値であり「誰にお願いするのか」が問われます。
2 他事業所との交流:他事業所から学ぶ
(1)近隣事業所の動向
自事業所の特徴を把握する必要があります。
•どのような利用者を対象としているか
•自事業所の強みは何なのか
•仕事のやり取りの多い事業所はどこなのか
その結果、競合はどの事業所なのかを知り自社の立ち位置を確認します。
競合する事業所との優位性を見い出すことで、選ばれる事業所になっていきましょう。
(2)近隣事業所から評価される
同じ地域で、同じ価格・内容でサービスの提供をする中での評価を近隣事業所からされたいものです。サービスの良し悪しを理解している同業だからこそ適正な評価を得ることができます。評価を得るためには、自事業所の強みを発信する必要があります。
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積極的に同業他社と交流し、切磋琢磨すると同時に、互いの情報交換を適切に行ってみましょう。
3 事業所交流に必要なスキル
(1)聴く力
営業は聴くとこから始まります。「話したい」という気持ちを引き出しましょう。
① 自事業所のサービスを売り込むより、困りごとを「聴く」。
② サービス以外のことを聴く(その人の情報)。
③ 聴くことにより距離感を縮める。
例:「最近◯◯で困っているんです」 → ×「△△をご提案します」
→ ◯「◯◯についてお聞かせください」
(2)質問する力
相手の話を聴きながら意識の方向性を変える質問をしてみましょう。
① 相手の言いたいことを質問
② 自事業所のサービスを使ってみたことをイメージした質問
③ 意図しない質問をされた場合、すぐに答えずその真意を訊く。
例:「利用者の△△が大変で◯◯したいのですが」 → ×「◯◯はすぐできます」
→ ◯「どうされましたか」
※「◯◯したい」が必ず対策とは限らない。本音を引き出す質問をする。
(3)伝える力
自事業所の主張を効果的に伝えていきましょう。
① 短いセンテンスでインパクトを与える。
② 伝えたい内容には必ず根拠を加える。
③ 程よい自己開示で親密感を出す。
例:「◯◯だから、◯◯で◯◯なので…」長々話すと大切なことが伝わらない
※聞き手に負荷がかかる。
例:「◯◯ぜひさせていただきます。この 1 年で◯件対応した実績があります。」
※主張と根拠がセットになっている。
人が採用でき定着する工夫
第2章
管理者に求められるコミュニケーション
自事業所の業績・経営資源・どんな人
自事業所の強み
実績・強み・戦略・人材を訊く 近隣事業所からの適正な評価を聴く
他事業動向
優位性
他者からの評価
地域での優位性を発揮する ~選ばれる事業所になる!~
価格や商品の差別化が図りにくい介護事業だからこそ、「あなたにお願いしたい」「(利用者が困ったときに)あなたの顔を思い出した」といわれる「選ばれる事業所」作りが重要です。そしてなくてはならないのが働く人材です。ここで働きたいと思える事業所、欲しい人材が集まる取組みを行い、他にない優位性を発揮しましょう。
営業スタイルを客観視できている □
自事業所の強みを言語化できている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
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他の事業所とのネットワークができている □
38 定着のための取組み(事例)
定着のためには、職員とのコミュニケーションを図ることが第一です。法人•事業所の管理者や責任者が職員の考えに耳を傾けて、その意見をよく聴くことが大切です。
ここでは、ワークライフバランスや働きやすい職場づくりのための取組みをご紹介します。これらの事例を、自事業所にあった形に検討してみてはいかがでしょうか。
1 相談窓口の設置やヒアリングなどで職員の声に耳を傾ける制度
(1)相談窓口、意見箱の設置
職場の人間関係や介護業務に関する不安や悩みなどを相談できる窓口を作り、従業員の不安を取り除く取り組みをすることは、働きやすい職場としての魅力を高めることにつながります。相談窓口を周知するほか、口頭での相談に抵抗を感じる職員を想定して、意見箱を設置している事業所もあります。
(2)面談によるヒアリング
職場の不満や仕事への不安を聞く方法として面談によるヒアリングがあります。
ヒアリングに際しては、あらかじめヒアリング項目を幹部等で話し合い、事業所の職場環境の改善につながる質問を検討しましょう。
◯ヒアリング項目例
①事業所の雰囲気 ②上司・同僚との関係 ③利用者へのサービスや介護技術に関する不安
④労働時間 ⑤パワハラ・セクハラの有無など
複数の事業所がある法人では、別の事業所の管理者がヒアリングの聞き手を担当し、直属の上司は誰がどのような話をしたのかわからないようにしている事業所もあります。
2 貢献度を評価する制度
(1)ポイント制度
お店のポイントカードからヒントを得たポイント制度で、貢献度に応じてポイントを付与する制度です。
年末年始に訪問サービスに入ったとき= 5 ポイント
休んだヘルパーに代わって急きょ訪問サービスに入ったとき= 5 ポイント
日曜日・祝日に訪問サービスに入ったとき= 3 ポイント たまったポイントに応じて賞与支給時に一時金を支給します。
(2)年末年始手当
80
年末年始に勤務した職員に 1 回の勤務につき手当を支給したり、時給に手当を上乗せして支給する制度です。
3 ワークライフバランスを支援する制度
(1)短時間正社員制度
短時間正社員制度とは、フルタイムの正社員と比べて1週間の所定労働時間が短いxx型の社員です。短時間正社員制度については法律の定めはなく、事業所が独自に制度を作ることができます。
事例:正社員の所定労働時間が1日8時間、1週 40 時間の事業所で短時間正社員制度を導入するケース
※この事例では、短時間正社員の所定労働時間が正社員の3/4になるように制度設計しています。
導入例1:1日の所定労働時間を短くして勤務する制度
短時間正社員の所定労働時間を1日6時間と定めて
1日6時間×週5日、1週 30 時間で勤務する。
導入例2:1週あたりの勤務日数を減らして勤務する制度短時間正社員の所定労働日数を週4日と定めて
1日8時間×週4日、1週 30 時間で勤務する。
上記の導入例のように1日の所定労働時間や1週あたりの勤務日数の組み合わせで柔軟な設定が可能になりますが、導入の際には、給料・賞与・退職金をどのように支給するか給与面の検討も必要です。
また、最初から短時間正社員として採用する場合や、フルタイムの正社員として採用した労働者が育児や介護のために一時的に短時間正社員制度を利用する場合が考えられます。制度利用の対象者や短時間正社員の仕事の内容、短時間正社員からフルタイムの正社員に転換する場合のルールなども定めておくと運用しやすくなります。
人が採用でき定着する工夫
第2章
4 治療と職業の両立を支援する制度
(1)入院時積立休暇
時効で消滅する年次有給休暇を積み立てておき、手術や療養のために入院するときに使用できる休暇制度です。
積み立てできる休暇日数利用目的
休暇取得時の証明給与
40 日を限度とする
1 日以上の入院に使用できる
入院の事実が証明できる病院発行の領収証の写しを提出年次有給休暇を取得したときと同額の給与を支給
コミュニケーションの促進に努めている □
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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働きやすい職場環境づくりに努めている □
39
雇用管理上の
リスクマネジメント
法律や規則はもちろんのこと、社会的な規範や倫理を誠実に遵守すること(コンプライアンス)を徹底して、リスクを回避しましょう。
1 労働条件に関する誤解が生じないために
優秀な人材に安心して働き続けてもらうために、労働条件に関する疑問や不安に起因するストレスは積み重ならないようにすることは重要です。
そのためにも「事業主が雇用管理を正しく把握すること」が大変重要です。職員が誤った情報をもとに事業所の雇用管理の不備を指摘したとして、事業主や管理者は法律と就業規則を根拠にこの誤った指摘を正さなければなりません。
事業主や管理者が雇用管理を学ぶ機会としては、介護労働者雇用管理責任者講習(本書の「第 1 章 1.雇用管理の重要性」を参照)がありますが、職員がこれらの知識を得る機会はそれほど多くないと言わざるを得ないでしょう。そこで、事業所内で行う各種研修(新人研修や階層別研修など)で労働条件に関する周知を行ったり、契約更新面談や人事面談の際に適宜説明を行ったりすることが求められます。
こうした問題が顕在化する前のリスクマネジメントとして、専門家を利用したり、下記のような様々なインターネットのポータルサイトを活用することも効果的です。
働き方・休み方改善ポータルサイト xxxx://xxxx-xxxxxxx.xxxx.xx.xx/
両立支援のひろば xxxx://xxxxxxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxx.xxxxxxxxxxxxxxxxxxx xxxx://xxx.xxxxx-xxxxxx.xxxx.xx.xx/xxxxxxxxx xxxx://xxx.xx-xxxxxxxx.xxxx.xx.xx/
xxxの耳 xxxx://xxxxxx.xxxx.xx.xx/
治療と仕事の両立支援ナビ xxxxx://xxxxxxxxxxxxxxxx.xxxx.xx.xx/
2 社会保険に入っていなかったことによるリスク
社会保険の被保険者としての資格があるにもかかわらず、必要な手続きを怠った場合、事業所は将来に向かって大きなリスクを背負うことになります。例えば、手続きを行っていれば得られたはずの年金額を事業所が賠償することを求められたり、国民年金や国民健康保険の保険料と本来納めるべきであった社会保険の保険料との差額を要求されたりといったことが考えられます。
82
⇒本書の第 1 章「24.労働保険・社会保険」にてご確認下さい。
3 過重労働による健康障害のリスク
人材不足が年々深刻の度合を増していく中で、長時間労働や業務過多などの過重労働が大きな問題となっています。長時間労働は、職員の慢性的な睡眠不足の原因となるリスクが高いため、細心の注意を払う必要があります。長時間労働による人件費の高騰や業務効率の低下も見逃せませんが、慢性的な睡眠不足は、生体の回復機能を低下させ、それが結果としてストレスに対する抵抗力•適応力を弱めることとして知られています。これが原因となって離職につながったり、利用者に影響を与えてしまったりする場合があり、解決すべきリスクであるといえます。
法定労働時間を超える時間外労働の時間数に応じて発生する義務またはリスク
1 か月当たりの 時間外労働の時間数
45 時間
60 時間
当該時間数の意味または発生するリスク
○ 36 協定において定めることのできる 1 か月当たりの労働時間の延長の限度時間
○法定割増賃金率が 25%から 50%に引上げ
(中小企業についても、2023 年 4 月から適用)
第2章
80 時間
人が採用でき定着する工夫
○本人からの申出により医師による面接指導(努力義務)
○【発症前 2 ~ 6 か月平均で 80 時間以上】脳・心臓疾患発症との関連性が強い
※本人からの申出により医師による面接指導を行わなければならないとされる時間外労働の時間数が 100 時間以上から 80 時間以上へと改正されました。
使用者は、職員がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務(安全配慮義務)を負っています。
安全配慮義務の具体的な内容は、(1)労働者の職種(2)労務内容(3)労務提供場所等の具体的な状況によって異なるため、事業所ごとに危険性や有害性等の調査を行い、その結果に基づき必要な措置を講ずることが重要です。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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労働法規等を遵守し、労使トラブル等がおきないように配慮している □過重労働が発生していないか点検し、確認された場合には必要な措置を講じている □社会保険の資格取得手続を滞りなく行っている □
参 考 資 料
職場環境等要件について<共通>
【処遇改善加算】
届出に係る計画の期間中に実施する事項について、全体で必ず1つ以上にチェック(✔)すること。 ( ただし、記載
するに当たっては、選択したキャリアパスに関する要件で求められている事項と重複する事項を記載しないこと。)
【特定加算】
届出に係る計画の期間中に実施する事項について、必ず全てにチェック(✔)すること。複数の取組を行い、「入職
促進に向けた取組」、「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」、「両立支援・多様な働き方の推進」、「腰痛を含む
心身の健康管理」、「生産性向上のための業務改善の取組」、「やりがい・働きがいの醸成」について、それぞれ1つ以
84
上(令和3年度は、6つの区分から3つの区分を選択し、選択した区分でそれぞれ1つ以上)の取組を行うこと。
※処遇改善加算と特定加算とで、別の取組を行うことは要しない。
区分 | x x | |||
□ | 法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明 | |||
確化 | ||||
□ | 事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築 | |||
入職促進に向 | ||||
けた取組 | □ | |||
他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用 | ||||
の仕組みの構築 | ||||
□ | ||||
職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施 | ||||
□ | 働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護 | |||
技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職 | ||||
資質の向上や | 員に対するマネジメント研修の受講支援等 | |||
キャリアアッ | ||||
プに向けた支 | □ | 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動 | ||
□ | エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入 | |||
援 | ||||
□ | 上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の | |||
確保 | ||||
□ | 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施 | |||
設の整備 | ||||
両立支援・多 | ||||
□ | 職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間xx職員制度の導入、職員の希望に即した非 | |||
様な働き方の | ||||
xx職員からxx職員への転換の制度等の整備 | ||||
推進 | ||||
□ | 有給休暇が取得しやすい環境の整備 | |||
□ | 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実 | |||
□ | 介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器 | |||
等導入及び研修等による腰痛対策の実施 | ||||
□ | 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設 | |||
腰痛を含む心 | ||||
身の健康管理 | 置等健康管理対策の実施 | |||
□ | 雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施 | |||
□ | 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備 | |||
□ | タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入 | |||
による業務量の縮減 | ||||
生産性向上の | □ | 高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報など | ||
ための業務改 | も含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化 | |||
善の取組 | □ | 5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実 | ||
践による職場環境の整備 | ||||
□ | 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減 | |||
□ | ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏 | |||
まえた勤務環境やケア内容の改善 | ||||
やりがい・働 | □ | 地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流 | ||
きがいの醸成 | の実施 | |||
□ | 利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供 | |||
□ | ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供 | |||
参 考 資 料
働き方改革関連法のうち、介護事業所に関わりのあるものの主な内容と施行時期
◇労働時間法制の見直しについて
残業時間の上限の規制
残業時間の上限は、原則として月 45 時間・年 360 時間とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできません。
臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、
・年 720 時間以内
・複数月平均 80 時間以内(休日労働を含む)
2019 年
4 月
大企業
2020 年
4 月
実施時期 2021 年
4 月
2022 年
4 月
2023 年
4 月
・月 100 時間未満(休日労働を含む)を超えることはできません。
また、原則である月 45 時間を超えることができるのは、年間 6 か月までです。
年 5 日間の年次有給休暇付与の義務づけ
使用者が労働者の希望を踏まえて時季を指定、年 5 日の付与が義務化されます。
労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者は年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことは差し支えなく、この場合は 0.5 日として取り扱う。なお、時期指定を時間単位年休で行うことは認められない。
フレックスタイム制の拡充
労働時間の調整が可能な期間(清算期間)が延長されます。
(1 か月→ 3 か月)
勤務間インターバル制度の導入(努力義務)
1 日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間
(インターバル)を確保する仕組みです。
労働時間の客観的な把握の義務づけ
裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が、客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務づけられます。
産業医•産業保健機能の強化
事業主から産業医への情報提供や産業医等による労働者の健康相談等が強化されます。
月 60 時間超の残業の割増賃金率の引上げ
2023 年 4 月から中小企業の割増賃金率が引上げられます。
(25%→ 50%)
大企業
参 考 資 料
中小企業
中小企業
実施時期
◇雇用形態に関わらないxxな待遇の確保
不合理な待遇差をなくすための規定の整備
同一企業内において、xx雇用労働者と非xx雇用労働者(短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)との間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
2019 年
2020 年
4 月
4 月
大企業
2021 年
2022 年
2023 年
4 月
4 月
4 月
労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
非xx雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について説明を求めることができるようになります。
行政による助言•指導等や行政ADR の規定の整備
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。
「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」に関する説明についても対象と
短時間労働者・有期雇用労 働者の規定について、中小企業は 2021 年 4 月から適用
中小企業
なります。
注)介護事業の場合、下記①または②に該当するときは「中小企業」に該当します。
①資本金の額または出資金の総額が 5,000 万円以下であること
②常時使用する労働者数が 100 人以下であること
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
85
※個人事業主や医療法人など資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断することになります。
参 考 資 料
86
[居宅介護系職員用]労働条件通知書 (パートタイマー)
年 月 日 | |||
殿 | |||
事業場名称・所在地 | |||
使用者職氏名 | |||
雇用の形態 | ①正職員(ただし試用期間 か月)、②有期常勤職員、③パートタイマー、④非常勤雇用、 | ||
⑤臨時雇用、⑥その他 | |||
契 約 期 間 | 期間の定めなし、期間の定めあり( 年 月 日~ 年 月 日) | ||
(ただし、上記雇用期間中でも労働者は退職でき、使用者もやむを得ない事由があるときは解雇でき | |||
ます。) | |||
就業の場所 | ※非定型的パートヘルパーの場合には、「別途勤務表で明示します」と記載。 | ||
従事すべき | |||
業務の内容 | ※同上 | ||
始業、終業 | 1 始業・終業の時刻等 | ||
の時間、休 | ①始業( 時 分)②終業( 時 分)③実労働時間( 時 分) | ||
憩時間、就 | |||
※確定的には、毎月のスケジュール表で明示します。 | |||
業時転換時 | ※訪問先へのxx・直帰の場合は、訪問先到着時刻、訪問先退出時刻とします。 | ||
間、所定時 | ※始・終業時刻は、前日までに特定してこれを繰上げ・繰下げて変更することがあります。 | ||
間外・休日 | 2 休憩時間 | ||
労働の有無 | 1の始業、終業時間の間に 分間 | ||
に関する事 | |||
3 所定時間外労働(有 1日 時間 1週 時間 1か月 時間)無 | |||
項 | |||
このうち法定時間外労働(1日8時間、1週40 時間超えるもの) | |||
(有 1日 時間 1週 時間 1か月 時間)無 | |||
4 休日労働 | |||
所定休日の労働(有 1か月 日)無 | |||
このうち法定休日の労働(有 1か月 日)無 | |||
※非定型的パートヘルパーの場合には、「別途勤務表で明示し契約します。」との記載もあります。 | |||
休 日 | 定例日:毎週 曜日、その他:月4日以上 | ||
※ただし、毎月のスケジュールにより決定し明示します。なお、これを事前に振替変更することが | |||
あります。(休日を特定しなくても勤務xx就労義務のない日を休日とするのもさしつかえありま | |||
せん。) | |||
休 暇 | 1 年次有給休暇 6か月継続勤務した場合→ 日 ※時間単位年休制度導入のときは | ||
6か月内の有給休暇 (有、無)→ 日 その旨を記載すること。 | |||
2 その他の休暇 有給( 日) | |||
無給( 日) | |||
参 考 資 料
賃 金 1 基本賃金
①時間給 円 ②日給 円 ③月給 円
2 諸手当の額及び計算方法
①( 手当 円/計算方法:支給要件等は賃金規則による)
※移動時間=1時間 円基準
(ただし、賃金としては時間給に合算)
②( 手当 円/計算方法: 〃 ) ※「移動手当」で、移動時間の
③( 手当 円/計算方法: 〃 )
3 所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率時間外労働 所定時間外(割増などの有・無、 %)
賃金処理も可能。ただし、最賃法違反にならないように注意。
休日労働
法定時間外(125%) 1 か月60 時間超の場合(150%)
所定休日 1週40 時間を超える場合(その時間につき125%)
1週40 時間以内(割増なし、休日出勤手当として1回に
円)
法定休日(休日出勤時間につき135%)
深夜労働(25%加算)
4 賃金締切日―毎月 日
5 賃金支払日―毎月 日
6 労使協定に基づく賃金支払時の控除(無・有( )
7 昇給有(時期等 )、無(又は契約更新時の賃金の変更(有・無))
8 賞与(有(時期、金額等 )、無 )
9 退職金(有(時期、金額等 ※退職金規程による )、無 )
退職・解雇
1 定年制(有( 歳) 、無)(期間雇用につき不該当)
※期間雇用のヘルパーについて
に関する事 2 自己都合退職の手続き(退職する 日以上前に届け出ること)は「雇用期間中であってもいつ
項 3 解雇の事由及び手続
〔就業規則第 条~第 条、第 条~第 条による。〕
でも退職でき、またやむをえない事由により解雇されることがある。」旨記載してもよい。
労働契約期間の更新の有無及び判断基準
(注)臨時・登録・非常勤の場合は、
「①更新しない」とすることが一般と思われるので注意すること
1 更新の有無
①更新しない。 ②更新することがある。 ③自動的に更新する。
2 上記②の場合の更新・雇止めの判断基準
参 考 資 料
次期更新について、業務の見通し(次期介護訪問先の状況)、法令通達等の変更等、経営状況、介護内容、本人の勤務成績、業務遂行状況、健康状態等及び本人の希望を総合的に判断して期間満了1カ月前に次期更新の有無及び賃金(増減変更があります)等の労働条件を通知します。
そ の 他
・社会保険の適用-厚生年金(有・無)、健康保険(有・無)、厚生年金基金(有・無)
・雇用保険の適用(有・無)
・その他の保険(有・無)
・その他の福利厚生
・雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口部署名 担当者職氏名 (連絡先)
労働条件の変更
・就業規則による 正社員でない場合( 就業規則) ※例えば「パート就業規則」等と
記載すること。
(注1)短時間労働者の場合、本通知書の交付は、労働基準法第15条に基づく労働条件の明示及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条に基づく書面の交付等を兼ねるものであること。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
87
(注2)上記事項以外に法令によると①労働者に負担させるべき食費、作業用品等に関する事項、②安全及び衛生に関する事項、③職業訓練に関する事項、④災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項、⑤表彰及び制裁に関する事項、⑥休職に関する事項、については、当該事項を制度として設けている場合には口頭又は書面により明示する義務があること。
参 考 資 料
88
[施設介護系職員用]労働条件通知書 (フルタイム)
(労働者名) 殿 年 月 日 | ||||
事業場名称・所在地 | ||||
使用者職氏名 ㊞ | ||||
契 約 期 間 | 期間の定めなし、 | 期間の定めあり( 年 月 日~ 年 月 日) | ||
ただし、試用期間 | ただし、この期間中といえども労働者は14 日前の申出により退職でき、施設も | |||
を3か月とする。 | やむを得ない事由がある場合は解雇できる。 | |||
就業の場所 | (就業の場所を記載する。) | |||
従事すべき | (従事すべき業務を記載する。) | |||
業務の内容 | ||||
始業、終業 | 1 始業( 時 分) 終業( 時 分) 休憩( 分) | |||
の時刻、休 | 2 交替勤務制 | |||
憩時間、就 | 早番 始業( 時 分)、終業( 時 分)、休憩( 分) | |||
業時転換、 | 日勤 始業( 時 分)、終業( 時 分)、休憩( 分) | |||
所定時間外 | 夜勤 始業( 時 分)、終業( 時 分)、休憩( 分) | |||
労働の有無 | 3 スケジュール変更 | |||
に関する事 | 交替制勤務者のスケジュールは、毎月末日までに翌月分を通知するが、就業規則の定めに従って変 | |||
項 | 更することがある。 | |||
4 業務上の必要により将来職務又は配属等に応じて変形労働時間制、フレックスタイム制、事業場 | ||||
外みなし労働制、裁量労働制を適用することがある。(就業規則第○章 勤務時間 の定めるとこ | ||||
ろによる) | ||||
5 所定時間外労働 有・無 | ||||
法定時間外労働 有(1日 時間、1か月 時間、1年 時間)・無 | ||||
特別条項による延長制 有・無 その場合の協定割増賃金( %) | ||||
休 日 | 就業規則第○条~第○条の休日の定め。(所定休日労働 有・無)(法定休日労働 有・無) | |||
その他就業規則第○条「勤務時間表の明示」等の定めによる。 | ||||
上記に従い毎月末日までに翌月のスケジュールを文書で明示する。休日振替を行うことがある。 | ||||
休 暇 | 年次有給休暇、その他の休暇については就業規則第○条「休暇」の定めによる。 | |||
賃 金 | 基本給月額 円、年齢給月額 円 | |||
職務給月額 円( 級 号)、その他の手当等は賃金規則の定めによる。 | ||||
賃金の支払、計算方法、控除、昇給、賞与については賃金規則の定めにより、退職金については退職 | ||||
金規則の定めによる。 | ||||
退職に関す | 定年60 歳。ただし、65 歳までの1年毎の再雇用制等あり。 | |||
る事項 | 退職、解雇については、就業規則第○章人事、第○章退職、第○章解雇、第○章懲戒の定めによる。 | |||
そ の 他 | 労働社会保険については、就業規則第○章福利厚生の定めによる。 | |||
その他の事項については、就業規則の定めるところによる。 | ||||
労働者承諾 | 上記の勤務条件のとおり承諾いたしました。 | |||
年 月 日 | ||||
(労働者氏名) ㊞ | ||||
様 式 第 9 第号 1(6 条 第1項関係)
時間外労働休 日 労 働
に関する協定届
□□□□□□□□□□□□□□□□□□
□□□□□□□□□□□□□
法人番号
労働保険番号
都道府県 所掌 管轄 基幹番号 枝番号 被一括事業場番号
事業の種類 | 事業の名称 | 事業の所在地(電話番号) | 協定の有効期間 | ||||||||
(〒 ― ) | (電話番号: - | - ) | |||||||||
時間外労働 | 時間外労働をさせる必要のある具体的事由 | 業務の種類 | 労働者数 (満 18 歳 ) 以上の者 | 所定労働時間 (1日) (任意) | 延長することができる時間数 | ||||||
1日 | 1箇月(①については 45 時間ま で、②については 42 時間まで) | 1年(①については 360 時間ま で、②については 320 時間まで) | |||||||||
起算日 (年月日) | |||||||||||
法定労働時間を超える時間数 | 所定労働時間を超える時間数 (任意) | 法定労働時間を超える時間数 | 所定労働時間を超える時間数 (任意) | 法定労働時間を超える時間数 | 所定労働時間を超える時間数 (任意) | ||||||
① 下記②に該当しない労働者 | |||||||||||
② 1年単位の変形労働時間制により労働する労働者 | |||||||||||
休日労働 | 休日労働をさせる必要のある具体的事由 | 業務の種類 | 労働者数 (満 18 歳 ) 以上の者 | 所定休日 (任意) | 労働させることができる法 定 休 日 の 日 数 | 労働させることができる法定休日における始業及び終業の時刻 | |||||
上記で定める時間数にかかわらず、時間外労働及び休日労働を合算した時間数は、1箇月について 100 時間未満でなければならず、かつ2箇月から6箇月までを平均して 80 時間を超過しないこと。☐ (チェックボックスに要チェック) |
参 考 資 料
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
協定の成立年月日 年 月 日
職名
協定の当事者である労働組合(事業場の労働者の過半数で組織する労働組合)の名称又は労働者の過半数を代表する者の
氏名
協定の当事者(労働者の過半数を代表する者の場合)の選出方法( )
上記協定の当事者である労働組合が事業場の全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は上記協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること。☐
(チェックボックスに要チェック)
上記労働者の過半数を代表する者が、労働基準法第 41 条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であつて使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。☐(チェックボックスに要チェック)
年 月 日
職名
使用者
氏名
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参 考 資 料
労働基準監督署長殿
参 考 資 料
利用者からのハラスメント
1 介護現場におけるハラスメントの実態
近年、介護現場では、利用者や家族等による介護職員への身体的暴力や精神的暴力、セクシュアルハラスメントなどが少なからず発生していることが様々な調査で明らかとなっています。これは、介護サービスは直接的な対人サービスが多く、利用者宅への単身の訪問や利用者の身体への接触も多いこと、職員の女性の割合が高いこと、生活の質や健康に直接関係するサービスであり安易に中止できないこと等と関連があると考えられます。
被害を受けた職員は、仕事へのモチベーションの低下だけでなく退職、怪我、病気に繋がる恐れがあります。また、事業者(事業主)が、労働契約法に定められた職員(労働者)に対する安全配慮義務等の責務を怠ることで、職員だけでなく地域からの信頼をも失う恐れもあります。
そのため、厚生労働省では介護職員が安心して働くことができるハラスメントのない労働環境を構築するため、『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル』を作成しています。ハラスメント予防や対応のための職員のチェック項目なども用意されていますので、ぜひ活用していただき、介護現場のハラスメント防止と適切な対応を心がけましょう。
『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル』
xxxxx://xxx.xxxx.xx.xx/xxx/xxxxxxx_00000.xxxx
介護現場におけるハラスメントの定義
1)身体的暴力…身体的な力を使って危害を及ぼす行為。
例:コップをなげつける/蹴られる/唾を吐く
2)精神的暴力…個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為。
例:大声を発する/怒鳴る/特定の職員にいやがらせをする/「この程度できて当然」と理不尽なサービスを要求する
3)セクシュアルハラスメント…意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為。
例:必要もなく手や腕を触る/抱きしめる/入浴介助中、あからさまに性的な話をする
(出所)『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル』㈱三菱総合研究所
2 ハラスメント対応として具体的に取り組むべきこと
事業者は、ハラスメントを快適な労働環境の確保・安定的な事業運営のための課題と位置づけ、組織的・総合的にハラスメント対策を講じる必要があります。具体的に取り組むべき主なポイントは以下のとおりとなります。
●事業者自身として取り組むべきこと
・ハラスメントに対する事業者としての基本方針の決定
・基本方針の職員、利用者および家族等への周知
・マニュアル等の作成・共有
・報告、相談しやすい窓口の設置、職場づくり
・利用者等に関する情報の収集とそれを踏まえた担当職員の配置、申し送り
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・発生した場合の初期対応
・発生後の対応
・再発を防止するための対策
・管理者等への過度な負担の回避(組織としての対応)
・利用者や家族等からの苦情に対する適切な対応との連携
・サービス種別や介護現場の状況を踏まえた対策の実施
●職員に対して取り組むべきこと
・必要な情報の周知徹底
・介護保険サービスの業務範囲の適切な理解の促進
・職員への研修の実施、充実
・職場でのハラスメントに関する話し合いの場の設置、定期的な開催
・職場のハラスメントの状況把握のための取り組み
・職員自らによるハラスメントの未然防止への点検等の機会の提供
・管理者等向けの研修の実施、充実
●関係者との連携に向けて取り組むべきこと
・行政や他職種、関係機関との連携(情報共有や対策の検討機会の確保)
(出所)『介護現場におけるハラスメント対策マニュアル』㈱三菱総合研究所より抜粋
事例:特定の職員が、利用者から暴言、嫌がらせを受けた事例
―発生の経緯―
参 考 資 料
利用者は、多機能系サービスの事業所を訪れた際、特定の職員に対し「足が太い」等と言うことがあった。また、スマートフォンにある裸の人形の写真を、その職員や他の職員に対し「(その職員に)似ているだろう」、「これいいだろう」等と何度も見せてくることがあった。特に周囲に人がいない時に、利用者から身体に関わる暴言を受けることが多かった。言われた職員本人も、周りの職員も、利用者にそのような言動はやめるように伝えていた。日によっては、そのことで担当者が冷静に対応することが難しくなってしまい、他の職員がケアを変わらざるを得ない場面もあった。
―報告に至るまで―
何度か注意をしても利用者の言動が収まらなかったため、1 ヶ月程経った頃に当該職員から「身体的なことを言われて嫌だ」、「もう対応したくない」と管理者に相談があった。そこで、職員会議(全職員参加、月 1 回開催)で対応を話し合うこととなった。
― 対応 ―
職員会議で話し合った結果、当該職員が、利用者と 1 対 1 にならないよう、入浴介助のシフトから外れることとなった。また、その利用者の入浴介助は、同性介助を基本とし、やむを得ず異性介助になる場合は、経験豊富な職員を配置するようにした。利用者に対しては、管理者からハラスメントとは何かの説明と、利用者の言動により職員が傷ついていること、今後も同様の言動が続くようであればサービスの利用を控えてもらう必要があることを伝えた。また、近隣に住む家族が利用者の面倒を見ており、キーパーソン的な立ち位置であったため、同様に管理者から利用者による職員への言動について説明を行った。やがて、利用者と家族からは、謝罪の言葉があった。以降、当該職員に対し、傷つけるような言動はなくなった。写真を職員に見せないよう管理者から伝えたところ、多機能系サービスの事業所を訪れる際に周囲に見せることはなくなった。
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、働きがいのある職場づくりのために〜
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(出所)『介護現場におけるハラスメント事例集』厚生労働省より抜粋
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【雇用管理など】
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【健康管理など】
・メンタル不調者への対応方法は?
・ストレスチェック制度を導入したい
・人間関係が上手くいかない…
●人材育成(能力開発)
【研修・計画など】
・職員の年間研修計画の立て方
・リーダー職員の育成方法は?
・キャリアパスの構築をしたい
・階層別研修ってどんな内容?
●助成金活用
・雇用管理改善に使える助成金は?
・人材育成に使える助成金は?
・介護事業所が使いやすい助成金は?
・書類の作成方法がわからない…
当センターの専門家(コンサルタント)とは?
▶当センターの委嘱を受けた、介護分野の雇用管理や人材育成に詳しい専門家 ( 社会保険労務士、中小企業診断士、キャリアコンサルタント、人事・教育担当者 ) です。また、健康管理の専門家ヘルスカウンセラー
(保健師等)が相談をお受けします。
▼ お問合せ先 ▼
上記内容に関する相談がある場合は
92
右の(93P)各支部(所)へご連絡してください!!
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
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参 考
公益財団法人 介護労働安定センター 支部(所)の一覧
都道府県名 | 郵便番号 | 所 在 地 | 電話番号 | FAX番号 | ||
北 海 道 | 〒 060-0061 | 札幌市中央区南一条西 6-4-19 旭川信金ビル 5 階 | 011-219-3157 | 011-219-3158 | ||
青 森 | 〒 030-0861 | 青森市xx 1-3-17 xx歯科ビル 4 階 | 017-777-4331 | 017-777-4335 | ||
岩 手 | 〒 020-0871 | 盛岡市中ノ橋通 1-4-22 中ノ橋 106 ビル 4 階 | 019-652-9036 | 019-652-9037 | ||
宮 城 | 〒 984-0051 | 仙台市xx区新寺1丁目 2 番 26 号 小田急仙台東口ビル 7 階 | 022-291-9301 | 022-291-9302 | ||
x x | 〒 010-1412 | xx市御所野下堤 5 丁目 1-1 xx県中央地区老人福祉総合エリア内 | 018-853-5177 | 018-853-5178 | ||
山 形 | x 000-0000 | xxxxx 0-0-00 xxxx 0 x | 023-634-9301 | 023-634-9300 | ||
福 島 | x 000-0000 | xxxxx 00-00 xxxxxx 0 x | 024-523-1871 | 024-523-1876 | ||
茨 城 | x 000-0000 | xxxxx 0-0-00 xxXXxxxxxx 0 x | 029-227-1215 | 029-227-1216 | ||
栃 木 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0-0 xxxxxxxxx 0 x | 028-643-6445 | 028-643-6448 | ||
群 馬 | x 000-0000 | xxxxxxx 0-00-0 xxxxxxx 0 x | 027-235-3013 | 027-235-3014 | ||
埼 玉 | x 000-0000 | xxxxxxxxxxxx 0 x 0 x XXX xxxx 0 x | 048-813-2551 | 048-813-2552 | ||
千 葉 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0-0 xxxxxxxxxx 0 x | 043-202-1717 | 043-202-1833 | ||
東 京 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-00-0 xxxxxxx 0 x | 00-0000-0000 | 00-0000-0000 | ||
x x 川 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-00 xxxx 0 x | 045-212-0015 | 045-212-0016 | ||
新 潟 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0-0 xxx 0 xx 0 x | 025-247-1963 | 025-247-1964 | ||
富 山 | x 000-0000 | xxxxxxx 0 x 0 x xxxxxxxxx 0 x | 076-444-0481 | 076-444-0425 | ||
石 川 | x 000-0000 | xxxxxx 00 xx xxxxxxx 0 x | 076-260-1561 | 076-260-1562 | ||
x x | x 000-0000 | xxxxx 0 xx 0 x 0 x xxxx 0 x | 0000-00-0000 | 0000-00-0000 | ||
山 梨 | x 000-0000 | xxxxx 0-0-00 xxxxxxxx 0 x | 055-255-6355 | 055-255-6356 | ||
長 野 | x 000-0000 | xxxxxx 0000 XX xxxxx 0 x | 026-232-0898 | 026-232-0906 | ||
岐 阜 | x 000-0000 | xxxxxx 0-0-0 xxxxxxx 0 x D 室 | 058-264-6846 | 058-264-6848 | ||
静 岡 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0 xxxxxxxxxxxx 0 x | 054-252-0222 | 054-252-0122 | ||
愛 知 | x 000-0000 | xxxxxxxxxx 0-00-00 xxxxxxxxx 00 x | 052-565-9271 | 052-565-9272 | ||
三 重 | x 000-0000 | xxxxx 000 xxxxx 0 x | 059-225-5623 | 059-225-5633 | ||
滋 賀 | x 000-0000 | xxxxx 0-0-0 xxxxxxxx 00 x | 077-527-2029 | 077-527-2039 | ||
京 都 | x 000-0000 | xxxxxxxxxxxxxxx 0 xx xxxxxxxxxx 0 x | 075-802-3237 | 075-822-3238 | ||
大 阪 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0-0 労働センター(エル・おおさか)南館12階 | 00-0000-0000 | 00-0000-0000 | ||
兵 庫 | x 000-0000 | xxxxxxxxx 0-0-00 xxx xxxx xxxxxx XXX0 x | 078-242-5321 | 078-242-5322 | ||
奈 良 | x 000-0000 | xxxxxx 0-000-0 xxxxxx 0 x | 0000-00-0000 | 0000-00-0000 | 資 | |
料 | ||||||
和 歌 山 | x 000-0000 | xxxxxxx 0-0-00 xxxxxxxxxx 0 x | 073-436-9160 | 073-436-9170 | ||
鳥 取 | x 000-0000 | xxxxx 000 xxxx 0 xx 0 x | 0000-00-0000 | 0000-00-0000 | ||
島 根 | x 000-0000 | xxxxxx 000 xxxxxxxx 0 x | 0000-00-0000 | 0000-00-0000 | ||
岡 山 | x 000-0000 | xxxxxxx 0-0-0 xxxxxxxx 00 x | 086-221-4565 | 086-221-4572 | ||
広 島 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0 XXXxxxxx 0 x | 082-222-3063 | 082-222-3703 | ||
山 口 | x 000-0000 | xxxxxx 0-0 xxxxxxxxxxxxxx 0 x | 083-920-0926 | 083-920-0930 | ||
徳 島 | x 000-0000 | xxxxxx 0-0 xxxxxx 0 x | 088-655-0471 | 088-655-0463 | ||
香 川 | x 000-0000 | xxxxx 0-0-0 | 087-826-3907 | 087-826-3908 | ||
愛 媛 | x 000-0000 | xxxxxx 0-00-00 xxxx 0 x | 089-921-1461 | 089-921-1477 | ||
高 知 | x 000-0000 | xxxxx 0-00 xxxxxxxxxxxx 0 x | 088-871-6234 | 088-871-6248 | ||
福 岡 | x 000-0000 | xxxxxxxxxx 0-0-00 xxxxxx 0 xx 0 x | 092-414-8221 | 092-414-8222 | ||
佐 賀 | x 000-0000 | xxxxxxx 0-0 xxxxxxxxxx 0 x | 0000-00-0000 | 0000-00-0000 | ||
長 崎 | x 000-0000 | xxxxxx 0-00 xxxxxxxx xx 0 x | 095-828-6549 | 095-828-6589 | ||
熊 本 | x 000-0000 | xxxxxxxxx 0-0 xxxxxxxx 0 x | 096-351-3726 | 096-351-3756 | ||
大 分 | x 000-0000 | xxxxxx 0-0-00 xxxxxxxx 0 x | 097-538-1481 | 097-538-1486 | ||
宮 崎 | x 000-0000 | xxxxxx 0-0 xxxxxx 0 x | 0000-00-0000 | 0000-00-0000 | ||
鹿 児 島 | x 000-0000 | xxxxxxxx 0-0 xxxxxx 00 x | 099-255-6360 | 099-255-6361 | ||
沖 縄 | x 000-0000 | xxxxx 0-00-0 とまりん(アネックスビル)1 階 | 098-869-5617 | 098-869-5618 | ||
あ と が き
介護労働安定センターは、介護労働に関する総合支援機関として 1992 年(平成4年)4月
1日に厚生労働省(当時の労働省)所管の法人として設立され、以来、介護労働に対する様々な支援事業を実施してまいりました。
その中で、「雇用管理改善のための業務推進マニュアル」は、職員の労働条件、研修制度や採用から退職に至る雇用管理に関わる基本的かつ重要な項目を雇用管理改善のためのマニュアルとして作成し、当センターの雇用管理相談援助活動において活用してきたところです。
今般、これまでの相談援助の中で得られた事業所のニーズを踏まえ、昨今の法改正等を盛り込み再編纂いたしました。介護事業所における「働きやすさ」、「働きがい」の観点から、「働きやすさ」は労働基準法をはじめとする法定事項を第1章、また「働きがい」は人材確保・定着のために工夫すべき方策を第2章として整理しております。
人材の定着する「魅力ある職場」のためには、「働きやすさ」(労働環境等)と「働きがい」(やる気・意欲)を高める雇用管理の双方の取組みを進めることが重要です。これらの取組みにより組織は活性化し、介護サービスの質の向上や経営安定にもつながるものと思います。
介護事業所の経営者及び管理者の方々が本書を契機に、更なる雇用管理改善に取組まれ、働きやすい、働きがいのある職場づくりの構築にお役立ていただければ幸いです。
最後になりましたが、本書を作成するために多大なご尽力をいただきました検討会の各委員の皆様には深く感謝を申し上げます。
2021 年 9 月
公益財団法人 介護労働安定センター
二訂版
雇用管理改善のための業務推進マニュアル
〜介護事業所のための働きやすい、
働きがいのある職場づくりのために〜
2021 年 9 月
発 行 公益財団法人 介護労働安定センター
x 000-0000 xxxxxxxx 0-00-0 xxxxxxx 0X TEL:00-0000-0000