Contract
設例1
XはYとの間で、Yの所有する放送用スピーカー1 台をイベント会場用に購入したところ、引き渡しを受けたスピーカーは雑音や音質不良と言った問題があった。この場合、 XはYに対し、損害賠償請求をすることができるか。
Xの請求は契約不適合責任に基づく損害賠償請求である。この請求が認められるためには、債務不履行の要件を満たす必要がある(564 条、415 条 1 項本文)。
本件において、XとYは、放送用スピーカーとして通常有する品質・性能を有するスピーカーであることを契約の内容として合意していたと考えられる。しかし、実際にXが購入したスピーカーは、雑音、音質不良と言った問題があり、「債務の本旨に従った履行」(415 条 1 項本文)がなされていない。
これにより、Xはイベント会場においてスピーカー本来の使用目的を達成できないと言う「損害」を被っている(415 条 1 項本文)。
また、放送用スピーカーが通常有する性能を備えたスピ―カーを引き渡すことは、困難なことではなく、Yの「責めに帰することができない事由」(415 条 1 項但書)があるとは言えない。
よって、XはYに対して、契約不適合責任を追及し、損害倍諸請求をすることができる。
*特定物の場合、いかなる内容までが、「契約の内容」になるのかは、当該契約の解釈により決せられる(→従来の「瑕疵」概念、特に主観的瑕疵概念が参考になる)。
設例2
賃貸人Xが賃借人Yに自己所有の土地を貸していた(Yは、借地権につき対抗要件を備えているとする)。その後、Xが本件土地をZに対し売却し、Zは本件土地の所有権登記を具備している。XはYに対し、自己に賃料を支払うよう請求した。Yは、Xは賃貸人ではないとして支払いを拒んでいる。Zの請求は認められるだろうか。