株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
<資産証券化商品>
優先受益権 202305(契約番号 00014798)
株式会社日本格付研究所(JCR)は、以下のとおり信用格付の結果を公表します。
23-p-0012
2023 年 5 月 31 日
【新規】
信託受益権格付 AAA
■格付事由
本件は、オートローン ABS に対する格付である。
1.スキームの概要
オリジネーター兼サービサー(オリジネーター)は、多数の個人または法人に対して有するオートローン債権
(対象債権)を三井住友信託銀行株式会社(受託者)に信託し、受託者はオリジネーターを当初受益者として優先受益権および劣後受益権を交付する。オリジネーターは優先受益権を投資家に譲渡し、劣後受益権は引き続き保有する。
対象債権の信託設定に際し、オリジネーターは動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(動産・債権譲渡特例法)第 4 条第 1 項に定める登記により第三者対抗要件を具備する。
オリジネーターは信託事務委任契約に基づき、サービサーとして対象債権の回収を代行し、その回収金を毎月受託者に引き渡すほか、当初債権元本の 10%を上限に貸倒債権の買戻しを行う。回収期間中、これらの回収金及び買戻し代金により各受益権の元本の償還と配当の支払いが行われる。
本件では信用補完・流動性補完措置として、優先劣後構造、現金準備金の設定が採用されている。なお、バックアップサービサーの設置は当初留保されている。
2.仕組み上の主たるリスクの存在
(1) 対象債権の貸倒リスク・キャンセルリスク
オリジネーターが保有するオートローン債権の債務者について、破産・支払遅延等が発生した場合、オートローン実行後にキャンセルが行われた場合に、債権の回収が予定通り行われないリスクがある。このリスクに対して、貸倒率やxxxxx率等の過去実績にもとづき、優先受益権について必要とされる劣後水準を設定している。対象債権には適格要件が設定されているため、母体債権より質の劣る債権が譲渡されていることはないと判断される。
(2) サービサーの信用悪化に係るリスク
① コミングリング・リスク
対象債権からの回収金はサービサーのもとに約 50 日間滞留した後、受託者に送金される。オリジネーターが万一破綻した場合、回収金がオリジネーターの資産と混同され、引き渡しが予定通り行われないリスク(コミングリング・リスク)が生じうるが、本件では当月の約定返済金相当額を仮払金として引き渡すことにより、コミングリング・ロスを縮減する方策がとられている。これに加え、劣後受益権の一部がコミングリング・リスク対応信用補完となっている。
② バックアップサービス体制
オリジネーターに関して、信託債権回収金等の送金義務の懈怠など信託事務委任契約解除事由が発生した場合、受託者は現サービサーへの事務委任を解除することができる。
本件では、当初バックアップサービサー(BUS)の設置は留保されているが、信託契約においてバックアップサービサー設置事由が発生した場合、受託者はサービシング業務の遂行を行うに足る業務遂行能力を備えていると客観的かつ合理的に認められる第三者を BUS として選任し、当該第三者との間でバックアップサービシング契約を締結し、サービシング業務の現サービサーへの委託が解除された場合におけるサービシング業務の承継に関する事務及び承継後のサービシング業務の遂行を委任することとされている。
(3) 信託内のキャッシュフロー不足リスク
本件では、流動性補完措置として信託報酬、優先受益権配当ならびにバックアップサービサーが発動した場合のサービシング手数料の一定期間分、引継費を現金準備金として当初から準備している。
3.格付評価のポイント
(1) 損失、キャッシュフロー分析および感応度分析
本件分析は、貸倒率・キャンセル率・期限前返済率等のヒストリカルデータ及び詳細な属性データを分析しキャッシュフロー上の特徴を考慮し、劣後部分の水準がキャッシュフローの予想損失・予想回収額・債務者の分散度に比して十分か否かを主要なポイントとした。
貸倒率についてはダイナミックデータなどから算出されたベース貸倒率に対して今後の見通しを勘案して一定のストレスをかけてキャッシュフローを分析した。本件証券化では貸倒債権の内、長期延滞債権の計上基準として 2 ヶ月超延滞が採用されている。xxxxx率についてもダイナミックデータなどから算出されたベースキャンセル率に対して今後の見通しを勘案して一定のストレスをかけてキャッシュフローを分析した(ストレス考慮後の想定貸倒・xxxxx率は AAA で 0.302%)。
期限前返済率についてはダイナミックデータなどから算出されたベース期限前返済率を算出し、今後の見通しを勘案して一定のストレスをかけてキャッシュフローを分析した(ストレス考慮後の想定期限前返済率は AAA で 3.055%)。なお、期限前返済率がゼロとなるケースも合わせて計算し、保守的な結果を採用している。
本件で設定されている劣後金額は上述のストレスを考慮して計算された、本件で必要とされる劣後金額の水準を上回っており、優先受益権について AAA 相当のリスクの範囲内で元本償還・配当支払を行うのに十分な水準であることを確認している。
以下の前提のもとで、期中に貸倒率がベースレートを上回って変化することを仮定とした感応度分析を行った。
(前提)
・ 評価時点は信託開始日時点
・ 算定手法は上記と同じ手法
感応度分析の結果、優先受益権に対して採用するベース貸倒率を 0.101%に移動させた場合には、劣後比率 8.74%を前提とした格付は「AA」となった。
(2) その他の論点
① オリジネーターから受託者への信託譲渡およびオリジネーターから投資家への優先受益権の譲渡は真正な譲渡を構成するものと考えられる。
② 本件の信託口座は、一定の水準以上の短期格付またはこれと同程度の長期発行体格付を JCR から付与されている金融機関に開設されている。
③ 関係当事者の本件運営にかかる事務遂行能力に現時点で懸念すべき点はみられない。
以上より、優先受益権の期日どおりの配当の支払いと、信託期間満了日までの元本償還の確実性は、優先劣後構造および法的手当てによって「AAA」と評価できる水準が維持されていると考えられ、優先受益権の格付を「AAA」と評価した。
【裏付資産のキャッシュフロー】
未公表
【予定償還スケジュール】
未公表
■格付対象
【新規】
(担当)xx xx・xx xx
対象 | 発行額 | 劣後比率 | 信託期間満了日* | クーポン・タイプ | 格付 |
優先受益権 | 16,862,000,000 円 | 8.74% | 2033 年 5 月 31 日 | 固定 | AAA |
<発行の概要に関する情報>
信託開始日 | 2023 年 5 月 29 日 |
xx受益権譲渡日** | 2023 年 5 月 31 日 |
償還方法 | 優先受益権:月次コントロールド・アモチ償還 ※早期償還事由発生により月次パススルー償還に変更 |
流動性・信用補完措置 | 優先受益権:優先劣後構造<劣後比率 8.74%>および現金準備金 ※劣後比率:1 – 優先受益xx本÷対象債権元本 |
上記格付はバーゼルⅡに関連し金融庁が発表した『証券化取引における格付の公表要件』を満たしている。
* 本件における事実上の法定最終償還期日
** 本件における事実上の発行日
<ストラクチャー、関係者に関する情報>
オリジネーター | xxx所在の大規模その他金融業 |
アレンジャー | 三井住友信託銀行株式会社 |
受託者 | 三井住友信託銀行株式会社 |
<裏付資産に関する情報>
裏付資産の概要 | 未公表 |
裏付資産発生の概要 | 未公表 |
裏付資産プールの属性 | 未公表 |
適格要件(抜粋) | 未公表 |
加重平均金利 | 未公表 |
格付提供方針等に基づくその他開示事項
1. 信用格付を付与した年月日:2023 年5 月31 日
2. 信用格付の付与について代表して責任を有する者:xx xx
xx格付アナリスト:xx xx
3. 評価の前提・等級基準:
評価の前提および等級基準については、JCR のホームページ(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/)の「格付関連情報」に「信用格付の種類と記号の定義」(2014 年 1 月 6 日)として掲載している。
4. 信用格付の付与にかかる方法の概要:
本件信用格付の付与にかかる方法(格付方法)の概要は、JCR のホームページ(xxxxx://xxx.xxx.xx.xx/)の「格付関連情報」に、「オートローン債権」(2014 年 6 月 2 日)の信用格付の方法として掲載している。回収金口座や倒産隔離など他の付随的な論点についても上記のページで格付方法を開示している。
5. 格付関係者:
(オリジネーター等) xxx所在の大規模その他金融業(ビジネス上の理由により非公表:オリジネーター名が公表された場合、オリジネーターのレピュテーションへの影響等の不利益が生じる可能性があるため)
(アレンジャー) 三井住友信託銀行株式会社
6. 本件信用格付の前提・意義・限界:
本件信用格付は、格付対象となる債務について約定通り履行される確実性の程度を等級をもって示すものである。本件信用格付は、債務履行の確実性の程度に関しての JCR の現時点での総合的な意見の表明であり、当該確実性の
程度を完全に表示しているものではない。JCR は、格付付与にあたって必要と判断する情報の提供を発行者、オリジ
ネーターまたはアレンジャーから受けているが、その全ては開示されていない。本件信用格付は、資産証券化商品の信用リスクに関する意見であって、価格変動リスク、流動性リスクその他のリスクについて述べるものではない。また、提供を受けたデータの信頼性について、JCR が保証するものではない。
本件信用格付は、格付対象の発行体の業績、規制などを含む業界環境などの変化に伴い見直され、変動する。また、本件信用格付の付与にあたり利用した情報は、JCR が格付対象の発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものであるが、当該情報には、人為的、機械的またはその他の理由により誤りが存在する可能性がある。
7. 本件信用格付に利用した主要な情報の概要および提供者:
① 格付対象商品および裏付資産に関する、オリジネーターおよびアレンジャーから入手した証券化対象債権プールの明細データ、ヒストリカルデータ、パフォーマンスデータ、証券化関連契約書類
② 裏付資産に関する、中立的な機関から公表された中立性・信頼性の認められる公開情報
③ オリジネーターに関する、当該者が対外公表を行っている情報
④ その他、オリジネーターに関し、当該者から書面ないし面談にて入手した情報
なお、JCR は格付申込者等から格付のために提供を受ける情報の正確性に関する表明保証を受けている。
8. 利用した主要な情報の品質を確保するために講じられた措置の概要:
JCR は、信用格付の審査の基礎をなす情報の品質確保についての方針を定めている。本件信用格付においては、いずれかの格付関係者による表明保証もしくは対外公表、または担当格付アナリストによる検証など、当該方針が求める要件を満たした情報を、審査の基礎をなす情報として利用した。
9. 資産証券化商品の情報開示にかかる働きかけ:
(1) 情報項目の整理と公表
JCR は、資産証券化商品の信用格付について、第三者が独立した立場で妥当性を検証できるよう、裏付資産の種類別に、第三者が当該信用格付の妥当性を評価するために重要と認められる情報の項目をあらかじめ整理してホームページ上で公表している。
(2) 情報開示にかかる働きかけの内容及びその結果の公表
JCR は、本資産証券化商品の格付関係者に対し、当該資産証券化商品に関する情報(上記の情報項目を含む。)の開示を働きかけた。
働きかけの結果、格付関係者が公表に同意した情報の項目について、JCR は、格付関係者の委任を受け、格付関係者に代わりここで当該情報を公表する(上記格付事由及び格付対象を参照)。なお、公表に対して同意を得られていない情報の項目については、上記格付事由および格付対象の箇所で未公表と表示している。
10. 資産証券化商品についての損失、キャッシュフローおよび感応度の分析:
格付事由参照。
11. 資産証券化商品の記号について:
本件信用格付の対象となる事項は資産証券化商品の信用状態に関する評価である。本件信用格付は裏付けとなる資産のキャッシュフローに着眼した枠組みで付与された格付であって、資産証券化商品に関し(a)規定の配当が期日通りに支払われること、(b)元本が信託期間満了日までに全額償還されることの確実性に対するものであって、ゴーイングコンサーンとしての債務者の信用力を示す発行体格付とは異なる観点から付与されている。
12. 格付関係者による関与:
本件信用格付の付与にかかる手続には格付関係者が関与した。
13. JCR に対して直近 1 年以内に講じられた監督上の措置:なし
■留意事項
本文書に記載された情報は、JCR が、発行体および正確で信頼すべき情報源から入手したものです。ただし、当該情報には、人為的、機械的、またはその他の事由による誤りが存在する可能性があります。したがって、JCR は、明示的であると黙示的であるとを問わず、当該情報の正確性、結果、的確性、適時性、完全性、市場性、特定の目的への適合性について、一切表明保証するものではなく、また、JCR は、当該情報の誤り、遺漏、または当該情報を使用した結果について、一切責任を負いません。JCR は、いかなる状況においても、当該情報のあらゆる使用から生じうる、機会損失、金銭的損失を含むあらゆる種類の、特別損害、間接損害、付随的損害、派生的損害について、契約責任、不法行為責任、無過失責任その他責任原因のいかんを問わず、また、当該損害が予見可能であると予見不可能であるとを問わず、一切責任を負いません。また、JCR の格付は意見の表明であって、事実の表明ではなく、信用リスクの判断や個別の債券、コマーシャルペーパー等の購入、売却、保有の意思決定に関して何らの推奨をするものでもありません。JCR の格付は、情報の変更、情報の不足その他の事由により変更、中断、または撤回されることがあります。格付は原則として発行体より手数料をいただいて行っております。JCR の格付データを含め、本文書に係る一切の権利は、JCR が保有しています。JCR の格付データを含め、本文書の一部または全部を問わず、JCR に無断で複製、翻案、改変等をすることは禁じられています。
予備格付:予備格付とは、格付対象の重要な発行条件が確定していない段階で予備的な評価として付与する格付です。発行条件が確定した場合には当該条件を確認し改めて格付を付与しますが、発行条件の内容等によっては、当該格付の水準は予備格付の水準と異なることがあります。
■NRSRO 登録状況
JCR は、米国証券取引委員会の定める NRSRO(Nationally Recognized Statistical Rating Organization)の 5 つの信用格付クラスのうち、以下の 4 クラスに登録しています。(1)金融機関、ブローカー・ディーラー、(2)保険会社、(3)一般事業法人、(4)政府・地方自治体。
■本件に関するお問い合わせ先
情報サービス部 TEL:00-0000-0000 FAX:00-0000-0000