Contract
[事案 26-17] 契約無効請求
・平成 26 年 11 月 17 日 和解成立
<事案の概要>
契約時、募集人から不適切な募集があったことを理由に、契約の無効を求めて申立てのあったもの。
<申立人の主張>
平成 12 年(当時 81 歳)と、平成 15 年(当時 84 歳)に、孫 3 人を被保険者、契約者および
受取人を申立人として、生存給付金付定期保険を 2 件ずつ(計 6 件)契約した。
しかしながら、以下の理由により、払込保険料と解約時受取金との差額を返してほしい。 (1)募集人は、「孫のため」というだけで、十分な説明をせずに、3 年の短期間に小学生の孫 3人を被保険者とする同種保険に重複して契約させるという不適切な募集をしている。
(2)自分は、高齢で、理解力、判断力が乏しく、商品内容を理解できておらず、平成 15 年の契
約時には、平成 12 年に契約した記憶も薄くなっていた。
(3)高齢者が負担する保険料としては高額(年 77 万円)で、保険期間(15 年)満了時に契約者は 96 歳または 99 歳になっており、適合性を欠く。
<保険会社の主張>
以下の理由により、申立人の請求に応じることはできない。
(1)募集人は、本契約を勧めるにあたり、生存給付金が出ること、死亡保障があることなど、契約の基本的内容を説明し、提案書の交付を行っている。
(2)募集人は、各申込手続時に、ご契約のxxxを交付し、契約内容について説明を行い、未xx者であった被保険者の親権者である申立人の子供夫婦の同意を得ている。
(3)申立人は、有限会社の代表者を務めており、十分な理解能力を有していた。
(4)6 件とも同一の商品であり、申立人は商品を確認する機会が多数あり、異議なく申込みを行っているので、本契約の内容を理解していた。
(5)孫を被保険者とする保険を契約することは一般的に行われていることである。
<裁定の概要>
裁定審査会では、当事者から提出された申立書、答弁書等の書面および申立人、募集人の事情聴取の内容にもとづき審理を行った。審理の結果、以下のとおり、本件は和解により解決を図るのが相当であると判断し、指定(外国)生命保険業務紛争解決機関「業務規程」第 34 条
1 項にもとづき、和解案を当事者双方に提示し、その受諾を勧告したところ、同意が得られたので、和解契約書の締結をもって解決した。
1. 申立人の主張の法的整理
申立人の主張は、説明義務違反または適合性の原則違反の不法行為にもとづく、損害賠償を求めているものと判断する。
2. 説明義務違反について
(1)事情聴取において、募集時の状況は必ずしも明確にはならなかったが、募集に際しては設計書が使用されたものと認められ、募集人は、その内容に則したひととおりの説明を行なったものと推認できる。
(2)本契約の仕組みは比較的容易で、保障内容や長期の保険であることなどは、年齢などを考
慮しても、申立人にとって理解困難であったとまでは認められない。
(3)そうすると、募集人は、契約内容について、申立人が理解できる程度の説明はしたものと認められ、説明義務違反があったと認めることはできない。
3. 適合性の原則違反について
(1)契約時における申立人の理解力や判断力がどの程度であったかについては、証拠上明らかではないが、80 歳を超える高齢者は、一般的には、金融商品について判断するだけの知識や理解力が十分とは言えないので、本件において適合性に疑問がないわけではない。
(2)しかし、本契約の仕組みは比較的容易であり、また、申立人の生活状況も考慮すると、本契約が、申立人にとって理解困難な商品であったと認めることはできない。
(3)申立人の収入は、年金の他に不動産賃貸収入があり、金融機関にも相応の預金もあったも のと認められ、本契約の保険料が余裕のない資金からの支出であったとまでは認められず、また、本契約は特別大きなリスクがある商品であるとはいえない。
(4)よって、本契約の募集が、適合性の原則を逸脱して違法とは認められない。
4. 和解について
当審査会の判断は以上のとおりであるが、以下の事情をふまえ、本件は、和解により解決することが相当である。
(1)申立人は、xx付き合いのある募集人の頼みで、孫のためにもなるのであればと考え、契約を決めたと認められるが、申立人が義理で契約することを知っている募集人が、年額 70 万円を超える保険料の負担を求めることには疑問が残る。
(2)保険の選択については、申立人が募集人に依存する状況にあったことから、申立人の加入目的に配慮した勧誘が求められていたといえるが、「孫のため」といえる孫の保障部分について、他の保険や特約付加などの検討や説明がなされておらず、高額な死亡・高度障害保障額の必要性についての検討や説明も行われておらず、配慮が不十分であったといえる。