平成 15 年 3 月末の、再開発ビルに係る未収金残高は下記(A)のとおりです。一方、このうち平成 14年3月 31 日以前に発生した未収金は下記(B)のとおりです。このように、平成 15 年 3 月末の再開発未収金 146,204 千円のうち平成
ⅩⅠ.各個別事業 1.開発及び開発関連事業
≪六甲道住宅分譲業務について≫ (概要)
売主である神戸市が、「住宅の販売代理権の付与等に関する協定書」(以下、
「協定書」という。)に基づいて、販売に係る代理権を「公社」に付与し、「公社」は神戸市の代理人として販売を行います。また、「協定書」において、「公社」は、第三者を復代理人として販売を行なわせることができる、とされています。今回は、この復代理人として民間のマンション販売業者(以下、「販売業者」という。)が選任されており、「販売業務委託契約書」(以下、「委託契約書」という。)に基づき、業務を委託しています。
売主 代理人 復代理人
神戸市
「公社」
「販売業者」
「協定書」 「委託契約書」
(販売経費=広告宣伝等経費+業務経費) (委託手数料)
(監査の結果) (1)契約内容等
この業務の「協定書」及び「委託契約書」の内容(抜粋)は下記のとおりとなっています。
神戸市と「公社」の間の「協定書」 | 「公社」と「販売業者」の間の「委託契約書」 | |
①業務内容 | 1.周辺市場の調査 | - |
2.販売の企画及び準備 | 1.販売の企画及び準備に関する業務 | |
3.各住戸の分譲価格に関する提案 | - | |
4.住宅金融公庫への譲渡承認申請の補助 | - | |
5.募集パンフレットその他の販売ツールの作成及び募集広告の実施 | 3.パンフレットその他販売ツールの作成 | |
6.神戸市が設置したモデルルーム及び販売センターの改装及び必要な備品等の 設置その他モデルルーム等の管理運営 | 2.モデルルーム及び販売センターのコーディネイトに関する業務 7.モデルルーム等の管理運営業務 | |
7.モデルルーム等への集客及び来場者の 対応等 | 4.モデルルーム等への来訪者の対応及び集客 等に関する業務 | |
8.申込資格、本物件の説明等及び住宅金融公庫融資等の借入れ手続並びに住宅金融公庫融資取扱金融機関との連絡x x等 | 8.住宅金融公庫等の借入申込みに伴う業務 | |
9.申込受付、仮契約の締結及び申込証拠金の預り預託等 | 5.申込受付、公開抽選会等に関する業務 | |
10.重要事項説明及び売買契約等の説明 | 6.契約予定者に対する募集パンフレット等の説明、重要事項の説明、売買契約書の締結、 契約金関係に関する業務 | |
11.売買契約の締結及び売買代金の受領等 | ||
12.住宅内覧会、入居説明会その他住宅引 渡しに伴う業務 | 10.顧客竣工検査及び入居説明会等住宅引渡に 伴う業務 | |
13.登記業務 | - | |
14.前各号に掲げる業務の付帯業務 | 12.前各号に掲げる業務の付帯業務 | |
- | 9.買換え物件の販売促進活動に関する業務 | |
- | 11.販売状況の報告並びに購入者分析等の実績 報告書の作成業務 | |
②期 間 | 協定を締結した日から本物件の全住戸 を完売し、購入者へ住宅を引き渡した日まで | 3 ヶ月を限度とし、本契約の締結日から本物 件の対象住戸を完売し、契約者へ住宅を引き渡した日まで(双方異議なければ更新) |
③委託費用 | 広告宣伝等経費・・・分譲価格の総額の 3%を限度として実費により精算。 業務経費…各住戸の分譲価格の 3.1% | 広告宣伝等経費・・・分譲価格の総額の 3%を限度として実費により精算。 委託手数料…各住戸の分譲価格の 2.1% |
④業務手数料の支払時期 | 販売業務終了後、すなわち全住戸販売後。但し、公社が支払済の広告宣伝費等経費、業務経費で神戸市が必要と認めた額については、公社の請求により支払いを受けることができる。また、購入者から預かっ た売買代金を充当することができる。 | 顧客への引渡しの都度、公社に請求できる。実際には、顧客との売買契約締結時に 1.05%、鍵引渡し時に 1.05%を販売委託保証金という形で支払っており、これにより充当される。 |
⑤広告宣伝費の支払時期 | 上記、業務手数料と同時期 | 請求があった翌月 |
① このように、神戸市との間の「協定書」により「公社」が行なう販売業務と、これを受けて「公社」が「販売業者」に「委託契約書」により委託している内容は、相当程度内容が類似したものであり、実質的には、「公社」がその業務の大部分を再委託しているように思われます。これについては、同マンションが再開発事業に係る物件であり、まちづくりの観点から「公社」がxx的・統一的に管理運営することを意図しているため「公社」を経由しているとのことです。
② 神戸市と「公社」との間の「協定書」において、この販売業務の期間は対象となるマンションの全住戸完売までとされていますが、より現実的には、販売住戸ごとの契約とする、あるいは限度期間を設けるなどの対応が望ましいものと思われます。
また、会計処理として、「公社」では当該業務の収益認識基準についても全住戸完売時に一括計上、としていますが、仮に売れ残り物件が長期にわたり継続する場合において、そのマンション全体の収入が長期間計上されない、というのは実務的ではありません。対応する費用の配賦の問題等煩雑にはなりますが、各住戸の販売ごとに収益を認識する方がより妥当です。
③ 実際には、マンション販売に係る広告宣伝費はその大半が委託先の販売業者から広告宣伝等の発注先に対して支払われ、「公社」が直接発注先に対して支払うことはほとんどないとのことです。金額は、分譲価格の総額の3%を限度として、「販売業者」から「公社」に対して実費が請求されて精算されます。
また、神戸市から「公社」に支払われる業務経費は分譲価格の3.1%であり、
このうち「公社」から「販売業者」に対して 2.1%が委託手数料として支払われるため、実質的には「公社」の受取手数料は 1%ということになります。
④ 公社から委託先の販売業者への委託手数料等の支払時期は以下のとおりとなっています。
(ア)委託手数料(分譲価格の 2.1%)・・・(個々の)物件の購入者への引渡が
完了した時に、販売業者は「公社」に請求することができる。
(イ)販売委託保証金・・・「公社」は販売業者に販売委託保証金として、顧客と
の売買契約締結時に分譲価格の 1.05%、鍵引渡時に同 1.05%を支払う。
(ウ)販売業者は各月末に、鍵の引渡が終了した住戸の販売委託保証金を公社に返還する。この金額は、(ア)の委託手数料の請求権と相殺する。
すなわち、(ウ)は(ア)と(イ)の精算であり、実質的には(イ)が委託手数料相当額の資金の動きとなります。
一方で、神戸市から「公社」への販売経費の支払時期は販売業務の終了後とされていますが、顧客から入金されるマンション販売代金の預り分を販売経費の支払い手段に充てるものとするとされています。しかし、販売開始前、すなわち顧客からの入金のないうちに広告宣伝経費等が発生した場合には、「販売業者」に対しては請求に基づいて支払う必要があり、「公社」において立替の状態が発生することとなります。この点に関して、「公社」では、支払済の広告宣伝等経費、あるいは業務経費で神戸市が必要と認め
た額は神戸市に対して請求することが出来る、とされていますが、実際には行われてはいないとのことです。例えば、マンション販売前に広告宣伝費用の請求があり、これに応じた場合には一時的に「公社」の資金負担が発生することとなります。経済合理性からすると、こういった資金負担を回避するために神戸市に対して請求する必要があります。
(2)会計処理
この業務の流れは神戸市→「公社」→「販売業者」となっており、「公社」は委託料(販売経費)として分譲価格の 3.1%を収受し、このうち 2.1%を販売業者に支払う、ということになっています。これらの会計処理として、広告
宣伝費、「販売業者」への委託料、「公社」の収受する販売経費、の合計額が一旦「公社」で収入に計上され、一方でこのうちの広告宣伝費、「販売業者」へ
の委託料は同額が費用にも計上されています。平成 14 年度でいいますと、収
入に152,794 千円が計上されていますが、このうち広告宣伝費相当額は71,146
千円、販売業者への委託料相当額は 56,015 千円で、この合計額は 127,161 千円となります。当該金額が収入及び費用に同額両建計上されていることになります。業務形態のため止むを得ないとも考えられますが、収入及び費用が両建処理され、事業実態に比べて過大表示されている状態にあります。
また、「区画別住宅分譲収支計算書」(精算書)と、会計上計上されている収益、費用の金額との間に少額ですが差異が発生していました。この差異の中には、本来計上すべき事業年度に収益及び費用の計上が行なわれず、計上時期がズレた結果生じたものもあるとのことです。少なくとも決算時には両者の整合性を確認しておく必要があります。
2. 都市再開発関連事業 (概要)
都市再開発関連事業の一つとして、組合施行による再開発事業として建設された「サンパル」をはじめとして、再開発ビルの管理運営を行っています。現在では、再開発ビルの管理者業務のほか、店舗、事務所の賃貸業務や駐車場の管理受託業務等を行なっています。
(監査の結果) (1)入居状況(サンパル)
サンパルについて、平成 15年8月1 日現在の「公社」保有床は 8,461 ㎡ですが、このうち 2,433 ㎡が空室となっており、入居率は 71.24%となっています
(14 年度末では入居率は 93.5%でしたが、平成 15 年 4 月にスポーツクラブが退店したことが入居率悪化の大きな要因とのことです)。
近年、大型テナントが次々に退店したため空床が増加傾向にあるとのことであり、空床の増加、賃料の下落に伴い大幅な赤字となっています(平成 14
年度は事業収入 447,170 千円に対し事業原価 518,013 千円、差額△70,843 千円。)。事業者の出店意欲の低下、不動産価格の下落等による収入減少に対し、積極的な誘致活動、効率的な管理運営、経費の節減を行なうことにより収支の改善を目指しています。
(2)未収金
平成 15 年 3 月末の、再開発ビルに係る未収金残高は下記(A)のとおりです。一方、このうち平成 14年3月 31 日以前に発生した未収金は下記(B)のとおりです。このように、平成 15 年 3 月末の再開発未収金 146,204 千円のうち平成
14 年 3 月以前の発生分は 46,822 千円、32.0%にものぼっています。
(単位:千円)
再開発ビル名 | 平成 15 年 3 月末 再 x x x 収 金(A) | うち平成 14 年 3 月 以 前 発 生 分(B) | 比率 (B)/(A) |
サ ン パ ル | 50,338 | 33,992 | 67.5% |
フォレスタ六甲 | 16,151 | - | - |
神戸留学生会館 | 5,189 | 1,436 | 27.7% |
レバンテxx | 6,756 | 345 | 5.1% |
ウエステxx | 2,996 | - | - |
xxxxxx | 20,937 | - | - |
ピフレ新長田 | 15,234 | 11,047 | 72.5% |
ウェルブ六甲道 | 28,600 | - | - |
テ ィ オ x x | 0 | - | - |
計 | 146,204 | 46,822 | 32.0% |
このうち、特に顕著であるサンパル分のxxの内容は以下のとおりです。
①テナントaに対する債権
平成 15 年 3 月末残高は 11,552 千円であり、内容的には平成 4 年 9 月~平
成8年3 月分です。平成 11 年 2 月に店舗xxxの提訴をしましたところ、明
渡が履行されたため平成 11 年 6 月に訴訟を取り下げています。債権回収については、本人の生活状況等から回収不能と判断しているとのことです。
②テナントbに対する債権
平成 15 年 3 月末残高は 1,048 千円であり、内容的には平成 11 年 3 月及び 4月計上分です。内装等の不満を理由に、2 ヶ月分の賃料の支払を拒否しています。回収不能と考えられているようですが、未収金として計上されたままと
なっています。
③テナントcに対する債権
平成 15 年 3 月末残高は 11,296 千円であり、平成 14 年度分が 2,335 千円、
平成 10 年 2 月~平成 14年2 月分が 8,961 千円です(なお、同社からの預り
敷金は 3,303 千円あります。)。
④テナントdに対する債権
平成 15 年 3 月末残高は 10,572 千円であり、平成 14 年度分が 460 千円、平
成 13 年度分が 10,111 千円となっています(なお、同社からの預り敷金は 3,717千円あります。)。同xxxxは未だ入居しています。また、預り保証金があり、返還期日ごとに相殺しています(平成 15年3 月末預り保証金残高 4,428千円)。
⑤テナントeに対する債権
平成 15 年 3 月末残高は 1,241 千円であり、平成5年5 月~平成6年2 月計
上分です。平成 14 年 7 月の入金以降は入金がなされていません。代表者死亡
により、今後の回収は困難との理由から、平成 15 年 8 月において貸倒処理を行なっています。
①、②に関して
未収金の貸倒処理基準については現在明確に定められておらず、その都度個別事情を勘案して貸倒処理を行なっています。「公社」としての貸倒処理基準を早急に作成する必要があります。そして、これに従って貸倒処理を行な
うことが必要です。
③、④に関して
賃料が滞納しており、すでに未収金額が預り敷金よりも多い状態となっています。テナントとの賃貸借契約書上、基本的には一定の月数(3 ヶ月等)以上延滞すると、催告を要せず直ちに契約を解除することができる、とされています。しかし、実際にはサンパルの周辺に新しいビルがより安価で賃貸している等の状況であり、空床となるよりは賃貸借契約を継続し、督促により徐々に債権を回収する方が得策との判断から賃貸借契約を継続させているものです。ところが、現在、このように一定の月数以上延滞したテナントにつき、契約を継続するか解除するかについて特に内部的に協議した文書は作成されていないとのことです。しかしながら、特定のテナントに対するこの取扱いはxx性の観点等から問題があると考えられるため、最終的な意思決定及びその結論に至った過程を明らかにし、文書の形で残しておく必要があります。
(3)預り敷金
平成 15 年 3 月末の貸借対照表(管理コード別)上の預り敷金残高と、各管理台帳との間に下記の様に差異が生じていました。正確な事務処理を徹底するとともに、各月末には会計帳簿と管理台帳との一致を確認しておく必要があります。
(単位:千円)
ビル区分 | 管理コード別貸借対 照表残高 | 管理台帳残 高 | 差 異 | 摘 要 |
サンパル敷金 | 88,901 | 89,141 | △240 | 調査中 |
フォレスタ六甲区分所有者床敷金(注) | 82,439 | 86,201 | △3,762 | フォレスタ六甲所有床敷金との入り繰りによ るもの。 |
フォレスタ六甲所有床敷金 | 6,561 | 2,799 | 3,762 | 上記参照 |
ピフレテナント敷金 | 90,675 | 90,943 | △267 | 前受金の減額とすべき ところ、この科目の減額としていたもの。 |
(注) 神戸市あるいは第三者から「公社」が借り受け、他に転貸している物件にかかる敷金。
3.都市交通施設関連事業 (概要) (1)路外駐車場管理運営業務
市民の駐車場需要に応えるため、主として市が保有する遊休地について、その管理を兼ねて、それぞれの事業が具体化するまでの間の暫定利用(有効活用の一環)として、市内各所で駐車場の運営を行っています。平成 14 年度
は 47 箇所の路外駐車場があり、この業務は「公社」の自主事業として行われています。
(2)公営駐車場管理業務
市建設局等から委託を受け、湊川公園駐車場等の公営駐車場の管理を行っています。平成 14 年 12月1 日現在、市営駐車場(神戸市道路公社含む)10
場、再開発関連 7 場、の計 17 場の管理を行っています。
(3)自転車駐車場管理業務
市建設局から委託を受け、市内の自転車駐車場の駐車料の徴収・収納及び整列駐車の指導並びに駐車場の維持管理業務を行っています。現在では、約 60 箇所の管理業務の受託を行っています。この事業は、神戸市からの委託を受け、市立自転車駐車場の管理運営業務等を実施しているものです。「公社」は神戸市からは受託料を受領し、利用者からの利用料は神戸市に払い込むこととなっています。
(監査の結果) (1)路外駐車場管理運営業務
①未収金
公社作成の「滞納者一覧表」によると、平成 15 年 3 月末の路外駐車場代金
の滞納金額合計は 12,155 千円となっています。基本的には当月末に翌月分を自動振替することにより回収するため、未収金額=滞納、となるとのことです。平成 15 年 3 月末におけるこの「滞納者一覧表」と、オフコンから出力される「駐車料金滞納者一覧表」との照合作業を実施しようとしましたが、一部の駐車場については、平成 15 年 3 月末の「駐車料金滞納者一覧表」が既に破棄されており、照合不可能な状態となっていました。「駐車料金滞納者一覧表」は賃借人ごとにいつの分が未入金かが把握できるようになっている帳票ですが、この保存状況からすると、適切な延滞管理が出来ていないように見受けられます。駐車場ごと、賃借人ごとにいつの分が入金になっていないのかを適切に把握管理しておく必要があります。
また、平成 15 年 3 月末における未収金の延滞状況表を作成していただいた
ところ下記のようになっていました。このように、平成 12 年度以前発生分が
未収金全体の約 4 割、平成 13 年度以前となると 5 割以上を占めていることとなります。このように長期化すると、督促及び回収業務は一層困難になるものと考えられます。このような多額の未収金が長期に亘って未回収の状態にあるのは異常な状況です。なぜこのような状態となっているのか、再度業務内容を見直し、再発防止に努める必要があります。
平成 15 年 3 月末残高 | うち平成 14 年度発生分 | うち平成 13 年度発生分 | うち平成12 年度以前発生分 |
12,155 千円 (100.0%) | 5,420 千円 (44.6%) | 1,946 千円 (16.0%) | 4,788 千円 (39.4%) |
( )内は構成比率
(2)公営駐車場管理業務
公営駐車場管理業務にかかる平成 14 年度の収入 432,574 千円の中に、下記のようなものが見られました。
① 建設局との受託契約によると、平成 14 年度の受託料は 315,470 千円とな
っていますが、収入に計上されているのはこのうち 314,770 千円となってい
ました。差額の 700 千円は「公社」がテレビカメラについて立替を行っておりこの回収分とのことです。このような性格のものは、本来は委託契約に含めるべきでないと考えられます。
② 退職者にかかる退職給与引当金取崩益 11,873 千円が事業収入として計上されています。退職金支給時には、支給金額を事業費用に、これに係る退職給与引当金取崩益を収入に計上していますが、この会計処理では事業収入及び事業費用が両建計上されてしまうことになります。本来は支給額と退職給与引当金取崩益を相殺する必要があります。なお、同様の会計処理は他の事業部門でも行われているとのことであり、全社的に見直す必要があります。
(3)自転車駐車場管理業務
①受託料の内訳と実際の支出額の内訳
神戸市からの委託を受け、市立自転車駐車場の管理運営業務の受託を行っています。平成 14 年度における当該事業の受託料内訳と、実際に要した支出額の概要は下記のとおりとなっていました。
(収入(受託料)内訳)
金 (千 | 額 円) | 計算根拠 | 摘 | 要 | |
維持管理費 | 20,675 | @23,930 円×72 箇所×12 ヶ月 | 光熱費、消耗品費、シルバー連絡員 5 名人件費相 当額 | ||
警備委託費 | 14,686 | @16,998 円×72 箇所×12 ヶ月 | 警備会社委託料相当額 | ||
人件費 | 28,035 | 4,005,000 円×7 人 | 施設経営部経営課駐車場 第 2 係の人件費相当額 | ||
委託手数料 | 21,021 | 700,718,670 円×3% | 自転車駐車場総収入× 3% | ||
計 | 84,418 | ||||
そ | の | 他 | 5 | ||
合 | 計 | 84,423 |
(支出内訳)
金 額 (x x) | |
人 件 費 | 48,965 |
物 件 費 | 1,275 |
シルバー連絡員 5 名分人件費 | 6,999 |
警備委託料 | 2,528 |
その他経費 | 24,301 |
合 計 | 84,069 |
上記のように、収入 84,423 千円に対して支出は 84,069 千円となっており、
収支差額は 354 千円と合計ではプラスになっています。しかし、その個々の内訳で比較すると、例えば人件費については、収入(受託料)は人件費相当額 28,035 千円であるのに対して 48,965 千円が支出されています(この理由としては、受託料積算時は嘱託の者の単価を使用して計算されていますが、実際にはそうでない者に対して支給されていることが主な理由と考えられます)。また、警備委託費については受託料積算時には 14,686 千円と積算されていま
すが、実際には 2,528 千円しか支出されていません。
このように、合計額でみると当該事業にかかる「公社」の収支はほぼ均衡していますが、個々に見ると収入(受託料)の積算根拠と実際の支出の内訳に大きな差異が生じているものが見られます。しかも、このような結果を受けて次年度の積算根拠が見直される、ということが行われておらず、平成 15 年度の委託契約についてもほぼ同様の積算内容となっています。すなわち、xxxx勘定的に、合計額でほぼ一致していればいいとの発想となっているようです。基本的なことですが、本来は当年度の支出内容と積算内容との比較検討を行い、これをベースとして次年度以降の受託料積算を実施する必要があります。
(意見) (1)路外駐車場管理運営業務
①利益率
平成 14 年度の路外駐車場 47 箇所の利益率ごとの分布は下記のようになっていました。このように、各路外駐車場によって利益率に大きい差異がみられましたが、特にその理由等は分析されていないとのことでした。利益率は、その立地条件、土地が「公社」保有分かどうか等によって大きく変動する可能
性があるとのことです。しかしながら、当該事業は、自主事業として行われている事業でもあり、場所ごとの利益率比較、年次比較、その原因分析を行うことによって路外駐車場管理運営のより一層の効率化を図ることも可能かと思われます。御検討ください。
(単位:xx)
利益率 | 件数 | 収入 | 支出 | 差額(利益) | 摘要 |
-100% | 1 | 0 | 8,447 | -8,447 | *① |
-100%~-80% | 0 | - | - | - | |
-80~-50% | 2 | 2,850 | 4,447 | -1,597 | |
-50%~-20% | 3 | 11,358 | 15,016 | -3,658 | |
-20%~ 0% | 3 | 99,510 | 115,339 | -15,829 | |
0 % ~ 2 0 % | 10 | 84,121 | 73,293 | 10,828 | |
20%~ 50% | 9 | 177,818 | 108,011 | 69,807 | |
50%~ 80% | 16 | 142,808 | 55,219 | 87,589 | |
80%~100% | 2 | 48,697 | 5,581 | 43,115 | |
100% | 1 | 1,089 | 0 | 1,089 | *② |
共通費等 | 24 | 48,261 | -48,236 | ||
合 計 | 47 | 568,281 | 433,619 | 134,661 |
*① 平成 13 年度末に閉鎖した路外駐車場にかかるもの。平成 14 年度においては、駐車場の土地の現状復帰に要する費用が発生したもの。
*② 神戸市から使用貸借(無償)にて借りており、業者に一括して賃貸しているため、紐付きの支出は発生しないとのこと。
(2)公営駐車場管理業務
①駐車場
「公社」では、神戸市の建設局、都市計画総局の市営駐車場の駐車場管理業務を受託しています。ところが、建設局では同様に外郭団体である神戸地下街㈱に対しても所管の駐車場管理業務を委託しています。また、これらのほかにも神戸市道路公社所管の駐車場も存在し、「公社」はこの駐車場の管理業
務も受託しています。このように、神戸市全体の見地からすると、市営駐車場の所管あるいは管理運営団体が錯綜しているように見受けられます。このような状態となっていることについては現在に至るまでの様々な経緯があるとは思われますが、整理、統合等することにより管理・運営のノウハウを生かし、より効率化を図ることができないかどうか検討の余地があるものと思われます。
(3)自転車駐車場管理業務
①各自転車駐車場毎の収支管理
収入(受託料)は、現状では各自転車駐車場毎には定められていません。また、費用についても各自転車駐車場毎にどの程度かかっているのかは紐付けして把握されていません。すなわち、現状では、各自転車駐車場の利用者からの利用料は神戸市において収入とされますが、「公社」に対しては総額で委託料が算出されています。一方、管理運営に要する費用についても、「公社」では各自転車駐車場ごとには把握されていない状態となっています。各自転車駐車場ごとの採算を明らかにし、これを基礎として受託料の算定に反映させることが望まれます。
4.教育施設整備事業 (概要)
教育施設整備事業は、神戸市と昭和 48 年 4 月 28 日付で、学校教育施設の先行整備に関する協定を締結し、学校の用地造成と建設の業務を行っています。
(監査の結果)
事業内容のヒアリング及び平成 14 年度の営業収益及び営業費用の内容につき検討しましたが、特に問題ないものと思われました。
5.観光レクリエーション施設関連事業 (概要)
観光レクリエーション施設関連事業は、六甲xxロープウェー、まやビューライン夢散歩(ケーブル・ロープウェー)及び新神戸ロープウェーの 3 線
のロープウェーに 1 線のケーブルを営業するいわゆるロープウェー事業と、公社保有のゴルフ場施設等を「国際カントリー」に賃貸する公園施設等管理運営業務から成っています。
(監査の結果) (1)鋼索鉄道事業及び索道事業(ロープウェー事業)の経営状態
ロープウェー事業の各路線の平成 10 年度から 14 年度の損益状況の推移は以下の通りです(平成 10 年度、11 年度については、公表用の数値には一般管理費が配賦されているため、一般管理費相当額を除いた組替後の数値です。)。
(六甲xxロープウェー)
(単位:千円)
平成 10 年度 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |
収益(A) | 202,522 | 211,622 | 203,558 | 186,272 | 165,562 |
費用(B) | 241,124 | 278,799 | 294,490 | 321,857 | 281,555 |
(A)-(B) | △38,601 | △67,176 | △90,932 | △135,585 | △115,993 |
(B)÷(A) | 119.06% | 131.74% | 144.67% | 172.79% | 170.06% |
(新神戸ロープウェー)
(単位:千円)
平成 10 年度 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |
収益(A) | 451,529 | 441,407 | 387,283 | 366,534 | 317,058 |
費用(B) | 474,151 | 515,939 | 582,945 | 513,040 | 494,528 |
(A)-(B) | △22,622 | △74,531 | △195,661 | △146,505 | △177,469 |
(B)÷(A) | 105.01% | 116.89% | 150.52% | 139.97% | 155.97% |
(まやビューライン)
(単位:千円)
平成 10 年度 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |
収益(A) | - | - | 66,963 | 143,769 | 85,500 |
費用(B) | - | - | 164,523 | 248,695 | 223,316 |
(A)-(B) | - | - | △97,560 | △104,925 | △137,815 |
(B)÷(A) | - | - | 245.69% | 172.98% | 261.19% |
また、ロープウェー事業の各路線に関する平成 14 年度以前の過去 10 年分の乗車人員の推移は以下の通りです。
(単位:人)
六 甲 x xロープウェー | 新 神 戸ロープウェー | まやビューライン | ||
x x ケーブル | x x ロープウェー | |||
平成 5 年度 | 411,810 | 1,861,161 | 131,367 | 116,387 |
平成 6 年度 | 355,257 | 1,410,002 | 117,755 | 100,642 |
平成 7 年度 | 152,119 | 544,555 | - | - |
平成 8 年度 | 300,944 | 1,041,587 | - | - |
平成 9 年度 | 280,290 | 1,085,012 | - | - |
平成 10 年度 | 252,039 | 945,812 | - | - |
平成 11 年度 | 264,858 | 957,794 | - | - |
平成 12 年度 | 254,221 | 803,356 | 17,348 | 16,562 |
平成 13 年度 | 245,366 | 799,189 | 229,251 | 217,278 |
平成 14 年度 | 232,998 | 704,027 | 133,683 | 126,761 |
(注)1.六甲xxロープウェーについては、平成 7 年 1 月の震災後、表六甲線については 10 月 6
日まで、裏六甲線については 4 月 9 日まで、運行を休止していました。
2.新神戸ロープウェーについては、平成 7 年 1 月の震災後、3 月 15 日まで運行を休止していました。
3.まやビューラインについては、震災により平成 7 年 1 月以降運行を休止していましたが、
平成 13 年 3 月 17 日より運行を再開しています。なお、まやビューラインのうち、xxケーブルの施設については、震災以前は、六甲xx鉄道株式会社が運営しておりましたが、震災後同社から「公社」がケーブル施設の無償譲渡を受け運行を行っています。
まやビューラインの運行再開により平成 13 年度に一時的に乗車人員が回復したことを除けば、乗車人員及び収益とも逓減傾向にあります。また、事業の性質上、固定費の割合が高いと思われることから、収支の比率が悪化する傾向にあり、路線別の損益については全路線において経常的に大幅な赤字の状態が続いています。
これらの数値が示すとおり、ロープウェー事業については、当該事業単独では経営として成り立たず、「公社」の他の事業でロープウェー事業の赤字を埋め合わせしている状況であり、ロープウェー事業を「公社」全体で支えてい
るのが実情と言わざるを得ません。
(2)ロープウェー事業における収入事務
ロープウェー事業における乗車料金(売上金)に関する収入事務について処理手続の妥当性を検討しました。
具体的には、新神戸ロープウェーの収入事務について、ロープウェー事業部の各担当者から日々の業務処理フロー及び事務処理手続につきヒアリングを行いました。また、必要に応じて各資料間の突合や証憑との突合を行いました。
その結果、以下のような管理上の問題が挙げられます。
① 乗車券券売機の乗車券売上金については、翌営業日の営業開始前に担当者が回収しています。担当者は一定期間毎にローテーションされているとのことですが、回収はその担当者 1 人で行っている状況です。内部牽制の観点から、定期的に担当者以外の者の立会による回収を行うことが望まれます。
② 各乗車券券売機毎の乗車券売上金の回収に当たり、売上日報と券売機からアウトプットされるジャーナルの照合を行っているとのことですが、チェックした証跡が残されておりません。確実にチェックしたことを証跡として残しておく必要があります。
(3)ロープウェー事業におけるたな卸資産及び乗車券の在庫管理
ロープウェー事業におけるたな卸資産及び乗車券の在庫管理事務について処理手続の妥当性について検討しました。
具体的には、新神戸ロープウェーの各担当者から日々の業務処理フロー及
び事務処理手続につきヒアリングを行いました。また、必要に応じて各資料間の突合を行いました。
その結果、以下のような管理上の問題が挙げられます。
① たな卸資産について、例えばテレフォンカードを業務用またはイベント用として「公社」内で使用されるケースがあるとのことですが、現状では「公社」内で使用することに関する決裁を受けていません。目的及び数量を明確にし、適切な承認の下に使用されたことを示すため、決裁を受けておく必要があります。
② たな卸資産の現物は、販売窓口にあるものと事務所内に保管しているもの(小出し分)がありますが、事務所内で保管しているものに関しては現物の管理簿が作成されていません。全てのたな卸資産を網羅的に現物管理する観点から事務所内で保管しているものについても管理簿を作成することが必要です。また、販売窓口での管理簿を閲覧したところ、平成 14 年度末の会計上の現物数と管理簿の現物数が一致していないものがあり、管理簿による現物管理が必ずしも適切にできているとは言えない状況でした。例えば、新神戸Tシャツについて、実地棚卸の数量が 35 枚であるのに対し
て、管理簿には 88 枚との記載がなされていました。
③ 乗車券について、現物を実査し、乗車券の現物管理簿である乗車券在庫表と照合したところ、一致しないものがありました。差異内容を確認したところ乗車券在庫表の入出庫記録に記載に不備があることが判明しました。在庫表の記載は正確に行うことが必要です。
(意見) (1)ゴルフ場施設保有の必要性
「公社」は、「国際カントリー」に対して、「公社」が地上権者となっている
「北神戸ゴルフ場」の用地と、「北神戸ゴルフ場」、「西神戸ゴルフ場」及び「しあわせの村ミニゴルフ場」内のゴルフ場施設を賃貸しています。
具体的な賃貸ゴルフ場施設は「北神戸ゴルフ場」の西コース 9 ホール、クラブハウス等、「西神戸ゴルフ場」の電磁誘導カート、クラブハウス等、「しあわせの村ミニゴルフ場」のクラブハウス等です。
これら賃貸しているゴルフ場施設には、各ゴルフ場開業当初から「公社」が保有し賃貸している物件もありますが、「西神戸ゴルフ場」については、平成 14年4 月にクラブハウスを「公社」が「国際カントリー」から買取を行い、
「国際カントリー」に賃貸しています。
これらゴルフ場施設については、「公社」が建設業務を受託したこと等のいきさつから、「公社」が資産として保有していると考えられます。しかしながら、「公社」の資金負担において、ゴルフ場施設等を取得、保有する必要性は設立目的等に照らして、疑問が残ります。
(2)ロープウェー事業の経営改善
ロープウェー事業については、これまでも、人員削減やアウトソーシングその他の費用の圧縮等、経常支出の大幅削減のため、危機感をもって対応しているとのことです。また集客の向上策として「まやビューライン友の会」や数々のイベントの実施等乗客の増加策を実施する一方、交通事業者としての「公社」だけでは限界があるため、市及びJRや私鉄各社、旅行代理店、市内ホテル等、他の事業者とも連携しながら観光客誘致を進めているとのことです。施策には一定の成果を挙げていると思われるものもありますが、依然としてロープウェー事業の損益状況は厳しい状況にあります。
現在ロープウェー事業においては、平成 13 年度の「公社」の中期経営改善
計画策定方針(前述の「中期経営方針」)に基づき同年 9 月に「ロープウェー事業部経営改善検討委員会設置要領」を策定した上で、「ロープウェー事業経営改善検討委員会」を設置し、ロープウェー事業の効率的な運営管理を図るため、その課題を分析し対策を検討することとしています。
この「ロープウェー事業経営改善検討委員会」において、平成 15年1月 21日付で「ロープウェー事業 経営改善検討委員会中間報告」がまとめられ、平成 15 年度より計画を実施しています。ロープウェー事業の赤字削減という緊急課題の検討を最優先し、取りまとめた当該中間報告の主な事項は次の通りとなっています。
(改善方針)
・ 経費(人件費、物件費)の 50%削減を目標とする。
・ 市民サービスの向上と乗客増対策を強化し、収支改善を図る。
・ 改善は、平成 15 年度から 17 年度の 3 ヵ年計画で進める。
(改善計画)
・ 保安、整備、監視業務の効率化(保守班の新設)
・ 業務委託の拡大(整備業務、駅務乗客業務)
・ 新神戸「風の丘駅」上りホームの無人化
・ 定休日の廃止(新神戸、まやビューライン)
・ 法定 1 年検査の期間短縮
・ 機器部品の効率的な調達(国産化の促進、単価契約の導入)
・ 組織、人員配置の見直し
(効果)
・ 経費の削減→△2 億 4000 万円
・ 定休日廃止による運賃収入増→1100 万円
・ 保守整備の一元化、保守班の設置→技術の集約、ノウハウの蓄積
・ 定休日の廃止→市民、観光客へのサービス向上
これらの方針、計画を受け具体策の実行は既に行なわれ、一部の施策については相応の効果が見受けられるとのことです。
今後、ロープウェー事業における赤字削減を実行するために、更なる改善方針、改善計画の策定が求められますが、その際には例えば次のような分析、視点が必要と考えられます。
・現状では実施されていない費用内容の厳密な分析を行なった上で、それを変動費、固定費に分解し、各路線別にいわゆる損益分岐点を算定する。
・乗車人員の予測を保守的に見積もった上で、ロープウェー事業として許容できる赤字のラインを明確にする。
そして、今後のロープウェー事業を考えていく上で、各路線の廃止の要否の検討は避けて通ることの出来ない事項と考えられます。
ロープウェー及びケーブルは基本的には神戸市の観光資源のひとつとして、また交通手段として、その存在を重要視されてきたものと思われます。しかし、観光に対するニーズの多様化、モータリゼーションの発達等の環境変化により、ロープウェー及びケーブルの存在意義は時代の移り変わりとともに変化してきていることは否定できないものと思われます。
現在の神戸市生活文化観光局観光交流課の集計した数値によれば、六甲xx観光群の平成 6 年から 14 年(いずれも暦年ベース)の観光入込客数の推移は以下のとおりとなっております。
(単位:万人)
平成 6 年 | 平成 7 年 | 平成 8 年 | 平成 9 年 | 平成10 年 | 平成11 年 | 平成12 年 | 平成13 年 | 平成14 年 | ||
六甲xx観 光 群 | 六甲xx | 732 | 225 | 504 | 510 | 497 | 504 | 482 | 488 | 461 |
xx | 172 | 102 | 145 | 141 | 136 | 133 | 128 | 129 | 131 |
景気の低迷や震災といった要素も考えられますが、六甲xx観光群については、平成 6 年以降観光入込客数は減少傾向にあり、観光資源としての地位は低下傾向にあるといえます。そして、この六甲xx観光群にある六甲xxロープウェー、まやビューラインの乗客数については、(監査の結果)(1)に記載しておりますが、平成 14 年度について単純合算ベースで利用度合いを仮定すると、それは 10%にも満たない水準であることになります。つまり、六甲xx観光群を訪れる観光客のうち、六甲xxロープウェーやまやビューラインを利用する人は 10 人に 1 人にも満たないという結果になります。
この事実から、六甲xxロープウェー及びまやビューラインについては、観光資源としても、また、交通手段としても、その地位は大きく低下し重要性を失っている状況であると考えられます。
特に、六甲xxロープウェーについては、昭和 45 年 7 月の開業から既に 33年が経過して、施設の老朽化が進んでおり、数年以内には大規模な施設更新をしなければならない時期を迎えているとのことです。
具体的には、現国土交通省が「索道施設に関する技術上の基準を定める省令(昭和 62 年運輸省令第 16 号。)」の運用に必要な索道施設の構造の標準的な技術基準及び索道施設の標準的な維持管理方法について定めた「索道施設の審査及び維持管理要領」の 10.2.2(索道の交換)において、「索条は、次の場合には、速やかに交換するものとする。(1)支索にあっては、・・・有効断面積が新品時に対して 5%減少したとき・・・」とされていますが、これに対し、平成 14 年度の検査では、表線(六甲山上駅~六甲カントリー駅)では 3.9%、裏線(六甲カントリー駅~xx駅)では 2.3%の減少率となっており、特に表線での有効断面積の減少率の増加が進んでいる状況です。
現状の試算では、この支索交換等については、5 億円以上の負担が生じるとの結果が出ています。
このように六甲xxロープウェーについては、近い将来に多額の設備更新コストが生じることが確実であり、路線を廃止すべきか否かの議論は検討に値するものと考えられます。
総括しますと、ロープウェー事業については、経営努力によりある程度の集客力のアップは可能とは考えられますが、乗客数の大幅な増加は現実的には難しい状況と考えられます。収益はあくまでも保守的な将来予想を前提と
した上で、達成すべき損益水準を明確にし、そのために必要な具体的かつ実現可能な経営改善策を「ロープウェー事業経営改善委員会」を中心に作成すること、そして、その中には各路線についての廃止の要否についても検討することが必要と思われます。
6.公益施設等関連事業 (概要)
公益施設等関連事業は、大きく公益施設等建設業務、公益施設等管理業務及び「KIBC」等管理運営業務から成っています。
(監査の結果) (1)神戸国際ビジネスセンター等管理運営業務
平成 15年8月1 日現在の「KIBC」及び「KIO」の入居率の状況は以下の通りとなっています。
「KIBC」
xx | xx | x | |||||||
提供 | 入居 | 入居率 | 提供 | 入居 | 入居率 | 提供 | 入居 | 入居率 | |
床面積(㎡) | 6,574 | 5,734 | 87.2% | 6,761 | 5,293 | 78.3% | 13,335 | 11,027 | 82.7% |
部屋別(室) | 65 | 57 | 87.7% | 76 | 59 | 77.6% | 141 | 116 | 82.3% |
「KIO」
提 供 | 入 居 | 入居率 | |
床面積(㎡) | 3,603 | 2,963 | 82.2% |
部屋別(室) | 60 | 52 | 86.7% |
上記の通り、「KIBC」及び「KIO」の入居状況については、比較的順調な水準を確保しているものと思われます。
これら「KIBC」及び「KIO」の入居者の選定に際しては、それぞれ
「神戸国際ビジネスセンターテナント審査委員会要綱」及び「神戸インキュベーションオフィステナント審査委員会要綱」に基づき各審査委員会を開催し、入居者を決定しています。
上記審査委員会の資料を閲覧したところ、神戸インキュベーションオフィステナント審査委員会に関しては、審査の過程が明確になっておりますが、神戸国際ビジネスセンターテナント審査委員会については、入居基準に沿った形での審査が行われているのかどうかは、審査過程が詳細に記載されていなかったため閲覧した資料からは確認出来ませんでした。審査過程の明確化客観化が必要です。
(2)神戸ハイテクイースト工業団地(以下、「ハイテク工業団地」という。)に関する滞留債権
「公社」は、神戸市産業振興局の依頼により、阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けたケミカルシューズ、機械金属等の中小企業の生産活動を支援するため平成 7 年度に仮設賃貸工場を建設し、5 年間の期限で各企業に賃貸してきました。平成 12 年度に仮設事業は終了しましたが、仮設賃貸工場であった
神戸ハイテクパークはxx区の復興支援工場に準じて、平成 12 年 6 月、「ハイテク工業団地」として本設工場化され、「公社」は神戸市から土地建物を借り受け、工場を賃貸し、管理しています(なお、管理業務の一部を財団法人神戸市産業振興財団に委託しています。)。
この事業については、平成 15 年 9 月末時点において、以下のような滞留債権(3 ヶ月以上の滞納先)が発生しています。
滞納先 | 賃料(千円) | 共益費(千円) | 債権額計(千円) |
16 先 | 37,146 | 227 | 37,373 |
「ハイテク工業団地」は、震災で甚大な影響を受けた中小企業の生産活動を支援するための仮設事業の延長線上にあることから、入居者の経済状況を鑑み、敷金等は受領しておらず、債権については保全の手段がとられていない状況となっています。
これら滞納先の中には、既に退去している先や退去の話し合いを行っている先及び破産宣告を受けた先も含まれています。また、延納賃料に関する支払につき、「念書」や「覚書」の名称の文書を取り交わしたり、「xx証書」を作成している先もあります。しかし、いずれの滞留債権についても貸倒処理を行ったり、貸倒引当金の計上を行っていません。
(意見) (1)「ハイテク工業団地」に係る滞留債権管理
「ハイテク工業団地」の入居者は、上記の通り、震災にて被害を受けた中小企業であり、経済状態も必ずしも良好な先とは言えない先が多いことも予
想されるため、今後も滞留先及び滞留債権額が増加する可能性は十分考えられます。
現在、滞留債権の回収に向けた努力はなされてはいますが、その対応策については確立されたものはありません。入居者によって状況が異なることから、困難な側面があることは予想されますが、有効な債権回収の観点からもまた入居者に対するxx性の観点からも、滞留債権回収管理についてのマニュアルを作成することが望まれます。
7.下水道関連事業 (概要)
神戸市の下水道事業は、昭和 63 年度末に市街化区域の整備をほぼ終えましたが、なお一層の普及率の向上、下水道整備困難地区の解消、西北神の市街化調整区域への下水道整備の拡大が求められるようになっていきました。
また、下水道用地・施設の多目的利用や下水処理水の再利用などアメニティ下水道事業の推進を求める動きが起こっていました。
これらに機動的かつ柔軟に対処するための組織としてxxx年 11 月 1 日、神戸市下水道公社(以下、「旧下水道公社」という。)は設立されました。
業務の役割分担は原則として市は下水道事業の基幹的・根幹的業務を行い、
「旧下水道公社」は、市との緊密な連携のもと、その補完的・代行的業務を行うこととしています。
平成 12年4月1 日、「旧下水道公社」は「公社」に統合(事業承継)され、下水道事業部となりました。
(監査の結果)
xxスポーツガーデンには、施設地下部分に下水処理施設等があり、この施設の上部部分について市民生活上有効活用するために、「公社」は神戸市から用地を借り受け、スポーツガーデンを自主事業として運営しています。その運営収支の推移についてみると、次のようになります。
(単位:千円)
平成 10 年度 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |
収 入 | 112,108 | 104,843 | 104,003 | 105,409 | 104,046 |
支 出 | 135,549 | 145,890 | 147,894 | 143,842 | 121,157 |
収支差額 | △23,441 | △41,047 | △43,891 | △38,433 | △17,111 |
(注)平成 12 年 4 月 1 日、「旧下水道公社」は「公社」に統合(事業承継)
平成 10 年度から収支差額はマイナスが続いています。収入については、平
成 13 年度から利用増加策(テニスコート:平日昼間回数券販売及び金曜サービスデーの実施、スクール:入会キャンペーン・コースの新設改変等・受講者特典、サイクル:回数券販売及び団体客誘致)を実施していますが、その効果は顕著ではありません。経費については、平成 13 年度と平成 14 年度とを比較すると嘱託職員の削減による減少が見られます。
今後の運営計画について問い合わせたところ、現スポーツガーデンは平成 16 年度末で閉鎖し、平成 17 年度春に場所を変えて再オープンの予定であり、施設内容、運営形態等については、現在計画中であるが、少なくとも収支の均衡がとれるようにしたいとの回答を受けています。しかしながら、具体的な数値は示されませんでした。
早急に計画案の立案と、その実行が求められます。
(意見) (1)xxx貸付金
xxx資金貸付金は、各家庭でくみ取り便所を水洗便所に改造したり、浄化槽を廃止して汚水管に直結するための切替工事をする場合に、市民が利用できる貸付金です(下表参照)。
「公社」の下水道関連事業では、貸付金の貸出業務とその回収業務を行っており、貸付金そのものは神戸市が保有する債権となっています。
水洗便所工事の型式 | 貸付金 | 返済方法 | 備 考 |
くみ取り改造工事 | 500 千円 | 36 ヶ月払・無利子 | 和風兼用便器 洋風 |
浄化槽切替工事 |
(注)大便器 1 個についての貸付限度額です。
貸付金回収業務に係る滞納状況をxx年度別にみると下表のようになります。
平成15年3月31日現在(単位:千円)
当初xx年度 | 平成 14 年度xx(A) | 平成 14 年度収入(B) | 平成 14 年度未収 | 収入率 (B/A) | |||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | ||
S35~54 | 16,035 | 56,709 | 60 | 173 | 15,975 | 56,536 | 0.31 |
55 | 338 | 1,914 | 5 | 14 | 333 | 1,899 | 0.76 |
56 | 395 | 2,135 | 8 | 25 | 387 | 2,110 | 1.19 |
57 | 341 | 1,894 | 2 | 5 | 339 | 1,889 | 0.29 |
58 | 397 | 2,073 | 3 | 9 | 394 | 2,064 | 0.44 |
59 | 473 | 2,515 | 0 | 0 | 473 | 2,515 | 0.00 |
60 | 402 | 2,087 | 2 | 4 | 400 | 2,083 | 0.19 |
61 | 412 | 2,228 | 0 | 0 | 412 | 2,228 | 0.00 |
62 | 353 | 2,124 | 2 | 6 | 351 | 2,117 | 0.30 |
当初xx年度 | 平成 14 年度xx(A) | 平成 14 年度収入(B) | 平成 14 年度未収 | 収入率 (B/A) | |||
件数 | 金額 | 件数 | 金額 | 件数 | 金額 | ||
63 | 246 | 1,558 | 2 | 10 | 244 | 1,548 | 0.64 |
H1 | 134 | 801 | 2 | 10 | 132 | 790 | 1.35 |
2 | 96 | 574 | 0 | 0 | 96 | 574 | 0.00 |
3 | 78 | 708 | 4 | 13 | 74 | 694 | 1.90 |
4 | 93 | 824 | 1 | 1 | 92 | 822 | 0.21 |
5 | 107 | 952 | 3 | 19 | 104 | 933 | 2.06 |
6 | 178 | 1,707 | 9 | 80 | 169 | 1,626 | 4.71 |
7 | 230 | 2,313 | 3 | 20 | 227 | 2,293 | 0.86 |
8 | 240 | 2,347 | 25 | 283 | 215 | 2,064 | 12.07 |
9 | 198 | 1,833 | 19 | 208 | 179 | 1,624 | 11.37 |
10 | 169 | 1,734 | 4 | 39 | 165 | 1,695 | 2.25 |
11 | 142 | 1,627 | 0 | 0 | 142 | 1,627 | 0.00 |
12 | 107 | 1,284 | 13 | 165 | 94 | 1,119 | 12.88 |
13 | 353 | 4,453 | 281 | 3,681 | 72 | 771 | 82.67 |
小計 | 21,517 | 96,404 | 448 | 4,772 | 21,069 | 91,631 | 4.95 |
14 | 2,920 | 37,805 | 2,626 | 34,049 | 294 | 3,756 | 90.06 |
合計 | 24,437 | 134,209 | 3,074 | 38,821 | 21,363 | 95,387 | 28.93 |
(出典:神戸市建設局資料)
平成 13 年度以降の収入率は高くなっています。これは、新規に発生した貸付金の回収は容易であるが、過去に発生した貸付金の回収は困難であることによると思われます。
xxx貸付金は私法上の債権にあたり、公法上の債権である下水道使用料とは異なり、消滅時効の期間は 10 年になります。また、相手方からの時効の援用(時効期間が経過したので支払わない旨の意思表示)があってはじめて、債権が消滅することになります。従って、「公社」は時効の援用がない限り、基本的に回収可能という立場に立ち滞納整理事務を行うことになります。このことは、費用対効果の面から必ずしも効率的とは考えられません。今後、効率的な事業継続の観点から、神戸市当局とも相談の上、強制xxxの裁判手続を含めた対応が必要になると考えます。
8.その他事業
《地図等頒布業務》 (概要)
昭和 38 年頃から都市計画図などの地図を広く市民に提供するため公社で頒
布するようになり、昭和 42 年頃からは地図以外の「神戸市土木工事共通仕様
書」の頒布も始め、平成 12 年度の「旧下水道公社」との統合により下水道関連の図書も販売するようになりました。
(意見)
地図等頒布業務は神戸市から地図等を購入し、書店との委託契約に基づき販売するものです。平成 10 年度から平成 14 年度までの損益の推移をみると次のようになります。
(単位:千円)
平成 10 年度 | 平成 11 年度 | 平成 12 年度 | 平成 13 年度 | 平成 14 年度 | |
収入の部 | 16,085 | 22,134 | 16,904 | 21,097 | 14,568 |
費用の部 | 13,045 | 16,609 | 13,602 | 22,434 | 17,110 |
利 益 | 3,040 | 5,525 | 3,302 | △1,337 | △2,541 |
平成 12 年度以降は「旧下水道公社」と統合した損益となり、平成 13 年度以後の損益状況は赤字となっています。このことは下水道関連の図書の販売が加わったことによる悪化であると思われます。「旧下水道公社」と統合するまでは、「公社」から外部へと販売委託の形態であったのが、下水道関連の図書販売業務については外部との販売委託の形態をとらなかったため損益状況
が悪化したものと考えられます。費用対効果の見地から全面委託とする等販売形態の見直しが必要です。
《埋立処分地料金徴収・建設残土受付業務》 (概要)
埋立処分地料金徴収業務は、昭和 47年4 月「神戸市廃棄物の処理及び清掃に関する条例」の制定により、産業廃棄物の処分地への受け入れを規制し、土砂などを主体に受け入れることになり、各処分地の料金徴収業務を神戸市環境局より受託しているものです。
また、建設残土受付業務は、埋立処分地への建設残土受入事務を神戸市開発局(現 みなと総局)から受託しているものです。
(監査の結果)
神戸市との委託契約書において、受託業務の再委託の禁止として「業務の一部又は全部を第三者に再委託してはならない。」の記載があるにもかかわらず、財団法人神戸市シルバー人材センター(以下、「人材センター」という。)と埋立処分地料金徴収業務について業務委託契約を行っています。業務の全部を再委託しているわけではありませんが、業務の一部を再委託していることから、形式上は契約違反にあたると考えられます。これに対し、「公社」側の回答は、「「公社」と「人材センター」との間で委託契約の形式をとっているが、実質的には当公社の職員が業務を運営し、その一部を担当しているにすぎない。職員に比べて人件費が安い。」という理由から業務を委託していることにならないと判断したとのことです。しかし、「公社」と「人材センター」との契約書には、委託業務の内容等、通常業務委託契約と認識される契約書
としての記載があることから、「公社」のいう業務を委託していることにはならないという回答は必ずしも妥当ではないと考えられます。
第4 利害関係
監査の対象とした事件につき、私は地方自治法第 252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はありません。
以 上
(参考資料)
目 次
1.民間と競合する公的施設の改革について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106
2.「中間とりまとめ-経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革-」概要・・・・・・107
1.民間と競合する公的施設の改革について
[平成 12年5月 26日 閣議決定]
国又は特殊法人等が設置主体となる公的施設(会館、宿泊施設、会議場、結婚式場、健康増進施設、総合保養施設、勤労者リフレッシュ施設その他これらに準ずる施設で、特殊会社及び民営化が決定された法人が設置するものを除く。以下「施設」という。)について、累次の閣議決定に沿った措置を引き続き推進することとし、下記のように決定する。
記
1 施設の新設及び増築の禁止
不特定の者が利用し得る施設の新設及び増築は禁止する。なお、現在、計画段階にあり、工事(設計を含む。)未着手のものについては、これを取り止める。
2 既存施設の廃止、民営化その他の合理化措置
官民のイコール・フッティング(税制を含めた同一競争条件の確保)の観点から、施設ごとの独立採算性を原則とし、一定の基準に基づいて個々の施設ごとに企業会計原則に準ずる特殊法人等会計処理基準により経営成績等を明確にし、早期(5 年以内)に廃止、民営化その他の合理化を行う。
3 地方公共団体における措置の要請
地方公共団体についても、上記の措置に準じて措置するよう要請するものとする。
2.「中間とりまとめ
-経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革-(平成 14 年 7 月 23 日)」概要
内閣府・総合規制改革会議
第 1 章 新しい事業の創出 (略)
第 2 章 民間参入・移管拡大による官製市場の見直し
①株式会社の市場参入・拡大
・ 医療(病院)、福祉(特養、ケアハウス)、教育(学校)、農業
②官民役割分担の再構築
・ 行政関与の在り方見直し(積極的な民間参入の拡大:事業譲渡、株式会社化、経営委託、業務委託)
・ 官から民への業務移管の推進(公の施設の受託管理者を民間事業者等へ拡大、行政財産の民間開放、上水道事業の民間経営の推進、下水道事業の包括的民間委託、地方公営企業(ガス事業等)の民営化、PFI事業推進)
・ 同一市場における競争条件の均一化(補助金・税制等のイコールフッティング)
③利用者選択の拡大
・ 機関補助から利用者補助へのシフトによる利用者選択の拡大
第 3 章 活性化に資するビジネス・生活インフラ整備 (略)
第 4 章 事後チェックルールの整備 (略)
第 5 章 「規制改革特区」の実現に向けて (略)